(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
【0016】
(鉱山の採掘現場)
図1は、本実施形態に係る運搬車両が稼働する鉱山の採掘現場の一例を示す模式図である。運搬車両は、車両2及び車両2に設けられたベッセル3を有するダンプトラック1である。ダンプトラック1は、ベッセル3に積載された積荷を運搬する。積荷は、採掘された採石、土砂、及び鉱石の少なくとも一つを含む。
【0017】
鉱山の採掘現場において、積込場LPA、排土場DPA、及び積込場LPA及び排土場DPAの少なくとも一方に通じる走行路HLが設けられる。ダンプトラック1は、積込場LPA、排土場DPA、及び走行路HLの少なくとも一部を走行可能である。ダンプトラック1は、走行路HLを走行して、積込場LPAと排土場DPAとの間を移動可能である。なお、鉱山の採掘現場における走行路HLは、未舗装路であることが多い。
【0018】
積込場LPAにおいて、ベッセル3に積荷が積み込まれる。積込機械LMにより、ベッセル3に積荷が積み込まれる。積込機械LMとして油圧ショベルやホイールローダが用いられる。積荷が積み込まれたダンプトラック1は、積込場LPAから排土場DPAまで走行路HLを走行する。排土場DPAにおいて、ベッセル3から積荷が排出される。積荷が排出されたダンプトラック1は、排土場DPAから積込場LPAまで走行路HLを走行する。なお、ダンプトラック1は、排土場DPAから所定の待機場まで走行してもよい。
【0019】
(ダンプトラック)
次に、ダンプトラック1について説明する。
図2は、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す斜視図である。
【0020】
ダンプトラック1は、キャブ(運転室)8に搭乗した運転者(オペレータ)WMに操作される有人ダンプトラックである。ダンプトラック1を、オフハイウェイトラック、と称してもよい。ダンプトラック1は、リジッド式のダンプトラック1である。
【0021】
ダンプトラック1は、前部2F及び後部2Rを有する車両2と、車両2に設けられるベッセル3とを備える。車両2は、走行装置4と、少なくとも一部が走行装置4の上方に配置される車体5とを有する。ベッセル3は、車体5に支持される。
【0022】
走行装置4は、車輪6と、車輪6を回転可能に支持する車軸7とを備える。車輪6は、車軸7に支持されるホイールと、ホイールに支持されるタイヤとを含む。車輪6は、前輪6Fと後輪6Rとを含む。前輪6Fは、左右それぞれ1つのタイヤを備える。後輪6Rは、左右それぞれ2つのタイヤを備える。したがって、走行装置4は、後輪6Rの全体で4つのタイヤを備える。車軸7は、前輪6Fを回転可能に支持する車軸7Fと、後輪6Rを回転可能に支持する車軸7Rとを含む。
【0023】
車体5は、ロアデッキ5Aと、アッパデッキ5Bと、ロアデッキ5Aの下方に配置されたラダー5Cと、ロアデッキ5Aとアッパデッキ5Bとを結ぶように配置されたラダー5Dとを有する。ロアデッキ5Aは、車体5の前部の下部に配置される。アッパデッキ5Bは、車体5の前部において、ロアデッキ5Aの上方に配置される。
【0024】
車両2は、キャブ8を有する。キャブ8は、アッパデッキ5B上に配置される。オペレータWMは、キャブ8に搭乗して、ダンプトラック1を操作する。オペレータWMは、ラダー5Cを使って、キャブ8に対して乗降可能である。オペレータWMは、ラダー5Dを使って、ロアデッキ5Aとアッパデッキ5Bとを移動可能である。
【0025】
ベッセル3は、積荷が積載される部材である。ベッセル3は、昇降装置により、車両2に対して上下に昇降可能である。昇降装置は、ベッセル3と車体5との間に配置された油圧シリンダ(ホイストシリンダ)のようなアクチュエータを含む。昇降装置によりベッセル3が上昇することによって、ベッセル3の積荷が排出される。
【0026】
(キャブ)
次に、キャブ8について説明する。
図3は、本実施形態に係るキャブ8の一例を示す図である。キャブ8には、キャブ8に搭乗したオペレータWMにより操作される複数の操作装置が配置されている。
図3に示すように、キャブ8には、運転席16と、トレーナー席19と、出力操作部24と、ブレーキ操作部25と、走行方向操作部15と、速度段操作部18と、リターダ操作部17と、フラットパネルディスプレイのような表示装置20と、警報を発生する警報装置21とが設けられている。オペレータWMにより操作される操作装置は、出力操作部24、ブレーキ操作部25、走行方向操作部15、速度段操作部18、及びリターダ操作部17の少なくとも一つを含む。
【0027】
(衝突被害軽減システム)
次に、本実施形態に係る衝突被害軽減システム300Sについて説明する。本実施形態において、ダンプトラック1は、ダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行可能な衝突被害軽減システム300Sを備えている。
【0028】
図4及び
図5のそれぞれは、本実施形態に係るダンプトラック1の一例を示す模式図である。ダンプトラック1は、ダンプトラック1(車両2)の走行状態を検出する走行状態検出装置10と、ベッセル3の積荷の積載状態を検出する積載状態検出装置11と、ダンプトラック1(車両2)の前方の物体を検出する物体検出装置12と、ダンプトラック1を制御する制御装置30とを備えている。衝突被害軽減システム300Sは、物体検出装置12を含む。走行状態検出装置10の検出結果、積載状態検出装置11の検出結果、及び物体検出装置12の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、それらの検出結果に基づいて、ダンプトラック1が物体に衝突することによる被害を軽減するための処理を実行する。
【0029】
ダンプトラック1の走行状態は、ダンプトラック1の走行速度、ダンプトラック1の走行方向(前部2F又は前輪6Fの向き)、及びダンプトラック1の進行方向(前進又は後進)の少なくとも一つを含む。
【0030】
ベッセル3の積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の有無、及びベッセル3に積載された積荷の重量の少なくとも一つを含む。
【0031】
ダンプトラック1は、動力を発生する動力発生装置22と、少なくとも一部が走行装置4に接続されるサスペンションシリンダ9と、走行装置4を停止させるためのブレーキ装置13と、変速装置80と、を備えている。なお、変速装置80は、後述する電気駆動方式によるダンプトラック1の場合はなくてもよい。
【0032】
走行装置4は、動力発生装置22が発生した動力により駆動する。動力発生装置22は、電気駆動方式により走行装置4を駆動する。動力発生装置22は、ディーゼルエンジンのような内燃機関と、内燃機関の動力により作動する発電機と、発電機が発生した電力により作動する電動機とを有する。電動機で発生した動力が走行装置4の車輪6に伝達される。これにより、走行装置4が駆動される。車両2に設けられた動力発生装置22の動力によって、ダンプトラック1は自走する。
【0033】
なお、動力発生装置22は、機械駆動方式により走行装置4を駆動してもよい。例えば、内燃機関で発生した動力が、動力伝達装置を介して走行装置4の車輪6に伝達されてもよい。本実施形態においては、機械駆動方式によるダンプトラック1を例にして説明する。
【0034】
走行装置4は、ダンプトラック1の走行方向(前部2Fの向き)を変えるための操舵装置14を備えている。操舵装置14は、前輪6Fの向きを変えることによって、ダンプトラック1の走行方向を変える。
【0035】
動力発生装置22は、キャブ8に設けられた出力操作部24により操作される。出力操作部24は、アクセルペダルのようなペダル操作部を含む。オペレータWMは、出力操作部24を操作して、動力発生装置22の出力を調整可能である。動力発生装置22の出力が調整されることにより、ダンプトラック1の走行速度が調整される。
【0036】
ブレーキ装置13は、キャブ8に設けられたブレーキ操作部25により操作される。ブレーキ操作部25は、ブレーキペダルのようなペダル操作部を含む。オペレータWMは、ブレーキ操作部25を操作して、ブレーキ装置13を作動可能である。ブレーキ装置13が作動することにより、ダンプトラック1の走行速度が調整される。
【0037】
操舵装置14は、キャブ8に設けられた走行方向操作部15により操作される。走行方向操作部15は、ハンドルのようなハンドル操作部を含む。オペレータWMは、走行方向操作部15を操作して、操舵装置14を作動可能である。操舵装置14が作動することにより、ダンプトラック1の走行方向が調整される。
【0038】
変速装置80は、例えばトランスミッションを含み、キャブ8に設けられた速度段操作部18により操作される。速度段操作部18は、シフトレバーのようなレバー操作部を含む。オペレータWMは、速度段操作部18を操作して、走行装置4の進行方向を変更可能である。速度段操作部18が操作されることにより、変速装置80は、ダンプトラック1を前進又は後進するために車輪6の回転方向を切り替える。
【0039】
サスペンションシリンダ9は、車輪6と車体5との間に配置される。サスペンションシリンダ9は、前輪6Fと車体5との間に配置されるサスペンションシリンダ9Fと、後輪6Rと車体5との間に配置されるサスペンションシリンダ9Rとを含む。つまり、サスペンションシリンダ9は、前後左右に配置された車輪6のそれぞれに設けられている。車体5及び積荷の重量に基づく負荷が、サスペンションシリンダ9を介して車輪6に作用する。
【0040】
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行速度を検出する走行速度検出装置10Aと、ダンプトラック1の走行方向を検出する走行方向検出装置10Bと、ダンプトラック1が前進しているか後進しているかを検出する進行方向検出装置10Cとを含む。
【0041】
走行速度検出装置10Aは、ダンプトラック1(車両2)の走行速度を検出する。走行速度検出装置10Aは、車輪6(車軸7)の回転速度を検出する回転速度センサを含む。車輪6の回転速度とダンプトラック1の走行速度とは相関する。回転速度センサの検出値(回転速度値)が、ダンプトラック1の走行速度値に変換される。走行速度検出装置10Aは、回転速度センサの検出値に基づいて、ダンプトラック1の走行速度を検出する。
【0042】
走行方向検出装置10Bは、ダンプトラック1(車両2)の走行方向を検出する。ダンプトラック1の走行方向は、ダンプトラック1が前進するときの車両2の前部(前面)2Fの向きを含む。ダンプトラック1の走行方向は、ダンプトラック1が前進するときの前輪6Fの向きを含む。走行方向検出装置10Bは、操舵装置14の操舵角を検出するステアリングセンサを含む。例えば、ステアリングセンサとしてロータリーエンコーダを用いることができる。走行方向検出装置10Bは、操舵装置14の操作量を検出して、操舵角を検出する。走行方向検出装置10Bは、ステアリングセンサを使って、ダンプトラック1の走行方向を検出する。なお、走行方向検出装置10Bは、走行方向操作部15の回転量あるいは操舵角を検出する回転量センサを含んでもよい。つまり、走行方向操作部15の操舵角とダンプトラック1の操舵装置14の操舵角とは相関する。
【0043】
進行方向検出装置10Cは、ダンプトラック1(車両2)の進行方向を検出する。進行方向検出装置10Cは、ダンプトラック1が前進するか後進するかを検出する。ダンプトラック1の前進において、車両2の前部2Fが進行方向の前方側に位置する。ダンプトラック1の後進において、車両2の後部2Rが進行方向の前方側に位置する。進行方向検出装置10Cは、車輪6(車軸7)の回転方向を検出する回転方向センサを含む。進行方向検出装置10Cは、回転方向センサの検出値に基づいて、ダンプトラック1が前進しているか後進しているかを検出する。なお、進行方向検出装置10Cは、速度段操作部18の操作状態を検出するセンサを含んでもよい。
【0044】
積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の有無、及びベッセル3に積載された積荷の重量の少なくとも一つを検出する。積載状態検出装置11は、ベッセル3の重量を検出する重量センサを含む。空荷状態のベッセル3の重量は、既知情報である。積載状態検出装置11は、重量センサの検出値と既知情報である空荷状態のベッセル3の重量値とに基づいて、ベッセル3に積み込まれた積荷の重量を求めることができる。すなわち、積載状態検出装置11は、検出値からベッセル3の重量値を減算することによって、ベッセル3に積載された積荷の重量を求めることができる。
【0045】
本実施形態において、積載状態検出装置11の重量センサは、サスペンションシリンダ9の内部空間の作動油の圧力を検出する圧力センサを含む。圧力センサは、作動油の圧力を検出して、サスペンションシリンダ9に作用する負荷を検出する。サスペンションシリンダ9は、シリンダ部と、シリンダ部に対して相対移動可能なピストン部とを有する。シリンダ部とピストン部との間の内部空間に作動油が封入される。ベッセル3に積荷が積み込まれると、内部空間の作動油の圧力が高くなるようにシリンダ部とピストン部とが相対移動する。ベッセル3から積荷が排出されると、内部空間の作動油の圧力が低くなるようにシリンダ部とピストン部とが相対移動する。圧力センサは、その作動油の圧力を検出する。作動油の圧力と積荷の重量とは相関する。圧力センサの検出値(圧力値)が、積荷の重量値に変換される。積載状態検出装置11は、圧力センサ(重量センサ)の検出値に基づいて、積荷の重量を検出する。
【0046】
本実施形態において、圧力センサは、複数のサスペンションシリンダ9のそれぞれに配置される。ダンプトラック1は、車輪6を4つ有する。それら4つの車輪6の各々に設けられたサスペンションシリンダ9のそれぞれに圧力センサが配置される。積載状態検出装置11は、4つの圧力センサの検出値の合計値又は平均値に基づいて、積荷の重量を求めてもよい。積載状態検出装置11は、4つの圧力センサのうち特定の圧力センサ(例えばサスペンションシリンダ9Rに配置された圧力センサ)の検出値に基づいて、積荷の重量を求めてもよい。
【0047】
なお、積載状態検出装置11の圧力センサ(重量センサ)の検出結果に基づいて、単位期間当たりにおけるダンプトラック1の積荷運搬量が管理されてもよい。例えば、圧力センサの検出結果に基づいて、1日間におけるダンプトラック1の積荷運搬量(仕事量)が、ダンプトラック1に搭載された記憶装置に記憶され管理されてもよい。
【0048】
なお、積載状態検出装置11は、ベッセル3と車体5との間に配置された重量センサを用いてもよい。その重量センサは、ベッセル3と車体5との間に設けられたひずみゲージ式ロードセルを用いてもよい。積載状態検出装置11は、ベッセル3を持ち上げる油圧シリンダ(ホイストシリンダ)の油圧を検出する圧力センサを用いてもよい。
【0049】
物体検出装置12は、ダンプトラック1(車両2)の前方に存在する物体を非接触で検出する。物体検出装置12は、レーダ装置(ミリ波レーダ装置)を含む。レーダ装置は、電波(又は超音波)を発信して、物体で反射した電波(又は超音波)を受信して、前方に存在する物体の有無を検出可能である。また、レーダ装置は、物体の有無のみならず、物体との相対位置(相対距離及び方位)、及び物体との相対速度を検出可能である。なお、物体検出装置12が、レーザスキャナ及び3次元距離センサの少なくとも一つを含んでもよい。また、物体検出装置12を複数設けてもよい。
【0050】
物体検出装置12は、車両2の前部2Fに配置される。本実施形態において、
図2に示すように、物体検出装置12は、アッパデッキ5Bに配置される。なお、物体検出装置12は、ダンプトラック1の前方の物体を検出できればよい。物体検出装置12は、ロアデッキ5Aに配置されてもよい。
【0051】
なお、アッパデッキ5Bに物体検出装置12が設けられることにより、車輪6が接触する路面(地面)に凹凸があっても、物体検出装置12はその凹凸を物体として誤検出してしまうことが抑制される。なお、レーダ装置から電波が発射された場合、路面の凹凸で反射した電波の強度は、検出対象の物体で反射した電波の強度よりも小さい。レーダ装置は、物体で反射した電波を受信し、路面の凹凸で反射した電波を誤検出しないように、強度が大きい電波を受信し、強度が小さい電波をカットするフィルタ装置を備えてもよい。
【0052】
図6は、本実施形態に係る物体検出装置12の一例を示す模式図である。
図6に示すように、物体検出装置12は、車両2の前部2Fに配置されるレーダ装置(ミリ波レーダ装置)を含む。レーダ装置は、ダンプトラック1の前方の物体を検出可能な検出領域SLを有する。
図6の斜線で示すように、検出領域SLは、射出部12Sから上下方向及び左右方向のそれぞれに放射状に拡がる。物体検出装置12は、検出領域SLに存在する物体を検出可能である。ダンプトラック1の前方方向に関して、物体検出装置12の検出領域SLの寸法はDmである。寸法Dmは、電波及び超音波の少なくとも一方を発信する物体検出装置12の射出部12Sと検出領域SLの先端部との距離である。
【0053】
(制御システム)
次に、本実施形態に係るダンプトラック1の制御システム300の一例について説明する。
図7は、本実施形態に係る制御システム300の一例を示す機能ブロック図である。制御システム300は、衝突被害軽減システム300Sを含む。
【0054】
図7に示すように、制御システム300は、ダンプトラック1を制御する制御装置30と、制御装置30と接続された車両制御装置29とを備えている。車両制御装置29は、ダンプトラック1の状態量を検出する状態量検出システム400と、ダンプトラック1の走行条件を調整する走行条件調整システム500とを有する。状態量検出システム400は、例えば、走行状態検出装置10及び積載状態検出装置11を含む。走行条件調整システム500は、例えば、動力発生装置22、ブレーキ装置13、走行装置4(操舵装置14)、及びリターダ28を含む。制御装置30に、物体検出装置12、表示装置20、及び警報装置21が接続される。
【0055】
また、制御システム300は、時点又は時間を計測するタイマー90と、ダンプトラック1の位置を検出する位置検出装置91と、ダンプトラック1(車両2)の識別データ(車両識別データ)を出力する車両識別データ出力部92と、ダンプトラック1(車両2)を操作する運転者WMの識別データ(運転者識別データ)を出力する運転者識別データ出力部93と、モニタ装置95と、を備えている。なお、表示装置20とモニタ装置95とは、一体化した構造でもよい。
【0056】
動力発生装置22に出力操作部24が接続される。ブレーキ装置13にブレーキ操作部25が接続される。操舵装置14に走行方向操作部15が接続される。変速装置80に速度段操作部18が接続される。リターダ28にリターダ操作部17が接続される。
【0057】
ブレーキ装置13及びリターダ28のそれぞれは、車両2の走行装置4に対するブレーキ処理を実行可能な制動装置である。制動装置は、ブレーキ処理を実行して、ダンプトラック1を減速又は停止させる。本実施形態においては、ブレーキ装置13とリターダ28とは共通の制動装置を含む。オペレータWMによりブレーキ操作部25が操作されても、リターダ操作部17が操作されても、共通の制動装置が作動して、ダンプトラック1を制動することができる。ダンプトラック1が坂道を降りる場合、リターダ28は、一定速度でダンプトラック1が走行するように制動力を調整する。リターダ28は、補助ブレーキとして機能する。ダンプトラック1が坂道を降りる場合、オペレータWMによりリターダ操作部17が操作され、リターダ28が作動することにより、制動装置は所定の制動力を出す。また、リターダ28は、走行速度検出装置10Aにより検出されたダンプトラック1の走行速度に基づいて、制動装置の制動力を調整する。なお、リターダ28は、ブレーキ装置13とは異なる制動装置でもよい。リターダ28は、例えば流体式リターダ及び電磁式リターダの少なくとも一方を含む制動装置を有してもよい。
【0058】
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)のような数値演算装置(プロセッサ)を含む。制御装置30は、物体検出装置12の検出結果に基づいてダンプトラック1とダンプトラック1の前方の物体との衝突の可能性を判断する衝突判断部31と、衝突の可能性の判断に用いられる時間情報を算出する演算部32と、衝突の可能性の判断に用いられる変数を設定する変数設定部33と、衝突の可能性の判断に用いられる情報を記憶する記憶部34と、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを出力する制御部35と、データを取得するデータ取得部36と、を含む。
【0059】
記憶部34は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含む。
【0060】
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行状態を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の積載状態を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。物体検出装置12は、ダンプトラック1の前方の物体を検出して、その検出結果を衝突判断部31に出力する。衝突判断部31は、走行状態検出装置10の検出結果と、積載状態検出装置11の検出結果と、物体検出装置12の検出結果とに基づいて、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性を判断する。
【0061】
ダンプトラック1は、物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行可能な処理システム600を有する。処理システム600は、ダンプトラック1と物体との衝突による被害を軽減するための異なる処理を実行可能な複数の処理装置を有する。本実施形態において、処理システム600の処理装置は、例えば、ブレーキ装置13、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、リターダ28、及び警報装置21の少なくとも一つを含む。ブレーキ装置13、リターダ28、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、及び警報装置21は、衝突による被害を軽減するための異なる処理をそれぞれ実行可能である。処理システム600は、制御装置30に制御される。
【0062】
ブレーキ装置13は、走行装置4に対するブレーキ処理(停止処理)を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減又はダンプトラック1の走行を停止させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
【0063】
リターダ28は、走行装置4に対するブレーキ処理(停止処理)を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減又はダンプトラック1の走行を停止させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
【0064】
動力発生装置22は、走行装置4に対する出力(駆動力)を低減する出力低減処理を実行して、ダンプトラック1の走行速度を低減させることができる。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
【0065】
操舵装置14は、制御部(走行方向制御部)35からの制御信号C3又は走行方向操作部15からの操作信号R3に基づいてダンプトラック1の走行方向変更処理を実行して、ダンプトラック1の進路上に物体が存在しないようにダンプトラック1の走行方向を変更する。これにより、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
【0066】
表示装置20は、例えば、オペレータWMに対する注意喚起のための表示処理を実行することができる。表示装置20は、警告画像を表示してオペレータWMに警告を行うことができる。警告画像は、例えば前方に存在する物体との衝突の可能性を知らせる旨の警告マークやメッセージの表示とすることができる。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作、例えば、出力操作部24、ブレーキ操作部25、リターダ操作部17、及び走行方向操作部15のいずれか一つに対しての操作が実行され、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
【0067】
警報装置21は、オペレータWMに対する注意喚起のための警報発生処理を実行することができる。警報装置21は、例えばスピーカーやランプを用い、前方に存在する物体との衝突の可能性を知らせる旨の音又は光を発してオペレータWMに警告することができる。警報装置21は、走行方向操作部15及び運転席16の少なくとも一方を振動させてオペレータWMに警告可能な振動発生装置を含んでもよい。警報装置21は、運転席16に搭乗しているオペレータWMを保護するためのシートベルトの締め付け力を変更してオペレータWMに警告可能なシートベルト調整装置を含んでもよい。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作が実行され、ダンプトラック1と前方の物体との衝突による被害が軽減される。
【0068】
制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを、処理システム600(ブレーキ装置13、動力発生装置22、操舵装置14、表示装置20、リターダ28、及び警報装置21の少なくとも一つ)に出力する。制御部35から制御信号Cが供給された処理システム600は、ダンプトラック1と物体との衝突による被害を軽減するための処理を実行する。
【0069】
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(出力制御部)35は、出力低減処理が実行されるように、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。動力発生装置22は、制御部35から供給された制御信号C1に基づいて出力を低減して、走行装置4に対する駆動力を低減させる。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
【0070】
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(ブレーキ制御部)35は、ブレーキ処理が実行されるように、リターダ28に制御信号C4を出力する。リターダ28は、制御部35から供給された制御信号C4に基づいて作動する。ここで、ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(ブレーキ制御部)35は、ブレーキ装置13に制御信号C2を出力するようにしてもよい。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減又はダンプトラック1の走行が停止され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
【0071】
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(走行方向制御部)35は、走行方向変更処理が実行されるように、操舵装置14に制御信号C3を出力してもよい。操舵装置14は、制御部35から供給された制御信号C3に基づいて作動する。これにより、ダンプトラック1の進路上に物体が存在しないようにダンプトラック1の走行方向が変更され、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
【0072】
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(警報制御部)35は、警報発生処理が実行されるように、警報装置21に制御信号C6を出力してもよい。上述のように、警報装置21は、制御部35から供給された制御信号C6に基づいて作動する。警報装置21は、オペレータWMに注意喚起するための音又は光を発生する。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するためのいずれかの操作が実行され、その操作により発生した操作信号R(R1、R2、R3、R4)が処理システム600に供給される。これにより、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
【0073】
ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合、制御部(表示制御部)35は、上述のように、表示処理が実行されるように、表示装置20に制御信号C5を出力してもよい。表示装置20は、制御部35から供給された制御信号C5に基づいて作動する。表示装置20は、オペレータWMに注意喚起するための画像を表示する。これにより、オペレータWMによる衝突による被害を軽減するためのいずれかの操作が実行され、その操作により発生した操作信号R(R1、R2、R3、R4)が処理システム600に供給される。これにより、ダンプトラック1と物体との衝突による被害が軽減される。
【0074】
オペレータWMによる衝突による被害を軽減するための操作は、動力発生装置22の出力を低減させるための出力操作部24の操作、ブレーキ装置13を作動させるためのブレーキ操作部25の操作、リターダ28を作動させるためのリターダ操作部17の操作、及び操舵装置14によりダンプトラック1の走行方向を変更させるための走行方向操作部15の操作の少なくとも一つを含む。出力操作部24が操作されることにより、操作信号R1が生成される。出力操作部24により生成された操作信号R1に基づいて、動力発生装置22の出力が低減される。ブレーキ操作部25が操作されることにより、操作信号R2が生成される。ブレーキ操作部25により生成された操作信号R2に基づいて、ブレーキ装置13は作動し、ダンプトラック1は減速する。走行方向操作部15が操作されることにより、操作信号R3が生成される。走行方向操作部15により生成された操作信号R3に基づいて、操舵装置14は作動する。リターダ操作部17が操作されることにより、操作信号R4が生成される。リターダ操作部17により生成された操作信号R4に基づいて、リターダ28は作動し、ダンプトラック1は減速する。
【0075】
動力発生装置22は、出力制御部35及び出力操作部24のそれぞれと接続される。出力操作部24は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R1を生成して、動力発生装置22に供給する。動力発生装置22は、操作信号R1に基づく出力を発生する。出力制御部35は、動力発生装置22を制御するための制御信号C1を生成して、動力発生装置22に供給する。動力発生装置22は、制御信号C1に基づく出力を発生する。
【0076】
リターダ28は、リターダ操作部17及びブレーキ制御部35のそれぞれと接続される。リターダ操作部17は、オペレータWMによる操作に応じた操作信号R4を生成して、リターダ28に供給する。リターダ28は、操作信号R4に基づく制動力を発生する。ブレーキ制御部35は、リターダ28を制御するための制御信号C4を生成して、リターダ28に供給する。リターダ28は、制御信号C4に基づく制動力を発生する。
【0077】
ブレーキ装置13は、ブレーキ操作部25及びブレーキ制御部35のそれぞれと接続される。ブレーキ操作部25は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R2を生成して、ブレーキ装置13に供給する。ブレーキ装置13は、操作信号R2に基づく制動力を発生する。ブレーキ制御部35は、リターダ28あるいはブレーキ装置13を制御するための制御信号C4あるいは制御信号C2を生成して、リターダ28あるいはブレーキ装置13に供給する。リターダ28は、制御信号C4に基づく制動力を発生する。ブレーキ装置13は、制御信号C2に基づく制動力を発生する。以下の説明では、ダンプトラック1の前方に物体が存在して、ダンプトラック1と物体とが衝突する可能性が高いと判断された場合に、ブレーキ制御部35が、リターダ28に対して制御信号C4のみを生成する場合について説明する。
【0078】
操舵装置14は、走行方向操作部15及び走行方向制御部35のそれぞれと接続される。走行方向操作部15は、オペレータWMによる操作量に応じた操作信号R3を生成して、操舵装置14に供給する。操舵装置14は、操作信号R3に基づいて走行装置4の走行方向が変化するように前輪6Fの向きを変える。走行方向制御部35は、操舵装置14を制御するための制御信号C3を生成して、操舵装置14に供給する。操舵装置14は、制御信号C3に基づいて走行装置4の走行方向が変化するように前輪6Fの向きを変える。
【0079】
タイマー90は、時点又は時間を計測する。タイマー90として、例えば時計ICを用いることができる。タイマー90は、ダンプトラック1が稼働する現場のカレンダー又は時刻に合わせて駆動する。タイマー90は、計測した時点データを制御装置30に出力する。なお、タイマー90に代えて、あるいはタイマー90とともに、後述する全方位測位システムを用いて、時点又は時間を計測してもよい。
【0080】
位置検出装置91は、全方位測位システム(Global Positioning System:GPS)を含む。位置検出装置91によって、グローバル座標系(GPS座標系)におけるダンプトラック1(車両2)の位置が検出される。全方位測位システムは、GPS衛星を含み、緯度、経度、及び高度を規定するGPS座標系におけるダンプトラック1の位置を検出する。本実施形態において、位置検出装置91は、ダンプトラック1が有するGPS受信機を含む。位置検出装置91により、鉱山におけるダンプトラック1の位置(絶対位置)が検出される。位置検出装置91は、位置データ取得部として機能し、ダンプトラック1(車両2)の位置データを制御装置30に出力する。
【0081】
車両識別データ出力部92は、ダンプトラック1(車両2)の車両識別データを制御装置30に出力する。鉱山において、複数のダンプトラック1が稼動することがある。複数のダンプトラック1のそれぞれに、車両識別データ(車両ID)が付与される。車両識別データ出力部92は、車両識別データを保持する。車両識別データ出力部92は、車両識別データを制御装置30に出力する。なお、複数のダンプトラック1は、必ずしも同一の鉱山で稼働するものを対象としなくてもよい。ダンプトラック1の管理者が、異なる稼働現場で稼働する複数のダンプトラック1を管理したい場合があるからである。
【0082】
運転者識別データ出力部93は、ダンプトラック1(車両2)の運転者WMの運転者識別データを制御装置30に出力する。鉱山において、複数の運転者WMが働くことがある。複数のダンプトラック1が、各運転者WMに割り当てられ、各運転者WMが、自分に割り当てられたダンプトラック1だけを運転する場合や、一台のダンプトラック1を複数の運転者WMが、交代で運転する場合など、様々な運用形態がある。複数の運転者WMのそれぞれに、運転者識別データ(運転者ID)が付与されている。例えば、運転者WM毎に、運転者識別データが保持されたIDキーが付与される。運転者WMは、異なるダンプトラック1を運転する可能性がある。運転者識別データ出力部93は、例えば、IDキーと無線通信可能なものであって、運転者識別データ出力部93は、IDキーから運転者識別データを受信する。運転者識別データ出力部93は、運転者識別データを制御装置30に出力する。
【0083】
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1(車両2)の走行状態データを制御装置30に出力する。上述のように、ダンプトラック1の走行状態は、ダンプトラック1の走行速度、ダンプトラック1の走行方向(前部2F又は前輪6Fの向き)、及びダンプトラック1の進行方向(前進又は後進)の少なくとも一つを含む。走行状態検出装置10の走行速度検出装置10Aは、ダンプトラック1の走行速度データを制御装置30に出力する。走行状態検出装置10の走行方向検出装置10Bは、ダンプトラック1の走行方向データを制御装置30に出力する。走行状態検出装置10の進行方向検出装置10Cは、ダンプトラック1の進行方向データを制御装置30に出力する。
【0084】
積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の積載状態データを制御装置30に出力する。上述のように、ベッセル3の積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の有無、及びベッセル3に積載された積荷の重量の少なくとも一つを含む。積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の有無データを制御装置30に出力する。積載状態検出装置11は、ベッセル3に積載された積荷の重量データを制御装置30に出力する。
【0085】
データ取得部36は、タイマー90から出力された時点データを取得する。データ取得部36は、位置検出装置91から出力されたダンプトラック1の位置データを取得する。データ取得部36は、車両識別データ出力部92から出力された車両識別データを取得する。データ取得部36は、運転者識別データ出力部93から出力された運転者識別データを取得する。データ取得部36は、走行状態検出装置10から出力された走行状態データ(走行速度データ、走行方向データ、及び進行方向データの少なくとも一つ)を取得する。データ取得部36は、積載状態検出装置11から出力された積載状態データ(積荷の有無データ、及び積荷の重量データの少なくとも一つ)を取得する。データ取得部36は、時点データ取得部、位置データ取得部、車両識別データ取得部、運転者識別データ取得部、走行状態データ取得部、及び積載状態データ取得部として機能する。
【0086】
モニタ装置95は、ダンプトラック1に関する各種のデータをモニタする。モニタ装置95は、記憶部95Aと、出力部95Bとを含む。モニタ装置95は、データ取得部36が取得したデータ(時点データ、位置データ、車両識別データ、運転者識別データ、走行状態データ、及び積載状態データの少なくとも一つ)をモニタする。本実施形態においては、タイマー90、位置検出装置91、車両識別データ出力部92、運転者識別データ出力部93、走行状態検出装置10、及び積載状態検出装置11のそれぞれから、各データが、データ取得部36に所定の周期で出力される。モニタ装置95は、それらデータ取得部36から取得した各データをモニタする。モニタ装置95は、データ取得部36が取得した各データを、記憶部95Aに記憶する。モニタ装置95は、データ取得部36が取得した各データを、出力部95Bから外部装置に出力する。
【0087】
記憶部95Aは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含む。
【0088】
出力部95Bは、データを無線通信可能な通信部を含む。出力部95Bは、無線通信により、データを外部装置に出力する。衛星通信を使って、出力部95Bから外部装置にデータが出力されてもよい。携帯電話通信網を使って、出力部95Bから外部装置にデータが出力されてもよい。あるいは、無線LANシステムを使って、出力部95Bから外部装置にデータが出力されてもよい。なお、出力部95Bから外部装置にデータが有線通信されてもよい。例えば、出力部95Bと外部装置とがケーブルを介して接続され、そのケーブルを介して、出力部95Bから外部装置にデータが出力されてもよい。なお、出力部95Bおよび記憶部95Aは、例えば、制御装置30に組み込まれていてもよい。
【0089】
(ダンプトラックの制御方法)
次に、ダンプトラック1の制御方法の一例について説明する。本実施形態においては、ダンプトラック1の前方に存在する物体とダンプトラック1との衝突による被害を軽減するための制御方法の一例について主に説明する。以下の説明においては、物体が、ダンプトラック1の前方に存在する他のダンプトラック1Fであることとする。本実施形態においては、ダンプトラック1が、そのダンプトラック1の前方のダンプトラック1Fに追突することによる被害を軽減するための制御方法の一例について主に説明する。以下の説明においては、ダンプトラック1の前方のダンプトラック1Fを適宜、前方ダンプトラック1F、と称する。
【0090】
図8は、本実施形態に係るダンプトラック1の制御方法の一例を示すフローチャートである。積載状態検出装置11は、ベッセル3の積荷の積載状態を検出する。積載状態検出装置11の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、積載状態検出装置11の検出結果を取得する(ステップSA1)。
【0091】
制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得するタイミングは、ダンプトラック1が積込場LPAから出発するタイミングでもよいし、ダンプトラック1が排土場DPAから出発するタイミングでもよい。すなわち、
図9に示すように、鉱山の積込場LPAにおいてベッセル3に積荷が積み込まれ、積荷状態のダンプトラック1が積込場LPAから出発するときに、制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得してもよい。鉱山の排土場DPAにおいてベッセル3から積荷が排出され、空荷状態のダンプトラック1が排土場DPAから出発するときに、制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得してもよい。
【0092】
図10に示すように、操作部40の操作によって、制御装置30が積載状態検出装置11の検出結果を取得するタイミングが定められてもよい。操作部40は、キャブ8内の運転席16の近傍に配置される。オペレータWMは、ダンプトラック1が積込場LPAから出発するとき、又はダンプトラック1が排土場DPAから出発するとき、操作部40を操作する。操作部40が操作されることにより、積載状態検出装置11の検出結果が制御装置30に出力される。制御装置30は、操作部40が操作されたタイミングで、積載状態検出装置11の検出結果を取得してもよい。
【0093】
例えば、積載状態検出装置11が積荷を検出したこと又は空荷を検出したことをトリガとして、制御装置30が備えるタイマー90が、ダンプトラック1が積込場LPA又は排土場DPAから出発してから所定時間経過したことを計測する。所定時間経過したことがタイマー90により計測された後、積載状態検出装置11の検出結果が制御装置30に取得されてもよい。
【0094】
ダンプトラック1が積込場LPA又は排土場DPAから出発してから所定時間経過するまでの間に検出された積載状態検出装置11の複数の検出値の平均値が、積込状態の検出結果として制御装置30に取得されてもよい。
【0095】
本実施形態において、ベッセル3の積荷の積載状態は、ベッセル3の積荷の有無を含む。制御装置30は、ベッセル3に積荷が有るか否かを判断する(ステップSA2)。記憶部34に、積荷の重量に関する閾値が記憶されている。制御装置30は、その閾値と積載状態検出装置11の検出値とを比較する。積載状態検出装置11の検出値が閾値よりも大きいと判断された場合、制御装置30は、ベッセル3に積荷が有ると判断する。積載状態検出装置11の検出値が閾値以下であると判断された場合、制御装置30は、ベッセル3に積荷が無いと判断する。
【0096】
次に、変数設定部33により、ベッセル3の積荷の積荷状態に基づいてダンプトラック1(車両2)の減速度aが設定される。ダンプトラック1の減速度aとは、リターダ28が作動した場合におけるダンプトラック1の減速度(負の加速度)である。本実施形態において、ダンプトラック1の減速度aとは、リターダ28を含む制動装置の最大制動能力が発揮されるように制動装置が作動したときの、ダンプトラック1の減速度をいう。なお、ダンプトラック1の減速度aは、ダンプトラック1のスリップ等の発生を抑制できる範囲で制動能力が発揮できる減速度であってもよい。一般に、ダンプトラック1の重量が大きい場合、減速度aは小さい。ダンプトラック1の重量が小さい場合、減速度aは大きい。減速度aが小さいと、走行するダンプトラック1は停止し難い。減速度aが大きいと、走行するダンプトラック1は停止し易い。以下の説明において、リターダ28の最大制動能力が発揮されるようにリターダ28が作動される状態を適宜、フルブレーキ状態、と称する。
【0097】
ダンプトラック1の重量は、ベッセル3に積載される積荷の重量に基づいて変化する。したがって、ベッセル3が空荷状態の場合、ダンプトラック1の重量は小さくなり、ダンプトラック1の減速度aは大きくなる(ダンプトラック1は停止し易くなる)。ベッセル3が積荷状態の場合、ダンプトラック1の重量は大きくなり、ダンプトラック1の減速度aは小さくなる(ダンプトラック1は停止し難くなる)。
【0098】
ダンプトラック1の重量とその重量のダンプトラック1の減速度aとの関係に関する情報は、実験又はシミュレーションにより事前に求めることができる。記憶部34には、実験又はシミュレーションによって求められた、積荷の重量とダンプトラック1の減速度aとの関係に関する情報が記憶されている。
【0099】
本実施形態において、記憶部34には、積荷状態のダンプトラック1の減速度a1と、空荷状態のダンプトラック1の減速度a2とが記憶されている。減速度a2は、減速度a1よりも大きい。
【0100】
鉱山の採掘現場においてベッセル3に積荷を積む場合、採掘現場の生産性向上等の観点から、ベッセル3の最大積載能力が発揮されるように、ベッセル3に積荷が積み込まれる。すなわち、ベッセル3の収容可能容積の100%に相当する量の積荷がベッセル3に積み込まれる。例えば、ベッセル3の収容可能容積の70%に相当する量の積荷をベッセル3に積むという運用は、生産効率が悪く、例外的である。すなわち、本実施形態において、ベッセル3の積荷状態とは、ベッセル3に積荷が満載された満載状態を意味する。そのため、ダンプトラック1の減速度aは、積荷状態(満載状態)のダンプトラック1に対応する減速度a1と、空荷状態のダンプトラック1に対応する減速度a2との2つの値で足りる。
【0101】
ステップSA2において、積荷が有ると判断された場合、変数設定部33は、減速度a1を設定する(ステップSA3)。ステップSA2において、積荷が無いと判断された場合、変数設定部33は、減速度a2を設定する(ステップSA4)。
【0102】
走行状態検出装置10は、ダンプトラック1の走行状態を検出する。走行状態検出装置10の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、走行状態検出装置10の検出結果を取得する。
【0103】
走行状態検出装置10の走行速度検出装置10Aは、ダンプトラック1の走行速度Vtを検出して、その検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、走行速度検出装置10Aの検出結果を取得する(ステップSA5)。
【0104】
走行方向検出装置10Bの検出結果及び進行方向検出装置10Cの検出結果も制御装置30に出力される。制御装置30は、走行方向検出装置10Bの検出結果及び進行方向検出装置10Cの検出結果を取得する。
【0105】
走行状態検出装置10の検出周期はGt(例えば1ms以上100ms以下)である。走行状態検出装置10は、所定時間間隔(検出周期)Gtで検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、その検出結果を取得する。制御装置30は、ダンプトラック1の稼動時において、走行状態検出装置10の検出結果をモニタする。
【0106】
演算部32により、走行状態検出装置10の検出結果に基づいて、物体との衝突の可能性の判断に用いられる時間情報が算出される。演算部32は、所要停止距離Dsを算出する(ステップSA6)。また、演算部32は、走行速度Vtと所要停止距離Dsとに基づいて、停止距離通過時間Tsを算出する(ステップSA7)。
【0107】
図11は、所要停止距離Ds及び停止距離通過時間Tsを説明するための図である。所要停止距離Dsについて説明する。
図11に示すように、走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1の走行速度がVtであり、変数設定部33で設定された減速度がaである場合において、ダンプトラック1が第1地点P1に位置するときにフルブレーキ状態になるようにリターダ28が作動された場合、ダンプトラック1は、第1地点P1の前方の第2地点P2で停止する。第2地点P2では、当然ながら走行速度は0である。所要停止距離Dsは、リターダ28がフルブレーキ状態になるように作動された第1地点P1と、ダンプトラック1が停止可能な第2地点P2との距離である。走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1の走行速度がVtであり、変数設定部33で設定された減速度がaである場合、所要停止距離Dsは、以下の(1)式に基づいて導出される。
【0108】
Ds=Vt(Vt/a)−(1/2)a(Vt/a)
2
=(1/2a)Vt
2 …(1)
【0109】
したがって、減速度a1が設定された場合、
Ds=(1/2a1)Vt
2 …(1A)
である。減速度a2が設定された場合、
Ds=(1/2a2)Vt
2 …(1B)
である。
【0110】
このように、本実施形態においては、走行状態検出装置10で検出された第1地点P1におけるダンプトラック1(車両2)の走行速度Vtと、変数設定部33で設定された減速度aとに基づいて、第1地点P1とダンプトラック1が停止可能な第2地点P2との所要停止距離Dsが算出される。
【0111】
次に、停止距離通過時間Tsについて説明する。停止距離通過時間Tsとは、ダンプトラック1が第1地点P1に存在する第1時点t1から、所要停止距離Dsを走行速度Vtで走行したときに第2地点P2に到達する第2時点t2までの時間をいう。すなわち、停止距離通過時間Tsとは、第1地点P1(第1時点t1)において走行速度Vtで走行するダンプトラック1が、ブレーキ装置13の作動なく、一定の走行速度Vtで所要停止距離Dsを走行したときの、その所要停止距離Dsを走行するのに要する時間をいう。停止距離通過時間Tsは、以下の(2)式に基づいて導出される。
【0113】
以上により、所要停止距離Ds及び停止距離通過時間Tsのそれぞれが算出される。
【0114】
物体検出装置12は、例えば、前方ダンプトラック1Fを検出する。物体検出装置12の検出結果は、制御装置30に出力される。制御装置30は、物体検出装置12の検出結果を取得する。
【0115】
物体検出装置12は、レーダ装置を含み、前方ダンプトラック1Fを検出可能である。物体検出装置12は、その物体検出装置12が設けられているダンプトラック1と、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを検出可能である。物体検出装置12は、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを検出し、その検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、前方ダンプトラック1Fとの相対距離Dr及び相対速度Vrを取得する(ステップSA8)。
【0116】
物体検出装置12の検出周期は、走行状態検出装置10の検出周期Gtと異なる。物体検出装置12は、所定時間間隔で検出結果を制御装置30に出力する。制御装置30は、その検出結果を取得する。制御装置30は、ダンプトラック1の稼動時において、物体検出装置12の検出結果をモニタする。
【0117】
演算部32は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、衝突の可能性の判断に用いられる時間情報を算出する。演算部32は、ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達するまでの物体到達時間Taを算出する(ステップSA9)。
【0118】
図12は、物体到達時間Taを説明するための図である。物体到達時間Taとは、ダンプトラック1が第1地点P1に存在するときの、そのダンプトラック1の物体検出装置12で検出された第1地点P1(第1時点t1)におけるダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの相対距離Drと相対速度Vrとに基づいて、第1時点t1から相対距離Drを相対速度Vrで走行したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する第3時点t3までの時間をいう。すなわち、相対距離Dr及び相対速度Vrを検出した時点を第1時点t1とし、その第1時点t1において検出された相対距離Drを相対速度Vrで相対移動したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する時点を第3時点t3としたとき、物体到達時間Taとは、第1時点t1から第3時点t3までの時間をいう。物体到達時間Taは、以下の(3)式に基づいて導出される。
【0120】
このように、物体検出装置12で検出された第1時点t1におけるダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの相対距離Drと相対速度Vrとに基づいて、第1時点t1から相対距離Drを相対速度Vrで走行したときにダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに到達する第3時点t3までの物体到達時間Taが算出される。
【0121】
制御装置30は、走行状態検出装置10の検出値及び物体検出装置12の検出値をモニタし、複数の各地点(各時点)における停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taを算出する。換言すれば、制御装置30は、複数の各地点(各時点)における停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taを、所定時間間隔Gtで出力する。
【0122】
衝突判断部31は、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとに基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性を判断する(ステップSA10)。
【0123】
衝突判断部31は、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとを比較し、その比較の結果に基づいて、衝突の可能性を判断する。本実施形態において、衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」を実行する。演算「Ta−Ts」の結果に基づいて、第1時点t1からダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するか否かが推定される。演算「Ta−Ts」は、所定時間間隔Gtで行われる。
【0124】
演算の結果が「Ta−Ts≦0」である場合(ステップSA11、Yes)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsと等しい時間あるいは停止距離通過時間Tsより短い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が最も高いレベル1であると判断する。
【0125】
演算の結果が「α≧Ta−Ts>0」である場合(ステップSA13、Yes)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsよりも僅かに長い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性がレベル1に次いで高いレベル2であると判断する。数値αは、事前に定められた正の値である。
【0126】
演算の結果が「Ta−Ts>α」である場合(ステップSA13、No)、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突までの時間、すなわち物体到達時間Taは、停止距離通過時間Tsよりも十分に長い時間であると推定される。この場合、衝突判断部31は、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突の可能性が最も低いレベル3であると判断する。
【0127】
このように、演算「Ta−Ts」の結果に基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するか否かが推定され、その推定の結果に基づいて、衝突の可能性が判断される。また、推定の結果に基づいて、衝突の可能性(危険度)が複数のレベルに分類される。本実施形態においては、衝突の可能性が、レベル1、レベル2、及びレベル3に分類される。レベル1、レベル2、及びレベル3のうち、レベル1は、衝突の可能性が最も高いレベルであり、レベル2は、レベル1に次いで衝突の可能性が高いレベルであり、レベル3は、衝突の可能性が最も低いレベルである。
【0128】
衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」の結果がレベル1(Ta−Ts≦0)であるか否かを判断する(ステップSA11)。
【0129】
ステップSA11において、レベル1であると判断された場合(ステップSA11、Yes)、制御装置30は、リターダ28を制御する(ステップSA12)。制御部35は、リターダ28に制御信号C4を出力する。制御部35は、フルブレーキ状態でリターダ28が作動するように、リターダ28に制御信号C4を出力する。
【0130】
制御部35から供給された制御信号C4に基づいて、リターダ28のブレーキ処理が実行される。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減又はダンプトラック1が停止される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
【0131】
レベル1において、制御信号C4は操作信号R2及び操作信号R1に優先する。制御部35からリターダ28に制御信号C4が出力された場合、ブレーキ操作部25の操作の有無、及びブレーキ操作部25の操作量の大小、出力操作部24の操作の有無、出力操作部24の操作量の大小、これらにかかわらず、制御信号C4に基づいて、リターダ28のブレーキ処理が実行される。なお、レベル1において、制御信号C4は操作信号R4に対しても優先するようにしてもよい。
【0132】
ステップSA11において、レベル1であると判断された場合、制御部35は、動力発生装置22の出力が低減されるように、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。これにより、ダンプトラック1の走行速度が低減される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
【0133】
この場合、レベル1において、制御信号C1は操作信号R1及び操作信号R2に優先する。制御部35から動力発生装置22に制御信号C1が出力された場合、ブレーキ操作部25の操作の有無、及びブレーキ操作部25の操作量の大小、出力操作部24の操作の有無、出力操作部24の操作量の大小、これらにかかわらず、制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。なお、レベル1において、制御信号C1は操作信号R4に対しても優先するようにしてもよい。
【0134】
ステップSA11において、レベル1であると判断された場合、制御部35は、リターダ28に制御信号C4を出力するとともに、動力発生装置22に制御信号C1を出力してもよい。すなわち、リターダ28のブレーキ処理と並行して、動力発生装置22の出力低減処理が行われてもよい。
【0135】
ステップSA11において、演算「Ta−Ts」の結果が、レベル1(Ta−Ts≦0)でないと判断された場合(ステップSA11、No)、衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」の結果がレベル2(α≧Ta−Ts>0)であるか否かを判断する(ステップSA13)。
【0136】
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合(ステップSA13、Yes)、制御装置30は、警報装置21を制御する(ステップSA14)。制御部35は、警報装置12に制御信号C6を出力する。制御部35は、警報装置21が警報を発生するように、警報装置21に制御信号C6を出力する。
【0137】
制御部35から供給された制御信号C6に基づいて、警報装置21の警報発生処理が実行される。警報装置21は、音又は光を発生して、オペレータWMに注意喚起する。これにより、オペレータWMにより、衝突による被害を軽減するための操作が行われる。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害が軽減される。
【0138】
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、表示装置20に制御信号C5を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C5に基づいて、表示装置20の表示処理が実行される。これにより、オペレータWMにより、衝突による被害を軽減するための操作が行われる。
【0139】
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、ブレーキ装置13が作動するように、制御信号C2を出力してもよい。例えば、制御部35から供給された制御信号C2に基づいて、フルブレーキ状態の制動力よりも小さい制動力が発生するように、ブレーキ装置13のブレーキ処理が実行されてもよい。あるいは、ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、リターダ28が作動するように、制御信号C4を出力するが、フルブレーキ状態の制動力よりも小さい制動力が発生するように、リターダ28のブレーキ処理が実行されるようにしてもよい。
【0140】
以下の説明において、フルブレーキ状態の制動力よりも小さい制動力が発生するようにリターダ28が作動される状態を適宜、弱ブレーキ状態又はプレブレーキ状態、と称する。
【0141】
ステップSA13において、レベル2であると判断された場合、制御部35は、動力発生装置22の出力が低減されるように、制御信号C1を出力してもよい。制御部35から供給された制御信号C1に基づいて、動力発生装置22の出力低減処理が実行される。
【0142】
ステップSA13において、演算「Ta−Ts」の結果が、レベル2(α≧Ta−Ts>0)でないと判断された場合(ステップSA13、No)、衝突判断部31は、演算「Ta−Ts」の結果がレベル3(Ta−Ts>α)であると判断する。
【0143】
レベル3であると判断された場合、衝突による被害を軽減するための処理システム600の処理は行われない。制御システム300は、ステップSA5の処理に戻り、上述した一連の処理を繰り返す。例えば、制御装置30は、走行状態検出装置10の検出結果、及び物体検出装置12の検出結果のモニタを継続する。
【0144】
ステップSA12において、リターダ28が制御された後、ダンプトラック1の走行速度Vtが低減されて、衝突の可能性が低減された場合、制御部35からリターダ28に対する制御信号C4の出力が停止される。これにより、制御装置30によるリターダ28の制御は解除される。制御システム300は、ステップSA5の処理に戻り、上述した一連の処理を繰り返す。
【0145】
ステップSA14において、警報装置21が制御された後、例えばオペレータWMによる、ブレーキ操作部25及びリターダ操作部17、出力操作部24のいずれか一つの操作により、ダンプトラック1の走行速度Vtが低減されて、衝突の可能性が低減された場合、制御部35から警報装置21に対する制御信号C6の出力が停止される。これにより、制御装置30による警報装置21の制御は解除される。制御システム300は、ステップSA5の処理に戻り、上述した一連の処理を繰り返す。
【0146】
ステップSA11及びステップSA13の少なくとも一方において、衝突の可能性がレベル1又はレベル2であると判断された場合、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減するために、制御部35は操舵装置14に制御信号C3を出力してもよい。ダンプトラック1の進路に前方ダンプトラック1Fが存在する場合、ダンプトラック1の進路に前方ダンプトラック1Fが配置されないように、操舵装置14の走行方向変更処理が実行され、ダンプトラック1の走行方向が変更されてもよい。
【0147】
レベル1において、制御信号C3は操作信号R3に優先されてもよい。制御部35から操舵装置14に制御信号C3が出力された場合、走行方向操作部15の操作の有無、及び走行方向操作部15の操作量の大小にかかわらず、操舵装置14は、制御信号C3に基づいて走行方向変更処理を実行する。
【0148】
本実施形態においては、ステップSA5において、走行速度検出装置10Aの検出結果のみならず、走行方向検出装置10Bの検出結果、及び進行方向検出装置10Cの検出結果も制御装置30に出力される。例えば、物体検出装置12が前方ダンプトラック1Fを検出しても、走行方向検出装置10Bの検出結果に基づいて、ダンプトラック1の進路から前方ダンプトラック1Fが外れるようにダンプトラック1の走行方向が変化していると判断された場合、制御装置30は、衝突の可能性が低い(レベル3である)と判断してもよい。その場合、衝突による被害を軽減するための処理システム600の処理が行われなくてもよい。
【0149】
ダンプトラック1が後進している場合、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突する可能性は低い。そのため、進行方向検出装置10Cの検出結果に基づいて、ダンプトラック1が後進していると判断された場合、衝突による被害を軽減するための処理システム600の処理が行われなくてもよい。
【0150】
本実施形態において、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御信号C1よりも操作信号R1が優先されてもよい。例えば、動力発生装置22に操作信号R1及び制御信号C1の両方が供給された場合、動力発生装置22は、操作信号R1に基づいて駆動してもよい。また、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御信号C2よりも操作信号R2が優先されてもよい。例えば、ブレーキ装置13に操作信号R2及び制御信号C2の両方が供給された場合、ブレーキ装置13は、操作信号R2に基づいて駆動してもよい。また、衝突の可能性がレベル2であると判断された場合、制御信号C3よりも操作信号R3が優先されてもよい。例えば、操舵装置14に操作信号R3及び制御信号C3の両方が供給された場合、操舵装置14は、操作信号R3に基づいて駆動してもよい。すなわち、衝突可能性がレベル2又はレベル3である場合、運転者WMによる操作を優先するようにしてもよい。
【0151】
なお、本実施形態においては、衝突の可能性のレベルが3段階(レベル1、レベル2、レベル3)に分けられる。衝突の可能性のレベルは、4段階以上の複数段階に分けられてもよい。衝突の可能性レベルは、2段階(レベル1、レベル2)に分けられてもよい。すなわち、衝突の可能性が全く無いレベルと、衝突の可能性が有るレベルとの2段階に分けられてもよい。このような場合、制御装置30から制御信号Cが出力されている状態で、運転者WMがいずれかの操作部を操作して操作信号Rが生成されたならば、衝突の可能性が全くないレベルであれば、操作信号Rを優先し、衝突の可能性が有るレベルであれば、制御信号Cは操作信号Rに優先するようにしてもよい。あるいは、衝突の可能性が全く無いレベルと、衝突の可能性が有るレベルとの2段階に分けた場合、衝突の可能性が有るレベルであれば、制御装置30から制御信号Cが出力されている状態であっても所定の条件が成立する際、操作信号Rを優先するようにしてもよい。制御装置30から制御信号Cが出力されている状態で、例えば、運転者WMがいずれかの操作装置(操作部)を操作して操作信号Rが生成されたといった所定の条件が成立したならば、衝突の可能性が有るレベルであれば、操作信号Rを優先するようにしてもよい。
【0152】
(データ出力)
上述のように、本実施形態においては、制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを処理システム600に出力する。データ取得部36は、制御部35から制御信号Cが出力された時点データをタイマー90から取得する。換言すれば、データ取得部36は、衝突による被害を軽減するための処理を処理システム600が実行する時点データをタイマー90から取得する。時点データは、例えば、年月日と時刻を含んだデータである。例えば、2014年8月1日という年月日を特定するデータと、14時53分30秒といった時刻を特定するデータである。
【0153】
なお、時点データは、月日だけを含むデータでもよいし、時刻だけを含むデータでもよいし、年月日だけを含むデータでもよいし、月日と時刻とを含むデータでもよいし、年月日と時刻とを含むデータでもよい。
【0154】
本実施形態において、モニタ装置95は、制御部35から制御信号Cが出力された時点データと、処理システム600の処理の実行状況を示す処理履歴データとを対応付けて、記憶部95Aに記憶する。また、モニタ装置95は、制御部35から制御信号Cが出力された時点データと、処理システム600の処理の実行状況を示す処理履歴データとを対応付けて、出力部95Bから出力する。
【0155】
処理履歴データは、処理システム600の処理の実行状況を示すデータを含む。処理システム600の処理の実行状況を示す処理履歴データは、処理システム600の処理の有無、処理システム600が実行した処理の内容、又は、処理システム600の処理の有無及び処理システム600が実行した処理の内容の両方、のいずれか一つを示す。処理システム600の処理の有無を示すデータとは、処理システム600が作動したか否か(処理を実施したか否か)を示すデータである。処理システム600の処理の内容を示すデータとは、処理システム600が処理を実施したときの、その処理の内容を示すデータである。時点データと処理履歴データとを対応付けることは、時点データと処理の有無とを対応付けること、時点データと処理の内容とを対応付けること、及び時点データと処理の有無と処理の内容とのを対応付けること、の少なくとも一つを含む。
【0156】
本実施形態において、出力部95Bがデータを出力することは、ダンプトラック1(モニタ装置95)の外部にデータを出力することを含む。出力部95Bは、無線でデータを出力してもよいし、有線でデータを出力してもよい。また、出力部95Bがデータを出力することは、ダンプトラック1の外部に設けられた出力装置(例えば、印刷装置又は表示装置)にデータを出力することを含む。
【0157】
また、本実施形態において、出力部95Bがデータを出力することは、ダンプトラック1の内部にデータを出力することを含む。ダンプトラック1の内部にデータを出力することは、表示装置20のような、ダンプトラック1が有する機器にデータを出力することを含む。
【0158】
図13は、モニタ装置95が記憶又は出力する処理履歴データの一例を示す図である。本実施形態において、出力部95Bは、少なくとも処理履歴データを出力する。
図13に示すように、出力部95Bは、処理履歴データとは別のデータを出力してもよい。
図13に示すように、衝突による被害を軽減するための制御信号Cが制御部35から出力された月日を含む時刻のデータ又は時刻のみのデータ(時点データ)と、処理システム600の処理の実行状況(処理履歴データ)とが対応付けて記憶又は出力される。
図13に示す例では、制御信号Cが制御部35から出力された時点(時点データ)と、制御信号Cに基づいて処理システム600が実行した処理の内容(処理履歴データ)とが対応付けて記憶又は出力される。制御部35から制御信号Cが出力された時点(処理システム600が処理を実行した時点)は、前述のように衝突判断部31によって衝突が発生する可能性があったと判断された時点である。
【0159】
なお、上述のように、処理履歴データは、処理システム600が実施した処理の内容のみならず、処理システム600による処理の実施の有無を含む。時点データに対応付けて、処理システム600による処理の実施の有無が記憶又は出力されてもよい。
【0160】
上述のように、本実施形態において、衝突判断部31の判断は、衝突の可能性を複数のレベル(レベル1、レベル2、レベル3)に分類することを含む。制御部35は、そのレベルに基づいて、特定の処理装置(警報装置21、リターダ28、ブレーキ装置13、及び動力発生装置22等)に制御信号Cを出力する。また、制御部35は、衝突の可能性のレベル(衝突可能性レベル)に基づいて、リターダ28及びブレーキ装置13を含む制動装置の作動状態(フルブレーキ状態又は弱ブレーキ状態)を調整する。
【0161】
図13に示すように、モニタ装置95は、処理履歴データのみならず、衝突判断部31から出力される衝突可能性レベル(衝突可能性レベルデータ)も、時点データに対応付けて記憶又は出力するようにしてもよい。
【0162】
例えば、8月1日13時15分17秒に、衝突可能性レベル2となる事象(先行車との接近など)が生じ、警報装置21が作動した場合、モニタ装置95に、発生時点(発生時点データ)である「8月1日13時15分17秒」に対応付けて、衝突可能性レベル(衝突可能性レベルデータ)として「レベル2」、処理内容(処理履歴データ)として「警報」が記憶又は出力される。
【0163】
同様に、例えば、8月20日09時30分25秒に、衝突可能性レベル1となる事象(先行車との接近など)が生じ、フルブレーキ状態となるようにブレーキ装置が作動した場合、モニタ装置95に、発生時点(発生時点データ)である「8月20日09時30分25秒」に対応付けて、衝突可能性レベル(衝突可能性レベルデータ)として「レベル1」、処理内容(処理履歴データ)として「フルブレーキ」が記憶又は出力される。
【0164】
(制御方法)
次に、本実施形態に係るダンプトラック1の制御方法の一例について、
図14のフローチャートを参照して説明する。
【0165】
ダンプトラック1に設けられた物体検出装置12によって、ダンプトラック1の前方の物体が検出される(ステップSB1)。
【0166】
衝突判断部31は、物体検出装置12の検出結果に基づいて、ダンプトラック1と物体との衝突の可能性を判断する(ステップSB2)。
【0167】
ステップSB2において、衝突の可能性がないと判断された場合(ステップSB2:No)、物体検出装置12による処理が継続される。
【0168】
ステップSB2において、衝突の可能性があると判断された場合(ステップSB2:Yes)、制御部35は、衝突による被害を軽減するための制御信号Cを処理システム600に出力する(ステップSB3)。
【0169】
例えば、衝突可能性レベルがレベル1であると判断された場合、制御部35は、フルブレーキ状態になるように、制動装置に制御信号Cを出力する。衝突可能性レベルがレベル2であると判断された場合、制御部35は、弱ブレーキ状態になるように、制動装置に制御信号Cを出力する。
【0170】
モニタ装置95は、制御部35から制御信号Cが出力された時点データ(時刻)と処理システムが実行した処理履歴データ(処理の内容)とを対応付けて、記憶部95Aに記憶する(ステップSB4)。
【0171】
モニタ装置95は、制御部35から制御信号Cが出力された時点データ(時刻)と処理システムが実行した処理履歴データ(処理の内容)とを対応付けて、出力部95Bから出力する(ステップSB5)。出力部95Bは、少なくとも処理履歴データを出力することができる。
【0172】
図15は、出力部95Bの動作の一例を示す模式図である。
図15に示すように、出力部95Bは、処理履歴データに限らず、処理履歴データとは別のデータを出力してもよい。出力部95Bは、時点データと対応付けられた処理履歴データを無線通信可能な通信部を含む。出力部95Bは、少なくとも処理履歴データを無線で外部装置に出力する。
図15に示す例において、外部装置は、サーバ1000を含む。サーバ100に、処理履歴データが蓄積され、記憶される。
【0173】
なお、処理履歴データが外部装置に出力されるタイミングは、決められた時点(時刻)でもよいし、処理履歴データの作成が完了した時点でもよいし、処理履歴データが所定の数だけ蓄積された時点でもよい。決められた時刻は、例えば夜中の時刻でもよいし、定期的な時刻でもよい。例えば、毎日夜中に定時出力されてもよい。
【0174】
なお、処理履歴データが外部装置に出力されるタイミングは、衝突可能性レベルに基づいて定められてもよい。例えば、衝突可能性レベルがレベル1のときの処理履歴データが作成された場合、その処理履歴データの作成が完了した時点で外部装置に出力されてもよい。衝突可能性レベルがレベル2又はレベル3のときの処理履歴データが作成された場合、その処理履歴データは、決められた時刻に出力されてもよいし、処理履歴データが所定の数だけ蓄積された時点で出力されてもよい。あるいは、衝突の可能性のレベルが、いずれのレベルであるかに関わらず、処理履歴データが作成された時点で、その処理履歴データが外部装置に出力されてもよい。
【0175】
(作用)
以上説明したように、本実施形態によれば、ダンプトラック1は、衝突による被害の軽減のための処理を実行可能な処理システム600を有し、衝突判断部31の判断結果に基づいて、衝突による被害を軽減するための制御信号Cが制御部35から処理システム600に出力される。したがって、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減することができる。
【0176】
本実施形態によれば、制御部35から衝突による被害を軽減するための制御信号Cが出力された時点データと、処理システム600の処理の実行状況を示す処理履歴データとを対応付けて記憶又は出力することにより、その処理履歴データに基づいて、ダンプトラック1の管理者は、処理システム600が作動した時点を把握することができる。これにより、管理者は、ダンプトラック1と物体との衝突が発生する可能性がある状況を把握することができる。したがって、管理者は、その処理履歴データ(統計データ)を使って、ダンプトラック1と物体との衝突が起きないように予防策又は改善策を講じることができる。例えば、昼間よりも夜間のほうが、処理履歴データが生成された数が多く、夜間のほうが、衝突の発生の可能性が高いと判断された場合、鉱山内に夜間照明を増設したり、夜間にダンプトラック1を運転する運転者WMの勤務形態を見直したり、夜間における最高速度の規則を見直したり、夜間に稼働するダンプトラック1の運行計画を見直すなどの予防策又は改善策を講じる。すなわち、鉱山全体を含むダンプトラック1の運行管理又は運転者WMの適切な労務管理を実行することができる。このように、本実施形態によれば、処理履歴データを使って、衝突による被害を軽減するための改善措置及び予防措置を講じることができる。
【0177】
本実施形態においては、処理システム600は、異なる処理を実行可能な複数の処理装置を含む。そのため、制御部35は、衝突判断部31の判断結果に基づいて、複数の処理装置のうち、衝突による被害を軽減でき、且つ、作業効率の低下が抑制される適切な(特定の)処理装置に制御信号Cを出力することができる。
【0178】
本実施形態においては、衝突判断部31の衝突の可能性の判断は、衝突の可能性を複数のレベルに分類することを含む。制御部35は、そのレベルに基づいて、複数の処理装置のうち、特定の処理装置に制御信号Cを出力する。本実施形態においては、衝突の可能性(危険度)が高いレベル1においては、ブレーキ装置13に制御信号C2が出力されるため、衝突を防止することができる。衝突の可能性が比較的低いレベル2においては、警報装置21に制御信号C6が出力されるため、作業効率の低下を抑制することができる。このように、衝突の可能性のレベルに基づいて、複数の処理装置の中から最適な処理装置を選択して、その選択された処理装置を使って衝突による被害を軽減するための処理を実行させることによって、衝突による被害を軽減でき、且つ、作業効率の低下を抑制することができる。
【0179】
本実施形態によれば、処理履歴データが衝突可能性レベルに対応付けられるため、管理者は、処理システムの作動状況をより詳細に把握できる。これにより、衝突による被害を軽減するための改善措置及び予防措置をより適切に講じることができる。
【0180】
本実施形態によれば、出力部95Bは、少なくとも処理履歴データを無線通信可能な通信部を含む。出力部95Bは、時点データや衝突可能性レベルデータも処理履歴データに対応付けて無線通信可能である。無線により、少なくとも処理履歴データが出力部95Bから外部装置に出力される。外部装置は、ダンプトラック1の管理者がいる事務所のサーバ1000でもよいし、パーソナルコンピュータでもよいし、管理者が所持する携帯端末でもよい。これにより、管理者は、少なくとも処理履歴データを鉱山といった現場から離れていても取得することができる。また、前述のように、管理者は、処理履歴データ等を所定のタイミングで取得することができる。したがって、管理者は、ダンプトラック1と物体との衝突が起きないように予防策や改善策を迅速に実行することができる。
【0181】
本実施形態によれば、ベッセル3の積荷の積載状態を考慮して、ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに衝突(追突)する可能性を判断するようにしたので、前方ダンプトラック1Fとの衝突による被害を軽減しつつ、鉱山の生産効率の低下やダンプトラック1の作業効率の低下を抑制することができる。空荷状態のダンプトラック1は、積荷状態のダンプトラック1よりも軽い重量であり、高い走行性能を有する。ダンプトラック1の走行性能は、駆動性能、制動性能、及び旋回性能の少なくとも一つを含む。走行性能が高い空荷状態のダンプトラック1は、走行性能が低い積荷状態のダンプトラック1よりも、物体との衝突による被害を軽減するための処理システム600による処理を十分に実行可能である。衝突による被害を軽減するために、走行性能が高い空荷状態のダンプトラック1の走行が、走行性能が低い積荷状態のダンプトラック1に基づいて制限されると、空荷状態のダンプトラック1の走行が過度に制限されることとなる。その結果、ダンプトラック1の作業効率が低下する可能性がある。例えば、走行が過度に制限されると、空荷状態のダンプトラック1は、走行速度を低減したり走行を停止したりする必要が無いにもかかわらず、走行速度を低減したり走行を停止したりしてしまうこととなる。本実施形態によれば、ダンプトラック1の走行性能に与える影響が大きいベッセル3の積荷の積載状態を考慮して、前方ダンプトラック1Fとの衝突(追突)の可能性が判断されるので、衝突による被害を軽減しつつ、空荷状態のダンプトラック1の走行が過度に制限されることが抑制される。また、積荷状態のダンプトラック1の走行は適切に制限されるため、衝突による被害が軽減される。したがって、ベッセル3の積荷の積載状態が変化しても、ダンプトラック1は、衝突による被害を軽減しつつ、高い作業効率で稼働することができる。
【0182】
本実施形態においては、ベッセル3の積荷の積載状態に基づいて変化する変数としてダンプトラック1の減速度aに着目し、その減速度aに基づいて、ダンプトラック1と前方ダンプトラック1Fとが衝突するまでの時間を推定して、衝突の可能性を判断する。本実施形態において、衝突判断部31は、停止距離通過時間Tsと物体到達時間Taとに基づいて、ダンプトラック1が前方ダンプトラック1Fに衝突するまでの時間を推定する。停止距離通過時間Tsは、変数設定部33で設定されたダンプトラック1の減速度aと、走行状態検出装置10で検出されたダンプトラック1の走行速度Vtとに基づいて導出される。物体到達時間Taは、物体検出装置12の検出結果に基づいて導出される。衝突判断部31は、変数設定部33で設定された減速度aと走行状態検出装置10の検出結果と物体検出装置12の検出結果とに基づいて、前方ダンプトラック1Fと衝突するか否かを推定することができる。これにより、衝突の可能性を適確に判断することができる。
【0183】
本実施形態によれば、停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taを算出し、それら停止距離通過時間Ts及び物体到達時間Taに基づいて、衝突の可能性を判断するようにしたので、衝突の可能性を適確に判断することができる。
【0184】
なお、本実施形態においては、時点データと処理履歴データとを対応付けて記憶する記憶部34が設けられることとした。時点データと処理履歴データとを対応付けて記憶する記憶部34は省略されてもよい。例えば、処理履歴データが外部装置に出力されるタイミングが、処理履歴データの作成が完了した時点に定められている場合、記憶部34は省略可能である。以下の実施形態においても同様である。
【0185】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0186】
図16は、モニタ装置95が記憶又は出力する処理履歴データの一例を示す図である。
図16に示すように、制御信号Cが制御部35から出力された時点データと、処理システム600が実行した処理履歴データと、制御部35から制御信号Cが出力された時点のダンプトラック1の位置データとが対応付けられて記憶又は出力される。出力部95Bは、少なくとも、時点データ、処理履歴データ、位置データ、を出力するようにしてもよい。
【0187】
位置データと処理履歴データとを対応付けることは、位置データと処理の有無とを対応付けること、位置データと処理の内容とを対応付けること、及び位置データと処理の有無と処理の内容とを対応付けること、の少なくとも一つを含む。
【0188】
位置データは、ダンプトラック1が走行した走行路の場所を特定できるものであればよく、場所の名称でもよいし、緯度経度などの数値データでもよい。また、位置データは、緯度経度などの数値データをもとに、鉱山において定義された座標に基づき、その数値データを変換した数値データとしてもよい。緯度経度の数値データに高度のデータを含めてもよい。なお、位置検出装置91が、常時、所定の周期で位置データを求め、制御部35から制御信号Cが出力された場合、その時点に相当するタイミングで位置検出装置91が取得した位置データを記憶又は出力してもよい。あるいは、制御部35から制御信号Cが出力された場合に限り、位置検出装置91が動作し、測定した位置データを記憶又は出力するようにしてもよい。
【0189】
また、制御信号Cが制御部35から出力された時点データと、処理システム600が実行した処理履歴データと、制御部35から制御信号Cが出力された時点のダンプトラック1の車両識別データとが対応付けられて記憶又は出力される。
【0190】
また、制御信号Cが制御部35から出力された時点データと、処理システム600が実行した処理履歴データと、制御部35から制御信号Cが出力された時点のダンプトラック1の運転者WMの運転者識別データとが対応付けられて記憶又は出力される。
【0191】
また、制御信号Cが制御部35から出力された時点データと、処理システム600が実行した処理履歴データと、制御部35から制御信号Cが出力された時点のダンプトラック1の走行状態データとが対応付けられて記憶又は出力される。なお、
図16に示す例では、走行状態データとして、走行速度データが記憶又は出力される。走行方向データ及び進行方向データが記憶又は出力されてもよい。
【0192】
また、制御信号Cが制御部35から出力された時点データと、処理システム600が実行した処理履歴データと、制御部35から制御信号Cが出力された時点のダンプトラック1の積荷の積載状態データとが対応付けられて記憶又は出力される。なお、
図16に示す例では、積荷の積載状態データとして、積荷の有無データが記憶又は出力される。また、積載状態データとして積荷の重量データが記憶又は出力されてもよい。
【0193】
処理履歴データが位置データに対応付けられることにより、ダンプトラック1の管理者は、鉱山の採掘現場において処理システム600が作動したダンプトラック1の位置を把握することができる。これにより、管理者は、ダンプトラック1と物体との衝突が発生する可能性が高い位置を推測することができる。したがって、管理者は、位置データが対応付けられた処理履歴データ(統計データ)を使って、ダンプトラック1と物体との衝突が起きないように予防策又は改善策を講じることができる。例えば、採掘現場のある交差点又はある坂道(以下、所定の位置)において衝突の発生の可能性が高いと判断された場合、ダンプトラック1の走行路HLの変更を実施したり、鉱山の走行路HLの設計を見直したり、その所定の位置の走行路HLの修繕を実施したり、あるいは、その所定の位置の最高速度の規則を見直したり、その所定の位置を走行するダンプトラック1の運転者WMに注意喚起をしたりするなど、鉱山全体を含むダンプトラック1の適切な運行管理、及び運転者WMの適切な労務管理を実行することができる。
【0194】
処理履歴データが車両識別データに対応付けられることにより、処理履歴データと、車両識別データと、策定された運行計画とに基づいて、ダンプトラック1の管理者は、処理履歴データが生成されたダンプトラック1又は処理システム600が作動したダンプトラック1を特定することができる。これにより、管理者は、物体との衝突が発生する可能性が高いダンプトラック1を推測することができる。したがって、管理者は、車両識別データが対応付けられた処理履歴データ(統計データ)を使って、ダンプトラック1と物体との衝突が起きないように予防策又は改善策を講じることができる。例えば、衝突の発生の可能性が高いと判断された、あるダンプトラック1について、そのダンプトラック1を運転する運転者WMに注意喚起をしたりするなど、鉱山全体を含むダンプトラック1の適切な運行管理、及び運転者WMの適切な労務管理を実行することができる。
【0195】
処理履歴データが運転者識別データに対応付けられることにより、処理履歴データと、運転者識別データとに基づいて、ダンプトラック1の管理者は、処理履歴データが生成されたダンプトラック1を運転した運転者WM又は処理システム600が作動したダンプトラック1を運転した運転者WMを特定することができる。これにより、管理者は、物体との衝突が発生する可能性が高い運転を行ったことが推測される運転者WMを把握することができる。したがって、管理者は、運転者識別データが対応付けられた処理履歴データ(統計データ)を使って、ダンプトラック1と物体との衝突が起きないように予防策又は改善策を講じることができる。例えば、ある運転者WMによる運転は、衝突の発生の可能性が高いと推測された場合、その運転者WMに休息を指示したり、安全運転について注意喚起を実行することができる。また、ある運転者WMによる運転の結果、例えば、昼間よりも夜間に多くの処理履歴データが生成されており、夜間での衝突の発生の可能性が高いと推測された場合、その運転者WMに昼勤を指示することができる。あるいは、管理者は、そのような運転者WMの勤務時間を短縮したりすることもできる。このように、鉱山全体を含むダンプトラック1の適切な運行管理、及び運転者WMの適切な労務管理を実行することができる。
【0196】
処理履歴データがダンプトラック1の走行状態データに対応付けられることにより、ダンプトラック1の管理者は、処理システム600が作動したダンプトラック1の走行状態を把握することができる。これにより、管理者は、物体との衝突が発生する可能性が高いダンプトラック1の走行状態を把握することができる。したがって、管理者は、走行状態データに対応付けられた処理履歴データ(統計データ)を使って、ダンプトラック1と物体との衝突を抑制するための対策を講じることができる。例えば、ある走行速度以上でダンプトラック1が走行したときに衝突の発生の可能性が高いと判断された場合、そのダンプトラック1の運転者WMに制限速度遵守を指示することができる。あるいは、走行状態データから、例えば、今までは走行速度が高くなりやすかった下り坂の勾配を緩やかに改修したりといった、走行路HLの設計変更を施すことができる。このように、鉱山全体を含むダンプトラック1の適切な運行管理、及び運転者WMの適切な労務管理を実行することができる。
【0197】
処理履歴データがダンプトラック1の走行状態データに対応付けられることにより、ダンプトラック1の管理者は、処理システム600が作動したダンプトラック1の積載状態を把握することができる。これにより、管理者は、物体との衝突が発生する可能性が高いダンプトラック1の積載状態を把握することができる。したがって、管理者は、走行状態データに対応付けられた処理履歴データ(統計データ)を使って、ダンプトラック1と物体との衝突が起きないように予防策あるいは改善策を講じることができる。例えば、積載状態データが積荷無しであることを示し、処理履歴データに対応付けられていたのであれば、各運転者WMに対し、排土場DPAから積込場LPAへの移動の時、すなわち、積荷無しでの走行時に、速度を出しすぎないようにすることや前方の物体に注意することを喚起することができる。例えば、積荷の重量データに基づいて、積載状態データが過積載を示し、処理履歴データが対応付けられていたのであれば、そのダンプトラック1の運転者WMに制限積載量遵守を指示することができる。このように、鉱山全体を含むダンプトラック1の適切な運行管理、及び運転者WMの適切な労務管理を実行することができる。
【0198】
出力部95Bは、時点データと位置データと処理履歴データとを対応付けて出力してもよい。あるいは、出力部95Bは、時点データと処理履歴データとを対応付けて出力し、位置データは対応付けなくてもよい。もしくは、出力部95Bは、位置データと処理履歴データとを対応付けて出力し、時点データは対応付けなくてもよい。出力部95Bは、制御部35から信号が出力された時点データと処理システム600の処理の実行状況を示す処理履歴データとを対応付けて出力してもよい。出力部95Bは、制御部35から信号が出力されたダンプトラック1の位置データと処理システム600の処理の実行状況を示す処理履歴データとを対応付けて出力してもよい。
【0199】
上述のように、処理システム600の処理の実行状況を示す処理履歴データは、処理システム600の処理の有無、処理システム600が実行した処理の内容、処理システム600の処理の有無及び処理システム600が実行した処理の内容の両方、のいずれか一つを示す。
【0200】
時点データと処理履歴データとを対応付けることは、時点データと処理の有無とを対応付けること、時点データと処理の内容とを対応付けること、及び時点データと処理の有無と処理の内容とを対応付けること、の少なくとも一つを含む。
【0201】
位置データと処理履歴データとを対応付けることは、位置データと処理の有無とを対応付けること、位置データと処理の内容とを対応付けること、及び位置データと処理の有無と処理の内容とを対応付けること、の少なくとも一つを含む。
【0202】
時点データと位置データと処理履歴データとを対応付けることは、時点データと位置データと処理の有無とを対応付けること、時点データと位置データと処理の内容とを対応付けること、及び時点データと位置データと処理の有無と処理の内容とを対応付けること、の少なくとも一つを含む。
【0203】
なお、上述の各実施形態において、ダンプトラック1は、車体5が前部と後部に分割され、それら前部と後部とが自由関節で結合されたアーティキュレート式のダンプトラックでもよい。
【0204】
なお、上述の各実施形態において、ダンプトラック1は、鉱山の採掘現場のみならず、例えば、ダムの建設現場等で用いられてもよい。