特許第6010583号(P6010583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010583
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】蛍光体変換LED
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20161006BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20161006BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20161006BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20161006BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01L33/56
   C09K11/02
   C09K11/00 A
   H01L33/50
   H01L33/60
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-121320(P2014-121320)
(22)【出願日】2014年6月12日
(62)【分割の表示】特願2011-526096(P2011-526096)の分割
【原出願日】2009年8月19日
(65)【公開番号】特開2014-212329(P2014-212329A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】12/202,793
(32)【優先日】2008年9月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510077369
【氏名又は名称】ブリッジラックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト、スコット
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−019096(JP,A)
【文献】 特開2005−268323(JP,A)
【文献】 特開2005−277227(JP,A)
【文献】 特開2000−031548(JP,A)
【文献】 特開2006−060099(JP,A)
【文献】 特開平06−312600(JP,A)
【文献】 特開2001−215899(JP,A)
【文献】 特開2002−305328(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02432967(GB,A)
【文献】 特開2002−280601(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0269925(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を製作する方法において、当該方法が
ダイの上面およびダイの1以上の側面を通して第一の波長の光を放射する複数のダイを取付ける工程であって、当該ダイが取付け基板の表面に接合される工程、
光変換要素のシートを用意する工程であって、各光変換要素が当該第一の波長の光を第二の波長の光に変換する蛍光物質の層を含み、各光変換要素が当該ダイの一つに対応し、当該対応光変換要素の底面が当該対応ダイの当該上面上に位置するように当該対応ダイと位置合わせされる工程、
光変換要素の当該シートを当該ダイの当該上面に接合する工程であって、当該対応ダイのまわりに空間が存在し当該空間が当該基板と当該対応光変換要素とによって境界されているように選択された横方向の寸法を、各光変換要素が有する工程、および
散乱環を作製する工程であって、当該散乱環が、各ダイの当該側面を取り囲み、かつ当該ダイの当該側面から放射された当該光の一部が当該ダイに対応する当該光変換要素中に散乱環によって散乱されるように当該ダイのまわりの当該空間中に位置し、当該散乱環が、粒子を中に懸濁させた透明物質を含み、当該透明物質が、当該光変換要素の当該底面と当該取付基板とを濡らす液状前駆体を有し、当該前駆体が、毛細管作用によって当該空間中への当該液状前駆体の引き込みを生じさせる表面張力を有する、当該散乱環を作製する工程、
を含む、上記の方法。
【請求項2】
当該散乱環が、散乱粒子を中に懸濁させた透明物質を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
当該透明物質が、当該光変換要素の当該底面と当該基板の表面とを濡らす液状前駆体を有し、当該散乱環が、当該液状前駆体中に当該散乱粒子を懸濁させて液状環前駆体を形成し、当該液状環前駆体を当該ダイのまわりの当該空間中に導入し、そして当該液状前駆体を硬化することによって作製される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
当該光変換要素のシートを用意する工程が、個々の光変換要素を担体に接着する工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
当該光変換要素のシートを用意する工程が、パターニングされた蛍光体層を担体上に作製する工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
当該蛍光体層が、当該蛍光体を含有する液状前駆体物質を含み、当該パターニングされた蛍光体層が、当該液状前駆体物質を当該担体上に印刷することによって作製される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
当該取付け基板上に透明物質の層をモールド成形して、各ダイに対応する非平面状の表面を有する光学要素を配設する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
当該光学要素のうちの一つが、複数の当該ダイを収納する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光ダイオード(LED)は、従来の光源、たとえば白熱灯および蛍光灯光源を置き換えるための魅力的な候補である。LEDは、白熱灯よりも実質的に高い光変換効率およびこれら両タイプの従来の光源よりも長い寿命を有する。加えて、あるタイプのLEDは今では蛍光灯光源よりも高い変換効率を有し、さらに高い変換効率が実験室で示されている。最後に、LEDは蛍光灯よりも低い電圧を要求し、したがって光源が、電池やコンピュータ内部直流電源のような低電圧光源から電力の供給を受けなければならない用途に、より適している。
【背景技術】
【0002】
残念ながら、LEDは比較的狭いスペクトル帯の光を発する。従来の照明装置を置き換えるためには、観察者に「白色」であるように見える光を発するLEDベースの光源が要求される。白色であるように見えかつ蛍光灯光源の変換効率と同等の変換効率を有する光源が、青色光の一部を黄色光に変換する蛍光体の層で覆われた青色LEDから構築されることができる。かかる光源は、以下の説明において「蛍光体変換された」光源と呼ばれる。青色と黄色との割合が正しく選択されるならば、得られた光源は観察者に白色に見える。正しい割合をもたらすためには、蛍光体層の厚さが調節されなければならない。これに加えて、該光源の発光表面全体にわたる光色のばらつきを防止するために、LEDが製作されるダイの上の蛍光体層の均一性が保持されなければならない。
【0003】
1ドル当たりの生成された光のルーメン数として評価されるコストは、従来の光源の置き換えを対象としているどの光源においても重要な関心事である。ダイを実装するコストは、完成光源のコストのかなりの割合を占める。実装コストはダイの側部から出て行く光を捕捉する必要があることによって増加する。蛍光体変換された光源に用いられる青色LEDで生成された光のかなりの割合は、ダイを構成する物質と周囲の媒体との間の屈折率の差に起因する内部反射によってダイの上面と底面との間に捕捉される。この捕捉された光のかなりの割合が、ダイの側部を通ってダイから出て行く。ダイの光出力を改善するために、典型的には反射体が光源内に組み込まれて、ダイの上面から出て行く光と同じ方向にダイから出て行くように、ダイの側面から出て行く光の向きが変えられる。
【0004】
一定の厚さの蛍光体および反射体を備えることに関連する実装コストはかなりのものである。たとえば、1の設計では、反射体は反射壁を有するカップの形状で設けられる。このカップは、ダイに電力を供給するための電気配線を含む基板の上に設けられる。基板の一部がカップの底部の開口部を通して露出される。ダイはカップの底部の開口部を通して露出されたその基板の一部の上に設けられ、電気配線に接続される。カップは次に物質中の蛍光体粒子の懸濁物を充填され、該物質が硬化されるとその物質の固体層を得ることができ、該蛍光体粒子はその中に懸濁された状態に保たれる。蛍光体粒子を懸濁するためのエポキシまたはシリコーンベースの物質に基づいた方法が従来技術で知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のこれらの方法は、ダイを通して放射される光の均一性を保証する様式で自動化することが困難である。特に、ダイの上面から出て行き蛍光体層によって変換される光の割合は、ダイの側面から出て行き蛍光体層によって変換される光の割合と同じでなければならない。これらの方法では、光源組立てライン上で光源の最終組立ての間に、蛍光体粒子を含有する担体物質を硬化することによって、蛍光体層はカップの中に形成される。蛍光体粒子は、分注段階の間に担体物質中で沈降する傾向がある。沈降を防ぐために、懸濁物は沈降を遅くする様々な物質を添加されなければならない。加えて、該担体は硬化時間が短くなるように処方されて、カップ中のダイのまわりに該粒子が沈降するのを防止しなければならない。粒子がカップの底に沈降すると、ダイの側部から出て行く光が貫通しなければならない蛍光体の量は、ダイの上部から出て行く光が貫通しなければならない蛍光体の量と有意に異なってくる。その結果、反射体によって向きを変えられた光は、ダイの上面から出て行く光とは異なった色を持つ。その故に、光源はその光源の表面にわたって色のばらつきを示す。
【0006】
その上、各ダイに個別のカップを施す方法には、典型的には多数のさらなる製作工程が関わってくる。最も簡単な設計では、カップが製作された後、該カップは下にある基板に一つ一つ接着される。カップが、多数のダイ全体を覆って置かれる物質の層として形成される設計が提案されているけれども、「カップ層」の形成は完成光源のコストのかなりの割合を依然として占める。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光源および同を製作する方法を含む。該光源は、ダイ、光変換要素および散乱環を含む。ダイは、該ダイの上面および該ダイの1以上の側面を通して第一の波長の光を放射し、取付け基板の表面に接合されている。光変換要素は、第一の波長の光を第二の波長の光に変換する蛍光物質の層を含み、ダイの上面に接合された底面を有する。ダイのまわりに空間が存在し、光変換要素は、該空間が基板と光変換要素とによって境界されるような横方向の寸法を有する。散乱環はダイの側面を取り囲み、ダイの側面から放射された光の一部が該散乱環によって光変換要素中に散乱されるように該空間中に位置する。本発明の1の側面では、散乱環は、粒子を中に懸濁させた透明物質を含む。本発明の他の側面では、光変換要素は、蛍光物質を中に有する透明物質の平面層、および該平面層に接合された透明物質の層を含む光処理層であって該光処理層が該平面層の上を覆う非平面状の表面を有する光処理層、を含む。
【0008】
光源は、ダイの上面およびダイの1以上の側面を通して第一の波長の光を放射する複数のダイが取付け基板の表面に設けられている一群の光源へと製作されることができる。光変換要素のシートは、各光変換要素が第一の波長の光を第二の波長の光に変換する蛍光物質の層を含み、取付け基板の全体上に置かれる。各光変換要素はダイのうちの一つに対応し、その光変換要素の底面がそのダイの上面上に位置するようにそのダイと位置合わせされる。光変換要素のシートは、次にダイの上面に接合される。各光変換要素は、対応するダイのまわりに空間が存在するように選択された横方向の寸法を有し、該空間は基板および対応する光変換要素によって境界されている。各ダイの側面を取り囲む散乱環が次に作製される。散乱環は、そのダイの側面から放射された光の一部がそのダイに対応する光変換要素中に該散乱環によって散乱されるようにダイのまわりの空間中に位置する。本発明の1の側面では、散乱環は、粒子を中に懸濁させた透明物質を含む。該透明物質は、光変換要素の底面と基板の表面とを濡らす液状前駆体を有する。散乱環は、液状前駆体中に散乱粒子を懸濁させて液状環前駆体を形成し、該液状環前駆体をダイのまわりの該空間中に導入し、そして該液状環前駆体を硬化して散乱粒子が中に懸濁されている透明媒体を形成することによって作製される。本発明の他の側面では、液状前駆体は毛細管作用によって該空間中に引き込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】典型的な従来技術の蛍光体変換LED光源の断面図である。
図2】本発明の1の側面に従う光源の断面図である。
図3】製作工程中の様々な段階における本発明の1の側面に従う光源の断面図である。
図4】製作工程中の様々な段階における本発明の1の側面に従う光源の断面図である。
図5図6に示された5−5線を貫通する断面図である。
図6図5に示された基板の一部の上面図である。
図7】本発明のこの側面を用いる2の光源を有する基板71の一部の断面図である。
図8】本発明の他の側面を用いる光源を示す図である。
図9】本発明の他の側面を用いる光源を示す図である。
図10】本発明のさらなる側面を用いる光源を示す図である。
図11】本発明のさらなる側面を用いる光源を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明がその利点を提供する様式は、図1を参照するとより容易に理解されることができ、図1は典型的な従来技術の蛍光体変換LED光源20の断面図である。LEDを含む発光半導体ダイ22が基板21上の空洞内に設けられる。該LEDは、基板21上の対応する導電体に接続されたダイ22の底側の接点から電力を供給される。図を簡略化するために、ダイ22と基板21上の導電体との接続部は省略されている。
【0011】
光源20は反射側部27を有するカップ29を含む。カップ29は、物質の層内に円錐状の孔を穿ち、該孔の壁に反射物質をコーティングした後、該物質を基板21に接合することによって作製されることができる。該カップは典型的には基板21に接合され、その後ダイ22が基板21に接続される。しかし、基板21中に円錐状陥凹を穿つことによってカップが作製される実施態様も、従来技術で知られている。
【0012】
ダイ22が基板21に接合された後、担体物質25中の蛍光体粒子24の懸濁物がカップ29中に導入される。担体物質は典型的にはエポキシまたはシリコーンであるが、他の物質に基づいた担体も従来技術で知られている。担体は典型的には硬化されて、蛍光体粒子が中に固定化された固形物質を形成する。担体が硬化されるときに、担体物質中に蛍光体粒子が均一に分散されているとしても、ダイ22の側面から出て行く光28は、該ダイの上面から出て行く光26とは異なった量の蛍光体中を通過する。典型的には、ダイの側部から出て行く光は、ダイの上部から出て行く光と比較してより大きい割合が黄色に変換される。したがって、カップの壁から反射された光は波長が黄色に変えられ、これは該光源が白色の中心および黄色のハローを有する環状光源のように見える結果を招く。
【0013】
さらにその上、デバイスごとの光源の均一性は、担体物質が各カップ中に分注される精度と並んで担体中の蛍光体の濃度にも依存する。この点に関して、多数の光源を作製する過程の間に分注容器中の蛍光体が沈降する可能性があり、したがって多数の光源中に担体物質を分注する過程の全体にわたって担体中の蛍光体粒子の濃度が変わることがあることに注意しなければならない。
【0014】
ここで図2を参照すると、これは本発明の1の側面に従う光源の断面図である。光源30は、ダイ31の上面およびダイ31の側面の双方を通して光を放射するLEDを有するダイ31を含む。ダイ31は、ダイ31の底面の接点によって基板32に接合される。図を簡略化するために、ダイ31と基板との間の電気的接続部はこの図から省かれている。
【0015】
蛍光体の層33は、接着剤層36によってダイ31の上面に接合される。層33は、ダイ31によって放射された光の一部を、ダイ31によって放射された光とは異なるスペクトルを有する光に変換する。上記のように、スペクトルの青色領域の光を放射するダイおよび青色光を黄色光に変換する蛍光体を用いることによって、白色光源がつくり出されることができる。しかし、本発明はこれとは別のダイと蛍光体との組み合わせを用いて実施されることができる。以下にもっと詳細に説明されるように、層33は、層33をダイ31に接合する前に予め製作されることができる。層33は、担体中に懸濁された離散状蛍光体粒子を含んでいてもよく、または担体中に溶解された可溶性蛍光体から構成されてもよい。
【0016】
ダイ31の側面から出て行く光は、ダイ31によって生成された光に透明である物質の層34中に懸濁されている散乱粒子35の層によって散乱される。層34は、ダイ31の側面を取り囲み基板32と層33との間のダイ31に隣接した領域中の間隙を埋める散乱環を形成する。散乱環の厚さは、側面を通ってダイから出て行き表面38を通って外に出る光の量が層33の上面を通って光源から出て行く光に比べて無視できるように選択される。本発明の1の側面では、ダイ31の側面から出て行き層38を通って光源30から外に出る光の量は、ダイの側部から出て行き散乱環の側面38を通って散乱環から出て行く光の10%未満である。
【0017】
基板32の上面37は、基板32に向かって散乱されるいずれの光も層33に向け直す反射物質で覆われることができる。散乱粒子は、上で説明された従来の反射体を置き換える。ダイ31の側部から出て行き層33に向きを変えるように散乱される光を考えてみる。この光は、ダイ31の上面から放射される光と同じ厚さの蛍光体の中を通る。したがって、この光源は、上で説明された従来技術の光源よりも実質的に均一な外観を有する。加えて、この光源の横方向全体のサイズは、別途に反射体を用いる光源よりも有意に小さくされることができる。
【0018】
以下にもっと詳細に説明されるように、層33がダイ31に接合された後、層33と基板32との間に、散乱粒子が中に懸濁されている液状前駆体を導入することによって層34が作製されることができるように、層34の厚さhは設定されることができる。本発明のこの側面は、担体および散乱粒子が層33の下側の範囲内に限定されることを保証する。散乱層の幅は、その幅が最小幅よりも大きい限り決定的に重要であるということはない。この幅は、ダイ31の側面から出て行く光のほとんどが反射されることを保証するのに十分である必要がある。その上、この幅は、散乱粒子によって向きを変えられる光の波長よりも大きくなければならない。付加的な物質が存在している場合でも、これはこの光源の見かけのサイズおよび色を実質的に変えない。というのは、光のほとんどはこの付加的な物質に到達する前にすでに散乱されてしまっているからである。したがって、層33の端部近くに分注されなければならない物質の量は、厳密に制御される必要はない。
【0019】
散乱粒子の密度の何らかのばらつきは、光源の端部における見かけの直径および強度分布を変えることに留意しなければならない。しかし、光が貫通する蛍光体の厚さは散乱媒体に依存しないので光源の色は一定に保たれる。目は強度の小さい違いよりも色の違いに敏感であるから、端部における強度の小さい違いは一般に許容されることができる。
【0020】
本発明の1の側面に従う光源を製作する様式は図3〜6を参照するとより容易に理解されることができ、図3〜6は多数のかかる光源の製作を例示する。図3〜5は製作工程の様々な段階における基板41の一部の断面図である。図6図5に示された基板41の一部の上面図であり、図5図6に示された5−5線を貫通する断面図である。
【0021】
図3を参照すると、工程は多数のダイ、たとえばダイ42を基板41に接合することによって開始される。これらのダイは基板41の表面上の電気配線に接続され、ダイの側部および基板41と反対の側から光を発する。発光表面は、接着剤が硬化されたときにダイによって放射される光に透明である接着剤層45によって覆われる。
【0022】
蛍光体層は、担体基板44の背面に接合された離散的な蛍光体要素43を形成するように予め製作される。本発明の1の側面では、蛍光体要素は物質のシートとしてキャスト成形され、該シートは個々の蛍光体要素に分割され、それから基板44に接着されることができる。本発明の他の側面では、蛍光体を含有する液状前駆体物質が、基板44上の正しい位置に合わせられた個々の蛍光体要素を有するパターニングされた層として基板44に施与される。該前駆体は「印刷操作」、たとえばステンシル方法によって施与され、またはインクジェットプリンターに用いられているのと類似した機構を用いて分注されることができる。前駆体物質は次に硬化されて、上で説明された蛍光体要素をもたらす。
【0023】
担体基板44が基板41と正しく位置合わせされたときに一つの蛍光体要素が各一つのダイの上に位置を合わせられるように、蛍光体要素は位置を決められる。基板41と基板44とが互いに正しく位置合わせされた後、これら2の基板は、蛍光体要素が接着剤層と接触するように一緒に圧縮される。接着剤が次に硬化されて、各蛍光体要素と対応するダイとの間の接合がされる。接着剤が硬化された後、基板44は取り除かれて図4に示された光源を残す。
【0024】
これから図5および6を参照する。蛍光体要素がダイに接合された後、蛍光体要素の間の空間中に適切な前駆体液体を分注することによって、散乱層48が形成される。前駆体液体は散乱粒子を含んでおり、毛細管作用によって蛍光体要素と基板41との間の空間中に該液体が引き込まれるように選択された表面張力を有する。蛍光体要素の一対、たとえば図5および6に示された蛍光体要素45および46、の間に挿入される単一ノズル47によって、該液体は分注されることができる。あるいは、前駆体および散乱粒子懸濁物が、並行して操作される複数のノズルによって分注されることができる。
【0025】
蛍光体要素と基板41との間の空間中に前駆体液体が引き込まれるまで、該液体は液体状態のままでいなければならない。前駆体液体は、散乱粒子を懸濁状態に保つ透明媒体へと硬化する任意の物質であることができる。該媒体は、ダイによって放射される光に透明でなければならない。上で説明された、蛍光体層を反射カップ中に分注する間蛍光体粒子を懸濁状態に保つために用いられる組成物が、用いられることができる。かかる組成物は典型的には、粒子の沈降を遅くする様々な添加剤を含有する担体を包含する。たとえば、熱または紫外線光によって硬化される透明エポキシ樹脂に基づいた組成物が用いられることができる。シリコーンに基づいた組成物も用いられることができる。
【0026】
本発明の1の側面では、散乱粒子は、ダイによって放射される光の波長よりも大きい直径を有する酸化チタン粒子である。しかし、他の物質も用いられることができる。たとえば、粒子を懸濁するために用いられる媒体の屈折率と有意に異なる屈折率を有する透明粒子が用いられることができる。エポキシ中に懸濁されたガラス粒子が、たとえば用いられることができる。
【0027】
蛍光体要素は多数の方法によって構築されることができる。蛍光体要素は、上で説明された従来技術の方法で蛍光体層を構築するのに用いられたのと同じ物質から予めモールド成形されることができる。蛍光体要素は別途のモールド成形方法で作製されるので、均一な層を設けることに関して上で検討した問題点は実質的に低減される。上記のように、蛍光体要素は蛍光体物質を担体上に印刷することによって作製されることもできる。
【0028】
蛍光体要素は、ダイの上面から出て行くまたは散乱粒子から出て行く光が蛍光体物質の同じ厚さを貫通するように、水平方向における蛍光体粒子の分布が一定であることを要求する。しかし、従来技術のデバイスと異なり、蛍光体要素中の蛍光体粒子の垂直分布は実質的に不均一であってもよい。というのは、蛍光体によって変換される光の割合は、該層中の蛍光体粒子の分布に比較的依存しないからである。したがって、蛍光体要素を用意するためにモールド成形方法が用いられるならば、該モールド成形方法は、粒子を懸濁するために用いられる担体中の粒子の沈降時間と比較して短い硬化時間を与える必要はない。同様に、ステンシル方法または印刷方法が担体上に蛍光体を分注するために用いられるならば、変換される光の割合は、層内の蛍光体の垂直分布にかかわりなく、施与される蛍光体の量によって主に決定される。最後に、蛍光体要素を付着された担体の調製は実装工程から分離されることができ、したがって該工程は別途に最適化されることができる。
【0029】
本発明の様々な側面に従う光源の上記の実施例は、個々の蛍光体要素が担体シート上に用意され次にダイに移される製作手順を用いる。ある適用例では、蛍光体要素と完成光源を取り囲む空気との境界における光の内部屈折によって蛍光体層中に捕捉される光の量を低減するために、付加的な光学要素を蛍光体層の上部に組み込むことが有益である。これらの光学要素は曲面状の表面を要求し、これは個々の蛍光体要素を担体に接合する工程を複雑にする。
【0030】
本発明の1の側面では、光学要素を適所に有する予め製作された蛍光体要素のシートをダイ担体上のダイに接合することによって、これらの問題は実質的に低減される。散乱物質が次に、上で説明されたダイと蛍光体要素との間の空間中に導入される。最後に、ダイおよびダイ担体の単片化と同時に蛍光体シートが単片化されて、完成されたLEDが得られる。
【0031】
完成された光源のそれぞれの上にドームをモールド成形することによっても、光学要素は製作されたことができることが注記されなければならない。ここで図7を参照すると、図7は、本発明のこの側面を用いる、二つの光源を有する基板71の一部の断面図である。各光源は、各光源中の蛍光体要素73の上にモールド成形されたドーム72を含む。ドーム72の直径は、蛍光体要素73からドーム72に入る光がドーム72の臨界角よりも小さい角度でドーム72の表面に突き当たるように選択され、したがって、この光は空気/ドーム界面による内部反射によってドーム72中に捕捉されることなくドーム72から抜け出る。光源のシート全体のためのドームが、個々の光源を単片化する前に単一のモールド成形操作でモールド成形されて、製作コストが低減されることができる。
【0032】
上記の実施例は、透明媒体中に蛍光体粒子を懸濁することによって製作された蛍光体変換層を用いる。しかし、蛍光体要素は他の製作手順を用いて構築されることもできる。たとえば、蛍光特性を有するように好適にドープされた単結晶半導体物質から構築された蛍光体変換層が、蛍光体変換層として用いられることができる。
【0033】
単結晶蛍光体はバルク結晶成長法、たとえばチョクラルスキー(Czochralsky)法またはエピタキシャル法、たとえば液相もしくは気相エピタキシーを用いて成長させることができる。たとえば、1989年10月10日に発行された米国特許第4,873,062号は、この方法によって単結晶を成長させる装置および方法を記載している。この方法は半導体物質業界では周知であるので、ここでは詳細に説明しない。この説明の目的のためには、溶融蛍光体物質を含むるつぼの中に単一の種を吊り下げることによって単結晶蛍光体は成長されることを記せば十分である。結晶が成長すると、バルク結晶は溶融物質から引き上げられる。バルク結晶は次に薄層にスライスされ、本発明の実施に適したより小さい片へと切り出されまたは分割される。単結晶蛍光体層の厚さは特定の用途に依存する。0.05〜5mm、より好ましくは0.25mmの厚さが数多くの用途に用いられることができる。
【0034】
単結晶蛍光体層は透明であるので、蛍光体粒子境界からの散乱によって光の透過が妨げられることはない。光変換蛍光体層は均一の厚さを有するので、色変換効果は表面全体にわたって同じである。
【0035】
結晶物質の選択は特定の用途に依存する。白色LEDの場合、該LEDは第一の帯の光を発し、光変換層はその光の一部を相補的な帯の光に変換する。たとえば、白色LEDのうちでも該LEDが青色光を発するものは、セリウムによって活性化されたイットリウムアルミニウムガーネット、YAG:Ceを含む好適な単結晶蛍光体を用いることができ、これは青色を黄色に変換する。同様に、シアン(青緑色)を発するLEDは赤色を発する単結晶蛍光体と組み合わされて、白色に見える光源を得ることができる。
【0036】
複数の蛍光体層も用いられることができることが記されなければならない。たとえば、紫外線放射LEDが用いられるならば、観察者に白色であると知覚される光源を提供するためには少なくとも2の蛍光体が必要である。この場合、該蛍光体層は、各蛍光体につき一つの、二つの別の蛍光体層を含むことができる。各蛍光体層は紫外線光の一部を変換する。最大効率をもたらすために、蛍光体の組み合わせによって全ての紫外線光が変換されなければならない。
【0037】
観察者に特殊な色の光であると知覚される光を生み出すために、異なった色の複数のLEDに基づいた光源も用いられる。たとえば、各LEDが異なった色、たとえば赤色、緑色および青色の光を生み出す3のLEDに基づいた光源がしばしば用いられて、多種多様の色から選択されることができる特殊な色の光であると知覚される光を与えるようにプログラムされることができる光源を提供する。3の構成要素色光源の強度割合を変えることによって、この光源の知覚される色は変えられる。より大きい数の異なった色に基づいた光源も知られている。かかる光源は、個々のLEDの強度を変えることによって生み出されることができる、より広い領域の色を有する。ここで図8および9を参照すると、これらの図は本発明のこの側面を用いる光源を例示する。図9は光源90の上面図であり、図8は、図9に示された8−8線を貫通する光源90の断面図である。光源90は82〜85に示された4のダイを含む。各ダイは、異なった蛍光体を用いる蛍光体要素によって覆われる。例となる蛍光体要素が図中に92および93と標識される。これらの4のダイは、上で説明したのと類似した様式で、共通のドーム95によって覆われる。
【0038】
所望の色の「点」光源の外観を与えるために、LEDは互いに可能な限り近く置かれなければならない。本発明はかかる光源を製作することにも十分に適合している。というのは、各ダイが別々の反射カップ中にある光源のダイよりも、本発明のダイは互いにより近く置かれることができるからである。
【0039】
かかる光源では、様々な蛍光体が用いられて、光源のシート中の隣接するダイを覆う蛍光体要素が構築される。担体上への蛍光体の印刷またはステンシル方法に基づいた製作技術は、このタイプの光源に十分に適している。光源が製作された後、3または4のダイが対応する蛍光体要素とともに各光源中に納められるように、シートは分割される。
【0040】
LEDに基づいた光源が直面する他の問題は、個々のLEDの比較的低い光出力である。現在のところ、単一のダイはせいぜい数ワットで作用することができる。したがって、従来の白熱灯光源を代替することになる光源を提供するためには、光源が一定の色の光源であるときでさえも、多数のダイが合体されて所望の強度を与えなければならない。この場合も、本発明は、十分にコンパクトで点光源であるように見える多数ダイ光源を製作することによく適合している。ここで図10および11を参照すると、これらの図は本発明のこの側面を用いる光源100を例示する。図11は光源100の上面図であり、図10は、図11に示された10−10線を貫通する光源100の断面図である。光源100は、共通の蛍光体要素102を共有する四つのダイを用いている。例となるダイが図中の103および104に標識される。ダイおよび蛍光体要素はドーム105内に封入されて、光抽出効率の増加が得られる。ダイの側部から出て行く光の向きを変える散乱媒体が111〜114に示された場所に導入され、毛細管作用によってダイ間の領域に移動する。したがって、ダイの側部を通って出て行く光を失うことなく、ダイは互いに近く置かれることができる。
【0041】
上記のように、蛍光体要素は好ましくは別途の方法、たとえばトランスファー成形、射出成形、印刷またはキャスト成形を用いて製作される。本発明の1の側面では、蛍光体は透明媒体、たとえばエポキシ、シリコーン、ポリカーボネート、アクリル、ポリウレタン、ポリプロピレンまたは類似したプラスチックもしくはポリマーと混合され、そして次にモールド成形、キャスト成形、印刷または他の適当な方法によって所望の形状に成形される。低融点の無機ガラスも透明媒体として用いられることができる。
【0042】
蛍光体は好ましくは散乱の問題を起こさない物質である。透明媒体中に懸濁された無機蛍光体の粒子を用いる光源中の光の散乱を最小限にするために、該粒子のサイズは好ましくは、ダイ上のLEDによって放射される光の波長以下であるように選択される。あるいは、透明媒体中に可溶性である蛍光物質が用いられることができる。たとえば、蛍光染料のような無機蛍光物質が用いられることができる。
【0043】
粒子の表面からの散乱も、該粒子が中に懸濁される透明媒体の適切な選択によって低減されることができる。特に、蛍光体物質の屈折率とより近く一致する屈折率を有する物質が用いられることができ、それによって光散乱が低減される。たとえば、低融点ガラスがキャスト成形物質として用いられて、蛍光体粒子と該キャスト成形物質との間の屈折率の差が低減されることができる。
【0044】
本発明の上記の実施例は、観察者に「白色」であると知覚される光を発する光源に関するものであった。しかし、一次光源によって放射された光の一部を蛍光体を用いて変換することによって作用する他の光源を構築するために、本発明は用いられることができる。
【0045】
本発明に従う光源の上記の実施例は、LEDによって生成された光を異なる波長の光に変換するために蛍光体を用いる。しかし、他の形の蛍光物質が用いられることもできる。一般に、LEDによって生成された波長の光を所望の波長の光に変換する任意の物質が用いられることができる。
【0046】
本発明に従う光源の上記の実施例は、様々な成分を透明であるとして言及している。本発明の目的のためには、媒体が光源中のLEDによって生成された光の90パーセント超を伝達するならば、その媒体は透明であると定義される。
【0047】
ここまでの記載および添付図面から本発明への様々な変更が当業者には明らかになるだろう。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
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