(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010697
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】リングナット
(51)【国際特許分類】
F16B 45/00 20060101AFI20161006BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
F16B45/00 G
F16B35/06 D
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-524650(P2015-524650)
(86)(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公表番号】特表2015-530530(P2015-530530A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2012064972
(87)【国際公開番号】WO2014019614
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】513139507
【氏名又は名称】ペヴァック・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PEWAG AUSTRIA GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】イヴァニック、ランコ
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/072095(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10002899(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 45/00
F16B 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側領域に、貫通開口(3)を有するベース部分(2A)を備えたサスペンションリング(2)と、
前記貫通開口(3)内に回転可能に位置し、前記ベース部分(2A)の下側に向かって開いたねじ穴(6)を有するスリーブ(4)と
を有し、
前記スリーブ(4)が、前記スリーブ(4)の円周環状カラー(7)によって、前記ベース部分(2A)にある前記貫通開口(3)を取り囲む接触面(8)上に支持され、前記スリーブ(4)には、前記ベース部分(2A)の前記下側とは逆向きの端部領域で、非回転対称の頭部側面(5)が外面に設けられたリングナット(1)であって、
前記スリーブ(4)の前記下端領域は、より小さい直径を有するエンドステップ(22)と共に、前記ベース部分(2A)の下面に接するディスク(20)の中央開口(21)内に突き出し、前記エンドステップ(22)は、前記ディスク(20)の厚さよりも軸方向に短い形態となっており、前記ディスク(20)と相互回転しないように固定して接続されることと、
前記スリーブ(4)の前記頭部側面(5)に隣接する前記ベース部分(2A)に少なくとも1つのロック部材(9)が設けられ、該ロック部材(9)をロック位置にすることができ、該ロック位置で、前記ロック部材(9)が前記頭部側面(5)と協働して、前記頭部側面(5)を回転方向にロックし、前記ロック部材(9)を中立位置にすることができ、該中立位置で、前記ロック部材(9)が前記頭部側面(5)を回転方向に解放することと
を特徴とするリングナット。
【請求項2】
前記少なくとも1つのロック部材(9)が、そのロック位置で、前記スリーブと係わり合って前記スリーブ(4)の前記頭部側面(5)をロックすることを特徴とする請求項1に記載のリングナット。
【請求項3】
前記スリーブ(4)の前記頭部側面(5)が、六角形頭部として構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のリングナット。
【請求項4】
前記スリーブ(4)に対して互いに半径方向で向かい合う2つのロック部材(9)が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリングナット。
【請求項5】
各ロック部材(9)が、その中立位置及び/又はそのロック位置で解放可能にロックされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリングナット。
【請求項6】
前記スリーブ(4)が前記ディスク(20)に溶接されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリングナット。
【請求項7】
前記スリーブ(4)が前記ディスク(20)にねじ結合されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリングナット。
【請求項8】
前記スリーブ(4)が接着剤によって前記ディスク(20)に接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリングナット。
【請求項9】
各ロック部材がチルトレバー(9)として構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のリングナット。
【請求項10】
各チルトレバー(9)が所定の回転角度を通ったときにのみ、各チルトレバー(9)をその中立位置からそのロック位置に移動させることができることを特徴とする請求項9に記載のリングナット。
【請求項11】
前記所定の回転角度が110°であることを特徴とする請求項10に記載のリングナット。
【請求項12】
チルトレバー(9)として構成される各ロック部材が、上側切欠部(12)内で、前記ベース部分(2A)にある前記貫通開口(3)の横に位置し、前記上側切欠部(12)が、前記貫通開口(3)の中心軸に垂直に向けられ、前記ロック部材(9)が、前記上側切欠部(12)の向きに垂直に位置する旋回軸上に位置し、前記旋回軸が、前記上側切欠部(12)内に取り付けられた保持ブラケット(10)によって支持され、前記保持ブラケット(10)が、中央バー(14)によって一体に接続された2つの側方アーム(13)を有するU字形断面を備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のリングナット。
【請求項13】
各チルトレバー(9)には、前記保持ブラケット(10)に面するその下面に突出部が設けられ、前記突出部が、前記保持ブラケット(10)の前記中央バー(14)から隆起するばねバー(17)と係合し、前記チルトレバー(9)が傾斜移動時に前記ばねバー(17)の上を進むときに前記ばねバー(17)を弾性変形させ、チルトレバー(9)がその傾斜末端位置に達すると、前記ばねバー(17)が再びその初期形状を取り、前記突出部によってそれぞれの傾斜末端位置で前記チルトレバー(9)をロックすることを特徴とする請求項12に記載のリングナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側領域
に、貫通開口を有するベース部分を
備えたサスペンションリング
と、貫通開口内に回転可能に位置し、ベース部分の下側に向かって開いたねじ穴を有するスリーブとを有し、スリーブが、スリーブの円周環状カラーによって、ベース部分にある貫通開口を取り囲む接触面上に支持され、スリーブには、ベース部分の下
側とは逆向きの端部領域で、非回転対称の頭部側面が外面に設けられたリングナットに関する。
【背景技術】
【0002】
実用上、工具不要の取付け及び取外しを可能にするために、多くの場合、回転可能でないリングナットが使用される。しかし、そのような回転可能でないリングナットの欠点は、荷重方向にそれらの向きを合わせることができず、使用時にねじが緩む、又は、ねじが締まりすぎる危険があることである。リング又はねじボルトが曲がり、さらには破壊することがあり、これは、作業環境に対する損傷及び使用者の怪我の危険を高める。
【0003】
これを避けるために、一般に、マルチストランド又は横向きの用途には、回転可能なリングナットのみを使用することが推奨されている。しかし、これらは、さらなる工具(ケーブルレンチやリングレンチなど)がないと、締めたり緩めたりすることができない。
【0004】
冒頭で述べたタイプのリングナットは、ドイツ特許出願公開第10002899号明細書から知られている。そのリングナットでは、ねじピンを締めるためのねじ穴が、リングナットのベース部分の貫通開口内に支持されたスリーブの穴によって形成され、そのスリーブの一端が、組立て状態で、接続スリーブのベース部分の下面を幾分越えて突き出ている。この公知のリングナットでは、ベース部分に回転可能に配置され、取り付ける荷重を受け取るためのねじ穴を有するスリーブを使用することによって、接続スリーブをそこに導入される力に従って調節することができるという利点が実現される。しかし、これらの公知のリングナットは、さらなる工具なしでは締めること及び緩めることができない。
【発明の概要】
【0005】
これを出発点として、本発明の目的は、そのようなリングナットをさらに改良して、締めること及び緩めることのためのさらなる工具(ケーブルレンチやリングレンチなど)なしで使用することができるようにすると共に、使用者が単純に時間をかけずに取り扱うことができるようにすることである。
【0006】
本発明によれば、この目的は、以下のタイプのリングナットで達成される。このリングナットにおいて、スリー
ブの下端領域
は、より小さい直径を有するエンドステップと共に、ベース部分の下面に接するディスクの中央開口内に突き出し、
エンドステップは、ディスクの厚さよりも軸方向に短い形態となっており、ディスクと相互回転しないように固定して接続さ
れ、スリーブの頭部側面に隣接するベース部分に少なくとも1つのロック部材が設けられ、ロック部材をロック位置にすることができ、ロック位置で、ロック部材が頭部側面と協働して、頭部側面を回転方向にロックし、ロック部材を中立位置にすることができ、中立位置で、ロック部材が頭部側面を回転方向に解放する。
【0007】
本発明によるリングナットでは、ベース部分で、特にスリーブの頭部側面に隣接して少なくとも1つの調節可能なロック部材を使用することにより、少なくとも1つのロック部材は、そのロック位置にされるときに、頭部側面を回転方向でロックするように頭部側面と協働することができる。しかし、ロック部材は、その中立位置にされるとき、頭部側面を回転方向で解放し、それにより、リングナットのベース部分内でスリーブが自由に回転することができる。
【0008】
同時に、スリーブは、その下端領域で、ベース部分の下面に接するディスクの中央開口内に突き出し、ディスクと回転可能に接続されるが、下端部でディスクから突き出ないことにより、停止点の締め付け時には、取り付けられる荷重は、ベース部分の下面に取り付けられたディスクに接し、回転ロックの解除時には、ディスクがスリーブと共に回転可能であるように接続されているので、ディスクがスリーブと共に回転方向に回転することができることを保証する。スリーブがディスクの下面でディスクを越えて突き出ないので、取り付けられる荷重は、スリーブがディスクの下面で幾分突き出ている場合のように、例えばスリーブの下面にのみ接するのではなく、比較的大きい表面にわたってディスクの下面に接する。
【0009】
本発明によるリングナットを組み立てるために、ねじ及びナット用の組立て工具のようなさらなる工具を使用する必要はない。なぜなら、スリーブの回転ロックは、少なくとも1つのロック部材をその2つの末端位置の一方に設定することによってサスペンションリングのベース部分に対して少なくとも1つのロック部材を変位させることと、少なくとも1つのロック部材をその他方の調節位置に設定することによって回転ロックを解除することとによってのみ実現されるからである。
【0010】
さらに、本発明によるリングナットは、回転可能なだけでなく、ディスクへのスリーブの取付けと、サスペンションリング内の接触面上でのスリーブの支持とによって、組立て状態で1ユニットとして保たれるようにも構成される。
【0011】
ロック位置でのロック部材によるスリーブの回転ロックは、任意の適切な様式で実現することができる。しかし、ロック部材が、そのロック位置で、スリーブと係わり合ってスリーブの頭部側面の回転を阻止するように構成及び配置されると、特に好ましい。
【0012】
ロック部材と協働するスリーブ用の非回転対称の頭部側面として、任意の適切な非回転対称形状を使用することができる。しかし、特に好ましくは、頭部側面が六角形頭部として構成される。
【0013】
本発明によるリングナットの別の好ましい実施形態では、スリーブに対して半径方向で互いに面する2つのロック部材が提供され、各ロック部材をロック位置と中立位置とにすることができ、それにより、スリーブの回転を阻止するために、頭部側面にある2つのロック部材が、頭部側面の周縁で互いに対して180°ずれた2つのロック部材に係合する。
【0014】
本発明の別の特に好ましい実施形態によれば、各ロック部材が、その中立位置及び/又はそのロック位置で、好ましくは戻り止めばねによって解放可能にロックされることが考えられる。
【0015】
スリーブをディスクに取り付けるために、多くの取付け方法を使用することができる。しかし、スリーブがディスクに溶接又は接着される、あるいは、スリーブとディスクとがねじ結合される場合に特に有利である。接続は、スリーブをディスクの中心穴内に押し込むことによって、あるいは、スリーブ又はディスクのアンダーカットによって、あるいは、リベットと同様に、既に存在する外面材料にフランジを形成することによって実現することもできる。いずれの場合にも、使用される接続によって、サスペンションリングのベース部分でスリーブが回転できることが保証されなければならず、リングナットは、組立て状態で1ユニットとして保持されなければならない。
【0016】
各ロック部材の設計は、スリーブの回転を阻止するためのロック位置と、スリーブとの係合が生じない開始位置との間でロック部材を本発明の方法で移動または変位させることを可能にする任意の適切な形で構成することができる。しかし、各ロック部材がチルトレバーとして構成され、チルトレバーが、1つの傾斜末端位置で、頭部側面、したがってスリーブの望ましい回転ロックを行い、他方の傾斜末端位置で、頭部側面を回転方向に解放する場合に特に有利である。
【0017】
本発明によるリングナットの別の特に好ましい実施形態では、各チルトレバーが(ロック位置を取るための方向に)所定の回転角度を通ったときにのみ、各チルトレバーをその中立位置からそのロック位置に移動させることができ、この所定の回転角度は、特に好ましくは110°である。これは、中立位置からロック位置にするために、少なくともこの角度範囲だけ対象のチルトレバーを操作者が能動的に移動させなければならないことを意味し、その後、チルトレバーが、他方の末端位置に、すなわちそのロック位置に引き続き進む。しかし、操作者によってチルトレバーがロック位置の方向にこの所定の角度だけ移動しない場合、チルトレバーは、所定の回転角度に達する前にこの方向での移動が能動的に継続されなくなったときには、その設計に応じて、取られた位置に留まるか、または好ましくはその開始位置(中立位置)に自動的に戻る。本発明によるリングナットのこの実施形態により、チルトレバーがそのロック位置へ誤動作で移動する危険がなくなる。
【0018】
本発明によるチルトレバーの1つの好ましい実施形態では、そのような各チルトレバーが、上側切欠部内で、ベース部分にある貫通開口の側部に位置され、この切欠部が、ベース部分の貫通開口の中心軸に垂直に向けられ、チルトレバーが、切欠部の向きに垂直に位置する旋回軸上に位置され、旋回軸が、切欠部内に取り付けられた保持ブラケットによって支持され、保持ブラケットが、中央バーによって一体に接続された2つの側方アームを有するU字形断面を備える。これは、サスペンションリングまたはそのベース部分でのチルトレバーの省スペースの構成及び配置をもたらし、全体の構成は、単純であり、組立てが容易であり、操作者は、このチルトレバーの構成をチルトレバーの2つの傾斜末端位置に容易に動かすことができる。
【0019】
各チルトレバーには好ましくは、保持ブラケットに面するその下面に、ある形状が設けられ、その形状が、保持ブラケットの中央バーから隆起するばねバーと係合し、チルトレバーが傾斜移動時にばねバーの上を進むときにばねバーを弾性変形させ、チルトレバーがその傾斜末端位置に達すると、ばねバーが再びその初期形状を取り、その形状によってそれぞれの傾斜末端位置でチルトレバーをロックする。この実施形態も、非常に省スペースであり、構造が単純であり、機能が効果的であり、さらに、サスペンションリングからスリーブに非常に大きなトルクを伝達するのに適している。
【0020】
本発明によるリングねじでは、ロック部材を作動させるために個別の工具を使用する必要はもはやなく、したがって工具を紛失する危険をなくす。少なくとも1つのロック部材を半径方向でスリーブの頭部側面の隣に取り付けることと、ロック部材をベース部分に取り付けることとにより、全体として非常に省スペースの構成が得られ、ロック部材は、ベース部分の外周面を越えて突き出ないように構成することができ、それにより、与えられた所定の形状によりサスペンションリングが回転可能である場合には狭い空間でさえ、本発明によるリングナットの使用が可能となる。
【0021】
本発明を、図面を参照して以下にさらに詳細に説明する。図面は、基本的には例として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明によるリングナットの分解斜視図である。
【
図2】組立て状態での
図1のリングナットの斜視図であるが、サスペンションリングが、そのベース部分で、その貫通開口の長手方向軸を通って延びる平面で切断されている図である。
【
図3】ロック部材の組立て状態及びロック位置での、
図1及び
図2による本発明のリングナットを示す斜視図である。
【
図4】
図3のリングナットであるが、ロック部材がそれらの中立位置にある図である。
【
図5】ロック部材を取り付けるために使用される保持ブラケットの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面は、サスペンションリング2を備えるリングナット1を示し、サスペンションリング2は、その下側区域でベース部分2Aを形成し、ベース部分2Aに、スリーブ4を挿入するための貫通開口3が設けられている(
図1参照)。
【0024】
スリーブ4には、サスペンションリング2に向いたその上端領域に、頭部側面5が外面に設けられ、スリーブ4は、雌ねじ6を有する中央内部穴を有し(
図1)、雌ねじ6は、図示された例示的な実施形態では、スリーブ4の軸方向の全長にわたって設けられている。
【0025】
サスペンションリング2とは逆を向いたスリーブ4の下面から雌ねじ6内に、ねじやねじボルトなど(図示せず)をねじ込むことができ、それによって物体または荷重をリングナット1のスリーブ4と結合させることができる。
【0026】
スリーブ4の上端領域にある頭部側面5は、スリーブ4の円周リングショルダ7上に位置する六角形頭部の形態で構成され、円周リングショルダ7は、その下面で、サスペンションリング2のベース部分2A上に構成されて貫通開口3を取り囲む平坦な接触面8上に位置し、接触面8によって下側から支持される(
図1、
図2)。
【0027】
図2の斜視図は、
図1のサスペンションリング2を組立て状態で示すが、サスペンションリング2及びそのベース部分2Aは、垂直中心面(そこにスリーブ4の中心軸も位置する)で切断されており、リングナット1の他の要素は切断されずに図示されている。
【0028】
図2から、スリーブ4が貫通開口3を通して挿入され、スリーブ4の円周リングショルダ7がベース部分2Aの平坦な接触面8上に位置することが分かる。
【0029】
貫通開口3を通して挿入されたスリーブ4には、その下端領域、すなわちサスペンションリング2とは逆向きの端部領域内に、貫通開口3の残りの直径よりも小さい直径を有するエンドステップ22が設けられ、エンドステップ22は、下側のディスク20の中央穴21内に突き出し(
図2参照)、組立て状態では適切な方法で、すなわち、例えばねじ結合、溶接、接着、圧入によって、または別の適切な方法でこのディスク20に接続され、ディスク20とスリーブ4とが相互回転しないように固定接続され、それにより、ディスク20とスリーブ4とは、組立て状態で構造ユニットを形成する。これは、一方として、サスペンションリング2のベース部分2Aの平坦な接触面8上での円周リングショルダ7によるスリーブ4の支持によって、また他方として、ベース部分2Aの下面でのディスク20の支持によって、ベース部分2Aを有するサスペンションリングと、貫通開口3を通って延びるスリーブ4と、下に取り付けられるディスク20との全体的な構成を形成して、自立型ユニットを形成する。
【0030】
スリーブ4の下側のエンドステップ22は、ディスク20の厚さよりもいくぶん短い軸方向長さを有し、したがって、組立て状態で、スリーブ4は、ディスク20の下面で、ディスク20の下端面を越えて外には突き出ていない。
【0031】
組立て状態で、例えばねじボルト(図示せず)により、そのねじをスリーブ4の雌ねじ6にねじ結合することによって荷重がリングナット1に下面から取り付けられる場合、このねじボルトは、それが取り付ける荷重の上面がディスク20の下面に当たるまで、スリーブ4の雌ねじ6にねじ込まれる。
【0032】
この組立てが完了すると、チルトレバー9が、組立てのために取られていたそれらのロック位置から、それらの中立開始位置に傾けられて戻され、それによりスリーブ4の頭部側面5を解放し、したがって、次いで、スリーブ4を、サスペンションリング2の貫通開口3内部でサスペンションリング2に対して回転させて、リングナット1の内部で荷重方向に最適に向くことができる。
【0033】
しかし、このために必要とされる回転移動中、スリーブ4/ディスク20のユニットは一体に回転し、それにより、荷重の上面とディスク20の下面との相対移動を伴わずに、結合される荷重を回転させることができる。しかし、ディスク20の上面とサスペンションリング2のベース部分2Aの下面との間で相対移動が生じ、生じる摩擦力は、ディスク20の表面とベース部分2Aの下面との材料の最適な摩擦対形成によって(例えば、適切な摩擦カバーを貼り付けることによって)最適化することができる。あるいは、組立て状態でも、ベース部分2Aの下面でのディスク20の位置は、これら2つの部品の間に非常に小さい量の遊びが生じるように設定され、これは、荷重が取り付けられるときに、ディスク20の上面とベース部分2Aの下面との間での摩擦力が実質的にない状態で、ベース部分2Aに対するディスク20の回転を可能にし、それにより、回転中に作用する摩擦力は、スリーブ4とベース部分2Aの貫通開口3の壁との間の摩擦力と、円周リングショルダ7と、スリーブ4の円周リングショルダ7が支持されるベース部分2Aの接触面8との間の摩擦力とのみである。
【0034】
さらに、
図1及び
図2で見ることができるように、リングナット1は、2つのチルトレバー9と、それらのための2つの保持ブラケット10と、2つの旋回軸11とも有し、各旋回軸11は、保持ブラケット10にチルトレバー9を傾斜可能に配置するために使用される。
【0035】
図1及び
図2からも分かるように、貫通開口3に隣接するベース部分2Aの上側領域内で、貫通開口3の両側に、スリーブ4を受け取るための凹部12が上からそれぞれ形成されている。
【0036】
2つの凹部12は、貫通開口3の中心軸に対して互いに半径方向で向かい合うように配置され、かつ互いに向き調整され、すなわち、
図1で特に良く見られるように、2つの凹部12の向きは、スリーブ4の長手方向中心軸に垂直に、同時にサスペンションリング2のクランプ面にも垂直に延びている。
【0037】
図5に詳細に示されるように、各凹部12内にそれぞれ1つの保持ブラケット10が位置している。見ることができるように、各保持ブラケット10は、2つの側方アーム13を有し、側方アーム13は互いに平行に位置し、それぞれそれらの一端で中央バー14を介して互いに接続されている。
【0038】
各側方アーム13に軸受開口15が構成され、側方アーム13の2つの軸受開口15は、それらの軸受開口15を通してそれぞれの旋回軸11(
図1参照)を挿入することができるように互いに位置合わせされ、旋回軸11上で、チルトレバー9が旋回することができ、横方向および旋回方向でガイドされるように配置されている。この状態は、
図2に示されている。
【0039】
(サスペンションリング2のクランプ面に平行に見たときの)凹部12の深さ及び幅は、
図4に示されるようにチルトレバー9がそれらの開始位置(スリーブ4の頭部側面5との係合がない中立位置)で各凹部12に取り付けられるときに、チルトレバー9のそれぞれの上面が、凹部12の側方でのサスペンションリング2のベース部分2Aの表面とほぼ同じ高さに位置するようなものである。各凹部12の幅は、関連の保持ブラケット10及び対応するチルトレバー9を、側方で幾らかの遊びを有して凹部12内に取り付けることができるように選択される。
【0040】
各チルトレバー9のための旋回軸11は、それぞれの凹部12の横方向の幅よりも長く、旋回軸11は、凹部12の両側で、ベース部分2Aに横方向に設けられたそれぞれの軸受開口15内に突き出ている。それぞれのチルトレバー9は、関連の旋回軸11に旋回可能に位置することができ、旋回軸11は、固定シートと相互回転しないように固定して、軸受開口15に取り付けることができ、あるいは、各チルトレバー9を、旋回軸11に固定して取り付けて、各保持ブラケット10の側方アーム13の軸受開口15及び軸受開口16内で旋回軸11と共に旋回するように設けることもできる。
【0041】
図5は、そのような保持ブラケット10の拡大斜視図を示している。
【0042】
図5から分かるように、保持ブラケット10の中央バー14の中央領域に、上方向にアーチ形状をなすばねバー17が弾性アーチの形態で設けられ、ばねバー17は、軸受開口15の位置に対して幾分ずれている。このばねバー17は、保持ブラケット10の中央バー14上に位置し、それにより、ばねバー17に上から圧力が及ぼされるとき、ばねバー17は、そのアーチの曲率半径がより大きくなり、したがってそのアーチ自体がより平坦になるように変形され、ばねバー17は、平坦に押されたときに生じる保持ブラケット10の中央バー14に対する長さの変化を補償することができるように保持ブラケット10上に取り付けられる。
【0043】
保持ブラケット10の中央バー14に面する各チルトレバー9の下面において、組立て状態で保持ブラケット10内のばねバー17の位置に対応する中央領域内で、チルトレバー9は、チルトレバー9が傾けられたときに保持ブラケット10のばねバー17と接触して係合するような形状を有している。チルトレバー9が傾けられるとき、チルトレバー9の下面に設けられた突出部が、保持ブラケット10の中央バー14の片側からばねバー17に当たり、ばねバー17を越えて進み、ばねバー17は下方向に押されて弾性変形する。ばねバー17は、その弾性復元力で、上述した突出部を押す。突出部が、ばねバー17の中心を越えて案内されるとすぐに、ばねバー17は、その復元力で、この突出部の側面を押し、その結果、突出部は、傾斜方向で弾性的に偏らされて、対応する傾斜末端位置に押される。これは、チルトレバー9の両方の傾斜方向に当てはまり、チルトレバー9に突出部を適切に構成することによって、チルトレバー9の2つの傾斜末端位置のそれぞれで、ばねバー17のある弾性復元力によって突出部が依然として荷重を及ぼされ、それにより、この傾斜末端位置で弾性偏向の下で保持されることを保証できる。ロックデバイス(図示せず)によって、チルトレバー9がその2つの旋回末端位置のそれぞれでロックされることも実現可能である。
【0044】
さらに、
図1に示されるように、各チルトレバー9は、第1のチルトレバーアーム18と、それに対して約90°で取り付けられた第2のチルトレバーアーム19(
図1及び
図4)とからなる。
【0045】
チルトレバー9がスリーブ4の頭部側面5と係合しておらず、スリーブ4がサスペンションリング2の貫通開口3内で自由に回転することができるチルトレバー9の中立位置(
図4参照)では、各チルトレバー9は、その外側傾斜末端位置に倒されるように傾けられ、その位置では、チルトレバー9は、第1のチルトレバーアーム18によって凹部12の上または中に支持される。第2のチルトレバーアーム19は、上方向に傾けられ、その外面は、貫通開口3の長手方向中心軸に垂直に位置する。
【0046】
図2及び
図3に示されるようにチルトレバー9がそのロック位置に傾けられるとき、チルトレバー9は、このチルトレバー末端位置では第2のチルトレバーアーム19上に支持され、このとき、これらの図が示すように、第2のチルトレバーアーム19は、その外面で、対面するスリーブ4の頭部側面5の六角形頭部の側面に当たり、チルトレバー9にある突出部を押すばねバー17によって、弾性偏向の下でこの位置で保持される。
【0047】
このロック位置では、ベース部分2A及びサスペンションリング2に対してスリーブ4が回転することは可能でない。なぜなら、頭部側面5の六角形頭部の外側輪郭は、2つのチルトレバー9の2つの第2のチルトレバーアーム19の外面が両側から接触することによって、サスペンションリング2に対して回転方向にロックされるからである。
【0048】
このロック位置では、リングナット1の回転によって、チルトレバー9及び頭部側面5を介してスリーブ4にトルクを伝達することができ、それにより、取り付けられる物体をリングナット1に装着するために、ねじボルトなどのねじ込みを行うことができる。しかし、チルトレバー9が、その他方のチルトレバー末端位置、すなわち中立位置に傾いて戻るとすぐに、スリーブ4は、そこに荷重が取り付けられた状態で、サスペンションリング2に対して再び回転することができる。
【0049】
チルトレバー9の傾斜中に協働する要素の形状は、チルトレバー9をその傾斜末端位置に押す弾性力による所定の偏向がチルトレバー9の各傾斜末端位置で実現されるように選択することができるだけではない。要素の形状は、チルトレバー9の各末端位置からのチルトレバー9のある所定の旋回量がまず克服されなければならず、その後、その点まで傾けられているチルトレバー9をばねバー17の弾性復元力が偏向させて、チルトレバー9の他方の傾斜末端位置に押すようなものにすることもできる。これは、チルトレバー9が、その傾斜末端位置から誤動作で予期せず移動するのを防止する。
【0050】
望みであれば、スリーブ4には、その上端部に、六角形状頭部のような形作られた頭部を提供することも可能であり、対応するレンチサイズを有する工具を使用して組立てを行うことも可能にする。