【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。以下の記載において「部」は質量部、「%」は質量%を意味する。
【0037】
<粘着剤層の製造例1〜3>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応装置に、表1に示す量(%)の成分(A1)〜(A5)と、酢酸エチル、連鎖移動剤としてn−ドデカンチオール及び過酸化物系ラジカル重合開始剤としてラウリルパーオキサイド0.1部を仕込んだ。反応装置内に窒素ガスを封入し、攪拌しながら窒素ガス気流下で68℃、3時間、その後78℃、3時間で重合反応させた。次いで、室温まで冷却し、酢酸エチルを添加した。これにより、固形分濃度30%のアクリル系共重合体(A)を得た。
【0038】
各アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び理論Tgを表1に示す。この重量平均分子量(Mw)は、GPC法により、アクリル系共重合体の標準ポリスチレン換算の分子量を以下の測定装置及び条件にて測定した値である。
・装置:LC−2000シリーズ(日本分光株式会社製)
・カラム:Shodex KF−806M×2本、Shodex KF−802×1本
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/分
・カラム温度:40℃
・注入量:100μL
・検出器:屈折率計(RI)
・測定サンプル:アクリル系ポリマーをTHFに溶解させ、アクリル系ポリマーの濃度が0.5質量%の溶液を作製し、フィルターによるろ過でゴミを除去したもの。
理論Tgは、FOXの式により算出した値である。
【0039】
【表1】
【0040】
表1中の略号は、以下の通りである。
「MA」:メチルアクリレート
「2−EHA」:2−エチルヘキシルアクリレート
「BA」:n−ブチルアクリレート
「AA」:アクリル酸
「4−HBA」:4−ヒドロキシブチルアクリレート
「Vac」:酢酸ビニル
【0041】
そして、各アクリル系共重合体(A)の固形分100部に対し、架橋剤(B)として日本ポリウレタン工業社製のイソシアネート系架橋剤(コロネート(登録商標)L−45E、45%溶液)0.04部並びに三菱瓦斯化学社製エポキシ系架橋剤(TEDRAD(登録商標)−C)0.001部、シランカップリング剤(C)として信越化学工業社製のシランカップリング剤(商品名KBM−403)0.1部、酸化防止剤(D)としてBASF社製の酸化防止剤(イルガノックス(登録商標)1010)0.2部を加えて混合し、粘着剤組成物を調製した。さらに、この粘着剤組成物をシリコーン処理された離型紙上に乾燥後の厚みが0.05mmになるように塗布した。次いで、110℃で溶媒を除去・乾燥すると共に架橋反応させて、粘着剤層1〜3を形成した。
【0042】
<実施例1>
まず、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を60%含むポリエチレン(PE)系発泡体からなる基材(厚さ=0.15mm、引張弾性率=46.1N/mm
2、曲げモーメント=15gf/cm、発泡倍率=1.9、密度=544kg/m
3)を用意した。そして、この基材の両面をコロナ放電処理し、基材の両面に製造例1で得た離型紙上の粘着剤層を貼り合せ、40℃で3日間養生して、両面粘着テープを得た。
【0043】
<実施例2及び3>
粘着剤層として、製造例2及び3で得た粘着剤層を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0044】
<実施例4>
基材として、EVAを70%含むPE系発泡体からなる基材(厚さ=0.15mm、引張弾性率=46.2N/mm
2、曲げモーメント=18gf/cm、発泡倍率=1.7、密度=590kg/m
3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0045】
<実施例5>
基材として、EVAを70%含むPE系発泡体からなる基材(厚さ=0.2mm、引張弾性率=36.6N/mm
2、曲げモーメント=18gf/cm、発泡倍率=2.9、密度=356kg/m
3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0046】
<比較例1>
基材として、PE系発泡体(積水化学工業社製、商品名ボラーラXL−HT♯030012、厚さ=0.2mm、引張弾性率=21.0N/mm
2、曲げモーメント=3gf/cm、発泡倍率=3、密度=330kg/m
3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0047】
<比較例2>
基材として、PE系発泡体(積水化学工業社製、商品名ボラーラXL−H♯0180015、厚さ=0.15mm、引張弾性率=23.7N/mm
2、曲げモーメント=7gf/cm、発泡倍率=1.8、密度=560kg/m
3)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0048】
実施例及び比較例の基材の引張弾性率、並びに基材及び粘着テープの曲げモーメントは、以下の方法により測定した値である。各測定値を表2に示す。
【0049】
(引張弾性率)
基材を幅(W)10mm、長さ70mmの短冊状(長辺がMD方向)に裁断し、これを試験片とした。そして、厚さを1/100ダイヤルゲージ(N=5)で測定し、5点の平均値を厚さ(t)とし、以下の式から試験片の断面積(S)を求めた。
断面積S(mm
2)=t×W
t:厚さ(mm)
W:幅(mm)
【0050】
JIS K7161 2014に基づき、市販の引張試験装置(東洋精機製作所社製、装置名ストログラフV−10C、フルスケール50N)のチャック間隔(L)を20mmに設定し、試験片の上端及び下端をチャックした。その後、引張速度10mm/分で引張り、引張荷重―変位曲線を得た。得られた引張荷重―変位曲線の変位が0.05mm及び0.25mmの引張荷重から直線式を求めた。得られた直線式から引張荷重F=10Nの時の変位x(mm)を求め、下記の式より基材の腰の指標となる引張弾性率を求めた。
引張弾性率(N/mm
2)=(F/S)/(x/L)
F:引張荷重=10(N)
S:断面積(mm
2)
x:引張荷重=10Nの時の変位(mm)
L:チャック間隔=20(mm)
【0051】
なお、各直線式及び引張弾性率は以下の通りである。
実施例1、2及び3:直線式 y=3.6667x+0.0767、引張弾性率 46.1N/mm
2
実施例4:直線式 y=3.619x+0.0590、引張弾性率 46.2N/mm
2
実施例5:直線式 y=3.639x+0.0689、引張弾性率 36.6N/mm
2
比較例1:直線式 y=1.2632x-0.0432、引張弾性率 21.0N/mm
2
比較例2:直線式 y=2.1026x+0.1349、引張弾性率 23.7N/mm
2【0052】
(曲げモーメント)
基材(又は両面粘着テープ1)を幅38mm、長さ50mmの短冊状に裁断し、これを試験片とした。得られた試験片を
図1に示すような4本の端子30に挟み込んだ。そして、JIS P8125に基づき、市販のテーバー剛性度試験機(東洋精機製作所社製)の試験時に稼働する部分に設置し、上下10gの重りを振り子へ取り付け、曲げ速度3°/sec、曲げ角度15°の時の目盛を読み、これを測定値とした。そして、この測定値を以下の計算式に代入し、MD方向及びTD方向の曲げモーメント(M)を算出した。
曲げモーメント(gf/cm)=38.0nk/w
n:目盛の読み(10gの重りの時は1)
k:一目盛当りのモーメント(gf/cm)
w:試験片の幅
【0053】
【表2】
【0054】
<評価試験>
実施例及び比較例で得た両面粘着テープを、以下の方法で評価した。結果を表3〜6に示す。
【0055】
(狭額縁耐湿熱荷重性)
両面粘着テープ1を幅0.5mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmで63mm×118mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離した。そして
図2に示すように、1.5mm厚のポリカーボネート製フック2に両面粘着テープ1を貼り合せ、次いでもう一方の離型紙を剥離し、2.0mm厚のガラス板3に貼り合せ、23℃、50%RHの雰囲気下で60分間養生した。そしてフック2に200gfの錘4をかけ、40℃、90%RHの雰囲気下で24時間保持し、以下の基準で耐荷重性を評価した。
「○」:24時間フック19は落下しなかった。
「×」:60分以内にフック19が落下した。
【0056】
(耐静電性)
両面粘着テープ1を幅0.8mmで80mmの短冊状に裁断し、一方の離型紙を剥離して2.0mm厚×80mm×120mmのアクリル板5に形成されたHV電極6と銅電極7の間(電極間距離1.0mm)に貼り合せ、更にもう一方の離型紙を剥離して2.0mm厚×80mm×80mmのアクリル板5を貼り合せた。このサンプルに対して、オートクレーブを用いて23℃、5秒間の加圧処理(0.5MPa)を行った。そして
図3に示すように、IEC61000−4−2(耐静電性規格)に基づき、このサンプルの耐静電性を評価した。具体的には、静電ガンを用いて各電圧にて50回ずつHV電極15に印加し、銅電極7側に電流が導通したときの印加電圧(ESD耐圧)を測定した。なお、このサンプルは絶縁シート8を介してステンレステーブル9上に設置され、銅電極7はステンレステーブル18にアースされている。
【0057】
(60°鏡面光沢度)
JIS Z8741に基づき、両面粘着テープを100mm×100mmに裁断し、離型紙を剥離して、120℃雰囲気下の熱風乾燥機中にクリップでテープの端面を固定し吊るした。30分間放置して取り出し後、ハンディ光沢度計(日本電色工業株式会社製、装置名PG−2M)で粘着剤層の60°鏡面光沢度を測定した。
【0058】
(加熱時せん断変形率)
両面粘着テープ1を25mm×25mmのサイズに裁断し、一方の離型紙を剥離した。そして
図4に示すように、厚さ0.5mm、幅30mm、長さ100mmのSUS304BA板10に両面粘着テープ1を貼り合せ、次いでもう一方の離型紙を剥離し、同じサイズのSUS304BA板10に貼り合せ、23℃、50%RHの雰囲気下で60分間養生した。次いで、その下端に1kgfの錘11を吊るし、120℃で30分、135℃で30分加熱し、その変形量をルーペにて目視測定し、加熱時せん断変形率(△Sr)を下記の式にて算出した。
△Sr=(Xi+Xt)/Xi×100
△Sr:加熱時せん断変形率(%)
Xi:仕込みサンプル長(mm)=25(mm)
Xt:サンプル変形量(mm)
【0059】
(狭額縁低温耐衝撃性)
両面粘着テープ1を幅0.6mmで63mm×118mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離して、1.5mm厚のポリカーボネート板12に貼り合せ、更にもう一方の離型紙を剥離し、1.9mm厚の強化ガラス板13に貼り合せた。この貼り合せした部材を
図5に示すように、重さが160gfになるように2.0mm厚のSUS304板14で調整した後、60分間養生した。このサンプルを−20℃の雰囲気下で、1.5Mの高さからせん断方向にコンクリート上に自由落下させ、以下の基準で耐衝撃性を評価した。
「○」:20回落下後、接着部分の剥がれ及び基材の層間破壊無し。
「×」:20回落下後、接着部分の剥がれ及び基材の層間破壊有り。
【0060】
(押圧力)
両面粘着テープ1を25mm×25mmにサイズに裁断し、一方の離型紙を剥離した。そして
図6に示すように、固定用治具15に固定した長さ100mm、幅50mm、2.0mm厚のナイロン樹脂板16に両面粘着テープ1を貼り合せ、次いでもう一方の離型紙を剥離し、もう一つの同サイズのナイロン樹脂板16に貼り合せ、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間養生した。そして
図6に示すように下方向に50mm/分の速度で押し、貼り合せ部分が切れた時の強度(N/cm
2)を測定した。
【0061】
(デュポン耐衝撃試験)
両面粘着テープ1を幅1.0mmで45mm×50mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離して、1.9mm厚の強化ガラス板17に貼り合せた。次いでもう一方の離型紙を剥離し、中心に20mmφの穴が開いた4.0mm厚のポリカーボネート板18に貼り合せた。この貼り合せた部材をオートクレーブを用いて23℃、5秒間の加圧処理(0.5MPa)を行った。その後、23℃雰囲気下にて24時間養生した後、
図7に示すデュポン耐衝撃試験を用いて、固定用治具19に固定されたポリカーボネート板18の穴あき部分に設置したSUS304製クサビ20に対して300gfの錘21を任意の高さで3回落下させ、強化ガラス板17とポリカーボネート板18が剥れた時の高さを測定した。
【0062】
(防水性)
両面粘着テープを幅0.6mmで63mm×118mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板に貼り合せ、更にもう一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板を貼り合せた。このサンプルに対して、オートクレーブを用いて23℃、5秒間の加圧処理(0.5MPa)を行った。そして、このサンプルをJIS IPX7(防水規格)に基づき一時的に水没させて、以下の基準で防水性を評価した。また、上記と同様にサンプルを作製し、JIS IPX8(防水規格)に基づき水深10cmの水中下に沈めて23℃、0.5MPa、1時間の加圧処理をオートクレーブを用いて行い以下の基準で防水性を評価した。
「○」:枠内に水が浸入しなかった。
「×」:枠内に水が浸入した。
【0063】
(耐オレイン酸性)
両面粘着テープを幅0.6mmで63mm×118mmの枠状に裁断し、一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板に貼り合せ、更にもう一方の離型紙を剥離して2.0mm厚のガラス板を貼り合せた。このサンプルに対して、オートクレーブを用いて23℃、0.5MPa、5秒間の加圧処理を行った。そして、このサンプルをオレイン酸に72時間浸漬した。サンプルを取り出し、85℃、85%RHの雰囲気下で24時間静置し、その後通常の雰囲気下に24時間放置した。そのサンプルを目視観察し、以下の基準で耐オレイン酸性を評価した。
「○」:枠内にオレイン酸が浸入しなかった。
「×」:枠内にオレイン酸が浸入した。
【0064】
(加工性)
両面粘着テープを5mm×125mmのサイズで10本に細断した状態を維持したまま(すなわち細断した各々の粘着テープが細断時の隣接した状態を維持したまま)、65℃、80%RH雰囲気下に1日放置した。その後1本毎に180°方向に離型紙ごと剥離し、隣接した部分との癒着を目視にて確認し、以下の基準で加工性を評価した。
「○」:隣接した部分との癒着が殆ど無く、隣接部分を剥がすことなく剥離できた。
「×」:隣接した部分に著しい癒着があり、隣接部分が同時に剥がれてしまった。
【0065】
(耐荷重性)
両面粘着テープを25mm×25mmのサイズに裁断し、一方の離型紙を剥離した。そして、SUS304製フックに両面粘着テープを貼り合せ、次いでもう一方の離型紙を剥離し、被着体に貼り合せた。この被着体としては、SUS304、ポリカーボネート板、アクリル板、EGI鋼板、ガルバリウム鋼板、ガラス板を用いた。そしてSUS304製フックに700gfの荷重をかけ、85℃で24時間保持し、以下の基準で耐荷重性を評価した。
「○」:24時間フックは落下しなかった。
「×」:60分以内にフックが落下した。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
<評価>
表3〜6の評価結果から明らかなように、実施例1〜5の粘着テープは全ての特性が優れていた。
【0071】
比較例1では、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含まない或いは少量しか含まず、引張弾性率や曲げモーメントが低い市販のポリオレフィン系発泡体基材を使用した。この比較例1の粘着テープは、狭額縁低温耐衝撃性、耐静電性、加熱時せん断変形率、狭額縁耐湿熱荷重性、押圧力、デュポン耐衝撃性に劣っていた。
【0072】
比較例2では、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含まない或いは少量しか含まず、引張弾性率が低い市販のポリオレフィン系発泡体基材を使用した。この比較例2の粘着テープは、極細幅の場合の狭額縁低温耐衝撃性、耐静電性、押圧力、デュポン耐衝撃性に劣っていた。