(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010781
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】直流給電キャビネット
(51)【国際特許分類】
H02B 1/18 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
H02B1/18 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-165611(P2012-165611)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-27766(P2014-27766A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−174130(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3052197(JP,U)
【文献】
特開2008−099522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット筐体の内部に、電源バーを所定の間隔で配置するとともに、これらの電源バーから各々の負荷に電力を供給するための接続部材を各々配置し、これらの電源バーと接続部材との間にヒューズユニットを接続した直流給電キャビネットであって、前記ヒューズユニットへのヒューズ素子の差し込み方向を、前記接続部材に設けられたコネクタへのプラグ差込方向と同一としたことを特徴とする直流給電キャビネット。
【請求項2】
ヒューズユニットを、電源バーの正極バーと接続部材との間に接続したことを特徴とする請求項1記載の直流給電キャビネット。
【請求項3】
ヒューズユニットを、接続部材よりも奥行方向の位置で、キャビネット筐体の内部に露出させて配置したことを特徴とする請求項1または2記載の直流給電キャビネット。
【請求項4】
ヒューズユニットを、接続部材に装着したことを特徴とする請求項1記載の直流給電キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット内部の機器に対して直流給電が可能な直流給電キャビネットに関するものである。なお直流給電キャビネットとは直流給電が可能なキャビネットを意味し、従来と同様の交流給電手段を併用したキャビネットをも包含するものである。
【背景技術】
【0002】
キャビネット内部の機器に対して直流給電が可能な直流給電キャビネットとしては、特許文献1に示されるように、樹脂部品により覆われた電源バーをキャビネットの内部に配置した構造のものがある。この特許文献1の直流給電キャビネットは、電源バーやアダプタ等を完全に樹脂部品で覆い、着脱自在とした構造である。しかしこの直流給電キャビネットは、負荷に電源を供給するための接続部材を接続すると突出部分が大きくなり、キャビネットの内部スペースの有効利用を図る上での障害となるという問題があった。また、電源バーやアダプタ等を完全に樹脂部品で覆い、着脱自在としてあるため、交換は容易であるものの部品点数が多くなるという問題があった。
【0003】
なお、このようなキャビネット内に搭載されるサーバ等の機器に短絡事故が発生した場合には、他の機器にも影響が及ぶおそれがある。そこで特許文献1には各サーバにヒューズを取付けることが記載されている。しかしこのヒューズは短絡電流からヒューズが取り付けられたサーバを保護することはできるものの、他のサーバを保護することはできず、ヒューズが取り付けられていないサーバに影響が出ることを避けられなかった。またヒューズは定期的な点検や交換の必要があるが、サーバを点検する作業者が不用意に触ることは好ましくないという矛盾した要求があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−184993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の主な目的は上記した従来の問題点を解決し、突出部分を小さくしてキャビネットの内部スペースの有効利用を図ることができるとともに、短絡事故の影響を他の機器に波及させることがない直流給電キャビネットを提供することである。また本発明の他の目的は、サーバを点検する作業者がヒューズに不用意に触ることをなくした直流給電キャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の直流給電キャビネットは、キャビネット筐体の内部に、電源バーを所定の間隔で配置するとともに、これらの電源バーから各々の負荷に電力を供給するための接続部材を各々配置し、これらの電源バーと接続部材との間にヒューズユニットを接続した
直流給電キャビネットであって、前記ヒューズユニットへのヒューズ素子の差し込み方向を、前記接続部材に設けられたコネクタへのプラグ差込方向と同一としたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2のように、ヒューズユニットを電源バーの正極バーと接続部材との間に接続した構造とすることができる。また請求項3のように、ヒューズユニットを接続部材よりも奥行方向の位置で、キャビネット筐体の内部に露出させて配置した構造とすることができる。さらに請求項4のように、ヒューズユニットを、接続部材に装着した構造とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の直流給電キャビネットは、キャビネット筐体の内部に配置された電源バーと接続部材との間にヒューズユニットを接続したものであるから、電源バーからヒューズユニットを介して各負荷に電力が供給されることとなるので、短絡事故の影響が他の機器に波及しない。
【0009】
なお請求項3のように、ヒューズユニットを接続部材よりも奥行方向の位置で、キャビネット筐体の内部に露出させて配置した構造としておけば、サーバを点検する作業者がヒューズに不用意に触ることがなく、しかもヒューズの定期的な点検や交換も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の直流給電キャビネットの構造を説明する斜視図である。
【
図4】電源バーへの接続部材の取付け状態を示す斜視図である。
【
図5】ヒューズユニットが装着された接続部材の斜視図である。
【
図6】ヒューズユニットが装着された接続部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の直流給電キャビネットの構造を説明する斜視図であり、
図2はその部分拡大斜視図である。これらの図中、1は縦フレーム、2は横フレーム、3は奥行フレームである。これらの12本のフレームによりキャビネット筐体の骨格構造を形成している。また4は各縦フレーム1の内側近傍に平行配置されたマウントレールであり、多数の機器取付孔を備えて様々な高さに各種機器を取り付けることができるようになっている。
図2、
図3に示すように、縦フレーム1とマウントレール4との間にはカバー10が取付けられている。
【0012】
この実施形態のキャビネットはサーバ等の負荷機器を収納するためのものであり、サーバ等の負荷機器に直流電源を供給するために、キャビネットのキャビネット筐体奥側のマウントレール4と側板との間に上下方向に延びる電源バーを配置してある。このようにキャビネットの奥側部分に電源バーを配置したのは、サーバ等の背面に接続されている電源プラグに直流電源を供給し易いためである。しかし電源バーの位置は必ずしもこの実施形態に限定されるものではなく、前面側とすることも可能である。
図1に示される5はキャビネットの底部に配置された直流電源ユニットである。なお、直流電源ユニットはマウントレールに取り付けられていてもよく、その取り付け位置も底部近傍が好ましいが特に限定されない。
【0013】
電源バーは負極バー6と正極バー9とからなる。
図3に示すように、縦フレーム1の内側には負極バー6が支持部材7によって垂直に支持されている。また負極バー6と平行に、クリートと呼ばれる円柱状の絶縁部材8を介して正極バー9が所定の間隔で積層状に支持されている。これらの負極バー6と正極バー9とによって構成される電源バーの下端部は、直流電源ユニット5に接続されている。電源バーの積層方向は、キャビネットの奥行方向とすることが好ましい。
【0014】
図3に示されるように、負極バー6と正極バー9とは、一方のバーを他方のバーに対してバ−の幅方向にずらして配置してある。この実施形態では負極バー6を外側とし、正極バー9を内側としてある。このような配置とすれば、正極バー9とキャビネットの側板までの絶縁距離を確保することができる。なお負極バー6はマウントレール4に固定することもでき、必ずしも縦フレーム1に支持させなくても差支えない。
【0015】
このように負極バー6を正極バー9に対して幅方向にずらせて外側に配置したので、負極バー6の側方に空間部が形成される。本実施形態では、負極バー6の内側とカバー10との間に形成される空間部に、接続部材13が各々配置される。この接続部材13はサーバ等の負荷と接続して直流給電を行うためのもので、上下方向に所定のピッチで多数設けられている。なおカバー10は縦フレーム1とマウントレール4との間に配置された板であり、
図2に示すようにコネクタ12の前面の差込部17を露出させる開口部を備えている。
【0016】
図4に示すように、接続部材13は負荷から引き出された電源プラグと接続するコネクタ12をケース部14で保持しており、このケース部14を電源バーの負極バー6に固定することによって所定位置に支持されている。なお、接続部材13には
図5に示すように、コネクタ12に電力を供給する正極側接続端子18と負極側接続端子19とが設けられている。前記したように負極バー6と正極バー9はずらして配置されているので、電源バーの露出部分が形成される。露出部分とは所定の間隔で積層した双方の電源バーを積層方向からみた場合に、表側にある一方の電源バー全体と裏側にある他方の電源バーのうち一方の電源バーと重ならない部分とをいう。本実施形態では、積層方向からみた正極バー6全体の面と、負極バー9のうち正極バーに隠されずに露出している部分が露出部分である。
【0017】
図4〜
図6に示すように、接続部材13にはヒューズユニット20が装着されている。
図7はヒューズユニット20のみを示す斜視図であり、ボックス状のユニット本体21と、このユニット本体21に対して着脱自在に取り付けられるヒューズ素子22とからなる。ヒューズ素子22は、事故発生時や定期点検などの際に交換が容易な差し込み構造となっている。
図4、
図6に示されるように、ヒューズ素子22の差し込み方向はコネクタ12へのプラグ差込方向と同一となっ
ている。
【0018】
ユニット本体21の両端からは2本の接続線23,24が延びている。接続線23は正極バー9にネジで接続されるバー接続線であり、24は接続部材13の正極側接続端子18と接続される端子接続線である。バー接続線23の接続状態は
図3、
図4に示され、端子接続線24の接続状態は
図5に示されている。この結果、正極バー9→バー接続線23→ヒューズユニット20→端子接続線24→正極側接続端子18の経路で電流が流れることとなり、電源バーである正極バー9と接続部材13との間にヒューズユニット20が挿入された状態となる。
【0019】
図3、
図6に示されるように、ヒューズユニット20は接続部材13よりも奥行方向の位置で、キャビネットキャビネット筐体の内部に露出させて配置されている。これによりヒューズ素子22の交換が容易に行えるうえ、背面側から行われるサーバの点検時や設置作業時には作業員がヒューズユニット20に接触しにくい構造としてある。
【0020】
なお、
図3、
図5に示される25は接続部材13に搭載されたコンデンサである。各接続部材13にそれぞれコンデンサ25を配置することにより、サーバ等の負荷機器の電圧変動を吸収することができる利点がある。ただしこのコンデンサ25は本発明の要部ではない。
【0021】
以上のように構成された本発明の直流給電キャビネットは、接続部材13のコネクタ12に負荷から引き出された電源プラグを接続して使用されるものであるが、電源バーである正極バー9と接続部材13との間にヒューズユニット20が接続されているため、サーバ等の各負荷には必ずヒューズユニット20を通じて給電される。このため何れかの負荷において短絡事故が発生しても、その負荷に対応するヒューズによって回路が遮断され、短絡電流が消滅するので、他の負荷に影響が及ぶことがない。
【0022】
また、ヒューズユニット20は接続部材13と電源バーとの間に配置されているため、突出部分を小さくしてキャビネットの内部スペースの有効利用を図ることができる。さらに上記の実施形態のようにヒューズユニット20を配置しておけば、サーバを点検する作業者がヒューズに不用意に触る可能性を低くするとともに、ヒューズ素子22の交換を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 縦フレーム
2 横フレーム
3 奥行フレーム
4 マウントレール
5 直流電源ユニット
6 負極バー
7 支持部材
8 絶縁部材
9 正極バー
10 カバー
12 コネクタ
13 接続部材
14 ケース部
18 正極側接続端子
19 負極側接続端子
20 ヒューズユニット
21 ユニット本体
22 ヒューズ素子
23 接続線
24 接続線
25 コンデンサ