特許第6010757号(P6010757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6010757-多段プレス装置 図000002
  • 特許6010757-多段プレス装置 図000003
  • 特許6010757-多段プレス装置 図000004
  • 特許6010757-多段プレス装置 図000005
  • 特許6010757-多段プレス装置 図000006
  • 特許6010757-多段プレス装置 図000007
  • 特許6010757-多段プレス装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010757
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】多段プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 7/02 20060101AFI20161006BHJP
   B30B 15/04 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B30B7/02
   B30B15/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-248283(P2012-248283)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-94401(P2014-94401A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−051019(JP,A)
【文献】 特開平01−263006(JP,A)
【文献】 実開昭61−111625(JP,U)
【文献】 特開平03−216297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 7/02
B30B 15/04
B21D 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス型を保持する複数のスライドベースをガイドシャフトに対してスライドさせ、複数のワークに対する加工を1ストローク動作によって行うよう構成された多段プレス装置において、
上記スライドベースにおいて、上記ガイドシャフトと摺動する部位に形成された摺動用穴には、ブッシュが設けられており、
該ブッシュは、該ブッシュを周方向に複数に分割して形成された円弧形状の分割ブッシュ部によって構成されており、
該複数の分割ブッシュ部は、上記ガイドシャフトに対して摺動する摺動面が形成された円弧状本体部と、該円弧状本体部の軸方向一端部から径方向外側に突出するフランジ部とを有しており、かつ、該フランジ部を利用して該フランジ部が設けられた側に上記摺動用穴から抜き出し可能であり、
上記フランジ部に対する軸方向外方には、該フランジ部を上記スライドベースとの間に挟み込む押さえプレートが取り付けられており、
該押さえプレートには、抜出し用ネジ穴が形成されており、
上記フランジ部には、上記抜出し用ネジ穴と対向する位置に該抜出し用ネジ穴よりも大きな逃げ穴が形成されており、
上記押さえプレートの表面から、上記抜出し用ネジ穴及び上記逃げ穴に挿通された締付け用ボルトが上記スライドベースに螺合されて、上記押さえプレート及び上記ブッシュが上記スライドベースに固定されていることを特徴とする多段プレス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多段プレス装置において、上記複数の分割ブッシュ部によって構成されたブッシュは、上記摺動用穴に対する上側と下側とに設けられており、それぞれ該摺動用穴の上側と下側とに抜き出し可能であることを特徴とする多段プレス装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多段プレス装置において、上記複数の分割ブッシュ部を上記スライドベースから抜き出す際には、上記抜出し用ネジ穴に螺合させる抜出し用ボルトを、上記逃げ穴に挿通させて上記スライドベースの表面に当接させて回すよう構成されていることを特徴とする多段プレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークに対する加工を1ストローク動作によって行う多段プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多段プレス装置は、互いに重なる3つ以上のプレス型を用いて、各プレス型同士の間にそれぞれワークを挟み込んで、1ストロークの動作によって各ワークに対して加工を行う。各プレス型は、ベッドに固定されたプレス型を除いて、ガイドシャフトによってスライドが案内されるスライドベースに設けられている。そして、スライドベースには、ガイドシャフトに対して摺動する摺動用穴が設けられており、この摺動用穴には、メタル等のブッシュが設けられている。このブッシュは、ガイドシャフトと接触することにより摩耗し、この摩耗量が多くなったときには交換が必要になる。
【0003】
なお、例えば、特許文献1の燃料供給ポンプにおいては、駆動軸との組付性を確保するために、軸受ブッシュを備えたカムリングを、カムリングの周方向にわたって複数個所で分割することが記載されている。また、軸受ブッシュを、カムリングとともに半割軸受状に形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多段プレス装置においては、スライドベースにおけるブッシュを交換するためには、装置上部のクラウン、当該スライドベースよりも上側に位置するスライドベースを取り外して、多段プレス装置を分解する必要がある。また、この分解後には、加工精度を確保して多段プレス装置を再度組み立てる必要がある。そのため、特に、全てのスライドベースのブッシュを交換する際には、多大な労力及びコストが掛かることになる。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、多段プレス装置を分解することなく、容易にブッシュの交換を行うことができる多段プレス装置を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、プレス型を保持する複数のスライドベースをガイドシャフトに対してスライドさせ、複数のワークに対する加工を1ストローク動作によって行うよう構成された多段プレス装置において、
上記スライドベースにおいて、上記ガイドシャフトと摺動する部位に形成された摺動用穴には、ブッシュが設けられており、
該ブッシュは、該ブッシュを周方向に複数に分割して形成された円弧形状の分割ブッシュ部によって構成されており、
該複数の分割ブッシュ部は、上記ガイドシャフトに対して摺動する摺動面が形成された円弧状本体部と、該円弧状本体部の軸方向一端部から径方向外側に突出するフランジ部とを有しており、かつ、該フランジ部を利用して該フランジ部が設けられた側に上記摺動用穴から抜き出し可能であり、
上記フランジ部に対する軸方向外方には、該フランジ部を上記スライドベースとの間に挟み込む押さえプレートが取り付けられており、
該押さえプレートには、抜出し用ネジ穴が形成されており、
上記フランジ部には、上記抜出し用ネジ穴と対向する位置に該抜出し用ネジ穴よりも大きな逃げ穴が形成されており、
上記押さえプレートの表面から、上記抜出し用ネジ穴及び上記逃げ穴に挿通された締付け用ボルトが上記スライドベースに螺合されて、上記押さえプレート及び上記ブッシュが上記スライドベースに固定されていることを特徴とする多段プレス装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記多段プレス装置におけるブッシュは、周方向に複数に分割して形成された円弧形状の分割ブッシュ部によって構成されている。そして、スライドベースに組み付けられたブッシュを他のブッシュに交換する際には、多段プレス装置にスライドベースが組み立てられたままの状態で、各分割ブッシュ部をスライドベースの摺動用穴から抜き出すことができる。そのため、ブッシュを交換する際に、多段プレス装置を分解してスライドベースを取り外す必要がない。
それ故、上記多段プレス装置によれば、多段プレス装置を分解することなく、容易にブッシュの交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例にかかる、原位置にある多段プレス装置を正面から見た状態で示す説明図。
図2】実施例にかかる、原位置にある多段プレス装置を側面から見た状態で示す説明図。
図3】実施例にかかる、加工位置にある多段プレス装置を正面から見た状態で示す説明図。
図4】実施例にかかる、スライドベースのハウジング部に設けられたブッシュの周辺を示す断面説明図。
図5】実施例にかかる、複数の分割ブッシュ部によるブッシュを示す斜視図。
図6】実施例にかかる、ブッシュのフランジ部及び押さえプレートがスライドベースのハウジング部に対して固定された状態を示す断面説明図。
図7】実施例にかかる、ブッシュのフランジ部及び押さえプレートがスライドベースのハウジング部から浮き上がった状態を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した多段プレス装置における好ましい実施の形態につき説明する。
上記多段プレス装置におけるブッシュは、銅材料等の非鉄系金属材料から構成することができる。また、ブッシュは、耐摩耗性が考慮されたグラファイト等を配置又は含有するものとすることができる。
また、上記ブッシュが配置される上記摺動用穴は、上記スライドベースに直接設ける以外にも、スライドベースに取り付けられた他の部品に設けられていてもよい。
【0011】
上記複数の分割ブッシュ部によって構成されたブッシュは、上記摺動用穴に対する上側と下側とに設けられており、それぞれ該摺動用穴の上側と下側とに抜き出し可能であってもよい(請求項2)。
この場合には、摺動用穴に対する上側と下側とに設けた複数の分割ブッシュ部によって、スライドベースを安定してスライドさせることができるとともに、各分割ブッシュ部をスライドベースの摺動用穴から抜き出すことが容易である。
【0012】
また、上記複数の分割ブッシュ部は、上記ガイドシャフトに対して摺動する摺動面が形成された円弧状本体部と、該円弧状本体部の軸方向一端部から径方向外側に突出するフランジ部とを有しており、かつ、該フランジ部を利用して該フランジ部が設けられた側に上記摺動用穴から抜き出し可能であ
これにより、複数の分割ブッシュ部は、フランジ部を利用することによって、摺動用穴への取付けが容易になるとともに、摺動用穴からの抜出しが容易になる。
【0013】
また、上記フランジ部に対する軸方向外方には、該フランジ部を上記スライドベースとの間に挟み込む押さえプレートが取り付けられており、該押さえプレートには、抜出し用ネジ穴が形成されており、上記フランジ部には、上記抜出し用ネジ穴と対向する位置に該抜出し用ネジ穴よりも大きな逃げ穴が形成されており、上記押さえプレートの表面から、上記抜出し用ネジ穴及び上記逃げ穴に挿通された締付け用ボルトが上記スライドベースに螺合されて、上記押さえプレート及び上記ブッシュが上記スライドベースに固定されてい
【0014】
これにより、押さえプレートを用いることによって、スライドベースに対する複数の分割ブッシュ部の取付けを安定して行うことができる。また、鉄系金属から構成される押さえプレートを用いることによって、鉄系金属よりも強度が低い複数の分割ブッシュ部のフランジ部を保護することができる。また、抜出し用ボルトによる圧力が加わる抜出し用ネジ穴をフランジ部に設けないことによっても、フランジ部を保護することができる。
また、複数の分割ブッシュ部を抜き出す際に使用する抜出し用ネジ穴を利用して、複数の分割ブッシュ部をスライドベースに締め付けておくことができる。
【0015】
また、上記複数の分割ブッシュ部を上記スライドベースから抜き出す際には、上記抜出し用ネジ穴に螺合させる抜出し用ボルトを、上記逃げ穴に挿通させて上記スライドベースの表面に当接させて回すよう構成されていてもよい(請求項)。
この場合には、抜出し用ネジ穴に螺合させた抜出し用ボルトを回すことにより、押さえプレートが取り付けられた分割ブッシュ部をスライドベースから浮き上がらせることができる。そのため、複数の分割ブッシュ部を一層容易にスライドベースの摺動用穴から抜き出すことができる。
【実施例】
【0016】
以下に、上記多段プレス装置にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の多段プレス装置1は、図1図2に示すごとく、プレス型31,32,33A〜33Dを保持する複数のスライドベース22,23A,23Bをガイドシャフト21に対してスライドさせ、複数のワーク8A〜8Cに対する加工を1ストローク動作によって行うものである。
スライドベース22,23A,23Bにおいて、ガイドシャフト21と摺動する部位に形成された摺動用穴25には、ブッシュ4が設けられている。ブッシュ4は、図5に示すごとく、ブッシュ4を周方向に複数に分割して形成された円弧形状の分割ブッシュ部40によって構成されている。ブッシュ4は、複数の分割ブッシュ部40を合わせて円柱形状に形成されている。
【0017】
以下に、本例の多段プレス装置1につき、図1図7を参照して詳説する。
図1図2に示すごとく、本例の多段プレス装置1におけるプレス型31,32,33A〜33Dは、ガイドシャフト21によって上下方向Hにガイドされて昇降する可動型32と、可動型32による上方からの荷重を受ける固定型31と、可動型32が上昇しているときに、可動型32の下方に連結部材26A,26Bによって吊り下げられ、可動型32が下降するときに、可動型32と固定型31との間に挟まれるよう構成された従動型33A〜33Dとである。
【0018】
図3に示すごとく、本例の多段プレス装置1は、可動型32の下方に、互いに重なる複数の従動型33A〜33Dを配置して構成されており、固定型31と可動型32との間に、複数の従動型33A〜33Dを挟み込むよう構成されている。そして、多段プレス装置1においては、固定型31と従動型33Dとの間、従動型33C,33B同士の間、従動型33Aと可動型32との間にそれぞれワーク8A〜8Cを挟持し、各ワーク8A〜8Cに対して同時に(1ショットで)プレス加工を行う。
本例においては、3つのワーク8A〜8Cに対して1ショットでプレス加工を行うために、固定型31及び可動型32以外に、上下に配設された4つの従動型33A〜33Dを用いる。
【0019】
図1図2に示すごとく、本例のスライドベース22,23A,23Bは、可動ベース22と従動ベース23A,23Bとである。
固定型31は、ベッド(本体構造下部)2の上面に固定されており、可動型32は、可動ベース22の下面に配設されている。また、従動型33A〜33Dは、可動ベース22の下方においてスライドする従動ベース23A,23Bの上面及び下面に配設されている。本例の従動ベース23A,23Bは、上面と下面とに従動型33A,33Bを配設した上段の従動ベース23Aと、上面と下面とに従動型33C,33Dを配設した下段の従動ベース23Bとの上下2段に設けられている。
【0020】
可動ベース22及び従動ベース23A,23Bは、ベッド2とクラウン20との平面方向における四方に配設されたガイドシャフト21によって、上下方向Hにガイドされてスライドするよう構成されている。そして、複数の分割ブッシュ部40によるブッシュ4は、四方のガイドシャフト21に対して、可動ベース22及び従動ベース23A,23Bの上下からそれぞれ設けられている。
【0021】
図1図2に示すごとく、ベッド2の上面とクラウン(本体構造上部)20の下面との間には、可動ベース22をスライドさせるための昇降シリンダー51が配設されている。昇降シリンダー51によって可動ベース22をスライドさせる際には、可動ベース22に連結された従動ベース23A,23Bもスライドする。多段プレス装置1においては、昇降シリンダー51以外にも、可動ベース22に加圧力を付加し、ワーク8A〜8Cを加圧する際に用いる加圧シリンダー52も配設されている。
【0022】
図1に示すごとく、可動型32が最も上昇した状態である、多段プレス装置1の原位置(上昇位置)101において、上段の従動ベース23Aは、左右両側に設けられた上段の連結部材26Aによって可動ベース22に吊り下げられており、下段の従動ベース23Bは、左右両側に設けられた下段の連結部材26Bによって上段の従動ベース23Aに吊り下げられている。各連結部材26A,26Bは、上下に伸びるバー又はシャフトを用いて形成されている。
図3に示すごとく、可動型32が最も下降した状態である、多段プレス装置1の加工位置(下降位置)102にある可動ベース22が上昇するときには、上段の連結部材26Aによって、可動ベース22に上段の従動ベース23Aが吊り上げられ(持ち上げられ)、また、下段の連結部材26Bによって、可動ベース22及び上段の従動ベース23Aに下段の従動ベース23Bが吊り上げられる(持ち上げられる)。
【0023】
図1図3に示すごとく、可動ベース22及び可動型32が下降する際には、上段の従動ベース23A及び下段の従動ベース23Bが各連結部材26A,26Bによって吊り下げられた状態で下降する。より具体的には、可動ベース22及び可動型32が下降する際には、下段の従動ベース23Bにおける第4の従動型33Dが、下段のワーク8Cを挟み込んでプレス加工しながら固定型31に合わさり、次いで、上段の従動ベース23Aにおける第2の従動型33Bが、中段のワーク8Bを挟み込んでプレス加工しながら下段の従動ベース23Bにおける第3の従動型33Cに合わさり、その後、可動ベース22における可動型32が、上段のワーク8Aを挟み込んでプレス加工しながら上段の従動ベース23Aにおける第1の従動型33Aに合わさる。
【0024】
一方、図1図3に示すごとく、可動ベース22及び可動型32が上昇する際には、上段の従動ベース23A及び下段の従動ベース23Bが各連結部材26A,26Bによって吊り下げられる状態を形成しながら上昇する。より具体的には、可動ベース22及び可動型32が上昇する際には、可動ベース22における可動型32が上段の従動ベース23Aにおける第1の従動型33Aから離れ、次いで、上段の従動ベース23Aにおける第2の従動型33Bが下段の従動ベース23Bにおける第3の従動型33Cから離れ、その後、下段の従動ベース23Bにおける第4の従動型33Dが固定型31から離れる。
【0025】
図4に示すごとく、本例のブッシュ4は、スライドベース22,23A,23Bに対する上面及び下面に配設されたハウジング部24に対して設けられている。複数の分割ブッシュ部40によって構成されたブッシュ4は、上側のハウジング部24に対する上側から設けられており、下側のハウジング部24に対する下側から設けられている。スライドベース22,23A,23B及びハウジング部24において、ブッシュ4が設けられていない部位には、ガイドシャフト21の外周に接触しないように逃がし用の隙間Sが設けられている。本例のブッシュ4は、銅材料に対して部分的にグラファイトを配置して構成されている。
【0026】
図5に示すごとく、複数の分割ブッシュ部40は、ガイドシャフト21に対して摺動する摺動面411が形成された円弧状本体部41と、円弧状本体部41の軸方向一端部から径方向外側に突出するフランジ部42とを有している。本例の分割ブッシュ部40は、分割位置401において周方向に2つに分割されており、それぞれ半円形状を有している。各分割ブッシュ部40においては、円弧状本体部41及びフランジ部42がそれぞれ形成されている。
【0027】
図5図6に示すごとく、複数の分割ブッシュ部40における各フランジ部42に対する軸方向外方には、フランジ部42をスライドベース22,23A,23Bのハウジング部24との間に挟み込む押さえプレート43が取り付けられている。押さえプレート43は、フランジ部42の軸方向内方から締め付けられる固定用ボルト44によって、フランジ部42に固定されている。押さえプレート43には、固定用ボルト44を螺合するための固定用ネジ穴432が形成されている。
フランジ部42の軸方向内方の面には、固定用ボルト44の後部が収容されるザグリ穴422が形成されている。押さえプレート43は、分割ブッシュ部40のフランジ部42の軸方向外方の面を覆いながら、フランジ部42に一体化されている。
【0028】
図6に示すごとく、押さえプレート43には、抜出し用ネジ穴431が形成されており、フランジ部42には、抜出し用ネジ穴431と対向する位置に抜出し用ネジ穴431よりも大きな逃げ穴421が形成されている。スライドベース22,23A,23Bのハウジング部24には、抜出し用ネジ穴431及び逃げ穴421と対向する位置に、抜出し用ネジ穴431よりも小さなネジ径の締付け用ネジ穴241が形成されている。
そして、押さえプレート43及び各分割ブッシュ部40は、押さえプレート43の表面から、抜出し用ネジ穴431及び逃げ穴421に挿通された締付け用ボルト45がハウジング部24の締付け用ネジ穴241に締め付けられることにより、ハウジング部24に固定されている。本例においては、複数の分割ブッシュ部40を抜き出す際に使用する抜出し用ネジ穴431を利用して、複数の分割ブッシュ部40をハウジング部24に締め付けておくことができる。
【0029】
本例の可動ベース22又は従動ベース23A,23Bであるスライドベース22,23A,23Bのハウジング部24に設けられたブッシュ4は、周方向に複数に分割して形成された円弧形状の分割ブッシュ部40によって構成されている。
そして、多段プレス装置1の繰り返し使用によってブッシュ4が摩耗又は劣化したときには、このブッシュ4を別のブッシュ4と交換する。このとき、本例の多段プレス装置1においては、多段プレス装置1を分解してスライドベース22,23A,23Bを取り外すことなく、ブッシュ4のみを抜き出すことができる。
【0030】
具体的には、複数の分割ブッシュ部40を可動ベース22又は従動ベース23A,23Bから抜き出す際には、図6に示すごとく、締付け用ボルト45を締付け用ネジ穴241から緩めて取り外す。このとき、抜出し用ネジ穴431及び逃げ穴421が開放される。そして、図7に示すごとく、抜出し用ネジ穴431に螺合させる抜出し用ボルト46を、逃げ穴421に挿通させて可動ベース22又は従動ベース23A,23Bのハウジング部24の表面240に当接させて回す。
これにより、抜出し用ボルト46による反力を受けて、押さえプレート43が取り付けられた分割ブッシュ部40がハウジング部24から浮き上がる。そして、分割ブッシュ部40が抜き出し可能な状態まで浮き上がったときには、この分割ブッシュ部40を掴んでハウジング部24から抜き出す。
【0031】
このように、可動ベース22又は従動ベース23A,23Bに組み付けられたブッシュ4を他のブッシュ4に交換する際には、多段プレス装置1に可動ベース22又は従動ベース23A,23Bが組み立てられたままの状態で、各分割ブッシュ部40を可動ベース22又は従動ベース23A,23Bのハウジング部24における摺動用穴25から抜き出すことができる。
それ故、本例の多段プレス装置1によれば、多段プレス装置1を分解することなく、容易にブッシュ4の交換を行うことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 多段プレス装置
21 ガイドシャフト
22 可動ベース(スライドベース)
23A 上段の従動ベース(スライドベース)
23B 下段の従動ベース(スライドベース)
24 ハウジング部
25 摺動用穴
31 固定型
32 可動型
33A〜33D 従動型
4 ブッシュ
40 分割ブッシュ部
41 円弧状本体部
411 摺動面
42 フランジ部
421 逃げ穴
43 押さえプレート
431 抜出し用ネジ穴
44 固定用ボルト
45 締付け用ボルト
46 抜出し用ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7