【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例等を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら限定されるものではない。
【0030】
実 施 例 1
酸性乳飲料:
15%脱脂粉乳培地(3.5%のグルコースを含む)に、ラクトバチルス・カゼイYIT9029(この菌株は昭和56年5月1日付で通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現在の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(NITE-IPOD):〒305−8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にFERM BP−1366として国際寄託されている。なお、特許生物寄託センターは平成25年4月1日より新住所〒292−0818千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番地8 120号室に移転している。)のスターターを0.5%(生菌数:5.0×10
6/ml)接種し、37℃でpHが3.6となるまで培養を行い酸性原料乳を得た。次いで、ペクチン(品番:YM−NN−12(CPケルコ社製)極限粘度:7.2、エステル化度:76、カルシウム反応性:110、原材料:レモンの果皮)を含有するシロップ(砂糖:4%、難消化性デキストリン:5%、ステビア:0.04%となるように水に溶解した)を別途調製した。酸性原料乳24重量部とシロップ76重量部を混合した混合物を15MPaで均質化処理し、酸性乳飲料を得た。この酸性乳飲料の無脂乳固形分は3.1%であり、製造直後のpHは3.7であり、ペクチンの含有量は0.25%(w/v)である。
【0031】
得られた酸性乳飲料は、10℃で28日間保存後も、沈殿、凝集がなく、ホエイオフも少なく、さっぱりとした飲み口のものであり、風味も良好であった。
【0032】
製 造 例 1
ペクチンの調製:
乾燥したレモンの果皮を容器に入れ、水を添加した。前記柑橘類の果皮と水の混合物を撹拌しながら加熱することにより、その混合物からペクチンを抽出した(温度:72〜73℃、pH:1.97〜2.31、時間:180分)。次いで抽出混合物をろ過した。ろ液をエバポレーターで蒸発させ溶液中のペクチンを濃縮し、アルコールを添加して沈殿させ、真空乾燥して製品1〜12のペクチンを得た。
【0033】
なお、上記で調製したペクチンの極限粘度、エステル化度、カルシウム反応性は以下のようにして測定した。その結果を表1に示した。
【0034】
<極限粘度>
極限粘度は、数個の濃度の違う高分子溶液の粘度を求めて、高分子の濃度を0と仮定した点の高分子溶液の粘度である。その測定は以下のようにして行った。
(装置)
FIPA装置:TDA302(Viscotek製)
ポンプ:VE1121GPC(Viscotek製)
オートサンプラーおよび試料調製モジュール:AS3500(Thermo Separation Products製)
カラム:Bio Bases SEC60(150×7.8mm)(Thermo Separation Products製)またはSuperdexPeptide(60×7.8mm)(GE healthcare製)
コンピューターソフトウエア:OmniSEC
(試薬)
水酸化リチウム一水和物:品番L4533(Sigma−Aldrich製)
氷酢酸:品番1.00063(Merck製)
ミリQ水
アジ化ナトリウム:品番8.22335(Merck製)
(サンプル調製)
(1)40.0mgのペクチンを秤量し、100mlの容器に入れる。
(2)撹拌しながら100μlのエタノールを入れる。
(3)撹拌しながら75℃に保温する。
(4)穏やかに撹拌しながら40mlの溶媒(0.3M酢酸リチウム緩衝液(pH4.6))を入れる。
(5)75℃で30分間、穏やかに撹拌する。
(6)室温まで冷やす。
(校正)
分子量約70000(固有の屈折率増分:dn/dc0.147)のデキストランと分子量212000(dn/dc0.145)および47000(dn/dc0.145)のプルランを用いて校正を行った。
(FIPAのコントロール)
コントロールスタンダードとして、分子量約70000ダルトンのデキストラン(2.0mg/ml)を用いた。また、コントロールサンプルとしては、極限粘度が公知のペクチン(1.0mg/ml)を用いた。
(分析条件)
溶媒:0.3M酢酸リチウム緩衝液(pH4.6)
流速:1.0ml/分
ペクチン濃度:1.0mg/ml
温度:37℃
注入量:25μlのサンプルループを用いる。
【0035】
<エステル化度>
ペクチンは、ポリガラクツロン酸を主成分とし、一部のガラクツロン酸のカルボキシル基がメチルエステル化しているものである。エステル化度はこのエステル化の割合を示したものである。その測定は以下のようにして行った。
(装置)
分析はかり
ガラスビーカー(250ml)
測定用ガラス器(100ml)
真空ポンプ
吸引フラスコ
ガラスフィルター付るつぼ1号(ブフナーろうとおよびろ紙)
ストップウォッチ
試験管
105℃の乾燥キャビネット
デシケーター
マグネチックスターラーおよびマグネット
ビュレット(10ml、精度±0.05ml)
ピペット(20ml、10ml)
(試薬)
脱イオン水
60%および100%イソプロパノール(IPA)
0.5Nおよび37%塩化水素(HCl)
0.1Nおよび0.5N水酸化ナトリウム(NaOH)(小数点四桁まで校正)
0.1N硝酸銀(AgNO
3)
3N硝酸(HNO
3)
0.1%フェノールフタレイン(指示薬)
(測定方法)
(1)ペクチン2.0gを250mlガラスビーカーに計りとる。
(2)酸アルコール100mlを添加しマグネチックスターラーで10分間撹拌する。
(3)ろ液を完全に乾燥させ、ガラスフィルター付るつぼを計量する。
(4)ビーカーを15mlの酸アルコールでよくすすぎ、それを6回繰り返す。
(5)ろ液が塩化物を含まなくなるまで、60% IPAで洗浄する(およそ500ml)。
(6)およそ10mlのろ液を試験管に移し、3N HNO
3をおよそ3ml添加し、AgNO
3を2、3滴添加することにより、塩化物試験を行う。
(7)溶液が澄んでいる場合はろ液は塩化物を含まないが、そうでなければ塩化銀が沈殿する。
(8)次いで、20mlの100% IPAで洗浄する。
(9)試料を105℃で2時間半乾燥させる。
(10)乾燥後るつぼを計量しデシケーター内で冷却する。
(11)試料0.40gを250mlガラスビーカー中に正確に計量する。(2重の測定のため2つの試料を計量する。)
(12)100% IPAおよそ2mlでペクチンを浸し、マグネチックスターラーで撹拌しながら脱イオン水を含まない蒸留水およそ100mlを添加する。
(13)フェノールフタレイン指示薬を5滴添加し、色が変わるまで0.1N NaOHで滴定する(それをV1滴定量として記録する)。
(14)撹拌しながら0.5N NaOHを20.00ml添加し、そして、溶液を15分間静置する。静置しているとき、試料はホイルで覆わなければならない。
(15)次いで、0.5N HClを20.00ml添加し、色が消えるまでマグネチックスターラーで撹拌する。
(16)フェノールフタレインを3滴添加し、色が変わるまで0.1N NaOHで滴定する(それをV2滴定量として記録する)。
(17)次いで、ブラインド試験(2重の測定)を次のように行う。
(18)脱イオン水100mlにフェノールフタレインを3滴添加し、250mlビーカー中で色が変わるまで0.1N NaOHで滴定し(1〜2滴);次いで、0.5N NaOHを20.00ml添加し、15分間試料を触らずに静置する。静置しているとき、試料はホイルで覆わなければならない。
(19)次いで、0.5N HClを20.00mlおよびフェノールフタレインを3滴添加し、色が変わるまで0.1N NaOHで滴定する。使用した0.1N NaOHの量をB1として記録する。
(数式)
エステル化度は以下の数式により計算する。
【数1】
【0036】
<カルシウム反応性>
ペクチンはカルシウムイオンと反応し、凝集する(ペクチン分子のマイナスチャージがカルシウムイオンのプラスチャージと反応するため)。本発明におけるカルシウム反応性は、一定量のペクチン溶液に一定量のカルシウムを添加し、一定時間経過後の粘度によってあらわされる。その測定は以下のようにして行った。
(測定方法)
(1)標準化されていないペクチン0.64gを秤量し、ガラス容器に入れる。(標準化とは、ペクチンのゲル強度をある一定の値にするために、ペクチンにブドウ糖やショ糖を配合することである)
(2)5.0mlのイソプロパノールを入れる。
(3)130mlの沸騰水を入れながら、撹拌・混合する。(3)〜(5)の操作では全てガラス容器に蓋をする。
(4)(3)で沸騰水を入れてから1分後に、3.0Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.60)を20ml入れる。
(5)緩衝液を入れてから1分後、ガラス容器を75℃の温水中に置き、8〜12分間混合し、ペクチンが溶解したことを確認する。
(6)ガラス容器中の溶液をボルテックスで撹拌し、2秒以内に5mlの塩化カルシウム溶液を入れ、10秒間混合する。
(7)(6)の混合から5分以内に、5℃の水槽にガラス容器を入れ、16〜22時間置く。なお、水槽の水面とガラス容器中の水面の高さは同じようにする。
(8)5℃でB型粘度計(Brookfield LVT)を用いて、No.2スピンドル、60rpmで粘度測定を行う。
(9)(8)で測定された粘度(CP)がカルシウム反応性の値となる。
【0037】
【表1】
【0038】
実 施 例 2
酸性乳飲料の調製:
15%脱脂粉乳培地(3.5%のグルコースを含む)に、ラクトバチルス・カゼイYIT9029(FERM BP−1366)のスターターを0.5%(生菌数:5.0×10
6/ml)接種し、37℃でpHが3.6となるまで培養を行い酸性原料乳を得た。次いで、製品1〜12の各ペクチンをそれぞれ含有するシロップ(7%の砂糖を含む)を別途調製した。酸性原料乳24重量部とシロップ76重量部を混合した混合物を15MPaで均質化処理し、酸性乳飲料を得た。これらの酸性乳飲料の無脂乳固形分は3.2%であり、製造直後のpHは3.8であり、ペクチンの含有量は0.25%(w/v)である。また、比較として従来のペクチン(CPケルコ社製(極限粘度:5.7、エステル化度:72、カルシウム反応性:169))とペクチンの代わりに大豆多糖類(三栄源エフエフアイ製)を用いて同様の酸性乳飲料を得た。
【0039】
これらの酸性乳飲料について、10℃で28日間保存後、ホエイオフの量(容器上部からホエイの高さ(mm))および沈殿量(容器底部の沈殿の重量÷内容物全体の重量×100(%))を測定した。また、ホエイオフおよび沈殿を以下の評価基準で総合評価した。その結果を表2に示した。
【0040】
<物性評価基準>
(評価) (内容)
○ :物性安定性が良い(商品価値がある)
△ :どちらでもない
× :物性安定性が悪い(商品価値がない)
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果からも明らかなとおり、製品1、2、5、7〜12は、製品保存後も良好な物性安定性を示し、商品価値を損なわないことが分かった。
【0043】
実 施 例 3
酸性乳飲料の調製:
15%脱脂粉乳培地(3.5%のグルコースを含む)に、ラクトバチルス・カゼイYIT9029のスターターを0.5%(生菌数:5.0×10
6/ml)接種し、37℃でpHが3.6となるまで培養を行い酸性原料乳を得た。次いで、製造例1の製品1のペクチンを含有するシロップ(7%の砂糖を含む)を、ペクチンの濃度を変えて複数個、別途調製した。酸性原料乳24重量部とシロップ76重量部を混合した混合物を15MPaで均質化処理し、酸性乳飲料を得た。これらの酸性乳飲料の無脂乳固形分は3.2%であり、製造直後のpHは3.8であり、ペクチンの含有量は0、0.25、0.3または0.35%(w/v)である。
【0044】
これらの酸性乳飲料について、10℃で14日間または28日間保存後、実施例2と同様にしてホエイオフの量および沈殿量を測定した。また、風味と物性安定性を以下の評価基準で評価した。その結果を表3に示した。
【0045】
<風味評価基準>
(評価) (内容)
○ :風味が良い
△ :どちらでもない
× :風味が悪い
【0046】
<物性評価基準>
(評価) (内容)
○ :物性安定性が良い(商品価値がある)
△ :どちらでもない
× :物性安定性が悪い(商品価値がない)
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果より、物性安定性はペクチン添加量が0.25〜0.35%で良好であり、また、風味はペクチン添加量が増えるに従いややテクスチャが重くなるものの、0.35%まで許容範囲内であった。