特許第6010642号(P6010642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010642
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃焼制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/06 20060101AFI20161006BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20161006BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20161006BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20161006BHJP
   F02P 3/00 20060101ALI20161006BHJP
   F02P 15/10 20060101ALI20161006BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20161006BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   F02D41/06 305
   F02D43/00 301E
   F02D43/00 301B
   F02D45/00 312B
   F02D43/00 301U
   F02D43/00 301G
   F02P5/15 E
   F02P3/00 H
   F02P15/10 301D
   F01N3/20 D
   F01N3/24 U
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-17145(P2015-17145)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-187439(P2015-187439A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-46310(P2014-46310)
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105119
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 孝治
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】英 寿
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−257479(JP,A)
【文献】 特開昭53−112774(JP,A)
【文献】 特開2007−032317(JP,A)
【文献】 特開昭58−210365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 −41/40
F02D 43/00 −45/00
F02P 1/00 − 3/12
F02P 5/145− 5/155
F02P 7/00 −17/12
F01N 3/20
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金を含む三元触媒が排気通路に設けられた内燃機関の燃焼制御装置において、
前記機関の燃焼室内の混合気の火花点火を行う火花点火手段と、
前記燃焼室内に均質かつ希薄な混合気を形成する均質希薄混合気形成手段と、
前記機関の始動直後において前記三元触媒の昇温を促進するための第1昇温促進制御を、制御切換時期まで実行する第1昇温促進制御手段と、
前記三元触媒の昇温を促進するための第2昇温促進制御を、前記制御切換時期後に実行する第2昇温促進制御手段とを備え、
前記火花点火手段は、点火プラグと、該点火プラグに放電を発生させるための複数の点火コイル対とを備え、前記点火プラグにおける放電の開始時期及び継続時間を変更可能なものであり、
前記第1昇温促進制御手段は、前記機関の吸入空気量を増加させ、前記混合気の空燃比を理論空燃比よりリーン側の第1リーン空燃比に制御するとともに前記点火プラグの放電開始時期を最適点火時期より遅角側の所定遅角点火時期に設定することによって前記第1昇温促進制御を実行し、
前記第2昇温促進制御手段は、前記空燃比を前記第1リーン空燃比よりさらにリーン側の第2リーン空燃比に制御し、前記放電開始時期を前記所定遅角点火時期よりさらに遅角するとともに、前記点火プラグの放電継続時間を増加させることを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項2】
前記三元触媒の温度と相関のある触媒温度パラメータを取得する温度パラメータ取得手段を備え、
前記制御切換時期は、前記触媒温度パラメータが所定温度に達する時期であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項3】
前記第2昇温促進制御手段は、前記触媒温度パラメータが高くなるほど前記空燃比を減少させ、前記放電開始時期を進角させるとともに前記放電継続時間を減少させることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項4】
前記燃焼室内に吸入された混合気の流動を生成する流動生成手段をさらに備え、
前記第2昇温促進制御手段は、前記第2昇温促進制御の開始時は、前記流動の強度を比較的高く制御し、前記空燃比を前記第1リーン空燃比近傍まで減少させた時点から前記流動の強度を徐々に低下させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【請求項5】
前記均質希薄混合気形成手段は、燃料を微粒化して噴射可能な燃料噴射弁を用いて、前記機関の吸気通路内に燃料を噴射することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化用の三元触媒を有する内燃機関の燃焼制御装置に関し、特に内燃機関の冷間始動時に三元触媒の活性化を早めるための触媒昇温促進制御を行う燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気通路に三元触媒を有する内燃機関の冷間始動時に、触媒昇温促進制御を実行する燃焼制御装置が示されている。この装置によれば、機関の吸入空気量を増加させ、燃焼室内の混合気の空燃比を理論空燃比よりリーン側に制御するとともに点火時期を最適点火時期(機関出力が最大となる点火時期)より遅角側の点火時期に設定することによって、三元触媒の昇温が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−188500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機関の冷間始動時は、空燃比をリーン空燃比に設定して点火時期の遅角制御を行うと、燃焼が不安定化し易いことから、燃焼が不安定化しないように点火時期の遅角量を比較的小さく設定することが必要となる。その結果、上記特許文献1に示された昇温促進制御では、機関から排出されて三元触媒に流入する排気の温度を十分に高くすることができないため、昇温促進制御を長時間(例えば100秒以上)実行することが必要となり、燃費を悪化させる要因となっていた。
【0005】
本発明はこの点に着目してなされたもので、機関の冷間始動時における触媒昇温促進制御をより適切に実行し、燃費を向上させることができる燃焼制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、白金を含む三元触媒(10)が排気通路(9)に設けられた内燃機関の燃焼制御装置において、前記機関の燃焼室(1a)内の混合気の火花点火を行う火花点火手段(7,8)と、前記燃焼室内に均質かつ希薄な混合気を形成する均質希薄混合気形成手段(5,6)と、前記機関の始動直後において前記三元触媒(10)の昇温を促進するための第1昇温促進制御を、制御切換時期(t1)まで実行する第1昇温促進制御手段と、前記三元触媒(10)の昇温を促進するための第2昇温促進制御を、前記制御切換時期(t1)後に実行する第2昇温促進制御手段とを備え、前記火花点火手段は、点火プラグ(8)と、該点火プラグに放電を発生させるための複数の点火コイル対(71,72)とを備え、前記点火プラグ(8)における放電の開始時期(CAIG)及び継続時間(TSPK)を変更可能なものであり、前記第1昇温促進制御手段は、前記機関の吸入空気量を増加させ、前記混合気の空燃比(AF)を理論空燃比よりリーン側の第1リーン空燃比(AFTRA1)に制御するとともに前記点火プラグの放電開始時期(CAIG)を最適点火時期より遅角側の所定遅角点火時期(CATRA1)に設定することによって前記第1昇温促進制御を実行し、前記第2昇温促進制御手段は、前記空燃比(AF)を前記第1リーン空燃比(AFTRA1)よりさらにリーン側の第2リーン空燃比(AFTRA2)に制御し、前記放電開始時期(CAIG)を前記所定遅角点火時期(CATRA1)よりさらに遅角するとともに、前記点火プラグの放電継続時間(TSPK)を増加させることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、機関の始動直後において三元触媒の昇温を促進するための第1昇温促進制御が制御切換時期まで実行され、制御切換時期後は、三元触媒の昇温を促進するための第2昇温促進制御が実行される。第1昇温促進制御では、機関の吸入空気量を増加し、空燃比を理論空燃比よりリーン側の第1リーン空燃比に制御するとともに点火プラグの放電開始時期を最適点火時期より遅角側の所定遅角点火時期に設定する制御が行われ、第2昇温促進制御では、空燃比を第1リーン空燃比よりさらにリーン側の第2リーン空燃比に制御し、放電開始時期を所定遅角点火時期よりさらに遅角するとともに、点火プラグの放電継続時間を増加させる制御が行われる。白金を含む三元触媒は、空燃比を従来の触媒昇温促進制御における設定空燃比(例えば「16」)よりさらにリーン側(例えば「22」程度)に設定することによって、より低い温度で活性化可能であり、三元触媒の温度がある程度高くなる制御切換時期以後において第2昇温促進制御を行うことによって、三元触媒の活性化を早めることができる。したがって、空燃比をよりリーン化すること及び触媒促進制御の実行時間を短縮することによって、燃費を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記三元触媒の温度(TCAT)と相関のある触媒温度パラメータ(TCAT)を取得する温度パラメータ取得手段を備え、前記制御切換時期(t1)は、前記触媒温度パラメータ(TCAT)が所定温度(TCATL)に達する時期であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、制御切換時期は触媒温度パラメータが所定温度に達する時期に設定される。第2昇温促進制御が有効となるのは、三元触媒の温度が所定温度に達した時点以後であるため、触媒温度パラメータが所定温度を超えた時点から第2昇温促進制御を実行することによって、顕著な昇温促進効果が得られる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記第2昇温促進制御手段は、前記触媒温度パラメータ(TCAT)が高くなるほど前記空燃比(AF)を減少させ、前記放電開始時期(CAIG)を進角させるとともに前記放電継続時間(TSPK)を減少させることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、触媒温度パラメータが高くなるほど空燃比を減少させ、放電開始時期を進角させるとともに放電継続時間を減少させる制御が行われる。白金を含む三元触媒は、触媒温度が高くなると、空燃比がより理論空燃比に近いほど浄化性能が高くなる特性を有するので、触媒温度パラメータが高くなるほど空燃比を減少させることによって、高い浄化性能を得ることができる。また、空燃比を減少させることによって放電開始時期の進角及び放電継続時間の短縮を行っても安定した燃焼が得られるので、放電開始時期を可能な限り進角させるとともに放電継続時間を減少させることによって機関出力を増加させ、エネルギ効率を高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記燃焼室内に吸入された混合気の流動を生成する流動生成手段(2a,4)をさらに備え、前記第2昇温促進制御手段は、前記第2昇温促進制御の開始時は、前記流動の強度を比較的高く制御し、前記空燃比を前記第1リーン空燃比(AFTRA1)近傍まで減少させた時点(t2)から前記流動の強度を徐々に減少させることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第2昇温促進制御の開始時は、流動の強度が比較的高くなるように制御され、空燃比が第1リーン空燃比近傍まで減少させた時点から流動の強度を徐々に減少させる制御が行われる。空燃比を減少させる制御によって、流動の強度を低下させても燃焼が不安定となることがなくなるので流動の強度を低下させて、燃焼時の熱損失を低減し、熱効率の向上を図ることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記均質希薄混合気形成手段は、燃料を微粒化して噴射可能な燃料噴射弁(6)を用いて、前記機関の吸気通路(2)内に燃料を噴射することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、燃料を微粒化して噴射可能な燃料噴射弁を用いて、機関の吸気通路内に燃料が噴射されるので、均質度の高い混合気を形成し、その均質希薄混合気を火花点火によって確実に着火させて、NOx排出量が少なく高効率の燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
図2】吸気通路に設けられるタンブル流動制御弁(4)の配置を説明するための図である。
図3】1つの気筒に対応する点火回路ユニット(7)の構成を示す回路図である。
図4】燃料噴射弁(6)によって噴射される燃料の噴射状態を説明するための図である。
図5】燃料噴射弁(6)の開弁時期、開弁時間(TFI)、及び開弁時のリフト量(LFT)を示す図である。
図6】圧縮行程及び燃焼行程における筒内圧(PCYL)の推移を示す図である。
図7】空燃比(AF)と三元触媒の活性化温度(TACT)との関係を示す図である。
図8】三元触媒の温度(TCAT)と、HC浄化率(ηHC)との関係を示す図である。
図9】三元触媒の昇温促進制御処理のフローチャートである。
図10図9の処理で参照されるテーブルを示す図である。
図11図9の昇温促進制御の動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の構成を示す図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気通路2の途中にはスロットル弁3が配置されている。スロットル弁3はアクチュエータ19によって駆動可能に構成されており、アクチュエータ19は電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に接続されている。スロットル弁3の開度は、アクチュエータ19を介してECU5によって制御される。吸気通路2のスロットル弁3の下流側には、燃料噴射弁6が各気筒に対応して設けられており、その作動はECU5により制御される。
【0018】
図2に示すように、吸気通路2の、吸気弁21の直ぐ上流側には、隔壁2aと、隔壁2aによって形成される一方の流路に配置されたタンブル流動制御弁4とが設けられており、タンブル流動制御弁4はアクチュエータ4aによって開閉駆動可能に構成されている。アクチュエータ4aはECU5に接続されており、その作動はECU5によって制御される。タンブル流動制御弁4によって、燃焼室1a内に混合気のタンブル流動が生成される。
【0019】
エンジン1の各気筒には点火プラグ8が装着されており、点火プラグ8は点火回路ユニット7を介してECU5に接続されている。ECU5は、後述するように点火プラグ8における放電開始時期CAIG及び放電継続時間TSPKの制御を行う。
【0020】
ECU5には、エンジン1の吸入空気流量GAIRを検出する吸入空気流量センサ11、吸気温TAを検出する吸気温センサ12、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ13、吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ14、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ15、及び図示しない他のセンサ(例えばエンジン1により駆動される車両のアクセルペダル操作量APを検出するアクセルセンサ、車速センサなど)が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
【0021】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ16が接続されており、クランク軸の回転角度に応じたパルス信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ16は、クランク角度位置を示す複数のパルス信号を出力するものであり、このパルス信号は、燃料噴射時期、点火時期(点火プラグ8の放電開始時期)等の各種タイミング制御、及びエンジン回転数NEの検出に使用される。
【0022】
排気通路9には排気浄化用の白金を含む三元触媒10が設けられている。三元触媒10には、三元触媒10の温度(以下「触媒温度」という)TCATを検出する触媒温度センサ18が装着されており、その検出信号はECU5に供給される。三元触媒10の上流側であって各気筒に連通する排気マニホールドの集合部より下流側には、比例型酸素濃度センサ17(以下「LAFセンサ17」という)が装着されており、このLAFセンサ17は排気中の酸素濃度(空燃比AF)にほぼ比例した検出信号を出力し、ECU5に供給する。
【0023】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(CPU)、該CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、燃料噴射弁6、点火回路ユニット7、アクチュエータ4aなどに駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0024】
燃料噴射弁6による燃料噴射量は、吸入空気流量GAIRに応じて算出される基本燃料量を、LAFセンサ17により検出される空燃比AFに応じた空燃比補正係数KAFによって補正することによって制御される。空燃比補正係数KAFは、検出される空燃比AFが目標空燃比AFCMDと一致するように算出される。
【0025】
ECU5は、アクセルペダル操作量APなどに応じてスロットル弁3の目標開度THCMDを算出し、検出されるスロットル弁開度THが目標開度THCMDと一致するようにアクチュエータ19の駆動制御を行う。
【0026】
図3は、1つの気筒に対応する点火回路ユニット7の構成を示す回路図であり、点火回路ユニット7は、一次コイル71a及び二次コイル71bからなる第1コイル対71と、一次コイル72a及び二次コイル72bからなる第2コイル対72と、バッテリ30の出力電圧VBATを昇圧して昇圧電圧VUPを出力する昇圧回路73と、一次コイル71a,72aの通電制御を行うトランジスタQ1,Q2と、二次コイル71b,72bと点火プラグ8との間に接続されたダイオードD1,D2とを備えている。
【0027】
トランジスタQ1,Q2のベースはECU5に接続されており、ECU5によってオンオフ制御(一次コイルの通電制御)が行われる。2つの一次コイルの通電期間の一部を重複させてつつ交互に通電を行うことによって、点火プラグ8における放電の継続時間(放電継続時間)TSPKをエンジン1の運転状態に応じて変更することができる。また一次コイルの最初の通電終了時期が放電開始時期CAIGに相当し、放電開始時期CAIGもエンジン1の運転状態に応じて変更可能である。
【0028】
燃料噴射弁6は、燃料を微粒化して噴射可能なものであり、SMD(Sauter Mean Diameter:ザウター平均直径)が35μm程度(燃圧350kPaで噴射し、噴射口からの50mm下におけるSMD)の特性を有し、弁の開度(リフト量)を少なくとも2段階に変更可能なものを使用する。図4(a)は、この燃料噴射弁6による燃料の噴射状態(噴射された燃料の拡散状態)を模式的に示し、図4(b)は比較のために示す通常の燃料噴射弁による燃料の噴射状態を示す。通常の燃料噴射弁では、円錐状に分布する燃料の周辺部の燃料濃度が高くなるのに対し、燃料噴射弁6では微粒化した燃料の到達距離が短くなり、かつ拡散領域内における濃度分布の均質度が高く(濃度差が少なく)なる。
【0029】
図5は、燃料噴射弁6の開弁時期、開弁時間TFI及び開弁時のリフト量LFTを示す図であり、横軸はクランク角度CRAである。本実施形態では、1燃焼サイクル内の圧縮行程で第1燃料噴射FI1を実行するとともに吸気行程で第2燃料噴射FI2を実行する。しかも第1燃料噴射FI1は、リフト量LFT1が比較的大きく、かつ開弁時間TFI1が比較的短い燃料噴射とし、第2燃料噴射FI2は、リフト量LFT2をリフト量LFT1より小さく、かつ開弁時間TFI2を開弁時間TFI1より長く設定した燃料噴射とする。第1及び第2燃料噴射FI1,FI2における合計の燃料噴射量が目標空燃比AFCMDに対応する燃料噴射量となるように、リフト量LFT1,LFT2及び開弁時間(燃料噴射時間)TFI1,TFI2が設定される。
【0030】
燃料を微粒化して噴射可能な燃料噴射弁6を、図5に示すように開弁作動させることにより、まず第1燃料噴射FI1によって吸気通路2内で比較的均質な混合気を形成し、さらに第2燃料噴射FI2を実行することによって、検出空燃比AFを目標空燃比AFCMDと一致させるために必要とされる量の燃料を燃焼室に供給し、しかも燃焼室内における空燃比分布がほぼ一様な(均質度の高い)均質希薄混合気を形成することができる。
なお、第1燃料噴射FI1は、対象気筒の圧縮行程において実行し、第2燃料噴射FI2は、その終了時期を吸気行程の終了時期の直前に設定することが望ましい。
【0031】
本実施形態では、暖機完了後の目標空燃比AFCMDは、例えば「24」から「35」程度の範囲(以下「超希薄空燃比範囲」という)に設定される。空燃比「24」(リーン側所定空燃比)は、エンジン1からのNOx排出量が許容上限値(例えば120ppm)以下となるように設定される。空燃比「35」は、必要なエンジン出力を得るための限界値として設定される空燃比である。
【0032】
点火プラグ8における放電開始時期CAIGは、超希薄空燃比範囲における目標空燃比AFCMDに対応して、上死点前50度から15度の範囲に設定され、放電継続時間TSPKは均質希薄混合気を確実に着火させるべく、1.8〜3msecに設定される。このように放電継続時間TSPKを設定したときの放電エネルギが150〜600mJとなるように昇圧電圧VUPが設定されている。従来の火花点火による希薄混合気燃焼は、点火プラグ近傍の空燃比が相対的に小さくなるように燃焼室内の流動を生成することによって実現される成層混合気燃焼であるのに対し、本実施形態の均質希薄混合気燃焼は、放電継続時間TSPKを比較的長く設定し、その放電継続時間TSPKを確保できるように放電開始時期CAIGは、成層混合気燃焼の点火時期(例えば8.0度)より進角側に設定されている。
【0033】
さらにエンジン1の幾何学的圧縮比(ピストンが下死点に位置するときの燃焼室容積と、上死点に位置するときの燃焼室容積との比)は、最低実効圧縮比が9.0程度となるように、通常の火花点火エンジンの幾何学的圧縮比より若干大きく設定されている。
【0034】
またタンブル流動制御弁4の開度を変更することによって、流速5〜15m/sec程度(エンジン回転数NEが1500rpmであるとき流速)のタンブル流動を発生させるタンブル流動生成制御が行われる。
【0035】
放電継続時間TSPKを比較的長く設定するとともに、燃焼室内にタンブル流動を生成することによって、強力な初期火炎核を形成し、その火炎核を成長させることによって、圧縮上死点における未燃混合気の温度を1000度K以上の温度まで高めて、燃焼層流速度を支配する素反応を、過酸化水素が分解してOHラジカルを生成する反応に変化させ、圧縮上死点後において燃焼を確実に完結させることが可能となる。
【0036】
図6は、圧縮行程及び燃焼行程における筒内圧PCYLの推移を示す図であり、実線L1が本実施形態に対応し、太い破線L2がHCCI(均質混合気圧縮着火)燃焼に対応し、細い破線がストイキ燃焼(空燃比を理論空燃比に設定した場合の燃焼)に対応する。この図において、クランク角度CRAの0度が圧縮上死点に対応する。なお、ストイキ燃焼の場合の点火時期は、圧縮上死点より若干進角側(例えばクランク角度10度以内の範囲)に設定される。
本実施形態の均質希薄混合気の火花点火による燃焼によって、高効率の安定した燃焼が得られることが確認できる。
【0037】
本実施形態では、エンジン1の冷間始動直後において三元触媒10の昇温促進制御を実行する。以下、その昇温促進制御を詳細に説明する。
図7は、空燃比AFと、三元触媒10の活性化温度TACTとの関係を示す図であり、実線が本実施形態における白金を含む三元触媒10に対応し、破線は比較のためにパラジウムを含む三元触媒の活性化温度TACTと、空燃比AFとの関係を示す。活性化温度TACTは、排気中の炭化水素成分の浄化率(HC浄化率)が10%となる温度として定義されている。
【0038】
図7によれば、パラジウムを含む三元触媒では、空燃比AFが「17」から「18」程度の範囲で活性化温度TACTが最低となる(活性化が早まる)が、白金を含む三元触媒10では、空燃比AFを大きくするほど活性化温度TACTが低下することが確認できる。したがって、三元触媒10の早期活性化のためには、空燃比「20」から「22」程度の希薄空燃比燃焼で昇温促進制御を行うことが有効である。
【0039】
図8は三元触媒10の温度、すなわち触媒温度TCATと、HC浄化率ηHCとの関係を示す図であり、各曲線L11〜L15は、図中に示す空燃比AFに対応する。この図から、触媒温度TCATが250℃程度では空燃比AFが「22.5」で高い浄化率が得られ、触媒温度TCATが上昇するに連れて、空燃比AFを減少させることによって常に高い浄化率が得られることが確認できる。
【0040】
そこで本実施形態の昇温促進制御では、触媒温度TCATがある程度上昇した時点(例えば220℃まで上昇した時点)から、触媒温度TCATに応じて空燃比AFを制御することにより、図8に一点鎖線L10で示すような触媒温度TCATとHC浄化率ηHCとの関係を実現するようにしている。
【0041】
図9は、上記昇温促進制御処理のフローチャートである。この処理は、ECU5において所定時間(例えば10msec)毎に実行される。
ステップS11では、触媒温度TCATが所定上側温度TCATH(例えば350℃)より低いか否かを判別し、その答が否定(NO)、すなわち触媒温度TCATが十分高いときは、昇温促進制御は不要であるため直ちに処理を終了する。ステップS11の答が肯定(YES)であるときは、触媒温度TCATが所定下側温度TCATL(例えば220℃)より高いか否かを判別する(ステップS12)。エンジン1の冷間始動直後は、最初はこの答は否定(NO)となり、ステップS13〜S16によって第1昇温促進制御を実行する。所定下側温度TCATLは、上述した希薄空燃比燃焼による昇温促進制御(第2昇温促進制御)が有効となる最低温度に相当する。
【0042】
ステップS13では、スロットル弁3の目標開度THCMDを昇温促進アイドル開度THFIDLに設定し、エンジン1の吸入空気量を増量する。ステップS14では、目標空燃比AFCMDを第1所定空燃比AFTRA1(例えば「16」)に設定し、ステップS15では、点火プラグ8の放電開始時期CAIGを最適点火時期より遅角側の第1所定時期CATRA1(例えば3度)に設定するとともに、放電継続時間TSPKを第1所定時間TTRA1(例えば2.0msec(放電エネルギで180mJ相当値))に設定する。ステップS16では、タンブル流動制御弁4の開度指令値TCVCMDを比較的小さい第1所定開度TCVTRA1に設定し、流動の強度が比較的高い状態に対応する開度設定とする。本実施形態では、放電開始時期CAIGは、圧縮上死点からの進角量で定義される。また開度指令値TCVCMDの増加は、タンブル流動の強度を低下させることに対応する。
【0043】
なお、目標開度THCMD、目標空燃比AFCMD、放電継続時間TSPK、及び開度指令値TCVCMDは、エンジン1の始動開始時における初期値から徐々に、上記設定値まで変更される。
【0044】
第1昇温促進制御によって触媒温度TCATが所定下側温度TCATLを超えると、ステップS12の答が肯定(YES)となり、ステップS21〜S24による第2昇温促進制御を実行する。
【0045】
ステップS21では、触媒温度TCATに応じて図10(a)に示すAFCMDテーブルを検索し、目標空燃比AFCMDを設定する。AFCMDテーブルは、触媒温度TCATが所定下側温度TCATLより低い範囲では、第1所定空燃比AFTRA1に設定され、所定下側温度TCATL以上の範囲では、触媒温度TCATが高くなるほど、目標空燃比AFCMDが減少するように設定されている。図10(a)の第2及び第3所定空燃比AFTRA2,AFTRA3は、例えばそれぞれ「22.5」及び「14.7」に設定される。
【0046】
ステップS22では、目標空燃比AFCMDに応じて放電開始時期CAIG及び放電継続時間TSPKを設定する。具体的には、目標空燃比AFCMDに応じて図10(b)に示すCAIGテーブルを検索し、放電開始時期CAIGを算出するとともに、目標空燃比AFCMDに応じて図10(c)に示すTSPKテーブルを検索し、放電継続時間TSPKを算出する。
【0047】
CAIGテーブルは、目標空燃比AFCMDが増加するほど、放電開始時期CAIGが減少するように設定されている。図10(b)の第2及び第3所定時期CATRA2,CATRA3は、例えばそれぞれ「0度」及び「10度」に設定される。第2所定時期CATRA2は、最適点火時期より遅角側であって第1所定時期CATRA1よりさらに遅角側に設定される。
【0048】
TSPKテーブルは、目標空燃比AFCMDが増加するほど放電継続時間TSPKが増加するように設定されている。図10(c)の第2及び第3所定時間TTRA2,TTRA3は、例えばそれぞれ「5.0msec」及び「1.5msec」に設定される。
【0049】
ステップS23では、目標空燃比AFCMDが第1所定空燃比AFTRA1以下であるか否かを判別する。この答が否定(NO)であるときは直ちに処理を終了し、肯定(YES)であるときは、タンブル流動制御弁4の開度指令値TCVCMDを第1所定開度TCVTRA1から第2所定開度TCVTRA2(>TCVTRA1)に達するまで漸増する処理を行う(ステップS24)。
【0050】
なお、第2昇温促進制御の開始当初は、目標空燃比AFCMD、放電開始時期CAIG、及び放電継続時間TSPKについては、第1昇温促進制御における設定値から、ステップS21及びS22で算出される最初の設定値まで徐々に変化させる過渡制御が行われる。
【0051】
図11は、図9の昇温促進制御の動作例を示すタイムチャートであり、図11(a)は、エンジン1の始動時点(時刻t0)からの触媒温度TCAT及び排気温度TEXHの推移を示し、図11(b)〜図11(e)は、それぞれ空燃比AF、放電継続時間TSPK、放電開始時期CAIG、及びタンブル流動制御弁4の開度指令値TCVCMDの、時刻t0から推移を示す。
【0052】
始動直後から第1昇温促進制御が実行され、空燃比AF、放電継続時間TSPK、放電開始時期CAIG、及び開度指令値TCVCMDは、それぞれ第1所定空燃比AFTRA1、第1所定時間TTRA1、第1所定時期CATRA1、及び第1所定開度TCVTRA1に設定される。
【0053】
時刻t1に触媒温度TCATが所定下側温度TCATLに達すると、第1昇温促進制御から第2昇温促進制御に移行する。第2昇温促進制御の開始当初においては、最初の設定値に徐々に移行する過渡制御が行われ、空燃比AF、放電継続時間TSPK、及び放電開始時期CAIGは、それぞれ第2所定空燃比AFTRA2、第2所定時間TTRA2、及び第2所定時期CATRA2に変更される。なお、開度指令値TCVCMDは時刻t2まで第1所定開度TCVTRA1に維持される。時刻t2は、目標空燃比AFCMDが第1所定空燃比AFTRA1まで減少した時点である(図9,ステップS23参照)。
時刻t3において触媒温度TCATが所定上側温度TCATHに到達し、第2触媒昇温促進制御が終了する。第2昇温促進制御終了後は、エンジン運転状態に応じた目標空燃比AFCMDの設定を行う通常制御に移行する。
【0054】
以上のように本実施形態では、エンジン1の始動直後において三元触媒10の昇温を促進するための第1昇温促進制御が、触媒温度TCATが所定下側温度TCATLに達する時刻t1まで実行され、時刻t1以後は第2昇温促進制御が実行される。第1昇温促進制御では、スロットル弁3の開度を増加させることによって吸入空気量を増加し、空燃比AFを理論空燃比よりリーン側の第1所定空燃比AFTRA1に制御するとともに点火プラグ8の放電開始時期CAIGを最適点火時期より遅角側の第1所定時期CATRA1に設定する制御が行われ、第2昇温促進制御では、空燃比AFを第1所定空燃比AFTRA1よりさらにリーン側の第2所定空燃比AFTRA2に制御し、放電開始時期CAIGを第1所定時期CATRA1よりさらに遅角するとともに、点火プラグ8の放電継続時間TSPKを増加させる制御が行われる。白金を含む三元触媒10は、空燃比AFを従来の触媒昇温促進制御における設定空燃比(例えば「16」)よりさらにリーン側(例えば「22」程度)に設定することによって、より低い温度で活性化可能であり、触媒温度TCATが所定下側温度TCATLに到達する時刻t1以後において第2昇温促進制御を行うことによって、三元触媒10の活性化を早めることができる。したがって、空燃比AFをよりリーン化すること及び触媒促進制御の実行時間を短縮することによって、燃費を向上させることができる。
【0055】
また第2昇温促進制御が有効となるのは、三元触媒10の温度TCATが所定下側温度TCATLに達した時点以後であるため、触媒温度TCATが所定下側温度TCATLを超えた時点から第2昇温促進制御を実行することによって、顕著な昇温促進効果が得られる。
【0056】
また第2昇温促進制御では、触媒温度TCATが高くなるほど空燃比AFを減少させ、放電開始時期CAIGを進角させるとともに放電継続時間TSPKを減少させる制御が行われる。白金を含む三元触媒10は、触媒温度TCATが高くなると、空燃比AFがより理論空燃比に近いほど浄化性能が高くなる特性を有するので、触媒温度TCATが高くなるほど空燃比AF(目標空燃比AFCMD)を減少させることによって、高い浄化性能を得ることができる。また、空燃比AFを減少させることによって放電開始時期CAIGの進角及び放電継続時間TSPKの短縮を行っても安定した燃焼が得られるので、放電開始時期CAIGを可能な限り進角させるとともに放電継続時間TSPKを減少させることによってエンジン出力を増加させ、エネルギ効率を高めることができる。
【0057】
また第2昇温促進制御の開始時は、タンブル流動制御弁4の開度を第1所定開度TCVTRA1に設定して流動の強度が比較的高くなるように制御され、空燃比AFが第1所定空燃比AFTRA1近傍まで減少させた時点から流動の強度を徐々に減少させる制御が行われる。空燃比AFを減少させる制御によって、流動の強度を低下させても燃焼が不安定となることがなくなるので流動の強度を低下させて、燃焼時の熱損失を低減し、熱効率の向上を図ることができる。
【0058】
また燃料を微粒化して噴射可能な燃料噴射弁6を用いて、エンジン1の吸気通路2内に燃料が噴射されるので、均質度の高い混合気を形成し、その均質希薄混合気を火花点火によって確実に着火させて、NOx排出量が少なく高効率の燃焼を実現することができる。
【0059】
本実施形態では、点火回路ユニット7及び点火プラグ8が火花点火手段に相当し、隔壁2a及びタンブル流動制御弁4が流動生成手段に相当し、触媒温度センサ18が温度パラメータ取得手段を構成する。またECU5が第1及び第2昇温促進制御手段を構成し、燃料噴射弁6及びECU5が均質希薄混合気形成手段を構成する。
【0060】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、検出される触媒温度TCATを触媒温度パラメータとして使用したが、触媒温度TCATに代えて以下のようなパラメータ、すなわち三元触媒10の上流側に排気温度センサを配置し、その排気温度センサにより検出される排気温度TEXHを触媒温度パラメータとして使用してもよい。そのような変形例では、排気温度センサが温度パラメータ取得手段を構成する。また例えば特開2012−77740号公報に示される触媒温度推定手法を用いてエンジン1の運転状態に応じて推定触媒温度TCATEを算出し、推定触媒温度TCATEを触媒温度パラメータとして使用してもよい。
【0061】
また上述した実施形態では、第1昇温促進制御から第2昇温促進制御へ移行する制御切換時期(時刻t1)を、触媒温度TCATが所定下側温度TCATLに到達した時点としたが、これに限るものではなく、例えばエンジン1の冷間始動開始時点からの経過時間が、触媒温度TCATが所定下側温度TCATLに到達すると推定される時間に達した時点、あるいは冷間始動開始時点からの燃料噴射量積算値が、触媒温度TCATが所定下側温度TCATLに到達すると推定される値に達した時点、すなわち触媒温度TCATが第2昇温促進制御が有効となる温度に達すると推定される時点を「制御切換時期」としてもよい。
【0062】
また上述した実施形態では流動生成手段として、タンブル流動を生成する機構を使用したが、スワール流動を生成する機構を採用してもよい。また、燃焼室1a及びピストン頂部の形状を、スキッシュ流動が生成されるように構成してもよい。また、点火回路ユニット7のコイル対は、1つの点火プラグに対応して2個設けるようにしたが、3個以上設けるようにしてもよい。
【0063】
また上述した実施形態では4気筒エンジンの例を示したが、本発明は気筒数に関わらず適用可能である。また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの燃焼制御装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 内燃機関
2 吸気通路
2a 隔壁(流動生成手段)
3 スロットル弁
4 タンブル流動制御弁(流動生成手段)
5 電子制御ユニット(第1及び第2昇温促進制御手段、均質希薄混合気形成手段)
6 燃料噴射弁(均質希薄混合気形成手段)
7 点火回路ユニット(火花点火手段)
8 点火プラグ(火花点火手段)
9 排気通路
10 三元触媒
18 触媒温度センサ(温度パラメータ取得手段)
19 アクチュエータ
AFCMD 目標空燃比
CAIG 放電開始時期
TSPK 放電継続時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11