特許第6010670号(P6010670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010670
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】順送加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/02 20060101AFI20161006BHJP
   B21D 1/02 20060101ALI20161006BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20161006BHJP
   B21C 47/26 20060101ALN20161006BHJP
【FI】
   B21D43/02 L
   B21D1/02 Z
   B21D28/02 C
   !B21C47/26 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-172777(P2015-172777)
(22)【出願日】2015年9月2日
(62)【分割の表示】特願2014-220252(P2014-220252)の分割
【原出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-87690(P2016-87690A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 佳寛
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山田 豊信
(72)【発明者】
【氏名】井坂 智大
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−25578(JP,A)
【文献】 特開平3−52729(JP,A)
【文献】 特開平4−118124(JP,A)
【文献】 特開昭57−64428(JP,A)
【文献】 特開昭55−74940(JP,A)
【文献】 特開昭59−24526(JP,A)
【文献】 特開平8−39261(JP,A)
【文献】 特開2014−104500(JP,A)
【文献】 実開昭50−143181(JP,U)
【文献】 特開平4−220183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/02
B21C 47/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状板をプレス機に搬送する搬送工程と、
前記プレス機で前記帯状板にプレス加工を施すプレス工程と、
前記帯状板の反搬送方向側の端部および新たな帯状板の搬送方向側の端部間にテープを貼付することで前記帯状板に当該新たな帯状板を接合する工程であって、当該テープとして前記帯状板および当該新たな帯状板のいずれとも異なる色彩の非磁性の粘着テープを使用する接合工程を備え、
前記接合工程の終了後には、
前記搬送工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板が前記プレス機に搬送され、
前記プレス工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板にプレス加工が施されることを特徴とする順送加工方法。
【請求項2】
帯状板をプレス機に搬送する搬送工程と、
前記プレス機で前記帯状板にプレス加工を施すプレス工程と、
前記帯状板の反搬送方向側の端部を搬送方向に対して斜めに切断することで前記帯状板に搬送方向に対して傾斜する第1の切断面を形成する第1の切断工程と、
新たな帯状板の搬送方向側の端部を前記第1の切断面に沿う向きに切断することで当該新たな帯状板に前記第1の切断面に沿う向きの第2の切断面を形成する第2の切断工程と、
前記帯状板の反搬送方向側の端部および前記新たな帯状板の搬送方向側の端部間にテープを貼付することで前記帯状板に前記新たな帯状板を接合する工程であって、当該テープとして前記帯状板および前記新たな帯状板のいずれとも異なる色彩のテープを使用すると共に当該テープを前記第1の切断面および前記第2の切断面に沿う向きに貼付する接合工程を備え、
前記接合工程の終了後には、
前記搬送工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板が前記プレス機に搬送され、
前記プレス工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板にプレス加工が施されることを特徴とする順送加工方法。
【請求項3】
帯状板をプレス機に搬送する搬送工程と、
前記プレス機で前記帯状板にプレス加工を施すプレス工程と、
前記帯状板の反搬送方向側の端部および新たな帯状板の搬送方向側の端部間にテープを貼付することで前記帯状板に当該新たな帯状板を接合する工程であって、当該テープとして前記帯状板および当該新たな帯状板のいずれとも異なる色彩のテープを使用すると共に前記帯状板の片面および当該新たな帯状板のうち前記帯状板と同一側の片面間に当該テープを貼付する接合工程を備え、
前記接合工程の終了後には、
前記搬送工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板が前記プレス機に搬送され、
前記プレス工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板にプレス加工が施されることを特徴とする順送加工方法。
【請求項4】
帯状板をプレス機に搬送する搬送工程と、
前記プレス機で前記帯状板にプレス加工を施すプレス工程と、
前記帯状板の反搬送方向側の端部および新たな帯状板の搬送方向側の端部間にテープを貼付することで前記帯状板に当該新たな帯状板を接合する工程であって、当該テープとして前記帯状板および当該新たな帯状板のいずれとも異なる色彩のテープを使用する接合工程と、
前記接合工程で前記2つの帯状板間が前記テープで接合される前に前記新たな帯状板の巻癖を矯正する矯正工程を備え、
前記接合工程の終了後には、
前記搬送工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記矯正工程で巻癖の矯正された前記新たな帯状板が前記プレス機に搬送され、
前記プレス工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板にプレス加工が施されることを特徴とする順送加工方法。
【請求項5】
帯状板をプレス機に搬送する搬送工程と、
前記プレス機で前記帯状板から固定子積層用の固定子打抜板および回転子積層用の回転子打抜板を打抜くプレス工程と、
前記帯状板の反搬送方向側の端部および新たな帯状板の搬送方向側の端部間にテープを貼付することで前記帯状板に当該新たな帯状板を接合する工程であって、当該テープとして前記帯状板および当該新たな帯状板のいずれとも異なる色彩のテープを使用する接合工程を備え、
前記接合工程の終了後には、
前記搬送工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板が前記プレス機に搬送され、
前記プレス工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板から前記固定子打抜板および前記回転子打抜板が打抜かれ、
前記接合工程では、前記帯状板の反搬送方向側の端部および前記新たな帯状板の搬送方向側の端部のうち前記回転子打抜板が打抜かれることとなる部分を避けて前記テープが貼付されることを特徴とする順送加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は順送加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
順送加工方法には搬送工程およびプレス工程を備えたものがある。搬送工程は帯状板をプレス機に搬送するものであり、プレス工程は帯状板にプレス加工を施すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−300418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には帯状板の反搬送方向側の端部に新たな帯状板の搬送方向側の端部を溶接で接合し、新たな帯状板を帯状板に続けてプレス機に搬送することが記載されている。この溶接は板厚が厚い帯状板に適した技術である。従って、溶接を板厚が薄い帯状板に適用した場合には引張強度が低下する、ひずみが発生する等、安定的な溶接品質が得られないので、帯状板の搬送強度の点で問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例の順送加工方法は、帯状板をプレス機に搬送する搬送工程と、前記プレス機で前記帯状板にプレス加工を施すプレス工程と、前記帯状板の反搬送方向側の端部および新たな帯状板の搬送方向側の端部間にテープを貼付することで前記帯状板に当該新たな帯状板を接合する工程であって当該テープとして前記帯状板および当該新たな帯状板のいずれとも異なる色彩の非磁性の粘着テープを使用する接合工程を備え、前記接合工程の終了後には前記搬送工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板が前記プレス機に搬送され、前記プレス工程が行われることに応じて前記帯状板に続けて前記新たな帯状板にプレス加工が施されるところに特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施例1を示す図(固定子鉄心および回転子鉄心の外観を示す図)
図2】順送装置を示す図
図3】帯状鋼板を示す図
図4】接合装置の動作を説明するための図
図5】帯状鋼板が搬送される様子を示す図
図6】帯状鋼板間の接合状態を示す断面図
図7】実施例2を示す図(粘着テープの貼付位置を説明するための図)
図8】実施例3を示す図(帯状鋼板の位置決め孔を示す図)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0007】
図1の固定子鉄心1および回転子鉄心2はインナーロータ形の三相同期モータを構成するものである。固定子鉄心1は複数の固定子打抜板3を軸方向に積層してなるものであり、ヨーク4と複数のティース5と複数の連結片6を有している。ヨーク4は円筒状をなすものであり、複数のティース5のそれぞれはヨーク4の内周面から内側へ突出し、複数の連結片6のそれぞれはヨーク4の外周面から外側へ突出している。これら複数の連結片6のそれぞれは連結孔7を有するものであり、複数の固定子打抜板3間は複数の連結孔7内のそれぞれに連結管を圧入することで連結される。
【0008】
回転子鉄心2は、図1に示すように、固定子鉄心1の内部に収納されるものである。この回転子鉄心2は複数の回転子打抜板8(図3参照)を軸方向に積層してなるものであり、回転子打抜板8の積層枚数は固定子打抜板3の積層枚数に比べて多数に設定されている。この回転子鉄心2は固定子鉄心1に比べて軸方向の長さ寸法が長く設定されたものであり、回転子鉄心2には回転軸および複数の永久磁石が装着される。
【0009】
図2の順送装置10は帯状鋼板11から固定子打抜板3および回転子打抜板8を打抜くものであり、アンコイラー12とレベラー13とフィーダー14とプレス機15と接合装置16を備えている。アンコイラー12は帯状鋼板11が着脱可能に装着されたものである。この帯状鋼板11はコイル状に巻かれたものであり、アンコイラー12はコイル状の帯状鋼板11を巻きほぐす。この帯状鋼板11は板厚0.35mm以下の珪素鋼板からなるものであり、固定子打抜板3および回転子打抜板8のそれぞれは帯状鋼板11から短手方向にP列およびQ列の2列に打抜かれる(図3参照)。この帯状鋼板11は帯状板に相当する。
【0010】
レベラー13は、図2に示すように、アンコイラー12の矢印X方向側に配置されたものであり、複数組のレベラーローラーを有している。これら複数組のレベラーローラーのそれぞれは互いに対向する2つのローラーからなるものであり、帯状鋼板11は複数組のレベラーローラーのそれぞれの2つのローラー間に挿入されている。これら複数組のレベラーローラーのそれぞれは帯状鋼板11に外力を加えることで帯状鋼板11を塑性変形させるものであり、帯状鋼板11は複数組のレベラーローラーを通過することで巻癖が矯正される。
【0011】
フィーダー14は、図2に示すように、2組のフィードロール17を有するものであり、一方のフィードロール17はプレス機15の矢印X方向側の端部に設置され、他方のフィードロール17はプレス機15の反矢印X方向側の端部に設置されている。これら2組のフィードロール17のそれぞれは上ローラー18および下ローラー19を有するものであり、帯状鋼板11は一方のフィードロール17の上ローラー18および下ローラー19間を通して他方のフィードロール17の上ローラー18および下ローラー19間に挿入されている。これら2つの上ローラー18および2つの下ローラー19は電気的な駆動源に連結されたものである。この駆動源は2つの上ローラー18のそれぞれを図2の反時計回り方向へ回転操作し、2つの下ローラー19のそれぞれを図2の時計回り方向へ回転操作するものであり、帯状鋼板11は2つの上ローラー18および2つの下ローラー19が回転操作されることに応じて矢印X方向へ搬送される。
【0012】
プレス機15は、図2に示すように、レベラー13の矢印X方向側に配置されたものであり、プレス機15にはレベラー13から巻癖が除去された帯状鋼板11が供給される。このプレス機15はプレスモータの回転運動を直線的な往復運動に変換する機械式プレスからなるものであり、上型20および下型21を備えている。この下型21はダイD1とD2とD3とD4とD5とD6(いずれも図示せず)を支持するものである。これらダイD1〜D6は矢印X方向に向けてダイD1→D2→D3→D4→D5→D6の順に一列に並ぶものであり、互いに等ピッチPで配列されている。
【0013】
上型20はパンチP1とP2とP3とP4とP5とP6(いずれも図示せず)を支持するものである。これらパンチP1〜P6は矢印X方向に向けてパンチP1→P2→P3→P4→P5→P6の順に一列に並ぶものであり、パンチP1はダイD1に上から対向し、パンチP2はダイD2に上から対向し、パンチP3はダイD3に上から対向し、パンチP4はダイD4に上から対向し、パンチP5はダイD5に上から対向し、パンチP6はダイD6に上から対向している。
【0014】
フィーダー14は帯状鋼板11を矢印X方向へ断続的に搬送するものである。この帯状鋼板11の搬送ピッチはダイD1〜D6の配列ピッチと同一値Pに設定されており、帯状鋼板11は搬送ピッチPで矢印X方向へ搬送されることに応じて「パンチP1およびダイD1間」→「パンチP2およびダイD2間」→「パンチP3およびダイD3間」→「パンチP4およびダイD4間」→「パンチP5およびダイD5間」→「パンチP6およびダイD6間」に順に供給される。これらダイD1〜D6およびパンチP1〜P6は帯状鋼板11にせん断加工を施すものであり、フィーダー14は帯状鋼板11にせん断加工が施されるタイミングで帯状鋼板11を搬送停止する。
【0015】
ダイD1およびパンチP1は加工ステージS1を構成するものであり、図3に示すように、加工ステージS1では帯状鋼板11のP列およびQ列のそれぞれに位置決め用のパイロット孔22がせん断加工される。ダイD2およびパンチP2は加工ステージS2を構成するものであり、加工ステージS2では帯状鋼板11のP列およびQ列のそれぞれに孔23と孔24と孔25がせん断加工される。これら孔23〜25は回転子打抜板8用のものであり、相互に異なる形状に設定されている。
【0016】
ダイD3およびパンチP3は加工ステージS3を構成するものであり、図3に示すように、加工ステージS3では帯状鋼板11のP列およびQ列のそれぞれに孔26および孔27がせん断加工される。孔26は回転軸が挿入される回転子打抜板8用のものであり、孔27はスロットに相当する固定子打抜板3用のものである。
【0017】
ダイD4およびパンチP4は加工ステージS4を構成するものであり、図3に示すように、加工ステージS4では帯状鋼板11のP列およびQ列のそれぞれから回転子打抜板8が打抜かれる。この回転子打抜板8はダイD4内に落下するものであり、ダイD4内には回転子打抜板8の打抜きが繰返されることに応じて回転子打抜板8が下から上に向けて順に積層される。
【0018】
ダイD5およびパンチP5は加工ステージS5を構成するものであり、図3に示すように、加工ステージS5では帯状鋼板11のP列およびQ列のそれぞれから固定子打抜板3が打抜かれる。この固定子打抜板3はダイD5内に落下するものであり、ダイD5内には固定子打抜板3の打抜きが繰返されることに応じて固定子打抜板3が下から上に向けて順に積層される。
【0019】
ダイD6およびパンチP6は加工ステージS6を構成するものであり、図3に示すように、加工ステージS6では帯状鋼板11のP列およびQ列のそれぞれから帯状鋼板11の残材が切断される。即ち、帯状鋼板11が「パンチP1およびダイD1間」〜「パンチP6およびダイD6間」に順に供給されることに応じて帯状鋼板11から固定子打抜板3および回転子打抜板8が短手方向に2列に打抜かれる。
【0020】
接合装置16は、図2に示すように、レベラー13およびプレス機15間に配置されたものであり、帯状鋼板11はレベラー13から接合装置16を通してプレス機15に供給される。この接合装置16は残りの帯状鋼板11に新たな帯状鋼板11を接合するためのものである。残りの帯状鋼板11はプレス機15側の帯状鋼板11であり、固定子打抜板3および回転子打抜板8が打抜かれた帯状鋼板11である。新たな帯状鋼板11は残りの帯状鋼板11の次にアンコイラー12に装着された帯状鋼板11である。この新たな帯状鋼板11はプレス機15で加工されていない未加工のものであり、接合装置16では新たな帯状鋼板11の矢印X方向の端部が残りの帯状鋼板11の反矢印X方向の端部に接合される。
【0021】
図4は接合装置16であり、接合装置16は前上クランプ31と前下クランプ32と後上クランプ33と後下クランプ34と上刃35と下刃36と接合台37を有している。前上クランプ31および前下クランプ32のそれぞれは上下方向へ移動可能にされたものである。これら前上クランプ31および前下クランプ32は前クランプモータに連結されており、前クランプモータは前上クランプ31および前下クランプ32のそれぞれを上下方向へ移動操作する。
【0022】
後上クランプ33および後下クランプ34のそれぞれは上下方向および左右方向へ移動可能にされたものである。これら後上クランプ33および後下クランプ34は後クランプモータに連結されており、後クランプモータは後上クランプ33および後下クランプ34のそれぞれを上下方向へ移動操作する。これら後上クランプ33および後下クランプ34はクランプ搬送モータに連結されており、クランプ搬送モータは後上クランプ33および後下クランプ34のそれぞれを左右方向へ移動操作する。
【0023】
上刃35および下刃36のそれぞれは上下方向および左右方向へ移動可能にされたものである。これら上刃35および下刃36は切断モータに連結されており、切断モータは上刃35および下刃36のそれぞれを上下方向へ移動操作する。これら上刃35および下刃36は刃搬送モータに連結されており、刃搬送モータは上刃35および下刃36のそれぞれを左右方向へ移動操作する。接合台37は上下方向および左右方向へ移動可能にされたものである。この接合台37は昇降モータに連結されており、昇降モータは接合台37を上下方向へ移動操作する。この接合台37は台搬送モータに連結されており、台搬送モータは接合台37を左右方向へ移動操作する。
【0024】
前クランプモータと後クランプモータとクランプ搬送モータと切断モータと刃搬送モータと昇降モータと台搬送モータは制御回路に接続されている。この制御回路は前クランプモータ〜台搬送モータのそれぞれを予め決められた駆動パターンで電気的に駆動制御するものであり、前上クランプ31〜接合台37は前クランプモータ〜台搬送モータが駆動パターンで駆動制御されることに応じて次の[1]〜[10]のように動作する。
[1]前上クランプ31および前下クランプ32が上下方向へ移動操作されることで残りの帯状鋼板11の端部を移動不能にクランプする(図4のa参照)。この残りの帯状鋼板11のクランプ状態では後上クランプ33および後下クランプ34が新たな帯状鋼板11の端部から上下方向に離間しており、新たな帯状鋼板11の端部がクランプ解除されている。この新たな帯状鋼板11の端部は作業者が手指で後上クランプ33および後下クランプ34間に挿入するものである。
[2]上刃35および下刃36が残りの帯状鋼板11のクランプ状態で上下方向へ移動操作されることで残りの帯状鋼板11の端部を切り落とす(図4のb参照)。これら上刃35および下刃36は上から見て帯状鋼板11の搬送方向Xに対して45°傾斜するものであり、図5の(a)に示すように、残りの帯状鋼板11の端部を傾斜状に切り落とすことで残りの帯状鋼板11に搬送方向Xに対して45°傾斜する傾斜状の切断面38を形成する。この残りの帯状鋼板11の切断面38は第1の切断面に相当する。
[3]後上クランプ33および後下クランプ34が上下方向へ移動操作されることで新たな帯状鋼板11の端部を移動不能にクランプする(図4のc参照)。
[4]後上クランプ33および後下クランプ34が新たな帯状鋼板11のクランプ状態で左右方向へ移動操作されることで新たな帯状鋼板11の端部を上刃35および下刃36間に供給する。
[5]上刃35および下刃36が新たな帯状鋼板11のクランプ状態で上下方向へ移動操作されることで新たな帯状鋼板11の端部を切り落とし(図4のd参照)、新たな帯状鋼板11に搬送方向Xに対して45°傾斜する切断面38(図5のa参照)を形成する。この新たな帯状鋼板11の切断面38は第2の切断面に相当する。
[6]後上クランプ33および後下クランプ34が上下方向および左右方向へ移動操作される(図4のe参照)。これら後上クランプ33および後下クランプ34の移動操作は新たな帯状鋼板11のクランプ状態で行われるものであり、新たな帯状鋼板11の切断面38は後上クランプ33および後下クランプ34が移動操作されることに応じて残りの帯状鋼板11の切断面38と同一高さに配置される。この新たな帯状鋼板11の切断面38は残りの帯状鋼板11の切断面38に対して平行となり、2つの切断面38間には、図6に示すように、隙間39が形成される。
[7]上刃35および下刃36が左右方向へ移動操作される(図4のf参照)。この上刃35の移動状態では残りの帯状鋼板11の切断面38および新たな帯状鋼板11の切断面38の2つの上に作業者が手指を挿入可能な作業空間が形成され、下刃36の移動状態では残りの帯状鋼板11の切断面38および新たな帯状鋼板11の切断面38の2つの下に接合台37が進入可能な進入空間が形成される。
[8]接合台37が上下方向および左右方向へ移動操作されることで下から進入空間内に進入し、残りの帯状鋼板11の下面および新たな帯状鋼板11の下面に下方から接触する(図4のf参照)。
[9]作業者が上から作業領域に手指を挿入し、残りの帯状鋼板11の上面および新たな帯状鋼板11の上面に粘着テープ41を貼付する(図4のf参照)。この粘着テープ41は、図5の(a)に示すように、残りの帯状鋼板11の切断面38および新たな帯状鋼板11の切断面38に沿って斜めに貼付されるものであり、残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間は粘着テープ41を介して接合される。この粘着テープ41は、図6に示すように、ポリエステル製のフィルム42にアクリル系の透明な粘着剤43を塗布した非磁性のものであり、左右方向の幅寸法が10mmに設定されている。この粘着テープ41のフィルム42は有色不透明なものであり、残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11とは異なる色彩に設定されている。この粘着テープはテープに相当する。
[10]前上クランプ31および前下クランプ32が上下方向へ移動操作されることで残りの帯状鋼板11をクランプ解除し、接合台37が上下方向および左右方向へ移動操作されることで初期位置に復帰する。後下クランプ33および後下クランプ34が上下方向へ移動操作されることで新たな帯状鋼板11をクランプ解除し、後下クランプ33および後下クランプ34が左右方向へ移動操作されることで初期位置に復帰する。従って、フィーダー14が作動することに応じて残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11が一体的に矢印X方向へ搬送され、作業者が新たな帯状鋼板11をフィーダー14等にセットする手間を掛けることなく新たな帯状鋼板11が残りの帯状鋼板11に続けてプレス機15の加工ステージS1〜S6に順に搬送され、残りの帯状鋼板11に続けて新たな帯状鋼板11に加工ステージS1〜S6でせん断加工が順に施される。
【0025】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
残りの帯状鋼板11の反矢印X方向側の端部および新たな帯状鋼板11の矢印X方向側の端部間に粘着テープ41を貼付することで残りの帯状鋼板11に新たな帯状鋼板11を接合した。このため、残りの帯状鋼板11がフィーダー14で矢印X方向へ搬送されることに応じて残りの帯状鋼板11に続けて新たな帯状鋼板11がプレス機15に供給され、残りの帯状鋼板11に続けて新たな帯状鋼板11にプレス機15でプレス加工が施されるので、廃材の量が削減され、段取りに必要な時間も短縮される。しかも、薄肉な帯状鋼板11間を溶接する場合の問題であった引張強度の低下および歪の発生等が解消される。従って、帯状鋼板11の搬送強度が向上し、帯状鋼板11が円滑に搬送される。
【0026】
残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間を接合するテープとして非磁性の粘着テープ41を使用したので、テープとしてアルミテープを使用する場合とは異なり、固定子打抜板3および回転子打抜板8に磁性の打抜き屑が付着することがなくなる。従って、固定子打抜板3を積層することで固定子鉄心1を製造する場合に固定子鉄心1の品質が安定し、回転子打抜板8を積層することで回転子鉄心2を製造する場合に回転子鉄心2の品質が安定する。
【0027】
残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間を接合するテープとして帯状鋼板11とは異なる色彩の粘着テープ41を使用したので、粘着テープ41が目標位置に正確に貼付されているか否かを目視で確認し易くなる。
【0028】
残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11のそれぞれの端部を上刃35および下刃36で切断することに応じて残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11のそれぞれに傾斜状の切断面38を形成し、残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間に粘着テープ41を2つの切断面38に沿う向きに貼付した。従って、粘着テープ41の残りの帯状鋼板11に対する接着面および新たな帯状鋼板11に対する接着面のそれぞれが増えるので、残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間の接合強度が高まる。しかも、粘着テープ41が上ローラー18および下ローラー19間を徐々に通過するようになる(図5参照)。従って、上ローラー18および下ローラー19から粘着テープ41に作用する力が分散するので、粘着テープ41が上ローラー18および下ローラー19間を通過するときに剥がれることが防止される。
【0029】
残りの帯状鋼板11の上面および新たな帯状鋼板11の上面間に粘着テープ41を貼付したので、作業者が上から作業空間に手を挿入して粘着テープ41を貼付する作業を行い易くなる。
【0030】
新たな帯状鋼板11の巻癖をレベラー13で矯正した後に残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間を粘着テープ41で接合した。従って、粘着テープ41がレベラー13の複数のレベラーローラーを通過することがなくなるので、粘着テープ41が複数のレベラーローラーを通過するときの力で剥がれることがなくなる。
【0031】
残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間を粘着テープ41で接合する場合に2つの切断面38間に隙間39を形成したので、2つの切断面38間を相互に接触させる場合とは異なり、残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間が「く」字に接合されることがなくなる。従って、残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11がプレス機15に円滑に搬送される。
【実施例2】
【0032】
図7は残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間の接合部分にプレス機15でどのように加工が施されるかを示すものであり、粘着テープ41は加工ステージS5で固定子打抜板3と共に打抜かれることで下型21のダイD5内に落下し、粘着テープ41が付着した固定子打抜板3は製品として利用されずに廃棄される。即ち、粘着テープ41は残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11のうち固定子打抜板3として打抜かれる部分に貼付されるものであり、回転子打抜板8として打抜かれない部分に貼付される。
【0033】
上記実施例2によれば次の効果を奏する。
残りの帯状鋼板11の反矢印X方向側の端部および新たな帯状鋼板11の矢印X方向側の端部のうち回転子打抜板8が打抜かれることとなる部分を避けて粘着テープ41を貼付した。従って、残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11から多数枚の回転子打抜板8を打抜くことができるので、回転子打抜板8の積層枚数が固定子打抜板3の積層枚数に比べて多いにも拘らず、少数枚の帯状鋼板11で必要枚数の固定子打抜板3および必要枚数の回転子打抜板8を確保することができる。
【実施例3】
【0034】
残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11のそれぞれには、図8に示すように、複数の位置決め孔40が形成されている。残りの帯状鋼板11の複数の位置決め孔40は残りの帯状鋼板11の切断面38に沿って一列に並ぶものであり、新たな帯状鋼板11の複数の位置決め孔40は新たな帯状鋼板11の切断面38に沿って一列に並ぶものであり、残りの帯状鋼板11の複数の位置決め孔40内および新たな帯状鋼板11の複数の位置決め孔40内のそれぞれには位置決めピンが挿入される。
【0035】
複数の位置決めピンは接合台37に固定されたものであり、接合台37が進入空間内に進入するときに位置決め孔40内に挿入される。これら複数の位置決めピンは残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11のそれぞれを目標位置に移動不能に拘束するものであり、作業者が残りの帯状鋼板11の上面および新たな帯状鋼板11の上面に粘着テープ41を貼付するときに残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11がずれ動くことを防止する。これら複数の位置決めピンのそれぞれは接合台37が初期位置に移動操作されるときに残りの帯状鋼板11の位置決め孔40内または新たな帯状鋼板11の位置決め孔40内から脱出する。
【0036】
上記実施例1〜3においては、非磁性の粘着テープ41に換えてアルミテープを用いても良い。
上記実施例1〜3においては、粘着テープ41をロボット等で残りの帯状鋼板11および新たな帯状鋼板11間に自動的に貼付しても良い。
【0037】
上記実施例1〜3においては、帯状鋼板11から固定子打抜板3および回転子打抜板8を短手方向に1列または3列以上に打抜いても良い。
上記実施例1〜3においては、帯状鋼板11から固定子打抜板3および回転子打抜板8とは異なる製品を打抜いても良い。
【0038】
以上、本発明の実施例を説明したが、この実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は発明の範囲や要旨に含まれると共に特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
3は固定子打抜板、8は回転子打抜板、11は帯状鋼板(帯状板)、15はプレス機、38は切断面(第1の切断面,第2の切断面)、41は粘着テープ(テープ)である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8