【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1は、支持部および梁の弾性表面波共振器を4箇所に有する加速度センサにおいて、3軸加速度検出の構成を実現する例である。
図3は本発明弾性表面波型加速度センサ実施例1の斜視図および横断面図であり、
図4は、実施例1においてX軸、Y軸、Z軸加速度が加わった場合の歪分布のFEM(Finite Element Method)解析結果を示す説明図である。
【0026】
本実施例では、検出軸方向へ加速度を加えると、錘部分に荷重がかかり、弾性表面波共振器がついている梁に歪みが生じ、圧縮および伸張する動きとなるが、歪量は検出軸毎の屈曲モードによって異なり、その変化により伝搬路長が変化する。
図3に示すように、共振器A〜Dをセンサ幅方向の中心線上よりずらして端部に配置することで、
図4の歪分布に対応した周波数成分を出力することが可能となる。なお、梁の共振器は
図4中の右側図に示した歪分布上に配置することとする。
【0027】
本実施例における3軸加速度検出の方法について説明する。
表1に、以下の説明における用語とその定義を示す。各共振器A〜Dの基準周波数をFとすると、各共振器の周波数(以下、SAW_A〜D)はF+ΔFと表すことができる。支持部上に設ける基準弾性表面波共振器(以下、「支持部共振器」という。)の周波数とSAW_A〜Dの差分を周波数感度α、β、γとした場合、加速度に対する各出力変化ΔFは、表2に示すとおり、X,Y,Z軸方向成分を含んだ合成出力となる。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表3、4に示す演算式によって、SAW_A〜Dの各出力から3軸加速度成分の合成和を分離できることがわかる。このことから、かかる所定の演算式を用いることによって、3軸加速度を独立して検出することが可能となる。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
<実施例2>
実施例2は、支持部に1箇所、梁に2箇所の弾性表面波共振器を備えた加速度センサによって、2軸加速度検出の構成を実現する例である。
図5は本発明弾性表面波型加速度センサ実施例2の斜視図および横断面図であり、
図6は、実施例2においてX軸、Y軸、Z軸加速度が加わった場合の歪分布のFEM解析結果を示す説明図である。
【0034】
本実施例では、検出軸方向へ加速度を加えると、錘部分に荷重がかかり、弾性表面波共振器がついている梁に歪みが生じ、圧縮および伸張する動きとなるが、歪量は検出軸毎の屈曲モード(X軸、Z軸)、捩れモード(Y軸)によって異なり、その変化により伝搬路長が変化する。
図5に示すように共振器A、Bをセンサ幅方向の中心線上の中央に配置することで、
図6の歪分布に対応した、周波数成分を出力することが可能となる。なお、もし共振器A、Bを幅方向中央に配置しないと、Y軸とX軸の歪が同相になるため分離できない。図のように中央に配置することによってY軸の感度を0とすることができ、X軸を独立に検出することが可能となる。なお、梁の共振器は
図6中の右側図に示した歪分布上に配置することとする。
【0035】
本実施例における2軸加速度検出の方法について説明する。
各共振器の基準周波数をFとすると、各共振器の周波数(以下、SAW_A、B)はF+ΔFと表すことができる。支持部共振器の周波数とSAW_A、Bの差分を周波数感度α、γとした場合、加速度に対する各出力変化ΔFは表5に示すとおりとなり、X,Y,Z軸方向成分を含んだ合成出力となる。さらに、表6に示す演算式により、SAW_A、Bの各出力から2軸加速度成分の合成和を分離できることがわかる。このことから、かかる所定の演算式を用いることによって、2軸加速度を独立して検出することが可能となる。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
<実施例3>
実施例3は、弾性表面波共振器を梁上の4箇所に有する加速度センサにより、3軸加速度検出の構成を実現する例である。
図7は本発明弾性表面波型加速度センサ実施例3の斜視図および横断面図であり、
図8は、実施例3においてX軸、Y軸、Z軸加速度が加わった場合の歪分布のFEM解析結果を示す説明図である。
【0039】
本実施例では、検出軸方向へ加速度を加えると、錘部分に荷重がかかり、弾性表面波共振器がついている梁に歪みが生じ、圧縮および伸張する動きとなるが、歪量は検出軸毎の屈曲モードによって異なり、その変化により伝搬路長が変化する。
図7に示すとおり、共振器A〜Dをセンサ幅方向の中心線上よりずらして端部寄りに配置することで、
図8の歪分布に対応した、周波数成分を出力することが可能となる。なお、梁の共振器は
図8中の右側図に示した歪分布上に配置することとする。
【0040】
本実施例における3軸加速度検出の方法について説明する。
各共振器の基準周波数をFとすると、各共振器の周波数(以下、SAW_A〜D)はF+ΔFと表すことができる。外部からの基準信号とSAW_A〜Dの差分を周波数感度α、β、γとした場合、加速度に対する各出力変化ΔFは表7に示すとおりとなり、X,Y,Z軸方向成分を含んだ合成出力となる。さらに、表8、9に示した演算式により、SAW_A〜Dの各出力から3軸加速度成分の合成和を分離できることがわかる。このことから、かかる所定の演算式を用いることによって、3軸加速度を独立して検出することが可能となる。なお本例では、加速度の影響を受けない共振器の代わりに外部からの基準信号を用いるが、これはたとえば、外付けの発振子からの周波数信号などである。
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
【表9】
【0044】
実施例1と実施例3とは、支持部上への共振器配置有無の点で、加速度センサの構成が相違する。実施例1のように梁と支持部の双方に共振器を設ける場合、支持部の共振器は加速度による影響を受けないため、周波数感度はその差分で表される。このように支持部に共振器を設ける利点は、圧電素子の温度特性を相殺できることである。つまり、加速度が印加されていない時でも、圧電素子であるが故に、梁の共振器は温度特性の影響で周波数が変化する。しかし、支持部にも共振器がある場合は温度特性が同じになるため、差分は変化しなくなるものである。
【0045】
一方、実施例3のように支持部上に共振器を設けないことの利点は、共振器の設置数を減らすことで製造工程をより簡易にし、製造コストをより低減できること、保守管理上のポイントを軽減できること、などである。したがって、用途や要求される特性等によって、実施例1、実施例3の各タイプを適宜選択することができる。
【0046】
<実施例4>
実施例4は、実施例1の加速度センサにおける支持部と錘部の配置を逆にした構造、すなわち中央に錘部、その両側に支持部を備えた構造によって、3軸加速度検出する加速度センサの構成を実現する例である。
図9は本発明弾性表面波型加速度センサ実施例4の斜視図および横断面図であり、
図10は、実施例4においてX軸、Y軸、Z軸加速度が加わった場合の歪分布のFEM解析結果を示す説明図である。
【0047】
本実施例では、検出軸方向へ加速度を加えると、錘部分に荷重がかかり、弾性表面波共振器がついている梁に歪みが生じ、圧縮および伸張する動きとなるが、歪量は検出軸毎の屈曲モード(X軸、Z軸)、捩れモード(Y軸)によって異なり、その変化により伝搬路長が変化する。
【0048】
実施例1のように中央に配置した支持部によって両端の錘部を支持するセンサ構造から、本例のように両端に配置した二つの支持部によって中央の錘部を支持するセンサ構造へと変えることにより、梁の歪分布は
図10に示す通りとなる。そして、本例においても、実施例1と同様の演算式を用いることによって、3軸加速度を独立して検出することが可能となる。なお、梁の共振器は
図10中の右側図に示した歪分布上に配置することとする。
【0049】
なお本実施例と同様にして、実施例2に示したセンサ構造を、両端に配置した二つの支持部によって中央の錘部を支持するセンサ構造へとに変えることで、2軸加速度を検知する構成を得られることはいうまでもない。