(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、異方性とは、特性に方向性がある性質を示す。本発明において、異方比とは、異方性の大きさを数値化したものであり、具体的には素材の特性を直交する2方向で測定し、最大値を最小値で除した値から1を引いた値を異方比とする。
具体的には、熱膨張係数、固有抵抗を材料の方向毎に測定し、得られた測定値から算出する。
本発明では、原材料粒子の配向する方向をWG(with grain)、原材料粒子の配向と直交する方向をAG(across grain)とする。
黒鉛材の上下方向は、特にことわりがない限り、成形前の粉を充填容器に充填したときの上下方向を示す。
【0009】
黒鉛材料では異方性のある原材料を使用し製造される。このため、成形段階で付された方向性はそのまま固定され黒鉛材の方向性として決定される。押し出し成形においては、押し出し方向に原材料粒子が配向し、型押し成形においては、圧縮方向に直交する方向に原材料粒子が配向する。従来の特許文献1に記載のCIP成形においては、成形段階では等方的に成形されるものの、CIP成形に先立ち、粉を充填する段階で充填容器(一般にラバーケースが使用される)の水平面方向に原材料粒子が配向し易くなる。
【0010】
本発明は、コークス粉末を含む第1の炭素質原料に疎水性結合材を添加し加熱混練して混合物を得る混練工程と、前記混練工程で得られた混合物を粉砕し第2の炭素質原料を得る粉砕工程と、前記粉砕工程で得られた第2の炭素質原料と親水性結合材とから造粒粉を得る造粒工程と、前記造粒工程で得られた造粒粉を冷間静水圧成形して成形体を得る成形工程と、前記成形工程で得られた成形体を焼成して黒鉛化する工程と、を含み、前記造粒工程では、前記第2の炭素質原料と親水性結合材が溶媒を用いて造粒されていることを特徴とする黒鉛材の製造方法である。また、本発明は、上記の黒鉛材の製造方法で製造され、熱膨張係数の異方比が5%以下であることを特徴とする黒鉛材である。
【0011】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態の黒鉛の製造方法を示す説明図である。
図2(a)は、本発明の実施の形態の第1の炭素質原料の偏光顕微鏡写真を示す図、(b)は本発明の実施の形態の第2の炭素質原料の偏光顕微鏡写真を示す図、(c)は本発明の実施の形態の造粒粉の偏光顕微鏡写真を示す図である。
図2(a)、(b)、(c)は、それぞれ100倍、50倍、12.5倍の偏光顕微鏡にカメラを接続し、コリメート法で撮影した。
図3(a)は、本発明の実施の形態の第1の炭素質原料の模式図、(b)は、本発明の実施の形態の第2の炭素質原料の模式図、(c)は、本発明の実施の形態の造粒粉の模式図である。
図4(a)乃至(b)は本発明の実施の形態CIP成形で使用するラバーケースに造粒粉を充填する工程の説明図であり、(a)は充填中、(b)は充填後の状態を示す。
図5は本発明の実施の形態の造粒粉をCIP成形する工程を示す説明図である。
図6(a)は本発明の実施の形態の第2の炭素質原料と造粒粉の圧縮歪みと圧縮応力との関係を示す図、(b)は、本発明の実施の形態の第2の炭素質原料と造粒粉の充填率と圧縮応力との関係を示す図である。
図12(a)及び(b)は比較例1のCIP成形で使用するラバーケースに第2の炭素質原料を充填する説明図であり、(a)は充填中、(b)は充填後の状態を示す。
図13は比較例1の第2の炭素質原料をCIP成形する工程を示す説明図である。
【0012】
本発明の実施の形態の第1の炭素質原料は、結晶化度は低いものの六方晶系の結晶構造をとるコークスを含んでいる。このため、これを粉砕したコークスの粉末は六方晶のc軸方向が剥離し易いため、
図2(a)に示すように、板状、針状に粉砕されやすくアスペクト比が高くなる。本発明の実施の形態では、まずコークス粉末を含む第1の炭素質原料1(
図2(a)及び
図3(a)参照)に疎水性結合材2としてのピッチを添加し加熱混練して混合物を得る。このようにして得られた混合物を粉砕し、第2の炭素質原料10を得る(
図2(b)及び
図3(b)参照)。第2の炭素質原料10はアスペクト比の高い第1の炭素質原料1を疎水性結合材2で結合させて構成されているので、第1の炭素質原料よりアスペクト比の小さい粒子が得られ易い。しかしながら第2の炭素質原料10は、混合物を粉砕して得られるので、第1の炭素質原料1の方向に沿って粉砕されやすい。このため、一旦小さくなったアスペクト比は、粉砕によってアスペクト比は大きくなり易い。このような理由から、第2の炭素質原料は主に扁平粒子、針状粒子で構成される。そこでさらに、この第2の炭素質原料10に親水性結合材20を添加し、溶媒を用いて造粒することで空隙を含んだ例えば丸い造粒粉100を得る(
図2(c)、
図3(c))。そして、この造粒粉100をCIP成形して成形体を得たのち、焼成および黒鉛化することで、異方性の発現を抑制し、等方性の高い黒鉛材を形成することができる。造粒粉100は丸以外に、アスペクト比が2以下の扁平な形状であれば等方性の高い黒鉛材を形成することができる。
【0013】
すなわち、本発明の黒鉛は、
図1に示すフローチャートのように、以下の工程に従って形成される。
コークス粉末を含む第1の炭素質原料に疎水性結合材を添加し加熱混練して混合物を得る(S1:混練工程)。
そして前記混練工程で得られた混合物を粉砕し第2の炭素質原料10を得る(S2:粉砕工程)。
粉砕工程で得られた第2の炭素質原料10と親水性結合材20とを溶媒を用いて造粒粉を得る(S3:造粒工程)。
造粒工程で得られた造粒粉を冷間静水圧成形して成形体を得る(S4:成形工程)。
成形工程で得られた成形体を焼成して焼成体を得る(S5:焼成工程)。
焼成工程で得られた焼成体を黒鉛化する(S6:黒鉛化工程)。
【0014】
次に各工程について詳細に説明する。
<S1:混練工程>
本実施の形態の第一の炭素質材料は、疎水性結合材を加え加熱混練されている。このため、第一の炭素質材料は、機械的な力により強く疎水性結合材と結びつけられる。このため第一の炭素質材料どうしは強く結びつけられ、高強度の黒鉛材を得ることができる。
【0015】
疎水性結合材としては、ピッチあるいはタールなどを用いるのが好ましい。ピッチ、タールは炭化収率が高い上に、黒鉛材を製造する過程で残留し易い不純物(金属、硼素、シリコンなど)が少ないため、高純度、高強度の黒鉛材を得ることができる。
【0016】
また、混練工程で、ピッチ、タールなどの疎水性結合材を加え加熱混練すると、疎水性結合材から揮発分が除去され、疎水性結合材の軟化点が150〜300℃と硬質化している。このため得られた第2の炭素質原料10は、室温では粉同士が付着し合うことがないため、得られる黒鉛材の組織を細かくすることができ、高強度の黒鉛材を得ることができる。
【0017】
本実施の形態の第一の炭素質材料としては、例えば、コークス、無煙炭、天然黒鉛、人造黒鉛などを粉砕した粉末が利用できる。中でもコークスは、炭素以外に、水素、酸素、窒素、硫黄などを多く含有し、結晶化が進行していないので、疎水性結合材と結びつきやすい例えば不飽和官能基、含酸素官能基などの官能基を多く含有していると考えられる。このため、疎水性結合材と強く結びつくことができ、高強度の黒鉛材を得ることができる。
【0018】
コークスには、単に石炭を仮焼したコークス、コークスから得られたピッチをコーキングして仮焼したピッチコークス、石油コークスなどの仮焼コークス、及びこれらの混合物が利用できる。中でもピッチコークスは、出発物質がタール、ピッチなど石炭の乾留ガスから得られたものであるため、固形不純物が少なく、異物又は、異物の揮散した痕の空隙の少ない黒鉛材を得ることができる。また、石油コークスでも出発物質が液体であるため、固形不純物が少なく、異物又は、異物の揮散した痕の空隙の少ない黒鉛材を得ることができる。
【0019】
混練工程で用いられる、第一の炭素質材料の平均粒子直径は、5〜20μmであることが望ましい。第一の炭素質材料の平均粒子直径が、5μm以上であれば、比表面積が小さいので疎水性結合材を第一の炭素質材料の表面を十分に覆うことができ疎水性結合材の使用量を少なくすることができる。また含有している疎水性結合材の量が少ないため、後の焼成工程で成形体内部から疎水性結合材が分解し発生するガスの量を減らすことが出来る。これにより、焼成の過程でガスによる内圧で成形体が割れることを防止することができる。第一の炭素質材料の平均粒子直径が、20μm以下であれば、黒鉛材を構成する第1の炭素質材料間にできる気孔のサイズを小さくできるため、気孔周辺での応力集中が起きにくくなり高強度の黒鉛材を得ることができる。
【0020】
本実施の形態の混練工程では、例えば、加熱したニーダーに、第1の炭素質原料及び疎水性結合材を投入し、混合羽根を使用して混練する。混練することにより、第1の炭素質原料の表面が疎水性結合材で覆われた塊状の混合物が得られる。
【0021】
<S2:粉砕工程>
本実施の形態の粉砕工程では、前記混練工程で得られた塊状の混合物を粉状に粉砕し、第2の炭素質原料10を得る。この粉砕工程で得られる第2の炭素質原料10の平均粒子直径は、15〜50μmが望ましく、更に第1の炭素質原料の平均粒子直径よりも大きいことが望ましい。
第2の炭素質原料10の平均粒子直径が、15μm以上であると接着力の無い第1の炭素質原料の表面が第2の炭素質原料10の表面に露出しにくいので、高強度の黒鉛材が得られ易い。言い換えれば、平均粒子直径が15μm以上になるように粉砕すると、前記混練工程で得られた混合物を過剰に粉砕することにならないので、過剰な粉砕により、第1の炭素質原料と疎水性結合材がバラバラになることを防止することができる。そのため、接着力の無い第1の炭素質原料の表面が第2の炭素質原料10の表面に露出しにくいので、高強度の黒鉛材が得られ易い。
このように、粉砕工程で得られる、第2の炭素質原料10の平均粒子直径は、50μm以下であることが好ましい。第2の炭素質原料10の平均粒子直径が、50μm以下であると、第2の炭素質原料10の粒子間に大きな気孔が出来にくいため、高強度の黒鉛材が得られ易い。
【0022】
粉砕は、乾式の粉砕機であれば、どのようなもので粉砕しても良い。粉砕機と、分級機とを複合した循環式の粉砕設備を用いて粉砕することが望ましい。分級機と組み合わせた循環式の粉砕設備で粉砕すれば、粉砕機が過粉砕することなく、接着力の無い第1の炭素質原料の表面が第2の炭素質原料10の表面に露出しにくいので、高強度の黒鉛材を得易い。
【0023】
<S3:造粒工程>
本実施の形態の造粒工程では、前記工程で得られた第2の炭素質原料10を、親水性結合材20を用いて造粒し、造粒粉を得ている。このため、混練工程で使用する疎水性結合材と親水性結合材20は、互いに相溶性がない。このため疎水性結合材と、親水性結合材20の接着力に差をつけることができる。疎水性結合材は、第1の炭素質原料1どうしの強固な結合に作用し、親水性結合材20は、第2の炭素質原料10どうしの弱い結合に作用する。また、親水性結合材20は、造粒の結合材であるため、第2の炭素質原料10を球状になるように結合し造粒粉の方向性がつきにくくするように作用する。このため、このような造粒粉を経て製造された黒鉛材は方向性がつきにくく、異方性の小さい黒鉛材を得ることができる。このような黒鉛材の熱膨張係数は、材料の切り出し方向によるばらつきが小さいので高温で使用する黒鉛部品として好適に利用することが出来る。また、このような黒鉛材の固有抵抗は材料の切り出し方向によるばらつきが小さいので、黒鉛ヒーターとして利用したとき、黒鉛ヒーターの発熱量のばらつきを小さくすることができる。
本実施の形態の親水性結合材20としては、親水性高分子であることが好ましい。高分子であるため、黒鉛材の製造過程で不純物が残留しにくい。
さらにまた、親水性結合材20は、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、でんぷん等が利用可能である。
【0024】
また、親水性結合材20の添加率は、第2の炭素質原料10を100重量部に対し0.1〜10.0重量部であることがこのましい。親水性結合材20の添加率は、第2の炭素質原料10を100重量部に対し0.1重量部未満であると、親水性結合材の結合力が弱くなるので造粒粉が軟らかくなり、充填容器に充填した際に、造粒粉が粉の自重で潰れ易くなる。造粒粉が重力で潰れ、圧縮されると黒鉛材の方向性がつき易くなる。そのため、黒鉛材の固有抵抗あるいは熱膨張係数のばらつきが大きくなる。親水性結合材20の添加率は、第2の炭素質原料100重量部に対し10.0重量部を越えると、親水性結合材20と結びつく水系の溶媒の量が多くなるので造粒粉の乾燥が困難になり長時間あるいは高温での乾燥を要する。このため、熱で疎水性結合材が変質しやすくなる。
本実施の形態において、水系の溶媒とは、水が大部分を占めていれば良く、水に、界面活性剤、アルコールなどを添加したものも含まれる。
【0025】
本実施の形態の造粒粉の平均粒子直径は、60〜1000μmとするのが好ましい。本実施の形態の造粒粉の平均粒子直径が60μm以上であると、第2の炭素質原料10を多く集め造粒粉を大きくすることができるので、方向性の小さい造粒粉を得ることができる。本実施の形態の造粒粉の平均粒子直径が1000μm以下であると、体積に対して表面積が大きいので、水系の溶媒を容易に乾燥させることができる。
【0026】
さらに、造粒粉については粒径が15μmに満たない微粉末を除去する工程を含むことが好ましい。15μm以上の造粒粉は、粒が大きく成長しているので比表面積が小さい。このため、造粒時に用いた溶媒を容易に短時間で乾燥することができ、熱で疎水性結合材の変質を少なくすることができる。造粒粉の15μmに満たない微粉末を除去する方法としては、超音波振動を用いた振動篩、気流分級機などが利用できる。
【0027】
本実施の形態では親水性結合材に、水系の溶媒を使用し造粒するので造粒時に第1の炭素質材料を結合する疎水性結合材は水系の溶媒にほとんど溶解しない。このため造粒時には、親水性結合材が疎水性結合材2を第1の炭素質原料表面から溶出させたり、剥離させたりすることがない。一方、親水性結合材で造粒された造粒粉100は、例えば丸く成形され、第2の炭素質原料10が造粒粉の中で空隙を含んで等方的に配列された状態で結合されている。そしてこの造粒粉100は、親水性結合材の弱い結合力で構成されているので、CIP成形の圧力で潰れやすくすることができる。そのため、造粒粉100内部の空隙が容易に潰され、高密度の成形体を得ることができ、気孔が少ないので高強度の黒鉛材を得ることができる。
造粒粉100は、粒子径が第2の炭素質原料10より大きく、粒子間に大きな空隙が存在している。一般に大きな空隙は、空隙周辺で応力集中が起きやすいので素材の欠陥となって強度を大きく低下させる原因となる。造粒粉100は、成形圧力で容易に潰れるので、造粒粉間に形成される大きな空隙が黒鉛材に残留しにくい。そのため、均一で、強度の高い黒鉛材の成形体を得ることができる。また、造粒粉は、CIP成形で等方的に潰されるので、等方的な黒鉛材を得ることができる。
【0028】
本実施の形態の造粒粉は、圧縮破壊強度が0.02〜10.0MPaであることが好ましい。
図10は、圧縮破壊強度の説明図であり、粉体にかかる圧縮応力と、充填率との関係により示す。
図11は、粉体の充填率、圧縮応力、圧縮歪みを測定するための装置の模式図である。
図10及び
図11を用いて圧縮破壊強度の測定方法を説明する。
図10において縦軸は粉体の充填率、横軸は粉体の圧縮応力(対数軸)であり、詳しくは以下に示す。
圧縮破壊強度は以下のように測定する。
(1)充填率の測定:試料をタッピングしながら測定セルに均一に充填し、上蓋をのせて一定速度で圧縮する。(
図11参照)このとき、充填率Vmは、
Vm=ρb/ρpとして算出することができる。ρbは試料のかさ密度(質量/造粒粉の占有体積V)、ρpは、試料の真密度である。
(2)充填率(Y軸)−圧縮応力の対数(X軸)の片対数グラフに、圧縮応力に対する充填率の変化をプロットする。
(3)試料が造粒粉である場合、圧縮応力が上昇する過程でグラフの傾きが大きくなる箇所がある。その前後で、近似線a,bを引き、その交点cに対応する圧縮応力が圧縮破壊強度(圧縮崩壊強度ともいう)である。
【0029】
圧縮破壊強度の測定は、ホソカワミクロン株式会社製圧縮破壊強度・引張破断強度測定装置「アグロボット」で、測定することができる。
圧縮破壊強度とは、試料の粒子が潰れることにより、充填率が大きくなり始める圧縮応力であると考えられる。本実施の形態の造粒粉では、圧縮破壊強度以下の圧縮応力では、造粒粉が破壊されていないので造粒粉の圧縮挙動を示し、圧縮破壊強度を越える圧縮応力では造粒粉の第2の炭素質原料10をつなぐ親水性結合材20が壊されるので第2の炭素質原料10の圧縮挙動を示すようになると考えられる。
【0030】
圧縮破壊強度の望ましい範囲は、0.02〜10.0MPaが好ましい。造粒粉が充填された充填容器内で重力は一方向にしか働かない。このため重力により充填容器内で造粒粉が圧縮し潰れると、潰れた箇所で異方性材料が形成されやすくなる。圧縮破壊強度が0.02MPa以上であると、球状に形成された造粒粉は充填容器で造粒粉の重力により潰れにくく、CIP成形で等方的に潰されるので、得られる黒鉛材が異方性を生じにくい。圧縮破壊強度が10MPa以下であれば、後のCIP成形で造粒粉を十分に潰すことができるので、造粒粉の大きさに由来する大きな気孔ができにくく、高強度の黒鉛材ができる。本実施の形態の造粒粉は、表面の親水基が少なく、主に芳香環からなるコークスと疎水性結合材とが強く結びついた第2の炭素質原料10を、親水性結合材20で弱く結合し造粒粉を得ている。このため、CIP成形で造粒粉が壊れ易く、造粒粉が壊れた後に、第2の炭素質原料10どうしが強く結びつけられる。このため、異方比が小さく強固な黒鉛材を得ることができる。
【0031】
<S4:成形工程>
本実施の形態の成形工程では、前記造粒工程で得られた造粒粉を充填容器に充填し、冷間静水圧成形(CIP成形)する。
成形の圧力は、特に限定されないが、10MPa〜300MPaで成形することが好ましい。成形の圧力が10MPa以上であると、潰された造粒粉から得られる第2の炭素質原料10どうしを強く結合させることができる。そのため、高強度の黒鉛材を得ることができる。成形の圧力を、300MPaを越える成形圧力に高めても、成形体の密度がほとんど変わらないので、300MPa以下の成形の圧力で十分な密度の成形体を得ることができる。
充填容器は、どのようなものでもかまわないが、例えばゴムを素材としたケース(ラバーケース)を用いることができる。
混合物を粉砕して得られた第2の炭素質原料10は、粉砕時(S2:粉砕工程)に第1の炭素質原料1に沿って粉砕され、第1の炭素質原料1の一部も劈開される。このため、第2の炭素質原料10は2〜10程度のアスペクト比をもつ。通常CIP成形では、水等の加圧媒体で等方的に加圧するため成形過程(S5:成形工程)で異方性を生じにくい特徴がある。しかしながら大きなブロックを成形する際には前述したようにCIP成形を用いても、ラバーケースへの充填時に、特にラバーケースの下部では、第2の炭素質原料10の自重により一軸成形され、部分的に異方性が大きくなってしまうと考えられる。
【0032】
こうして得られる黒鉛材の製造方法(成形)の特徴を、
図4及び
図12を用いて説明する。
図4(a)及び(b)は本発明の実施の形態のCIP成形で使用するラバーケースに造粒粉を充填する工程の説明図であり、(a)は充填中、(b)は充填後の状態を示す。
図12(a)及び(b)は従来(比較例1)のCIP成形で使用するラバーケースに第2の炭素質原料を充填する工程を示す説明図であり、(a)は充填中、(b)は充填後の状態を示す。まず、従来例(後述の比較例1)の黒鉛材の製造方法の場合、
図12(a)乃至(b)に示すように、第2の炭素質原料10の充填時においてラバーケース31内の上部では第2の炭素質原料10の自重による圧縮が小さいので炭素質原料による方向性がつきにくく、異方性を生じにくい。これに対し第2の炭素質原料10の充填時においてラバーケース31内の下部では、第2の炭素質原料10が自重により一方向に圧縮されるため方向性がつくために、素材の中での異方性に偏りが生じ、異方性を生じやすい。
【0033】
これに対し、本実施の形態では
図4(a)及び(b)に示すように、ラバーケース31には、第2の炭素質原料10にさらに親水性結合材20を添加して造粒した造粒粉100の状態で充填される。造粒粉100は、充填容器内で造粒粉の自重で潰れない程度の圧縮破壊強度(0.02〜10.0MPaが好ましい)を備えている。このため、造粒粉100は、粉の自重では潰れにくい。CIP成形でこうした造粒粉を充填したラバーケース31(充填容器)ごと加圧すると、圧縮破壊強度に相当する圧力が加わったとき、造粒粉100が潰れ、成形されていく。このとき、造粒粉100の自重による圧力よりも圧縮破壊強度に相当する圧力の方が大きいので一軸的に加圧されることはほとんど無く等方的に成形される。このため成形体の素材全体にわたって、異方性の小さい黒鉛材を得ることができる。
【0034】
さらに
図6(a)を用いてさらに詳しく説明する。
図6(a)は、本発明の実施の形態の第2の炭素質原料10と造粒粉の圧縮歪みと圧縮応力との関係を示す図である。
図6(a)の本発明の実施の形態の第2の炭素質原料10と造粒粉の圧縮歪みと圧縮応力との関係は、
図11に示す装置を用いて測定することができる。
測定する試料(第2の炭素質原料10および造粒粉)をタッピングしながら測定セルに均一に充填し、上蓋をのせて一定速度で圧縮する。このときの上蓋にかける加圧圧力が圧縮応力である。圧縮歪みεは加圧前の試料の体積V
0と加圧中の体積Vから、以下算式に従って得ることができる。
ε=(V
0−V)/V
0
圧縮応力と、得られた圧縮歪みとをプロットし、
図6(a)の本発明の実施の形態の第2の炭素質原料10と造粒粉の圧縮歪みと圧縮応力との関係を示す図が得られる。
第2の炭素質原料10と造粒粉は、何れも第1の炭素質原料1を用いて作られているので、かさ密度は、0.6〜0.7g/cm
3程度である。(発明者らによって確認された。)このため、例えば高さ1400mmのラバーケースに実施の形態の第2の炭素質原料10が充填された場合と、実施の形態の造粒粉が充填された場合の、ラバーケース下部にかかる粉の圧力は、ほぼ同等であり、その値は8〜10kPaとなる。
図6(a)中Aは、約1400mmの高さの充填容器の下部にかかる第2の炭素質原料(または造粒粉)の自重による圧力を示す。
【0035】
第1の実施の形態の造粒粉を高さ1400mmのラバーケース31に充填した場合には、ラバーケース31下部では1%弱の圧縮歪み(d)であるのに対し、第2の炭素質原料10を高さ1400mmのラバーケース31に充填した場合では7%の圧縮歪み(e)が
図6のグラフから確認される。このため、第2の炭素質原料10から親水性結合材20を用いて造粒粉を形成することによって、粉の自重による圧縮歪みの大きさを小さくしていることが確認できる。
【0036】
さらに
図6(b)を用いて説明する。
図6(b)は、本発明の実施の形態の第2の炭素質原料10と造粒粉の充填率と圧縮応力との関係を示す図である。
図6(b)の本発明の実施の形態の第2の炭素質原料10と造粒粉の充填率と圧縮応力との関係は、
図11に示す装置を用いて測定することができる。
測定する試料(第2の炭素質原料10および造粒粉)をタッピングしながら測定セルに均一に充填し、上蓋をのせて一定速度で圧縮する。このときの上蓋にかける加圧圧力が圧縮応力であり、充填率Vmは、
Vm=ρb/ρpとして算出することができる。ρbは試料のかさ密度(質量/造粒粉の占有体積V)、ρpは、試料の真密度である。
圧縮応力と、得られた充填率とをプロットし、
図6(b)の本発明の実施の形態の第2の炭素質原料10と造粒粉の充填率と圧縮応力との関係を示す図が得られる。
図6(b)中Aは、約1400mmの高さの充填容器の下部にかかる第2の炭素質原料(または造粒粉)の自重による圧力を示す。前述したように高さ1400mmのラバーケースに実施の形態の第2の炭素質原料10が充填された場合と、実施の形態の造粒粉が充填された場合の、ラバーケース下部にかかる粉の圧力はほぼ同等であり、その値は8〜10kPaとなる。本実施の形態の造粒粉の場合、ラバーケース下部にかかる粉の圧力(8〜10kPa)の領域では、充填率はほとんど変化しない。これに対し本実施の形態の第2の炭素質原料10の場合、ラバーケース下部にかかる粉の圧力(8〜10kPa)の領域では、充填率は圧力に比例して大きくなっていることが確認される。このため、第2の炭素質原料10から、親水性結合材20を用いて造粒粉を形成することによって、造粒粉が潰れにくくなり、粉の自重による圧縮歪みの大きさを小さくしていることが確認できる。
【0037】
<S5:焼成工程>
前記成形工程で得られた成形体を、不活性ガス、還元性ガス雰囲気中で焼成する。不活性ガスとは、窒素、アルゴン、ヘリウムなどであり、還元性ガスとは、炭化水素ガス、水素、一酸化炭素等が挙げられる。このような雰囲気を形成するには、焼成炉中にこれらのガスを導入し成形体を焼成することによりできる。
還元性の雰囲気であればステンレスなどの金属、アルミナなどのセラミックスの焼成缶に成形体を入れ、蓋をした上で外気が内部に浸透しないように成形体を焼成しても良い。こうすることにより成形体から発生する炭化水素ガス、一酸化炭素ガスなどによって還元性ガス雰囲気が形成され、焼成体の酸化を防止することができる。さらに成形体を焼成缶に入れて、焼成する場合には、数ミリ程度のコークスの詰め粉にうめて焼成することにより、焼成缶の外気が成形体に到達し焼成体の酸化を防止することができる。更に、生コークス、硬ピッチなどの揮発分を含む炭素系の粉または粒で詰め粉の上を覆うことにより、炭化水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスを発生させ、焼成缶の外気が成形体に到達し焼成体が酸化することを防止することができる。
【0038】
焼成工程の処理温度は特に限定されない。室温(25℃)から700℃の温度領域では分解ガスの発生が非常に多いので、分解ガスの排気に対応できる焼成炉で焼成することが望ましい。室温(25℃)から1200℃の温度範囲で、成形体を焼成しておくと、成形体の揮発分が十分に抜け炭素化が進み、揮発物が除去されるので後の黒鉛化で発生するガスをより減らすことができる。
【0039】
焼成時の昇温速度は、成形体のサイズによって適宜選択すると良い。30×50×150mm程度の成形体であれば、例えば、20℃/Hで焼成することにより、焼成体内部の熱歪みを小さくできるので割れにくくすることができる。300×600×1000程度の成形体であれば、例えば、2℃/H程度まで昇温速度を低下させると、焼成体内部の熱歪みを小さくできるので割れにくくことができる。
【0040】
この焼成工程で、大半の親水性結合材20は、熱分解しガス化する。このため親水性結合材20に由来する炭素は、もともと含有量が少ない(第2の炭素質原料100重量部に対し10重量部以下)ので、ほとんどがガス化して無くなり、疎水性結合材によるコークスの結合力に与える影響は小さく黒鉛材の強度を低下させにくい。
【0041】
<S6:黒鉛化工程>
前記焼成工程に引き続き、焼成された成形体を更に高温で熱処理し黒鉛化する。黒鉛化の処理温度は特に限定されない。黒鉛材の用途に応じて適宜する。例えば2000〜3400℃の範囲で黒鉛化することができる。2000℃以上で熱処理すると、黒鉛の結晶化が進み、黒鉛材が軟らかくなり、容易に加工することができる。このような黒鉛材は、細かな加工の必要な半導体製造装置用部品、電子部品用位置決め治具などに利用できる。3400℃以下の熱処理温度であれば、黒鉛の昇華温度(約3650℃)と離れている。このため黒鉛表面の昇華が少ないので、昇華によってエネルギーが消費されにくく容易に昇温することができる。
黒鉛化の方法は、どのような方法で行っても良いが、焼成体を炉に埋め、電極から焼成体に通電し発熱させるアチェソン炉、誘導コイルにより焼成体に誘導電流を流し発熱させる誘導炉などが利用できる。
【0042】
<S7:含浸工程>
黒鉛材を高密度化し、固有抵抗を下げ、熱伝導率を上げるために焼成工程と黒鉛化工程の間に含浸工程を加えても良い。含浸工程は、成形体を焼成した焼成体をオートクレーブに入れ、真空引き及び加熱した後、溶融したピッチを導入し、窒素ガスなどの気体で圧力を加え含浸する。ピッチ中から焼成体を取り出し、前記焼成工程と同様の方法で焼成することによって行われる。
含浸工程は1回でも複数回行っても良い。含浸時のオートクレーブの温度はピッチが溶融していれば特に限定されないが、例えば150〜300℃で行うことができる。含浸の圧力は特に限定されないが例えば4MPaで行う。
【0043】
図7は、本発明の実施例及び比較例の工程フローを示す図、
図8は、本発明の実施例及び比較例の製造条件を示す表、
図9は、本発明の実施例及び比較例の方法で得られた黒鉛の測定結果を示す表である。
図8において、HGIとは、ハードグローブ指数をさし、コークスの粉砕性指数を示す。(JIS M8801)混練の温度とは、混練時に到達した最高の温度を示す。
図8において、Dp50とは、積算%の分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子直径を示す。具体的にはレーザー回折式粒度分布計で測定することにより得ることができる。
図9においてCTEとは、熱膨張係数50−400℃の範囲における熱膨張係数を示す。
【0044】
(実施例1)
実施例1について説明する。
<S1:混練工程>
熱媒オイルによって210℃に加熱したニーダーに仮焼コークス粉末(第1の炭素質原料)100重量部、ピッチ(疎水性結合材)287重量部を加え混練した。仮焼コークスのDp50は、14.7μm、HGIは、28であった。混練を2時間継続し、混練された混合物を取り出す。混練時、混合物は最高251℃に到達した。
【0045】
<S2:粉砕工程>
前記混合物を、粉砕機により粉砕し、第2の炭素質原料10を得る。
図2に示すように、第2の炭素質原料10はコークスからなる第1の炭素質原料1をピッチからなる疎水性結合材2で結合してなるものである。第2の炭素質原料のDp50は、27.7μmであった。
【0046】
<S3:造粒工程>
前記第2の炭素質原料10を水系の溶媒に分散させ、親水性結合材20として、PVA(ポリビニルアルコール)を加える。それぞれの比率は、第2の炭素質原料100重量部、水100重量部、PVA1.0重量部であった。また、第2の炭素質原料は、疎水性であるため水系の溶媒への溶解性を高めるために界面活性剤(ポリアルキレングリコール0.1重量部)を加え、撹拌しながらスラリー化した。
このようにして得られたスラリーをスプレードライ法により110℃の乾燥室内に噴霧し造粒した。尚、得られた造粒粉100のうち、気流分級機で15μm以上、振動篩で800μm以下を分級し15〜800μmの造粒粉が得られた。
造粒粉のDp50は203μm、圧縮破壊強度は93.7kPa(0.0937MPa)であった。
【0047】
<S4:成形工程>
前記造粒工程で得られた造粒粉100を
図4(a)及び(b)に示すように、内寸900×450×高さ1400mmのラバーケース(ゴムバック)31に充填し8時間放置した。尚、実施例1では、放置後造粒粉100の沈み込みは見られず、造粒粉の重力による圧縮はなかった。放置後、ラバーケース31の上部の造粒粉100をならしたのちゴムの蓋をして密封し100MPaの圧力でCIP成形した。(
図5(a)(b)(c))成形後、ラバーケース31を開け、成形体40を得た。
【0048】
<S5:焼成工程>
前記工程で得られた成形体を、ステンレス製の焼成缶に詰め、粒子径が5mm以下のコークス粒からなる詰め粉で覆い、さらに表層を揮発性の生コークスで覆った後、ステンレス製の蓋をして900℃で焼成した。昇温は28日間かけて室温(25℃)から昇温し、900℃で16時間保持した。
【0049】
<S6:黒鉛化工程>
前記焼成工程で得られた焼成体を、アチェソン炉に入れ、2500℃に加熱し、黒鉛化した。室温(約25℃)〜1500℃までは、5日間かけ概ね一定の速度で昇温し、1500℃〜2500℃は出力を上げ2日間で昇温した。
(実施例2)
次に実施例2について説明する。
<S1:混練工程>
熱媒オイルによって210℃に加熱したニーダーに仮焼コークス粉末(第1の炭素質原料)100重量部、ピッチ(疎水性結合材)287重量部を加え混練した。仮焼コークスのDp50は、14.7μm、HGIは、28であった。混練を2時間継続し、混練された混合物を取り出す。混練時、混合物は最高261℃に到達した。
【0050】
<S2:粉砕工程>
前記混合物を、粉砕機により粉砕し、第2の炭素質原料10を得る。
図2に示すように、第2の炭素質原料10はコークスからなる第1の炭素質原料1をピッチからなる疎水性結合材2で結合してなるものである。第2の炭素質原料のDp50は、28.2μmであった。
【0051】
<S3:造粒工程>
前記第2の炭素質原料10を水系の溶媒に分散させ、親水性結合材20として、PVA
(ポリビニルアルコール)を加える。それぞれの比率は、第2の炭素質原料100重量部、水100重量部、PVA1.0重量部であった。また、第2の炭素質原料は、疎水性であるため水系の溶媒への溶解性を高めるために界面活性剤(ポリアルキレングリコール0.1重量部)を加え、撹拌しながらスラリー化した。
このようにして得られたスラリーをスプレードライ法により110℃の乾燥室内に噴霧し造粒した。尚、得られた造粒粉100のうち、気流分級機で15μm以上、振動篩で800μm以下を分級し15〜800μmの造粒粉が得られた。
造粒粉のDp50は、261μm、圧縮破壊強度は95.7kPa(0.0957MPa)であった。
【0052】
<S4:成形工程>
前記造粒工程で得られた造粒粉100を
図4(a)及び(b)に示すように、内寸900×450×高さ1400mmのラバーケース(ゴムバック)31に充填し8時間放置した。尚、実施例2では、放置後造粒粉100の沈み込みは見られず、造粒粉の重力による圧縮はなかった。放置後、ラバーケース31の上部の造粒粉100をならしたのちゴムの蓋をして密封し100MPaの圧力でCIP成形した。(
図5(a)(b)(c))成形後、ラバーケース31を開け、成形体40を得た。
【0053】
<S5:焼成工程>
前記工程で得られた成形体を、ステンレス製の焼成缶に詰め、粒子径が5mm以下のコークス粒からなる詰め粉で覆い、さらに表層を揮発性の生コークスで覆った後、ステンレス製の蓋をして900℃で焼成した。昇温は28日間かけて室温(25℃)から昇温し、900℃で16時間保持した。
【0054】
<S6:黒鉛化工程>
前記焼成工程で得られた焼成体を、アチェソン炉に入れ、2500℃に加熱し、黒鉛化した。室温(約25℃)〜1500℃までは、5日間かけ概ね一定の速度で昇温し、1500℃〜2500℃は出力を上げ2日間で昇温した。
(実施例3)
次に実施例3について説明する。
<S1:混練工程>
熱媒オイルによって210℃に加熱したニーダーに仮焼コークス粉末(第1の炭素質原料)100重量部、ピッチ(疎水性結合材)287重量部を加え混練した。仮焼コークスのDp50は、15.2μm、HGIは、34であった。混練を2時間継続し、混練された混合物を取り出す。混練時、混合物は最高253℃に到達した。
【0055】
<S2:粉砕工程>
前記混合物を、粉砕機により粉砕し、第2の炭素質原料10を得る。
図2に示すように、第2の炭素質原料10はコークスからなる第1の炭素質原料1をピッチからなる疎水性結合材2で結合してなるものである。第2の炭素質原料のDp50は、26.7μmであった。
【0056】
<S3:造粒工程>
前記第2の炭素質原料10を水系の溶媒に分散させ、親水性結合材20として、PVA(ポリビニルアルコール)を加える。それぞれの比率は、第2の炭素質原料100重量部、水100重量部、PVA1.0重量部であった。また、第2の炭素質原料は、疎水性であるため水系の溶媒への溶解性を高めるために界面活性剤(ポリアルキレングリコール0.1重量部)を加え、撹拌しながらスラリー化した。
このようにして得られたスラリーをスプレードライ法により110℃の乾燥室内に噴霧し造粒した。尚、得られた造粒粉100のうち、気流分級機で15μm以上、振動篩で800μm以下を分級し15〜800μmの造粒粉が得られた。
造粒粉のDp50は、231μm、圧縮破壊強度は96.2kPa(0.0962MPa)であった。
【0057】
<S4:成形工程>
前記造粒工程で得られた造粒粉100を
図4(a)及び(b)に示すように、内寸900×450×高さ1400mmのラバーケース(ゴムバック)31に充填し8時間放置した。尚、実施例3では、放置後造粒粉100の沈み込みは見られず、造粒粉の重力による圧縮はなかった。放置後、ラバーケース31の上部の造粒粉100をならしたのちゴムの蓋をして密封し100MPaの圧力でCIP成形した。(
図5(a)(b)(c))成形後、ラバーケース31を開け、成形体40を得た。
【0058】
<S5:焼成工程>
前記工程で得られた成形体を、ステンレス製の焼成缶に詰め、粒子径が5mm以下のコークス粒からなる詰め粉で覆い、さらに表層を揮発性の生コークスで覆った後、ステンレス製の蓋をして900℃で焼成した。昇温は28日間かけて室温(25℃)から昇温し、900℃で16時間保持した。
【0059】
<S6:黒鉛化工程>
前記焼成工程で得られた焼成体を、アチェソン炉に入れ、2500℃に加熱し、黒鉛化した。室温(約25℃)〜1500℃までは、5日間かけ概ね一定の速度で昇温し、1500℃〜2500℃は出力を上げ2日間で昇温した。
【0060】
次に比較例について説明する。
比較例1,2では水系の溶媒を用いた造粒工程(実施例1〜3の造粒工程S3)を省略した。他の工程については前記実施の形態と同様である。
【0061】
(比較例1)
次に本発明の比較例1について説明する。
<S1:混練工程>
熱媒オイルによって210℃に加熱したニーダーに仮焼コークス(第1の炭素質原料)100重量部、ピッチ(疎水性結合材)287重量部を加え混練した。仮焼コークスのDp50は、14.1μm、HGIは、31であった。混練を2時間程度継続し、混練された混合物を取り出した。混練時、混合物は最高257℃に到達した。この混練工程S1は実施例と同様である。
【0062】
<S2:粉砕工程>
前記混合物を、粉砕機により粉砕し、第2の炭素質原料10を得る。
図2に示すように、第2の炭素質原料10はコークスからなる第1の炭素質原料1をピッチからなる疎水性結合材2で結合してなるものである。第2の炭素質原料のDp50は、25.6μmであった。圧縮破壊強度は、圧縮応力に対する充填率の急激な変化がなく検出出来なかった。
【0063】
<S4:成形工程>
前記粉砕工程で得られた第2の炭素質原料10を
図11に示すように、内寸900×450×高さ1400mmのラバーケース(ゴムバック)31に充填し8時間放置した。尚、放置後充填された第2の炭素質原料10は約100mmの沈下が見られた。ラバーケース下部に充填された第2の炭素質原料10が、重力によって圧縮されたためと考えられる。放置後、ラバーケース31の上部の第2の炭素質原料10をならしたのちゴムの蓋をして密封し100MPaの圧力でCIP成形した。(
図13(a)(b)(c))成形後、ラバーケース31を開け、成形体40を得た。
【0064】
<S5:焼成工程>
前記工程で得られた成形体を、ステンレス製の焼成缶に詰め、粒子径が5mm以下のコークス粒からなる詰め粉で覆い、さらに表層を揮発性の生コークスで覆った後、ステンレス製の蓋をして900℃で焼成した。昇温は28日間かけて室温(25℃)から昇温し、900℃で16時間保持した。
【0065】
<S6:黒鉛化工程>
前記焼成工程で得られた焼成体を、アチェソン炉に入れ、2500℃に加熱し、黒鉛化した。室温(約25℃)〜1500℃までは、5日間かけ概ね一定の速度で昇温し、1500℃〜2500℃は出力を上げ、2日間で昇温した。この黒鉛化工程S6は実施例1と同様である。
【0066】
(比較例2)
次に本発明の比較例2について説明する。
<S1:混練工程>
熱媒オイルによって210℃に加熱したニーダーに仮焼コークス(第1の炭素質原料)100重量部、ピッチ(疎水性結合材)287重量部を加え混練した。仮焼コークスのDp50は、14.5μm、HGIは、25であった。混練を2時間程度継続し、混練された混合物を取り出した。混練時、混合物は最高255℃に到達した。この混練工程S1は実施例と同様である。
【0067】
<S2:粉砕工程>
前記混合物を、粉砕機により粉砕し、第2の炭素質原料10を得る。
図2に示すように、第2の炭素質原料10はコークスからなる第1の炭素質原料1をピッチからなる疎水性結合材2で結合してなるものである。第2の炭素質原料のDp50は、26.3μmであった。圧縮破壊強度は、圧縮応力に対する充填率の急激な変化がなく検出出来なかった。
【0068】
<S4:成形工程>
前記粉砕工程で得られた第2の炭素質原料10を
図11に示すように、内寸Φ500×高さ1500mmのラバーケース(ゴムバック)31に充填し8時間放置した。尚、放置後充填された第2の炭素質原料10は約100mmの沈下が見られた。ラバーケース下部に充填された第2の炭素質原料10が、重力によって圧縮されたためと考えられる。放置後、ラバーケース31の上部の第2の炭素質原料10をならしたのちゴムの蓋をして密封し100MPaの圧力でCIP成形した。(
図13(a)(b)(c))成形後、ラバーケース31を開け、成形体40を得た。
【0069】
<S5:焼成工程>
前記工程で得られた成形体を、ステンレス製の焼成缶に詰め、粒子径が5mm以下のコークス粒からなる詰め粉で覆い、さらに表層を揮発性の生コークスで覆った後、ステンレス製の蓋をして900℃で焼成した。昇温は28日間かけて室温(25℃)から昇温し、900℃で16時間保持した。
【0070】
<S6:黒鉛化工程>
前記焼成工程で得られた焼成体を、アチェソン炉に入れ、2500℃に加熱し、黒鉛化した。室温(約25℃)〜1500℃までは、5日間かけ概ね一定の速度で昇温し、1500℃〜2500℃は出力を上げ、2日間で昇温した。この黒鉛化工程S6は実施例1と同様である。
【0071】
(比較例3)
次に本発明の比較例3について説明する。
比較例3では水系の溶媒を用い,第1の炭素質原料を水系の溶媒と親水性結合材20を用いて造粒する造粒工程と、疎水性結造材を加え混練し混合物を得る混練工程S1と、粉砕工程S2、成形工程S4、焼成工程S5、黒鉛化工程S6とからなる。すなわち水系の溶媒と、親水性結合材20とを用いて造粒する造粒工程は、混練工程S1の前の第1の炭素質原料を造粒する工程である。混練工程の後には、造粒工程はない。
つまり、実施例1〜3とは造粒工程S3の代わりに第1の炭素質原料の造粒工程を行った後に混練工程S1、粉砕工程S2を行うことが異なる。比較例1及び2は、造粒工程S3を省略したのに対して、比較例は第1の炭素質原料の造粒工程を最初に行う点が異なる。
【0072】
<造粒工程>
第1の炭素質原料を水系の溶媒に分散させ、親水性結合材20として、PVA(ポリビニルアルコール)を加える。それぞれの比率は、仮焼コークス(第1の炭素質原料)100重量部、水100重量部、PVA1.0重量部であった。また、第1の炭素質原料は、疎水性であるため溶解性を高めるために界面活性剤(ポリアルキレングリコール0.1重量部)を加えスラリー化した。
こうして得られたスラリーを110℃の装置内にスプレードライ法により噴霧し、造粒し造粒された第1の炭素質原料を得た。造粒前の仮焼コークスのDp50は、14.4μm、HGIは、31であった。
【0073】
<混練工程>
熱媒オイルによって210℃に加熱したニーダーに造粒された第1の炭素質原料100重量部、ピッチ(疎水性結合材)287重量部を加え混練した。混練を2時間程度継続し内容物を取り出す。混練時、混合物は最高255℃に到達した。
【0074】
<S2:粉砕工程>
前記混合物を、粉砕機により粉砕し、疎水性結合材で結合された炭素質原料を得る。疎水性結合材で結合された炭素質原料は、本比較例の炭素質原料は親水性結合材20で造粒されたコークスからなる第1の炭素質原料1をピッチからなる疎水性結合材で結合してなるものである。疎水性結合材で結合された炭素質原料のDp50は、27.2μmであった。圧縮破壊強度は、圧縮応力に対する充填率の急激な変化がなく検出出来なかった。
【0075】
<S4:成形工程>
前記粉砕工程で得られた疎水性結合材で結合された炭素質原料を、内寸Φ500×高さ1500mmのラバーケース(ゴムバック)31に充填し8時間放置した。尚、放置後充填された疎水性結合材で結合された炭素質原料は約100mmの沈下が見られた。ラバーケース下部に充填された疎水性結合材で結合された炭素質原料が、重力によって圧縮されたためと考えられる。放置後、ラバーケース31の上部の造粒粉100をならしたのちゴムの蓋をして密封し100MPaの圧力でCIP成形した。(
図13(a)(b)(c))CIP成形後ラバーケース31を開け、成形体40を得た。
【0076】
<S5:焼成工程>
前記工程で得られた成形体を、ステンレス製の焼成缶に詰め、粒子径5mm以下のコークス粒からなる詰め粉で覆い、さらに表層を揮発性の生コークスで覆った後、ステンレス製の蓋をして900℃で焼成した。昇温は28日間かけて室温(25℃)から昇温し、900℃で16時間保持した。
【0077】
<S6:黒鉛化工程>
前記焼成工程で得られた焼成体をアチェソン炉に入れ、2500℃に加熱し、黒鉛化した。室温(約25℃)〜1500℃までは、5日間かけ概ね一定の速度で昇温し、1500℃〜2500℃は出力を上げ2日間で昇温した。
【0078】
実施例1〜3及び比較例1〜3の各条件を
図8の表にまとめて示す。
このようにして得られた、黒鉛材に対し、黒鉛材の上、中又は下の位置におけるかさ比重、ショア硬度、曲げ強度、固有抵抗、CTEを測定した結果を
図9の表にまとめて示す。
【0079】
なお、得られた黒鉛材の上、中又は下の位置からΦ8×80mmの試料を切り出して評価用のサンプルとした。Φ8mm×80mmの各試料の、直径、長さ、質量から試料のかさ密度を測定した。
【0080】
次に前記の試料を、ショア硬度計にてショア硬度を測定した。
次に前記の各試料(Φ8mm×80mm)の長さ方向に1Aの定電流を流し、試料中央付近の1cm間の電圧降下を測定し、試料の固有抵抗を測定した。固有抵抗は下記式から求めた。
固有抵抗=(電圧降下×断面積)/(電流×電圧降下の測定距離)
【0081】
株式会社島津製作所製オートグラフAG−IS(5kN)を使用し、3点曲げ強度を測定した。
【0082】
またCTE(熱膨張率)は次のようにして測定した。
前記の各試料(Φ8mm×80mm)から、Φ4mm×20mmの試料を加工し、リガク電機製熱膨張計(DLY−1500)を使用し測定した。測定範囲は50〜400℃であり、この間の伸び率を350℃(400−50℃)で除することによって算出した。
実施例1〜3及び比較例1〜3の各位置の固有抵抗の異方比はそれぞれ、以下のとおりである。
実施例1の上部の固有抵抗は、AG方向で1.44mΩcm、WG方向で1.43mΩcmであり、異方比=最大値(1.44)/最小値(1.43)−1=0.7%
実施例1の下部の固有抵抗は、AG方向で1.40mΩcm、WG方向で1.42mΩcmであり、異方比=最大値(1.42)/最小値(1.40)−1=1.4%
実施例2の上部の固有抵抗は、AG方向で1.43mΩcm、WG方向で1.43mΩcmであり、異方比=最大値(1.43)/最小値(1.43)−1=0.0%
実施例2の下部の固有抵抗は、AG方向で1.42mΩcm、WG方向で1.45mΩcmであり、異方比=最大値(1.45)/最小値(1.42)−1=2.1%
実施例3の上部の固有抵抗は、AG方向で1.20mΩcm、WG方向で1.19mΩcmであり、異方比=最大値(1.20)/最小値(1.19)−1=0.8%
実施例3の中央部の固有抵抗は、AG方向で1.15mΩcm、WG方向で1.17mΩcmであり、異方比=最大値(1.17)/最小値(1.15)−1=1.7%
実施例3の下部の固有抵抗は、AG方向で1.20mΩcm、WG方向で1.21mΩcmであり、異方比=最大値(1.21)/最小値(1.20)−1=1.8%
比較例1の上部の固有抵抗は、AG方向で1.26mΩcm、WG方向で1.23mΩcmであり、異方比=最大値(1.26)/最小値(1.23)−1=2.4%
比較例1の中央部の固有抵抗は、AG方向で1.25mΩcm、WG方向で1.18mΩcmであり、異方比=最大値(1.25)/最小値(1.18)−1=5.9%
比較例1の下部の固有抵抗は、AG方向で1.33mΩcm、WG方向で1.17mΩcmであり、異方比=最大値(1.33)/最小値(1.17)−1=13.7%
比較例2の上部の固有抵抗は、AG方向で1.30mΩcm、WG方向で1.23mΩcmであり、異方比=最大値(1.30)/最小値(1.23)−1=5.7%
比較例2の中央部の固有抵抗は、AG方向で1.27mΩcm、WG方向で1.16mΩcmであり、異方比=最大値(1.27)/最小値(1.16)−1=9.5%
比較例2の下部の固有抵抗は、AG方向で1.34mΩcm、WG方向で1.13mΩcmであり、異方比=最大値(1.34)/最小値(1.13)−1=18.6%
比較例3の上部の固有抵抗は、AG方向で1.30mΩcm、WG方向で1.23mΩcmであり、異方比=最大値(1.30)/最小値(1.23)−1=5.7%
比較例3の下部の固有抵抗は、AG方向で1.34mΩcm、WG方向で1.13mΩcmであり、異方比=最大値(1.34)/最小値(1.13)−1=18.6%
また、実施例1〜3及び比較例1〜3の各位置の熱膨張係数の異方比はそれぞれ以下のとおりである。
実施例1の上部の熱膨張係数は、AG方向で5.10×10
-6℃、WG方向で5.09×10
-6℃であり、異方比=最大値(5.10)/最小値(5.09)−1=0.2%
実施例1の下部の熱膨張係数は、AG方向で5.08×10
-6℃、WG方向で5.23×10
-6℃であり、異方比=最大値(5.23)/最小値(5.08)−1=3.0%
実施例2の上部の熱膨張係数は、AG方向で5.08×10
-6℃、WG方向で5.23×10
-6℃であり、異方比=最大値(5.23)/最小値(5.08)−1=3.0%
実施例2の下部の熱膨張係数は、AG方向で5.16×10
-6℃、WG方向で5.30×10
-6℃であり、異方比=最大値(5.30)/最小値(5.16)−1=2.7%
実施例3の上部の熱膨張係数は、AG方向で4.51×10
-6℃、WG方向で4.35×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.51)/最小値(4.35)−1=3.7%
実施例3の中央部の熱膨張係数は、AG方向で4.34×10
-6℃、WG方向で4.45×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.45)/最小値(4.34)−1=2.5%
実施例3の下部の熱膨張係数は、AG方向で4.49×10
-6℃、WG方向で4.37×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.49)/最小値(4.37)−1=2.7%
比較例1の上部の熱膨張係数は、AG方向で4.10×10
-6℃、WG方向で3.82×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.10)/最小値(3.82)−1=7.3%
比較例1の中央部の熱膨張係数は、AG方向で4.30×10
-6℃、WG方向で3.86×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.30)/最小値(3.86)−1=11.4%
比較例1の下部の熱膨張係数は、AG方向で4.43×10
-6℃、WG方向で3.75×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.43)/最小値(3.75)−1=18.1%
比較例2の上部の熱膨張係数は、AG方向で4.34×10
-6℃、WG方向で4.09×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.34)/最小値(4.09)−1=6.1%
比較例2の中央部の熱膨張係数は、AG方向で4.50×10
-6℃、WG方向で3.73×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.50)/最小値(3.73)−1=20.6%
比較例2の下部の熱膨張係数は、AG方向で4.65×10
-6℃、WG方向で3.83×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.65)/最小値(3.83)−1=21.4%
比較例3の上部の熱膨張係数は、AG方向で4.34×10
-6℃、WG方向で4.09×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.34)/最小値(4.09)−1=6.1%
比較例3の下部の熱膨張係数は、AG方向で4.64×10
-6℃、WG方向で3.83×10
-6℃であり、異方比=最大値(4.64)/最小値(3.83)−1=21.1%
図9に示す表から明らかなように、実施例1-3の場合は熱膨張係数、固有抵抗ともに素材全体で5%以下である。
【0083】
比較例1〜2では、熱膨張係数、固有抵抗共に、素材の成形上部では異方比は8%以下、成形下部の異方比は20%前後である。これより、比較例1〜2では、成形下部で異方比が大きくなっているのに対し、実施例1〜3は、素材の熱膨張係数の異方比は、何れの部位でも5%以下である。実施例1〜3において、異方比が小さくなっているのは、第2の炭素質原料10を造粒したために重力による圧縮が起きにくくなったことと、造粒粉自体に方向性がない効果によるものと推定される。
また、比較例3では、第1の炭素質原料を造粒し、粒子を球形化しているにもかかわらず、材料の成形下部では固有抵抗、熱膨張係数とも異方比が20%前後と大きくなっている。
【0084】
比較例3では、第1の炭素質原料を造粒しているにもかかわらず異方比が大きくなっている原因は以下のように考えられる。
比較例3は結合力の弱い親水性結合材20を用い第1の炭素質原料を造粒したのち、疎水性結合材を用い混練している。このため、混練の過程で第1の炭素質原料を造粒する親水性結合材20が崩れ、第1の炭素質原料を造粒した効果がなくなっている。つまり、実質的に第1の炭素質原料を、疎水性結合材を用いて混練した場合と同じ状態になっていると考えられる。また、混練して得られた混合物を粉砕し得られた粉をそのままCIP成形している。混練した混合物を粉砕し、そのままCIP成形しているので、異方比のある粉が、ラバーケースの中で重力によって一軸成形され、異方性が大きくなったと考えられる。