特許第6010631号(P6010631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6010631原子力発電所からの有害排出ガスの濾過方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010631
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】原子力発電所からの有害排出ガスの濾過方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/02 20060101AFI20161006BHJP
   B01D 39/00 20060101ALI20161006BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   G21F9/02 551A
   G21F9/02 551E
   G21F9/02 561Z
   G21F9/02 511A
   B01D39/00 Z
   B01D53/22
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-551695(P2014-551695)
(86)(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公表番号】特表2015-508502(P2015-508502A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】IB2013001723
(87)【国際公開番号】WO2013156873
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】61/659,705
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1200074
(32)【優先日】2012年1月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シャントロー
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/019454(WO,A1)
【文献】 特表平10−512808(JP,A)
【文献】 米国特許第04158639(US,A)
【文献】 特開平08−062391(JP,A)
【文献】 米国特許第5745861(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の有害な排出ガスの濾過方法において、
原子力発電所の、複数のガスの混合気を含む排出ガスを供給するステップと、
処理された排出ガスを生成するために、少なくとも1つの膜を介して、ふるい分け、吸着および拡散のうちの少なくとも一つによる膜分離により、前記排出ガスの成分を濾過するステップと、
濾過した前記成分を貯蔵器に貯蔵するステップと、
処理後の前記排出ガスを大気中に放出するステップと
を有する、濾過方法において、
前記濾過するステップが、
排出放射能を低減するための金属プリフィルタを用いた第1の全量濾過を提供するステップと、
前記排出ガスから空気、CO2、CO、蒸気および残留水を分離するための第2のタンジェンシャル濾過を提供するステップと、
空気、CO2およびCOを煙突へ放出しつつ、放射性成分、有機ヨウ素、無機ヨウ素、および、希ガスを分離するための、膜分離による第3の濾過を提供するステップと、
ガス浸透によりキャリアガスを回収して再利用するための、または戻り管路(130)を介して格納容器(100)内部を希釈化するための第4の濾過を提供するステップと
を有する、
ことを特徴とする濾過方法。
【請求項2】
処理対象である前記排出ガスは、事故後の前記格納容器(100)のガス雰囲気により構成され、
前記排出ガスは、固体粒子と、蒸発した状態の液体のフラクションとを含む、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項3】
処理対象である前記排出ガスは、通常動作時の前記格納容器(100)のガス雰囲気により構成される、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項4】
処理対象である前記排出ガスは、換気システムから取り出される、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項5】
処理対象である前記排出ガスは、火炎による煙霧を含む、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項6】
処理対象である前記排出ガスは、核分裂生成物により生じたエアロゾルを含む、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項7】
処理対象である前記排出ガスの温度は、前記原子力発電所の外部の周辺温度より高く、40℃を上回る、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項8】
処理対象である前記排出ガスの処理流量は1kg/sを上回る、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項9】
処理対象である前記排出ガスの圧力は1バールより高い、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項10】
前記貯蔵器は、ゼオライトを含むガス貯蔵器である、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項11】
少なくとも1つの前記膜は、セラミック、ケブラー、ポリマー、又は、それらの組み合わせをベースとして形成されている、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項12】
処理対象である前記排出ガスの特定の成分をそれぞれ濾過する複数の膜(210,220,230・・・)を使用する、
請求項1記載の濾過方法。
【請求項13】
前記濾過方法は、外部エネルギーの供給無しのパッシブ動作型であり、
前記排出ガス中に含まれる希ガスに対する前記濾過方法の浄化係数は、少なくとも100である、
請求項1記載の濾過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用設備における、特に原子力をエネルギー源とするエネルギー生成分野における、排出ガスの濾過方法に関する。
【0002】
具体的には本発明は、気体状態の化学種および/または放射能種の高い流量で、特に膜分離により、選択的な分類を可能にするものである。その目的は主に、通常動作状態と、特に深刻な事故の発生時等の異常動作状態とにおいて設備にて生成された放出ガスを確実に回収することである。
【0003】
具体的に原子力設備の場合には、環境に与える影響は主に、廃棄物の放射能特性、熱的特性および化学的特性と関係するものである。廃棄物の放射能レベルと化学的組成とに依存して、放射能成分は蓄積および処理され、その後パッケージ化されることにより廃棄物とされる。この放射能成分のうち、気体状になって大気中へ放出されるものもあり、その濃度はもちろん、適用される規制により厳しく規定されている。通常動作時に生成される放出ガスは一般的に、発電所の精製濾過回路から出るものであり、この精製濾過回路は、設備を構成するシステムや装置の動作により生成された放射能成分の一部を収集するものである。たとえばフランスでは、原子力発電所により生成されるこのような放射能排出ガスは、典型的には、希ガスの許容限界量の1.1%のオーダとなる。前記許容限界量は、トリチウムでは11.1%であり、ヨウ素(有機物および無機物の双方)では3.6%である。ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドンが、希ガス族である化学元素周期表の第0族を構成するが、以下、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)および「フランス国民教育省機関誌」
の勧告に従い、希ガスとの呼称を用いる。これらの廃棄物は通常は低放射能であり、これらの廃棄物に含まれる放射能核種は高い毒性を有さず、一般的にはその周期は短い。ここで特筆すべきなのは、放出ガスには固体粒子および液体粒子が含まれていることである。放射能特性を有するこの固体粒子や液体粒子は、粒度に大きなばらつきを有するエアロゾルを形成し、浮遊している微粒子に核分裂現象が生じることにより、たとえばハロゲン、稀ガス、トリチウムおよび炭素14等の放射能核種が生成される。このようにして形成されたエアロゾルの組成および放射能は、リアクタの種類と放出ルートとに大きく依存する。
【0004】
通常、原子力発電所の排出ガスは、最大限の放射能元素を抽出するために、大気中に放出される前に処理される。現場では現在、建物の汚染ガスおよび換気空気を大気中に放出する前に濾過を行うことにより、この汚染ガスや換気空気から放射性粒子を取り出すことが行われている。換気浄化システムは一般的に、目の粗い事前フィルタと完全フィルタとを併用する。特筆すべき点として、粒径が0.3mmのオーダである粒子の場合、抽出率は通常、少なくとも99.9%に達することが判明している。
【0005】
放射性ヨウ素は、ダストフィルタと、チャコールを含浸させたフィルタとを併用して抽出される。石炭の含浸は、有機ヨウ素化合物を保持するために必要なものである。
【0006】
燃料成分から取り出された放射性希ガスは、放射能レベルを低減させるために崩壊後に遅延させて大気中に放出される。こうするために使用される手法としては、特別な貯蔵器に一時貯蔵する手法と、複数のチャコール層を通過させる手法という2つの手法がある。したがって貯蔵の場合には、希ガスおよびキャリアガスをポンピングすることにより、封止された貯蔵器内に導入し、これらのガスを大気中に放出するのが許可されるまで、当該貯蔵器内に保持しておく。もう1つの手法は、排出ガスをチャコールカラムの列に通過させるものである。このチャコールカラム列は、キャリアガスに対して希ガスの進行を相対的に遅らせることにより、放射能崩壊を促進させるものである。
【0007】
現在、低度および中程度の放射能の廃棄物の処理およびパッケージ化手法の大部分は良好に開発されており、産業レベルで使用されている。この技術は、発電所から出た廃棄物を有効に管理するのを保証するのに十分に進歩しているが、改善の余地は常にあり、また望まれてもいる。この管理にかかる予算が増大すると、生成量を最小限にまで低減できる手法や技術を採用したり、処理およびパッケージ化段階における容量をさらに低減できる新たな手段の研究を行う方向に関心が寄せられることになる。その例としては、液体廃棄物の処理を改善するための特殊な鉱物吸着剤を用いること、液体廃棄物にも用いられる膜技術、フィルタから出たビード状の樹脂や泥を乾燥させる技術、劣化したイオン交換樹脂の焼却技術、洗濯水の体積を低減するための、衣服や他の防護用繊維材料のドライクリーニング、乾燥させたフィルタ泥をパッケージ化するために、気密封止された高耐性の容器を用いること、除去すべき容積を低減するために中レベルの放射能の特定の廃棄物をガラス固化すること、非燃料廃棄物のオーバーコンパクションが挙げられる。
【0008】
最新の産業上の従来技術であるこれらの技術のすべてが、廃棄物の管理に汎用的に利用できるとは限らない可能性があり、特に原子力発電所に利用できるとは限らない可能性があるが、その投じられている研究および開発努力が、原子力産業および原子力発電所のオペレータにより、廃棄物管理の安全性および経済性のために払われている多大な配慮を物語っており、向上を示している。
【0009】
本発明は、産業設備により生成された排出ガスと、特に原子力設備により生成された排出ガスとを処理するのに使用される、特殊な方法での膜技術の使用に関する。
【0010】
現在の全世界の設置数の約95%に相当する、水原子炉技術を用いた原子力発電所の原子炉に重大事故が発生した場合、原子炉建屋内の雰囲気は時間と共に変化し、空気、蒸気、非凝縮性ガス(主にH、CO、CO、たとえばエアロゾル、蒸気およびガス等の核分裂生成物、等)を含む混合気を形成し、その比率は、空間的にも時間的にも変化する。これに起因して圧力が上昇し、および/または、当該混合気に含まれる有害生成物の蓄積量が増大すると、最終的には、水素爆発や、建屋の圧力が許容圧力を超えることにより機械的完全性が失われるのを回避するため、外部環境へ放出されることになる。建屋から流出する流体は、たとえば空気、放射性ガス、蒸気または流体の混合物等である。この方法の目的は、脱ガス工程中に、放出すると危険である放射性成分および/または環境に有害な成分を回収して、貯蔵のためのオプションとしての特別な処理を行うことにより、または、再利用できるように再処理することにより、周辺へ危険な放出を行わないようにするため、前記放射性成分および/または有害成分を分離することである。
【0011】
80年代初期には、事故の影響を抑えるために簡単な手段が幾つかの原子力発電所に設置された。その目的の1つは、専用のシステムを用いて放出ガスを制御および濾過できるようにすることであった。
【0012】
現在、これらのいわゆる「緩和方式」システムは、濾過プロセスを用いてガスを排出することにより、原子炉建屋内の圧力を降下させるために用いられる。全世界の稼働中の原子力設置基地には、2つの異なる技術が存在する。
・無差別に放射性ガスを捕捉する砂濾過システム。重大事故の発生時には、原子炉建屋の格納容器内の圧力の多かれ少なかれ迅速な上昇を許容できる。砂濾過システムを始動させることにより、ガス‐蒸気混合気の一部を制御して放出することが可能になる。これにより、格納容器の過剰加圧が回避されると同時に、放射性物質の放出を著しく制限することができる。主にフランスで使用されているこの砂濾過器は、ガス流に含まれる有害成分の約50%をフィルタリング、保持することができるが、希ガスには機能しない。図1に、砂濾過器20と、ガス放出煙突15から上流に設置された廃棄物測定ユニット25とを備えた発電所10を示す。
・選択的脱ガスを行うことができない散布による脱ガスシステム。この回路では、当該回路内にて循環する水の一部が、特に空気冷却塔を通過するときに、蒸気となって大気中に逃げていき、他の一部は、非蒸発性生成物の濃度が過度に高くなるのを抑えるために周辺中に戻される。特にドイツおよびスウェーデンで用いられるこのシステムは、濾過されるガス流に含まれる有害成分の約75%を保持することができるが、これもまた、希ガスには機能しない。この脱ガスシステムは非常に大型であり(>100m)、使用および保守が非常に困難であるため、使用コストおよび保守コストが高くなる。
【0013】
これらのシステムは双方とも、手動で、またはセクショナルバルブを開弁するための支援動作により、意図的に作動される。これらのセクショナルバルブは、流れを生成して有効な濾過を実現するために、上流において駆動圧を必要とする。セクショナルバルブの動作は、濾過システムの構造的特徴により定まる圧力閾値まではパッシブ動作である。前記濾過システムの構造的特徴は、特に流体力学的抵抗である。この圧力閾値を下回ると、濾過機能を増大するため、アクチュエータひいては電源が必要となる。その上、種々のパラメータを、特に周辺パラメータをモニタリングするためにも、電気エネルギーの供給が必要となる。
【0014】
本発明の課題は、上述の欠点を引き起こさない、汚染されたおよび/または有害な排出ガス、特に放射性排出ガスの濾過方法を実現することである。
【0015】
本発明の課題は特に、処理すべき排出ガスに含まれる有害成分のほぼすべてを濾過できる、格段に有効な濾過方法を実現することである。
【0016】
本発明の課題は特に、脱ガス中、放射性ガスの捕捉中、放射性ガスの分別中、放射性ガスの一時貯蔵中、再利用のための放射性ガスのオプションとしての処理、および、原子力発電所の格納容器の汚染された雰囲気の制御された希釈化および処理中に、放射性ガスの選択的な分離を双方ともに可能にする方法を実現することである。
【0017】
本発明はさらに、永続的に使用可能であり、かつ、要求に応じて連続的または断続的に動作することができる、原子力発電所の排出ガスの濾過方法を実現することである。
【0018】
本発明の課題はまた、重大事故時に機能する、原子力発電所の排出ガスの濾過方法を実現することである。
【0019】
また、本発明の課題は、改善された膜を含む、産業用設備の排出ガスの濾過装置を実現することである。
【0020】
したがって、本発明の対象である、原子力発電所の排出ガスの有害ガスの濾過方法は、以下のステップを有する:
・原子力発電所の、混合気を含む排出ガスを準備するステップ。
・少なくとも1つの膜を介してふるい分け、吸着および/または拡散により行われる膜分離により、前記排出ガスの有害成分を、特に放射性成分を濾過するステップ。
・濾過した前記有害成分を貯蔵器にて貯蔵するステップ。
・処理された前記排出ガスを大気中へ放出するステップ。
【0021】
第1の択一的実施形態では、処理対象である前記排出ガスは、事故後の格納容器のガス雰囲気により構成され、前記排出ガスは、固体粒子と、蒸発した状態の液体のフラクションとを含む。
【0022】
他の1つの実施形態では、処理対象である排出ガスは、通常動作時の格納容器のガス雰囲気により構成される。
【0023】
他の1つの実施形態では、処理対象である排出ガスは、換気システムから取り出されたものである。
【0024】
他の1つの実施形態では、処理対象である排出ガスは、火炎による煙霧を含む。
【0025】
他の1つの実施形態では、処理対象である排出ガスは、原子力発電所から出たものである。
【0026】
有利には、処理対象である排出ガスは、核分裂生成物から出たエアロゾルである。
【0027】
有利には、処理対象である排出ガスの温度は、発電所外部の周辺の温度より高く、特に40℃を上回る。
【0028】
有利には、処理対象である排出ガスの流量は1kg/sより高く、特に3.5kg/sより高い。
【0029】
有利には、処理対象の排出ガスの圧力は1バールを上回り、特に10バールを上回る。
【0030】
有利には、前記貯蔵器は、ゼオライトを含むガス貯蔵器である。
【0031】
有利には前記方法は、
・特に排出放射能を低減するための金属プリフィルタを用いた第1の全量濾過(ダイレクトフロー濾過ともいう。)ステップと、
・処理対象の排出物から空気、CO2、CO、蒸気および残留水を分離するための第2のタンジェンシャル濾過(クロスフロー濾過ともいう。)ステップと、
・たとえば有機ヨウ素や無機ヨウ素、希ガス等の有害成分を分離および貯蔵し、かつ、残りの空気、CO2およびCOを煙突へ放出するための、ガス拡散による第3の濾過ステップと、
・ガス浸透により窒素等のキャリアガスを回収して再利用するための、または戻り管路を介して格納容器内部を希釈化するための第4の濾過ステップと
を有する。
【0032】
有利には、少なくとも1つの前記膜は、たとえばシリカ炭化物、タングステンまたはチタン等のセラミックをベースとして、ならびに/もしくは、ケブラーをベースとして、ならびに/もしくは、たとえばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のポリマーをベースとして形成されている。
【0033】
有利には、処理対象である前記排出ガスの特定の有害成分をそれぞれ濾過する複数の膜を用いる。
【0034】
有利には、前記方法は、外部周辺からのエネルギー供給が無いパッシブ動作型である。
【0035】
有利には、特に、前記排出ガス中に含まれる希ガスに対する前記方法の浄化係数は、少なくとも100であり、有利には少なくとも1,000である。
【0036】
添付の図面を参照して、本発明の複数の実施形態についての以下の詳細な説明を参酌すれば、本発明の上記構成および利点、ならびに他の構成および利点をより明確に理解することができる。なお、以下に記載の実施例は、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】従来技術の砂濾過器を用いた、排出ガスを処理するための原子力発電所の概略図である。
図2】有利な1実施形態の濾過方法を用いた原子力発電所の概略図である。
図3】原子力発電所に連続使用される、本方法の別の択一的な実施形態の概略図である。
図4】有利な1実施形態の膜の概略的な断面図である。
【0038】
主に、格納容器を備えた原子力発電所における使用例に基づいて本方法を説明するが、本方法は、格納容器を備えていない原子力発電所にも使用することができ、また、より一般的には、いかなる種類の産業用設備にも使用することができる。
【0039】
フランスの設置基地の加圧水型原子炉を取り上げると、格納容器100は70,000mから80,000mまでのオーダの容積を有し、通常は、図3に示されているように、コンクリートの2重壁110,120により構成されている。事故が発生することにより、この格納容器内に核分裂生成物が(エアロゾル、蒸気、ガスの形態で)生じると、格納容器の雰囲気中、および、エアロゾルの大部分が沈着して溜まったものに含まれるβおよびγ線量率が相当な大きさになる。これら双方の相中に含まれると予測される線量率は、典型的には10kGy.h−1のオーダである。
【0040】
どのようなケースであってもこの値は、燃料の劣化状態、1次回路にて保持される核分裂生成物、格納容器内の雰囲気と溜まり部分との間の核分裂生成物の分布に大きく依存し、前記値自体が、格納容器内にて優勢である熱流体力学的条件に依存し、もちろん、事故発生時から経過した時間にも依存する。
【0041】
放出ガスの温度は典型的には、発電所外部の周辺の大気温度より高い。上記シナリオと、勘案される時間的尺とに応じた一般的な許容温度は、典型的には40℃〜140℃の間である。ここで特筆すべき点は、温度が40℃を下回ること、または140℃を上回る可能性があることである。湿度に関してはこれもまた、事故の動特性と、想定される事故パターンとに依存して、0%から100%までの範囲で変化することがある。
【0042】
放射線分解により、オゾン、窒素酸化物NO、一酸化窒素NO、二酸化窒素NO、亜硝酸HNOおよび硝酸HNOが形成される。
【0043】
種々のチームが実験により、乾燥した空気中にO、NOおよびヘミペントキシドNとが形成されるのを観察し、また湿った空気中(水分質量率0.5%)ではO,NO,HNOおよびHNOが形成されるのを観察した。まとめると、重大事故発生時に格納容器内に生じる可能性のある放射線分解生成物には主にNO:NOおよびNOが含まれ、もちろんOも含まれる。
【0044】
IRSSN(フランス放射線防護・原子力安全研究所
を含めた複数の研究所が、原子力発電所における水素のリスクを制御することを目的としたプログラムの中で実験を行い、特に触媒式再結合装置の振舞いを観察した結果、固体金属ヨウ化物の解離によって揮発性のヨウ素を生成する物理化学的反応を検出できることが分かった。
【0045】
以下の表は、フランスの稼働中の設置基地の原子炉に重大事故が発生したときに生じるソースターム(典型的な放出)について推定される主な構成成分のオーダを示す。ソースタームは原子炉の系統ごとに特有のものであるから、国ごとに差異が見られることがあるが、この値は、原子力発電所において本発明を実施する設計基準として用いることができる。
【0046】
【表1】
ここで、放射能レベルと放出質量換算値との双方の点について、希ガスの寄与が有意に大きいことに注目されたい。
【0047】
システムを動作させるための十分な駆動圧で、すなわち少なくとも1バールの圧力で、有利には少なくとも10バールの絶対圧で、5バールでの平均比重が4kg/mである少なくとも1kg/sの流速の高湿度の空気を処理することができ、かつ、数ヶ月の期間にわたって、典型的には3ヶ月にわたって1kg以上のオーダの放射性ヨウ素を処理することができるように、本方法を調整することができる。前記流速は有利には3.5kg/sである。
【0048】
本方法は具体的には、処理対象である流体の上述のデータすべてを考慮した非汚染性処理を実現することを対象としており、その場合の所要浄化係数は以下の通りである:
・エアロゾルの場合、本方法の浄化係数は1,000を上回る。
・無機ヨウ素(I)の場合、浄化係数は1,000を上回る。
・有機ヨウ素(ICH)の場合、浄化係数は100を上回る。
・本方法は有利には、非常に高い浄化係数を示し、特に希ガスでは1,000を上回る高い浄化係数を示した。
・四酸化ルテニウム(RuO)では、本方法の浄化係数は100を上回る。
・本方法はまた、空気を含む放射性ガスを処理することにより、時間をかけて格納容器内部の放射能を希釈化することも目的とする。
【0049】
上述の浄化係数は、濾過装置にて測定された上流と下流との比として定義されている。
【0050】
本方法は膜濾過方法を用いて、格納容器の脱ガス処理を行い、格納容器内に生じている圧力がかかった状態で最低でも3.5〜7kg/sの流量の空気、蒸気、O,NO,NHO,HNO,HNO,Nの種類のガスを含む流体であって、格納容器内にて生じた核分裂生成物(エアロゾル、蒸気、ならびに、たとえば希ガス、無機ヨウ素および有機ヨウ素等のガスの形態)を含む流体を、放出する。
【0051】
本方法は有利には、キャリアガスとしてたとえば窒素等の不活性ガスを用いる。本方法による処理対象である流体は、水や蒸気によって飽和することができる。再結合を回避し、かつ、あろうと無かろうと、処理対象の流体中に含まれる水によって膜が酸化する危険性を回避するためには、ガスにより完全に飽和し、かつ当該ガスにより加圧された水を圧力差によって、複数のユニットの、典型的には4つのユニットの疎水性の脱ガス膜200へ送る。膜分離は、ふるい分け、吸着および/または拡散により実現される。このようにしてたとえば窒素等のキャリアガスにより輸送されるガスは、特に浸透圧による拡散および分離によって、疎水性膜を通過し(中空繊維を用いた脱ガス手法)、カスケード配列または一列の選択性ガス拡散膜の複数のユニット210,220,230・・・へ送られる。このことにより、要求および/またはメリットに応じてガスの分別および選択を行うことができる。
【0052】
上述の膜分離方法は、分離すべき分子に対する膜の選択的保持特性に基づいている。カスケード配列において最初の幾つかのガス拡散膜により、上述のデータ全てを考慮して、必要な浄化係数に拠っては全ての希ガスを回収することができる。
【0053】
これらは、特にキセノン、クリプトンおよびアルゴンの分離を保証できるセラミック(放射能に対して不活性)をベースとする選択膜である。また、これらの膜を、たとえばカーバイド、ケブラーまたはポリマー等の他の適切な材料で、特にシリカ、タングステンまたはチタンのカーバイドで作製することができる。前記ポリマーは特に、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)である。このようにして分離されて濃縮水中に含まれるガスは全て、圧縮した形態で封入貯蔵器内に貯蔵することができ、各封入容器がそれぞれ1種類のガス種のみを封入することができる。このような封入貯蔵器により、核分裂生成物の貯蔵および放射能崩壊を実現することができ、なおかつ場合によっては、捕捉したガスを再利用、中和し、最終的にガスを空気中に希釈化させて放出することさえも可能になる。
【0054】
上記膜のガス拡散および選択透過性により、無機ヨウ素および有機ヨウ素の双方を捕捉するための特別なセラミック膜にガスを透過させることができる。
【0055】
また、たとえばセシウム等のターゲット成分を捕捉する環状のカリックス4アレーン分子がグラフト結合された1つ(または複数)の膜に通過させることができ、かつ、その後に同一の原理で、ストロンチウムを捕捉する膜(たとえば、ストロンチウムに対して特有の親和性を有するという理由で選択される他のカリックスアレーン)に通過させることも可能になる。
【0056】
各1つの膜がそれぞれ、内側表面と外側表面とを備えた壁を有する。この壁は細孔Pを有する。この壁は、円筒形または平面とすることができる。複数の壁を重ね合わせることができ、円筒形の場合には同軸に重ね合わせ、平面形の場合には積層させることができる。
【0057】
図4に、チューブ形状を有する膜210の構造の細部を概略的に示す。膜の壁は、排出ガスの有害成分を保持するための細孔Pを有する。この細孔の材料および寸法に依存して、膜は、所定の成分を濾過する専用の膜となる。細孔の寸法は、たとえば図4に示された配置では径方向に変化していき、かつ軸方向において変化していき、たとえば外側から内側に向かって小さくなっていき、かつ、左側から右側に向かうほど小さくなっていく。この実施例では、濾過対象のガス流は膜の外側において矢印Aの方向に流れるのに対し、キャリアガスは膜の内側において逆方向に、矢印Bの方向に流れる。ガス流中に含まれる濾過対象の成分は、外側から内側へ膜の壁を越えるときに、最大細孔から最小細孔へ通過することにより分離していく。この分離は、圧力がかかった状態で、膜壁の内側と外側との間の圧力差により、または拡散により機能することができる。
【0058】
膜は、キャリブレーションされた中空の多孔質繊維を有するモジュールである。この繊維を螺旋状に巻くことにより、流れにさらされる場所を大きくして高い脱ガス率を実現すると同時に、圧力降下を最小限にすることができる。孔径は、1段ごとに数nmまで縮小していくように制御されている。このようにして、膜表面の径方向と長手方向とにおいて膜の多孔率が変化し、捕捉対象の分子サイズに適合したものとなる。セラミック材料での有利な一実施形態では、さらに、放射能に関して材料全体が無害になる。
【0059】
キャリアガスNを選択することにより、NO,HNO,HNO,Nの種類のガスを窒素とHOとに再結合することができる。選択膜の出口では、ガス汚染度を測定することにより、最初の段階において、処理された清浄な放出流体を、制御される電磁弁により冷却放出煙突に送ることができる。
【0060】
この電磁弁は、回収された窒素の一部または全部を戻り管路130上にて送ることにより、格納容器内部の汚染物を希釈することも可能にする。このことは、窒素分離膜を介して、放射性成分を全く含まない、酸素富化した空気を送り戻すことにより実現することができる。
【0061】
水のコンディショニングにおける圧力が、システムの構造的特徴により定まる下限値より、典型的には1.5バールより上回る場合には、前記方法は外部エネルギーを用いなくても機能する。回路のインレットバルブのうち1つを手動で開けることにより、キャリアガス(一般的には窒素)を貯蔵するための貯蔵シリンダが自動的に加圧され、このキャリアガスが膨張弁を介して回路内に引き込まれる。
【0062】
他方、圧力が下限値より、典型的には1.5バールより低い場合には、アクチュエータを用いて、または加圧される外部回路を用いて、たとえば真空コンプレッサを用いて、疎水性膜からガスを脱ガス処理する。
【0063】
上述のような実施形態は、交換器内部の排気を行う真空ポンプを含んでおり、これは、自動パージ装置と、水をコンディショニングのために送り戻すブースタポンプとを備えている。この真空ポンプは、吸入したガスを圧縮することにより、選択膜側にて高圧を生成するものである。
【0064】
選択膜の低圧側は、空気冷却塔により行われる吸気と、ファンによる格納容器内部の循環空気の吸気とのいずれかにより実現される。
【0065】
有利には前記方法は、
特に排出放射能を低減するための金属プリフィルタを用いた、第1の全量濾過と、
処理対象の排出物から空気、CO2、CO、蒸気および残留水を分離するための第2のタンジェンシャル濾過と、
たとえば有機ヨウ素や無機ヨウ素、希ガス等の有害成分を分離および貯蔵し、かつ、残りの空気、CO2およびCOを煙突150へ放出するための、ガス拡散による第3の濾過と、
ガス浸透により窒素等のキャリアガスを回収して再利用するための、または戻り管路130を介して格納容器100内部を希釈化するための第4の濾過と
を有する。
【0066】
事故時以外にも、予定通りの介入を行っている間に、格納容器に介入をより迅速にできるようにするために、本方法を用いて格納容器の放射性の周辺を処理することも可能である。このことは特に図3に示されており、同図では、両壁110および120間に挟まれている雰囲気が持続的にモニタリングされている。このようにして、内側壁110に漏れが生じた場合には、この漏れを修繕する次の保守時までに、放出物を連続的に濾過することができる。このことにより、漏れが生じたときの発電所の停止が回避される。
【0067】
本方法の特別な利点は、その信頼性と、特に高い有効性である。実際、有害成分の99.5%以上を捕捉することができ、既存の装置とは異なり、希ガスにも有効である。
【0068】
本方法は非分散技術を用いており、発泡やエマルジョンの恐れが無い。濾過システムはロバストであり、回転型の吸収カラムとは異なって可動部品を全く有さない。本方法は、格納容器の圧力変化や、湿度や、温度変動に影響を受けることなく機能することができる。本方法は、容易に産業レベルで実現することができ、特に、流量に対する拡張の線形比例関係を考慮して実現することができる。また、既存の装置よりも明らかに採算性が高い。
【0069】
本方法はモジュール原理を採用し、そのために適した技術を、特に接続、組立および封止において用いる。このモジュール性によりフレキシビリティを向上させ、かつ、格納容器の汚染成分と達成すべき回収率とに応じてモジュール数を調整することができる。
【0070】
モジュールの製造は、膜表面積が数百mから数千mである場合に、積算した長さが1,000kmにまで及ぶように数千から100万個以上の素繊維を組み合わせることにより行われる。
【0071】
本方法は、チューブ形の交換器の構造を有する中空繊維と、高圧(HP)回路と低圧(LP)回路と筒形面とカレンダーサイズとを有するモジュールを備えている。本方法は特に、そのコンパクト性に関して有利である。というのも、固有の交換表面積はカラムの交換表面積よりも格段に大きくなり、30〜300m/mだったのが2,000〜3,000m/mになるからである。
【0072】
本方法により、希ガスを含んだすべての放射性ガスを選択的に脱ガス処理することができる。
【0073】
本方法により、ガスを固体廃棄物に変換するためにゼオライトを用いて処理したりまたは後で利用する場合には、こうするためにガスの圧縮貯蔵からガス放出までを完全に管理することができる。
【0074】
本方法を換気システムに取り付けることにより、放出する手段が2重にあるシステムにより、格納容器の汚染を希釈させることができる。
【0075】
放出ガスを処理するために本方法を使用することにより、希ガスを完全管理することができる。
【0076】
原子力発電所の回路から出た排出ガスを処理するために本方法を使用することにより、当該排出ガスの放射性ガスや、環境に危険なガスを完全管理することができる。
【0077】
噴射回路の処理において生じた有害ガスを回収するための回路に本方法を取り付けることにより、この有害ガスを回収および処理することが可能になる。
【0078】
膜分離の性能は、膜固有の以下の特性を組み合わせたものである:
・選択性、
・透過性、
・たとえば圧力、温度、モジュールにおける流れの構成等である動作パラメータ。
【0079】
膜方法の他の1つの重要なパラメータは、膜の両側に生じる圧力差である。(高圧側を昇圧することにより、または低圧側を降圧することにより)この圧力差が増大すると、透過を生じさせる駆動力が増大し、分離がより容易になる。
【0080】
ガス分離に関する用途では、透過水の低圧側は、ガスを生成する圧力が最適化に重要なパラメータとなり、高圧側は一般的に、上流のプロセスにより設定されることが多い。膜の分離性能については、低圧側を可能な限り低圧にできることが望ましい。
【0081】
他の1つの実施形態では、上記にて原子力発電所の場合について説明した、複数の膜を用いた分別方法を、他の種類の産業用設備において、特に化学プラントにおいて使用することもできる。膜の数および種類は、濾過および分別対象の成分に応じて選定される。
【0082】
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、当業者であれば、特許請求の範囲において特定した本発明の範囲から逸脱することなく、いかなる有用な変更も行うことが可能であることは明らかである。
図1
図2
図3
図4