【実施例】
【0016】
以下に、上記多段プレス装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の多段プレス装置1は、
図1、
図2に示すごとく、プレス型31,32,33A〜33Dを保持する複数のスライドベース22,23A,23Bをガイドシャフト21に対してスライドさせ、複数のワーク8A〜8Cに対する加工を1ストローク動作によって行うものである。
スライドベース22,23A,23Bにおいて、ガイドシャフト21と摺動する部位に形成された摺動用穴25には、ブッシュ4が設けられている。ブッシュ4は、
図5に示すごとく、ブッシュ4を周方向に複数に分割して形成された円弧形状の分割ブッシュ部40によって構成されている。ブッシュ4は、複数の分割ブッシュ部40を合わせて円柱形状に形成されている。
【0017】
以下に、本例の多段プレス装置1につき、
図1〜
図7を参照して詳説する。
図1、
図2に示すごとく、本例の多段プレス装置1におけるプレス型31,32,33A〜33Dは、ガイドシャフト21によって上下方向Hにガイドされて昇降する可動型32と、可動型32による上方からの荷重を受ける固定型31と、可動型32が上昇しているときに、可動型32の下方に連結部材26A,26Bによって吊り下げられ、可動型32が下降するときに、可動型32と固定型31との間に挟まれるよう構成された従動型33A〜33Dとである。
【0018】
図3に示すごとく、本例の多段プレス装置1は、可動型32の下方に、互いに重なる複数の従動型33A〜33Dを配置して構成されており、固定型31と可動型32との間に、複数の従動型33A〜33Dを挟み込むよう構成されている。そして、多段プレス装置1においては、固定型31と従動型33Dとの間、従動型33C,33B同士の間、従動型33Aと可動型32との間にそれぞれワーク8A〜8Cを挟持し、各ワーク8A〜8Cに対して同時に(1ショットで)プレス加工を行う。
本例においては、3つのワーク8A〜8Cに対して1ショットでプレス加工を行うために、固定型31及び可動型32以外に、上下に配設された4つの従動型33A〜33Dを用いる。
【0019】
図1、
図2に示すごとく、本例のスライドベース22,23A,23Bは、可動ベース22と従動ベース23A,23Bとである。
固定型31は、ベッド(本体構造下部)2の上面に固定されており、可動型32は、可動ベース22の下面に配設されている。また、従動型33A〜33Dは、可動ベース22の下方においてスライドする従動ベース23A,23Bの上面及び下面に配設されている。本例の従動ベース23A,23Bは、上面と下面とに従動型33A,33Bを配設した上段の従動ベース23Aと、上面と下面とに従動型33C,33Dを配設した下段の従動ベース23Bとの上下2段に設けられている。
【0020】
可動ベース22及び従動ベース23A,23Bは、ベッド2とクラウン20との平面方向における四方に配設されたガイドシャフト21によって、上下方向Hにガイドされてスライドするよう構成されている。そして、複数の分割ブッシュ部40によるブッシュ4は、四方のガイドシャフト21に対して、可動ベース22及び従動ベース23A,23Bの上下からそれぞれ設けられている。
【0021】
図1、
図2に示すごとく、ベッド2の上面とクラウン(本体構造上部)20の下面との間には、可動ベース22をスライドさせるための昇降シリンダー51が配設されている。昇降シリンダー51によって可動ベース22をスライドさせる際には、可動ベース22に連結された従動ベース23A,23Bもスライドする。多段プレス装置1においては、昇降シリンダー51以外にも、可動ベース22に加圧力を付加し、ワーク8A〜8Cを加圧する際に用いる加圧シリンダー52も配設されている。
【0022】
図1に示すごとく、可動型32が最も上昇した状態である、多段プレス装置1の原位置(上昇位置)101において、上段の従動ベース23Aは、左右両側に設けられた上段の連結部材26Aによって可動ベース22に吊り下げられており、下段の従動ベース23Bは、左右両側に設けられた下段の連結部材26Bによって上段の従動ベース23Aに吊り下げられている。各連結部材26A,26Bは、上下に伸びるバー又はシャフトを用いて形成されている。
図3に示すごとく、可動型32が最も下降した状態である、多段プレス装置1の加工位置(下降位置)102にある可動ベース22が上昇するときには、上段の連結部材26Aによって、可動ベース22に上段の従動ベース23Aが吊り上げられ(持ち上げられ)、また、下段の連結部材26Bによって、可動ベース22及び上段の従動ベース23Aに下段の従動ベース23Bが吊り上げられる(持ち上げられる)。
【0023】
図1、
図3に示すごとく、可動ベース22及び可動型32が下降する際には、上段の従動ベース23A及び下段の従動ベース23Bが各連結部材26A,26Bによって吊り下げられた状態で下降する。より具体的には、可動ベース22及び可動型32が下降する際には、下段の従動ベース23Bにおける第4の従動型33Dが、下段のワーク8Cを挟み込んでプレス加工しながら固定型31に合わさり、次いで、上段の従動ベース23Aにおける第2の従動型33Bが、中段のワーク8Bを挟み込んでプレス加工しながら下段の従動ベース23Bにおける第3の従動型33Cに合わさり、その後、可動ベース22における可動型32が、上段のワーク8Aを挟み込んでプレス加工しながら上段の従動ベース23Aにおける第1の従動型33Aに合わさる。
【0024】
一方、
図1、
図3に示すごとく、可動ベース22及び可動型32が上昇する際には、上段の従動ベース23A及び下段の従動ベース23Bが各連結部材26A,26Bによって吊り下げられる状態を形成しながら上昇する。より具体的には、可動ベース22及び可動型32が上昇する際には、可動ベース22における可動型32が上段の従動ベース23Aにおける第1の従動型33Aから離れ、次いで、上段の従動ベース23Aにおける第2の従動型33Bが下段の従動ベース23Bにおける第3の従動型33Cから離れ、その後、下段の従動ベース23Bにおける第4の従動型33Dが固定型31から離れる。
【0025】
図4に示すごとく、本例のブッシュ4は、スライドベース22,23A,23Bに対する上面及び下面に配設されたハウジング部24に対して設けられている。複数の分割ブッシュ部40によって構成されたブッシュ4は、上側のハウジング部24に対する上側から設けられており、下側のハウジング部24に対する下側から設けられている。スライドベース22,23A,23B及びハウジング部24において、ブッシュ4が設けられていない部位には、ガイドシャフト21の外周に接触しないように逃がし用の隙間Sが設けられている。本例のブッシュ4は、銅材料に対して部分的にグラファイトを配置して構成されている。
【0026】
図5に示すごとく、複数の分割ブッシュ部40は、ガイドシャフト21に対して摺動する摺動面411が形成された円弧状本体部41と、円弧状本体部41の軸方向一端部から径方向外側に突出するフランジ部42とを有している。本例の分割ブッシュ部40は、分割位置401において周方向に2つに分割されており、それぞれ半円形状を有している。各分割ブッシュ部40においては、円弧状本体部41及びフランジ部42がそれぞれ形成されている。
【0027】
図5、
図6に示すごとく、複数の分割ブッシュ部40における各フランジ部42に対する軸方向外方には、フランジ部42をスライドベース22,23A,23Bのハウジング部24との間に挟み込む押さえプレート43が取り付けられている。押さえプレート43は、フランジ部42の軸方向内方から締め付けられる固定用ボルト44によって、フランジ部42に固定されている。押さえプレート43には、固定用ボルト44を螺合するための固定用ネジ穴432が形成されている。
フランジ部42の軸方向内方の面には、固定用ボルト44の後部が収容されるザグリ穴422が形成されている。押さえプレート43は、分割ブッシュ部40のフランジ部42の軸方向外方の面を覆いながら、フランジ部42に一体化されている。
【0028】
図6に示すごとく、押さえプレート43には、抜出し用ネジ穴431が形成されており、フランジ部42には、抜出し用ネジ穴431と対向する位置に抜出し用ネジ穴431よりも大きな逃げ穴421が形成されている。スライドベース22,23A,23Bのハウジング部24には、抜出し用ネジ穴431及び逃げ穴421と対向する位置に、抜出し用ネジ穴431よりも小さなネジ径の締付け用ネジ穴241が形成されている。
そして、押さえプレート43及び各分割ブッシュ部40は、押さえプレート43の表面から、抜出し用ネジ穴431及び逃げ穴421に挿通された締付け用ボルト45がハウジング部24の締付け用ネジ穴241に締め付けられることにより、ハウジング部24に固定されている。本例においては、複数の分割ブッシュ部40を抜き出す際に使用する抜出し用ネジ穴431を利用して、複数の分割ブッシュ部40をハウジング部24に締め付けておくことができる。
【0029】
本例の可動ベース22又は従動ベース23A,23Bであるスライドベース22,23A,23Bのハウジング部24に設けられたブッシュ4は、周方向に複数に分割して形成された円弧形状の分割ブッシュ部40によって構成されている。
そして、多段プレス装置1の繰り返し使用によってブッシュ4が摩耗又は劣化したときには、このブッシュ4を別のブッシュ4と交換する。このとき、本例の多段プレス装置1においては、多段プレス装置1を分解してスライドベース22,23A,23Bを取り外すことなく、ブッシュ4のみを抜き出すことができる。
【0030】
具体的には、複数の分割ブッシュ部40を可動ベース22又は従動ベース23A,23Bから抜き出す際には、
図6に示すごとく、締付け用ボルト45を締付け用ネジ穴241から緩めて取り外す。このとき、抜出し用ネジ穴431及び逃げ穴421が開放される。そして、
図7に示すごとく、抜出し用ネジ穴431に螺合させる抜出し用ボルト46を、逃げ穴421に挿通させて可動ベース22又は従動ベース23A,23Bのハウジング部24の表面240に当接させて回す。
これにより、抜出し用ボルト46による反力を受けて、押さえプレート43が取り付けられた分割ブッシュ部40がハウジング部24から浮き上がる。そして、分割ブッシュ部40が抜き出し可能な状態まで浮き上がったときには、この分割ブッシュ部40を掴んでハウジング部24から抜き出す。
【0031】
このように、可動ベース22又は従動ベース23A,23Bに組み付けられたブッシュ4を他のブッシュ4に交換する際には、多段プレス装置1に可動ベース22又は従動ベース23A,23Bが組み立てられたままの状態で、各分割ブッシュ部40を可動ベース22又は従動ベース23A,23Bのハウジング部24における摺動用穴25から抜き出すことができる。
それ故、本例の多段プレス装置1によれば、多段プレス装置1を分解することなく、容易にブッシュ4の交換を行うことができる。