特許第6010628号(P6010628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6010628カソードスクレーパーシステム及びウラン除去のためのその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010628
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】カソードスクレーパーシステム及びウラン除去のためのその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/08 20060101AFI20161006BHJP
   G21C 19/44 20060101ALI20161006BHJP
   C25C 3/34 20060101ALI20161006BHJP
   C25C 7/00 20060101ALI20161006BHJP
   C25C 7/02 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C25C7/08 Z
   G21C19/44 L
   C25C3/34 Z
   C25C7/00 302Z
   C25C7/02 308Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-549037(P2014-549037)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公表番号】特表2015-504974(P2015-504974A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】US2012058661
(87)【国際公開番号】WO2013106103
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】13/335,209
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン,マーク・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィードメイヤー,スタンリー・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリット,ジェームズ・エル
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,ローレル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ブラスコヴィッツ,ロバート・ジェイ
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−301092(JP,A)
【文献】 特開2000−080492(JP,A)
【文献】 特開平05−279887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 3/34
C25C 7/00 − 7/08
G21C 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が複数のカソードロッドを備えた複数のカソードアセンブリと、
前記複数のカソードロッドの上に堆積した精製ウランを除去する構成にされたカソードスクレーパーアセンブリ
を備え、
前記カソードスクレーパーアセンブリは、複数のスクレーパーの列と、前記複数のスクレーパーと交互に配置された接続部分とを有し、
前記スクレーパーのれぞれは、スリーブ状であり、前記複数のカソードロッドの異なるカソードロッドを受け入れるように構成され、
前記複数のスクレーパー間にくぼみ部分を提供するように、前記接続部分は前記複数のスクレーパーよりも薄く、
同一列の前記複数のスクレーパーは、共通平面によって画成された角度付き上面および角度付き底面のうちの少なくとも1つを有する、
カソードスクレーパーシステム。
【請求項2】
前記複数のカソードロッドは、同じ向きを有して同一平面内に存在するように配置された、請求項1に記載のカソードスクレーパーシステム。
【請求項3】
前記列のそれぞれは、前記複数のカソードアセンブリの異なるカソードアセンブリに対応する、請求項1に記載のカソードスクレーパーシステム。
【請求項4】
前記カソードスクレーパーアセンブリが、前記スクレーパーの列の第1端部に接続した第1支持棒及び前記スクレーパーの列の第2端部に接続した第2支持棒を備えた、請求項3に記載のカソードスクレーパーシステム。
【請求項5】
前記複数のカソードロッドに沿って前記カソードスクレーパーアセンブリを移動させる構成にされた駆動機構をさらに備えた、請求項1に記載のカソードスクレーパーシステム。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記カソードスクレーパーアセンブリを第1位置から第2位置に移動させ、前記第1位置は前記複数のカソードロッドの上部に位置し、前記第2位置は前記複数のカソードロッドの下部に位置する、請求項5に記載のカソードスクレーパーシステム。
【請求項7】
前記駆動機構は、一組のネジに沿って前記カソードスクレーパーアセンブリを第1位置から第2位置に移動させる構成にされた複数のモーターとギアボックスを備え、一組の各々のネジは、前記カソードスクレーパーアセンブリのコーナーに位置し、前記複数のカソードロッドと同じ方向に延在する、請求項6に記載のカソードスクレーパーシステム。
【請求項8】
前記角度付き上面および前記角度付き底面は、平行平面によって画成される、請求項1に記載のカソードスクレーパーシステム。
【請求項9】
複数のカソードアセンブリから堆積した精製ウランを除去する方法であって、各々のカソードアセンブリは複数のカソードロッドを備え、
前記複数のカソードロッドの上に堆積した精製ウランをカソードスクレーパーアセンブリによって除去する除去工程を含み、
前記カソードスクレーパーアセンブリは、複数のスクレーパーの列と、前記複数のスクレーパーと交互に配置された接続部分とを有し、
前記スクレーパーのれぞれは、スリーブ状であり、前記複数のカソードロッドの異なるカソードロッドを受け入れるように構成され、
前記複数のスクレーパー間にくぼみ部分を提供するように、前記接続部分は前記複数のスクレーパーよりも薄く、
同一列の前記複数のスクレーパーは、共通平面によって画成された角度付き上面および角度付き底面のうちの少なくとも1つを有する、
精製ウランを除去する方法。
【請求項10】
前記除去工程が、駆動機構により、前記複数のカソードロッドに沿って前記カソードスクレーパーアセンブリを移動せる移動工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記移動工程が、前記カソードスクレーパーアセンブリを第1位置から第2位置に移動させ、前記第1位置は前記複数のカソードロッドの上部に位置し、前記第2位置は前記複数のカソードロッドの下部に位置する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードスクレーパーシステム及び/又はウラン除去のためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低純度供給物質から金属を回収する及び/又は金属酸化物から金属を抽出するには、電気化学プロセスが使用されることがある。従来のプロセスは、一般に、(可溶性金属酸化物については)電解質に金属酸化物を溶かした後電気分解する、あるいは(不溶性金属酸化物については)選択的に電気輸送し、金属酸化物をその対応する金属まで還元することを含む。不溶性金属酸化物をそれらの対応する金属状態まで還元する従来の電気化学プロセスは、単一段階又は多段階アプローチを採用することができる。
【0003】
多段階アプローチは、2つの別な容器を利用する2段階のプロセスであってよい。例えば、使用済み核燃料のウラン酸化物からのウランの抽出は、ウラン金属とLi2Oを第1容器の中で生成するように、溶融LiCl電解質に溶かしたリチウムでウラン酸化物を還元する初期段階を含み、ここで、Li2Oは、溶融LiCl電解質に溶けたままである。次いで、このプロセスは、第2容器の中で電解採取の次の段階を行い、ここで、溶融LiClに溶けたLi2Oは、電解によって分解されて酸素を生成し、リチウムを再生する。この結果、得られたウラン金属は、電気精錬プロセスにおいて抽出することができ、一方、再生したリチウムを含む溶融LiClはリサイクルされ、別なバッチの還元工程に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2011/0180409号明細書
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、多段階アプローチは、高温の溶融塩と還元剤を1つの容器から別の容器に移動させることに関する問題など、多くの技術的な複雑性を伴う。さらに、溶融塩中の酸化物の還元は、電解質と還元剤の系に依存して、熱力学的に制約されることがある。とりわけ、この熱力学的制約は、所与のバッチで還元可能な酸化物の量を制限することになる。この結果、溶融した電解質と還元剤のより頻繁な移動が、生産必要高を満たすために要求されることになる。
【0006】
他方、単一段階アプローチは、一般に、カソード及びアノードと一緒に、金属酸化物を相溶性のある溶融電解質の中に浸漬することを含む。アノード及びカソードに給電することにより、金属酸化物(カソードと電気接触)は、電解変化及び溶融電解質を介したイオン交換によって、その対応する金属まで還元させることができる。しかしながら、従来の単一段階アプローチは、多段階アプローチよりも複雑性は少ないが、金属生成物の収率は比較的低い。さらに、金属生成物は、不都合な不純物を依然として含む。
【0007】
本態様は、カソードスクレーパーシステム及び/又は電気精錬システムに使用可能なウラン除去のためのその使用方法を含む。
【0008】
本カソードスクレーパーシステムは複数のカソードアセンブリを備える。各々のカソードアセンブリは複数のカソードロッドを備える。また、本カソードスクレーパーシステムは、複数のカソードロッドの上に堆積した精製ウランを除去する構成にされたカソードスクレーパーアセンブリを備える。カソードスクレーパーアセンブリは、格子状に配置された複数のスクレーパーを備え、複数のスクレーパーの各々は、異なるカソードロッドに対応して配置される。
【0009】
1つの態様において、複数のカソードロッドは、同じ向きを有し、同一平面内に存在するように配置される。複数のスクレーパーは、スクレーパーの列に配置され、各々の列は、異なるカソードアセンブリに対応する。
【0010】
カソードスクレーパーアセンブリは、スクレーパーの列の第1端部に接続した第1支持棒、及びスクレーパーの列の第2端部に接続した第2支持棒を備える。各々のスクレーパーは、外側構造体と中空中心部を備え、中空中心部は、対応するカソードロッドが中空中心部にピッタリ収まり、外側構造体が精製ウランの除去を可能にする寸法にされる。1つの態様において、外側構造体は、精製ウランの除去を容易にするように、角のある上部と角のある下部を備える。
【0011】
本カソードスクレーパーシステムは、さらに、複数のカソードロッドに沿ってカソードスクレーパーアセンブリを移動させる構成にされた機構を備えることができる。この機構は、カソードスクレーパーアセンブリを第1位置から第2位置に移動させることができる。第1位置は、複数のカソードロッドの上部に位置し、第2位置は、複数のカソードロッドの下部に位置する。
【0012】
1つの態様において、この機構は、一組のネジに沿ってカソードスクレーパーアセンブリを第1位置から第2位置に移動させる構成にされた複数のモーターとギアボックスを備える。一組の各々のネジは、カソードスクレーパーアセンブリのコーナーに位置し、複数のカソードロッドと同じ方向に延在する。
【0013】
本方法は、カソードスクレーパーアセンブリによって、複数のカソードロッドの上に堆積した精製ウランを除去することを含む。カソードスクレーパーアセンブリは、格子状に配置された複数のスクレーパーを備え、複数のスクレーパーの各々のスクレーパーは、異なるカソードロッドに対応して配置される。
【0014】
1つの態様において、除去工程が、ある機構により、複数のカソードロッドに沿ってカソードスクレーパーアセンブリを移動させることをさらに含む。この移動工程は、カソードスクレーパーアセンブリを第1位置から第2位置に移動させる。第1位置は、複数のカソードロッドの上部に位置し、第2位置は、複数のカソードロッドの下部に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例示の態様によるカソード出力分配システムを備えた電気精錬システムの斜視図である。
図2】例示の態様によるカソード出力分配システムを備えた電気精錬システムの横断面図である。
図3】例示の態様によるカソードスクレーパーシステムを備えた図1〜2の電気精錬システムを示す。
図4】例示の態様によるカソードスクレーパーシステムのカソードスクレーパーアセンブリを示す。
図5】例示の態様によるカソードスクレーパーアセンブリのスクレーパーの上面図を示す。
図6】例示の態様によるカソードスクレーパーアセンブリのスクレーパーの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して例示の態様を詳細に説明する。ここで、本願に開示した具体的な構造的及び機能的な詳細は、例示の態様を説明する目的の代表的なものに過ぎない。例示の態様は、多くの代替形式において具現化することができ、本願に記載の例示の態様にのみ限定されると解釈すべきではない。
【0017】
本明細書では、用語の第1、第2等を種々の構成要素を説明するために用いることがあるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定されるものではないと理解すべきである。これらの用語は、1つの構成要素を別なものと区別するために使用するに過ぎない。例えば、例示の態様の範囲から逸脱することなく、第1構成要素を第2構成要素と称することができ、同様に、第2構成要素を第1構成要素と称することができる。本願における用語「及び/又は」は、関連して列挙した事項の1つ又は複数の任意のもの及び全ての組み合わせを含む。
【0018】
構成要素が別の構成要素に「接続される」、「連結される」、「結合される」、「取り付けられる」、又は「固定される」と言及された場合、他の構成要素に直接接続又は連結されることができ、あるいは、介在する構成要素が存在してもよいと理解すべきである。これに対し、ある構成要素が別な構成要素に「直接接続される」又は「直接連結される」と言及された場合、介在する構成要素は存在しない。構成要素間の関係を表すために用いる別な用語も、同様な仕方で解釈すべきである(例えば、「間で」と「間で直接」、「隣接」と「直接隣接」、等)。
【0019】
本願における用語として、単数形の「1つ」、「1つの」、及び「その」は、別なものを明確に示す言語が無ければ、複数形もまた包含するものとする。さらに、本願における用語「備える」、「備えている」、「含む」、及び/又は「含んでいる」は、記載した特徴、整数、工程、操作、構成要素、及び/又は構成成分の存在を明確に述べるものであるが、1つ又は複数の別な特徴、整数、工程、操作、構成要素、構成成分、及び/又はこれらの群の存在を排除するものではないと理解すべきである。
【0020】
また、留意すべきことは、いくつかの代替の実施態様において、示した機能や行為が、図面に示した又は明細書に記載した順序とは異なって生じ得ることである。例えば、連続して示した2つの図面又は工程が、含まれる機能性や行為に依存して、実際は順次に又は同時に実施され、あるいは、場合により逆順に又は反復して実施されることがある。
【0021】
非限定的態様による電解精製システムは、比較的低純度の核供給物質(例えば、低純度のウラン供給物質)から精製金属(例えば、ウラン)を回収するために使用することができる。この電解精製システムは、本願と同日に出願された米国特許出願(発明の名称「低純度核供給物質から精製金属を回収する電解精製システム」、HDP Ref.8564−000252・US,GE Ref.24NS250931)に記載されており、この全体の内容が、本願に参照して取り入れられる。この低純度核供給物質は、電解酸化物還元システムの金属生成物であってよい。電解酸化物還元システムは、以降の金属回収を可能にするように、酸化物のその金属形態までの還元を促進する構成であってよい。電解酸化物還元システムは、米国特許出願第12/978,027号(2010年12月23日出願、「電解酸化物還元システム」、HDP Ref.:8564−000228・US,GE Ref.:24AR246140)に記載されており、この全体の内容が、本願に参照して取り入れられる。
【0022】
一般に、電解精製システムは、容器、複数のカソードアセンブリ、複数のアノードアセンブリ、電力系統、スクレーパー、及び/又はコンベヤーシステムを備えることができる。電解精製システム用の電力系統は、複数のカソードアセンブリ用の共通ブスバーを備えることができる。この電力系統は、本願と同日に出願された米国特許出願(発明の名称「カソード出力分配システムと出力分配用のその使用方法」、HDP Ref.8564−000254・US,GE Ref.24AR252783)に記載されており、この全体の内容が、本願に参照して取り入れられる。電力は、電気フィードスルーユニットを経て床構造を通って共通ブスバーに供給することができる。この電気フィードスルーユニットは、本願と同日に出願された米国特許出願(発明の名称「電解精製システム用のブスバー電気フィードスルー」、HDP Ref.8564−000253・US,GE Ref.24AR252782)に記載されており、この全体の内容が、本願に参照して取り入れられる。
【0023】
スクレーパーは、本願の図3〜6を参照してさらに説明する。コンベヤーシステムは、本願と同日に出願された米国特許出願(発明の名称「電解精製システム用の連続回収システム」、HDP Ref.8564−000260・US,GE Ref.24AR256355)に記載されており、この全体の内容が、本願に参照して取り入れられる。ここで、理解すべきことは、電解精製システムは、それに限定されるのではなく、本願において具体的に特定される別な構成成分を備えてもよいことである。さらに、電解精製システム及び/又は電解酸化物還元システムは、コリウム用に核燃料安定化処理を用いる方法を行うために用いることもできる。この方法は、米国特許出願(発明の名称「コリウム用に核燃料安定化処理を用いる方法」、HDP Ref.8564−000262・US,GE Ref.24AR253193)に記載されており、この全体の内容が、本願に参照して取り入れられる。
【0024】
上述のように、電解精製システムの低純度核供給物質は、電解酸化物還元システムの金属生成物であってよい。電解酸化物還元システムの運転の間、複数のアノードとカソードのアセンブリが、溶融塩の電解質の中に浸漬される。電解酸化物還元システムの非限定的態様において、溶融塩電解質は塩化リチウム(LiCl)であってよい。溶融塩電解質は、約650℃(+50℃、−30℃)の温度に維持することができる。酸化物供給物質(例えば、金属酸化物)を含むカソードアセンブリで還元性電位が発生するように、電気化学プロセスが行われる。還元性電位の影響下で、金属酸化物の金属イオンが金属まで還元され、金属酸化物(MO)供給物質からの酸素(O)が、酸素イオンとして溶融塩電解質に溶け込み、それによって、カソードアセンブリの後方に金属(M)を残存させる。次のようなカソード反応であってよい。
【0025】
MO+2e-→M+O2-
アノードアセンブリでは、酸素イオンが酸素ガスに変化する。このプロセスの間、電解酸化物還元システムからの酸素ガスを希釈、冷却、及び除去するために、各アノードアセンブリのアノードシュラウドを使用することができる。次のようなアノード反応であってよい。
【0026】
2-→1/2O2+2e-
金属酸化物は二酸化ウラン(UO2)であってよく、還元生成物はウラン金属であってよい。ここで、理解すべきことは、電解酸化物還元システムによって別な種類の酸化物もまた対応する金属まで還元され得るということである。同様に、電解酸化物還元システムで使用される溶融塩電解質は、それに特に限定されず、還元される酸化物供給物質に応じて変化することがある。
【0027】
電解酸化物還元の後、電解酸化物還元システムの金属生成物を含むバスケットは、金属生成物から精製金属を得るためのさらなる処理のため、例示の態様にしたがって電解精製システムに移される。より明確に述べると、電解酸化物還元システムからの金属生成物は、例示の態様による電解精製システム用の低純度核供給物質として役立つと考えられる。とりわけ、金属生成物を含むバスケットは、電解酸化物還元システムにおけるカソードアセンブリである一方、金属生成物を含むバスケットは、電解精製システムにおけるアノードアセンブリである。従来技術の装置に比較して、例示の態様による電解精製システムは、精製金属の大幅に高い収率を可能にする。
【0028】
図1は、非限定的態様によるカソードスクレーパーシステムを備えた電気精錬システムの斜視図である。図2は、非限定的態様によるカソードスクレーパーシステムを備えた電気精錬システムの横断面図である。
【0029】
図1〜2に関し、電気精錬システム100は、容器102、複数のカソードアセンブリ104、複数のアノードアセンブリ108、電力系統、スクレーパー110(例えば、カソードスクレーパーアセンブリ)、及び/又はコンベヤーシステム112を備える。複数のカソードアセンブリ104の各々は、複数のカソードロッド106を備えることができる。電力系統は、床構造134を通って延在する電気フィードスルーユニット132を備えることができる。床構造134はグローブボックスのグローブボックスフロアであってよい。あるいは、床構造134はホットセル施設の支持プレートであってよい。コンベヤーシステム112は、入口管113、トラフ116、鎖、複数の羽、出口管114、及び/又は排出シュート128を備えることができる。
【0030】
容器102は、溶融塩の電解質を保持する構成にされる。非限定的態様において、溶融塩の電解質は、LiCl、LiCl−KCl共融混合物、又は他の適切な媒体であってよい。容器102は、容器102の大部分が床構造134の下にあるように設置することができる。例えば、容器102の上部が、床構造134の開口を通って床構造134の上に延在することができる。床構造134の開口は、容器102の寸法に対応することができる。容器102は、複数のカソードアセンブリ104と複数のアノードアセンブリ108を受け入れる構成にされる。
【0031】
複数のカソードアセンブリ104は、溶融塩の電解質の中に少なくとも部分的に沈められるように、容器102の中に延在する構成にされる。例えば、複数のカソードアセンブリ104及び/又は容器102の寸法は、複数のカソードアセンブリ104の長さの大部分が容器102の中の溶融塩の電解質の中に沈められるように調整することができる。各々のカソードアセンブリ104は、同じ向きを有して同一平面内に存在するように配置された複数のカソードロッド106を備えることができる。
【0032】
複数のアノードアセンブリ108は、2つのカソードアセンブリ104が各アノードアセンブリ108の側面に位置するように、複数のカソードアセンブリ104と交互に配置することができる。複数のカソードアセンブリ104とアノードアセンブリ108は、平行に配置することができる。各々のアノードアセンブリ108は、容器102によって保持される溶融塩の電解質の中に低純度ウラン供給物質を支持して浸漬する構成にすることができる。複数のアノードアセンブリ108及び/又は容器102の寸法は、複数のアノードアセンブリ108の長さの大部分が容器102の中の溶融塩の電解質の中に沈められるように調整することができる。図1〜2において電気精錬システム100は、11個のカソードアセンブリ104と10個のアノードアセンブリ108を有するように示されているが、本願における例示の態様は、これに限定されないことを理解すべきである。
【0033】
電気精錬システム100において、カソード出力分配システムは、複数のカソードアセンブリ104とアノードアセンブリ108に接続される。
【0034】
精製ウランの除去を開始するため、カソードスクレーパーアセンブリ110は、複数のカソードロッド106の長手に沿って上下に動き、複数のカソードアセンブリ104の複数のカソードロッド106に堆積した精製ウランを取り除く構成にされる。擦除の結果、取り除かれた精製ウランは、溶融塩の電解質の中を通って容器102の底に沈む。カソードスクレーパーアセンブリ110は、図3〜6を参照してさらに説明する。
【0035】
コンベヤーシステム112は、その少なくとも一部が容器102の底に位置するように構成される。例えば、複数のカソードロッド106から取り除かれた精製ウランがトラフ116に蓄積するように、コンベヤーシステム112のトラフ116を容器102の底に位置させることができる。コンベヤーシステム112は、容器102から精製ウランを除去するため、トラフ116に蓄積した精製ウランを出口管114を通して排出シュート128まで輸送する構成にされる。
【0036】
図3は、例示の態様によるカソードスクレーパーシステムを備えた図1〜2の電解精製システムを示す。
【0037】
カソードスクレーパーシステムは、カソードスクレーパーアセンブリ110と駆動機構を備える。カソードスクレーパーアセンブリ110は複数のスクレーパーを備え(例えば、図4〜6の107)、各々のスクレーパーは、カソードアセンブリ104の異なるカソードロッド106に対応する。カソードスクレーパーアセンブリ110の詳細は、図4でさらに詳述される。駆動機構は、複数の駆動モーター101、複数のギアボックス103、及び一組の支持部材120を備え、複数の駆動モーター101は、一組の支持部材120に沿ってカソードスクレーパーアセンブリ110を駆動し、それによってカソードロッド106から精製ウランを擦除する。
【0038】
複数の駆動モーター101は、第1モーター101−1及び第2モーター101−2を備え、複数のギアボックス103は、第1ギアボックス103−1、第2ギアボックス103−2、第3ギアボックス103−3、及び第4ギアボックス103−4を備える。各々のギアボックス103は、カソードスクレーパーアセンブリ110の異なるコーナーに対応する。一組の支持部材120は、第1支持部材120−1、第2支持部材120−2、第3支持部材120−3、及び第4支持部材(図示せず)を備える。複数のモーター101とギアボックス103は、支持プレート160の上に構成され、一組の支持部材120に接続される。例えば、第1ギアボックス103−1が第1支持部材120−1に接続され、第2ギアボックス103−2が第2支持部材120−2に接続され、第3ギアボックス103−3が第3支持部材120−3に接続され、第4ギアボックス103−4が第4支持部材に接続される。カソードスクレーパーアセンブリ110の各々のコーナーは、それぞれの支持部材120に適合して支持する寸法にされた穴を備える。一組の支持部材120はカソードロッド106に平行である。1つの態様において、各々の支持部材120はネジであってよい。
【0039】
各々のモーター101は、別なモーター並びに対応するギアボックス103及び支持部材120の回転と同期し、それによってカソードスクレーパーアセンブリ110を第1位置から第2位置に駆動する(逆もあり得る)。第1位置はカソードロッド106の上部に位置することができ、第2位置はカソードロッド106の下部に位置することができる。そのようなものとして、駆動機構は、カソードスクレーパーアセンブリ110をカソードロッド106に沿って動かす。
【0040】
図4は、例示の態様によるカソードスクレーパーシステムのカソードスクレーパーアセンブリ110を示す。カソードスクレーパーアセンブリ100は、格子状に配置された複数のスクレーパー107、及び複数のスクレーパー107を支持する構成の複数の支持棒105を備える。各々のスクレーパー107は、異なるカソードロッド106に対応して配置される。例えば、複数のスクレーパー107はスクレーパー107の多数の列109を備える。各々の列109は、異なるカソードアセンブリ104に対応し、多数のスクレーパー107を備える。列109の数及び各々の列のスクレーパー107の数は、2以上の任意の整数であってよい。複数の支持棒105は、第1支持棒105−1と第2支持棒105−2を含む。第1支持棒105−1はスクレーパー107の列109の第1端部に接続され、第2支持棒105−2はスクレーパー107の列109の第2端部に接続される。
【0041】
図5は、例示の態様によるカソードスクレーパーアセンブリ110のスクレーパー107の上面図を示す。図5に示すように、各々のスクレーパー107は、外側構造体と中空中央部を備え、中空中央部は、対応するカソードロッド106が中空中央部にピッタリ収まって外側構造体が精製ウランを除去することを可能にする寸法にされる。各々の列109の中で、スクレーパー107は、スクレーパー107と同じ材料の接続部111を介して接続される。列109の中の隣接スクレーパー107の間の間隔は、それぞれのカソードアセンブリ104の中の隣接カソードロッド106の間の間隔に対応することができる。1つの態様において、各々の列109に関し、スクレーパー107の外側構造体と接続部111は連続構造体を形成し、連続構造体の端部が、第1支持棒105−1と第2支持棒105−2に接続される。
【0042】
図6は、例示の態様によるカソードスクレーパーアセンブリ110のスクレーパー107の側面図を示す。図6を参照して、スクレーパー107は角のある上部113と角のある底部115を備える。例えば、列109の中で、各々のスクレーパー107は、同一平面内に存在するように配列され、対応するカソードロッド106は、中空中央部を貫通する。カソードロッド106の1つの側面上のスクレーパー107の外側構造体の上部は、カソードロッド106の別な側面上のスクレーパー107の外側構造体の上部と相殺し、それによって角のある上部113を形成する。1つの態様において、上部113はカソードロッド106の軸から45度の角度をなすことができる。ここで、上部113がなす角度は、任意の種類の値を包含することができる。同様に、カソードロッド106の1つの側面上のスクレーパー107の外側構造体の底部は、カソードロッド106の別な側面上の底部と相殺し、それによって角のある底部115を形成する。1つの態様において、底部115はカソードロッド106の軸から45度の角度をなすことができる。ここで、底部115がなす角度は、任意の種類の値を包含することができる。外側構造体の上部と底部の角度形成は、カソードロッド106からのウランの除去を容易にし、カソードスクレーパーアセンブリ110上の物質の蓄積を除去する。
【0043】
上記に例示の態様を説明してきたが、当業者には、さらなる発明を行うことなく日常的実験によって例示の態様を変化させ得ることが認識されるものと考えられる。例えば、例示の精製システムの1つの側面で例示の態様において電気接触を説明したが、期待されるカソードとアノードのアセンブリ配置、電力レベル、必要なアノード化電位等に基づいて別な数と構造の電気接触が使用され得ることは当然に理解される。種々の変更は、例示の態様の技術的思想と範囲から逸脱すると見なすべきではなく、当業者に自明と考えられるこうした改良はいずれも、特許請求の範囲に含められるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6