【実施例】
【0037】
<蛍光体製造例1>
上記のSi
6-zAl
zO
zN
8-z:Euで表わされる組成式(I)において、z=0.06となり、Euの固溶量が0.1原子%となるように、Euが賦活されたEu賦活β型サイアロン蛍光体を得るべく、以下の調製を行なった。
【0038】
まず、網目の大きさが45μmの篩を通した金属Si粉末、窒化アルミニウム粉末および酸化ユーロピウム粉末が、それぞれ、金属Si粉末93.59重量%、窒化アルミニウム粉末5.02重量%および酸化ユーロピウム粉末1.39重量%の組成となるように所定量秤量した。そして、これらの粉末をメノウ製の乳鉢に入れて、乳棒を用いて10分以上混合して、粉体凝集体を得た。この粉体凝集体を、直径20mmおよび高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに自然落下させて入れた。
【0039】
次に、粉体凝集体が収容されたるつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットし、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱した。そして、るつぼの温度が800℃となった時点で、純度が99.999体積%の窒素を焼成雰囲気に導入して圧力を0.5MPaとした後、毎時500℃で1300℃まで昇温し、その後毎分1℃で1600℃まで昇温し、さらにその温度で8時間保持した。その後、上記のようにして得られた試料をメノウ製乳鉢によって粉末に粉砕し、粉末試料を得た。
【0040】
次に、上記のようにして得られた粉末試料を1600℃で焼成した。1600℃で焼成した粉末試料を窒化ケイ素製の乳鉢と乳棒とを用いて粉砕した後に、直径20mmおよび高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに自然落下させて入れた。
【0041】
次に、上記焼成後の粉末試料が収容されたるつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットし、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱した。そして、るつぼの温度が800℃となった時点で、純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとした後、毎時500℃で2000℃まで昇温し、さらにその温度で10時間保持して、蛍光体前駆体試料を得た。
【0042】
次に、上記のようにして得られた蛍光体前駆体試料3gを、内径20mmおよび深さ20mmのBN製のルツボに充填し、管状炉を用いて、大気圧のAr雰囲気中1500℃、8時間の加熱処理を施した。そして、濃度50%フッ化水素酸と濃度70%硝酸とを体積比1:1で混合して作製した混合溶液を用い、混合溶液の温度が80℃の条件で、上記の加熱処理後の粉末を1時間洗浄処理することによって、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を得た。
【0043】
次に、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体のX線回折パターンをCuのK−α線を用いた(株)リガク製のX線回折装置により調べたところ、β型サイアロンが生成していることが確認された。
【0044】
また、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を、幅10mm×長さ10mm×深さ50mmの大きさの石英セルにタッピングにより最蜜充填し、蛍光分光光度計((株)堀場製作所製:Fluoromax4)を用いて、波長450nmの光により励起した際の発光スペクトルを測定した。その結果、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体については、
図3に示す発光スペクトルが得られ、
図3に示す発光スペクトルの発光強度を励起波長でプロットすることによって、
図4に示す励起スペクトルが得られた。
【0045】
さらに、上記のようにして得られた製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体の一次粒子の50%面積平均径をEBSP法を利用して、上述の式(II)を用いて算出したところ、5μmであった。
【0046】
<蛍光体製造例2>
製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を蒸留水中に分散させ、目開き10μmのナイロンメッシュを用いて、粒子径の小さいEu賦活β型サイアロン蛍光体粒子を取り除くことによって、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体を得た。
【0047】
そして、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体と同一の方法および同一の条件で、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の発光スペクトルを求めたところ、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の発光ピーク強度の大きさは、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体の発光ピーク強度の103%であり、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体の発光ピーク強度よりも大きくなっていた。
【0048】
また、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体と同一の方法で、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の一次粒子の50%面積平均径を算出したところ、11μmであった。
【0049】
<波長変換部製造例1>
製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を、シリコーン樹脂(KER−2500:信越化学工業(株)製)に対して10重量%の比率で混合し、深さ1mmおよび直径10mmのフッ素樹脂により形成された型に流し込み、80℃で30分間、150℃で1時間加熱した後に、型から取り出すことによって、製造例1の波長変換部を作製した。
【0050】
図5に、上記のようにして作製した製造例1の波長変換部を、窒化物半導体発光素子である青色LED(Light Emitting Diode)から発せられた励起光で励起した際の発光スペクトルを示す。
【0051】
ここで、
図5に示される発光スペクトルは、分光光度計(大塚電子(株)製:MCPD−2000)を接続した内径30cmφの積分球の中で、励起光のピーク波長が450nmである上記の青色LEDの光出射面上に製造例1の波長変換部を設置し、青色LEDを駆動電流20mAおよび駆動電圧3.2Vで駆動することにより測定したものである。
【0052】
<波長変換部製造例2>
製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体に代えて、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いたこと以外は製造例1の波長変換部と同様にして、製造例2の波長変換部を作製した。
【0053】
そして、製造例1の波長変換部と同一の方法および同一の条件で、製造例2の波長変換部の発光スペクトルを求めた。その結果を
図6に示す。
【0054】
<波長変換部製造例3>
製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体に代えて製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いるとともに、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体のシリコーン樹脂(KER−2500:信越化学工業(株)製)に対する混合比率を11.2重量%としたこと以外は製造例1の波長変換部と同様にして、製造例3の波長変換部を作製した。
【0055】
そして、製造例1の波長変換部と同一の方法および同一の条件で、製造例3の波長変換部の発光スペクトルを求めた。その結果を
図7に示す。
【0056】
<波長変換部の評価>
図5〜
図7の発光スペクトルに基づき、発光スペクトルの測定装置に付属していたソフトウェアを用いて、製造例1〜3の波長変換部の特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いて作製された製造例1の波長変換部から発光した光の光束を100としたときの、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いて作製された製造例2〜3の波長変換部から発光した光の光束の相対値は100未満となっており、波長変換部の外部に取り出すことができる光の光束が少なくなっていることが確認された。
【0059】
これは、製造例1の波長変換部と製造例2の波長変換部との比較において、表1に示すように、製造例2の波長変換部の方が、製造例1の波長変換部と比べて、CIExおよびCIEyの値が小さくなっていることからも明らかである。すなわち、製造例2の波長変換部は、製造例1の波長変換部と比較して、励起光の透過光に起因する波長450nmの発光ピーク強度が大きく、Eu賦活β型サイアロン蛍光体の蛍光に起因する波長540nm付近の発光ピーク強度が小さくなっている。
【0060】
すなわち、シリコーン樹脂中に、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体は、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体と比較して、シリコーン樹脂に対して同一の重量比率で混合して波長変換部を作製したときの励起光の吸収率が低いことがわかる。
【0061】
次に、製造例1の波長変換部と製造例3の波長変換部とを比較すると、表1に示す色度点を比べても両者に違いは見られないが、光束の相対値は、製造例3の波長変換部の方が低くなっている。
【0062】
すなわち、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いて作製された製造例3の波長変換部は、励起光源として上記の青色LEDを用いて励起した際に、製造例1の波長変換部と色度点が同一になるように、シリコーン樹脂に対する重量比率を調整した場合でも製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いて作製された製造例1の波長変換部よりも発光の光束の相対値が低くなっている。これは、製造例3の波長変換部は、製造例1の波長変換部と比較して、Eu賦活β型サイアロン蛍光体の分散量が増大しているため、Eu賦活β型サイアロン蛍光体による不要な散乱および吸収の影響が増大していることに起因することによるものである。
【0063】
表1に示す結果から、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体は、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体と比べて、蛍光体としての発光ピーク強度は大きい。しかしながら、上述のとおり、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体をシリコーン樹脂中に分散して波長変換部を構成し、青色LEDから発せられた励起光で励起した場合には、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いて作製された製造例1の波長変換部から発光する光の方が光束が多くなることがわかる。
【0064】
以上の結果に示されるように、Eu賦活β型サイアロン蛍光体は、Eu賦活β型サイアロン蛍光体の一次粒子の50%面積平均径を大きくしていって、蛍光体の発光ピーク強度を増大させた場合であっても、青色LEDからの励起光の光束増大に対して、Eu賦活β型サイアロン蛍光体の発光ピーク強度増大が寄与しにくい、といった課題を有している。
【0065】
Eu賦活β型サイアロン蛍光体は、
図4に示すように、波長450nm付近の青色光よりも、波長350nm付近の近紫外領域の光による励起効率が高く、青色光で励起した際の励起効率が実用蛍光体としては低いため、上記のような特有の課題を有している。
【0066】
本発明者らは、Eu賦活β型サイアロン蛍光体を白色LED用緑色蛍光体として実用化する過程において、Eu賦活β型サイアロン蛍光体の発光ピーク強度を増大させる検討を行い、発光装置の試作を重ねる中で、Eu賦活β型サイアロン蛍光体を透明部材に分散させる際の新たな課題と、その解決手段を見出した。
【0067】
すなわち、本発明の発光装置においては、Eu賦活β型サイアロン蛍光体を透明部材に分散して、青色光を発する半導体発光素子からなる励起光源とともに用いる際に、励起光源の発する励起光のピーク波長における散乱確率が0.1mm
-1以上0.5mm
-1以下である散乱部材とともに透明部材に分散された状態で封入することによって、従来よりも発光効率の高いEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いた発光装置を実現することができる。
【0068】
以下に、Eu賦活β型サイアロン蛍光体が半導体発光素子からなる励起光源の発する励起光のピーク波長における散乱確率が0.1mm
-1以上0.5mm
-1以下である散乱部材とともに、透明部材に分散された状態で封止されている発光装置の具体的構成例について述べる。
【0069】
<比較例1>
図12の模式的断面図に示すように、発光装置から散乱部材14を除去し、透明部材5を構成するシリコーン樹脂に対するEu賦活β型サイアロン蛍光体13の重量比率を6.3重量%として比較例1の発光装置を作製した。
【0070】
また、比較例1の発光装置において、励起光源2となる半導体発光素子は、窒化物半導体積層構造体6中の活性層としてInGaN層を有し、InGaN層を挟んで、n側電極7とp側電極8とが設けられており、ピーク波長が450nmの光を発光する。
【0071】
また、比較例1の発光装置において、Eu賦活β型サイアロン蛍光体13として、製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用い、透明部材5として、屈折率が1.42で、比重が1の市販品のシリコーン樹脂(信越化学工業(株)製:KER−2500)を用いた。なお、上述のように、比較例1の発光装置においては、シリコーン樹脂からなる透明部材5中に散乱部材14を含めず、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を6.3重量%として分散させた。
【0072】
<実施例1>
図1に示すように透明部材5としてのシリコーン樹脂中に散乱部材14を封入するとともに、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を5.9重量%としたこと以外は比較例1と同様にして、実施例1の発光装置を作製した。
【0073】
実施例1の発光装置において、散乱部材14は、シリコーン樹脂に対する散乱部材14の重量比率が0.05重量%となるようにシリコーン樹脂中に封入された。また、散乱部材14としては、平均粒子径が2μmであって、波長450nmの光に対する散乱効率が0.19mm
-1である屈折率が1.8のY
2O
3粒子(日本高純度化学(株)製)を用いた。
【0074】
<実施例2>
図1に示すように透明部材5としてのシリコーン樹脂中に散乱部材14を封入するとともに、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を5.9重量%としたこと以外は比較例1と同様にして、実施例2の発光装置を作製した。
【0075】
実施例2の発光装置において、散乱部材14は、シリコーン樹脂に対する散乱部材14の重量比率が0.1重量%となるようにシリコーン樹脂中に封入された。また、散乱部材14としては、平均粒子径が2μmであって、波長450nmの光に対する散乱効率が0.38mm
-1である屈折率が1.8のY
2O
3粒子(日本高純度化学(株)製)を用いた。
【0076】
<実施例3>
図1に示すように透明部材5としてのシリコーン樹脂中に散乱部材14を封入するとともに、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を6.2重量%としたこと以外は比較例1と同様にして、実施例3の発光装置を作製した。
【0077】
実施例3の発光装置において、散乱部材14は、シリコーン樹脂に対する散乱部材14の重量比率が0.1重量%となるようにシリコーン樹脂中に封入された。また、散乱部材14としては、平均粒子径が3.9μmであって、波長450nmの光に対する散乱効率が0.19mm
-1である屈折率が1.8のY
2O
3粒子(日本高純度化学(株)製)を用いた。
【0078】
<比較例2>
図1に示すように透明部材5としてのシリコーン樹脂中に散乱部材14を封入するとともに、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を5.2重量%としたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の発光装置を作製した。
【0079】
比較例2の発光装置において、散乱部材14は、シリコーン樹脂に対する散乱部材14の重量比率が0.26重量%となるようにシリコーン樹脂中に封入された。また、散乱部材14としては、平均粒子径が2μmであって、波長450nmの光に対する散乱効率が0.99mm
-1である屈折率が1.8のY
2O
3粒子(日本高純度化学(株)製)を用いた。
【0080】
<比較例3>
図1に示すように透明部材5としてのシリコーン樹脂中に散乱部材14を封入するとともに、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を5重量%としたこと以外は比較例1と同様にして、比較例3の発光装置を作製した。
【0081】
比較例3の発光装置において、散乱部材14は、シリコーン樹脂に対する散乱部材14の重量比率が0.42重量%となるようにシリコーン樹脂中に封入された。また、散乱部材14としては、平均粒子径が2μmであって、波長450nmの光に対する散乱効率が1.58mm
-1である屈折率が1.8のY
2O
3粒子(日本高純度化学(株)製)を用いた。
【0082】
<比較例4>
図1に示すように透明部材5としてのシリコーン樹脂中に散乱部材14を封入したこと以外は比較例1と同様にして、比較例4の発光装置を作製した。
【0083】
比較例4の発光装置において、散乱部材14は、シリコーン樹脂に対する散乱部材14の重量比率が0.1重量%となるようにシリコーン樹脂中に封入された。また、散乱部材14としては、平均粒子径が9.7μmであって、波長450nmの光に対する散乱効率が0.06mm
-1である屈折率が1.8のY
2O
3粒子(日本高純度化学(株)製)を用いた。
【0084】
<比較例5>
図1に示すように透明部材5としてのシリコーン樹脂中に散乱部材14を封入するとともに、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を5.6重量%としたこと以外は比較例1と同様にして、比較例5の発光装置を作製した。
【0085】
比較例5の発光装置において、散乱部材14は、シリコーン樹脂に対する散乱部材14の重量比率が1重量%となるようにシリコーン樹脂中に封入された。また、散乱部材14としては、平均粒子径が9.7μmであって、波長450nmの光に対する散乱効率が0.63mm
-1である屈折率が1.8のY
2O
3粒子(日本高純度化学(株)製)を用いた。
【0086】
<比較例6>
製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体に代えて、製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用い、シリコーン樹脂に対する製造例1のEu賦活β型サイアロン蛍光体の重量比率を5.8重量%としたこと以外は比較例1と同様にして、比較例6の発光装置を作製した。
【0087】
<その他>
なお、上記の実施例1〜3および比較例2〜5の発光装置において、シリコーン樹脂に対する製造例2のEu賦活β型サイアロン蛍光体の濃度は、実施例1〜3および比較例2〜5の発光装置の発光スペクトルより計算される色度点が、比較例1の発光装置の色度点付近となるように調整された。
【0088】
また、上記の実施例1〜3および比較例2〜5の発光装置におけるY
2O
3粒子の粒子径はナイロン製のふるいを用いて調整され、Y
2O
3粒子の平均粒子径はレーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製:LA−950)を用い、装置付属のソフトウェアにより測定した。
図8に平均粒子径が2μmのY
2O
3粒子の粒度分布を示し、
図9に平均粒子径が3.9μmのY
2O
3粒子の粒度分布を示し、
図10に平均粒子径が9μmのY
2O
3粒子の粒度分布を示す。
【0089】
また、Y
2O
3粒子の屈折率(絶対屈折率)の値は文献値を用い、Y
2O
3粒子の散乱確率は非特許文献1を参照して作製した自作のソフトウェアを用いて計算した。
【0090】
<評価>
上記のようにして作製した実施例1〜3および比較例2〜6の発光装置の色度点(CIExおよびCIEy)と光束の相対値とを測定した。その結果を表2に示す。また、
図11に、実施例1〜3および比較例2〜5の発光装置の散乱部材の散乱確率と発光装置の光束の相対値との関係を示す。なお、光束の相対値は、比較例6の発光装置の光束を100としたときの相対値である。
【0091】
【表2】
【0092】
表2および
図11に示すように、実施例1〜3の発光装置は、比較例2〜6の発光装置と比較して、光束が増大することが確認された。これは、Eu賦活β型サイアロン蛍光体の一次粒子の50%面積平均径を大きくすることによってEu賦活β型サイアロン蛍光体の発光強度増加分が発光装置の光束増大に寄与しにくいという、Eu賦活β型サイアロン蛍光体特有の課題が、適切な散乱確率を示す散乱部材を添加することにより、解決されたことを示している。
【0093】
<まとめ>
本発明は、透明部材と、透明部材中に設けられた、励起光源と、Eu賦活β型サイアロン蛍光体と、散乱部材と、を備え、Eu賦活β型サイアロン蛍光体の一次粒子の50%面積平均径が10μm以上であり、励起光源から発せられる励起光のピーク波長における散乱部材の散乱確率が0.1mm
-1以上0.5mm
-1以下であって、Eu賦活β型サイアロン蛍光体は、散乱部材とともに、透明部材中に分散された状態で封入されている発光装置である。このような構成とすることにより、一次粒子径が10μm以上といった大粒子径のEu賦活β型サイアロン蛍光体を用いた場合でも、発光装置の発光効率を向上させることができる。
【0094】
また、本発明の発光装置において、励起光のピーク波長は、420nm以上480nm以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、発光装置の発光効率をより向上することができる。
【0095】
また、本発明の発光装置において、透明部材は、シリコーン樹脂であることが好ましい。このような構成とすることにより、発光装置から取り出すことができる光束を増大させて発光装置の発光効率をより向上することができる。
【0096】
また、本発明の発光装置において、散乱部材は、金属酸化物であることが好ましい。このような構成とすることにより、発光装置の発光効率をより向上することができる。
【0097】
また、本発明の発光装置において、散乱部材の屈折率は、1.5以上であることが好ましい。このような構成とすることにより、励起光源から発せられる励起光を散乱部材で効果的に散乱することができ、透明部材中に分散された状態のEu賦活β型サイアロン蛍光体に励起光を高効率で吸収させることができるため、発光装置の発光効率をより向上することができる。
【0098】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0099】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。