(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(B)ポリイソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート及び/又はジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項1に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
発泡原液中に(B)ポリイソシアネート成分を、該ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、前記発泡原液中の活性水素基とのモル比が60:100〜120:100になるように含む、請求項1又は2に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
(A)ポリオール成分として、さらに(a−5)ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフト共重合したポリマーポリオールであり、該ポリエーテルポリオールが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの開環重合により得られ、エチレンオキシドに由来する繰り返し単位とプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位のモル比が5/95〜25/75であり、数平均分子量が3,000〜7,000のポリエーテルポリオールを、(A)ポリオール成分中に40〜60質量%の割合で含む、請求項1〜5のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたポリウレタンフォームを車両用シートパッドとして使用した場合には、コーナリング時にシートパッドがぐらつくことがあった。ぐらつき感が大きいと、コーナリング時に遠心加速度がかかった際、体の傾きが大きくなることが想定され、乗り心地感にはさらなる改良の余地があった。
また、特許文献2に開示されたポリウレタンフォームでは、ぐらつき性が改善(低下)されている。しかし、応力緩和性は必ずしも低減されておらず、乗り心地には改善の余地があった。さらに、該ポリウレタンフォームでは、例えば車内で低温環境下に置かれた場合などに硬度が上昇し、座り心地感が損なわれることがあることが判明した。
そこで、本発明の課題は、ぐらつき低減性と応力緩和低減性との両立を高い水準で成し遂げ、それゆえに乗り心地感が良好であり、且つぐらつきの問題がないポリウレタンフォームであって、さらに低温環境下(例えば5℃以下)での硬度上昇が小さいシートパッド用ポリウレタンフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(A)ポリオール成分及び(B)ポリイソシアネート成分を含有する発泡原液を発泡成形してなるポリウレタンフォームであって、(A)ポリオール成分として特定の2種のポリオール成分をそれぞれ特定量含有することで上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[7]に関するものである。
[1](A)ポリオール成分及び(B)ポリイソシアネート成分を含有する発泡原液を発泡成形してなるポリウレタンフォームであって、
前記(A)ポリオール成分として、(a−1)エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの開環重合により得られたブロック共重合体であり、エチレンオキシドに由来する繰り返し単位とプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位のモル比が5/95〜25/75であり、数平均分子量が6,000〜8,000のポリエーテルポリオールを、(A)ポリオール成分中に30〜55質量%の割合で含むと共に、(a−2)エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの開環重合により得られたブロック共重合体であり、エチレンオキシドに由来する繰り返し単位とプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位のモル比が30/70〜90/10であり、且つガラス転移点が−65℃以下のポリエーテルポリオールを、(A)ポリオール成分中に2〜20質量%の割合で含むことを特徴とする、シートパッド用ポリウレタンフォーム。
[2](B)ポリイソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート及び/又はジフェニルメタンジイソシアネートを含む、上記[1]に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
[3]発泡原液中に(B)ポリイソシアネート成分を、該ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、前記発泡原液中の活性水素基とのモル比が60:100〜120:100になるように含む、上記[1]又は[2]に記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
[4](A)ポリオール成分として、さらに(a−3)エチレンオキシド単独の開環重合により得られ、数平均分子量が350〜2,000のポリエーテルポリオール1〜10質量%を含有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
[5]前記(a−2)成分のガラス転移点が−80〜−65℃である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
[6](A)ポリオール成分として、さらに(a−5)ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフト共重合したポリマーポリオールであり、該ポリエーテルポリオールが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの開環重合により得られ、エチレンオキシドに由来する繰り返し単位とプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位のモル比が5/95〜25/75であり、数平均分子量が3,000〜7,000のポリエーテルポリオールを、(A)ポリオール成分中に40〜60質量%の割合で含む、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
[7]さらに、(E)整泡剤を含有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のシートパッド用ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ぐらつき低減性と応力緩和低減性との両立を高い水準で成し遂げ、それゆえに乗り心地感が良好であり、且つぐらつきの問題がないポリウレタンフォームであって、さらに低温環境下(例えば5℃以下)での硬度上昇が小さいシートパッド用ポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシートパッド用ポリウレタンフォーム(以下、単に「ポリウレタンフォーム」と記載することがある。)は、(A)ポリオール成分及び(B)ポリイソシアネート成分を含有する発泡原液を発泡成形してなるものである。
なお、本明細書において、好ましいとする規定は任意に採用することができ、好ましいとする規定同士の組み合わせは、より好ましいと言える。
以下、成分ごとに詳細に説明する。
【0011】
[(A)ポリオール成分]
当該発泡原液においては、(A)成分として用いられるポリオール成分が、下記(a−1)成分と(a−2)成分を必須成分として含有する。
((a−1)ポリエーテルポリオール)
(a−1)成分のポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド(以下、「EO」と記載することがある。)及びプロピレンオキシド(以下、「PO」と記載することがある。)の開環重合により得られたブロック共重合体であり、EOに由来する繰り返し単位(以下、EO単位と称することがある。)とPOに由来する繰り返し単位(以下、PO単位と称することがある。)のモル比[EO単位/PO単位]が5/95〜25/75、且つ数平均分子量が6,000〜8,000という、比較的高分子量のポリエーテルポリオールである。特に、成形性及び反応性の観点から、EO単位からなるブロックは分子末端にあることが好ましく、分子内部はPO単位からなるブロックであり、かつ分子末端がEO単位からなるブロックであることがより好ましい。つまり、分子内部のEO単位の存在量は、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは実質的に0モル%である。
該(a−1)成分により、特に応力緩和低減性が改善される。(a−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
EO単位とPO単位のモル比[EO単位/PO単位]については、上述のように、5/95〜25/75であることが必須であり、好ましくは8/92〜25/75、さらに好ましくは10/90〜20/80である。
また、数平均分子量については、6,000〜8,000の範囲であることを必須とする。(a−1)成分の数平均分子量が6,000未満であると反発弾性が低下し、8,000を超えるとぐらつきを解消し得ない。以上の観点から、数平均分子量は7,000〜8,000の範囲が好ましい。
なお、本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)によりポリスチレン換算値として算出した値である。
【0013】
(a−1)成分の一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常、好ましくは2〜4個、特に3個であることがより好ましい。ヒドロキシル基の数が4個以下であれば、原料粘度が上昇することがない。
(a−1)成分のポリエーテルポリオールとしては、不飽和度の小さなものを用いることが好ましい。より具体的には、不飽和度として通常0.03ミリ当量/g以下であることが好ましい。高分子量ポリエーテルポリオール中の不飽和度が0.03ミリ当量/g以下であると、本発明のポリウレタンフォームの耐久性や硬度が損なわれない。なお、本発明において「不飽和度」とは、JIS K 1557−1970に準拠し、試料中の不飽和度結合に酢酸第二水銀を作用させて遊離する酢酸を水酸化カリウムで滴定する方法にて測定した、総不飽和度(ミリ当量/g)を意味するものである。
(A)成分中における(a−1)成分の含有量は、ぐらつき低減性と応力緩和低減性との両立の観点から、(A)成分に対して、30〜55質量%であり、好ましくは35〜50質量%、より好ましくは35〜45質量%である。
【0014】
((a−2)ポリエーテルポリオール)
(a−2)成分のポリエーテルポリオールは、EO及びPOの開環重合により得られたブロック共重合体であり、EOに由来する繰り返し単位とPOに由来する繰り返し単位のモル比(EO/PO)が30/70〜90/10であり、且つガラス転移点が−65℃以下のポリエーテルポリオールである。該(a−2)成分により、低温環境下でのポリウレタンフォームの硬度上昇を低減できる。
(a−2)成分において、EO単位とPO単位のモル比[EO単位/PO単位]は、ぐらつき低減性と応力緩和低減性との両立の観点から、好ましくは30/70〜85/15、より好ましくは40/60〜80/20、さらに好ましくは50/50〜80/20、特に好ましくは55/45〜75/25である。(a−2)成分の数平均分子量は、好ましくは1,000〜8,000、より好ましくは1,000〜7,000である。
(a−2)成分のガラス転移点は、−65℃以下である必要があり、好ましくは−80〜−65℃、より好ましくは−70〜−65℃である。
(a−2)成分の一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常、好ましくは2〜4個、特に3個であることがより好ましい。ヒドロキシル基の数が4個以下であれば、原料粘度が上昇することがない。
(a−2)成分のポリエーテルポリオールとしては、(a−1)成分と同様に、不飽和度の小さなものを用いることが好ましい。より具体的には、不飽和度として通常0.03ミリ当量/g以下であることが好ましい。低分子量ポリエーテルポリオール中の不飽和度が0.03ミリ当量/g以下であれば、本発明のポリウレタンフォームの耐久性や硬度が損なわれない。
(a−2)成分は、1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。例えば、数平均分子量の異なる2種以上を混合し、混合物としてのガラス転移点が上記所定値となっているものを用いてもよい。
(A)成分中における(a−2)成分の含有量は、低温環境下での硬度上昇低減の観点から、(A)成分に対して、2〜20質量%であり、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは4〜15質量%である。
【0015】
(その他の(A)成分)
(A)成分としては、通常、上記(a−1)成分及び(a−2)成分以外のその他のポリオールを用いてもよく、例えば、下記(a−3)〜(a−5)成分などが挙げられ、特に(a−3)成分及び(a−4)成分から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
((a−3)ポリエーテルポリオール)
(a−3)成分としてのポリエーテルポリオールは、EO単独の開環重合により得られ、数平均分子量が350〜2,000のポリエーテルポリオールである。(a−3)成分によって、ポリウレタンフォームの耐久性が向上する。なお、(a−3)成分は、「実質的」にEO単独の開環重合により得られたものであり、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において、5モル%以下(より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下)のPOが共重合したものをも含む。
当該観点から、(a−3)成分の数平均分子量は、好ましくは350〜1,500、より好ましくは350〜1,000、さらに好ましくは350〜700である。分子量が小さい場合、例えば1,000以下である場合、架橋剤と見なすこともできる。
(a−3)成分の一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常2〜5個、特に4個であることが好ましい。ヒドロキシル基の数が5個以下であれば、原料粘度が上昇することがない。
(A)成分が(a−3)成分を含む場合、(a−3)成分の(A)ポリオール成分中の含有量は、独立気泡性を抑えながら、耐久性を向上し、湿熱圧縮残留歪みを低減する観点から、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0016】
((a−4)ポリエーテルポリオール)
発泡原液においては、(A)成分として用いられるポリオール成分として、以下に説明される(a−4)ポリエーテルポリオールを含有していてもよい。
(a−4)成分のポリエーテルポリオールは、PO単独の開環重合により得られ、数平均分子量が350〜2,000という、比較的低分子量のポリエーテルポリオールである。PO単独の開環重合により得られたものである(a−4)成分により、特にぐらつき低減性を一層改善し得る。なお、(a−4)成分は、「実質的」にPO単独の開環重合により得られたものであり、本発明の効果を著しく阻害しない範囲において、5モル%以下(より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下)のEOが共重合したものをも含む。
(a−4)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(a−4)成分の数平均分子量が600以上であれば応力緩和が低くなり、一方2,000以下であれば、ぐらつきが一層低減する。同様の観点から、(a−4)成分の数平均分子量は、好ましくは650〜1,500であり、より好ましくは700〜1,200である。
【0017】
(a−4)成分の一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、前述の高分子量ポリエーテルポリオールと同様に、通常2〜4個、特に3個であることが好ましい。ヒドロキシル基の数が4個以下であれば、原料粘度が上昇することがない。
(A)成分が(a−4)成分を含む場合、(a−4)成分の(A)ポリオール成分中の含有量は、ぐらつき低減性と応力緩和低減性を一層改善する観点から、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、さらに好ましくは2〜7質量%である。
【0018】
((a−5)ポリマーポリオール)
(a−5)成分としてのポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフト共重合したポリマーポリオールであり、該ポリエーテルポリオールが、EO及びPOの開環重合により得られ、EO単位とPO単位のモル比[EO単位/PO単位]が5/95〜25/75であり、数平均分子量が3,000〜7,000のポリエーテルポリオールである。なお、前記ポリエーテルポリオールは、EO及びPOの開環重合により得られたブロック共重合体であることが好ましい。さらに、EO単位からなるブロックは分子末端にあることが好ましく、分子内部はPO単位からなるブロックであり、かつ分子末端がEO単位からなるブロックであることがより好ましい。つまり、分子内部のEO単位の存在量は、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは実質的に0モル%である。
該ポリマーポリオールによって、ポリウレタンフォームに硬さを付与することができ、応力緩和低減性やぐらつき低減性を評価する際には、各試料の硬さを統一するために該(a−5)が有効に用いられる。
(a−5)成分において、EO単位とPO単位のモル比が、上記範囲であると良好な成形性が保てる。同様の観点から、(a−5)成分において、EO単位とPO単位のモル比[EO単位/PO単位]は、好ましくは10/90〜30/70である。
また、(a−5)成分において、数平均分子量が上記範囲であると、粘度が大きくならず、量産性も確保できる。同様の観点から、数平均分子量は、好ましくは4,000〜6,000である。
(a−5)成分の一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常2〜4個、特に3個であることが好ましい。ヒドロキシル基の数が4個以下であれば、原料粘度が上昇することがない。また、不飽和度としては、通常、0.03ミリ当量/g以下であることが好ましい。
(A)成分が(a−5)成分を含む場合、(a−5)成分の(A)ポリオール成分中の含有量は、通常、好ましくは40〜60質量%、より好ましくは45〜55質量%である。
【0019】
上記(A)ポリオール成分の粘度(但し、(A)成分として複数種のポリオールを混合して使用する場合には、その混合したポリオール全体の粘度)としては、液温25℃において、好ましくは3,000mPa・s以下、より好ましくは1,800mPa・s以下である。このような粘度範囲のポリマーポリオールを用いることにより、ポリウレタン発泡原液の増粘速度を抑制することが可能となって攪拌効率が上昇し、イソシアネート基とヒドロキシル基とがより均一に反応することが可能となるため、従来に比べて発生ガスの発生効率が増加するのみならず、その発生ガスの発生箇所としても、ポリウレタン発泡原液内で均一に発生することとなり、軽量且つ均質なポリウレタン発泡成形体を得ることが可能となる。なお、本発明において「粘度」とは、JIS Z8803−1991に準拠し、液温25℃において、毛細管粘度計を用いて測定した粘度を意味する。
【0020】
[(B)ポリイソシアネート成分]
発泡原液において、(B)成分として用いられるポリイソシアネート成分としては公知の各種多官能性の脂肪族、脂環族および芳香族のイソシアネートを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
本発明においては、成形密度領域の観点から、トリレンジイソシアネート(TDI)及び/又はジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むことが好ましい。
【0021】
当該発泡原液中の前記(B)成分であるポリイソシアネートの含有量については特に制限はないが、攪拌不良が生じることなく、且つ良好な発泡状態を得るには、該ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、当該発泡原液中の活性水素基とのモル比が、好ましくは60:100〜120:100、より好ましくは70:100〜115:100になるように選定することが望ましい。
【0022】
[(C)発泡剤]
当該発泡原液においては、通常、(C)成分として発泡剤を用いる。通常、発泡剤としては水が好ましく使用される。水はポリイソシアネートと反応して二酸化炭素ガスを発生させることから、発泡剤として作用する。なお、水以外にも、ポリウレタンフォームの製造に通常用いられる発泡剤、例えば、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、液化炭酸ガス、低沸点の炭化水素などを使用することもできる。
(C)成分の配合量に特に制限はないが、(A)ポリオール成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜3質量部である。(C)成分の配合量が、(A)ポリオール成分100質量部に対して0.1質量部以上であれば、ぐらつき性を抑制する十分な効果が得られる。
【0023】
[(D)触媒]
当該発泡原液においては、発泡成形の際の反応性の観点から、(D)成分として触媒を含有する。この触媒としては、ポリウレタンフォームの製造において汎用のものを用いることができ、用途や要求に応じて1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。具体的には、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、テトラメチルプロピレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン等のアミン触媒や、スタナスオクテート、ジブチルチンジラウレート等の錫系触媒を挙げることができる。触媒としては市販品を用いることができ、例えばトリエチレンジアミン(TEDA−L33:東ソー(株)製)、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(TOYOCAT−ET:東ソー(株)製)等を好適に用いることができる。
なお、当該発泡原液中の(D)成分の配合量に特に制限は無いが、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して、通常、好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部、特に好ましくは0.1〜1質量部である。
【0024】
[任意成分]
当該発泡原液には、任意成分として(E)整泡剤及び/又は(F)架橋剤を配合することができる。さらに、必要に応じて各種添加剤を配合することができ、例えば、顔料等の着色剤、鎖延長剤、炭酸カルシウム等の充填材、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、カーボンブラック等の導電性物質、抗菌剤などを配合することができる。この場合、これらの添加剤の配合量は、通常使用される範囲で差し支えない。
【0025】
((E)整泡剤)
この(E)成分の整泡剤としては、ポリウレタン発泡成形体用のものとして汎用のものを用いることができ、例えば、各種シロキサン−ポリエーテルブロック共重合体等のシリコーン系整泡剤を用いることができる。
ポリウレタン発泡原液中の(E)整泡剤の配合量としては、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して、通常、好ましくは0.3〜5質量部、より好ましくは0.3〜3質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部である。0.3質量部以上であれば、ポリオール成分とイソシアネート成分の攪拌性が良好となり、所望のポリウレタンフォームを製造し易い。
【0026】
((F)架橋剤)
ポリウレタン発泡原液には、(F)成分として、架橋剤を含有していてもよい。この(F)成分の架橋剤としては、ポリウレタン発泡成形体用のものとして汎用のものを用いることができる。
ポリウレタン発泡原液中の(F)架橋剤の配合量としては、上記(A)成分のポリオール100質量部に対して、通常、好ましくは0.5〜10質量部である。0.5質量部以上であれば、架橋剤の効果が十分に得られ、一方、10質量部以下であれば、独立気泡性が適度であり、成形性が確保できるとともに、フォームダウンすることがない。
【0027】
[発泡原液の調製]
本発明における発泡原液の調製方法としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、前記(B)ポリイソシアネート成分を除いた残りの各成分からなる混合物(以下、「ポリオール混合物」と略記することがある。)を調製し、その後(B)ポリイソシアネート成分と混合する方法が挙げられる。
該ポリオール混合物の調製は、(C)発泡剤と(D)触媒とをなるべく接触させないという観点から、上記(A)ポリオール成分に対して、上記(D)触媒を配合し、次いで上記(E)整泡剤、(F)架橋剤などその他の成分を配合し、最後に発泡成分である上記(C)発泡剤を配合することが好適である。
本発明において、ポリオール混合物の液温25℃における粘度としては、2,400mPa・s以下が好ましい。該ポリウレタン発泡原液の攪拌効率を良好とし、発泡が均一且つ十分となって所望のポリウレタン発泡成形体が得られるためである。以上の観点から、ポリオール混合物の液温25℃における粘度は、1,800mPa・s以下が好ましい。
【0028】
[ポリウレタンフォームの発泡成形]
ポリウレタンフォームを発泡成形する方法としては、金型内に形成されたキャビティ内にポリウレタン発泡原液を注入し、発泡成形する従来公知の方法を採用し得るが、時限圧力解放(TPR;Timed Pressure Release)を併用することが好ましい。
本発明におけるTPRは、金型内の圧力を低下させ、気泡の連通化を生じさせるものである。より具体的には、発泡原液を、金型内に形成されたキャビティ内に供給する工程の後に、ゲルタイムより20〜50秒経過した後に金型内の圧力を、0.15〜0.25MPa低下させる工程を有する。ここでゲルタイムとは、ポリオールとイソシアネートが混合され、増粘が起こってゲル強度が出始める時間をいう。
【0029】
ポリウレタン発泡原液の各成分の分離を防止する観点から、金型キャビティ内に上記ポリウレタン発泡原液を注入する直前に上述の各成分を混合してポリウレタン発泡原液を調製することが好ましい。この際、上記原液の液温は、通常、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは25〜35℃である。ここで、各成分の配合順序に特に制限はないが、ポリウレタン発泡原液を調製する前に不必要な粘度の上昇を抑制する観点から、少なくとも前記(A)成分のポリオールと、前記(B)成分のイソシアネートとが、最後に混合されることが好ましい。次いで、上記原液の調製直後にこれをキャビティ内の減圧が可能な金型のキャビティに大気圧下にて注入し、注入し終えた直後に減圧を開始する。その後、金型内にて発泡・硬化させ、脱型し、本発明品とする。型温は、通常、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃、さらに好ましくは60〜65℃である。
【0030】
[ポリウレタンフォームの性状]
本発明のポリウレタンフォームは、その特性として、車酔いを低減し、座り心地を良くする観点から、応力緩和が12%以下であることが好ましく、11%以下であることがより好ましく、一般的には10.5%以下であるとさらに好ましい。
また、本発明のポリウレタンフォームは、ぐらつき感を抑制することができ、車両用のシートパッドとして用いた際に、コーナリング時のシートの傾きを抑えることができる。
さらに、常温(23℃)における硬度を100とした場合において、0℃における硬度が109以下(より良いものでは108以下、さらには106以下)、また、−15℃における硬度が121以下(より良いものでは119以下、さらには116以下)となり、低温環境下での硬度上昇が小さいため、温度に依存しない座り心地感を得ることができる。なお、硬度は、実施例に記載の方法に従って求めた値である。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例及び比較例にて製造されたポリウレタンフォームについて、以下の方法にて評価した。
(1)25%硬度
インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にてポリウレタンフォームを25%圧縮するのに要する荷重(kgf)を測定した。さらに、同様にして、0℃及び−15℃における25%硬度を測定し、23℃における25%硬度を基準(100)とした場合の値を算出し、低温環境下における硬度上昇の程度を調査した。
(2)応力緩和(%)
直径200mmの円形加圧板で、50mm/分の速度でポリウレタンフォームの初期厚みの75%の距離を圧縮した。その後、荷重を除き、1分間放置した。再び同じ速度にて荷重をかけて、196N(20kgf)の負荷となった時点で加圧板を停止させ、5分間放置後の加重を読み取った。そして、下記式により、応力緩和率を算出した。
応力緩和率(%)=100×[加圧板停止時の加重(196N)−5分間放置後の加重]/加圧板停止時の加重(196N)
値が小さい方が、応力緩和低減性に優れている。
【0032】
(3)ぐらつき低減性
図1は、ぐらつき角度を測定するための装置の概略図であって、サンプルのシートパッド1上に、角度計2を取り付けた治具3を乗せ、この治具3に0〜59Nの力を水平方向にかけた際の該治具の傾きを角度計2により測定し、ぐらつき低減性の指標とした。
値が小さいほど、ぐらつき低減性に優れている。
【0033】
実施例1〜3及び比較例1〜3
表1に示す配合処方に従って、発泡原液を調製した。調製に際しては、(B)ポリイソシアネート成分以外の各成分からなるポリオール混合物を調製し、その後(B)ポリイソシアネート成分を配合することで行った。ポリオール組成物は、まず、(A)ポリオール成分と、(D)触媒を混合し、次いで(E)整泡剤を配合して、最後に(C)発泡剤(水)を混合して調製した。その際、ポリウレタン発泡原液の液温を30℃とした。
次いで、上記原液の調製直後に、これを設定温度60℃のキャビティ内の減圧が可能な金型のキャビティに大気圧下にて注入し、注入し終えた直後に減圧を開始した。その後、金型内にて発泡・硬化させ、ゲルタイムより30秒経過した時に、金型内の圧力を、0.2MPa低下させた。その後、脱型し、シートパッド用ポリウレタンフォームを得た。得られたポリウレタンフォームを上記方法にて評価した。評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1中の注釈は以下の通りに説明される。
1)ポリエーテルポリオール(a−1):EO/PO(モル比)=13/87、数平均分子量7,500、官能基数3、ガラス転移点:−68℃
2)ポリエーテルポリオール(a−2):EO/PO(モル比)=65/35、数平均分子量1,600と5,000の混合物、官能基数3、ガラス転移点:−66℃
3)ポリエーテルポリオール(a−3):EO100%、数平均分子量400、官能基数4、ガラス転移点:−60℃
4)ポリエーテルポリオール(a−4):PO100%、数平均分子量700、官能基数3、ガラス転移点:−63℃
5)ポリマーポリオール(a−5):EO/PO(モル比)=15/85、数平均分子量5,000、官能基数3、ガラス転移点:−67℃
6)触媒:トリエチレンジアミンと(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(東ソー(株)製、商品名「TEDA−L33」、「TOYOCAT−ET」)
7)シリコーン整泡剤:(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「SZ1325」)
8)ポリイソシアネート:TDI/MDI(質量比)が80/20、NCO基/(発泡原液中の活性水素基)(モル比)が95/15〜100/0になるように配合する。なお、TDIとしては、「コスモネート(登録商標)T−80」(三井化学(株)製)を、MDIとしては、「MR−200HR」(日本ポリウレタン工業(株)製)を使用した。
【0036】
表1において、実施例1と比較例1、そして実施例3と比較例2とが、応力緩和低減性とぐらつき低減性とがほぼ等しくなるように配合を調整したものである。よって、これらを対比してみると、実施例1では、比較例1に比べ、0℃及び−15℃という低温環境下でも、硬度上昇が低減できていることがわかる。同様に、実施例3では、比較例2に比べ、0℃及び−15℃という低温環境下でも、硬度上昇が低減できていることがわかる。
また、実施例2においても、応力緩和低減性とぐらつき低減性とを両立し、且つ低温環境下での硬度上昇が小さいことがわかる。
なお、ポリオール成分(A)としてポリエーテルポリオール(a−1)、(a−3)及び(a−5)のみを含有した場合の比較例3では、ぐらつき低減性が乏しくなった。