【実施例】
【0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、海や河川等の水中に設けられている管体1を切断する水中切断装置であって、具体的には、管体1の周面に抱囲状態に着脱自在に取り付ける環状ガイド部2に、管体1の周面に付着した付着物を除去する付着物除去装置3と、管体1の周面に穿孔を形成する穿孔装置4と、管体1を切断する切断装置5と、各作業装置が作業している作業部を撮像する撮像装置6とを設けた作業装置設置部7を、この環状ガイド部2に沿って移動自在に設けた構成としている。
【0023】
より具体的には、図示するように、上面にフロート部11を載置した基体部12の下面に環状ガイド部2を垂設し、この環状ガイド部2に前記付着物除去装置3、前記穿孔装置4、前記切断装置5及び前記撮像装置6を配設した作業装置設置部7を沿設移動自在に設け、前記撮像装置6で撮像した映像を作業現場から離れた作業船上または陸上でモニタしながら各作業装置3,4,5を遠隔操作して管体1を水中切断する構成としている。
【0024】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細に説明する。
【0025】
本実施例の基体部12は、フロート部11を載置するフロート載置部13を対向状態に配設し、このフロート載置部13間に連結部材14を架設連結して平面視ほぼH形状に形成した構成とし、また、各フロート載置部13の両端部に船上や陸上を走行移動するための車輪部15を設けた構成としている。
【0026】
また、図示しないが、フロート部11は、外部から空気をこのフロート部11内に導入する空気導入部と、このフロート部11内の空気を外部に導出する空気導出部とを設け、この空気導入部及び空気導出部を介してフロート部11内の空気の充填量を調節することにより浮力を自在に調節し得る構成とし、基体部12は、このフロート部11の浮力調節によって沈降浮上自在な構成としている。
【0027】
尚、本実施例の水中切断装置は、作業船で管体1近くまで輸送し、図示するように、ワイヤ25で吊持して水中に投入する構成としているが、例えば、フロート部11若しくは基体部12に駆動スクリューを設け、この駆動スクリューにより水中を自在に移動できるように構成して、管体1から離れたところに位置する船上や陸上から管体1までを自走(自泳)により移動するように構成しても良もよい。
【0028】
また、環状ガイド部2は、上述した基体部12の下面に垂設状態に設けた構成とし、半円状に形成した一対のガイド半体部16から成り、夫々のガイド半体部16の一端部を基体部12に設けた枢着部に設けて、他端部同士が接離移動する開閉自在な構成としている。
【0029】
即ち、本実施例の水中切断装置は、重量のある環状ガイド部2及び後述する各作業装置をフロート部11の下方に配置し、重心位置を低くして、水中での中立浮力の保持力が向上するように構成している。
【0030】
また、本実施例の環状ガイド部2は、複数(本実施例では3つ)の係止爪部17を設けた構成とし、この係止爪部17を管体1に押圧係止することで、管体1への位置決め状態が保持される構成としている。
【0031】
具体的には、係止爪部17は、先端部を尖鋭形状に形成し、バネ付勢若しくは螺入による押し込みによって管体1の周面に先端部が喰い込み係止する構成とし、各係止爪部17を120°間隔で配置し、管体1を均等にバランスよく押圧するように構成している。
【0032】
即ち、本実施例の環状ガイド部2は、海生生物等の付着物が付着し周面が凹凸状態となった管体1に対しても、各係止爪部17が夫々適宜な押圧力で管体1に喰い込み係止して、本実施例の水中切断装置を確実に管体1に装着し得るように構成している。
【0033】
また更に、本実施例の環状ガイド部2は、この環状ガイド部2に沿って周方向に自在に移動する作業装置設置部7を設けた構成としている。
【0034】
具体的には、本実施例の作業装置設置部7は、環状ガイド部2の下側ガイド部2aに移動自在に設けた構成とし、図示しないが、下側ガイド部2aの上面及び下面に接地する垂直ローラー部と、下側ガイド部2aの内周面及び周面に接地する水平ローラー部とを具備し、各ローラーがこの下側ガイド部2aに対して上下方向及び内外方向から夫々押圧接地することで、この作業装置設置部7が上下方向及び内外方向へ位置ずれすることを防止し、前記垂直ローラー部、前記水平ローラー部と別に設けた駆動ローラー部の駆動により、この下側ガイド部2aに沿設状態に周回移動自在に設けた構成としている。尚、本実施例の作業装置設置部7は、遠隔操作により作動し得る構成としている。
【0035】
次に各作業装置について説明する。先ず、付着物除去装置3について説明すると、本実施例の付着物除去装置3は、バイブレーションスクレーパ工具(エア駆動式打撃素地調整工具)を採用した構成とし、ヘラ状の先端部で管体1の周面に付着した海生生物等の付着物を削ぎ落とし除去する構成としている。
【0036】
具体的には、本実施例の付着物除去装置3は、前後方向に進退自在に設けると共に、上下方向に移動自在に設けた構成として、遠隔操作により付着物除去作業時に先端部が管体1の周面に当接するように前進させ、バイブレーション動作を作動させながら上述した作業装置設置部7を周方向に移動させることで、管体1に付着した付着物を帯状に除去して行くように構成している。
【0037】
また、本実施例の付着物除去装置3は、作業装置設置部7に対して前後方向にスライド移動自在に設けたスライド部18に垂直ガイド部19を垂設し、この垂直ガイド部19に上下スライド移動自在に設けた装置取付移動部20に設けて、このスライド部18の前後移動及び装置取付移動部20の上下移動により、前後方向に進退自在、且つ上下方向に移動自在に設けた構成としている。
【0038】
即ち、上下方向に移動することで、穿孔作業を行うための付着物除去作業と、切断作業を行なうための付着物除去作業とを、位置を変えて作業し得る構成としている。
【0039】
また、図示しないが、本実施例の付着物除去装置3は、水平回動機構により水平方向に回動自在に設けた構成として、先端部の管体1の周面に対する当接角度を自在に調整し得る構成としている。
【0040】
また、穿孔装置4は、ドリル工具を採用した構成とし、上述した付着物除去装置3同様、遠隔操作により作動する構成とすると共に、前後方向に進退自在に設けた構成としている。
【0041】
尚、本実施例は、この穿孔装置4の周回移動方向前方側に付着物除去装置3を並設状態に設けた構成とし、前方に位置する付着物除去装置3がガス抜き孔を穿孔する位置に付着している付着物を除去し終えると、この付着物を除去した部分に先端部が位置するように配設した構成としている。
【0042】
また、切断装置5は、溶断により管体1を切断する構成とすると共に、管体1を加熱溶融する加熱溶融部8を上下方向に二つ並設状態に装着可能な構成として、作業装置設置部7の移動により管体1の周面を水平方向に平行に溶断切断し得る構成とすると共に、上下方向に移動自在に設けて、管体1の周面を垂直方向に溶断切断し得る構成としている。
【0043】
具体的には、本実施例の切断装置5は、酸素アーク切断を採用した構成とし、図示するように、加熱溶融部8としての溶断棒8(切断棒)を二本装着可能な構成として、溶断棒8を二本装着して平行に二か所の切断を同時に進めていくことができる構成としている。
【0044】
より具体的に説明すると、本実施例の切断装置5は、図示するように、付着物除去装置3を上下動させる装置取付移動部20に連結した構成とし、付着物除去装置3と共に、前後方向及び上下方向に移動する構成としている。
【0045】
また更に、本実施例の切断装置5は、この切断装置5単独での前後方向への進退移動が可能な構成としており、具体的には、図示するように、装置取付移動部20に連結した連結固定部21に対して、前後方向に移動自在に本体部22を設け、更にこの本体部22に対して前後方向に移動自在にホルダー部23を設け、このホルダー部23に溶断棒8を装着する構成としている。尚、本実施例の切断装置5は、溶断棒8の管体1への接触圧(挿入力)を5kgに設定した構成としている。
【0046】
また、撮像装置6は、ハレーションの発生を抑制して溶断切断中の作業部を視認可能に撮像するカメラ部9を、防水ケース10内に収納配設して成る構成としている。
【0047】
具体的には、本実施例のカメラ部9は、市販の溶接カメラを採用した構成とし、溶断切断作業時と非溶断切断時との切換えが可能なものを作用している。
【0048】
また、図示しないが、本実施例の撮像装置6は、水平回動自在且つ上下揺動自在に構成した撮像装置取付部に設けた構成とし、この撮像装置取付部を遠隔操作により操作し、この撮像装置取付部を移動させることで撮像装置6(カメラ部9)の向きを変更し、所望の箇所を撮像できるように構成している。
【0049】
また更に、図示しないが、本実施例では、この撮像装置6が撮像する箇所を照明する照明部を作業装置設置部7に設けた構成とし、この照明部も遠隔操作により所望の方向を照明し得る構成としている。
【0050】
尚、本実施例の水中切断装置は、上述したように、付着物除去装置3、穿孔装置4及び切断装置5を具備し、管体1の切断作業の一連の作業を行うことができる構成としたが、切断作業以外の作業、例えば、水中溶接作業や水中防食塗装作業を行うことができるように構成しても良い。具体的には、水中溶接作業は、溶断棒8の代わりに溶接棒を装着すれば良く、また、水中防食塗装作業については、例えばハンドガンタイプの水中防食塗装装置を作業装置設置部7に装着可能な構成とし、溶接装置(本実施例の切断装置5)と並設状態に設けて、溶接作業時に、溶接部を防食塗装しながら作業を進めてゆくように構成しても良い。
【0051】
また、水中切断装置は、管体1に取り付けた状態でこの管体1に沿設状態で移動する構成としても良い。例えば、環状ガイド部2に磁石車輪を設け、この磁石車輪の吸着作用により管体1に吸着しながら移動することができるように構成して、例えば管体1の複数個所で穿孔作業や切断作業を行う場合、一々作業者が水中に潜って、一度、環状ガイド部2を管体1から取り外して移動させなくても、容易に位置変えができ、作業者の負荷をより一層軽減することができるように構成しても良い。
【0052】
以上のように構成した本実施例の作用・効果を以下に説明する。
【0053】
先ず、本実施例の水中切断装置を用いた管体の水中切断作業手順について説明する。尚、ここでは、管体1内に中詰めコンクリート30があり、この中詰めコンクリート30をワイヤソーで切断するためのワイヤ切断部を切り抜き形成する場合について説明する。
【0054】
先ず、切断装置5のホルダー部23に溶断棒8を二本装着した後、基体部12をワイヤ25で吊持し海上に移動し、フロート部11の浮力を調節して所定の作業位置まで水中切断装置を沈降させ、作業者(潜水士)により作業位置にて環状ガイド部7を開動操作し、管体1を抱囲するように環状ガイド部2を取り付けた後、係止爪部17を管体1の周面に喰い込み係止させて、管体1に位置決め固定する。
【0055】
作業者は、水中切断装置を管体1に固定した後、作業現場から離れ、海上に待機する作業船(または近くの陸上や桟橋)に戻り、撮像装置6で撮像する映像をモニタで見ながら、遠隔操作により各作業装置を操作し作業を行う。
【0056】
具体的には、先ず、付着物除去装置3を作動させながら、作業装置設置部7を周方向に移動させてガス抜きを行なうためのガス抜き孔を穿孔する箇所の管体1周面に付着している海生生物等の付着物を除去する付着物除去作業を行う。
【0057】
次いで、この付着物を除去した箇所に穿孔装置4によりガス抜き孔を穿孔し、管体1内に溜まっている可燃性ガスを放出させる。
【0058】
次いで、このガス抜き作業が完了した後、切断作業を行う。切断作業は、付着物除去装置3で付着物を帯状に除去した帯状切断部24を切断装置5で切断するものとし、具体的には、カメラ部9を溶断作業用に切り替え、ハレーションを抑制した映像をモニタで確認しながら切断装置5で溶断切断してゆく。
【0059】
より具体的には、本実施例では、上下二本の溶断棒8の夫々を管体1への接触圧(挿入力)を5kgに設定し、撮像装置6(カメラ部9)によりアーク光によるハレーションを防止した映像で溶融状況を確認しながら、作業装置設置部7を一定の移動速度で移動させて、図示するように、この管体1の周面に形成した帯状切断部24を水平方向に平行に溶断切断してゆき、この水平方向の切断が完了した後、所定位置で切断装置5を上下方向に移動させてこの二本の溶断切断部間を垂直に切断し、管体1の周面に帯状のワイヤ切断部を切り抜き形成し作業完了となる。
【0060】
このように、本実施例は、付着物除去装置3、穿孔装置4及び切断装置5の各作業装置を具備する構成としたので、水中における管体1の切断作業の一連の作業、即ち、管体1の周面に付着し穿孔作業や切断作業の妨げとなる海生生物等の付着物を除去する付着物除去処理、管体1内に溜まっている天然ガス等の可燃性ガスのガス抜き作業を行うためのガス抜き孔を穿孔する穿孔作業、そして、管体1を溶断により切断する切断作業を、本発明の水中切断装置一台で全て成し得ることができ、しかも、各作業装置は作業現場から離れた船上や陸上から遠隔操作により操作する構成としたので、作業者が水中に潜って作業する必要が無く、作業者の作業負荷が大幅に軽減されることとなる。
【0061】
更に、作業者が作業現場にいなくても良いので、万が一、管体1内に可燃性ガスが残存していて、穿孔作業や切断作業時にこの残留可燃性ガスによる小爆発が生じた場合でも、作業者が被災しないので、安心して作業を進めることができることとなる。
【0062】
また、本実施例のように、中詰めコンクリート30を有する管体1を切断する場合でも、中詰めコンクリート30を切断するためのダイヤモンドワイヤーソーをあてがうためのワイヤ切断部(中詰めコンクリート30を露出させる箇所)を、二本の溶断棒8で同時に溶断切断して容易に管体1を切り抜いて形成することができるので、厄介な切り抜き切断作業も短時間で効率良く行うことができることとなる。
【0063】
また、本実施例は、水中における作業箇所を撮像する撮像装置6に、アーク光等の放電光によるハレーションを防止するカメラ部9(溶接カメラ)を採用したので、溶融切断中の作業部を、モニタを通じて視認することができ、これにより、溶融状態を常に確認しながら確実に切断作業を進めてゆくことができ、したがって、熟練者でなくとも作業ができ、また、作業者間のバラツキも低減されることとなる、従来にない極めて優れた作業性能を発揮する画期的な水中切断装置となる。
【0064】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。