特許第6010589号(P6010589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010589
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20161006BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20161006BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20161006BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B60C11/03 100B
   B60C5/00 H
   B60C11/12 B
   B60C11/13 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-161684(P2014-161684)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-37175(P2016-37175A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】末野 順也
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−101758(JP,A)
【文献】 特開2013−052872(JP,A)
【文献】 特開2005−053311(JP,A)
【文献】 特開2013−112061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 5/00
B60C 11/12
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有するトレッド部を具えた空気入りタイヤであって、
前記トレッド部に、
最も外側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる外側ショルダー主溝、
最も内側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる内側ショルダー主溝、
前記外側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間の位置をタイヤ周方向に連続してのびる外側センター主溝、及び、
前記内側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間の位置をタイヤ周方向に連続してのびる内側センター主溝が設けられることにより、
前記外側ショルダー主溝と前記外側センター主溝とで区分された外側ミドル陸部、
前記外側センター主溝と前記内側センター主溝とで区分されたセンター陸部、及び
前記内側センター主溝と前記内側ショルダー主溝とで区分された内側ミドル陸部が形成され、
前記内側ミドル陸部は、前記内側ショルダー主溝と前記内側センター主溝とを継ぎ、かつタイヤ軸方向に対し20〜30度の角度で傾斜する複数本の内側ミドル横溝が設けられ、
前記外側ミドル陸部は、前記外側ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側にのび前記外側ミドル陸部内で終端する外側ミドルラグ溝と、前記外側ミドルラグ溝の内端と前記外側センター主溝とを継ぐ外側ミドルサイプとが設けられ、
前記外側ミドルラグ溝及び前記外側ミドルサイプは、タイヤ軸方向に対し20〜30度の角度で傾斜し、
前記センター陸部は、前記内側センター主溝から外側トレッド端側にのびかつ前記センター陸部内で終端する内側センターラグ溝と、前記外側センター主溝から内側トレッド端側にのびかつ前記センター陸部内で終端する外側センターラグ溝とが設けられ
前記内側ミドル陸部は、複数本の前記内側ミドル横溝によって内側ミドルブロックがタイヤ周方向に並ぶ内側ミドルブロック列であり、
前記内側ミドルブロックは、前記内側センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記内側ミドルブロック内で終端する内側ミドルサイプが設けられることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記内側ミドル横溝と前記外側ミドルサイプとは、同じ向きに傾斜している請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側ミドル横溝の合計本数は、前記外側ミドルサイプの合計本数よりも小である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記内側センターラグ溝及び前記外側センターラグ溝の溝深さは、5mm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記内側センターラグ溝と前記外側センターラグ溝とは、同じ向きに傾斜している請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェット性能と操縦安定性能とをバランス良く向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、優れたウェット性能及び操縦安定性能を具えた空気入りタイヤが望まれている。空気入りタイヤのウェット性能を向上させるために、例えば、そのトレッド部に大きな溝容積の主溝や横溝を設けることが提案されている。
【0003】
しかしながら、上述のような空気入りタイヤは、トレッド部の剛性が小さくなり、操縦安定性能が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−100020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、内側ミドル陸部、外側ミドル陸部、及び、センター陸部に設けられる溝やサイプを改善することを基本として、ウェット性能と操縦安定性能とをバランス良く向上し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有するトレッド部を具えた空気入りタイヤであって、前記トレッド部に、最も外側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる外側ショルダー主溝、最も内側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる内側ショルダー主溝、前記外側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間の位置をタイヤ周方向に連続してのびる外側センター主溝、及び、前記内側ショルダー主溝とタイヤ赤道との間の位置をタイヤ周方向に連続してのびる内側センター主溝が設けられることにより、前記外側ショルダー主溝と前記外側センター主溝とで区分された外側ミドル陸部、前記外側センター主溝と前記内側センター主溝とで区分されたセンター陸部、及び前記内側センター主溝と前記内側ショルダー主溝とで区分された内側ミドル陸部が形成され、前記内側ミドル陸部は、前記内側ショルダー主溝と前記内側センター主溝とを継ぎ、かつタイヤ軸方向に対し20〜30度の角度で傾斜する複数本の内側ミドル横溝が設けられ、前記外側ミドル陸部は、前記外側ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側にのび前記外側ミドル陸部内で終端する外側ミドルラグ溝と、前記外側ミドルラグ溝の内端と前記外側センター主溝とを継ぐ外側ミドルサイプとが設けられ、前記外側ミドルラグ溝及び前記外側ミドルサイプは、タイヤ周方向に対し20〜30度の角度で傾斜し、前記センター陸部は、前記内側センター主溝から外側トレッド端側にのびかつ前記センター陸部内で終端する内側センターラグ溝と、前記外側センター主溝から内側トレッド端側にのびかつ前記センター陸部内で終端する外側センターラグ溝とが設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記空気入りタイヤは、前記内側ミドル横溝と前記外側ミドルサイプとは、同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記空気入りタイヤは、前記内側ミドル横溝の合計本数が、前記外側ミドルサイプの合計本数よりも小であるのが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記空気入りタイヤは、前記内側センターラグ溝及び前記外側センターラグ溝の溝深さが、5mm以下であるのが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記空気入りタイヤは、前記内側センターラグ溝と前記外側センターラグ溝とは、同じ向きに傾斜しているのが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記空気入りタイヤは、前記内側ミドル陸部が、複数本の前記内側ミドル横溝によって内側ミドルブロックがタイヤ周方向に並ぶ内側ミドルブロック列であり、前記内側ミドルブロックは、前記内側センター主溝からタイヤ軸方向外側にのびかつ前記内側ミドルブロック内で終端する内側ミドルサイプが設けられるのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空気入りタイヤでは、内側ミドル陸部には、内側ショルダー主溝と内側センター主溝とを継ぎ、かつタイヤ軸方向に対し20〜30度の角度で傾斜する複数本の内側ミドル横溝が設けられている。このような内側ミドル横溝は、内側ミドル陸部のタイヤ軸方向の剛性を大きく確保するとともに、タイヤの回転を利用して溝内の水をスムーズに主溝に排出し得る。従って、ウェット性能と操縦安定性能とがバランス良く向上する。
【0013】
外側ミドル陸部には、外側ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側にのび外側ミドル陸部内で終端する外側ミドルラグ溝と、外側ミドルラグ溝の内端と外側センター主溝とを継ぐ外側ミドルサイプとが設けられている。外側ミドルラグ溝及び外側ミドルサイプは、タイヤ周方向に対し20〜30度の角度で傾斜している。このような外側ミドルラグ溝及び外側ミドルサイプは、外側ミドル陸部8の剛性の低下を抑制する。このため、旋回時に大きな横力の作用する外側トレッド端側の外側ミドル陸部と、内側ミドル横溝の設けられた内側ミドル陸部との剛性の差が小さくなり、左右いずれにもスムーズに旋回することができ、操縦安定性能がさらに向上する。また、外側ミドルサイプは、吸水効果とエッジ効果とを発揮して、ウェット性能を向上する。
【0014】
センター陸部には、内側センター主溝から外側トレッド端側にのびる内側センターラグ溝と、外側センター主溝から内側トレッド端側にのびる外側センターラグ溝とが設けられている。これにより、排水し難いセンター陸部と路面との間の水膜を効果的に排出することができる。また、内側センターラグ溝及び外側センターラグ溝は、センター陸部のタイヤ軸方向の両側の剛性を均一化する。このため、左右両方向にスムーズに旋回することができる。従って、本発明の空気入りタイヤは、ウェット性能と操縦安定性能とが、一層、バランス良く向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のトレッド部の両側のミドル陸部及びセンター陸部の拡大図である。
図3】本発明の他の実施形態のトレッド部の展開図である。
図4】本発明のさらに他の実施形態のトレッド部の展開図である。
図5】比較例の実施形態を示すトレッド部の展開図である。
図6】比較例の他の実施形態を示すトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ1のトレッド部2の展開図が示される。本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に利用される。
【0017】
図1に示されるように、トレッド部2は、車両への装着の向きが指定された非対称のトレッドパターンを具える。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiとを有する。車両への装着の向きは、例えばサイドウォール部(図示せず)に、文字等で表示される。
【0018】
前記各「トレッド端」To、Tiは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、各トレッド端To、Ti間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0019】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0020】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、180kPaである。
【0021】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。タイヤが乗用車用の場合、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0022】
タイヤ1のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる主溝が設けられている。主溝は、外側ショルダー主溝3、内側ショルダー主溝4、外側センター主溝5、及び、内側センター主溝6を含んでいる。外側ショルダー主溝3は、最も外側トレッド端To側に設けられている。内側ショルダー主溝4は、最も内側トレッド端Ti側に設けられている。外側センター主溝5は、外側ショルダー主溝3とタイヤ赤道Cとの間の位置に設けられている。内側センター主溝6は、内側ショルダー主溝4とタイヤ赤道Cとの間の位置に設けられている。
【0023】
各主溝3乃至6は、本実施形態では、タイヤ周方向に沿った直線状である。このような主溝3乃至6は、各主溝3乃至6近傍の陸部剛性を高め、制動時の車両のふらつきや片流れなどの不安定な挙動を抑制し、操縦安定性能を向上する。また、主溝3乃至6は、溝内の水をスムーズに回転方向の後着側に排出するため、ウェット性能を向上する。
【0024】
外側ショルダー主溝3及び内側ショルダー主溝4の溝幅W1及びW2は、外側センター主溝5及び内側センター主溝6の溝幅W3及びW4よりも小さく規定することが望ましい。即ち、路面と陸部の踏面との間の水膜が排出され難いタイヤ赤道C側では、外側センター主溝5及び内側センター主溝6の溝幅W3及びW4を大きく確保して、ウェット性能を向上させる。大きな横力の作用するタイヤ軸方向両側では、外側ショルダー主溝3及び内側ショルダー主溝4の溝幅W1及びW2を小さく確保して、各主溝3、4の近傍の陸部の剛性を高めて、操縦安定性能を向上させる。
【0025】
外側ショルダー主溝3の溝幅W1は、内側ショルダー主溝4の溝幅W2よりも小さいのが望ましい。即ち、車両のアライメントや路面のカント(傾斜)により、タイヤ1の接地面のタイヤ周方向の長さは、外側トレッド端To側が内側トレッド端Ti側よりも小さくなる。このため、外側ショルダー主溝3は、内側ショルダー主溝4に比して、その溝内のノイズが外に排出され易い。従って、外側ショルダー主溝3の溝幅W1を内側ショルダー主溝4の溝幅W2よりも小さくして、騒音性能を確保するのが望ましい。外側ショルダー主溝3の溝幅W1は、好ましくは、トレッド接地幅TWの2%〜6%である。内側ショルダー主溝4の溝幅W2は、好ましくは、トレッド接地幅TWの4%〜8%である。外側センター主溝5の溝幅W3及び内側センター主溝6の溝幅W4は、好ましくは、トレッド接地幅TWの10%〜18%である。
【0026】
上述の作用を効果的に発揮させるため、外側ショルダー主溝3及び内側ショルダー主溝4の溝深さ(図示省略)は、好ましくは、外側センター主溝5及び内側センター主溝6の溝深さ(図示省略)よりも小である。主溝3乃至6の溝深さは、好ましくは、7.0〜9.5mmである。
【0027】
トレッド部2は、各主溝3乃至6によって、内側ミドル陸部7、外側ミドル陸部8、センター陸部9、内側ショルダー陸部10、及び、外側ショルダー陸部11が形成されている。内側ミドル陸部7は、内側センター主溝6と内側ショルダー主溝4とで区分されている。外側ミドル陸部8は、外側ショルダー主溝3と外側センター主溝5とで区分されている。センター陸部9は、外側センター主溝5と内側センター主溝6とで区分されている。内側ショルダー陸部10は、内側トレッド端Tiと内側ショルダー主溝4とで区分されている。外側ショルダー陸部11は、外側トレッド端Toと外側ショルダー主溝3とで区分されている。
【0028】
図2は、内側ミドル陸部7、外側ミドル陸部8、及びセンター陸部9の拡大図である。図2に示されるように、内側ミドル陸部7は、内側ショルダー主溝4と内側センター主溝6とを継ぐ複数本の内側ミドル横溝12が設けられている。これにより、内側ミドル陸部7は、内側ミドルブロック7Bがタイヤ周方向に並ぶ内側ミドルブロック列7Rとして形成されている。
【0029】
内側ミドル横溝12は、タイヤ軸方向に対し20〜30度の角度θ1で傾斜している。このような内側ミドル横溝12は、内側ミドル陸部7のタイヤ軸方向の剛性を大きく確保するとともに、タイヤの回転を利用して溝内の水をスムーズに主溝に排出し得る。従って、ウェット性能と操縦安定性能とがバランス良く向上する。
【0030】
内側ミドル横溝12は、内側トレッド端Ti側に向かって溝幅W5が漸増している。このような内側ミドル横溝12は、内側ミドル陸部7のタイヤ軸方向外側への排水を容易にして、ウェット性能を向上する。ウェット性能と操縦安定性能とをバランス良く向上するため、内側ミドル横溝12の最大溝幅W5aは、好ましくは、内側ミドル横溝12の最小溝幅W5bの1.5〜2.5倍である。内側ミドル横溝12の平均の溝幅W5は、好ましくは、内側ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅Waの10%〜20%である。本明細書では、横溝及び後述するラグ溝の溝幅は、各溝の溝中心線に対する直角方向の溝縁間の距離である。
【0031】
同様の作用を発揮させる観点より、内側ミドル横溝12の溝深さ(図示省略)は、好ましくは、3.0〜7.0mmである。
【0032】
内側ミドルブロック7Bは、1本の内側ミドルサイプ13が設けられている。内側ミドルサイプ13は、吸水効果とエッジ効果を発揮して、ウェット性能を向上する。内側ミドルサイプ13は、本実施形態では、内側センター主溝6からタイヤ軸方向外側にのびかつ内側ミドルブロック7B内で終端するセミクローズドタイプである。即ち、内側ミドル横溝12の溝幅W5が大きくなる内側ミドル陸部7のタイヤ軸方向外側には、内側ミドルサイプ13が設けられていない。このため、内側ミドルサイプ13と内側ミドル横溝12とが協働して、内側ミドル陸部7の剛性を大きく維持し、操縦安定性能を確保している。
【0033】
内側ミドルサイプ13のタイヤ軸方向の長さL1は、好ましくは、内側ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅Waの60%〜75%である。内側ミドルサイプ13の長さL1が内側ミドル陸部7の幅Waの60%未満の場合、吸水効果が発揮されず、ウェット性能が悪化するおそれがある。内側ミドルサイプ13の長さL1が内側ミドル陸部7の幅Waの75%を超える場合、内側ミドル陸部7の剛性が小さくなり、操縦安定性能が悪化するおそれがある。
【0034】
内側ミドルサイプ13は、内側ミドル横溝12と同じ向きに傾斜している。これにより、内側ミドルブロック7Bの剛性が高く確保される。上述の作用を効果的に発揮させるため、内側ミドルサイプ13のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、好ましくは、20〜30度である。
【0035】
外側ミドル陸部8は、外側ショルダー主溝3からタイヤ軸方向内側にのび外側ミドル陸部8内で終端する外側ミドルラグ溝14と、外側ミドルラグ溝14の内端14iと外側センター主溝5とを継ぐ外側ミドルサイプ15とが設けられている。このような外側ミドルラグ溝14及び外側ミドルサイプ15は、外側ミドル陸部8の剛性の低下を抑制する。このため、旋回時に大きな横力の作用する外側トレッド端To側の外側ミドル陸部8と、内側ミドル横溝12の設けられた内側ミドル陸部7との剛性の差が小さくなり、左右いずれにもスムーズに旋回することができ、操縦安定性能がさらに向上する。
【0036】
外側ミドルラグ溝14のタイヤ軸方向の角度θ3及び外側ミドルサイプ15のタイヤ軸方向の角度θ4は、20〜30度である。外側ミドルラグ溝14の角度θ3及び外側ミドルサイプ15の角度θ4が20度未満の場合、外側ミドル陸部8の踏面の水膜をタイヤの回転を利用して、スムーズに回転方向の後着側へ排出できない。外側ミドルラグ溝14の角度θ3及び外側ミドルサイプ15の角度θ4が30度を超える場合、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の剛性が小さくなり、操縦安定性能が悪化する。
【0037】
外側ミドルラグ溝14及び外側ミドルサイプ15は、本実施形態では、同じ向きに傾斜している。このため、外側ミドル陸部8の剛性が大きく維持されて、操縦安定性能が高く確保される。
【0038】
外側ミドルラグ溝14の幅W6は、好ましくは、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の幅Wbの10%〜20%である。このような外側ミドルラグ溝14は、外側ミドル陸部8の剛性を大きく確保する。同様の観点より、外側ミドルラグ溝14のタイヤ軸方向の長さL2は、好ましくは、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の幅Wbの5%〜18%である。
【0039】
特に限定されるものではないが、外側ミドルラグ溝14の溝深さ(図示省略)は、好ましくは、5.5〜7.0mmである。
【0040】
外側ミドルサイプ15は、内側ミドル横溝12と同じ向きに傾斜している。これにより、外側ミドルサイプ15内の水及び内側ミドル横溝12内の水は、旋回走行時の横力によって、同じ向きにスムーズに排出されるため、ウェット性能が向上する。
【0041】
外側ミドルサイプ15の合計本数は、内側ミドル横溝12の合計本数よりも大きい。これにより、内側ミドル陸部7よりも大きな横力の作用する外側ミドル陸部8において、大きな吸水効果とエッジ効果とを発揮することができるため、ウェット性能が向上する。本実施形態では、外側ミドルサイプ15の合計本数は、内側ミドル横溝12の合計本数の2倍である。
【0042】
センター陸部9は、内側センター主溝6から外側トレッド端To側にのびセンター陸部9内で終端する内側センターラグ溝16と、外側センター主溝5から内側トレッド端Ti側にのびセンター陸部9内で終端する外側センターラグ溝17とが設けられている。これにより、排水し難いセンター陸部9と路面との間の水膜を効果的に排出することができる。また、内側センターラグ溝16及び外側センターラグ溝17は、センター陸部9のタイヤ軸方向の両側の剛性を均一化する。このため、左右いずれにも、さらにスムーズに旋回することができる。
【0043】
内側センターラグ溝16及び外側センターラグ溝17は、同じ向きに傾斜している。これにより、センター陸部9のタイヤ軸方向の剛性が、タイヤ周方向に亘って均一化されるため、操縦安定性能が向上する。
【0044】
内側センターラグ溝16及び外側センターラグ溝17のタイヤ軸方向に対する角度θ5、θ6は、内側ミドル横溝12の角度θ1及び外側ミドルサイプ15の角度θ4よりも大きいのが望ましい。このような各センターラグ溝16、17は、直進走行時に、スムーズに溝内の水を排出する。
【0045】
内側センターラグ溝16及び外側センターラグ溝17のタイヤ軸方向に対する角度θ5、θ6は、好ましくは、40〜50度である。各センターラグ溝16、17の角度θ5、θ6が40度未満の場合、タイヤ1の回転を利用した各ラグ溝16、17内の水がスムーズに排出されないおそれがある。各センターラグ溝16、17の角度θ5、θ6が50度を超える場合、各センターラグ溝16、17と各主溝5、6との間のセンター陸部9の剛性が小さくなり、操縦安定性能が悪化するおそれがある。
【0046】
内側センターラグ溝16及び外側センターラグ溝17は、互いにタイヤ周方向に位置ずれしている。これにより、センター陸部9のタイヤ軸方向の剛性の低下が抑制されるため、操縦安定性能が確保される。
【0047】
内側センターラグ溝16のタイヤ軸方向の最大長さL3と外側センターラグ溝17のタイヤ軸方向の最大長さL4とは、同じであるのが望ましい。これにより、センター陸部9のタイヤ軸方向の両側の剛性がより均一化される。
【0048】
内側センターラグ溝16の最大長さL3は、好ましくは、センター陸部9のタイヤ軸方向の幅Wdの20%〜40%である。内側センターラグ溝16の最大長さL3がセンター陸部9の幅Wdの20%未満の場合、センター陸部9の踏面と路面との間の水膜を効果的に排出することができないおそれがある。内側センターラグ溝16の最大長さL3がセンター陸部9の幅Wdの40%を超える場合、センター陸部9の剛性が過度に小さくなり、操縦安定性能が悪化するおそれがある。同様の観点より、外側センターラグ溝17の最大長さL4も、好ましくは、センター陸部9のタイヤ軸方向の幅Wdの20%〜40%である。
【0049】
内側センターラグ溝16及び外側センターラグ溝17の溝深さ(図示省略)は、好ましくは、5mm以下である。このような各センターラグ溝16、17は、センター陸部9のタイヤ軸方向の両側の剛性を高く維持して、操縦安定性能を確保する。
【0050】
同様の観点より、内側センターラグ溝16の溝幅W7及び外側センターラグ溝17の溝幅W8は、センター陸部9のタイヤ軸方向の幅Wdの10%〜20%である。
【0051】
図1に示されるように、内側ショルダー陸部10は、内側トレッド端Tiと内側ショルダー主溝4とを継ぐ複数本の内側ショルダー横溝20が設けられている。これにより、内側ショルダー陸部10は、内側ショルダーブロック10Bがタイヤ周方向に並ぶ内側ショルダーブロック列10Rとして形成される。
【0052】
内側ショルダー横溝20は、タイヤ軸方向に対して傾斜する傾斜部20Aと、傾斜部20Aよりもタイヤ軸方向外側に設けられタイヤ軸方向に沿ってのびる軸方向部20Bとを含んでいる。傾斜部20Aは、直進走行時の溝内の水の抵抗を小さくしかつ内側ショルダー陸部10のタイヤ軸方向の剛性を大きく確保する。このため、傾斜部20Aのタイヤ軸方向に対する角度θ7は、好ましくは、25度以下である。軸方向部20Bは、最も大きな横力が作用する内側ショルダー陸部10の内側トレッド端Ti近傍の横剛性を大きく確保する。
【0053】
本実施形態の内側ショルダーブロック10Bは、内側トレッド端Tiと内側ショルダー主溝4とを継ぐ1本の内側ショルダーサイプ21が設けられている。内側ショルダーサイプ21は、内側ショルダー陸部10の剛性を大きく確保するため、内側ショルダー横溝20と平行にのびている。内側ショルダーサイプ21は、本実施形態では、内側ショルダーブロック10Bのタイヤ周方向の中間位置に設けられている。
【0054】
外側ショルダー陸部11は、外側トレッド端Toと外側ショルダー主溝3とを継ぐ複数本の外側ショルダー横溝22が設けられている。これにより、外側ショルダー陸部11は、外側ショルダーブロック11Bがタイヤ周方向に並ぶ外側ショルダーブロック列11Rとして形成される。
【0055】
外側ショルダー横溝22は、内側ショルダー横溝20と同様に、傾斜部22Aと軸方向部22Bとを含んでいる。これにより、ウェット性能と操縦安定性能とがさらにバランス良く向上する。傾斜部22Aのタイヤ軸方向に対する角度θ8は、好ましくは、25度以下である。
【0056】
外側ショルダーブロック11Bは、外側ショルダーラグ溝23と、第1縦溝24と、第2縦溝25とが設けられている。外側ショルダーラグ溝23は、外側トレッド端Toからタイヤ軸方向内側にのび外側ショルダーブロック11B内で終端している。第1縦溝24は、一方の外側ショルダー横溝22からタイヤ周方向に隣り合う他方の外側ショルダー横溝22へ向かってのびかつ外側ショルダーラグ溝23の内端側に連通している。第2縦溝25は、他方の外側ショルダー横溝22から一方の外側ショルダー横溝22へ向かってのびかつ外側ショルダーブロック11B内で終端している。
【0057】
外側ショルダーブロック11Bは、外側トレッド端Toからタイヤ軸方向内側にのび第1縦溝24に連通することなく外側ショルダーブロック11B内で終端する第1外側ショルダーサイプ26と、外側トレッド端Toからタイヤ軸方向内側にのび第2縦溝25に連通することなく外側ショルダーブロック11B内で終端する第2外側ショルダーサイプ27とが設けられている。第1外側ショルダーサイプ26と第2外側ショルダーサイプ27とは、外側ショルダーラグ溝23を介して離間している。第1外側ショルダーサイプ26及び第2外側ショルダーサイプ27は、外側ショルダー横溝22と平行にのびている。
【0058】
このような内側ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅Wa、外側ミドル陸部8の幅Wb、センター陸部9の幅Wd、内側ショルダー陸部10の幅Wf、及び、外側ショルダー陸部11の幅Wgは、下記式を充足するのが望ましい。なお、TWは、トレッド接地幅である。
Wd<Wa、Wb<Wf、Wg
Wd/TW=8%〜14%
Wa/TW=12%〜16%
Wb/TW=12%〜16%
Wf/TW=15%〜20%
Wg/TW=15%〜20%
【0059】
これにより、各陸部7乃至11の幅が適正化され、操縦安定性能が向上する。とりわけ、タイヤに操舵角をつけることで、トレッド面から最も大きな横力を発生させる内側ミドル陸部7の幅Wa及び外側ミドル陸部8の幅Wbが、従来に比して大きく確保されているため、効果的に操縦安定性能が向上する。
【0060】
以上、本発明の実施形態について、詳述したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
【実施例】
【0061】
図1の基本パターンを有するサイズ205/55R16の乗用車用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、操縦安定性能、及びウェット性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
トレッド接地幅TW:158mm
外側ショルダー主溝の溝深さ:7.8mm
内側ショルダー主溝の溝深さ:7.8mm
外側センター主溝の溝深さ:8.0mm
内側センター主溝の溝深さ:8.0mm
内側ミドル横溝の溝深さ:3.4〜6.3mm
外側ミドルラグ溝の溝深さ:6.3mm
【0062】
<操縦安定性能(コーナリングフォース)>
各試供タイヤを、下記条件下で、室内試験器を用いてコーナリングフォースを測定してコーナリングパワーを求めた。結果は、実施例1の値を100とする指数によって表示されている。数値が大きいほどコーナリングパワーが高く、良好である。コーナリングパワーは、スリップ角+1゜の時のコーナリングフォース値CF(+1゜)から、スリップ角−1゜の時のコーナリングフォース値CF(−1゜)を引いた値を2で割って得た次式で示すスリップ角1度当たりのコーナリングフォースである。
{CF(+1゜)−CF(−1゜)}/2
リム:15×6JJ
内圧:200kPa
荷重:4.83kN
【0063】
<ウェット性能>
各試供タイヤを、排気量2000ccの前輪駆動車の全輪に装着して、水深6mm、長さ20mの水たまりを設けた半径100mのアスファルト路面のコース上を、速度を段階的に増加させながら車両を進入させ、50〜80km/hの速度における前輪の平均横加速度(横G)が算出された。結果は、実施例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きいほど良好である。
テストの結果などが表1に示される。
【0064】
【表1】
【0065】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、ウェット性能及び操縦安定性能がバランス良く向上していることが確認できる。また、タイヤサイズを変化させて同じテストを行ったが、このテスト結果と同じ傾向が示された。
【符号の説明】
【0066】
2 トレッド部
3 外側ショルダー主溝
4 内側ショルダー主溝
5 外側センター主溝
6 内側センター主溝
7 内側ミドル陸部
8 外側ミドル陸部
9 センター陸部
12 内側ミドル横溝
14 外側ミドルラグ溝
15 外側ミドルサイプ
16 内側センターラグ溝
17 外側センターラグ溝
To 外側トレッド端
Ti 内側トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6