(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010733
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】板状試験片評価試験用ユニットおよびこれに用いる固定用治具
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20161006BHJP
G01N 3/08 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
G01N3/04 P
G01N3/08
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-190828(P2012-190828)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-48144(P2014-48144A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100107490
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 鉄郎
(72)【発明者】
【氏名】井出 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】亀田 治邦
(72)【発明者】
【氏名】木村 一弘
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−132720(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3114796(JP,U)
【文献】
実開昭56−007046(JP,U)
【文献】
特開2009−036785(JP,A)
【文献】
米国特許第06467357(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00〜3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板形状の試験片と、試験片の両端を試験装置に取り付けるための一対の固定用治具と、を備えた試験片材料強度評価用ユニットであって、
該試験片は、
中央部に平行部と、平行部の両端にこれより幅広の肩部と、を備えた評価対象の金属薄板と、
肩部両面に金属薄板と溶接により一体に固定され、固定用治具の収容溝部に嵌合固定する、断面楔形状に構成した固定用治具嵌合部と、
金属薄板肩部及び固定用治具嵌合部を貫く試験片貫通孔と、
を備え、
該固定用治具は、
試験装置のプルロッドに固定するための掴み部と、
伸び測定用治具を取り付け可能に構成した伸び測定用治具取付部と、
試験片の固定用治具嵌合部及び平行部の一部を、密着させて収容する試験片収容溝部と、
取り付け状態において、試験片貫通孔に対応する箇所に設けられた固定用治具貫通孔と、
を備え、
該試験片貫通孔及び固定用治具貫通孔を挿通する固定ピンにより、位置固定を可能とし、かつ、
評価時において、試験装置からの荷重が全て固定用治具嵌合部と試験片収容溝部との接触面に掛かるように構成した、
ことを特徴とする試験片評価試験用ユニット。
【請求項2】
中央部に平行部と、平行部の両端にこれより幅広の肩部と、を備えた評価対象の金属薄板と、肩部両面に金属薄板と溶接により一体に固定され、固定用治具の収容溝部に嵌合固定する、断面楔形状に構成した固定用治具嵌合部と、金属薄板肩部及び固定用治具嵌合部を貫く試験片貫通孔とを備えた薄板形状の試験片の両端を試験装置に取り付けるための一対の固定用治具であって、
試験装置のプルロッドに固定するための掴み部と、
伸び測定用治具を取り付け可能に構成した伸び測定用治具取付部と、
試験片の固定用治具嵌合部及び平行部の一部を、密着させて収容する試験片収容溝部と、
取り付け状態において、試験片貫通孔に対応する箇所に設けられた固定用治具貫通孔と、
を備え、
前記試験片に設けられた試験片貫通孔及び固定用治具貫通孔を挿通する固定ピンにより、位置固定を可能とし、かつ、
評価時において、試験装置からの荷重が全て前記試験片に設けられた固定用治具嵌合部と試験片収容溝部との接触面に掛かるように構成した、
ことを特徴とする固定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属薄板の材料強度評価用ユニットに係り、特に、高温クリープ試験又は引張試験に好適な金属薄板の材料強度評価用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料の高温クリープ試験に用いる試験片としては、JIS Z2271(文献1)に記載される直径3mm以上の円形断面(棒状)試験片が用いられる。そしてクリープ伸び測定に際しては、同文献
附属書に示される鍔・溝付き円形断面試験片が用いられる。
図5(a)はこのような円形断面試験片100を示し、平行部101の両端に掴み部102を備え、平行部101の両側に鍔103と、掴み部102に溝部104を備えている。
【0003】
しかしながら、金属薄板評価を目的とした板形状の試験片を用いたクリープ等の材料強度試験については、試験片形状等に関するJIS規定はない。このため、金属薄板の引っ張り試験用の規格であるJIS Z2201(文献2)の金属材料引張試験片を基本とし、上記JIS Z2271を参考にしながら測定者が工夫して評価を行っている。
【0004】
具体的には、
図5(b)に示すように、板形状試験片200の肩部202に設けたピン挿入孔203に棒状のピン(図示せず)を挿入することにより固定し、ピンに加重して伸びを計測する。板厚が比較的厚い場合には、上述の円形断面試験片100用の標準試験装置を利用できるように、標点(鍔)204を平行部に設け、標点204に計測用治具を接続して伸びを計測する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JIS Z 2271(金属材料のクリープ及びクリープ破断試験方法)
【非特許文献2】JIS Z 2201(金属材料引張試験片)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、
図5(b)の試験片200ではピン挿入孔203に大きな応力が加わるため、平行部201の断面積を小さくしないと、挿入孔203及びその周辺が局所的に変形してしまうため、クリープ評価が正しく行えない場合という問題がある。
また、標点204に伸び計測用治具を接続する方法では、試験片が薄い場合には機械的強度が不足して計測用治具を支えることができないという問題もある。
一方、板厚が薄い場合の測定方法として、レーザー変位計や、カメラ等を用いた画像解析による変形測定も用いられているが、極めて高価な専用の試験装置を必要とするにも関らず、必ずしも測定精度が高くないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み本発明は、金属薄板評価を目的とする板形状試験片及び治具により構成される板状試験片評価用ユニットを提供する。
本発明は以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る板状試験片評価用ユニットは、
例えば図4に示すように、薄板形状の試験片
2と、試験片の両端を試験装置に取り付けるための一対の固定用治具
3と、を備えた試験片材料強度評価用ユニット
1であって、該試験片
2は、
例えば図2に示すように、中央部に平行部
21と、平行部
21の両端にこれより幅広の肩部
22と、を備えた評価対象の金属薄板
23と、肩部両面に金属薄板
23と
溶接により一体に固定され、固定用治具
3の収容溝部
34に嵌合固定する、断面楔形状に構成した固定用治具嵌合部
24と、
金属薄板肩部22及び固定用治具嵌合部24を貫く試験片貫通孔25とを備えている。
また、該固定用治具
3は、
例えば図3に示すように、試験装置プルロッドに固定するための掴み部
31と、伸び測定用治具を取り付け可能に構成した伸び測定用治具取付部
32と、試験片
2の固定用治具嵌合部
24及び平行部
21の一部を、密着させて収容する試験片収容溝部
34と、
取り付け状態において、試験片貫通孔25に対応する箇所に設けられた固定用治具貫通孔36とを備えている。そして、
該試験片貫通孔25及び固定用治具貫通孔36を挿通する固定ピン4により、位置固定を可能とし、かつ、評価時において、試験装置からの荷重が全て固定用治具嵌合部24と試験片収容溝部34との接触面に掛かるように構成した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試験装置試験片を標準試験装置に確実に取り付け可能となり、試験のための負荷軽減を可能とし、かつ、評価の客観性を担保できるという効果がある。
また、試験片の平行部断面積が小さくなくても、応力のピン近傍部局所的集中を回避できるという効果がある。
また、レーザー変位計等の高価な専用試験装置を用いることなく、クリープ試験における伸び測定精度を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る板状試験片評価用ユニット1の全体構成を示す図である。
【
図2(c)】
図2(b)のA−A’断面構成を示す図である。
【
図3(a)】固定用治具3の平面構成を示す図である。
【
図3(b)】
図3(a)のB−B’断面構成を示す図である。
【
図4(a)】試験片評価用ユニット1を試験装置に取り付けた状態を示す図である。
【
図4(b)】試験片2に掛かる荷重を模式的に示す図である。
【
図5(a)】JIS Z2271に規定される円形断面試験片100の構成を示す図である。
【
図5(b)】従来の板状試験片200の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、
図1乃至4(b)を参照してさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る板状試験片の高温クリープ強度評価用ユニット1(以下、適宜ユニット1と略記する)の全体構成を示す図である。ユニット1は、板状試験片2と、試験片2を試験装置のプルロッド5(
図4(a)参照)に取り付けるための一対の固定用治具3と、により構成されている。薄試験片2と治具3とは、固定ピン4により一体固定可能に構成されている。
【0012】
図2(a)乃至2(c)を参照して、試験片2は平行部21及びその両端に幅広に形成される肩部22を備えた金属薄板23と、金属薄板23の肩部22の両側表面にそれぞれ溶接固定される固定用治具嵌合部24と、により構成されている。平行部21は強度評価の対象となる部分であり、肩部22は治具3に嵌合固定される部分である。肩部22には、金属薄板23及び固定用治具嵌合部24を貫通して固定ピン4を挿通させるための貫通孔25が設けられている。
【0013】
図3(a),3(b)を参照して、固定用治具3は外形が略瓶形状に構成され、試験装置のプルロッド5に取り付けるための円柱形状の掴み部31と、これより小口径円柱形状の伸び測定用治具取付部32と、により構成されている。掴み部31の中央には、試験片2の肩部24の断面と同一形状で、これを嵌合収容可能とする肩部嵌合溝34が設けられている。また、プルロッド5を螺合固定するための雌ねじ37が設けられている。さらに、試験片2を嵌合収容時に一体固定するための固定ピン4を挿通させるための貫通孔36が設けられている。
【0014】
測定用治具取付部32の外側周囲には、測定用治具6を固定するためのリング状突起35が設けられている。また、中心軸に沿って肩部嵌合溝34に至るスリット33が設けられており、試験片2の平行部21を嵌合収容可能に構成されている。
【0015】
ユニット1は以上のように構成されており、次にユニット1の標準試験装置への取り付けの態様について説明する。
図2(a)、
図4(a)を参照して、試験片2の肩部22を治具3の肩部嵌合溝34に、平行部21の一部をスリット33にそれぞれ嵌合収容させる。その状態で固定ピン4を貫通孔25に挿通して位置固定し、評価用ユニット1が構成される。
【0016】
次に、ユニット1を立てた状態とし掴み部31の上下両端を試験装置のプルロッド5に螺合固定する。さらに、上下の治具3のリング状突起35を測定用治具6の上側治具6a、下側治具6bに、それぞれ固定する。図示を省略するが、測定用治具6の下端には歪みゲージが連結されており、試験前後の上側治具6aと下側治具6bの位置に基づいて歪み量を検出し、クリープ量評価を可能に構成されている。
取り付け完了後、ユニット1の平行部21を電気炉7内に収容することにより、試験装置への取り付けが完了する。
【0017】
電気炉7内を所定の試験温度に維持した状態で評価用ユニット1に荷重を掛け、測定用治具6に連結する歪みゲージの出力をアンプで増幅後、アナログデジタルコンバーターを用いてPCに取り込み、クリープ量を測定する。
図4(b)を参照して、本発明によれば試験装置からの荷重は試験片2の固定用治具嵌合部24(
図2(b)参照)と肩部嵌合溝34(
図3(b)参照)との接触面に全て掛かり、固定ピン4と貫通孔25の接触面には荷重が掛からない。このため、試験片2のピン近傍部(肩部22)に応力集中が生じることはない。なお、平行部21の断面積は、荷重の大きさ、肩部嵌合溝34の接触面の面積及び中心軸と嵌合部24とのなす角度φに対応して、適宜設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、広く一般的な薄板金属材料の引張試験、クリープ用試験装置の試験片評価試験用ユニットとして適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・・板状試験片評価用ユニット
2・・・・板状試験片
21・・・平行部
22・・・肩部
23・・・金属薄板
24・・・固定用治具嵌合部
25・・・貫通孔
3・・・・固定用治具
31・・・掴み部
32・・・測定用治具取付部
33・・・スリット
34・・・肩部嵌合溝
35・・・リング状突起
36・・・貫通孔