特許第6010784号(P6010784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

特許6010784自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法
<>
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000002
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000003
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000004
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000005
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000006
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000007
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000008
  • 特許6010784-自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010784
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】自動車の内装品、自動車の内装品の成形型、および自動車の内装品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   B60R13/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-187606(P2012-187606)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-43204(P2014-43204A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】戸高 信彦
(72)【発明者】
【氏名】村主 隆博
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−105083(JP,A)
【文献】 特開2010−120399(JP,A)
【文献】 特開2008−302549(JP,A)
【文献】 特開平10−016008(JP,A)
【文献】 特開2007−022000(JP,A)
【文献】 特開2011−104987(JP,A)
【文献】 特開平09−239739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一層からなり、表面に複数の凹凸が形成されており、
前記凹凸の表面には、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部が複数形成されており、
少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmの凹凸模様が形成されていることを特徴とする自動車の内装品。
【請求項2】
成形材料をキャビティ内に射出充填することにより単一層からなる自動車の内装品を成形する成形型であって、
複数の凹凸を内装品の表面に形成し得るキャビティ表面を有しており、
前記キャビティ表面は、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されていることを特徴とする自動車の内装品の成形型。
【請求項3】
前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部が、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形されていることを特徴とする請求項に記載の自動車の内装品の成形型。
【請求項4】
人が接触する自動車の内装品を製造する方法であって、
直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されたキャビティ表面を有する成形型を用意し、
該成形型のキャビティ内に成形材料を射出充填することにより、単一層からなる内装品を成形することを特徴とする自動車の内装品の製造方法。
【請求項5】
前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部を、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形しておくことを特徴とする請求項に記載の自動車の内装品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のインストルメントパネルやコンソールボックス、ドアトリム、走行時に体を支えるためのアシストグリップなどの取っ手、ステアリングホイルなどのハンドルなど、人が接触する部分の内装品、その成形型、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装品は、柔らかな感触を得るために、一般に、比較的硬質で所定の形状に成形された基材の表面に、意匠面を構成する表皮と弾性を有する発泡層とからなる表皮材を積層することにより構成されている。
【0003】
また、自動車の内装品の表面、すなわち、人が触れる部位の表面にしっとりとした触感を持たせることを目的とした特許文献1が知られている。特許文献1には、表面に、以下の(1),(2)の条件を満たす突起を複数設けたことなどを特徴とする物品の表面構造が開示されている。
(1) 前記突起の高さHが5μm以上32μm以下
(2) 前記突起相互の間隔Pと、前記突起相互間に形成される凹部相互の間隔Wとの少なくとも一方が、前記突起の高さHよりも大きい
【0004】
さらに、特許文献1の実施の形態には、上記(2)の具体的な条件として、以下の条件が記載されている(0012)。
・突起3の高さHと突起3相互の間隔Pとの比H/Pが1/5から1/2の範囲、または突起3の高さHと突起3相互間に形成される凹部5相互の間隔Wとの比H/Wが1/5から1/2の範囲
さらにまた、上記条件に加えて以下の条件も記載されている(0012)。
・突起3相互の間隔Pと凹部5相互の間隔Wとが同一(P=W)
【0005】
そして、特許文献1には、突起が球状をほぼ半分にした半球状を呈しており、このような突起を内装品の表面に複数均一に形成することで、人が触ったときの触感が、しっとりとしたもの、つまり、つるつるとしたプラスチックや金属のような触感ではなく、またシボ模様のようなざらざらとした触感でもなく、多少の水分を含んでいるようで適度な摩擦感が得られるようなものであるなどと記載されている(0013、0014)。また、特許文献1には、実施の形態において、突起高さH=6μm、突起相互の間隔P=30μm、つまりH/P=1/5である突起のサンプルと、突起高さH=32μm、突起相互の間隔P=64μm、つまりH/P=1/2である突起のサンプルが記載されている(0016)。
【0006】
そして、特許文献1には、その実施の形態として「特に図1(b)に示すように内装品1の表面を凸曲面2として、該凸曲面2上に前記した極めて微細な突起3を複数均一に設けることで、より一層「しっとり感」を実感することが可能となる。凸曲面2の場合には、平面や凹曲面に比較して、人の指先や手の平など肌で触れたときに、よりやわらかく感じる傾向にあるので、「しっとり感」がより強く感じるようになる。」などと記載されている(0024)
【0007】
さらにまた、特許文献1には、内装品を成形する際に使用する方の製造工程について記載されている(0025〜0035)。この製造工程は、要するに、木型とパウダスラッシュ成形により作製された凹形状の型との間で、木型の表面形状を型取りしたシリコンを成形し、木型を外して凹形状に貼付されたシリコンに導電性の材料を流し込んで基本型を作製し、この基本型を電鋳層に浸漬して電鋳型を完成させ、この電鋳型を用いてパウダスラッシュ成形を適用して内装品となる表皮を製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−104987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記比較的硬質の基材の表面に、表皮および発泡層からなる表皮材を積層してなる一般的な内装品にあっては、構成部品の数が多く、構造が複雑であるとともに、製造するのに手間がかかるなどの問題があった。
【0010】
また、上記特許文献1に記載された発明にあっては、突起高さH=6μm〜32μmで、突起相互の間隔P=30μm〜64μmであることから、人が触れる部位の表面にしっとりとした触感を持たせることができたとしても、硬質の材質で人が表面を撫でたときに柔らかさを感じることはなかった。なお、特許文献1において、人の指先や手の平など肌で触れたときに、よりやわらかく感じる傾向にあると記載されているのは、内装品の表面が、平面や凹曲面に比較して、凸曲面の場合であり、微細な突起を複数均一に設けることによるものではない。
【0011】
そして、特許文献1において、内装品を成形する際に使用する型の製造工程では、パウダスラッシュ成形を適用して内装品となる表皮を製造するために作成する型として、ニッケル電鋳転写して電鋳型を製作していた。そのため、この製造工程では、基本型を電鋳層に浸漬してニッケルを析出させるのに時間がかかることから、たとえば鋳造や鋼材を切削加工することなどにより型を製作する場合と比較して、型製作にコストがかかるという問題があった。さらに、特許文献1にあっては、パウダスラッシュ成形を適用するために、設備が大掛かりとなり、工程が煩雑で手間もかかり、コストがかかるなどの問題もあった。
【0012】
本発明は、上述した問題を優位に解決するためになされたもので、簡単な構成で、比較的硬質の材質であっても、人が表面を撫でたときに柔らかさを感じることができる自動車の内装品を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した問題を優位に解決するためになされたもので、簡単な構成で、上記自動車の内装品を容易に且つ確実に製造することができる成形型を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上述した問題を優位に解決するためになされたもので、簡単な工程で、上記自動車の内装品を容易に且つ確実に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の自動車の内装品に係る発明は、上記目的を達成するため、単一層からなり、表面に複数の凹凸が形成されており、前記凹凸の表面には、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部が複数形成されており、少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmの凹凸模様が形成されていることを特徴とする。
また、請求項2の自動車の内装品の成形型に係る発明は、上記目的を達成するため、成形材料をキャビティ内に射出充填することにより単一層からなる自動車の内装品を成形する成形型であって、複数の凹凸を内装品の表面に形成し得るキャビティ表面を有しており、前記キャビティ表面は、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されていることを特徴とする。
請求項の自動車の内装品の成形型に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項に記載の発明において、前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部が、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形されていることを特徴とする。
さらにまた、請求項の自動車の内装品の製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、人が接触する自動車の内装品を製造する方法であって、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されたキャビティ表面を有する成形型を用意し、該成形型のキャビティ内に成形材料を射出充填することにより、単一層からなる内装品を成形することを特徴とする。
請求項の自動車の内装品の製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項に記載の発明において、前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部を、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形しておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、従来の技術のような発泡層を有することなく、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、内装品の表面に複数の凹凸が形成されており、内装品の表面に形成される凹凸のうちの凹部を直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状とし、さらに、少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmの凹凸模様が形成されていることにより、人が表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じさせて、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚させることができ、しかも、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚させることを阻害することなく、梨地のシボなど、任意の意匠を構成することができる。
また、請求項2の発明によれば、成形材料をキャビティ内に射出充填して単一層からなる自動車の内装品を成形するときに、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されたキャビティ表面により、複数の凹凸が内装品の表面に形成される。複数の凹凸は、人が表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じさせる。そのため、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚し、したがって、柔らかさを感じることができる自動車の内装品を容易に成形することが可能な成形型を提供することができる。
請求項の発明によれば、請求項に記載の発明において、前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部が、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形されていることにより、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚させることを阻害することなく、梨地のシボなど、任意の意匠を構成することができる。
さらにまた、請求項の発明によれば、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されたキャビティ表面を有する成形型を用意し、該成形型のキャビティ内に成形材料を射出充填して、単一層からなる内装品を成形するという簡単な工程により、複数の凹凸を内装品の表面に容易に形成して、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、人が表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じて、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚し、したがって、柔らかさを感じることができる自動車の内装品を容易に成形することが可能な自動車の内装品を容易に且つ確実に製造することが可能な方法を提供することができる。
請求項の発明によれば、請求項記載の発明において、前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記凸部を、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形しておくことにより、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚させることを阻害することなく、梨地のシボなど、任意の意匠を構成することができる。
【0015】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(6)項が請求項2に相当し、(7)項が請求項3に相当し、(8)項が請求項4に相当し、(10)項が請求項5に相当する。
【0016】
(1) 単一層からなり、表面に複数の凹凸が形成されており、
前記凹凸の表面には、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部が複数形成されており、
少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmの凹凸模様が形成されていることを特徴とする自動車の内装品。
【0017】
(1)項の発明では、複数の凹凸が形成されており、内装品の表面に形成される凹凸のうちの凹部を直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状とし、さらに、少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmの凹凸模様が形成されており、少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmの凹凸模様が形成されていることにより、従来の技術のような発泡層を有することなく、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、人が内装品の表面を撫でると、圧迫感と解放感を繰り返し感じ、内装品が柔らかいものであると錯覚する。そのため、柔らかいと感じることができる内装品を、比較的硬質の材料で単一層により容易に構成することができる。そして、任意の意匠を少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmで梨地のシボなどの任意の意匠となる凹凸模様を形成しても、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚するのを阻害されることがない
【0018】
(2) ロックウエル硬さ(M及びRスケール)が50〜120の材質により構成されていることを特徴とする(1)項に記載の自動車の内装品。
【0019】
(2)項の発明では、(1)項に記載の発明において、内装品のロックウエル硬さ(M及びRスケール)が50〜120の材質により構成されていても、表面に凹凸が形成されていることにより、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚させることができる。
【0024】
) 前記互いに隣接する凹部は、その中心が三角形状となるように千鳥状に配列されていることを特徴とする()または()項のいずれかに記載の自動車の内装品。
【0025】
)項の発明では、()または()項のいずれかに記載の発明において、円錐形状の凹部の中心が三角形状となるように互いに隣接する凹部を千鳥状に配列することにより、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、人が内装品の表面を撫でたときに、凹部による解放感と、凹部間の凸部による圧迫感とを繰り返し感じることが具現化される。
【0026】
) 前記互いに隣接する凹部は、その中心が四角形状となるように格子状に配列されていることを特徴とする()または()項のいずれかに記載の自動車の内装品。
【0027】
)項の発明では、()または()項のいずれかに記載の発明において、円錐形状の凹部の中心が四角形状となるように互いに隣接する凹部を格子状に配列することにより、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、人が内装品の表面を撫でたときに、凹部による解放感と、凹部間の凸部による圧迫感とを繰り返し感じることが具現化される。
【0028】
) 前記隣接する凹部が互いに接するよう配列されていることを特徴とする()または()項のいずれかに記載の自動車の内装品。
【0029】
)項の発明では、()または()項のいずれかに記載の発明において、千鳥状または格子状に配列された互いに隣接する凹部が接するよう配列されていることにより、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、人が内装品の表面を撫でたときに、凹部による解放感と、凹部間の凸部による圧迫感とを繰り返し感じることが具現化される。
【0030】
) 成形材料をキャビティ内に射出充填することにより単一層からなる自動車の内装品を成形する成形型であって、
複数の凹凸を内装品の表面に形成し得るキャビティ表面を有しており、
前記キャビティ面は、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されていることを特徴とする自動車の内装品の成形型。
【0031】
)項の発明では、複数の凹凸を内装品の表面に形成し得るように、成形型のキャビティ表面に突部が成形されていることにより、成形型のキャビティに成形材料を射出充填すると、これにより成形された内装品の表面には、複数の凹凸が形成される。そして、この内装品の表面に形成される複数の凹部は、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状となる。そのため、成形された内装品は、従来の技術のような発泡層を有することなく、比較的硬質の材質で単一層で構成されていても、その表面に形成された複数の凹凸により、人が表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じさせ、その結果、その表面を撫でている人に柔らかいと錯覚させることができる内装品を容易に成形することができる。
【0034】
) 前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部が、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形されていることを特徴とする()項に記載の自動車の内装品の成形型。
【0035】
)項の発明では、()項に記載の発明において、前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部が、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形されていることにより、任意の意匠を成形された内装品の表面の少なくとも前記凹部の表面に深さ3〜20μmで梨地のシボなどの任意の意匠となる凹凸模様を形成しても、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚するのを阻害されることがない。
【0036】
) 人が接触する自動車の内装品を製造する方法であって、
直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されたキャビティ表面を有する成形型を用意し、
該成形型のキャビティ内に成形材料を射出充填することにより、単一層からなる内装品を成形することを特徴とする自動車の内装品の製造方法。
【0037】
)項の発明では、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部を内装品の表面に複数形成し得る突部が成形されたキャビティ表面を有する成形型を用意し、該成形型のキャビティ内に成形材料を射出充填して、単一層からなる内装品を成形するという簡単な工程により、従来の技術のような発泡層を有することなく、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、その表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じさせて人が柔らかいと錯覚する。そのため、柔らかいと感じることができる内装品を、比較的硬質の材料で単一層により容易に成形することが可能な自動車の内装品を容易に且つ確実に製造することができる。
【0038】
) 内装品のロックウエル硬さが40〜125となるよう成形することを特徴とする()項に記載の自動車の内装品の製造方法。
【0039】
)項の発明では、()項に記載の発明において、内装品のロックウエル硬さが40〜125の材質により構成されていても、表面に凹凸を形成することにより、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚させることが可能な自動車の内装品を容易に且つ確実に製造することができる。
【0042】
10) 前記キャビティ表面のうちの少なくとも前記凸部を、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成形しておくことを特徴とする(8)または(9)項に記載の自動車の内装品の製造方法。
【0043】
10)項の発明では、(8)または(9)項に記載の発明において、キャビティ表面のうちの少なくとも前記突部を、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成し得るように成しておくことにより、比較的硬質の単一層からなる内装品であっても、表面を撫でている人が柔らかいと錯覚するのを阻害することなく、梨地のシボなどの任意の意匠を成形することが可能な自動車の内装品を容易に且つ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施の一形態を説明するために示した自動車の内装品の表面を示した斜視図である。
図2】本発明による凹部を説明するために示した拡大断面図である。
図3】本発明の、隣接する凹部が互いに接するよう配列された実施の形態において、指先で接触して柔らかさを官能評価する状態を説明するために示した平面図(a)と側面図(b)である。
図4】官能評価結果を示す図である。
図5図2に示した本発明による凹部の変形例を説明するために示した拡大断面図である。
図6】本発明の凹部の配列の実施の形態として、互いに隣接する凹部の中心が三角形状となるように凹部を千鳥状に配列した実施の形態を説明するために示した平面図である。
図7】本発明の凹部の配列の実施の形態として、互いに隣接する凹部の中心が四角形状となるように凹部を格子状に配列した実施の形態を説明するために示した平面図である。
図8】本発明の凹部の配列の実施の形態として、凹部をランダムに配列した実施の形態を説明するために示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
最初に、本発明による車両の内装品の実施の一形態を、図に基づいて詳細に説明する。なお、図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の自動車の内装品1は、概略、単一層からなり、人が表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じさせる複数の凹凸10、11が形成されている。
【0046】
上述したように、従来の技術における一般的な自動車の内装品は、比較的硬質で所定の形状に成形された基材と、意匠面を構成する表皮と弾性を有する発泡層とからなる表皮材とを積層することにより構成されていたのに対し、本発明による自動車の内装品1は、比較的硬質(ロックウエル硬さ(M及びRスケール)が50〜120)の材料により単一層で成形されている。内装品1の材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。より具体的な素材としては、例えばポリプロピレン、ABS樹脂、アクリル、フェノール樹脂などを採用することができる。
【0047】
図1に示すように、内装品1の表面には、複数の凹部10が形成されている。互いに隣接する凹部10,10の間は、凸部11を構成する。この実施の形態における凹部10は、円錐形状に形成されており、その直径Aは5〜20mmで深さBは50〜300μmに設定されている。凸部11を構成する凹部10,10間の距離Cは、後述するように任意に設定することができる。図1に示した鎖線は、内装品1の表面に形成された凹凸10,11を表わすために、配列された円錐形状の凹部10の中心の底(円錐形状の頂部)を通る仮想線である。なお、断面図で示した図2および図5においては、水平方向と垂直方向とで、尺度が異なることに注意されたい。また、図3の(b)においても、凹部10と凸部11を誇張して示しており、水平方向と垂直方向とで、尺度が実際と異なることに注意されたい。
【0048】
図2の実施の形態では、凹部10の開口(凸部11との境界)と中心の底(円錐形状の頂部)との間が、断面図で直線となるよう成形されている。また、図5に示した実施の形態では、凹部10の半径が5mm(直径A=10mm)で、深さBが300μmに設定されている。そして、凹部10の開口(凸部11との境界)と深さの半分の位置10aとの間が径方向内側に所定の曲率Rで突出し、深さの半分の位置10aと中心の底(円錐形状の頂部)の間が径方向外側に所定の曲率Rで突出するよう、断面図で示した図5において湾曲する形状に成形されている。この場合、互いに隣接する凹部10、10のそれぞれ深さの半分の位置10a、10aの間隔、すなわち、凸部11の高さの半分の位置における長さは、5mmに設定されている。
【0049】
ここで、本発明による内装品1の表面に対して、人が撫でるように接触したときに柔らかいと感じる仕組みを説明する。図3に示したように、人が指Fで内装品1と表面を撫でるとき、その人の指Fが複数の凹部10と凸部11に交互に繰り返し接触することとなる。このとき、人の指Fなどの接触した部分は、内装品1に接触したときの圧力が凹部10で解放され、凸部11で圧迫される。内装品1が比較的硬質の材質により単一層で構成されていても、この解放と圧迫を交互に繰り返し感じることにより、人が柔らかいと錯覚することを本発明者らは発見した。
【0050】
次に、上述したように、凹部10の直径Aを5〜20mmで深さBを50〜300μmに設定した根拠について、図4に基づいて説明する。図4は、異なる直径Aと深さBを有する凹部10が表面に成形された内装品1を実際に人が指Fで撫でるように接触させたときの一対比較法による官能評価を示したものである。なお、この官能評価を行った人数n=15人である。
【0051】
本発明では、比較的硬質の材質による単一層で構成された内装品1であるにもかかわらず、図4に示したように、凹部10の直径Aが5〜20mmで深さBが50〜300μmの範囲で柔らかいと感じた。そして、凹部10の直径Aが5〜15mmで深さBが100〜250μmの範囲で、より柔らかいと感じることができた。
【0052】
なお、本発明の凹部10と凸部11は、人が表面を撫でたときに解放感を凹部10で感じ、圧迫感を凸部11で感じさせることができるものであればよく、凹部10の底を所定の径を有する平面、または、所定の曲率を有する球面にするなど、凹部10として円錐形状に限定されることはない。
【0053】
また、凹部10、10間により構成される凸部11の長さ、すなわち、互いに隣接する凹部10、10の間隔Cは、図1および図2に示したように所定の範囲(例えば凹部の直径A以下)に設定することができ、また、図3に示したように、凹部10、10が互いに接する(C=0mm)よう配列することができる。
【0054】
さらに、凹部10は、図3または図6に示したように、互いに隣接する凹部10、10の中心を結んだ仮想線Lが三角形状となるように千鳥状に配列することができ、また、図7に示したように、互いに隣接する凹部10、10の中心を結んだ仮想線Lが四角形状となるように格子状に配列することができ、さらにまた、図8に示したように、不規則でランダムに配列することができる。但し、人が表面を撫でたときに圧迫感と解放感とを感じようにするためには、図8の(b)に示したように凹部10が重なるよう配列するのではなく、図8の(a)に示したように凹部10が重ならないように配列することが望ましい。
【0055】
なお、内装品1の表面には、例えば皮革を模した任意の意匠を構成する梨地のシボなど、凹凸模様(図示は省略する)を形成する場合がある。この場合には、少なくとも凹部10の表面に形成する凹凸模様を3〜20μmの深さとすることが望ましい。凹凸模様をこのような深さで形成することにより、上述したように比較的硬質の内装品1の表面を人が撫でたときに柔らかいと感じるのを阻害されることがない。なお、凹部10、10間で構成される凸部11にも、凹部10と同様に、3〜20μmの深さで凹凸模様を形成してもよい。
【0056】
次に、本発明の自動車の内装品1を成形するための型を、図2に基づいて説明する。
本発明の自動車の内装品1の成形型2は、概略、成形材料をキャビティ20内に射出充填することにより単一層からなる自動車の内装品1を成形するためのものであって、人が表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じさせる複数の凹凸10、11を内装品1の表面に形成し得るキャビティ表面20aを有する。そして、そのキャビティ面20aには、内装品1の表面に直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部10を複数形成することができる突部21を複数備えている。
【0057】
上述したように、自動車の内装品1は、その表面に複数の凹凸10、11が成形される。この凹凸10、11は、上述した実施の形態においては、凹部10と、互いに隣接する凹部10、10間の凸部11とにより構成される。そのため、図2に鎖線で示したように、内装品1を成形するための成形型2のキャビティ面20aには、内装品1の表面の凹部10と対応して突部21が形成されている。すなわち、内装品1の表面に直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部10を成形する場合には、この凹部10と対応して、基端の直径5〜20mmで、高さが50〜300μm(内装品1の固化に伴う収縮を無視する場合)の円錐形状の突部21が成形型のキャビティ面20aに複数形成されている。そして、この突部21は、内装品1の設定された凹部10、10間の距離Cに応じた間隔で、凹部10の配列に応じて配列される。また、上述したように、内装品1の表面の少なくとも凹部10に梨地のシボなどの凹凸模様を形成する場合には、この凹凸模様の形状および深さに応じて、キャビティ面20aの少なくとも突部21の表面に凹凸模様形成部が形成される(図示は省略する)。
【0058】
次に、本発明の自動車の内装品1の製造方法を、上述したように構成された成形型2を用いて、上述したような凹凸10、11を有する内装品1を製造する場合により説明する。なお、上記実施の形態で既に説明した事項については、この製造方法に係る発明での説明を省略する。
【0059】
本発明の自動車の内装品の製造方法は、概略、人が接触する自動車の内装品1を製造するためのものであって、人が内装品1の表面を撫でたときに圧迫感と解放感を繰り返し感じさせる複数の凹凸10、11を内装品1の表面に形成し得るキャビティ表面20aを有する成形型2を予め用意し、この成形型2のキャビティ20内に成形材料を射出充填することにより、単一層からなる内装品1を成形する。
【0060】
自動車の内装品1を製造するにあたり、予め用意する成形型2の構成は、上述したとおりである。この成形型2を型閉じして内部にキャビティ20を形成し、所定の材質の成形材料を所定の温度に加熱溶融して、所定の量を所定の圧力等でキャビティ20内に射出充填して保圧し、冷却させて固化させる。成形された内装品1は、例えばロックウエル硬さ(M及びRスケール)が50〜120程度で、比較的硬質のものとなっている。成形型2のキャビティ面20aに円錐形状の突起21が、その基端部の直径が5〜20mmで、高さが50〜300μmで形成されている場合には、成形された内装品1の表面に、直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部10が成形される。また、内装品1の表面に、例えば皮革を模した任意の意匠を構成する梨地のシボなど、凹凸模様を形成する場合に、少なくとも凹部10の表面に3〜20μmの深さで凹凸模様が形成される。
【0061】
このように成形された内装品1は、その表面を人が撫でるように接触すると、凹部10においては指Fなどの接触した部分が、圧力を凹部10で解放され、凸部11で圧迫される感触を得る。この解放感と圧迫感は、特に直径5〜20mmで、深さが50〜300μmの円錐形状の凹部10を成形することにより実感することができる。この解放感と圧迫感を交互に実感することにより、内装品1が硬質の材質により単一層で構成されているにもかかわらず、内装品1と接触した人に柔らかいと錯覚させることとなる。また、内装品1の表面に、梨地のシボなどの凹凸模様を形成する場合であっても、少なくとも凹部10の表面に3〜20μmの深さで凹凸模様を形成することにより、内装品1と接触した人が柔らかいと感じるのを阻害することがない。そして、本発明の方法では、単一層で成形型2により成形することから、柔らかいと感じる内装品1を、基材と表皮材とを積層する従来の技術と比較して少ない工程で、容易に且つ確実に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、自動車のインストルメントパネルやコンソールボックス、ドアトリム、走行時に体を支えるためのアシストグリップなどの取っ手、ステアリングホイルなどのハンドルなど、人が接触する部分の内装品、これらの内装品を成形するための成形型、およびこれらの内装品を製造するための方法に適用することができる。また、内装品の素材は、その要求される機能を有し、且つ、成形後にロックウエル硬さ(M及びRスケール)が50〜120程度を有することとなるものであれば、特に限定されることはない。
【符号の説明】
【0063】
1:内装品、 2:成形型、 10:凹部、 11:凸部、 20:キャビティ、 20a:キャビティ面、 21:突部、 A:円錐形状に成形された凹部の開口する直径、 B:凹部の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8