(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0018】
(実施の形態1)
<回路構成について>
図1は、一実施の形態の半導体装置(半導体チップ)を用いた電子装置(半導体装置)の一例を示す回路図である。なお、
図1において、点線で囲まれた部分が、半導体チップCP1内に形成され、一点鎖線で囲まれた部分が半導体チップCP2内に形成され、二点差線で囲まれた部分が半導体パッケージPKG内に形成されている。
【0019】
図1に示される電子装置は、半導体チップCP1,CP2を内蔵する半導体パッケージPKGを備えている。半導体チップCP1内には、送信回路TX1および受信回路RX2と制御回路CCとが形成され、半導体チップCP2内には、受信回路RX1および送信回路TX2と駆動回路DRとが形成されている。
【0020】
送信回路TX1および受信回路RX1は、制御回路CCからの制御信号を駆動回路DRに伝達するための回路である。また、送信回路TX2および受信回路RX2は、駆動回路DRからの信号を制御回路CCに伝達するための回路である。制御回路CCは、駆動回路DRを制御または駆動し、駆動回路DRは、負荷LODを駆動する。半導体チップCP1,CP2は半導体パッケージPKGに内蔵され、負荷LODは、半導体パッケージPKGの外部に設けられている。
【0021】
送信回路TX1と受信回路RX1との間には、磁気結合(誘導結合)したコイル(インダクタ)CL1a,CL2aからなるトランス(変成器、変換器、磁気結合素子、電磁結合素子)TR1が介在しており、送信回路TX1から受信回路RX1へ、このトランスTR1を介して(すなわち磁気結合したコイルCL1a,CL2aを介して)信号を伝達することができる。これにより、半導体チップCP2内の受信回路RX1は、半導体チップCP1内の送信回路TX1が送信した信号を受信することができる。従って、制御回路CCは、送信回路TX1、トランスTR1および受信回路RX1を介して、駆動回路DRに信号(制御信号)を伝達することができる。このトランスTR1(コイルCL1a,CL2a)は、半導体チップCP1内に形成されている。コイルCL1aおよびコイルCL2aは、それぞれインダクタとみなすこともできる。また、トランスTR1は、磁気結合素子とみなすこともできる。
【0022】
また、送信回路TX2と受信回路RX2との間には、磁気結合(誘導結合)したコイル(インダクタ)CL1b,CL2bからなるトランス(変成器、変換器、磁気結合素子、電磁結合素子)TR2が介在しており、送信回路TX2から受信回路RX2へ、このトランスTR2を介して(すなわち磁気結合したコイルCL1b,CL2bを介して)信号を伝達することができる。これにより、半導体チップCP1内の受信回路RX2は、半導体チップCP2内の送信回路TX2が送信した信号を受信することができる。従って、駆動回路DRは、送信回路TX2、トランスTR2および受信回路RX2を介して、制御回路CCに信号を伝達することができる。このトランスTR2(コイルCL1b,CL2b)は、半導体チップCP2内に形成されている。コイルCL1bおよびコイルCL2bは、それぞれインダクタとみなすこともできる。また、トランスTR2は、磁気結合素子とみなすこともできる。
【0023】
トランスTR1は、半導体チップCP1内に形成されたコイルCL1a,CL2aにより形成されているが、コイルCL1aとコイルCL2aとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このため、コイルCL1aに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL2aに誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。コイルCL1aが一次コイルで、コイルCL2aが二次コイルである。これを利用して、送信回路TX1からトランスTR1のコイルCL1a(一次コイル)に信号を送って電流を流し、それに応じてトランスTR1のコイルCL2a(二次コイル)に生じた誘導電流(または誘導起電力)を受信回路RX1で検知(受信)することで、送信回路TX1が送った信号に応じた信号を、受信回路RX1で受け取ることができる。
【0024】
また、トランスTR2は、半導体チップCP2内に形成されたコイルCL1b,CL2bにより形成されているが、コイルCL1bとコイルCL2bとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このため、コイルCL1bに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL2bに誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。コイルCL1bが一次コイルで、コイルCL2bが二次コイルである。これを利用して、送信回路TX2からトランスTR2のコイルCL1b(一次コイル)に信号を送って電流を流し、それに応じてトランスTR2のコイルCL2b(二次コイル)に生じた誘導電流(または誘導起電力)を受信回路RX2で検知(受信)することで、送信回路TX2が送った信号に応じた信号を、受信回路RX2で受け取ることができる。
【0025】
制御回路CCから送信回路TX1、トランスTR1および受信回路RX1を経由して駆動回路DRに至る経路と、駆動回路DRから送信回路TX2、トランスTR2および受信回路RX2を経由して制御回路CCに至る経路とにより、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間で信号の送受信を行う。すなわち、送信回路TX1が送信した信号を受信回路RX1が受信し、送信回路TX2が送信した信号を受信回路RX2が受信することにより、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間で信号の送受信を行うことができる。上述のように、送信回路TX1から受信回路RX1への信号の伝達には、トランスTR1(すなわち磁気結合したコイルCL1a,CL2a)が介在し、また、送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達には、トランスTR2(すなわち磁気結合したコイルCL1b,CL2b)が介在する。駆動回路DRは、半導体チップCP1から半導体チップCP2に送信された信号(すなわち送信回路TX1からトランスTR1を介して受信回路RX1に送信された信号)に応じて、負荷LODを駆動させることができる。負荷LODとしては、用途に応じて様々な負荷があるが、例えばモータなどを例示できる。
【0026】
半導体チップCP1と半導体チップCP2とは、電圧レベル(基準電位)が異なっている。例えば、半導体チップCP1は、低電圧(例えば数V〜数十V)で動作または駆動される回路を有する低電圧領域に、後述のワイヤBWおよびリードLDなどを介して接続される。また、半導体チップCP2は、前記低電圧よりも高電圧(例えば100V以上)で動作または駆動される回路(例えば負荷LODや負荷LOD用のスイッチなど)を有する高電圧領域に、後述のワイヤBWおよびリードLDなどを介して接続される。しかしながら、半導体チップCP1,CP2間での信号の伝達はトランスTR1,TR2を介在しているため、異電圧回路間での信号の伝達が可能である。
【0027】
なお、
図1では、制御回路CCを半導体チップCP1内に内蔵させる場合について示しているが、他の形態として、制御回路CCを半導体チップCP1,CP2以外の半導体チップに内蔵させることもできる。また、
図1では、駆動回路DRを半導体チップCP2内に内蔵させる場合について示しているが、他の形態として、駆動回路DRは、半導体チップCP1,CP2以外の半導体チップに内蔵させることもできる。
【0028】
<信号の伝送例について>
図2は、信号の伝送例を示す説明図である。
【0029】
送信回路TX1は、送信回路TX1に入力された方形波の信号SG1を微分波の信号SG2に変調して、トランスTR1のコイルCL1a(一次コイル)に送る。この微分波の信号SG2による電流がトランスTR1のコイルCL1a(一次コイル)に流れると、それに応じた信号SG3が誘導起電力によりトランスTR1のコイルCL2a(二次コイル)に流れる。この信号SG3を受信回路RX2で増幅し、更に方形波に変調することで、方形波の信号SG4が受信回路RX2から出力される。これにより、送信回路TX1に入力された信号SG1に応じた信号SG4を、受信回路RX2から出力することができる。このようにして、送信回路TX1から、受信回路RX1に信号が伝達される。送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達も、同様に行うことができる。
【0030】
また、
図2では、送信回路から受信回路への信号の伝達の一例を挙げたが、これに限定されず、種々変更可能であり、磁気結合されたコイル(一次コイルおよび二次コイル)を介して信号を伝達する手法であればよい。
【0031】
<半導体チップの構造について>
図3は、本実施の形態の半導体チップCP1,CP2の断面構造を概念的に示す断面図である。
【0032】
図3を参照して、半導体チップCP1の構造について説明する。なお、半導体チップは半導体装置とみなすこともできる。
【0033】
図3に示されるように、半導体チップCP1を構成する単結晶シリコンなどからなる半導体基板SB1に、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子が形成されている。なお、他の形態として、半導体基板SB1として、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることもできる。
【0034】
例えば、半導体基板SB1にp型ウエルPWおよびn型ウエルNWが形成され、p型ウエルPW上にゲート絶縁膜GIを介してnチャネル型MISFET用のゲート電極GE1が形成され、n型ウエルNW上にゲート絶縁膜GIを介してpチャネル型MISFET用のゲート電極GE2が形成されている。ゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜などからなり、ゲート電極GE1,GE2は、例えば、不純物を導入した多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)などからなる。
【0035】
p型ウエルPW内には、nチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のn型半導体領域SD1が形成され、n型ウエルNW内には、pチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のp型半導体領域SD2が形成されている。ゲート電極GE1と、そのゲート電極GE1の下のゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GE1の両側のn型半導体領域SD1(ソース・ドレイン領域)とにより、nチャネル型MISFETが形成される。また、ゲート電極GE2と、そのゲート電極GE2の下のゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GE2の両側のp型半導体領域SD2(ソース・ドレイン領域)とにより、pチャネル型MISFETが形成される。
【0036】
また、p型ウエルPWの上層部(表層部)の一部には、p型ウエルPWに接するように、p型ウエルPWよりも高不純物濃度のp型半導体領域PRが形成されている。配線(M1〜M5)やプラグV1から、このp型半導体領域PRを介してp型ウエルPWに所定の電位(例えばグランド電位または電源電位)を給電することができる。また、n型ウエルNWの上層部(表層部)の一部には、n型ウエルNWに接するように、n型ウエルNWよりも高不純物濃度のn型半導体領域NRが形成されている。配線(M1〜M5)やプラグV1から、このn型半導体領域NRを介してn型ウエルNWに所定の電位(例えばグランド電位または電源電位)を給電することができる。
【0037】
また、半導体基板SB1に更に抵抗素子(図示せず)や容量素子(図示せず)などを必要に応じて形成することもできる。
【0038】
半導体基板SB1上には、複数の層間絶縁膜と複数の配線層とにより多層配線構造が形成されている。
【0039】
具体的には、半導体基板SB1上に、複数の層間絶縁膜が形成され、この複数の層間絶縁膜に、プラグV1、配線M1,M2,M3,M4,M5およびビア部V2,V3,V4,V5がそれぞれ形成されている。
【0040】
なお、
図3では、図面の簡略化のために、半導体基板SB1上に形成された複数の層間絶縁膜を、層で分けずに一括して層間絶縁膜ILとして示している。
【0041】
配線M1は、第1配線層(最下層の配線層)の配線である。配線M2は、第1配線層よりも1つ上層の配線層である第2配線層の配線である。配線M3は、第2配線層よりも1つ上層の配線層である第3配線層の配線である。配線M4は、第3配線層よりも1つ上層の配線層である第4配線層の配線である。配線M5は、第4配線層よりも1つ上層の配線層である第5配線層の配線である。
【0042】
プラグV1は、導電体からなり、配線M1の下層に形成され、プラグV1の上面が配線M1の下面に接することで、配線M1に電気的に接続されている。また、プラグV1の底部は、半導体基板SB1に形成された種々の半導体領域(例えばn型半導体領域SD1、p型半導体領域SD2、n型半導体領域NR、p型半導体領域PRなど)や、ゲート電極GE1,GE2などに接続されている。これにより、配線M1は、プラグV1を介して、半導体基板SB1に形成された種々の半導体領域やゲート電極GE1,GE2などに電気的に接続される。
【0043】
ビア部V2は、導電体からなり、配線M2と配線M1との間に形成されて、配線M2と配線M1とを接続している。ビア部V2は、配線M2と一体的に形成することもできる。また、ビア部V3は、導電体からなり、配線M3と配線M2との間に形成されて、配線M3と配線M2とを接続している。ビア部V3は、配線M3と一体的に形成することもできる。また、ビア部V4は、導電体からなり、配線M4と配線M3との間に形成されて、配線M4と配線M3とを接続している。ビア部V4は、配線M4と一体的に形成することもできる。また、ビア部V5は、導電体からなり、配線M5と配線M4との間に形成されて、配線M5と配線M4とを接続している。ビア部V5は、配線M5と一体的に形成することもできる。
【0044】
各配線M1,M2,M3,M4,M5は、層間絶縁膜上に形成した導電膜をパターニングする手法や、あるいは、層間絶縁膜に形成した溝に導電膜を埋め込む手法(いわゆるダマシン法)などにより、形成することができる。
【0045】
また、
図3では、半導体基板SB1上に形成される配線層の数が5層の場合(配線M1,M2,M3,M4,M5の計5層の場合)を示しているが、配線層の数は5層に限定されず、種々変更可能である。
【0046】
半導体基板SB1上に、トランスTR1の一次コイル(コイルCL1a)と二次コイル(コイルCL2a)とが形成されている。コイルCL1aとコイルCL2aとは、同層に形成されているのではなく、互いに異なる層に形成されており、コイルCL1aとコイルCL2aとの間には、絶縁層が介在している。また、下層側のコイルCL
1aは、半導体基板SB1に接して形成されているのではなく、半導体基板SB1上に形成された層間絶縁膜上に、コイルCL1aが形成されている。
【0047】
以下、コイルCL1a,CL2aについて、
図3を参照して更に具体的に説明する。
【0048】
コイルCL1aとコイルCL2aとは、半導体基板SB1上に形成された複数の配線層のうちのいずれかの配線層により、それぞれ形成されている。すなわち、コイルCL1aとコイルCL2aとは、配線M1,M2,M3,M4,M5のいずれかと同層に形成されている。但し、コイルCL1aが形成される配線層と、コイルCL2aが形成される配線層とは、互いに異なる配線層とされている。コイルCL2aは、コイルCL1aの上方に形成されているため、コイルCL1aが形成される配線層よりも上層の配線層により、コイルCL2aが形成されている。
【0049】
図3の場合は、第5配線層によりコイルCL2aが形成され(すなわち配線M5と同層にコイルCL2aが形成され)、第3配線層によりコイルCL1aが形成されている(すなわち配線M3と同層にコイルCL1aが形成されている)が、これに限定されるものではない。例えば、コイルCL1aは、コイルCL2aよりも下層であればよく、第3配線層よりも上層または下層の配線層により形成することもできる。一方、コイルCL2aは、最上層の配線層(ここでは第5配線層)により形成することが好ましく、これにより、コイルCL2aをパッド(パッド電極、ボンディングパッド)に接続しやすくなる。
【0050】
コイルCL1aを第3配線層により形成した場合は、コイルCL1aは、配線M3と同層の導電層により同工程で形成することができる。例えば、配線M3をダマシン法を用いて形成する場合には、コイルCL1aも配線M2と同工程でダマシン法を用いて形成でき、この場合、配線M3およびコイルCL1aは、層間絶縁膜の溝に埋め込まれた導電膜(例えば銅を主体とする導電膜)により形成される。また、例えば、層間絶縁膜上に形成した導電膜をパターニングすることで配線M3を形成する場合は、その導電膜をパターニングすることで、配線M3およびコイルCL1aを形成することができる。
【0051】
コイルCL2aを第5配線層により形成した場合は、コイルCL2aは、配線M5と同層の導電層により同工程で形成することができる。例えば、層間絶縁膜上に形成した導電膜をパターニングすることで配線M5を形成する場合は、その導電膜をパターニングすることで、配線M5およびコイルCL2aを形成することができる。また、最上層の配線層(ここでは配線M5)により、パッド(パッド電極、ボンディングパッド)を形成することができる。
【0052】
コイルCL2aとコイルCL1aとの間には、絶縁層(層間絶縁膜ILを構成する複数の層間絶縁膜のうちの1層以上の層間絶縁膜に対応)が介在している。例えば、コイルCL2aを第5配線層により形成し、コイルCL1aを第3配線層により形成した場合は、第3配線層よりも上層でかつ第5配線層よりも下層の層間絶縁膜(すなわち第3配線層と第5配線層との間の層間絶縁膜)が、コイルCL2aとコイルCL1aとの間に介在することになる。このため、コイルCL2aとコイルCL1aとは、導体では繋がっておらず、電気的には絶縁された状態となっている。但し、上述のように、コイルCL2aとコイルCL1aとは磁気的に結合している。
【0053】
半導体チップCP1の最上層には、絶縁性の保護膜(表面保護膜)PA1が形成されており、この保護膜PA1により、配線M5およびコイルCL2aが覆われて保護されている。保護膜PA1は、例えば、ポリイミド樹脂などの樹脂膜により形成することができる。
【0054】
但し、パッドが、それぞれ保護膜PA1の開口部から露出されている。半導体チップCP1において、パッドは、配線M5およびコイルCL2aと同層の導電層により形成され、コイルCL2aまたは配線M5と一体的に形成されている。コイルCL2aに接続されているパッドは、ボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を介して、半導体チップCP2のパッドに電気的に接続される。
【0055】
また、半導体チップCP2についても、半導体チップCP1と類似した構成とすることができる。
【0056】
すなわち、
図3に示されるように、半導体チップCP2を構成する単結晶シリコンなどからなる半導体基板SB2に、MISFETなどの半導体素子が形成されている。なお、他の形態として、半導体基板SB1として、SOI基板などを用いることもできる。
【0057】
例えば、半導体基板SB2にp型ウエルPWおよびn型ウエルNWが形成され、p型ウエルPW上にゲート絶縁膜GIを介してnチャネル型MISFET用のゲート電極GE1が形成され、n型ウエルNW上にゲート絶縁膜GIを介してpチャネル型MISFET用のゲート電極GE2が形成されている。p型ウエルPW内には、nチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のn型半導体領域SD1が形成され、n型ウエルNW内には、pチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のp型半導体領域SD2が形成されている。また、p型ウエルPWの上層部の一部には、p型ウエルPWに接するようにp型半導体領域PRが形成され、また、n型ウエルNWの上層部の一部には、n型ウエルNWに接するようにn型半導体領域NRが形成されている。また、半導体基板SB2に更に抵抗素子(図示せず)や容量素子(図示せず)などを形成することもできる。
【0058】
半導体基板SB2上には、複数の層間絶縁膜と複数の配線層とにより多層配線構造が形成されている。
【0059】
具体的には、半導体基板SB2上に、複数の層間絶縁膜(
図3では、複数の層間絶縁膜を一括して層間絶縁膜ILとして示している)が形成され、この複数の層間絶縁膜に、プラグV1、配線M1,M2,M3,M4,M5およびビア部V2,V3,V4,V5がそれぞれ形成されている。なお、
図3では、半導体基板SB2上に形成される配線層の数が5層の場合(配線M1〜M5の計5層の場合)を示しているが、配線層の数は5層に限定されるものではない。
【0060】
また、
図3の断面には示されていないが、半導体基板SB2上に、上記コイルCL1bと上記コイルCL2bとが形成されている。半導体チップCP2におけるコイルCL1bおよびコイルCL2bの構成は、半導体チップCP1におけるコイルCL1aおよびコイルCL2aとそれぞれほぼ同様とすることができるため、ここでは、コイルCL1b,CL2bについての図示および説明は省略する。
【0061】
半導体チップCP2の最上層には、絶縁性の保護膜PA1が形成されており、この保護膜PA1により、配線M5および上記コイルCL2b(
図3では図示せず)が覆われて保護されている。そして、半導体チップCP2において、配線M5または上記コイルCL2aに接続されたパッドが保護膜PA1の開口部から露出されている。
【0062】
半導体チップCP1内に上記送信回路TX1およびコイルCL1a,CL2aが形成されており、半導体チップCP1内に形成されている送信回路TX1は、半導体チップCP1内の内部配線(配線M1〜M5)を介して、コイルCL1aに電気的に接続されている。これにより、送信回路TX1から半導体チップCP1内の内部配線(配線M1〜M5)を介してコイルCL1aに、送信用の信号を送信することができる。半導体チップCP1におけるコイルCL2aに接続されているパッドは、ボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を介して、半導体チップCP2のパッドに電気的に接続され、更に半導体チップCP2の内部配線(M1〜M5)を介して、半導体チップCP2内に形成されている受信回路RX1に電気的に接続される。これにより、コイルCL1aから電磁誘導によりコイルCL2aが受け取った信号(受信信号)を、ボンディングワイヤBW(接続部材)および半導体チップCP2の内部配線(M1〜M5)を介して、半導体チップCP2内の受信回路RX1に送信することができる。
【0063】
同様に、半導体チップCP1内に上記送信回路TX2および上記コイルCL1b,CL2bが形成されており、半導体チップCP2内に形成されている送信回路TX2は、半導体チップCP2内の内部配線(配線M1〜M5)を介して、半導体チップCP2内の上記コイルCL1bに電気的に接続されている。これにより、送信回路TX2から半導体チップCP2内の内部配線(配線M1〜M5)を介してコイルCL1bに、送信用の信号を送信することができる。半導体チップCP2における上記コイルCL2bに接続されているパッドは、ボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を介して、半導体チップCP1のパッドに電気的に接続され、更に半導体チップCP1の内部配線(M1〜M5)を介して、半導体チップCP1内に形成されている受信回路RX2に電気的に接続される。これにより、上記コイルCL1aから電磁誘導により上記コイルCL2aが受け取った信号(受信信号)を、ボンディングワイヤBW(接続部材)および半導体チップCP1の内部配線(M1〜M5)を介して、半導体チップCP1内の受信回路RX1に送信することができる。
【0064】
図4は、本実施の形態の半導体チップCP1,CP2の断面構造の他の例を概念的に示す断面図である。
【0065】
図4の場合が
図3の場合と主に相違している点は、
図4の場合、半導体チップCP1において、保護膜PA1の一部分上に更に絶縁層として樹脂膜RSが形成されており、この樹脂膜RS上にコイルCL2aが形成されていることである。樹脂膜RS上には、コイルCL2aを覆うように、保護膜(保護用の樹脂膜)PA2が形成されている。樹脂膜RSは、例えばポリイミド膜などとすることができる。また、保護膜PA2は、例えばポリイミド膜などとすることができる。
図4の場合、コイルCL2aは、最上層の内部配線層であった第5層配線(配線M5)よりも更に上層に形成されており、この場合、コイルCL2aは、例えば、樹脂膜RS上に導電膜を形成してから、その導電膜をパターニングすることなどにより、形成することができる。
【0066】
保護膜PA2により、コイルCL2aが覆われて保護されているが、保護膜PA2の開口部から、コイルCL2aに接続されているパッドが露出されている。コイルCL2aに接続されているパッドは、コイルCL2aと同層の導電層により形成されており、コイルCL2aと一体的に形成されている。コイルCL2aに接続されているパッドは、ボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を介して、半導体チップCP2のパッドに電気的に接続される。
【0067】
コイルCL1aは、コイルCL2aの下方に形成されるが、樹脂膜RSを設けてこの樹脂膜RS上にコイルCL2aを形成した場合は、樹脂膜RSの下方にコイルCL1aが形成される。
図4の場合は、第5層配線によりコイルCL1aが形成されている(すなわち配線M5と同層にコイルCL1aが形成されている)が、これに限定されるものではない。すなわち、コイルCL1aは、コイルCL2aおよび樹脂膜RSよりも下層であればよく、第5配線層またはそれよりも下層の配線層により形成することができる。
【0068】
また、樹脂膜RSは、層間絶縁膜IL上(あるいは保護膜PA1上)において、コイル(CL2a)を形成する領域に局所的に形成することもできる。
【0069】
図4の場合は、樹脂膜RSを形成する必要があるが、樹脂膜RSは塗布法で形成できるため、工程時間は短い。
【0070】
一方、
図3の場合は、コイルCL2aとコイルCL1aとの間の耐圧(絶縁耐圧)は、層間絶縁膜(IL)により確保し、樹脂膜RSおよび保護膜PA2に相当するものを形成しない分、製造工程数や製造コストを低減することができる。
【0071】
また、
図4の場合において、半導体チップCP2にも樹脂膜RSおよび保護膜PA2に相当するものを設け、その樹脂膜RS上に上記コイルCL2bを形成することもできる。
【0072】
<コイルの構成について>
次に、半導体チップCP1内に形成されたトランスTR1(を構成するコイル)の詳細構成について説明する。
【0073】
図5〜
図7は、本実施の形態の半導体チップCP1の要部平面図である。
図8〜
図10は、本実施の形態の半導体チップCP1の要部断面図である。
図11は、半導体チップCP1内に形成されたトランスTR1の回路構成を示す回路図である。
【0074】
なお、
図5と
図6と
図7とは、半導体チップCP1における同じ平面領域が示されているが、層が異なっており、
図6は
図5よりも下層が示され、
図7は
図6よりも下層が示されている。具体的には、
図5には、半導体チップCP1に形成されたトランスTR1の二次側のコイル(コイルCL5,CL6)が示され、
図6には、半導体チップCP1に形成されたトランスTR1の一次側のコイル(コイルCL7,CL8)が示され、
図7には、半導体チップCP1に形成されたトランスTR1の一次側のコイルの引き出し用の配線(引出配線HW2,HW3)が示されている。また、一次側のコイル(CL7,CL8)とその引き出し用の配線(引出配線HW2,HW3)との相対的な位置関係が分かりやすいように、
図6では引出配線HW2,HW3を点線で示し、
図7では
図6において実線で示されているパターン(すなわちコイル配線CW7,CW8と接続配線HW4とダミー配線DW3,DW4)を点線で示してある。また、
図5〜
図7のA1−A1線での断面図が
図8に対応し、
図5〜
図7のA2−A2線での断面図が
図9に対応し、
図5〜
図7のA3−A3線での断面図が
図10に対応している。
【0075】
上述のように、半導体チップCP1内にトランスTR1用の一次コイルと二次コイルとが形成され、一次コイルと二次コイルのうち、一次コイルが下側に、二次コイルが上側に形成されている。すなわち、一次コイルの上方に二次コイルが配置され、二次コイルの下方に一次コイルが配置されている。
【0076】
ここで、一次コイルと二次コイルとをそれぞれ2つのコイルで構成し、すなわち、トランスTR1を2つのトランスで構成し、この2つのトランスを差動で動作させると、ノイズ耐性が高くなる。
【0077】
そこで、本実施の形態では、
図11に示されるように、トランスTR1の一次コイル(上記コイルCL1aに相当するもの)を、直列に接続されたコイルCL7とコイルCL8とで形成し、トランスTR1の二次コイル(上記コイルCL2aに相当するもの)を、パッドPD5とパッドPD6との間に直列に接続されたコイルCL5とコイルCL6とで形成した構成を採用している。この場合、コイルCL7とコイルCL5とが磁気結合(誘導結合)され、コイルCL8とコイルCL6とが磁気結合(誘導結合)される。直列に接続されたコイルCL7,CL8は送信回路TX1に接続されている。また、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が電気的に接続されている。これらコイルCL5,CL6,CL7,CL8とパッドPD5,PD6,PD7と送信回路TX1とは、半導体チップCP1内に形成されている。半導体チップCP1のパッドPD5,PD6,PD7は、上記ボンディングワイヤBWのような導電性の接続部材と半導体チップCP2の内部配線(配線M1〜M5)を介して、半導体チップCP2内の受信回路RX1に接続される。
【0078】
このため、半導体チップCP1において、送信回路TX1から一次コイルであるコイルCL7とコイルCL8に送信用の信号を送って電流を流すと、コイルCL7とコイルCL8に流れる電流の変化に応じて、二次コイルであるコイルCL5とコイルCL6に誘導起電力が生じて誘導電流が流れる。コイルCL5とコイルCL6に生じる誘導起電力または誘導電流は、パッドPD5,PD6,PD7から、上記ボンディングワイヤBWのような導電性の接続部材と半導体チップCP2の内部配線(配線M1〜M5)を介して半導体チップCP2内の受信回路RX1で検知することができる。これにより、半導体チップCP1の送信回路TX1からの信号を、電磁誘導により、コイルCL7,CL8,CL5,CL6を介して、半導体チップCP2の受信回路RX1に伝達することができる。パッドPD7には、半導体チップCP2から固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)が供給されるため、コイルCL5の誘導起電力または誘導電流と、コイルCL6の誘導起電力または誘導電流とを検出して差動で制御(動作)することができる。
【0079】
以下、
図5〜
図10を参照して、これらコイルCL5,CL6,CL7,CL8とパッドPD5,PD6,PD7の具体的な構成について説明する。
【0080】
まず、二次コイルであるコイルCL5,CL6とそれに接続されたパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD5,PD6,PD7の具体的な構成について説明する。
【0081】
図5および
図8〜
図11に示されるように、パッドPD5とパッドPD6との間に、2つのコイル(インダクタ)CL5,CL6が直列に接続されている。そして、コイルCL5とコイルCL6との間に、パッドPD7が電気的に接続されている。
【0082】
コイルCL5とコイルCL6とは、半導体チップCP1内において、同層に形成されており、コイルCL5は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW5により形成され、コイルCL6は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW6により形成されている。また、コイルCL5およびコイルCL6は、それぞれ平面的に形成されている。コイルCL5およびコイルCL6は、それぞれインダクタとみなすこともできる。
【0083】
また、
図6および
図8〜
図11に示されるように、2つのコイル(インダクタ)CL7,CL8が直列に接続されている。
図6および
図8に示されるように、コイルCL7とコイルCL8とは、半導体チップCP1内において、同層に形成されており、コイルCL7は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW7により形成され、コイルCL8は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW8により形成されている。また、コイルCL7およびコイルCL8は、それぞれ平面的に形成されている。コイルCL7およびコイルCL8は、それぞれインダクタとみなすこともできる。
【0084】
図8〜
図10からも分かるように、半導体チップCP1内において、コイルCL7,CL8は、コイルCL5,CL6よりも下層に形成されている。つまり、半導体チップCP1内において、コイルCL5とコイルCL6とは、互いに同層に形成され、コイルCL7とコイルCL8とは、互いに同層に形成されているが、コイルCL7,CL8は、コイルCL5,CL6よりも下層に配置され、コイルCL5,CL6は、コイルCL7,CL8よりも上層に配置されている。
【0085】
そして、コイルCL7はコイルCL5の直下に配置され、コイルCL8はコイルCL6の直下に配置されている。すなわち、コイルCL7は、平面視でコイルCL5と重なるように配置され、コイルCL8は、平面視でコイルCL6と重なるように配置されている。換言すれば、コイルCL5はコイルCL7の直上に配置され、コイルCL6はコイルCL8の直上に配置されている。すなわち、コイルCL5は、平面視でコイルCL7と重なるように配置され、コイルCL6は、平面視でコイルCL8と重なるように配置されている。
【0086】
コイルCL5およびコイルCL6は、トランスTR1の二次コイルであり、上記コイルCL2aに対応するものである。また、コイルCL7およびコイルCL8は、トランスTR1の一次コイルであり、上記コイルCL1aに対応するものである。コイルCL5とコイルCL7とが磁気的に結合し、コイルCL6とコイルCL8とが磁気的に結合している。すなわち、コイルCL5とコイルCL7とは、導体では繋がっていないが、磁気的に結合しており、コイルCL6とコイルCL8とは、導体では繋がっていないが、磁気的に結合している。一方、コイルCL5とコイルCL6とは導体で繋がっており、コイルCL7とコイルCL8とは導体で繋がっている。
【0087】
なお、
図8〜
図10の断面図は、上記
図4の構造を適用した場合が示されており、樹脂膜RS上に二次コイル(コイルCL5,CL6)が形成され、樹脂膜RSの下に一次コイル(コイルCL7,CL8)が形成されているが、上記
図3の構造を適用することもできる。
【0088】
パッドPD5,PD6,PD7は、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)と同層の導電層により形成されている。コイル配線CW5,CW6および引出配線HW1は、半導体チップCP1の最上層の保護膜(
図8〜
図10の場合は保護膜PA2)により覆われているが、パッドPD5,PD6,PD7は、この保護膜(PA2)に設けられた開口部OPから露出されている。
図5では、この開口部OPを点線で示してある。また、パッドPD5,PD6,PD7の表面には、ニッケル(Ni)膜とニッケル膜上の金(Au)膜との積層膜などからなる下地金属膜UMを形成することもでき、これにより、ボンディングワイヤBWなどの接続部材をパッドPD5,PD6,PD7に接続しやすくなっている。
【0089】
コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7について、
図5および
図8〜
図10を参照して更に説明する。
【0090】
図5および
図8〜
図10に示されるように、パッドPD5は、コイルCL5の渦巻の内側に配置されており、このパッドPD5にコイルCL5の一端が接続されている。すなわち、パッドPD5に接続されたコイル配線CW5が、このパッドPD5の周囲を複数回、周回することにより、コイルCL5が形成されている。
図5の場合は、パッドPD5に接続されたコイル配線CW5が、このパッドPD5の周囲を右回り(時計回り)に周回して、コイルCL5が形成されている。コイル配線CW5同士は交差しないため、パッドPD5に接続されたコイル配線CW5は、パッドPD5の周囲を右回り(時計回り)に周回する度に、パッドPD5から遠い側に徐々にずれていく。
【0091】
また、パッドPD6は、コイルCL6の渦巻の内側に配置されており、このパッドPD6にコイルCL6の一端が接続されている。すなわち、パッドPD6に接続されたコイル配線CW6が、このパッドPD6の周囲を複数回、周回することにより、コイルCL6が形成されている。
図5の場合は、パッドPD6に接続されたコイル配線CW6が、このパッドPD6の周囲を右回り(時計回り)に周回して、コイルCL6が形成されている。コイル配線CW6同士は交差しないため、パッドPD6に接続されたコイル配線CW6は、パッドPD6の周囲を右回り(時計回り)に周回する度に、パッドPD6から遠い側に徐々にずれていく。
【0092】
ここで、「右回り」は、「時計回り」と同義であり、「左回り」は、「反時計回り」と同義である。また、コイルまたはコイル配線の巻方向(渦巻きの向き)を言うときは、そのコイルまたはコイル配線を上方から見た場合に、渦の内側から外側に向かう際の巻方向を指すものとし、上方から見て、渦の内側から外側に向かう際に時計回りに見えるものを「右巻き」と称し、渦の内側から外側に向かう際に反時計回りに見えるものを「左巻き」と称することとする。例えば、半導体チップCP1のコイルCL5の巻方向を言うときは、半導体チップCP1の上方から半導体チップCP1の表面側(パッドが形成されている側が表面側)を見たときに(
図5および
図6はこれに対応している)、コイルCL5の渦の内側から外側に向かう際に時計回りに見えるものを「右巻き」、反時計回りに見えるものを「左巻き」と称する。
【0093】
図5のコイルCL5は、上方から見て、コイルCL5の渦の内側から外側に向かう際に時計回りに見えるので、コイルCL5(コイル配線CW5)の巻方向は、右巻きと言うことができる。また、
図5のコイルCL6は、上方から見て、コイルCL6の渦の内側から外側に向かう際に時計回りに見えるので、コイルCL6(コイル配線CW6)の巻方向は、右巻きと言うことができる。
【0094】
コイルCL5(コイル配線CW5)の巻数(ターン数)とコイルCL6(コイル配線CW6)の巻数(ターン数)とは、必要に応じて変更可能である。但し、コイルCL5(コイル配線CW5)の巻数と、コイルCL6(コイル配線CW6)の巻数とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL5の大きさ(直径)と、コイルCL6の大きさ(直径)とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL5の自己インダクタンスと、コイルCL6の自己インダクタンスとは、同じであることが好ましい。
【0095】
コイルCL5とコイルCL6との間において、コイルCL5(コイル配線CW5)の他端(パッドPD5に接続される側とは反対側の端部)とコイルCL6(コイル配線CW6)の他端(パッドPD6に接続される側とは反対側の端部)とは、引出配線(引出用配線)HW1に接続されている。このため、コイルCL5(コイル配線CW5)の上記他端とコイルCL6(コイル配線CW6)の上記他端とは、引出配線HW1を介して電気的に接続されている。
【0096】
ここで、コイルCL5(コイル配線CW5)の上記他端は、コイルCL5(コイル配線CW5)の外側(渦巻きの外側)の端部に対応しており、コイルCL6(コイル配線CW6)の上記他端は、コイルCL6(コイル配線CW6)の外側(渦巻きの外側)の端部に対応している。すなわち、コイルCL5(コイル配線CW5)は、互いに反対側の端部である内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とを有しており、そのうちの内側の端部がパッドPD5に接続され、外側の端部が引出配線HW1に接続されている。また、コイルCL6(コイル配線CW6)は、互いに反対側の端部である内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とを有しており、そのうちの内側の端部がパッドPD6に接続され、外側の端部が引出配線HW1に接続されている。
【0097】
この引出配線HW1は、コイルCL5(コイル配線CW5)およびコイルCL6(コイル配線CW6)と同層に形成されており、
図5に示されるように、平面視において、コイルCL5とコイルCL6との間から、パッドPD7にかけて延在している。
図5に示されるように、パッドPD7は、平面視での位置を見ると、コイルCL5とコイルCL6との間には位置しておらず、従って、パッドPD5とパッドPD6との間にも位置していない。
【0098】
引出配線HW1は、コイルCL5(コイル配線CW5)の外側(渦巻きの外側)の端部とコイルCL6(コイル配線CW6)の外側(渦巻きの外側)の端部とを、電気的に接続するとともに、これをパッドPD7に引き出すための配線である。もし、パッドPD7がコイルCL5とコイルCL6との間に配置されていたとしたら、この引出配線HW1は無くともよく、コイルCL5(コイル配線CW5)の外側の端部とコイルCL6(コイル配線CW6)の外側の端部とを、パッドPD7に直接繋ぐことができる。しかしながら、
図5のように、パッドPD7は、平面視でコイルCL5とコイルCL6との間には位置していないため、コイルCL5とコイルCL6との間に延在する部分の引出配線HW1にコイルCL5(コイル配線CW5)の外側の端部とコイルCL6(コイル配線CW6)の外側の端部とを接続するとともに、この引出配線HW1をパッドPD7まで引き出している。
【0099】
引出配線HW1は、コイルCL5とコイルCL6との間において、コイルCL5とコイルCL6とを結ぶ方向(この方向はパッドPD5とパッドPD6とを結ぶ方向にも対応する)に対して交差する方向(より特定的には略直交する方向)に延在するとともに、更にパッドPD7に向かってパッドPD7に接続されるまで延在している。また、パッドPD5,PD6,PD7のそれぞれの大きさ(辺の長さ)は、ほぼ同じとすることができる。
【0100】
引出配線HW1の幅W1は、コイル配線CW5,CW6の各幅W2よりも大きい(すなわちW1>W2)ことが好ましく、また、パッドPD7の辺の長さ(寸法)L1よりも小さい(すなわちW1<L1)ことが好ましい。コイル配線CW5,CW6は、占有面積を増やさずに巻数(ターン数)をかせぐために配線幅を細くすることが有効であるが、引出配線HW1は、コイルの巻数とは関係が無いため、引出配線HW1の配線幅を大きくすることにより、抵抗(配線抵抗)を低減することができる。このため、コイル配線CW5,CW6の各幅は、引出配線HW1の幅よりも小さくすることにより、コイルCL5,CL6の占有面積の抑制と巻数の増加とを図ることができる。また、引出配線HW1の幅は、コイル配線CW5,CW6の各幅よりも大きくすることにより、引出配線HW1の抵抗を低減することができる。また、引出配線HW1の幅を、パッドPD7の辺の長さよりも小さくすることにより、コイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)L2を短くすることができる。このコイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)L2は、パッドPD7の辺の長さ(寸法)L1よりも小さい(L2<L1)ことが好ましい。
【0101】
また、コイル配線CW5の最外周の外側と、コイル配線CW6の最外周の外側とに、ダミー配線DW1,DW2をそれぞれ配置することが好ましい。ダミー配線DW1,DW2は、コイル配線CW5,CW6と同層に形成されているが、コイル配線CW5,CW6とは接続されていないダミーの配線であり、孤立パターンとすることができる。コイル配線CW5,CW6は、配線としては使用しないダミーの配線であるため、浮遊電位(フローティング電位)とすることができる。
【0102】
ダミー配線DW1は、コイルCL5とコイルCL6とが互いに対向する領域(引出配線HW1が延在する領域に対応)を除き、コイル配線CW5の最外周に沿うように、コイル配線CW5の最外周から離間して形成されている。また、ダミー配線DW2は、コイルCL5とコイルCL6とが互いに対向する領域(引出配線HW1が延在する領域に対応)を除き、コイル配線CW6の最外周に沿うように、コイル配線CW6の最外周から離間して形成されている。コイル配線CW5の最外周とダミー配線DW1との間の間隔は、周回するコイル配線CW5同士の間隔と概ね同じとすることができ、また、コイル配線CW6の最外周とダミー配線DW2との間の間隔は、周回するコイル配線CW6同士の間隔と概ね同じとすることができる。
【0103】
コイル配線CW5,CW6は、例えば、絶縁膜上に形成した導電膜をフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を利用してパターニングすることで、形成することができる。しかしながら、フォトリソグラフィ工程でフォトレジストパターンを形成する場合、最外周のフォトレジストパターンは形状が崩れやすい(例えば狙いよりも細いパターンになったりする)ため、このフォトレジストパターンを用いて導電膜をエッチングしてコイルを形成した場合、コイルの最外周の形状も崩れてしまう虞がある。
【0104】
それに対して、コイル配線CW5,CW6の最外周の外側にダミー配線DW1,DW2を設けるようにすれば、フォトレジストパターンの形状が崩れやすいのは、ダミー配線DW1,DW2形成用のフォトレジストパターンとなり、コイル配線CW5,CW6を形成するためのフォトレジストパターンは、最外周を含めて、形状が崩れることなく的確に形成することができる。このため、コイル配線CW5,CW6は、最外周を含め、形状が崩れることなく的確に形成することができる。また、ダミー配線DW1,DW2は、形状が崩れたとしても、配線としては使用しないダミーの配線パターンであるため、問題はない。
【0105】
また、ダミー配線DW1,DW2とそれぞれ同様のダミー配線DW3,DW4を、一次コイルであるコイルCL7,CL8(コイル配線CW7,CW8)の最外周の外側に設けることもでき、その場合も、上述したのと同様な効果を得ることができる。すなわち、
図6に示されるように、ダミー配線DW3は、コイルCL7とコイルCL8とが互いに対向する領域(接続配線HW4が延在する領域に対応)を除き、コイル配線CW7の最外周に沿うように、コイル配線CW7の最外周から離間して形成される。また、ダミー配線DW4は、コイルCL7とコイルCL8とが互いに対向する領域(接続配線HW4が延在する領域に対応)を除き、コイル配線CW8の最外周に沿うように、コイル配線CW8の最外周から離間して形成される。
【0106】
また、コイルCL5,CL6を、樹脂膜RS上に形成した場合は、
図5に示されるように、平面視において、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の角を、鈍角(90°より大きい角)にすることが好ましい。これは、樹脂膜、特にポリイミド膜は、金属パターンの直角や鋭角に弱いためである。コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の角を、鈍角(90°より大きい角)にすることで、コイルCL5,CL6の下地の樹脂膜RSや、コイルCL5,CL6を覆う樹脂膜(保護膜PA1または保護膜PA2)の信頼性を向上させることができる。また、このことは、コイルCL5,CL6の下地の樹脂膜RSまたはコイルCL5,CL6を覆う樹脂膜(保護膜PA1または保護膜PA2)がポリイミド膜の場合に、特に効果が大きい。
図5の場合は、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の平面形状は、略八角形であるため、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の角は、約135°となっている。
【0107】
次に、コイルCL7,CL8について、
図6〜
図10を参照して更に説明する。
【0108】
図6からも分かるように、コイルCL7の渦巻の内側にパッドは配置されていない。コイルCL7(コイル配線CW7)の内側(渦巻きの内側)の端部は、ビア部を介して、コイル配線CW7よりも下層に配置された引出配線HW2に電気的に接続されている。このビア部は、コイル配線CW7と引出配線HW2との間に位置して、コイル配線CW7と引出配線HW2とを接続するものであり、上記ビア部V2,V3,V4,V5のいずれかに対応し、
図10の場合はビア部V5に対応している。このビア部は、コイル配線CW7とは別工程で形成するか、あるいは、コイル配線CW7と同工程でコイル配線CW7と一体的に形成することもできる。
【0109】
引出配線HW2には、引出配線HW2と同層の配線、または引出配線HW2よりも上層の配線、あるいは、引出配線HW2よりも下層の配線が接続され、半導体チップCP1の内部配線を介して、半導体チップCP1内に形成された送信回路TX1に対応するものに接続される。
【0110】
ビア部を介して引出配線HW2に接続されるコイル配線CW7が、複数回、周回することにより、コイルCL7が形成されている。なお、パッドPD5の直下の領域(位置)ではコイル配線CW7は周回していないことが好ましく、パッドPD5の直下の領域(位置)を囲むようにコイル配線CW7が周回している。
【0111】
図6の場合は、ビア部を介して引出配線HW2に接続されるコイル配線CW7が、上記パッドPD5の直下の領域(位置)の周囲を右回り(時計回り)に周回して、コイルCL7が形成されている。コイル配線CW7同士は交差しないため、ビア部を介して引出配線HW2に接続されるコイル配線CW7は、上記パッドPD5の直下の領域(位置)の周囲を右回り(時計回り)に周回する度に、渦巻きの中心から遠い側に徐々にずれていく。
【0112】
また、コイルCL8の渦巻の内側にパッドは配置されていない。コイルCL8(コイル配線CW8)の内側(渦巻きの内側)の端部は、ビア部を介して、コイル配線CW8よりも下層に配置された引出配線HW3に電気的に接続されている。このビア部は、コイル配線CW8と引出配線HW3との間に位置して、コイル配線CW8と引出配線HW3とを接続するものであり、上記ビア部V2,V3,V4,V5のいずれかに対応し、
図10の場合はビア部V5に対応している。このビア部は、コイル配線CW8とは別工程で形成するか、あるいは、コイル配線CW8と同工程でコイル配線CW8と一体的に形成することもできる。
【0113】
引出配線HW3には、引出配線HW3と同層の配線、または引出配線HW3よりも上層の配線、あるいは、引出配線HW3よりも下層の配線が接続され、半導体チップCP1の内部配線を介して、半導体チップCP1内に形成された送信回路TX1に接続される。
【0114】
ビア部を介して引出配線HW3に接続されるコイル配線CW8が、複数回、周回することにより、コイルCL8が形成されている。なお、記パッドPD6の直下の領域(位置)ではコイル配線CW8は周回していないことが好ましく、パッドPD6の直下の領域(位置)を囲むようにコイル配線CW8が周回している。
【0115】
図6の場合は、ビア部を介して引出配線HW3に接続されるコイル配線CW8が、上記パッドPD6の直下の領域(位置)の周囲を右回り(時計回り)に周回して、コイルCL8が形成されている。コイル配線CW8同士は交差しないため、ビア部を介して引出配線HW3に接続されるコイル配線CW8は、上記パッドPD6の直下の領域(位置)の周囲を右回り(時計回り)に周回する度に、渦巻きの中心から遠い側に徐々にずれていく。
【0116】
コイルCL7(コイル配線CW7)の巻数(ターン数)とコイルCL8(コイル配線CW8)の巻数(ターン数)とは、必要に応じて変更可能である。但し、コイルCL7(コイル配線CW7)の巻数と、コイルCL8(コイル配線CW8)の巻数とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL7の大きさ(直径)と、コイルCL8の大きさ(直径)とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL7の自己インダクタンスと、コイルCL8の自己インダクタンスとは、同じであることが好ましい。また、磁気結合したコイルCL5,CL7の相互インダクタンスと、磁気結合したコイルCL6,CL8の相互インダクタンスとは、同じであることが好ましい。
【0117】
コイルCL7とコイルCL8との間において、コイルCL7(コイル配線CW7)の外側の端部と、コイルCL8(コイル配線CW8)の外側の端部とは、接続配線(接続用配線)HW4に接続されている。すなわち、コイルCL7(コイル配線CW7)の内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部のうち、内側の端部は、ビア部を介してコイル配線CW7よりも下層の引出配線HW2に接続され、外側の端部は、コイル配線CW7と同層の接続配線HW4に接続されている。また、コイルCL8(コイル配線CW8)の内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部のうち、内側の端部は、ビア部を介してコイル配線CW8よりも下層の引出配線HW3に接続され、外側の端部は、コイル配線CW8と同層の接続配線HW4に接続されている。このため、コイルCL7(コイル配線CW7)の一方の端部(外側の端部)とコイルCL8(コイル配線CW8)の一方の端部(外側の端部)とは、接続配線HW4を介して電気的に接続されている。
【0118】
なお、コイルCL7あるいはコイル配線CW7において、内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とは、互いに反対側の端部であり、また、コイルCL8あるいはコイル配線CW8において、内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とは、互いに反対側の端部である。
【0119】
接続配線HW4は、コイルCL7(コイル配線CW7)およびコイルCL8(コイル配線CW8)と同層に形成されており、平面視において、コイルCL7(コイル配線CW7)とコイルCL8(コイル配線CW8)との間に延在している(位置している)。
【0120】
接続配線HW4は、コイルCL7(コイル配線CW7)の外側の端部とコイルCL8(コイル配線CW8)の外側の端部とを、電気的に接続するための配線である。接続配線HW4は、コイルCL7とコイルCL8との間に、コイルCL7とコイルCL8とを結ぶ方向(コイルCL7の渦巻きの中心とコイルCL8の渦巻きの中心とを結ぶ方向に対応)に対して交差する方向(より特定的には略直交する方向)に延在している。
【0121】
接続配線HW4を設けずに、コイルCL7(コイル配線CW7)の外側の端部とコイルCL8(コイル配線CW8)の外側の端部とを、直接繋ぐこともできる。但し、
図6のように、平面視でコイルCL7とコイルCL8との間に、コイル配線CW7,CW8の各配線幅よりも配線幅が大きい接続配線HW4を設ければ、配線抵抗を低減することができる。
【0122】
接続配線HW4は、上記引出配線HW1の直下に設けることが好ましい。但し、上記引出配線HW1は、上記パッドPD7に接続する必要があるため、コイルCL5とコイルCL6との間に延在する部分だけでなく、コイルCL5とコイルCL6との間から更にパッドPD7に到達するまで延在させる(引き出す)必要があった。一方、接続配線HW4については、コイルCL7とコイルCL8との間に設ければよく、コイル配線CW7,CW8以外の配線を接続配線HW4から引き出さなくてよい。
【0123】
直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8が、トランスTR1の一次側の上記コイルCL1aに対応し、直列に接続されたコイルCL5およびコイルCL6が、トランスTR1の二次側の上記コイルCL2aに対応している。引出配線HW2,HW3は、半導体チップCP1の内部配線(M1〜M5)を介して、半導体チップCP1内に形成された送信回路TX1に接続されている。上記パッドPD5,PD6,PD7は、それらのパッドPD5,PD6,PD7に接続される上記ボンディングワイヤBWのような導電性の接続部材と半導体チップCP2の内部配線(M1〜M5)を介して、半導体チップCP2内に形成された受信回路RX1に接続される。
【0124】
このため、送信回路TX1から引出配線HW2,HW3に送信用の信号が送られると、引出配線HW2と引出配線HW3との間に直列に接続されているコイルCL7およびコイルCL8に電流が流れる。この際、コイルCL7とコイルCL8とは直列に接続されているため、コイルCL7に流れる電流と、コイルCL8に流れる電流とは、実質的に同じ大きさである。コイルCL5とコイルCL7とは、導体によっては繋がっていないが、磁気的に結合しており、また、コイルCL6とコイルCL8とは、導体によっては繋がっていないが、磁気的に結合している。このため、一次側のコイルCL7およびコイルCL8に電流が流れると、その電流の変化に応じて、二次側のコイルCL5およびコイルCL6に誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。
【0125】
次に、一次側のコイルCL7,CL8に流れる電流について更に説明する。
【0126】
一次コイルであるコイルCL7,CL8に電流が流れるには、引出配線HW2からコイルCL7およびコイルCL8を通って引出配線HW3に電流が流れる場合と、引出配線HW3からコイルCL8およびコイルCL7を通って引出配線HW2に電流が流れる場合の2つのケースがある。
【0127】
引出配線HW2からコイルCL7およびコイルCL8を通って引出配線HW3に電流が流れる場合は、コイルCL7,CL8に流れる電流は、次のようになる。すなわち、コイルCL7においては、コイル配線CW7の内側の端部(ビア部を介して引出配線HW2に接続された端部)側から、コイル配線CW7を通って、コイル配線CW7の外側の端部(接続配線HW4に接続された端部)側に電流が流れる。つまり、コイルCL7では、渦の内側から外側に向かって電流が流れる。一方、コイルCL8においては、コイル配線CW8の外側の端部(接続配線HW4に接続された端部)側から、コイル配線CW8を通って、コイル配線CW8の内側の端部(ビア部を介して引出配線HW3に接続された端部)側に電流が流れる。つまり、コイルCL8では、渦の外側から内側に向かって電流が流れる。
【0128】
一方、引出配線HW3からコイルCL8およびコイルCL7を通って引出配線HW2に電流が流れる場合は、コイルCL8,CL7に流れる電流は、次のようになる。すなわち、コイルCL8においては、コイル配線CW8の内側の端部(ビア部を介して引出配線HW3に接続された端部)側から、コイル配線CW8を通って、コイル配線CW8の外側の端部(接続配線HW4に接続された端部)側に電流が流れる。つまり、コイルCL8では、渦の内側から外側に向かって電流が流れる。一方、コイルCL7においては、コイル配線CW7の外側の端部(接続配線HW4に接続された端部)側から、コイル配線CW7を通って、コイル配線CW7の内側の端部(ビア部を介して引出配線HW2に接続された端部)側に電流が流れる。つまり、コイルCL7では、渦の外側から内側に向かって電流が流れる。
【0129】
従って、コイルCL7(コイル配線CW7)において、内側の端部側から外側の端部側に電流が流れる場合(すなわちコイルCL7において渦の内側から外側に向かって電流が流れる場合)は、コイルCL8(コイル配線CW8)においては、必然的に、外側の端部側から内側の端部側に電流が流れる(すなわち渦の外側から内側に向かって電流が流れる)ことになる。一方、コイルCL7(コイル配線CW7)において、外側の端部側から内側の端部側に電流が流れる場合(すなわちコイルCL7において渦の外側から内側に向かって電流が流れる場合)は、コイルCL8(コイル配線CW8)においては、必然的に、内側の端部側から外側の端部側に電流が流れる(すなわち渦の内側から外側に向かって電流が流れる)ことになる。
【0130】
ここで、コイルCL7およびコイルCL8の巻方向(渦巻きの向き)に着目すると、コイルCL7,CL8はどちらも右巻きであり、コイルCL7,CL8を上方から見ると、内側の端部(引出配線HW2,HW3に接続される側の端部)から外側の端部(接続配線HW4に接続される側の端部)に向かって右回り(時計回り)に周回している。このため、コイルCL7において、内側の端部側からコイル配線CW7を通って外側の端部側に電流が流れる場合は、コイルCL7を右回り(時計回り)に電流が流れることになり、一方、外側の端部側からコイル配線CW7を通って内側の端部側に電流が流れる場合は、コイルCL7を左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。また、同様に、コイルCL8においても、内側の端部側からコイル配線CW8を通って外側の端部側に電流が流れる場合は、コイルCL
8を右回り(時計回り)に電流が流れることになり、一方、外側の端部側からコイル配線CW8を通って内側の端部側に電流が流れる場合は、コイルCL8を左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。
【0131】
コイルCL7に電流が流れると、コイルCL7の内側(渦巻きの内側)において、コイルCL7を貫くような磁束(
図6の紙面に略垂直な方向の磁束)が発生する。また、コイルCL8に電流が流れると、コイルCL8の内側(渦巻きの内側)において、コイルCL8を貫くような磁束(
図6の紙面に略垂直な方向の磁束)が発生する。このとき、コイルに右回り(時計回り)に電流が流れる場合と、コイルに左回り(反時計回り)に電流が流れる場合とで、発生する磁束の向きは反対である。
【0132】
上述のように、コイルCL7(コイル配線CW7)において、内側の端部側から外側の端部側に電流が流れる場合は、必然的に、コイルCL8(コイル配線CW8)においては、外側の端部側から内側の端部側に電流が流れるが、そのときは、コイルCL7では右回り(時計回り)に電流が流れ、コイルCL8では左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。この際、コイルCL7の内側を貫く磁束の向きと、コイルCL8の内側を貫く磁束の向きとは、互いに逆向きになる。具体的には、コイルCL7では、右回り(時計回り)に電流が流れることで、コイルCL7の内側(渦巻きの内側)において、
図6の紙面を表側から裏側に貫く方向の磁束が発生し、コイルCL8では、左回り(反時計回り)に電流が流れることで、コイルCL8の内側(渦巻きの内側)において、
図6の紙面を裏側から表側に貫く方向の磁束が発生する。
【0133】
また、上述のように、コイルCL7(コイル配線CW7)において、外側の端部側から内側の端部側に電流が流れる場合は、必然的に、コイルCL8(コイル配線CW8)においては、内側の端部側から外側の端部側に電流が流れるが、そのときは、コイルCL7では左回り(反時計回り)に電流が流れ、コイルCL8では右回り(時計回り)に電流が流れることになる。この際、コイルCL7の内側を貫く磁束の向きと、コイルCL8の内側を貫く磁束の向きとは、互いに逆向きになる。具体的には、コイルCL7では、左回り(反時計回り)に電流が流れることで、コイルCL7の内側(渦巻きの内側)において、
図6の紙面を裏側から表側に貫く方向の磁束が発生し、コイルCL8では、右回り(時計回り)に電流が流れることで、コイルCL8の内側(渦巻きの内側)において、
図6の紙面を表側から裏側に貫く方向に磁束が発生する。
【0134】
つまり、直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8に電流が流れると、コイルCL7とコイルCL8とで電流の流れる向きが反対であり、それによって、コイルCL7とコイルCL8とで、互いに反対向きの磁束が発生することになる。
【0135】
ここで、コイルの電流の向き(または電流の流れる向き)とは、そのコイル(またはコイル配線)を上方から見て、そのコイルを右回り(時計回り)に電流が流れるか、左回り(反時計回り)に電流が流れるかを指す。このため、2つのコイルについて、コイルの電流の向きが同じ(または電流の流れる向きが同じ)と言う場合は、その2つのコイルを上方から見て、その2つのコイルの両方ともが右回り(時計回り)に電流が流れるか、あるいは、その2つのコイルの両方ともが左回り(反時計回り)に電流が流れることに対応する。また、2つのコイルについて、コイルの電流の向きが反対(または電流の流れる向きが反対)と言う場合は、その2つのコイルを上方から見て、その2つのコイルのうち、一方のコイルは右回り(時計回り)に電流が流れ、他方のコイルは左回り(反時計回り)に電流が流れることに対応する。
【0136】
コイルCL5とコイルCL7とは、磁気的に結合しているため、一次側のコイルCL7に流れる電流によって生じる磁束が変化すると、その磁束の変化を打ち消すような誘導起電力が二次側のコイルCL5に発生して、誘導電流が流れる。同様に、コイルCL6とコイルCL8とは、磁気的に結合しているため、一次側のコイルCL8に流れる電流によって生じる磁束が変化すると、その磁束の変化を打ち消すような誘導起電力が二次側のコイルCL6に発生して、誘導電流が流れる。
【0137】
上述のように、直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8に電流が流れる場合、コイルCL7とコイルCL8とで電流の流れる向きが反対であり、発生する磁束の向きも、コイルCL7とコイルCL8とで反対である。そして、コイルCL7とコイルCL8とは直列に接続されているため、コイルCL7に流れる電流が減少するときは、コイルCL8に流れる電流も減少し、コイルCL7に流れる電流が増加するときは、コイルCL8に流れる電流も増加する。このため、二次側のコイルCL5,CL6に誘導電流が流れる場合、コイルCL5に流れる電流の向きと、コイルCL6に流れる電流の向きとは、反対になる。
【0138】
まず、引出配線HW2側からコイルCL7およびコイルCL8を通って引出配線HW3側に電流を流す場合を仮定する。この場合、一次側のコイルCL7,CL8においては、コイルCL7に右回りの電流が、コイルCL8に左回りの電流が流れることになる。このとき、一次コイル(CL7,CL8)に流れる電流を増加させている間は、二次コイル(CL5,CL6)側では、コイルCL5に左回りの誘導電流が、コイルCL6に右回りの誘導電流が流れ、一方、一次コイル(CL7,CL8)に流れる電流を減少させている間は、二次コイル(CL5,CL6)側では、コイルCL5に右回りの誘導電流が、コイルCL6に左回りの誘導電流が流れる。
【0139】
次に、引出配線HW3側からコイルCL8およびコイルCL7を通って引出配線HW2側に電流を流す場合を仮定する。この場合、一次側のコイルCL7,CL8においては、コイルCL8に右回りの電流が、コイルCL7に左回りの電流が流れることになる。このとき、一次コイル(CL7,CL8)に流れる電流を増加させている間は、二次コイル(CL5,CL6)側では、コイルCL6に左回りの誘導電流が、コイルCL5に右回りの誘導電流が流れ、一方、一次コイル(CL7,CL8)に流れる電流を減少させている間は、二次コイル(CL5,CL6)側では、コイルCL6に右回りの誘導電流が、コイルCL5に左回りの誘導電流が流れる。
【0140】
つまり、二次側のコイルCL5,CL6に誘導電流が流れる際に、コイルCL5に流れる電流(誘導電流)の向きと、コイルCL6に流れる電流(誘導電流)の向きとは、反対(逆)になる。このため、二次側のコイルCL5,CL6に誘導電流が流れる際に、コイルCL5に流れる誘導電流によってコイルCL5を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL6に流れる誘導電流によってコイルCL6を貫くように発生する磁束の向きとは、反対(逆)になる。
【0141】
コイルCL5とコイルCL6とは、パッドPD5とパッドPD6との間に直列に接続されている。ここで、コイルCL5およびコイルCL6の巻方向(渦巻きの方向)に着目すると、コイルCL5,CL6のどちらも、内側の端部から外側の端部に向かって右回り(時計回り)に周回している。つまり、コイルCL5とコイルCL6とは、どちらも右巻きである。
【0142】
このため、コイルCL5において、コイルCL5を右回り(時計回り)に電流が流れる場合は、内側の端部側(すなわちパッドPD5側)からコイル配線CW5を通って外側の端部側(すなわち引出配線HW1側)に電流が流れることになる。一方、コイルCL5において、コイルCL5を左回り(反時計回り)に電流が流れる場合は、外側の端部側(すなわち引出配線HW1側)からコイル配線CW5を通って内側の端部側(すなわちパッドPD5側)に電流が流れることになる。また、コイルCL6において、コイルCL6を右回り(時計回り)に電流が流れる場合は、内側の端部側(すなわちパッドPD6側)からコイル配線CW6を通って外側の端部側(すなわち引出配線HW1側)に電流が流れることになる。一方、コイルCL6において、コイルCL6を左回り(反時計回り)に電流が流れる場合は、外側の端部側(すなわち引出配線HW1側)からコイル配線CW6を通って内側の端部側(すなわちパッドPD6側)に電流が流れることになる。
【0143】
従って、二次コイルであるコイルCL5,CL6に誘導電流が流れるときには、コイルCL5に右回りに電流が流れ、かつコイルCL6に左回りに電流が流れる場合と、コイルCL5に左回りに電流が流れ、かつコイルCL6に右回りに電流が流れる場合との2つのケースがある。そして、コイルCL5に右回りに電流が流れ、かつコイルCL6に左回りに電流が流れる場合は、パッドPD5から、コイルCL5、引出配線HW1、およびコイルCL6を経てパッドPD6に電流が流れことになる。一方、コイルCL5に左回りに電流が流れ、かつコイルCL6に右回りに電流が流れる場合は、パッドPD6から、コイルCL6、引出配線HW1、およびコイルCL5を経てパッドPD5に電流が流れることになる。なお、パッドPD7には固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)が供給されるため、コイルCL5とコイルCL6との間の引出配線HW1は固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)となっている。
【0144】
つまり、本実施の形態では、直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8に電流が流れるときに、コイルCL7とコイルCL8とで流れる電流の向きが反対になるように、コイルCL7およびコイルCL8の渦巻きの方向を設計している。すなわち、コイルCL7,CL8は、引出配線HW2と引出配線HW
3との間に直列に接続されている。そして、引出配線HW2からコイルCL7,CL8を経て引出配線HW3に電流が流れる場合に、コイルCL7とコイルCL8とで流れる電流の向きが反対になり、かつ、引出配線HW3からコイルCL8,CL7を経て引出配線HW2に電流が流れる場合に、コイルCL7とコイルCL8とで流れる電流の向きが反対になるように、コイルCL7,CL8の渦巻きの方向を設計している。このため、コイルCL7とコイルCL8とで、巻き方向を同じにしている。
図6ではコイルCL7とコイルCL8とを両方とも右巻きとしているが、他の形態として、コイルCL7とコイルCL8とを両方とも左巻きとすることもできる。
【0145】
また、二次コイルについても同様である。つまり、直列に接続されたコイルCL5およびコイルCL6に電流(誘導電流)が流れるときに、コイルCL5とコイルCL6とで流れる電流(誘導電流)の向きが反対になるように、コイルCL5およびコイルCL6の渦巻きの方向を設計している。すなわち、コイルCL5,CL6は、パッドPD5とパッドPD6との間に直列に接続されている。そして、パッドPD5からコイルCL5,CL6を経てパッドPD6側に電流が流れる場合に、コイルCL5とコイルCL6とで流れる電流の向きが反対になり、かつ、パッドPD6からコイルCL6,CL5を経てパッドPD5側に電流が流れる場合に、コイルCL5とコイルCL6とで流れる電流の向きが反対になるように、コイルCL5,CL6の渦巻きの方向を設計している。このため、コイルCL5とコイルCL6とで、巻き方向を同じにしている。
図5ではコイルCL5とコイルCL6とを両方とも右巻きとしているが、他の形態として、コイルCL5とコイルCL6とを両方とも左巻きとすることもできる。
【0146】
このように、コイルCL5とコイルCL6とは、互いに反対方向に電流が流れるように設計され、また、コイルCL7とコイルCL8とは、互いに反対方向に電流が流れるように設計されている。これにより、トランスTR1を介して送信回路TX1から受信回路RX1に信号を伝達する際に、一次側では、コイルCL7に流れる電流の向きとコイルCL8に流れる電流の向きとが、互いに反対向きとなり、かつ、二次側では、コイルCL5に流れる電流(誘導電流)の向きとコイルCL6に流れる電流(誘導電流)の向きとが、互いに反対向きとなる。こうすることで、トランスTR1を介して送信回路TX1から受信回路RX1に信号を伝達する際に、磁気結合されたコイルCL5およびコイルCL7を貫くように発生する磁束の向きと、磁気結合されたコイルCL6およびコイルCL8を貫くように発生する磁束の向きとを、互いに反対向きとすることができる。
【0147】
また、半導体チップCP2の上記トランスTR2についても、半導体チップCP1のトランスTR1と同様に形成することができる。このため、半導体チップCP2においても、上記コイルCL1bとして上記コイルCL7,CL8を形成し、上記コイルCL2bとして上記コイルCL5,CL6を形成し、コイルCL5,CL6に接続された上記パッドPD5,PD6,PD7を形成することができる。
【0148】
<検討例について>
図12および
図13は、第1検討例の半導体チップの要部平面図であり、それぞれ上記
図5および
図6に相当するものである。
【0149】
図12および
図13に示されるように、第1検討例の半導体チップは、上記コイルCL5に相当するコイルCL105と、上記コイルCL6に相当するコイルCL106とを同層に有し、それよりも下層において、上記コイルCL7に相当するコイルCL107と、上記コイルCL8に相当するコイルCL108とを同層に有している。コイルCL107は、コイルCL105の直下に配置され、コイルCL105とコイルCL107とは導体では繋がっていないが、磁気的に結合している。また、コイルCL108は、コイルCL106の直上に配置され、コイルCL106とコイルCL108とは導体では繋がっていないが、磁気的に結合している。
【0150】
第1検討例においては、コイルCL105およびコイルCL106は、上記パッドPD5に相当するパッドPD105と上記パッドPD6に相当するパッドPD106との間に直列に接続されている。そして、コイルCL105とコイルCL106との間に、上記パッドPD7に相当するパッドPD107が電気的に接続されている。上記パッドPD5と同様に、パッドPD105はコイルCL105の渦巻の内側に配置され、上記パッドPD6と同様に、パッドPD106はコイルCL106の渦巻の内側に配置されている。しかしながら、上記パッドPD7は上記コイルCL5とコイルCL6との間には配置されていないのに対して、パッドPD107は、コイルCL105とコイルCL106との間に配置されている。コイルCL105とコイルCL106との間にパッドPD107が配置されている分、コイルCL105とコイルCL106との距離(間隔)は離れている。
【0151】
コイルCL105の内側の端部は、パッドPD105に接続され、コイルCL105の外側の端部は、パッドPD107に接続されている。また、コイルCL106の内側の端部は、パッドPD106に接続され、コイルCL106の外側の端部は、パッドPD107に接続されている。
【0152】
コイルCL105の巻方向は、上記コイルCL5の巻方向と同じ右巻きであるが、コイルCL106の巻方向は、上記コイルCL6の巻方向とは反対の左巻きである。
【0153】
コイルCL107の渦巻の内側にパッドは配置されておらず、コイルCL107の内側の端部は、ビア部を介して、上記引出配線HW2に相当する引出配線HW102に電気的に接続されている。また、コイルCL108の渦巻の内側にパッドは配置されておらず、コイルCL108の内側の端部は、ビア部を介して、上記引出配線HW3に相当する引出配線HW103に電気的に接続されている。
【0154】
コイルCL107の外側の端部と、コイルCL108の外側の端部とは、コイルCL107とコイルCL108との間に設けられた接続配線HW104に接続され、この接続配線HW104を介して電気的に接続されている。
【0155】
コイルCL107の巻方向は、上記コイルCL7の巻方向と同じ右巻きであるが、コイルCL108の巻方向は、上記コイルCL8とは反対の左巻きである。
【0156】
このような第1検討例の場合、一次側のコイルCL107およびコイルCL108に電流が流れると、その電流の変化に応じて、二次側のコイルCL105およびコイルCL106に誘導起電力が発生して誘導電流が流れる。これを利用して、コイルCL107,CL108に接続された送信回路(この送信回路はコイルCL105〜CL108が形成された半導体チップ内に形成されている)から、パッドPD105,PD106,PD107に接続された受信回路(この受信回路はコイルCL105〜CL108が形成された半導体チップ以外の半導体チップに形成されている)に信号を伝達することができる。
【0157】
しかしながら、第1検討例の場合、コイルCL105〜CL108を介して送信回路から受信回路に信号を伝達する際に、一次側では、コイルCL107に流れる電流の向きとコイルCL108に流れる電流の向きとが、互いに同じ向きとなり、かつ、二次側では、コイルCL105に流れる電流(誘導電流)の向きとコイルCL106に流れる電流(誘導電流)の向きとが、互いに同じ向きとなる。これについて、更に説明する。
【0158】
一次コイルであるコイルCL107,CL108に電流が流れるには、引出配線HW102からコイルCL107およびコイルCL108を通って引出配線HW103に電流が流れる場合と、引出配線HW103からコイルCL108およびコイルCL107を通って引出配線HW102に電流が流れる場合の2つのケースがある。そして、コイルCL107の巻方向とコイルCL108の巻方向は互いに逆向きであり、
図13の場合は、コイルCL107は右巻きでコイルCL108は左巻きである。このため、引出配線HW102からコイルCL107,CL108を通って引出配線HW103に電流が流れる場合は、右巻きのコイルCL107では、渦の内側から外側に電流が流れるため、コイルCL107を右回り(時計回り)に電流が流れ、左巻きのコイルCL108では、渦の外側から内側に電流が流れるため、コイルCL108を右回り(時計回り)に電流が流れることになる。また、引出配線HW103からコイルCL108,CL107を通って引出配線HW102に電流が流れる場合は、左巻きのコイルCL108では、渦の内側から外側に電流が流れるため、コイルCL108を左回り(反時計回り)に電流が流れ、右巻きのコイルCL107では、渦の外側から内側に電流が流れるため、コイルCL107を左回り(反時計回り)に電流が流れることになる。
【0159】
従って、直列に接続されたコイルCL107およびコイルCL108に電流が流れると、コイルCL107とコイルCL108とで電流の流れる向きは同じになり、それによって、コイルCL107とコイルCL108とで、互いに同じ向きの磁束が発生することになる。
【0160】
コイルCL105とコイルCL107とは、磁気的に結合しているため、一次側のコイルCL107に流れる電流によって生じる磁束が変化すると、その磁束の変化を打ち消すような誘導起電力が二次側のコイルCL105に発生して、誘導電流が流れる。同様に、コイルCL106とコイルCL108とは、磁気的に結合しているため、一次側のコイルCL108に流れる電流によって生じる磁束が変化すると、その磁束の変化を打ち消すような誘導起電力が二次側のコイルCL106に発生して、誘導電流が流れる。
【0161】
このため、コイルCL107,コイルCL108に電流が流れると、コイルCL107とコイルCL108とで電流の流れる向きは同じになり、コイルCL107とコイルCL108とで、互いに同じ向きの磁束が発生することから、コイルCL105に生じる誘導電流の向きと、コイルCL106に生じる誘導電流の向きとは同じになる。つまり、コイルCL105に右回り(時計回り)の誘導電流が流れるときには、コイルCL106にも右回り(時計周り)の誘導電流が流れ、コイルCL105に左回り(反時計周り)の誘導電流が流れるときには、コイルCL106にも左回り(反時計周り)の誘導電流が流れる。コイルCL105,CL106に右回り(時計回り)の誘導電流が流れる場合、右巻きのコイルCL105では渦の内側(パッドPD105側)から外側(パッドPD107側)に電流が流れ、左巻のコイルCL10
6では渦の外側(パッドPD107側)から内側(パッドPD
106側)に電流が流れることになる。また、コイルCL105,CL106に左回り(反時計回り)の誘導電流が流れる場合、左巻きのコイルCL106では渦の内側(パッドPD106側)から外側(パッドPD
107側)に電流が流れ、右巻のコイルCL105では渦の外側(パッドPD107側)から内側(パッドPD105側)に電流が流れることになる。
【0162】
このように、第1検討例では、コイルCL105〜CL108を介して送信回路から受信回路に信号を伝達する際に、一次側では、コイルCL107に流れる電流の向きとコイルCL108に流れる電流の向きとが、互いに同じ向きとなり、かつ、二次側では、コイルCL105に流れる電流(誘導電流)の向きとコイルCL106に流れる電流(誘導電流)の向きとが、互いに同じ向きとなる。このため、コイルCL105〜CL108を介して送信回路から受信回路に信号を伝達する際に、磁気結合されたコイルCL105およびコイルCL107を貫くように発生する磁束の向きと、磁気結合されたコイルCL106およびコイルCL108を貫くように発生する磁束の向きとが、互いに同じ向きになる。
【0163】
このような第1検討例の場合、次のような課題があることが、本発明者の検討により分かった。
【0164】
二次コイル側では、コイルCL105に流れる電流(誘導電流)の向きとコイルCL106に流れる電流(誘導電流)の向きとが、互いに同じ向きとなる。このため、コイルCL105に流れる誘導電流によりコイルCL105を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL106に流れる誘導電流によりコイルCL106を貫くように発生する磁束の向きとが同じになる。しかしながら、コイルCL105とコイルCL106とで、流れる誘導電流の向きが同じであると、コイルCL105,CL106同士は、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用してしまう。
【0165】
すなわち、コイルCL105に流れる誘導電流によりコイルCL105の外部に生じる磁束(磁界)が、コイルCL106に流れる誘導電流により生じるコイルCL106を貫く磁束(磁界)を打ち消すように作用してしまう。また、コイルCL106に流れる誘導電流によりコイルCL106の外部に生じる磁束(磁界)が、コイルCL105に流れる誘導電流により生じるコイルCL105を貫く磁束(磁界)を打ち消すように作用してしまう。
【0166】
また、一次コイル側では、コイルCL107に流れる電流の向きとコイルCL108に流れる電流の向きとが、互いに同じ向きとなる。このため、コイルCL107に流れる電流によりコイルCL107を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL108に流れる電流によりコイルCL108を貫くように発生する磁束の向きとが同じになる。しかしながら、コイルCL107とコイルCL108とで、流れる電流の向きが同じであると、コイルCL107,CL108同士は、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用してしまう。
【0167】
すなわち、コイルCL107に流れる電流によりコイルCL107の外部に生じる磁束(磁界)が、コイルCL108に流れる電流により生じるコイルCL108を貫く磁束(磁界)を打ち消すように作用してしまう。また、コイルCL108に流れる電流によりコイルCL108の外部に生じる磁束(磁界)が、コイルCL107に流れる誘導電流により生じるコイルCL107を貫く磁束(磁界)を打ち消すように作用してしまう。
【0168】
このため、コイルCL105〜CL108を介して送信回路から受信回路に信号を伝達する際のロス(損失)が増加し、二次側のコイルCL105,CL106から受信回路が受け取る信号の強度が低下してしまう。これは、半導体装置の性能を低下させることにつながる。
【0169】
<本実施の形態の主要な特徴と効果について>
本実施の形態の半導体チップCP1は、半導体基板(SB1)上に絶縁層(RS,IL)を介して形成された、コイルCL5、コイルCL6、コイルCL7、コイルCL8、パッドPD5、パッドPD6およびパッドPD7を有している。コイルCL5およびコイルCL6は、電気的にパッドPD5とパッドPD6との間に直列に接続され、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が電気的に接続されている。コイルCL7およびコイルCL8は電気的に直列に接続されている。コイルCL5は、コイルCL7の上方に配置され、コイルCL5とコイルCL7とは、導体では接続されずに磁気的に結合されており、コイルCL6は、コイルCL8の上方に配置され、コイルCL6とコイルCL8とは、導体では接続されずに磁気的に結合されている。そして、直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8に電流を流したときに、コイルCL5およびコイルCL6に流れる誘導電流の向きは、コイルCL5とコイルCL6とで反対向きである。
【0170】
本実施の形態では、コイルCL5およびコイルCL6に誘導電流が流れるときに、流れる誘導電流の向きが、コイルCL5とコイルCL6とで反対向きになるようにしている。すなわち、コイルCL5,CL6のうちの一方で、右回り(時計回り)に誘導電流が流れ、他方で左回り(反時計回り)に誘導電流が流れるようにしている。このため、コイルCL5,CL6に誘導電流が流れるときに、コイルCL5に流れる誘導電流によりコイルCL5を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL6に流れる誘導電流によりコイルCL6を貫くように発生する磁束の向きとが反対向きになる。これにより、コイルCL5,CL6同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止できる。
【0171】
すなわち、コイルCL5を貫く磁束(磁界)とコイルCL6を貫く磁束(磁界)とが逆向きであれば、コイルCL5を貫く磁束(磁界)とコイルCL6を貫く磁束(磁界)とが、ループ状に繋がることができる(すなわちループ状に閉じることができる)。このため、コイルCL5に流れる誘導電流により生じる磁束(磁界)と、コイルCL6に流れる誘導電流により生じる磁束(磁界)とが、互いに打ち消し合うのを抑制または防止することができる。
【0172】
つまり、上記第1検討例のように、コイルCL105,CL106に誘導電流が流れるときに、コイルCL105の誘導電流によりコイルCL105を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL106の誘導電流によりコイルCL106を貫くように発生する磁束の向きとが同じ向きの場合は、コイルCL105,CL106同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用する。それに対して、本実施の形態では、コイルCL5,CL6に誘導電流が流れるときに、コイルCL5の誘導電流によりコイルCL5を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL6の誘導電流によりコイルCL6を貫くように発生する磁束の向きとが逆向きになるようにしたことで、コイルCL5,CL6同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止できる。このため、本実施の形態では、一次コイル(CL7,CL8)から二次コイル(CL5,CL6)に誘導電流を用いて信号を伝達する際に、二次コイル(CL5,CL6)によって検知する信号強度(受信信号強度)を向上することができる。従って、半導体チップの性能を向上させることができ、ひいては半導体チップを含む半導体装置の性能を向上させることができる。
【0173】
また、本実施の形態では、コイルCL7,CL8については、直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8に電流を流したときに、コイルCL7とコイルCL8とで流れる電流の向きが反対向きになるようにしている。すなわち、コイルCL7,CL8のうちの一方で、右回り(時計回り)に電流が流れ、他方で左回り(反時計回り)に電流が流れるようにしている。このため、コイルCL7,CL8に電流が流れるときに、コイルCL7に流れる電流によりコイルCL7を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL8に流れる電流によりコイルCL8を貫くように発生する磁束の向きとが反対向きとなる。これにより、コイルCL7,CL8同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止できる。
【0174】
また、直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8に電流を流したときに、コイルCL7とコイルCL8とで流れる電流の向きが反対向きになるようにしておくと、コイルCL5およびコイルCL6に誘導電流が流れるときに、コイルCL5とコイルCL6とで、流れる誘導電流の向きが反対向きになる。これにより、コイルCL7の電流によりコイルCL7を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL8の電流によりコイルCL8を貫くように発生する磁束の向きとが、互いに逆向きになるとともに、コイルCL5の誘導電流によりコイルCL5を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL6の誘導電流によりコイルCL6を貫くように発生する磁束の向きとが、互いに逆向きになる。こうすることで、コイルCL5,CL6からなるトランスとコイルCL7,CL8からなるトランスとが、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止することができる。このため、本実施の形態では、一次コイル(CL7,CL8)から二次コイル(CL5,CL6)に誘導電流を用いて信号を伝達する際に、二次コイル(CL5,CL6)によって検知する信号強度(受信信号強度)を的確に向上することができる。従って、半導体チップの性能を的確に向上させることができ、ひいては半導体チップを含む半導体装置の性能を的確に向上させることができる。
【0175】
また、本実施の形態では、パッドPD5は、コイルCL5(コイル配線CW5)の内側(渦巻きの内側)に配置され、パッドPD6は、コイルCL6(コイル配線CW6)の内側(渦巻きの内側)に配置されている。
【0176】
パッドPD5をコイルCL5(コイル配線CW5)の外側に配置した場合には、コイルCL5の内側の端部とパッドPD5とを接続するための引出配線(この引出配線はコイル配線CW5を横切る)をコイルCL5の下層に設ける必要が生じる。しかしながら、そのような引出配線を形成すると、その引出配線とコイルCL7との間の絶縁耐圧がトランスの耐圧として支配的となり、トランスの耐圧が小さくなる虞がある。
【0177】
それに対して、本実施の形態では、パッドPD5をコイルCL5(コイル配線CW5)の内側に配置することで、引出配線(パッドPD5とコイルCL5とを接続するための引出配線)を形成せずに、コイルCL5の内側の端部をパッドPD5に接続することができる。このため、コイルCL5(コイル配線CW5)の下層にパッドPD5用の引出配線を形成しなくてよいため、コイルCL5とコイルCL7との間の絶縁耐圧がトランスの耐圧として支配的となり、トランスの耐圧を向上させることができる。また、パッドPD5用の引出配線を形成しなくてよいことで、引出配線に接続するためのビア部を形成しなくてよいため、製造コストや製造時間も抑制できる。
【0178】
また、本実施の形態では、パッドPD6をコイルCL6(コイル配線CW6)の内側に配置することで、引出配線(パッドPD6とコイルCL6とを接続するための引出配線)を形成せずに、コイルCL6の内側の端部をパッドPD6に接続することができる。このため、コイルCL6(コイル配線CW6)の下層にパッドPD6用の引出配線を形成しなくてよいため、コイルCL6とコイルCL8との間の絶縁耐圧がトランスの耐圧として支配的となり、トランスの耐圧を向上させることができる。また、パッドPD6用の引出配線を形成しなくてよいことで、引出配線に接続するためのビア部を形成しなくてよいため、製造コストや製造時間も抑制できる。
【0179】
また、本実施の形態では、コイルCL5とコイルCL6とは同層に形成され、また、コイルCL7とコイルCL8とは同層に形成されている。そして、コイルCL7,CL8は、コイルCL5,CL6よりも下層に形成されている。コイルCL5,CL6とコイルCL7,CL8とのうち、パッドPD5,PD6,PD7に接続すべきコイルCL5,CL6を上層側に配置することで、コイルCL5,CL6をパッドPD5,PD6,PD7に接続しやすくなる。また、コイルCL5とコイルCL6とを同層に形成し、コイルCL7とコイルCL8とを同層に形成することで、コイルCL5,CL7の相互インダクタンスとコイルCL6,CL8の相互インダクタンスとを一致させやすくなる。このため、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を介して信号の伝達を的確に行いやすくなる。また、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を形成するのに必要な層数を抑制することができる。このため、半導体チップを設計しやすくなる。また、半導体チップの小型化にも有利になる。
【0180】
また、本実施の形態では、パッドPD7は、コイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置されている。そして、コイルCL5とコイルCL6とをパッドPD7に接続するための引出配線HW1が形成されており、引出配線HW1は、コイルCL5とコイルCL6との間から、パッドPD7まで延在している。これにより、コイルCL5とコイルCL6とをパッドPD7に的確に接続することができる。
【0181】
また、引出配線HW1の幅W1は、コイルCL5およびコイルCL6の配線幅(すなわちコイル配線CW5の幅W2およびコイル配線CW6の幅W2)よりも大きくする(W1>W2)ことが好ましい。これにより、コイルCL5,CL6の巻き数に影響せずに、引出配線HW1の抵抗を低減することができる。
【0182】
図14および
図15は、本実施の形態の半導体チップCP1の第1変形例を示す要部平面図であり、それぞれ上記
図5および
図6に相当するものである。
【0183】
図14および
図15に示される第1変形例が、
図5および
図6の本実施の形態と相違しているのは、平面視において、パッドPD7がコイルCL5とコイルCL6との間に配置されていることである。このため、
図14および
図15の第1変形例では、パッドPD5とパッドPD7とパッドPD6とが、この順で一列に(一直線上に)配置されている。
【0184】
図14および
図15の第1変形例では、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が配置されている分、
図5および
図6の場合に比べて、コイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)が離れている。また、コイルCL7はコイルCL5の直下に配置され、コイルCL8はコイルCL6の直下に配置されているため、
図14および
図15の第1変形例では、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が配置されている分、
図5および
図6の場合に比べて、コイルCL7とコイルCL8との間の距離(間隔)も離れている。また、
図14および
図15の第1変形例では、パッドPD7がコイルCL5とコイルCL6との間に配置されているため、上記引出配線HW1は不要であり、コイルCL5の外側(渦の外側)の端部は、パッドPD7に直接的に接続され、コイルCL6の外側(渦の外側)の端部は、パッドPD7に直接的に接続されている。また、
図14および
図15の第1変形例では、
図5および
図6の場合に比べて、コイルCL7とコイルCL8との間の距離が離れている分、接続配線HW4の寸法(幅)が大きくなっている。
【0185】
これ以外については、
図14および
図15の第1変形例は、
図5および
図6の本実施の形態と基本的には同じであるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0186】
図5および
図6の場合と同様に、
図14および
図15の第1変形例の場合も、コイルCL5およびコイルCL6に誘導電流が流れるときに、流れる誘導電流の向きが、コイルCL5とコイルCL6とで反対向きになる。すなわち、コイルCL5,CL6のうちの一方で、右回り(時計回り)に誘導電流が流れ、他方で左回り(反時計回り)に誘導電流が流れる。このため、コイルCL5,CL6に誘導電流が流れるときに、コイルCL5に流れる誘導電流によりコイルCL5を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL6に流れる誘導電流によりコイルCL6を貫くように発生する磁束の向きとが反対向き(逆向き)になる。これにより、コイルCL5,CL6同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止できる。
【0187】
また、
図5および
図6の場合と同様に、
図14および
図15の第1変形例の場合も、コイルCL7,CL8については、直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8に電流を流したときに、コイルCL7とコイルCL8とで流れる電流の向きが反対向き(逆向き)になる。すなわち、コイルCL7,CL8のうちの一方で、右回り(時計回り)に電流が流れ、他方で左回り(反時計回り)に電流が流れるようにしている。このため、コイルCL7,CL8に電流が流れるときに、コイルCL7に流れる電流によりコイルCL7を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL8に流れる電流によりコイルCL8を貫くように発生する磁束の向きとが反対向き(逆向き)となる。これにより、コイルCL7,CL8同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止できる。
【0188】
このため、
図14および
図15の第1変形例の場合も、上記
図12および
図13の第1検討例の場合に比べて、一次コイル(CL7,CL8)から二次コイル(CL5,CL6)に誘導電流を用いて信号を伝達する際に、二次コイル(CL5,CL6)によって検知する信号強度(受信信号強度)を向上することができる。
【0189】
しかしながら、半導体チップにコイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7をレイアウトする場合、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置する制約があると、半導体チップのレイアウト設計が行いにくくなる。コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置する制約無しに、パッドPD7の配置位置をコイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に自由に設定できれば、半導体チップ全体を設計する上で、設計の自由度が上がり、半導体チップの設計を行いやすくなる。
【0190】
例えば、
図14および
図15の第1変形例のように、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置する場合、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7の配置領域として、コイルCL5とパッドPD7とコイルCL6とが並んだ方向に、長い寸法の配置領域が必要になる。しかしながら、半導体チップ全体を設計する上で、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7の配置領域として、そのように一方向に長い配置領域を設けることは避けたい場合もある。また、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置する制約があると、パッドPD5とパッドPD7とパッドPD6とがこの順に一列に配列することになる。しかしながら、これらパッドPD5,PD6,PD7に上記ボンディングワイヤBWのような接続部材を接続する上で、パッドPD5,PD6,PD7の配列について、パッドPD5とパッドPD7とパッドPD6とがこの順に一列に配列した形態以外の形態にしたい場合もある。
【0191】
このため、本発明者は、
図14および
図15の第1変形例のようにコイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置するのではなく、パッドPD7を、コイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置することを検討した。パッドPD7をコイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置する場合は、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が配置されない分、
図14および
図15の第1変形例の場合よりも、コイルCL5とコイルCL6との間の距離を短くすることが好ましい。
【0192】
図14および
図15の第1変形例の場合は、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が配置されているため、コイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)L2は、パッドPD7の辺の長さL1と同じかそれ以上になる(L2≧L1)。コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6の配置位置は
図14と同じままで、パッドPD7の位置だけをコイルCL5とコイルCL6との間以外の位置に移した場合は、パッドPD7の配置領域が必要になる分、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7の配置領域と必要な面積が増大するため、半導体チップの小型化(小面積化)に不利となる。すなわち、コイルCL5とコイルCL6との間の領域が無駄になってしまう分、半導体チップの小型化(小面積化)に不利となる。
【0193】
このため、パッドPD7を、コイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置する場合は、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置しなくて済んだ分、コイルCL5とコイルCL6とを互いに近づけて配置し、
図14の場合よりも、コイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)を短くすることが好ましい。従って、パッドPD7を、コイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置する場合は、コイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)L2は、パッドPD7の辺の長さL1よりも小さくする(L2<L1)ことが好ましい。
図5の場合は、この条件を満たしている。これにより、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7の配置に要する面積を抑制できるため、半導体チップの小型化(小面積化)に有利となる。
【0194】
つまり、パッドPD7をコイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置する場合は、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が配置できなくなるまで近づけた間隔でコイルCL5とコイルCL6とを配置することが好ましい。すなわち、コイルCL5の中心とコイルCL6の中心とを結ぶ方向に平行な方向でみたときのコイルCL5とコイルCL6との間の間隔(
図5の場合はL2がこの間隔になる)が、コイルCL5の中心とコイルCL6の中心とを結ぶ方向に平行な方向でみたときのパッドPD7の寸法(
図5の場合はL1がこの寸法になる)よりも小さくなることが好ましい。
【0195】
また、コイルCL7はコイルCL5の直下に配置され、コイルCL8はコイルCL6の直下に配置されるため、コイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)L2は、コイルCL7とコイルCL8との間の距離(間隔)L3と実質的に同じである(L2=L3)。なお、コイルCL5,CL6間の距離L2とコイルCL7,CL8間の距離(間隔)L3は、それぞれ、平面視での距離(間隔)に対応している。
【0196】
図16は、コイル間の距離(間隔)と結合係数との相関を示すグラフである。
図17および
図18は、
図16のグラフを得るシミュレーションに用いたコイルパターンを示す平面図である。
図16のグラフは、
図17および
図18のコイルパターンを基にシミュレーションして得られたものである。
【0197】
図17のコイルパターンは、上記
図12のコイルパターンを模したものである。すなわち、
図17のコイルCL205は、上記
図12のコイルCL105を模したものであり、
図17のコイルCL206は、上記
図12のコイルCL106を模したものであり、
図17のパッドパターンPD205は、上記
図12のパッドPD105を模したものであり、
図17のパッドパターンPD206は、上記
図12のパッドPD106を模したものである。コイルCL205は、上記コイルCL105と同様に右巻きであり、コイルCL206は、上記コイルCL106と同様に左巻である。また、コイルCL205およびコイルCL206の直下には、上記コイルCL107,CL108を模した2つのコイル(直列に接続された2つのコイル)が配置されているが、それについては、図示を省略している。コイルCL205の直下のコイル(図示せず)は、コイルCL205と同じ大きさで同じ巻き数であり、巻き方向は上記コイルCL107と同様に右巻きである。コイルCL206の直下のコイル(図示せず)は、コイルCL206と同じ大きさで同じ巻き数であり、巻き方向は上記コイルCL108と同様に左巻きである。
【0198】
図18のコイルパターンは、上記
図5のコイルパターンを模したものである。すなわち、
図18のコイルCL305は、上記
図5のコイルCL5を模したものであり、
図18のコイルCL306は、上記
図5のコイルCL6を模したものであり、
図18のパッドパターンPD305は、上記
図5のパッドPD5を模したものであり、
図18のパッドパターンPD306は、上記
図5のパッドPD6を模したものである。コイルCL305は、上記コイルCL5と同様に右巻きであり、コイルCL306は、上記コイルCL6と同様に右巻である。また、コイルCL305およびコイルCL306の直下には、上記コイルCL7,CL8を模した2つのコイル(直列に接続された2つのコイル)が配置されているが、それについては、図示を省略している。コイルCL305の直下のコイル(図示せず)は、コイルCL305と同じ大きさで同じ巻き数であり、巻き方向は上記コイルCL7と同様に右巻きである。コイルCL306の直下のコイル(図示せず)は、コイルCL306と同じ大きさで同じ巻き数であり、巻き方向は上記コイルCL8と同様に右巻きである。
【0199】
なお、
図17のコイルCL205,CL206と、
図18のコイルCL305,CL306とは、コイルの巻方向以外(コイルの巻き数や寸法など)はほぼ同じである。各コイルCL205,CL206,CL305,CL306は、内径を130μmとし、コイル配線の配線間隔を11μmとし、巻き数を3巻とし、コイル間距離L201,L301については約0μm、約50μm、約100μmの3種類として、結合係数のシミュレーションを行った。
【0200】
図17のコイルパターンの場合、コイルCL205,CL206の直下の2つのコイルに電流が流れることに伴い、コイルCL205,CL206に誘導電流が流れるときに、流れる誘導電流の向きが、コイルCL205とコイルCL206とで同じ向きになる。すなわち、コイルCL205を貫く磁束の向きと、CL206を貫く磁束の向きとが同じになる。これを前提に、一次コイル(コイルCL205,CL206の直下のコイル)と二次コイル(コイルCL205,CL206)との結合係数をシミュレーションして調べた結果が、
図16のグラフに、黒い丸印(●)で示してある。ここで、コイルCL205とコイルCL206との間の距離(間隔)L201を、3種類(約0μm、50μm、100μm)の値で変えた場合について、それぞれ一次コイルと二次コイルとの結合係数を調べ、
図16のグラフの横軸に、このコイルCL205とコイルCL206との間の距離L201をとり、
図16のグラフの縦軸に結合係数をとってプロットしてある。
【0201】
また、
図18のコイルパターンの場合、コイルCL305,CL306の直下の2つのコイルに電流が流れることに伴い、コイルCL305,CL306に誘導電流が流れるときに、流れる誘導電流の向きが、コイルCL305とコイルCL306とで反対向きになる。すなわち、コイルCL305を貫く磁束の向きと、CL306を貫く磁束の向きとが反対になる。これを前提に、一次コイル(コイルCL305,CL306の直下のコイル)と二次コイル(コイルCL305,CL306)との結合係数をシミュレーションして調べた結果が、
図16のグラフに、白い丸印(○)で示してある。ここで、コイルCL305とコイルCL306との間の距離(間隔)L301を、3種類(約0μm、50μm、100μm)の値で変えた場合について、それぞれ一次コイルと二次コイルとの結合係数を調べ、
図16のグラフの横軸に、このコイルCL305とコイルCL306との間の距離L301をとり、
図16のグラフの縦軸に結合係数をとってプロットしてある。
【0202】
図16のグラフからわかるように、コイル間の距離(L201,L301)が同じ場合で比べると、
図17のコイルパターンの場合(
図16のグラフの黒い丸印に対応)よりも
図18のコイルパターンの場合(
図16のグラフの白い丸印に対応)の方が、一次コイルと二次コイルの結合係数が大きくなる。すなわち、
図17の場合のようにコイルCL205,CL206に流れる誘導電流の向きが、コイルCL205とコイルCL206とで同じ向きになる場合よりも、
図18の場合のようにコイルCL305,CL306に流れる誘導電流の向きが、コイルCL305とコイルCL306とで逆向きになる場合の方が、一次コイルと二次コイルの結合係数が大きくなる。結合係数が大きくなることは、一次コイルと二次コイルとを介して信号を伝達する際に、二次コイル側で検知する信号強度(受信信号強度)を大きくすることにつながる。また、コイルの巻き数を多くすると、結合強度は大きくなるが、これはコイルの面積増大につながり、半導体チップの小型化(小面積化)に不利となる。このため、
図17のコイルパターンの場合(誘導電流の向きがコイルCL205とコイルCL206とで同じ向きになる場合)よりも、
図18のコイルパターンの場合(誘導電流の向きがコイルCL305とコイルCL306とで逆向きになる場合)の方が、結合係数が稼げる分、コイルの面積を抑制しても必要な結合係数を確保できるため、半導体チップの小型化(小面積化)に有利である。
【0203】
また、
図16のグラフからわかるように、
図17のコイルパターンの場合(誘導電流の向きがコイルCL205とコイルCL206とで同じ向きになる場合)は、コイルCL205とコイルCL206との間の距離L201が短くなる(すなわちコイルCL205とコイルCL206とを近づける)と、一次コイルと二次コイルの結合係数が更に小さくなる。これは、
図17のコイルパターンの場合(誘導電流の向きがコイルCL205とコイルCL206とで同じ向きになる場合)は、コイルCL205とコイルCL206とが近づくほど、互いに磁束を打ち消し合う作用が大きくなるためと考えられる。このため、上記
図12および
図13の第1検討例において、上記パッドPD107をコイルCL105とコイルCL106との間以外の領域に移動させ、かつ、コイルCL105とコイルCL106とを互いに近づけた(
図5および
図6と同程度に近づけた)場合を仮定すると、一次コイルと二次コイルの結合係数は、上記
図12および
図13の場合よりも、更に小さくなってしまう。
【0204】
それに対して、
図18のコイルパターンの場合(誘導電流の向きがコイルCL305とコイルCL306とで反対向きになる場合)は、コイルCL305とコイルCL306との間の距離L301が短くなる(すなわちコイルCL305とコイルCL306とを近づける)と、一次コイルと二次コイルの結合係数が大きくなる。このため、上記
図5および
図6のように、パッドPD7をコイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置し、かつ、コイルCL5とコイルCL6とを互いに近づけた場合の方が、上記
図14および
図15の第1変形例の場合よりも、一次コイルと二次コイルの結合係数は、更に大きくなる。
【0205】
このため、パッドPD7がコイルCL5とコイルCL6との間に配置されているかどうかにかかわらず、コイルCL5,CL6に流れる誘導電流の向きが、コイルCL5とコイルCL6とで反対向きになるようにすることで、一次コイルと二次コイルの結合係数を大きくすることができる。しかしながら、パッドPD7をコイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置した場合は、コイルCL5とコイルCL6との間の距離を近づけることができるが、その場合、誘導電流の向きがコイルCL5とコイルCL6とで反対向きになるようにすることが、結合係数を確保するために特に重要になる。すなわち、もしも誘導電流の向きがコイルCL5とコイルCL6とで同じ向きであれば、コイルCL5とコイルCL6との間の距離を近づけることは、結合係数が更に小さくなることに繋がるのに対して、誘導電流の向きがコイルCL5とコイルCL6とで反対向きになるようにすれば、コイルCL5とコイルCL6との間の距離を近づけても、結合係数を大きくすることができる。
【0206】
このため、誘導電流の向きがコイルCL5とコイルCL6とで反対向きになるようにすることは、パッドPD7の配置位置によらずに結合係数増大の効果があるが、パッドPD7をコイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置した場合に、特に効果が大きいと言える。
【0207】
上記
図14の第1変形例では、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置しているが、上記
図5に示される本実施の形態では、パッドPD7は、コイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置している。このため、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置する制約が無いので、半導体チップの全体を設計する上で、設計の自由度が上がり、半導体チップの設計を行いやすくなる。また、上記
図5に示される本実施の形態では、コイルCL5とコイルCL6との間の距離(間隔)は、パッドPD7の辺の長さL1よりも小さくしている。このため、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7の配置に要する面積を抑制できるため、半導体チップの小型化(小面積化)に有利となる。
【0208】
<半導体パッケージの構成例について>
次に、本実施の形態の半導体パッケージの構成例について説明する。なお、半導体パッケージは半導体装置とみなすこともできる。
【0209】
図19は、本実施の形態の半導体パッケージ(半導体装置)PKGを示す平面図であり、
図20は、半導体パッケージPKGの断面図である。但し、
図19では、封止樹脂部MRは透視し、封止樹脂部MRの外形(外周)を二点鎖線で示してある。また、
図19のB1−B1線の断面図が
図20にほぼ対応している。
【0210】
図19および
図20に示される半導体パッケージPKGは、半導体チップCP1,CP2を含む半導体パッケージである。以下、半導体パッケージPKGの構成について、具体的に説明する。
【0211】
図19および
図20に示される半導体パッケージPKGは、半導体チップCP1,CP2と、半導体チップCP1,CP2をそれぞれ搭載するダイパッドDP1,DP2と、導電体からなる複数のリードLDと、半導体チップCP1,CP2間や半導体チップCP1,CP2と複数のリードLDとの間を接続する複数のボンディングワイヤBWと、これらを封止する封止樹脂部MRとを有している。
【0212】
封止樹脂部(封止部、封止樹脂、封止体)MRは、例えば熱硬化性樹脂材料などの樹脂材料などからなり、フィラーなどを含むこともできる。封止樹脂部MRにより、半導体チップCP1,CP2、ダイパッドDP1,DP2、複数のリードLDおよび複数のボンディングワイヤBWが封止され、電気的および機械的に保護される。封止樹脂部MRは、その厚さと交差する平面形状(外形形状)は例えば矩形(四角形)とすることができる。
【0213】
半導体チップCP1の素子形成側の主面である半導体チップCP1の表面には、複数のパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PDが形成されている。半導体チップCP1の各パッドPDは、半導体チップCP1の内部に形成された半導体集積回路(例えば上記制御回路CCなど)に電気的に接続されている。
【0214】
半導体チップCP1の表面には、更に、上記パッドPD5,PD6,PD7にそれぞれ対応するパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD5a,PD6a,PD7aが形成されている。
【0215】
すなわち、半導体チップCP1は、上記送信回路TX1とこの送信回路TX1に接続された上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と、このコイルCL7,CL8にそれぞれ磁気的に結合された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)と、このコイルCL5,CL6に接続された上記パッドPD5,PD6,PD7とを有している。半導体チップCP1が有するパッドPD5がパッドPD5aに対応し、半導体チップCP1が有するパッドPD6がパッドPD6aに対応し、半導体チップCP1が有するパッドPD7がパッドPD7aに対応している。
【0216】
また、半導体チップCP1は、上記受信回路RX2と、この受信回路RX2に接続された複数のパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD9とを更に有している。このため、半導体チップCP1の表面には、パッドPD,PD5a,PD6a,PD7a,PD9が形成されている。なお、半導体チップCP1の複数のパッドPD9のうち、半導体チップCP2のパッドPD7bにボンディングワイヤBWを介して接続されるパッドPD9は、固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)を供給するパッドである。
【0217】
半導体チップCP2の素子形成側の主面である半導体チップCP2の表面には、複数のパッドPDが形成されている。半導体チップCP2の各パッドPDは、半導体チップCP2の内部に形成された半導体集積回路(例えば上記駆動回路DRなど)に電気的に接続されている。
【0218】
半導体チップCP2の表面には、更に、上記パッドPD5,PD6,PD7にそれぞれ対応するパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD5b,PD6b,PD7bが形成されている。
【0219】
すなわち、半導体チップCP2は、上記送信回路TX2とこの送信回路TX2に接続された上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と、このコイルCL7,CL8にそれぞれ磁気的に結合された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)と、このコイルCL5,CL6に接続された上記パッドPD5,PD6,PD7とを有している。半導体チップCP2が有するパッドPD5がパッドPD5bに対応し、半導体チップCP2が有するパッドPD6がパッドPD6bに対応し、半導体チップCP2が有するパッドPD7がパッドPD7bに対応している。
【0220】
また、半導体チップCP2は、上記受信回路RX1と、この受信回路RX1に接続された複数のパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD8とを更に有している。このため、半導体チップCP2の表面には、パッドPD,PD5b,PD6b,PD7b,PD8が形成されている。なお、半導体チップCP2の複数のパッドPD8のうち、半導体チップCP1のパッドPD7aにボンディングワイヤBWを介して接続されるパッドPD8は、固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)を供給するパッドである。
【0221】
なお、半導体チップCP1において、パッドPD,PD5a,PD6a,PD7a,PD9が形成された側の主面を半導体チップCP1の表面と呼び、それとは反対側の主面を、半導体チップCP1の裏面と呼ぶものとする。また、半導体チップCP2において、パッドPD,PD5b,PD6b,PD7b,PD8が形成された側の主面を半導体チップCP2の表面と呼び、それとは反対側の主面を、半導体チップCP2の裏面と呼ぶものとする。
【0222】
半導体チップCP1は、半導体チップCP1の表面が上方を向くように、チップ搭載部であるダイパッドDP1の上面上に搭載(配置)され、半導体チップCP1の裏面がダイパッドDP1の上面にダイボンド材(接着材)DBを介して接着されて固定されている。
【0223】
半導体チップCP2は、半導体チップCP2の表面が上方を向くように、チップ搭載部であるダイパッドDP2の上面上に搭載(配置)され、半導体チップCP2の裏面がダイパッドDP2の上面にダイボンド材(接着材)DBを介して接着されて固定されている。
【0224】
ダイパッドDP1とダイパッドDP2とは、封止樹脂部MRを構成する材料を間に介して離間しており、互いに電気的に絶縁されている。
【0225】
リードLDは、導電体で形成されており、好ましくは銅(Cu)または銅合金などの金属材料からなる。各リードLDは、リードLDのうちの封止樹脂部MR内に位置する部分であるインナリード部と、リードLDのうちの封止樹脂部MR外に位置する部分であるアウタリード部とからなり、リードLDのアウタリード部は、封止樹脂部MRの側面から封止樹脂部MR外に突出している。隣り合うリードLDのインナリード部間は、封止樹脂部MRを構成する材料により満たされている。各リードLDのアウタリード部は、半導体パッケージPKGの外部接続用端子部(外部端子)として機能することができる。各リードLDのアウタリード部は、アウタリード部の端部近傍の下面が封止樹脂部MRの下面よりも若干下に位置するように折り曲げ加工されている。
【0226】
半導体チップCP1,CP2の表面の各パッドPDは、各リードLDのインナリード部に、導電性接続部材であるボンディングワイヤBWを介してそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、半導体チップCP1,CP2の表面の各パッドPDに一端が接続されたボンディングワイヤBWの他端は、各リードLDのインナリード部の上面に接続されている。また、半導体チップCP1の表面のパッドPD5a,PD6a,PD7aは、半導体チップCP2の表面のパッドPD8にボンディングワイヤBWを介してそれぞれ電気的に接続されている。また、半導体チップCP2の表面のパッドPD5b,PD6b,PD7bは、半導体チップCP1の表面のパッドPD9にボンディングワイヤBWを介してそれぞれ電気的に接続されている。
【0227】
ボンディングワイヤBWは、導電性の接続部材(接続用部材)であるが、より特定的には導電性のワイヤであり、例えば金(Au)線または銅(Cu)線などの金属細線からなる。ボンディングワイヤBWは、封止樹脂部MR内に封止されており、封止樹脂部MRから露出されない。
【0228】
ここで、半導体チップCP1のパッドPD5a,PD6a,PD7aと半導体チップCP2のパッドPD8との間を接続するボンディングワイヤBWを、以下では、符号BW8を付してボンディングワイヤBW8と称することとする。また、半導体チップCP2のパッドPD5b,PD6b,PD7bと半導体チップCP1のパッドPD9との間を接続するボンディングワイヤBWを、以下では、符号BW9を付してボンディングワイヤBW9と称することとする。
【0229】
半導体チップCP1と半導体チップCP2との間は、ボンディングワイヤBW8,BW9で接続されているが、それ以外のボンディングワイヤBW(導電性の接続部材)では接続されていない。このため、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間での電気信号の伝送は、半導体チップCP1のパッドPD5a,PD6a,PD7aからボンディングワイヤBW8を介して半導体チップCP2のパッドPD8に至る経路と、半導体チップCP2のパッドPD5b,PD6b,PD7bからボンディングワイヤBW9を介して半導体チップCP2のパッドPD9に至る経路だけである。
【0230】
そして、半導体チップCP1のパッドPD5a,PD6a,PD7aは、半導体チップCP1内に形成された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)に接続されているが、このコイルCL5,CL6は半導体チップCP1内に形成された回路には導体(内部配線)を介しては繋がっておらず、半導体チップCP1内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と磁気的に結合したものである。このため、半導体チップCP1内に形成された回路(上記送信回路TX1など)から、半導体チップCP1内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)および上記コイルCL5,CL6(二次コイル)を介して電磁誘導で伝達された信号だけが、パッドPD5a,PD6a,PD7aからボンディングワイヤBW8を介して半導体チップCP2(上記受信回路RX1)に入力される。
【0231】
また、半導体チップCP2のパッドPD5b,PD6b,PD7bは、半導体チップCP2内に形成された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)に接続されているが、このコイルCL5,CL6は半導体チップCP2内に形成された回路には導体(内部配線)を介しては繋がっておらず、半導体チップCP2内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と磁気的に結合したものである。このため、半導体チップCP2内に形成された回路(上記送信回路TX2など)から、半導体チップCP2内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)および上記コイルCL5,CL6(二次コイル)を介して電磁誘導で伝達された信号だけが、パッドPD5b,PD6b,PD7bからボンディングワイヤBW9を介して半導体チップCP1(上記受信回路RX2)に入力される。
【0232】
半導体チップCP1と半導体チップCP2とは、電圧レベル(基準電位)が異なっている。例えば、駆動回路DRは、モータなどの負荷LODを駆動するが、具体的には、モータなどの負荷LODのスイッチ(スイッチング素子)を駆動または制御し、スイッチの切り換えを行う。このため、この駆動対象のスイッチがオンになると、半導体チップCP2の基準電位(電圧レベル)は、駆動対象のスイッチの電源電圧(動作電圧)にほぼ一致する電圧に上昇する場合があり、この電源電圧は、かなりの高電圧(例えば数百V〜数千V程度)である。このため、半導体チップCP1と半導体チップCP2とで、電圧レベル(基準電位)に大きな差が生じてしまう。つまり、駆動対象のスイッチのオン時には、半導体チップCP2には、半導体チップCP1に供給されている電源電圧(例えば数V〜数十V程度)よりも高い電圧(例えば数百V〜数千V程度)が供給されることになる。
【0233】
しかしながら、上述のように、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間で電気的に伝わるのは、半導体チップCP1内の一次コイル(CL7,CL8)および二次コイル(CL5,CL6)を介して電磁誘導で伝達された信号か、あるいは、半導体チップCP2内の一次コイル(CL7,CL8)および二次コイル(CL5,CL6)を介して電磁誘導で伝達された信号だけである。このため、半導体チップCP1の電圧レベル(基準電位)と半導体チップCP2の電圧レベル(基準電位)が相違していても、半導体チップCP2の電圧レベル(基準電位)が半導体チップCP1に入力されたり、あるいは、半導体チップCP1の電圧レベル(基準電位)が半導体チップCP2に入力されることを、的確に防止することができる。すなわち、駆動対象のスイッチがオンになって半導体チップCP2の基準電位(電圧レベル)が駆動対象のスイッチの電源電圧(例えば数百V〜数千V程度)にほぼ一致する電圧にまで上昇したとしても、この半導体チップCP2の基準電位が半導体チップCP1に入力されることを的確に防止することができる。このため、電圧レベル(基準電位)が異なる半導体チップCP1,CP2間で電気信号の伝達を的確に行うことができる。また、半導体チップCP1と半導体チップCP2の信頼性を高めることができる。また、半導体パッケージPKGの信頼性を向上させることができる。また、半導体パッケージPKGを用いた電子装置の信頼性を向上させることができる。
【0234】
また、磁気的に結合したコイルを利用して半導体チップ間の信号の伝達を行っていることにより、半導体パッケージPKGの小型化を図りつつ、信頼性を向上させることができる。
【0235】
ここで、半導体パッケージPKGが搭載される製品用途例について説明する。例えば、自動車、洗濯機などの家電機器のモータ制御部、スイッチング電源、照明コントローラ、太陽光発電コントローラ、携帯電話器、あるいはモバイル通信機器などがある。
【0236】
例えば、自動車用途としては、半導体チップCP1が、低電圧の電源電圧が供給される低圧チップであり、その際の供給電源電圧は、例えば5V程度である。一方、駆動回路DRの駆動対象のスイッチの電源電圧は、例えば600V〜1000Vもしくはそれ以上の高電圧であり、スイッチのオン時には、この高電圧が半導体チップCP2に供給され得る。
【0237】
なお、ここでは、半導体パッケージPKGのパッケージ形態として、SOP(Small Outline Package)の場合を例に挙げて説明したが、SOP以外にも適用可能である。
【0238】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、半導体チップ(CP1,CP2)における、二次コイル(上記コイルCL5,CL6に対応するコイル)およびそれに接続されたパッド(上記パッドPD5,PD6,PD7に対応するパッド)の種々のレイアウト例(配置例)について、図面を参照して説明する。本実施の形態2は、上記実施の形態1の変形例とみなすこともできる。
【0239】
図21〜
図31は、本実施の形態2の半導体チップ(半導体装置)の要部平面図であり、上記実施の形態1の上記
図5に対応するものである。
【0240】
なお、本実施の形態2では、
図21〜
図31のそれぞれの場合について、上記
図5〜
図10の実施の形態1の場合と同様の部分については、その繰り返しの説明は省略し、上記
図5〜
図10の実施の形態1の場合と相違する部分を中心に説明する。
【0241】
また、本実施の形態2では、二次コイルおよびそれに接続されたパッドのレイアウトについて説明することとし、一次コイル(上記コイルCL7,CL8に対応するコイル)の図示および説明は省略するが、実際には、
図21〜
図31に示される各コイル(二次コイル)の直下に、そのコイル(二次コイル)と磁気的に結合されたコイル(一次コイル)が、それぞれ配置されている。一次コイルは二次コイルの直下に配置されるので、二次コイルのレイアウトが決まれば、必然的に一次コイルのレイアウトも決まるため、ここでは、二次コイルのレイアウトを説明することで、一次コイルのレイアウトの説明は省略する。また、本実施の形態2では、半導体チップCP1におけるコイルおよびパッドのレイアウトとして説明するが、本実施の形態2で説明したレイアウトは、半導体チップCP1,CP2のうちの一方または両方に適用することができる。
【0242】
まず、上記実施の形態1の上記
図5における二次コイル(コイルCL5,CL6)およびそれに接続されたパッド(パッドPD5,PD6,PD7)のレイアウトと同様のレイアウトを有する
図21のレイアウトについて、説明する。なお、
図21〜
図31において、各パッド上に描いた点線は、パッドを露出する上記開口部OPの位置を示したものである。
【0243】
図21の場合、半導体チップCP1において、二次コイルであるコイルCL5,CL6は、半導体チップCP1の辺SH1に沿うように配置されている。辺SH1は、矩形の半導体チップCP1の外周を構成する四辺のうちの一辺である。ここで、辺SH1に平行な方向(すなわち辺SH1に沿った方向)をX方向とし、辺SH1に直交する方向をY方向とする。X方向とY方向とは、互いに直交する方向である。
【0244】
図21の場合、半導体チップCP1において、コイルCL5およびコイルCL6は、半導体チップCP1の辺SH1の近傍に、この辺SH1に沿って配置されている。このため、コイルCL5とコイルCL6とは、X方向に並んでいる。上述のように、パッドPD5は、コイルCL5の内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL5の一端に接続され、パッドPD6は、コイルCL6の内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL6の一端に接続されている。コイルCL5とコイルCL6とがX方向に並んでいるため、パッドPD5とパッドPD6も、X方向に並んでいる。パッドPD7は、X方向に並んだコイルCL5とコイルCL6との間の位置から、Y方向に所定の距離だけずれた位置(辺SH1から離れる方向にずれた位置)に配置されている。パッドPD7とコイルCL5,CL6とは、引出配線HW1により接続されている。この引出配線HW1は、コイルCL5とコイルCL6との間からパッドPD7まで延在している。この際、パッドPD7がコイルCL5,CL6とちょうど重ならなくなる距離だけ、コイルCL5とコイルCL6との間の位置からY方向にパッドPD7がずれていれば、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7をレイアウトするのに要する面積を縮小することができる。
【0245】
図21の場合、パッドPD5とパッドPD6とがX方向に並んでおり、パッドPD7は、パッドPD5とパッドPD6との間の位置からY方向に所定の距離だけずれた位置(辺SH1から離れる方向にずれた位置)に配置されている。すなわち、パッドPD5と辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD6と辺SH1との間の距離(Y方向の距離)とは、ほぼ同じである。一方、パッドPD7と辺SH1との間の距離(Y方向の距離)は、パッドPD5と辺SH1との間の距離(Y方向の距離)や、パッドPD6と辺SH1との間の距離(Y方向の距離)よりも大きくなっており、その差は、パッドPD5,PD6の一辺の寸法以上である。
【0246】
図21のレイアウトでは、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7をレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を、小さくすることができ、例えば、コイルCL5のX方向の寸法とコイルCL6のX方向の寸法との合計と同程度にすることができる。このため、半導体チップCP1全体の設計をするうえで、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7をレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を小さくしたい場合に、有利である。
【0247】
また、
図21のレイアウトでは、パッドPD5,PD6,PD7にそれぞれボンディングワイヤ(BW)のような接続用部材を接続する場合、パッドPD5に接続するボンディングワイヤとパッドPD6に接続するボンディングワイヤとの間に、パッドPD7に接続するボンディングワイヤが位置することになる。このパッドPD7が、パッドPD5,PD6が並んだ位置からY方向にずれているため、パッドPD5に接続するボンディングワイヤと、パッドPD7に接続するボンディングワイヤと、パッドPD6に接続するボンディングワイヤとが、互いに接触するのを防止しやすくなる。
【0248】
次に、
図22のレイアウトについて、説明する。
【0249】
図22の場合、上記コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7に相当するものが、コイルCL5c,CL6cおよびパッドPD5c,PD6c,PD7cのセットと、コイルCL5d,CL6dおよびパッドPD5d,PD6d,PD7dのセットの、合計2セットある。このうち、コイルCL5c,CL5dは、それぞれ上記コイルCL5に相当するものであり、コイルCL6c,CL6dは、それぞれ上記コイルCL6に相当するものである。また、パッドPD5c,PD5dは、それぞれ上記パッドPD5に相当するものであり、パッドPD6c,PD6dは、それぞれ上記パッドPD6に相当するものであり、パッドPD7c,PD7dは、それぞれ上記パッドPD7に相当するものである。
【0250】
すなわち、
図22の場合、他の半導体チップ(CP2)への送信経路が2チャンネルある。2チャンネルのうちの1つは、コイルCL5c,CL6cの直下の一次コイル(ここでは図示しないが、上記コイルCL7,CL8に相当するもの)と二次コイルであるコイルCL5c,CL6cとを介して、半導体チップCP1内の送信回路から他の半導体チップ(CP2)内の受信回路へ信号を送信する経路である。2チャンネルのうちの他の1つは、コイルCL5d,CL6dの直下の一次コイル(ここでは図示しないが、上記コイルCL7,CL8に相当するもの)と二次コイルであるコイルCL5d,CL6dとを介して、半導体チップCP1内の送信回路から他の半導体チップ(CP2)内の受信回路へ信号を送信する経路である。
【0251】
このため、半導体チップCP1において、コイルCL5c,CL6cおよびパッドPD5c,PD6c,PD7cのセットと、コイルCL5d,CL6dおよびパッドPD5d,PD6d,PD7dのセットとは、互いに独立して設けられている。
【0252】
図22のレイアウトを以下に具体的に説明する。
【0253】
図22の場合、半導体チップCP1において、コイルCL5cおよびコイルCL6cは、半導体チップCP1の辺SH1の近傍に、この辺SH1に沿って配置されている。このため、コイルCL5cとコイルCL6cとは、X方向に並んでいる。パッドPD5cは、コイルCL5cの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL5cの一端に接続され、パッドPD6cは、コイルCL6cの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL6cの一端に接続されている。コイルCL5cとコイルCL6cとがX方向に並んでいるため、パッドPD5cとパッドPD6cも、X方向に並んでいる。パッドPD7cは、X方向に並んだコイルCL5cとコイルCL6cとの間の位置から、Y方向に所定の距離だけずれた位置(辺SH1から離れる方向にずれた位置)に配置されている。パッドPD7cとコイルCL5c,CL6cとは、上記引出配線HW1に対応する引出配線HW1cにより接続されている。この引出配線HW1cは、コイルCL5cとコイルCL6cとの間からパッドPD7cまで延在している。
【0254】
また、コイルCL5d,CL6dおよびパッドPD5d,PD6d,PD7dのセットに着目すると、コイルCL5dとコイルCL6dとは、X方向に並んでいる。パッドPD5dは、コイルCL5dの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL5dの一端に接続され、パッドPD6dは、コイルCL6dの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL6dの一端に接続されている。コイルCL5dとコイルCL6dとがX方向に並んでいるため、パッドPD5dとパッドPD6dも、X方向に並んでいる。パッドPD7dは、X方向に並んだコイルCL5dとコイルCL6dとの間の位置から、Y方向に所定の距離だけずれた位置(辺SH1に近づく方向にずれた位置)に配置されている。パッドPD7dとコイルCL5d,CL6dとは、上記引出配線HW1に対応する引出配線HW1dにより接続されている。この引出配線HW1dは、コイルCL5dとコイルCL6dとの間からパッドPD7dまで延在している。
【0255】
そして、パッドPD5cとパッドPD6cとパッドPD7dとがX方向に並び、パッドPD7cとパッドPD5dとパッドPD6dとがX方向に並んでいる。つまり、X方向に並ぶコイルCL5cとコイルCL6cの延長の位置(X方向の延長の位置)に、パッドPD7dが配置され、X方向に並ぶコイルCL6dとコイルCL5dの延長の位置(X方向の延長の位置)に、パッドPD7cが配置されている。また、コイルCL6cの一部とコイルCL5dの一部とは、Y方向に対向している。
【0256】
このため、パッドPD5cと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD6cと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD7dと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)とは、ほぼ同じである。また、パッドPD6dと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD5dと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD7cと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)とは、ほぼ同じである。しかしながら、パッドPD5d,PD6d,PD7cと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)は、パッドPD5c,PD6c,PD7dと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)よりも大きくなっており、その差は、パッドPD5c,PD6c,PD7dの一辺の寸法以上である。この際、コイルCL5c,CL6cとコイルCL5d,CL6dとがちょうど重ならなくなる距離だけ、パッドPD5c,6c,7dの列と、パッドPD7c,PD5d,PD6dの列とが、Y方向にずれていれば、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD7c,PD5d,PD6d,PD7dをレイアウトするのに要する面積を縮小できる。また、X方向に並ぶパッドPD5c,PD6c,PD7dのピッチ(間隔)と、X方向に並ぶパッドPD7c,PD5d,PD6dのピッチ(間隔)とは、概ね同程度とすることもできる。
【0257】
半導体チップCP1に、上記コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7のセットを複数セット形成する場合、
図22のレイアウトを適用することで、それらコイルとパッドをレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を、小さくすることができる。このため、半導体チップCP1全体の設計をするうえで、コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7に相当するものをレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を小さくしたい場合に、有利である。
【0258】
また、
図22のレイアウトでは、パッドPD5c,PD6c,PD7c,PD5d,PD6d,PD7dにそれぞれボンディングワイヤ(BW)のような接続用部材を接続する場合、パッドPD5cに接続するボンディングワイヤとパッドPD6cに接続するボンディングワイヤとの間に、パッドPD7cに接続するボンディングワイヤが位置することになる。また、パッドPD7cに接続するボンディングワイヤとパッドPD5dに接続するボンディングワイヤとの間に、パッドPD6cに接続するボンディングワイヤが位置することになる。パッドPD6cに接続するボンディングワイヤとパッドPD7dに接続するボンディングワイヤとの間に、パッドPD5dに接続するボンディングワイヤが位置することになる。パッドPD5dに接続するボンディングワイヤとパッドPD6dに接続するボンディングワイヤとの間に、パッドPD7dに接続するボンディングワイヤが位置することになる。つまり、パッドPD5cに接続するボンディングワイヤと、パッドPD7cに接続するボンディングワイヤと、パッドPD6cに接続するボンディングワイヤと、パッドPD5dに接続するボンディングワイヤと、パッドPD7dに接続するボンディングワイヤと、パッドPD6dに接続するボンディングワイヤとが、この順に並ぶことになる。
【0259】
Y方向へのずれを無視すると、パッドPD5cとパッドPD7cとパッドPD6cとパッドPD5dとパッドPD7dとパッドPD6dとが、この順でY方向に並ぶが、実際には、これらパッドPD5c,PD7c,PD6c,PD5d,PD7d,PD6dは2列に交互に並んでいる。すなわち、パッドPD5c,PD6c,PD7dが一列に並び、パッドPD5c,PD6c,PD7dの列からY方向にずれて、パッドPD7c,PD5d,PD6dが一列に並んでいる。つまり、パッドPD5cとパッドPD7cとパッドPD6cとパッドPD5dとパッドPD7dとパッドPD6dとが、いわゆる千鳥配列で並んでいる。このため、パッドPD5cに接続するボンディングワイヤと、パッドPD7cに接続するボンディングワイヤと、パッドPD6cに接続するボンディングワイヤと、パッドPD5dに接続するボンディングワイヤと、パッドPD7dに接続するボンディングワイヤと、パッドPD6dに接続するボンディングワイヤとが、互いに接触するのを防止しやすくなる。
【0260】
次に、
図23のレイアウトについて、説明する。
【0261】
図23の場合、コイルCL5とコイルCL6とは、X方向とY方向との間の斜め方向に並んでいる。そして、コイルCL5の内側(渦巻きの内側)に配置されたパッドPD5は、パッドPD7とX方向に並んでおり、コイルCL6の内側(渦巻きの内側)に配置されたパッドPD6は、パッドPD7とY方向に並んでいる。パッドPD7とコイルCL5,CL6とは、引出配線HW1により接続されており、この引出配線HW1は、コイルCL5とコイルCL6との間からパッドPD7まで延在している。
【0262】
このような
図23のレイアウトは、半導体チップCP1の主面において、半導体チップCP1の角部近傍にコイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7を配置する場合に適用すれば、好ましい。すなわち、半導体チップCP1の辺SH1と辺SH2とで形成される半導体チップCP1の角部SC1の近傍にコイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7を配置する場合、角部SC1の近傍にパッドPD7を配置し、辺SH1に沿ってパッドPD5とパッドPD7とが並ぶようにし、辺SH2に沿ってパッドPD6とパッドPD7とが並ぶようにする。このとき、辺SH1に沿って並ぶパッドPD5とパッドPD7とのうち、パッドPD7の方が角部SC1に近くなるようにし、辺SH2に沿って並ぶパッドPD6とパッドPD7とのうち、パッドPD7の方が角部SC1に近くなるようにしている。
【0263】
これにより、半導体チップCP1の角部SC1の近傍にコイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7を効率的に配置することができる。ここで、辺SH1,SH2は、矩形の半導体チップCP1の外周を構成する四辺のうちの二辺であり、辺SH1と辺SH2とは交差して角部SC1を形成している。辺SH1は、X方向に略平行であり、辺SH2は、Y方向に略平行である。
【0264】
次に、
図24のレイアウトについて、説明する。
【0265】
図24の場合、半導体チップCP1において、コイルCL5およびコイルCL6は、半導体チップCP1の辺SH1の近傍に、この辺SH1に沿って配置されている。このため、コイルCL5とコイルCL6とは、X方向に並んでいる。パッドPD5は、コイルCL5の内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL5の一端に接続され、パッドPD6は、コイルCL6の内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL6の一端に接続されている。コイルCL5とコイルCL6とがX方向に並んでいるため、パッドPD5とパッドPD6も、X方向に並んでいる。
【0266】
そして、パッドPD5とパッドPD6とパッドPD7とがX方向に並んでいる。つまり、X方向に並ぶコイルCL5とコイルCL6の延長の位置(X方向の延長の位置)に、パッドPD7が配置されている。
図24では、コイルCL6に対してX方向に隣り合う位置にパッドPD7が配置されているが、他の形態として、コイルCL5に対してX方向に隣り合う位置にパッドPD7を配置することもできる。パッドPD7とコイルCL5,CL6とは、引出配線HW1により接続されている。この引出配線HW1は、コイルCL5とコイルCL6との間からパッドPD7まで延在している。
【0267】
図24のレイアウトでは、パッドPD5,PD6,PD7にそれぞれボンディングワイヤ(BW)のような接続用部材を接続する場合、パッドPD5に接続するボンディングワイヤとパッドPD6に接続するボンディングワイヤとパッドPD7に接続するボンディングワイヤとが、この順にX方向に並ぶことになる。
【0268】
半導体チップCP1のパッドPD5,PD6,PD7に一端が接続された複数のボンディングワイヤの他端を接続する他の半導体チップ(CP2)の回路構成上、パッドPD5とパッドPD6との間にパッドPD7を配置したくない場合もある。例えば、パッドPD5とパッドPD6との間にパッドPD7を配置すると、半導体チップCP1のこれらパッドPD5,PD6,PD7と他の半導体チップ(CP2)のパッドとを、ボンディングワイヤなどの接続用部材で接続しにくくなる場合もある。このような場合、
図24のように、パッドPD5とパッドPD6との間にパッドPD7が位置しないようにすることで、半導体チップCP1のパッドPD5,PD6,PD7と他の半導体チップ(CP2)のパッドとを、ボンディングワイヤなどの接続用部材で接続しやすくなる。また、パッドPD5,PD6,PD7が一列に配列することで、パッドPD5,PD6,PD7へボンディングワイヤを接続しやすくなる。
【0269】
次に、
図25のレイアウトについて、説明する。
【0270】
図25の場合、コイルCL5とコイルCL6とは、X方向に並んでいる。パッドPD5は、コイルCL5の内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL5の一端に接続され、パッドPD6は、コイルCL6の内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL6の一端に接続されている。コイルCL5とコイルCL6とがX方向に並んでいるため、パッドPD5とパッドPD6も、X方向に並んでいる。そして、パッドPD7は、コイルCL6に対してY方向に隣り合う位置に配置されている。このため、パッドPD7は、パッドPD6とY方向に並んでいる。つまり、上記
図21の場合は、X方向に並ぶパッドPD5とパッドPD6との間の中央からY方向にずれた位置にパッドPD7が配置されていたが、
図25の場合は、パッドPD6の位置からY方向にずれた位置(パッドPD7がコイルCL6に重ならなくなるまでずれた位置)に、パッドPD7が配置されている。パッドPD7とコイルCL5,CL6とは、引出配線HW1により接続されており、この引出配線HW1は、コイルCL5とコイルCL6との間からパッドPD7まで延在している。
【0271】
このような
図25のレイアウトは、半導体チップCP1の主面において、半導体チップCP1の角部近傍にコイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7を配置する場合に適用すれば、好ましい。すなわち、半導体チップCP1の辺SH1と辺SH2とで形成される半導体チップCP1の角部SC1の近傍にコイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7を配置する場合、角部SC1の近傍にコイルCL6を配置し、そのコイルCL6の内側にパッドPD6を配置する。そして、コイルCL5はコイルCL6とX方向に隣り合うように配置し、そのコイルCL5の内側にパッドPD5を配置し、パッドPD7はコイルCL6とY方向に隣り合うように配置する。これにより、辺SH1に沿ってパッドPD6とパッドPD5とが並び、辺SH2に沿ってパッドPD6とパッドPD7とが並ぶが、このとき、辺SH1に沿って並ぶパッドPD6とパッドPD5とのうち、パッドPD6の方が角部SC1に近くなり、辺SH2に沿って並ぶパッドPD6とパッドPD7とのうち、パッドPD6の方が角部SC1に近くなる。
【0272】
これにより、半導体チップCP1の角部SC1の近傍にコイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7を効率的に配置することができる。
【0273】
なお、
図25において、コイルCL5およびパッドPD5の位置と、パッドPD7の位置とを、入れ替えることもできる。
【0274】
次に、
図26のレイアウトについて、説明する。
【0275】
図26の場合も、上記
図22の場合と同様に、上記コイルCL5,CL6およびパッドPD5,PD6,PD7に相当するのもが2セットあるが、上記
図22のパッドPD7cとパッドPD7dとが共通化されて、1つのパッドPD7eとなっている。
【0276】
図26の場合、半導体チップCP1において、コイルCL5cおよびコイルCL6cは、半導体チップCP1の辺SH1の近傍に、この辺SH1に沿って配置されている。パッドPD5cは、コイルCL5cの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL5cの一端に接続され、パッドPD6cは、コイルCL6cの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL6cの一端に接続されている。コイルCL5cとコイルCL6cとがX方向に並んでいるため、パッドPD5cとパッドPD6cも、X方向に並んでいる。
【0277】
また、
図26の場合、半導体チップCP1において、コイルCL5dおよびコイルCL6dは、半導体チップCP1の辺SH1の近傍に、この辺SH1に沿って配置されている。パッドPD5dは、コイルCL5dの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL5dの一端に接続され、パッドPD6dは、コイルCL6dの内側(渦巻きの内側)に配置されてコイルCL6dの一端に接続されている。コイルCL5dとコイルCL6dとがX方向に並んでいるため、パッドPD5dとパッドPD6dも、X方向に並んでいる。
【0278】
そして、コイルCL5cとコイルCL6cとコイルCL5dとコイルCL6dとがX方向に並んでおり、コイルCL6cとコイルCL5dとの間に、パッドPD7eが配置されている。このため、パッドPD5cとパッドPD6cとパッドPD7eとパッドPD5dとパッドPD6dとが、X方向に並んでいる。X方向に並ぶパッドPD5c,PD6c,PD7e,PD5d,PD6dのピッチ(間隔)は、概ね同程度とすることもできる。
【0279】
パッドPD7eは、上記引出配線HW1に対応する引出配線HW1eにより、コイルCL5c,CL6c(のそれぞれの外側の端部)と接続され、また、コイルCL5d,CL6d(のそれぞれの外側の端部)と接続されている。この引出配線HW1eは、コイルCL5cとコイルCL6cとの間からパッドPD7eまでと、コイルCL5dとコイルCL6dとの間からパッドPD7eまでとに、延在している。
【0280】
図26の場合、コイルCL5cとコイルCL6cとの間に電気的に接続するパッドと、コイルCL5dとコイルCL6dとの間に電気的に接続するパッドとを、共通のパッドPD7eとしたことで、上記
図22の場合のようにパッドPD7cとパッドPD7dとを別々に設けた場合と比べて、パッドの数を1つ減らすことができる。これにより、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD7e,PD5d,PD6dをレイアウトするのに要する面積を縮小することができる。また、パッドPD5c,PD6c,PD7e,PD5d,PD6dが一列に配列することで、これらのパッドPD5c,PD6c,PD7e,PD5d,PD6dに、ボンディングワイヤなどの接続用部材を接続しやすくなる。
【0281】
また、パッドPD7eをコイルCL6cとコイルCL5dとの間に配置したことにより、コイルCL5cとコイルCL6cとの間からパッドPD7eまで延在する部分の引出配線HW1eの延在距離と、コイルCL5dとコイルCL6dとの間からパッドPD7eまで延在する部分の引出配線HW1eの延在距離とを、ほぼ同じにすることができる。このため、パッドPD7eをコイルCL5cとコイルCL6cとの間に電気的に接続するまでの引出配線HW1eの抵抗成分と、パッドPD7eをコイルCL5dとコイルCL6dとの間に電気的に接続するまでの引出配線HW1eの抵抗成分とを、概ね同程度としやすいため、2つのチャンネルのバランスがよくなる。
【0282】
次に、
図27のレイアウトについて、説明する。
【0283】
図27のレイアウトは、
図26のレイアウトの変形例である。
【0284】
図27の場合、半導体チップCP1において、コイルCL5cとコイルCL6cとコイルCL5dとコイルCL6dとがこの順序で、半導体チップCP1の辺SH1の近傍に、この辺SH1に沿って配置されている。パッドPD5cは、コイルCL5cの内側に配置されてコイルCL5cの一端に接続され、パッドPD6cは、コイルCL6cの内側に配置されてコイルCL6cの一端に接続され、パッドPD5dは、コイルCL5dの内側に配置されてコイルCL5dの一端に接続され、パッドPD6dは、コイルCL6dの内側に配置されてコイルCL6dの一端に接続されている。コイルCL5cとコイルCL6cとコイルCL5dとコイルCL6dとがX方向に並んでいるため、パッドPD5cとパッドPD6cとパッドPD5dとパッドPD6dも、X方向に並んでいる。
【0285】
上記
図26の場合は、パッドPD7eを、コイルCL6cとコイルCL5dとの間に配置していたが、
図27の場合は、パッドPD7eを、コイルCL6cとコイルCL5dとの間には配置していない。すなわち、
図27の場合は、X方向に並ぶコイルCL5cとコイルCL6cとコイルCL5dとコイルCL6dとの延長の位置(X方向の延長の位置)に、コイルCL6dに対してX方向に隣り合うように、パッドPD7eが配置されている。なお、他の形態として、パッドPD7eを、コイルCL6dではなくコイルCL5cに対してX方向に隣り合う位置に配置することもできる。
【0286】
図27の場合は、コイルCL6cとコイルCL5dとの間にパッドPD7eを配置していない分、上記
図26の場合に比べて、コイルCL6cとコイルCL5dとが互いに近づいている。
図27の場合は、パッドPD5cとパッドPD6cとパッドPD5dとパッドPD6dとパッドPD7eとがX方向に並び、パッドPD7eはその並びの端に配置されている。X方向に並ぶパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eのピッチ(間隔)は、概ね同程度とすることもできる。
【0287】
パッドPD7eは、上記引出配線HW1に対応する引出配線HW1eにより、コイルCL5c,CL6c(のそれぞれの外側の端部)と接続され、また、コイルCL5d,CL6d(のそれぞれの外側の端部)と接続されている。この引出配線HW1eは、コイルCL5cとコイルCL6cとの間からパッドPD7eまでと、コイルCL5dとコイルCL6dとの間からパッドPD7eまでとに、延在している。
【0288】
図27の場合、コイルCL5cとコイルCL6cとの間に電気的に接続するパッドと、コイルCL5dとコイルCL6dとの間に電気的に接続するパッドとを、共通のパッドPD7eとしたことで、上記
図22の場合のようにパッドPD7cとパッドPD7dとを別々に設けた場合と比べて、パッドの数を1つ減らすことができる。これにより、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD7e,PD5d,PD6dをレイアウトするのに要する面積を縮小することができる。また、パッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eが一列に配列することで、これらのパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eに、ボンディングワイヤなどの接続用部材を接続しやすくなる。
【0289】
また、パッドPD7eを、パッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6dの間に配置したくない要求(設計上要求など)がある場合、
図27のように、X方向に並ぶパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6dの延長の位置にパッドPD7eを配置することで、対応することができる。
【0290】
次に、
図28のレイアウトについて、説明する。
【0291】
図28のレイアウトは、
図26のレイアウトや
図27のレイアウトの変形例である。
【0292】
図28の場合、半導体チップCP1において、コイルCL5cとコイルCL6cとコイルCL5dとコイルCL6dとがこの順序で、半導体チップCP1の辺SH1の近傍に、この辺SH1に沿って配置されている。パッドPD5cは、コイルCL5cの内側に配置されてコイルCL5cの一端に接続され、パッドPD6cは、コイルCL6cの内側に配置されてコイルCL6cの一端に接続され、パッドPD5dは、コイルCL5dの内側に配置されてコイルCL5dの一端に接続され、パッドPD6dは、コイルCL6dの内側に配置されてコイルCL6dの一端に接続されている。コイルCL5cとコイルCL6cとコイルCL5dとコイルCL6dとがX方向に並んでいるため、パッドPD5cとパッドPD6cとパッドPD5dとパッドPD6dも、X方向に並んでいる。
【0293】
上記
図26の場合は、パッドPD7eを、コイルCL6cとコイルCL5dとの間に配置していたが、
図28の場合は、パッドPD7eを、コイルCL6
cとコイルCL5dとの間には配置していない。すなわち、
図28の場合は、X方向に並んだコイルCL6cとコイルCL5dとの間の位置から、Y方向に所定の距離だけずれた位置(辺SH1から離れる方向にずれた位置)に、パッドPD7eが配置されている。
【0294】
上記
図27の場合と同様に
図28の場合も、コイルCL6cとコイルCL5dとの間にパッドPD7eを配置していない分、上記
図26の場合に比べて、コイルCL6cとコイルCL5dとが互いに近づいている。X方向に並ぶパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6dのピッチ(間隔)は、概ね同程度とすることもできる。
【0295】
パッドPD7eは、上記引出配線HW1に対応する引出配線HW1eにより、コイルCL5c,CL6c(のそれぞれの外側の端部)と接続され、また、コイルCL5d,CL6d(のそれぞれの外側の端部)と接続されている。この引出配線HW1eは、コイルCL5cとコイルCL6cとの間からパッドPD7eまでと、コイルCL5dとコイルCL6dとの間からパッドPD7eまでとに、延在している。
【0296】
図28の場合、パッドPD5cとパッドPD6cとパッドPD5dとパッドPD6dとがX方向に並んでおり、パッドPD7eは、パッドPD6cとパッドPD5dとの間の位置からY方向に所定の距離だけずれた位置(辺SH1から離れる方向にずれた位置)に配置されている。すなわち、パッドPD5cと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD6cと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD5dと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)と、パッドPD6dと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)とは、ほぼ同じである。一方、パッドPD7eと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)は、パッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6dと辺SH1との間の距離(Y方向の距離)よりも大きくなっており、その差は、パッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6dの一辺の寸法以上である。
【0297】
図28の場合、コイルCL5cとコイルCL6cとの間に電気的に接続するパッドと、コイルCL5dとコイルCL6dとの間に電気的に接続するパッドとを、共通のパッドPD7cとしたことで、上記
図22の場合のようにパッドPD7cとパッドPD7dとを別々に設けた場合と比べて、パッドの数を1つ減らすことができる。これにより、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD7e,PD5d,PD6dをレイアウトするのに要する面積を縮小することができる。
【0298】
また、
図28のレイアウトでは、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eをレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を、小さくすることができ、例えば、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dのそれぞれのX方向の寸法の合計と同程度にすることができる。このため、半導体チップCP1全体の設計をするうえで、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eをレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を小さくしたい場合に、有利である。
【0299】
また、
図28のレイアウトでは、パッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eにそれぞれボンディングワイヤのような接続用部材を接続する場合、パッドPD6cに接続するボンディングワイヤとパッドPD5dに接続するボンディングワイヤとの間に、パッドPD7eに接続するボンディングワイヤが位置することになる。このパッドPD7eが、パッドPD6c,PD5dが並んだ位置からY方向にずれているため、パッドPD6cに接続するボンディングワイヤと、パッドPD7eに接続するボンディングワイヤと、パッドPD5dに接続するボンディングワイヤとが、互いに接触するのを防止しやすくなる。
【0300】
また、パッドPD7eをコイルCL6cとコイルCL5dとの間からY方向にずれた位置に配置したことにより、コイルCL5cとコイルCL6cとの間からパッドPD7eまで延在する部分の引出配線HW1eの延在距離と、コイルCL5dとコイルCL6dとの間からパッドPD7eまで延在する部分の引出配線HW1eの延在距離とを、ほぼ同じにすることができる。このため、パッドPD7eをコイルCL5cとコイルCL6cとの間に電気的に接続するまでの引出配線HW1eの抵抗成分と、パッドPD7eをコイルCL5dとコイルCL6dとの間に電気的に接続するまでの引出配線HW1eの抵抗成分とを、概ね同程度としやすいため、2つのチャンネルのバランスがよくなる。
【0301】
次に、
図29のレイアウトについて、説明する。
【0302】
図29のレイアウトは、
図28のレイアウトの変形例である。
【0303】
図29のレイアウトが上記
図28のレイアウトと主として相違しているのは、パッドPD7eの配置位置であるので、ここでは、パッドPD7e以外についての説明は省略する。
【0304】
上記
図28の場合は、X方向に4つ並んだコイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dのうち、中央側の2つのコイルであるコイルCL6cとコイルCL5dとの間の位置から、Y方向にずれた位置にパッドPD7eを配置していた。このため、上記
図28のレイアウトの場合、Y方向へのずれを無視すると、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dの並びのほぼ中央にパッドPD7eが位置することになる(実際にはパッドPD7eはコイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dの並びからY方向にずれている)。
【0305】
一方、
図29のレイアウトの場合は、X方向に4つ並んだコイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dからY方向にずれた位置にパッドPD7eが配置されている点は、上記
図28のレイアウトと共通であるが、パッドPD7eのX方向の位置が上記
図28のレイアウトと相違している。すなわち、Y方向へのずれを無視すると、上記
図28のレイアウトの場合、パッドPD7eは、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dの並びのほぼ中央に位置していたが、
図29の場合は、パッドPD7eは、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dの並びの中央からずれている。例えば、パッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6dのいずれかの位置からY方向にずれた位置、コイルCL5cとコイルCL6cとの間の位置からY方向にずれた位置、あるいは、コイルCL5dとコイルCL6dとの間の位置からY方向にずれた位置などに、パッドPD7eを配置することができる。
【0306】
図29の場合、コイルCL5cとコイルCL6cとの間に電気的に接続するパッドと、コイルCL5dとコイルCL6dとの間に電気的に接続するパッドとを、共通のパッドPD7eとしたことで、上記
図22の場合のようにパッドPD7cとパッドPD7dとを別々に設けた場合と比べて、パッドの数を1つ減らすことができる。これにより、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD7e,PD5d,PD6dをレイアウトするのに要する面積を縮小することができる。
【0307】
また、
図29のレイアウトでは、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eをレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を、小さくすることができ、例えば、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dのそれぞれのX方向の寸法の合計と同程度にすることができる。このため、半導体チップCP1全体の設計をするうえで、コイルCL5c,CL6c,CL5d,CL6dおよびパッドPD5c,PD6c,PD5d,PD6d,PD7eをレイアウトするのに要する領域のX方向の寸法を小さくしたい場合に、有利である。
【0308】
次に、
図30のレイアウトについて、説明する。
【0309】
これまでに説明したコイルCL5,CL5c,CL5d,CL6,CL6c,CL6d,CL7,CL8は、八角形に周回するコイル配線により形成した場合を図示していたが、他の形態として、これらのコイルCL5,CL5c,CL5d,CL6,CL6c,CL6d,CL7,CL8(を構成するコイル配線)の形状は、八角形以外とすることもできる。その一例を
図30に、更に他の一例を
図31に示している。
【0310】
図30は、上記
図14(第1変形例)において、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の形状(周回形状)を八角形以外とした場合を模式的に示したものである。
図30にも示されるように、コイルCL5(コイル配線CW5)とコイルCL6(コイル配線CW6)とは、対称性を保つことができるのであれば、円形、四角形、八角形、あるいはそれ以外の形状などを用いることができる。
【0311】
図31は、上記
図5において、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の形状を八角形以外とした場合を模式的に示したものである。
図31にも示されるように、コイルCL5(コイル配線CW5)とコイルCL6(コイル配線CW6)とは、対称性を保つことができるのであれば、円形、四角形、八角形、あるいはそれ以外の形状などを用いることができる。
【0312】
なお、直列に接続されたコイルCL5とコイルCL6とは、自己インダクタンスが互いに同じであることが好ましい。このため、平面視において、コイルCL5(コイル配線CW5)とコイルCL6(コイル配線CW6)とは、点対称(コイルCL5とコイルCL6との間の中央の点に対して点対称)のパターン(形状)であることが好ましい。また、直列に接続されたコイルCL7とコイルCL8とは、自己インダクタンスが互いに同じであることが好ましい。このため、平面視において、コイルCL7(コイル配線CW7)とコイルCL8(コイル配線CW8)とは、点対称(コイルCL7とコイルCL8との間の中央の点に対して点対称)のパターン(形状)であることが好ましい。また、コイルCL5の直下の上記コイルCL7(コイル配線CW7)は、コイルCL5(コイル配線CW5)と同パターンであることが好ましく、コイルCL6の直下の上記コイルCL8(コイル配線CW8)は、コイルCL6(コイル配線CW6)と同パターンであることが好ましい。また、パッドPD7は、直列に接続されたコイルCL5とコイルCL6との間の中央に電気的に接続されていることが、好ましい。
【0313】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、上述のような電磁誘導を用いた信号伝達用のコイル(CL5,CL6,CL7,CL8に相当するコイル)を形成した半導体チップにおける内部配線について工夫したものである。
【0314】
上記実施の形態1で説明したように、上記
図5〜
図9のコイルCL5,CL6とコイルCL7,CL8とがそれぞれ磁気的に結合し、一次側のコイルCL7,CL8に電流を流すと、その電流の電化に応じて二次側のコイルCL5,CL6に誘導起電力が発生して誘導電流が流れることを利用して、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を介して信号を伝達することができる。つまり、電磁誘導を利用することで、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を介して信号を伝達することができる。このため、コイルが磁束(磁界)を発生させることを考慮して、半導体チップの内部配線を設計することが好ましい。
【0315】
コイルCL5,CL6,CL7,CL8を内蔵する半導体チップについて、半導体チップCP1の内部配線(上記配線M1〜M5に相当する配線)のレイアウトを設計する場合、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる位置には内部配線を配置しないことが、特性上は望ましい。これは、一次側のコイルCL7,CL8に電流を流したり、二次側のコイルCL5,CL6に誘導電流が流れたりすると、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を貫くように磁束が発生するが、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる位置に内部配線があると、その内部配線はこの磁束の影響を受けてしまうためである。具体的には、磁束の影響で内部配線に渦電流が発生してしまい、この渦電流が、内部配線に正常に電流が流れることを阻害し、配線抵抗の増大などを招いてしまう。
【0316】
このため、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる位置には内部配線を配置しないように半導体チップの設計を行おうとすると、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる領域は、内部配線の設置禁止領域となってしまうため、内部配線のレイアウトが行いにくくなり、また、半導体チップの面積の増大を招いてしまう。このため、設計上、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる位置に内部配線を配置したい場合があり、そのような場合に、コイルCL5,CL6,CL7,CL8による磁束の影響が内部配線でできるだけ生じないようにする技術について検討を行った。
【0317】
その結果、半導体チップにおいて、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる位置に内部配線を配置する場合には、その内部配線にスリットを設けておくことが有効であることが分かった。スリットを設けることにより、全体の配線幅は変わらずに、スリットに挟まれた部分の配線幅が小さくなることで、コイルCL5,CL6,CL7,CL8により生じた磁束による渦電流が発生しにくくなる。これは、配線を磁束が貫くとその配線に渦電流が発生するが、渦電流が発生しやすいのは配線の幅が大きい(広い)場合であり、配線の幅を小さく(狭く)するほど渦電流は発生しにくくなるためである。
【0318】
以下、図面を参照して具体的に説明する。
【0319】
図32〜
図34は、本実施の形態3の半導体チップ(半導体装置)の要部平面図であり、
図35はその要部断面図であり、
図36は、その要部斜視図である。このうち、
図32は、上記実施の形態1の上記
図5に対応するものであり、
図33は、上記実施の形態1の上記
図6に対応するものである(但し
図32および
図33ではハッチングは付していない)。
【0320】
なお、
図32と
図33と
図34とは、半導体チップにおける同じ平面領域が示されているが、層が異なっており、
図33は
図32よりも下層が示され、
図34は
図33よりも下層が示されている。具体的には、
図32には、半導体チップに形成された上記トランスTR1の二次側のコイル(コイルCL5,CL6)が示され、
図33には、半導体チップに形成された上記トランスTR1の一次側のコイル(コイルCL7,CL8)が示され、
図34には、半導体チップCP1に形成された上記トランスTR1用のコイルに平面視で重なるように延在する配線WR1が示されている。また、
図32〜
図34のA1−A1線での断面図が
図35に対応している。また、
図36には、コイル配線CW6と配線WR1との交差領域が示されている。
【0321】
また、
図32および
図33では、配線WR1の位置が分かりやすいように、配線WR1の外形(外周)の位置を二点鎖線で示してある。また、
図34では、コイルの位置が分かりやすいように、
図32のコイルCL5,CL6の外形(外周)の位置を点線で示してある。平面視において、コイルCL5,CL6の外形(外周)の位置とコイルCL7,CL8の外形(外周)の位置とは実質的に一致しているため、
図34の点線は、
図33のコイルCL7,CL8の外形(外周)の位置とみなすこともできる。また、
図33において、上記引出配線HW2,HW3については図示を省略してある。
【0322】
図32〜
図36に示されるコイルCL5(コイル配線CW5)、コイルCL6(コイル配線CW6)、コイルCL7(コイル配線CW7)、コイルCL8(コイル配線CW8)、パッドPD5,PD6,PD7、引出配線HW1および接続配線HW4については、上記実施の形態1で説明したので、ここではその繰り返しの説明は省略する。つまり、
図32〜
図36の構造が上記
図5〜
図10の構造と相違しているのは、配線WR1が形成されていることであるため、以下では、主としての配線WR1について説明する。
【0323】
図32〜
図36に示されるように、配線WR1が、コイルCL6と平面視で重なる位置に形成されている。この配線WR1は、コイルCL5,CL6とは異なる層で、かつコイルCL7,CL8とも異なる層に、形成されている。すなわち、コイルCL5,CL6とコイルCL7,CL8のどちらとも異なる層に配線WR1が延在しており、この配線WR1の一部が、コイルCL6と平面視で重なっている。
【0324】
配線WR1は、コイルCL5,CL6とコイルCL7,CL8のどちらとも異なる層に形成されているため、配線WR1が邪魔になることなく、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を形成することができる。また、上記
図3または上記
図4の構造を適用する場合、配線WR1は、コイルCL1aおよびコイルCL2aとは異なる層に形成され、かつ、上記配線M1〜M5のいずれかにより形成することができる。
【0325】
なお、一次コイルは二次コイルの直下に形成されているため、ある配線が二次コイルと平面視で重なっている場合は、その配線は一次コイルとも平面視で重なっている。具体的には、コイルCL7は、コイルCL5の直下に形成されているため、配線WR1がコイルCL5と平面視で重なっている場合は、その配線WR1はコイルCL7とも平面視で重なっていることになる。また、コイルCL8は、コイルCL6の直下に形成されているため、配線WR1がコイルCL6と平面視で重なっている場合は、その配線WR1はコイルCL8とも平面視で重なっていることになる。このため、コイルCL6と平面視で重なる配線WR1は、必然的に、コイルCL8と平面視で重なっていることになる。
【0326】
なお、コイルと平面視で重なる位置または領域とは、そのコイルを構成するコイル配線が周回している領域に平面視で重なる位置または領域だけでなく、そのコイルの渦の内側の領域と平面視で重なる位置または領域も含むものとする。このため、例えば、コイルCL6に重なる位置または領域とは、コイル配線CW6が周回している領域に平面視で重なる位置または領域だけでなく、そのコイルCL6の渦の内側の領域(すなわちパッドPD6が配置されている領域)と平面視で重なる位置または領域も含んでいる。
【0327】
図32〜
図36に示されるように、配線WR1は、コイルCL6に平面視で重なるように延在しているが、コイルCL6と平面視で重なる位置にスリット(開口部)SLを有している。配線WR1において、スリットSLは、少なくとも1つ、好ましくは複数形成されており、各スリットSLは、配線WR1の延在方向に沿って形成されている。すなわち、配線WR1におけるスリットSLの延在方向は、その配線WR1の延在方向と一致している。スリットSLは、配線WR1の延在方向に沿った方向の寸法が、配線WR1の配線幅方向に沿った方向の寸法よりも大きい。スリットSLは、配線WR1の上面から下面まで貫通している開口部である。
【0328】
配線WR1は、全体の配線幅(幅)はW3であるが、スリットSLを形成したことで、スリットSLで区分け(分割)された配線部WR1aの幅W4は、配線幅(幅)W3よりも小さくなる(すなわちW4<W3)。すなわち、コイルCL6と平面視で重なる領域では、配線WR1の延在方向に幅W4で延在する配線部WR1aが、スリットSLを間に介して複数並んだ状態になっている。この配線部WR1a同士は、配線WR1におけるスリットSLが形成されていない箇所で連結されるため、互いに電気的に接続されている。
【0329】
本実施の形態とは異なり、もしも配線WR1にスリットSLが形成されていない場合、配線WR1がコイルCL6に平面視で重なっていることから、コイルCL6,CL8によって生じる磁束の影響で、配線WR1に渦電流が発生しやすくなる。渦電流が配線WR1に発生すると、配線WR1において、配線WR1の延在方向に正常に電流が流れることが阻害される虞がある。
【0330】
それに対して、本実施の形態3では、コイルCL6に平面視で重なるように延在している配線WR1は、コイルCL6と平面視で重なる位置にスリットSLを有している。このため、コイルCL6と平面視で重なる位置において、配線WR1は、全体の配線幅W1よりも小さな幅W2を有する配線部WR1aにスリットSLで区分けされている。個々の渦電流はスリットSLを挟んだ複数の配線部WR1aに跨っては発生しないため、もしも渦電流が生じるのであれば、単独の配線部WR1a内に発生しなければならない。しかしながら、配線WR1にスリットSLを設けたことで、配線部WR1aの幅が小さく(狭く)なっているため、配線部WR1aを貫く磁束が発生しても、配線部WR1aに渦電流は発生しにくくなる。すなわち、コイルCL6に平面視で重なるように延在する配線WR1において、コイルCL6と平面視で重なる領域では、配線WR1にスリットSLを設けることで、配線WR1をスリットSLで複数の配線部WR1aに区分け(分割)し、幅が小さくなった配線部WR1aで渦電流が発生しにくくなるようにしている。
【0331】
なお、ここでは、配線WR1がコイルCL6と平面視で重なる場合について図示および説明したが、配線WR1がコイルCL5と平面視で重なる場合や、コイルCL5とコイルCL6の両方と平面視で重なる場合も同様である。
【0332】
すなわち、配線WR1がコイルCL5に平面視で重なるように延在している場合は、配線WR1は、コイルCL5と平面視で重なる位置(領域)にスリットSLを有したものとされる。また、配線WR1がコイルCL6に平面視で重なるように延在している場合は、配線WR1は、コイルCL6と平面視で重なる位置(領域)にスリットSLを有したものとされる。また、配線WR1がコイルCL5とコイルCL6の両方に平面視で重なるように延在している場合(後述の
図37の配線WR1に対応)は、配線WR1は、コイルCL5に平面視で重なる位置(領域)とコイルCL6に平面視で重なる位置(領域)とにスリットSLを有したものとされる。つまり、半導体チップにおいて、コイルCL5,CL6の一方または両方に平面視で重なるように延在する配線WR1を設ける場合、この配線WR1において、コイルCL5,CL6との重なり領域にスリットSLを設けておくのである。なお、コイルCL5,CL6の直下にコイルCL7,CL8が配置されているため、配線WR1において、コイルCL5,CL6に平面視で重なっている領域(位置)と、コイルCL7,CL8に平面視で重なっている領域(位置)とは一致している。
【0333】
従って、本実施の形態3では、半導体チップにおいて、コイルCL5,CL6,CL7,CL8のいずれかに平面視で重なるように延在する内部配線(但しコイルCL5,CL6,CL7,CL8とは異なる層の内部配線)について、コイルCL5,CL6,CL7,CL8のいずれかに平面視で重なっている領域(位置)には、スリットSLを設けるのである。
【0334】
このため、本実施の形態3では、配線WR1がコイルCL5,CL6の一方または両方に平面視で重なるように延在し、コイルCL5,CL6,CL7,CL8によって生じる磁束がこの配線WR1に影響したとしても、配線WR1において、コイルCL5,CL6と平面視で重なる位置にスリットSLを設けたことで、配線WR1に渦電流が発生するのを抑制または防止できる。これにより、コイルCL5,CL6,CL7,CL8による磁束に起因した渦電流が配線WR1に正常に電流が流れることを阻害するのを抑制または防止することができる。このため、配線抵抗の増大などを抑制または防止することができる。従って、半導体チップの性能を向上させることができる。
【0335】
また、半導体チップにおいて、磁気結合したコイルCL5,コイルCL7は設けるが、コイルCL6,CL8は設けない場合は、そのコイルCL5,CL7に平面視で重なる配線(但しコイルCL5,CL7とは異なる層の配線)において、コイルCL5,CL7に平面視で重なっている領域(位置)にスリットSLを形成すればよい。
【0336】
また、本実施の形態3とは異なり、コイルと平面視で重なる領域において、配線WR1にスリットSLを形成するのではなく、配線WR1の全体の幅(配線幅W3に相当する幅)を小さくすることも考えられるが、この場合、全体の幅を小さくしたことに伴う配線抵抗(インピーダンス)の増大につながってしまう。
【0337】
それに対して、本実施の形態3では、コイルと平面視で重なる領域において、配線WR1の全体の幅(配線幅W3に相当する幅)を小さくするのではなく、配線WR1にスリットSLを設けることにより、スリットSLで区分けされた配線部WR1aの幅W4を配線WR1全体の配線幅W3よりも小さくする(すなわちW4<W3)。スリットSLで区分けされた配線部WR1aの幅W4が小さいことで、その配線部WR1aを磁束が貫いたとしても、渦電流は発生しにくくなる。また、スリットSLで区分けされた配線部WR1aの幅W4は小さくとも、その配線部WR1aが複数あり、スリットSLが形成されていない領域で複数の配線部WR1a同士が繋がっているため、配線部WR1aの幅W4を小さくしても、配線WR1の配線抵抗(インピーダンス)の増大を抑制することができる。
【0338】
また、本実施の形態3では、半導体チップにおいて、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる領域にも、内部配線を配置できるため、内部配線のレイアウト設計が行いやすくなる。また、半導体チップの小型化(小面積化)を図ることができる。
【0339】
また、本実施の形態3では、コイルCL5,CL6に平面視で重なるように延在する配線WR1において、コイルCL5,CL6に平面視で重なっている領域(位置)には、スリットSLを形成しているが、これは、コイルCL5,CL6,CL7,CL8により生じた磁束(磁界)による影響を最も受けやすいのは、コイルCL5,CL6に平面視で重なる領域だからである。しかしながら、コイルCL5,CL6,CL7,CL8に平面視で重なっている領域から離れていても、コイルCL5,CL6,CL7,CL8により生じた磁束(磁界)による影響を受ける領域までは、配線WR1においてスリットSLを延在させておくことが好ましい。これにより、コイルCL5,CL6,CL7,CL8により生じた磁束(磁界)により配線WR1に渦電流が生じるのを、より的確に抑制または防止できる。一方、配線WR1において、コイルCL5,CL6,CL7,CL8により生じた磁束(磁界)による影響を受けない領域には、スリットSLを形成しないことが好ましく、これにより配線WR1の配線抵抗(インピーダンス)を低減することができる。このため、配線WR1において、コイルCL5,CL6,CL7,CL8に平面視で重なっている領域にスリットSLが延在し、そのスリットSLは、コイルCL5,CL6,CL7,CL8に平面視で重なっている領域から若干離れた領域で終端していることが好ましい。つまり、配線WR1において、スリットSLの端部(スリットが延在する方向の端部)は、コイルCL5,CL6,CL7,CL8に平面視で重なっていない領域に位置していることが好ましい。
【0340】
また、配線WR1は、一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)のどちらとも異なる層に形成する。このとき、配線WR1を一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)の間の層に形成する場合と、配線WR1を一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)の両方よりも下層に形成する場合と、配線WR1を一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)の両方よりも上層に形成する場合とがあり得る。これら3つの場合のいずれも可能であるが、このうち、配線WR1を一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)の両方よりも下層に形成する場合が最も好ましい。
【0341】
配線WR1を一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)の両方よりも上層に形成する場合は、二次コイル(コイルCL5,CL6)を配線WR1よりも下層に形成することになり、二次コイル(コイルCL5,CL6)をパッド(PD5、PD6,PD7)に接続しにくくなる。また、配線WR1を一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)との間の層に形成する場合は、一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)との間の耐圧よりも、二次コイル(コイルCL5,CL6)と配線WR1との間の耐圧が小さくなるため、耐圧低下の懸念がある。それに対して、配線WR1を、一次コイル(コイルCL7,CL8)と二次コイル(コイルCL5,CL6)の両方よりも下層に形成する場合は、二次コイル(コイルCL5,CL6)をパッド(PD5、PD6,PD7)に接続しやすく、配線WR1もレイアウトしやすく、また、耐圧向上の点でも有利である。
【0342】
図37は、半導体チップCP1における内部配線の他の例を示す要部平面図であり、上記
図34に対応するものである。
図37には、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を形成した領域の近傍に配置された内部配線である配線WR1および配線WR2が示されており、コイルの位置が分かりやすいように、上記
図32のコイルCL5,CL6の外形(外周)の位置を点線で示してある。
【0343】
配線WR1,WR2は、コイルCL5,CL6とは異なる層で、かつコイルCL7,CL8とも異なる層に形成されているが、配線WR1はコイルCL5,CL6と平面視で重なるように延在しており、一方、配線WR2は、平面視でコイルCL5,CL6のどちらにも重なっていない。
【0344】
本実施の形態3では、半導体チップにおいて、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる領域は、内部配線の設置禁止領域とはしていない。このため、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を含む半導体チップにおいては、
図37に示されるように、コイルCL5,CL6,CL7,CL8のいずれかと平面視で重なるように延在する配線WR1と、コイルCL5,CL6,CL7,CL8のいずれとも平面視で重ならない配線WR2とがある。このうち、コイルCL5,CL6,CL7,CL8のいずれかと平面視で重なるように延在する配線WR1については、そのコイルと平面視で重なる位置(領域)にスリットSLを設ける。一方、コイルCL5,CL6,CL7,CL8のいずれとも平面視で重ならない配線WR2については、そのようなスリットSLは形成しない。
【0345】
これにより、コイルに重なっていることでそのコイルにより生じた磁束(磁界)の影響を受けやすい配線WR1については、スリットSLを設けたことで渦電流の発生を防止でき、一方、コイルに重ならないためコイルにより生じた磁束(磁界)の影響を受けにくい配線WR2については、スリットSLを設けないことで、配線抵抗を低減することができる。また、コイルCL5,CL6,CL7,CL8と平面視で重なる領域を、内部配線の設置禁止領域にしないことで、半導体チップの小型化(小面積化)を図ることができる。従って、半導体チップの性能向上と半導体チップの小型化(小面積化)を両立させることができる。
【0346】
本実施の形態3の思想は、上記引出配線HW2,HW3に適用することもでき、これについて
図38を参照して説明する。
【0347】
図38は、半導体チップの要部平面図であり、引出配線HW2,HW3が示されているが、コイルの位置が分かりやすいように、
図34や
図37と同様にコイルCL5,CL6の外形(外周)の位置を点線で示してある。
【0348】
引出配線HW2は、コイルCL7の内側(渦巻きの内側)の端部をコイルCL7の外周よりも外側に引き出すための配線である。このため、引出配線HW2は、コイルCL7と平面視で重なるように延在し、従って、コイルCL5と平面視で重なるように延在している。また、引出配線HW3は、コイルCL8の内側(渦巻きの内側)の端部をコイルCL8の外周よりも外側に引き出すための配線である。このため、引出配線HW3は、コイルCL8と平面視で重なるように延在し、従って、コイルCL6と平面視で重なるように延在している。このため、引出配線HW2は、コイルCL5,CL7により生じた磁束(磁界)の影響を受けやすく、引出配線HW3は、コイルCL6,CL8により生じた磁束(磁界)の影響を受けやすい。
【0349】
そこで、本実施の形態3では、
図38に示されるように、引出配線HW2,HW3にスリットSLを設けている。すなわち、引出配線HW2において、コイルCL5と平面視で重なる位置(従ってコイルCL8と平面視で重なる位置)にスリットSLを設け、引出配線HW3において、コイルCL6と平面視で重なる位置(従ってコイルCL8と平面視で重なる位置)にスリットSLを設けている。これにより、コイルCL5,CL6,CL7,CL8によって生じる磁束が引出配線HW2,HW3に影響したとしても、引出配線HW2,HW3に渦電流が発生するのを抑制または防止できる。各引出配線HW2,HW3において、スリットSLは、少なくとも1つ、好ましくは複数形成することができ、各スリットSLは各引出配線HW2,HW3の延在方向に沿って形成することができる。
【0351】
図39〜
図41は、
図12および
図13の第1検討例に本実施の形態3の技術思想を適用した場合の平面図である。このうち、
図39は、上記
図12と同様のパターンに、配線WR1の位置を二点鎖線で示したものに対応し、
図40は、上記
図13と同様のパターンに、配線WR1の位置を二点鎖線で示したものに対応している。また、
図41は、配線WR1が示されているが、コイルの位置が分かりやすいように、上記
図12や
図39のコイルCL105,CL106の外形(外周)の位置を、
図41では点線で示してある。
【0352】
図39〜
図41に示されるコイルCL105,CL106,CL107,CL108、パッドPD105,PD106,PD107および接続配線HW104については、上記
図12および
図13を参照して説明したので、ここではその繰り返しの説明は省略する。つまり、
図39〜
図41の構造が上記
図12および
図13の構造と相違しているのは、配線WR1が形成されていることである。
【0353】
図12および
図13の第1検討例の場合も、本実施の形態3を適用し、
図39〜
図41に示されるように、コイルCL105,CL106の一方または両方と平面視で重なるように延在する配線WR1を設けることで、内部配線のレイアウト設計が行いやすくなり、また、半導体チップの小型化(小面積化)を図ることができる。そして、コイルCL105,CL106の一方または両方と平面視で重なるように延在する配線WR1において、そのコイルCL105,CL106と平面視で重なる位置にスリットSLを設けておくことで、コイルCL105,CL106,CL107,CL108によって生じる磁束が配線WR1に影響したとしても、配線WR1に渦電流が発生するのを抑制または防止することができる。これにより、渦電流に起因した不具合を防止でき、半導体装置の性能向上を図ることができる。
【0354】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。