特許第6010669号(P6010669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010669
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】船舶内のシール装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 5/125 20060101AFI20161006BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20161006BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20161006BHJP
   B63H 23/36 20060101ALI20161006BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20161006BHJP
【FI】
   B63H5/125
   B63H21/17
   B63H25/42 Q
   B63H23/36
   F16J15/3204
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-170376(P2015-170376)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2016-52884(P2016-52884A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2015年8月31日
(31)【優先権主張番号】14183127.1
(32)【優先日】2014年9月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502099348
【氏名又は名称】エービービー オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレ コルテライネン
(72)【発明者】
【氏名】エルッキ ロンカイネン
(72)【発明者】
【氏名】ユッシ キースキレ
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/004456(WO,A1)
【文献】 特開2008−001208(JP,A)
【文献】 特開2002−234493(JP,A)
【文献】 米国特許第3902726(US,A)
【文献】 米国特許第3773336(US,A)
【文献】 米国特許第5813676(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 5/125,20/00,23/36,
25/42,21/17
F16J 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(10)内のシール装置であって、前記船舶(10)内の支持構造(33、83、710)内の開口部(O1、O2)を貫通する円筒形状の回転部分(31、100)を媒体(W)に対して封止するシール(500)を有し、前記シール(500)は一式の環状シール・リング(510、520、530、540)を有し、各シール・リング(510、520、530、540)は、対応するシール支持部(511、521、531、541)で支持されるシール部(512、522、532、542)を有している、シール装置において、
前記媒体(W)に最も近くに位置する前記第1のシール・リング(510)の前記シール支持部(511)が、一端に環状フランジ(511B)を備えるシリンダ(511A)の形状を有し、前記シリンダ(511A)の外周は、前記開口部(O1、O2)の内周に対して支持され且つ補助シール(610)により封止され、また前記環状フランジ(511B)が、前記開口部(O1、O2)を取り囲む前記支持構造(33、83、710)に対して支持されること、及び
前記シール(500)を前記回転部分(31、100)に対して軸方向に再配置するために、前記開口部(O1、O2)を取り囲む前記支持構造(33、83、710)に対する前記第1のシール支持部(511)の位置を調整する調整手段(830、900)があること
を特徴とする、シール装置。
【請求項2】
前記調整手段(830、900)は、前記シール(500)を前記回転部分(31、100)に対して軸方向に再配置するために、前記第1のシール・リング(510)の前記シール支持部(511)の前記環状フランジ(511B)と前記開口部(O1、O2)を取り囲む前記支持構造(33、83、710)との間に挿入されるように配置されたスペーサ部(900)を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記調整手段(830、900)は、前記シール(500)を前記回転部分(31、100)に対して軸方向に再配置するために、前記第1のシール・リング(510)の前記シール支持部(511)の前記環状フランジ(511B)と前記開口部(O1、O2)を取り囲む前記支持構造(33、83、710)とを貫通する調整ボルト(830)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記シール(500)は、推進ユニット(20)の回転ストラット(21)を封止する旋回シールであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記推進ユニット(20)は、上部(22)及び下部(23)を備えた中空のストラット(21)を有し、前記上部(22)の上端部(100)が前記船舶(10)の底部(11、12)の第1の開口部(O1)を貫通し、また前記上部(22)の前記上端部(100)は、旋回ベアリング(300)により前記船舶(10)に回動可能に取り付けられ、且つ前記シール(500)により前記第1の開口部(O1)内で封止されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記シール(500)は、該シール(500)を貫通するボルト(810)によって、前記船舶(100)の前記底部(12)に取り付けられた第1の支持リング(83)の上面に取り付けられ、それにより前記シール(500)の前記シール部(512、522、532)は前記円筒形の回転部分(100)の外表面に作用し、また前記第1のシール・リング(510)の前記シール支持部(511)の前記シリンダ(511A)の前記補助シール(610)は前記第1の支持リング(83)の内周に作用することを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記シール(500)は、該シール(500)を貫通するボルト(810)によって、前記船舶(100)の前記底部(12)に取り付けられた第1の支持リング(83)の下面に取り付けられた第2の支持リング(710)の上面に取り付けられ、それにより前記シール(500)の前記シール部(512、522、532)は前記円筒形の回転部分(100)の外表面に作用し、また前記第1のシール・リング(510)の前記シール支持部(511)の前記シリンダ(511A)内の前記補助シール(610)は前記第2の支持リング(710)の内周に作用することを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記シール(500)は、推進ユニット(20)の回転シャフト(31)を封止するシャフト・シールであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記推進ユニット(20)は、上部(22)及び下部(23)を備えた中空のストラット(21)を有し、前記ストラット(21)の前記下部(23)は、第1のシャフト(31)によって前記下部(23)の外部にあるプロペラ(32)に連結された第1の電動モータ(30)を有する縦長の区画を形成し、前記第1のシャフト(31)は、前記ストラット(21)の前記下部(23)の船尾端部(23B)にある端壁(33)内の第2の開口部(O2)を貫通し、且つ前記第2の開口部(O2)で前記シール(500)により封止されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記シール(500)は、前記第1のシール・リング(510)の前記シール支持部(511)の前記フランジ(511B)を貫通するボルト(840)によって、前記ストラット(21)の前記下部(22)の前記船尾端部(23B)にある前記端壁(33)に取り付けられ、それにより前記シール(500)の前記シール部(512、522、532)は前記円筒形の回転部分(31)の外表面に作用し、また前記第1のシール・リング(510)の前記シール支持部(511)の前記シリンダ(511A)内の前記補助シール(610)は前記第2の開口部(O2)の内周に作用することを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による船舶のシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、船舶の開口部又は船舶に関連する機器の開口部を貫通する回転部分であって、当該開口部において例えば海水又は油といった媒体に対して封止(シール)されるべき種々の回転部分を有する。
【0003】
推進ユニットを備えた船舶は、開口部を貫通する回転部分が媒体に対して封止されるべき少なくとも2つの位置を有する。推進ユニットは、上部及び下部を有する中空のストラットを有する。ストラットの上部は、ストラットの下部を支持する支持アームを形成する。
【0004】
推進ユニットのストラットの上部は、上部ブロックに連結される。上部ブロックは、船舶の第1の外側底部から第2の内側底部までの船舶の底部に形成された第1の開口部を貫通する。上部ブロックは、旋回ベアリングにより船舶の船体(ハル)に回動可能に取り付けられる。上部ブロックは、通常、略円筒形である。上部ブロックは、別個の部分である代わりに、ストラットの上部の上端部によって形成されていてもよい。旋回ベアリングの下方に位置する旋回シールは、海水と船舶の船体の内部との間、及び旋回ベアリングの油と海水との間のシールを形成する。これは、回転部分すなわち上部ブロックが海水に対して第1の開口部で封止される第1の位置である。
【0005】
ストラットの下部は、ストラットの下部の外側に位置するプロペラに第1のシャフトで連結された第1の電動モータを有する縦長の区画を形成する。第1のシャフトは、ストラットの下部の内部で、ベアリングにより回動可能に支持される。第1のシャフトはストラットの下部の船尾端部にある端壁内の第2の開口部を貫通するとともに、第2の開口部で海水に対してシールによって封止されている。シールは、油がシャフト・ベアリングから海水へ浸入するのも防ぐ。これは、回転部分すなわち第1のシャフトが媒体に対して第2の開口部で封止される第2の位置である。
【0006】
旋回シール及びシャフト・シールを時々移動(relocate)させる必要がある。この移動の時間間隔は、旋回シール及びシャフト・シールによって異なるであろう。これは、回転部分の外表面上のライナーが、シール・リングのシール部のリップ部の作用する点で摩滅することによるものである。シール・リングのシール部のリップ部は、シールの軸方向の移動後に再び、ライナーの新たな表面に対して作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、船舶用のより優れたシール装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による船舶用のシール装置は、請求項1の特徴部分の記載によって特徴づけられる。
【0009】
シール装置は、船舶内の支持構造の開口部を貫通する円筒形の回転部分を媒体に対して封止するシールを有し、このシールは一式の環状シール・リングを有し、各シール・リングは、対応するシール支持部において支持されるシール部を有する。
【0010】
本装置は、媒体に最も近接して位置する第1のシール・リングのシール支持部が、一端に環状フランジを備えるシリンダの形状を有し、このシリンダの外周は、開口部の内周に対して支持され且つ開口部の内周に対して補助シールにより封止され、また環状フランジは、開口部を取り囲む支持構造に対して支持されることを特徴とする。シールを回転部分に対して軸方向に移動(すなわち再配置)するために、開口部を取り囲む支持構造に対する第1のシール支持部の位置を調整するさらなる調整手段がある。
【0011】
シールは、したがって、第1のシール・リングのシール支持部のシリンダが開口部内で滑るように、回転部分に対して軸方向に移動させることができる。シールの移動により、シール・リングのシール部のリップ部が移動される。これは、リップ部が回転部分の新しい表面に作用するためである。
【0012】
調整手段は、一実施例において、第1のシール・リングのシール支持部の環状フランジと、開口部を取り囲む支持構造との間に挿入されるスペーサ・リングを有する。スペーサ・リングは、回転部分に対して軸方向にシールを移動させる。
【0013】
調整手段は、他の一実施例において、第1のシール・リングのシール支持部の環状フランジを通って、開口部を取り囲む支持構造へと貫通する調整ボルトを有する。調整ボルトは、回転部分に対して軸方向に水シールを移動させる。
【0014】
第1のシール・リングのシール支持部のシリンダの外周は、開口部の内周に対して封止される。第1のシール・リングのシール支持部のシリンダ内のシールは、媒体がスペーサ・リング又は調整ボルトがある空間に侵入するのを防ぐ。したがって、スペーサ・リング又は調整ボルトに関するシールは必要ではない。
【0015】
以下では、本発明を、添付の図面を参照しつつ、好ましい実施例により、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】船舶の推進ユニットの縦断面図を示す。
図2】本発明を使用することが可能な旋回シール装置の縦断面図を示す。
図3図2の旋回シール装置の拡大図の縦断面図を示す。
図4図2の装置の第1の水平断面図を示す。
図5図2の代替図の水平断面図を示す。
図6】旋回シールに適用される本発明の装置の第1の実施例を示す。
図7】異なる位置にある図6の水シールを示す。
図8】旋回シールに適用される本発明の装置の第2の実施例を示す。
図9】異なる位置にある図8の水シールを示す。
図10】旋回シールに適用される本発明の装置の第3の実施例を示す。
図11】シャフト・シールに適用される本発明の装置の第4の実施例を示す。
図12】異なる位置にある図11の水シールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、船舶の推進ユニットの縦断面図を示す。船舶10は、二重の底部、すなわち、船舶の船体を形成する第1の外側底部11と、第2の内側底部12とを有する。推進ユニット20は、上部22と下部23とを有する中空のストラット21を有する。ストラット21の上部22は、ストラットの下部23を支持する支持アームを形成する。
【0018】
推進ユニット20のストラット21の上部22は、上部ブロック100に連結されている。上部ブロック100は、船舶10の底部に形成された第1の開口部O1を貫通する。第1の開口部O1は、船舶10の第1の外側底部11と第2の内側底部12との間に延びる。上部ブロック100は、旋回ベアリング300により船舶10の船体に回動可能に取り付けられる。上部ブロック100は、通常、略円筒形である。上部ブロック100は、ここで示すように別個の部分である代わりに、ストラット21の上部22に一体化された部分として形成されてもよい。上部ブロック100は、したがって、ストラット21の上部22の上端部を形成しうる。旋回ベアリング300の下方に位置する旋回シール200は、油が旋回ベアリング300から海へ漏出するのを防ぐとともに、海水が回転上部ブロック100と第1の開口部O1の内周との間の通路を通って、船舶10の船体の内部へと浸透するのを防ぐ。
【0019】
ストラット21の下部23は、第1の電動モータ30と第1のシャフト31とを有する長手方向の区画(compartment)を形成する。第1のシャフト31の第1の端部31Aは、第1の電動モータ30に連結され、第1のシャフト31の第2の端部31Bは、ストラット21の下部23の船尾端部23Bにある端壁33の第2の開口部O2を貫通する。プロペラ32が、第1のシャフト31の第2の外側端部31Bに連結されている。第1のシャフト31の軸中心線X−Xは、シャフト線を形成する。第1のシャフト31は、ストラット21の下部23内でベアリング41、42により回転可能に取り付けられる。第1のシャフト31の第2の端部31Bは、第1のシャフト31がストラット21の下部23から外へ貫通するときに通る端壁33の第2の開口部O2の水シール500で封止される。
【0020】
船舶内に位置するギヤ・ホイール40が、さらに上部ブロック100に取り付けられる。ギヤ・ホイール40は、第2の電動モータ50によって、回転の中心軸Y−Yの周りを360度回転できる。第2の電動モータ50は、第2のシャフト51を介してピニオン・ホイール52を駆動する。ピニオン・ホイール52の歯は、ギヤ・ホイール40の歯に連結される。当然のことながら、ギヤ・ホイール40に連結された類似した第2の電動モータ50がいくつか存在しうる。ギヤ・ホイール40が回転することにより、推進ユニット20が回転する。ギヤ・ホイール40は、中心部に穴のある環状となっている。本実施例におけるギヤ・ホイール40の歯は、ギヤ・ホイール40の外縁部に位置する。その他の可能性としては、ギヤ・ホイール40の内縁部に歯が存在する。
【0021】
さらに、船舶10内にエンジン60が存在し、また、発電機62が第3のシャフト61によってエンジン60に連結される。エンジン60は、船舶10で使用される従来の燃焼エンジンであってもよい。発電機62は、船舶10及び推進ユニット20で必要な電力を発生させる。船舶10に、燃焼エンジン60及び発電機62がいくつか存在してもよい。
【0022】
さらに、船舶内にはギヤ・ホイール40と関連するスリップ・リング装置70が存在する。電力は、発電機62からスリップ・リング装置70へ第1のケーブル65で移送される。さらに、電力はスリップ・リング装置70から第1の電動モータ30へ第2のケーブル35で移送される。スリップ・リング装置70は、船舶の静止船体10と回転する推進ユニット20との間で電力を移送するために必要である。
【0023】
図2は、本発明を使用することが可能な旋回シール装置の縦断面図を示す。この断面図は、回転の中心軸Y−Yから見て左右対称であるこの装置の右半分のみを示す。旋回ベアリング300及び旋回シール200は、船舶10の第2の内側底部12の上方に位置する。旋回ベアリング300の下面SIは、船舶10の第2の内側底部12の上方に位置する。そして、旋回ベアリング300は船舶10内部の空気に囲まれている。船舶10内部の気温は比較的安定しており、このことは、旋回ベアリング300はより少ない熱応力の影響を受けるということを意味する。旋回シール200の交換は、この装置において容易に行える。
【0024】
旋回ベアリング300は、第1のベアリング・ブロック310と、第2のベアリング・ブロック320と、第1のローラ手段330と、第2のローラ手段340と、ベアリング・ブロック310とベアリング・ブロック320の間の軌道に位置する第3のローラ手段350とを有する。
【0025】
第1のベアリング・ブロック310は、垂直方向に延びるボルト311によって、固定円筒形状の第1の支持部81に取り付けられる。第1の支持部81は、船舶10の第2の内側底部12上で、第1の支持部81と第1の支持リング83との間に位置し径方向及び垂直方向に延びる支持フランジ87で支持されている。第1の支持リング83は、船舶10の第2の内側底部12の上面に取り付けられる。第1の支持部81は、したがって、支持フランジ87を介して、船舶10の第2の内側底部12上でのみ支持されている。第1の支持部81は、その全体が船舶10の第2の内側底部12の上方に位置している。
【0026】
第2のベアリング・ブロック320は、上部320Aと下部320Bとを有する円筒形状部である。第2のベアリング・ブロック320は、上部320A及び下部320Bを通って垂直方向に延びるボルト321で、垂直方向に延びる円筒形状の回転する第2の支持部110に取り付けられる。この第2の支持部110は、上部ブロック100の上部で形成される。推進ユニット20のストラット21の上端部22は、上部ブロック100の下端部に取り付けられる。
【0027】
潤滑媒体で潤滑された任意の標準的なローラ又はスライド・ベアリング300を使用してもよい。潤滑媒体は、例えば、油又はグリースである。回旋ベアリング300は、海水と接触してはならない。
【0028】
第1の支持壁13は、船舶10の第1の外側底部11と第2の内側底部12との間で垂直方向に延びる。第1の支持壁13は、有利には、第1の外側底部11と第2の内側底部12との間の第1の開口部O1の内周部を形成する円筒形状となっている。
【0029】
ギヤ・ホイール40の内側部分41は、第2のベアリング・ブロック320上に設けられる。ギヤ・ホイール40の内側部分41は、垂直方向に延びるボルト321で、第2の支持部110に取り付けられる。垂直方向に延びるボルト321は、第2のベアリング・ブロック320も通って延びる。ギヤ・ホイール40の回転により、上部ブロック100及び推進ユニット20が中心軸Y−Yの周りを回転する。
【0030】
図3は、図2の旋回シール装置の拡大図である。旋回シール200は、上側旋回シール210と下側旋回シール220とを有する。上側旋回シール210は、油が旋回ベアリング300から海へ漏出するのを防ぐ。下側旋回シール220は、海水が船舶10へ浸透するのを防ぐ。
【0031】
上側旋回シール210は、2個のシール・リングと端部リングとを有する。各シール・リングは、金属製のシール支持部及びゴム製のシールを有する。ゴム製のシールは、シール支持部内で支持されるベース部と、回転部分100に作用するリップ部を有する。上側旋回シール210は、第1の支持部81内の凹部に設置される。さらに、凹部に上側旋回シール210を固定するブラケットがある。ブラケットは、例えばボルトにより、第1の支持部81の下面に取り付けることができる。上側旋回シール210の交換は、ブラケットを取り除き、上側旋回シール210の一部を凹部から下向きに引っ張り出すことにより行うことができる。
【0032】
下部旋回シール220は、2個のシール・リングを有する。各シール・リングは、金属製のシール・リング支持体とゴム製のシールを有する。ゴム製のシールは、シール支持部に取り付けられたベース部と回転部分100に作用するリップ部を有する。下部旋回シール220は、第1の支持リング83の内縁に関連して形成された凹部内に装置される。さらに、凹部に下部旋回シール210を固定するブラケットがある。ブラケットは、例えば、第1の支持リング83の上面にボルトで結合することができる。下部旋回シール220は、ブラケットを取り外し、下部旋回シール220の一部を凹部から上向きに引っ張り出すことにより交換することができる。下部旋回シール220は、水Wが船舶10の船体に侵入するのを防止する。
【0033】
図3では、上部旋回シール210と下部旋回シール220との間に空間400がある。空間400の高さH1は、少なくとも100mm、有利には少なくとも200mm、より有利には少なくとも300mmである。高さH1は、上部旋回シール210の最下層のシール・リング211の下面と、下部旋回シール220の最上層シール・リング221の上面との間で測定される。船舶10の船体の内部から半径方向R1に、この空間400へのアクセスが設けられる。アクセスは、半径方向と垂直方向に延びる支持フランジ87の間に形成された通路を通る。この空間400を介して上部旋回シール210と下部旋回シール220を補修(service)することが可能である。上部旋回シール210と下部旋回シール220との間の空間400は、有利には、開放された空間である。
【0034】
図4は、図2の装置の第1の水平断面を示す。この水平断面は、上部旋回シール210と下部旋回シール220と間の高さからのものである。この図は、第1の支持部81と第1の支持リング83との間の、半径方向及び垂直方向に延びる支持フランジ87を示す。支持フランジ87の内側端部は、回転部分100から所定の半径方向の距離に位置する。支持フランジ87は、互いに角距離αに位置する。上部旋回シール210及び下部旋回シール220を交換できるように、2つの隣接する支持フランジ87の間に十分な空間が存在しなければならない。
【0035】
図5は、図2の代替品の水平断面を示す。この図は、船舶の旋回ベアリング300と第2の内底部12との間の代替の支持構成を示す。垂直方向及び半径方向に延びる支持フランジ87は、2つのグループにグループ化され、図に示すように、各端部の内側端部が接続されている。上部ブロック100へのアクセスはその内側端部で接続されていない2つの隣接する支持フランジ87の間にやはり設けられている。図からわかるように、2つの支持フランジ87の各グループは、U字形状を有する。さらに、図は、2つの隣接する支持フランジ87の間のハッチ89を示す。ハッチ89は、この空間を閉鎖するために2つの隣接する支持フランジ87の間に形成されたすべての開口部の間で使用することができる。他方、ハッチ89は、必要に応じて、この空間へのアクセスを提供する。
【0036】
図6は、旋回シールに適用される本発明の装置の第1の実施例を示す。本発明の装置は、例えば、下部旋回シール220、すなわち、図3に示す水シールに適用できる。シール500は、一式の環状シール・リング510、520、530を有する。第1のシール・リング510と、第2のシール・リング520と、非常用(エマージェンシー)シール・リング530とがある。第1のシール・リング510及び第2のシール・リング520は、金属製のシール支持部511、521内で支持されるゴム製のシール部512、522を有する。ゴム製のシール部511、521は、シール支持部511、521内で支持されるベース部と、回転部分100に対してシール表面を形成するリップ部とを有する。非常用シール・リング530は、金属製のシール支持部531内で支持される膨張可能なゴム製のシール532を有する。シール・リング510、520、530は、シール500を貫通するボルト810により、第2の支持リング710に取り付けられる。第2の支持リング710は、第1の支持リング83を貫通するボルト820により、第1の支持リング83の下面に取り付けられる。第1のシール・リング510のシール支持部511は、上端部に環状フランジ511Bが設けられたシリンダ511Aの形状を有する。シール支持部511の環状フランジ511Bは、支持構造を形成する第2の支持リング710の上面で直接支持される。シール支持部511のシリンダ511Aの外表面は、第2の支持リング710の内側円筒面で支持されている。第2の支持リング710の内側円筒面は、第1の開口部O1の内周を形成する。第2の支持リング710の内表面に対してシール支持部511のシリンダ511Aを封止する2個のOリング610を有する第1の補助シールがある。第2の支持リング710の外周円筒面と第1の支持リング83の内側円筒面との間に、2個のOリング620を有する第2の補助シールがある。シール500は、下方から適所へ取り付けられる。一式のシール・リング510、520、530は組み立てられ、水シール500を貫通するボルト810で第2の支持リング710に取り付けられる。一式のシール・リング510、520、530全体が下方から適所へ持ち上げられ、第2の支持リング83を貫通するボルト820で第2の支持リング83の下面に取り付けられる。第1のシール・リング510のシール支持部511のシリンダ511Aの内周は、回転部分100の外表面からの距離にある。
【0037】
図7は、異なる位置にある図6の水シールを示す。図6との違いは、3個のスペーサ・リング900が、第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bと第2の支持リング710の水平な上面との間に位置していることである。スペーサ・リング900は、垂直方向にシール500を上昇させる調整手段を形成する。このことは、ゴム製のシール部512、522のリップ部の位置が変更されうることを意味する。ゴム製のシール部512、522のリップ部は、円筒形の回転部分100の新たな表面で作用するであろう。スペーサ・リング900は、リングの複数のセクタ(扇形)から、或いは小さな矩形又は円形のスペーサ部から構成されうる。これは、第1のシール・リング510の周囲に沿って挿入されうる。図は、一度に1つが挿入されうる3個のスペーサ・リング900を示す。シール500の垂直位置は、3回の異なる適切な機会に、各機会に1つのスペーサ・リング900を挿入することによって変化させることができる。スペーサ・リング900を何らかの手段で封止する必要はない。なぜなら、Oリング610がスペーサ・リング900のある空間に海水が浸入するのを防ぐからである。第1のシール・リング510の支持部511の環状フランジ511Bは、スペーサ・リング900を介して第2の支持リング81上で間接的に支持されている。
【0038】
図8は、旋回シールに適用される本発明による装置の第2の実施例を示す。本実施例では、水シール500は上方から取り付けられる。したがって、本実施例で必要な第2の支持リング710は存在しない。第1のシール・リング510は、第1の支持リング83の上側水平面で直接支持される。そして、シール500は、水シール500を貫通するボルト810で、第1の支持リング83に直接固定される。シール500の構成は、他のすべての点で、第1の実施例で示すシールに対応する。第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bは、第1の支持リング83の上側水平面で直接支持される。第1の支持リング83は、支持構造を形成する。第1の支持リング83の内周に対して、第1のシール・リング510のシール支持部511のシリンダ511Aを封止するOリング610の形での、2個の第1の補助シールがある。第1の支持リング83の内周は、第1の開口部O1を形成する。第1のシール・リング510のシール支持部511のシリンダ511Aの内周は、回転部分100の外表面から一定の距離にある。
【0039】
図9は、異なる位置にある図8の水シールを示す。図は、再び第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bと、第1の支持リング83の上側水平面との間に位置する3個のスペーサ・リング900を示す。このスペーサ・リング900の構造は、第1の実施例のスペーサ・リング900の構造に対応することができる。シール500は、例えば、水シール500の周囲に装置されるジャッキによって上昇させることができる。水平支持アームを、シール500の上端部に取り付けることができる。ジャッキは、シール500を上昇させるために、水平支持アームと第1の支持リング83との間に位置しうる。スペーサ・リング900は、第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bの下面と、第1の支持リング83の上側水平面との間に位置しうる。
【0040】
図10は、旋回シールに適用される本発明による装置の第3の実施例を示す。この第3の実施例が第2の実施例と異なる点は、スペーサ・リング900を使用する代わりに、調整ボルト830を使用することである。第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bはより大きく、それにより、調整ボルト830が、シール500の周囲の外側にある第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bを貫通するための空間が存在する。調整ボルト830の端部は、第2の支持リング83の上側表面上で支持されている。異なるセットの調整ボルト830があってもよく、各セットは特定の長さを有する。調整ボルト830の特定のセットはそれぞれ、回転部分100に対して所望の軸方向位置にシール500を配置するために使用しうる。調整ボルト830は、調整手段を形成する。調整ボルト830は、代替の解決手段として、上方へ、すなわち第2の支持リング83を通って延びうる。このような解決策は、部分83のフランジ511Bがある側にボルトのための空間はないが、部分83の反対側に調整ボルトのための空間があるような状況で使用することができる。
【0041】
図11は、シャフト・シールに適用される本発明による装置の第4の実施例を示す。図は、4個のシール・リング510、520、530、540及び3個のシール室515、525、535を有するシール500を示す。ゴム製のシール部512、522、532、542は、金属製のシール支持部511、521、531、541において支持されているそれぞれのリップ部と支持部を有する。シャフト31上にライナー32があり、ゴム製のシール部512、522、532、542のリップ部は、したがって、ライナー32の外表面上に作用している。第1のシール・リング510のシール支持部511は、一端に環状フランジ511Bが設けられたシリンダ511Aの形状をとる。第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bは、ストラット21の下部区画23内の端壁33の第2の開口部O2を取り囲む端壁33自体に対して当接される。第1のシール・リング510のシール支持部511のシリンダ511Aは、ストラット21の下部区画23内の当該端壁33の第2の開口部O2の内周に対して当接される。Oリング610の形状をとる補助シールが2個あり、この補助シールは、ストラット21の下部区画23内の端壁33の第2の開口部O2の内周に対して、第1のシール・リング510のシール支持部511のシリンダ511Aを封止する。端壁33は、支持構造を形成する。
【0042】
図12は、異なる位置にある図11の水シールを示す。この図は、シール500が、図中で左側に移動したことを示す。これにより、第1のシール・リング510のシール支持部511の環状フランジ511Bとストラット21の下側区画23の端壁33との間に空間が存在する。この動きは、第1及び第2の実施例のようにスペーサ・リング900を使用することにより、又は第3の実施例のように調整ボルト840を使用することにより実現される。シール500の移動に関する本発明の装置の原則は、旋回シールとシャフト・シールとで同じである。
【0043】
図6から図10における本発明のシール500は、図3に示す下側旋回シール220、すなわち水シールとの関連で示されている。当然ながら、同様の原則が上部旋回シール210、すなわち図3の旋回シールとの関連でも使用しうる。上部旋回シール210は、油又はグリースが旋回ベアリング300から海へ漏出するのを防ぐ。
【0044】
本発明のシール装置は、封止されるべきいかなる媒体に対しても封止するために使用できる。よって、シールが封止する媒体としては、例えば、水、油、グリースがありうる。
【0045】
本発明によるシール500は、少なくとも2個のシール・リング510、520、530を有する。本発明によるシール500は、原則、1個のシール・リング、すなわち媒体に最も近いシール・リング510のみを有しうるが、実際の解決のためには少なくとも2個のシール・リングが必要であると考えられる。
【0046】
第1の補助シール610及び第2の補助シール620は、図中のそれぞれの2個のOシールを有する。補助シール610、620は、当然ながら、本シール構造に限られないが、いかなる従来の知られているシール構造もここで使用しうるであろう。
【0047】
本装置は、図に示す推進ユニットに限られない。本装置は、当然ながら、例えば機械駆動ユニットに関連しても使用しうる。したがって、モータは船舶の内部に位置しうる。これにより、プロペラは水平及び垂直のシャフトによって連結される。この場合、スリップ・リング部は必要ではない。
【0048】
ストラット21は、当然ながら、一つ以上の電動モータの代わりに、一つ以上の油圧モータによって回転されうる。ストラット21の回転角は、当然ながら、360度未満である。
【0049】
本発明及びその実施例は上記に説明した実例に限られないが、特許請求の範囲内で異なってもよい。
【符号の説明】
【0050】
O1 開口部
O2 開口部
W 媒体
10 船舶
31 回転部分、シャフト
33支持構造、端壁
83 支持構造、支持リング
100 回転部分、上部ブロック
500 シール、水シール
510 シール・リング
511A シリンダ
511B 環状フランジ
511 シール支持部
512 シール部
520 シール・リング
522 シール部
530 シール・リング
532 シール部
540 シール・リング
542 シール部
610 補助シール、Oリング
710 支持構造、支持リング
830 調整手段、調整ボルト
900 調整手段、スペーサ・リング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12