(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ネジを用いた固定構造では、圧着端子を固定する際の作業性が低く、特に、高所での作業においては、ドライバー等の工具を必要とする観点から、工具を用いることなく、容易に圧着端子を固定することができる手段が望まれている。
【0005】
また仮に、取付対象体の表面に酸化皮膜等の絶縁皮膜が形成されている場合には、圧着端子が接触する部分の皮膜を除去しなければ、圧着端子と取付対象体との間で導通可能とすることができない。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、圧着端子と取付対象体との導通を容易に確保しつつ、圧着端子の固定する際の作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の構成は、表面に皮膜が形成され、かつ、当該表面に取付穴(61)が形成された金属製の取付対象体(60)に、固定用の開口部(51)を有する圧着端子(50)を取り付けるための取付具であって、取付対象体(60)に取り付けられた状態において、開口部(51)を貫通して取付穴(61)に至る金属製の挿入部(2)と、挿入部(2)に設けられ、開口部(51)に挿入部(2)が挿入されたときに、圧着端子(50)と係合することにより圧着端子(50)が挿入部(2)から脱落することを防止する端子仮止め部(2B)とを備え、端子仮止め部(2B)は、取付対象体(60)に取り付けられた状態においては、挿入部(2)から取付穴(61)の内周面(61A)側に突出して当該内周面に接触することを特徴とする。
【0008】
これにより、
上記第1の構成では、圧着端子(50)を挿入部(2)に仮固定することが可能となるので、仮固定した状態で、挿入部(2)を取付穴(61)に挿入することで圧着端子(50)の固定作業が終了する。
【0009】
また、皮膜は、取付対象体(60)の表面に形成されているので、通常、取付穴(61)の内周面(61A)は、皮膜の無い金属面が露出した状態となる。
そして、端子仮止め部(2B)は、取付対象体(60)に取り付けられた状態においては、取付穴(61)の内周面(61A)に接触するので、端子仮止め部(2B)を介して取付対象体(60)との導通を確保しながら、挿入部(2)を取付穴(61)に固定することができる。
【0010】
以上のように、
上記第1の構成によれば、圧着端子(50)と取付対象体(60)との導通を容易に確保しつつ、圧着端子(50)の固定する際の作業性を向上させることができる。
【0011】
また、
第2の構成は、上記第1の構成に加えて、挿入部(2)の挿入方向後退側には、取付対象体(60)に取り付けられた状態において、取付穴(61)の外方まで延びて取付対象体(60)の表面に接触する金属製のアウトリガー部(3)が設けられており、さらに、アウトリガー部(3)のうち表面に接触する部位には、角状のエッジ部(3C)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
これにより、
上記第2の構成では、取付具を取付対象体(60)に取り付ける際に、角状のエッジ部(3C)と取付対象体(60)の表面とが必然的に擦れ合うので、取付具の取付時に、エッジ部(3C)と接触する部位の皮膜が除去される。
【0013】
したがって、端子仮止め部(2B)に加えて、エッジ部(3C)においても導通を確保することができるので、取付具を介して圧着端子(50)と取付対象体(60)との間で導通を確実に確保しつつ、圧着端子(50)を容易に取付対象体(60)に固定することができる。
【0014】
また、
第3の構成は、上記第2の構成に加えて、挿入部(2)は、挿入方向前端が屈曲してU字状又はV字状に形成された弾性変形可能な板材にて構成され、挿入部(2)の板面には、取付対象体(60)に取り付けられた状態において、取付対象体(60)と係合する係合突起(2C)が設けられており、さらに、端子仮止め部(2B)は、板材の端面から突出するように挿入部(2)に一体形成され、係合突起(2C)は、板面の一部を切り起こすことにより挿入部(2)に一体形成されていることを特徴とする。
【0015】
これにより、
上記第3の構成では、挿入部(2)が弾性変形することにより係合突起(2C)を容易に変位させることができるので、取付具、つまり挿入部(2)を取付穴(61)に挿入装着する際の作業性を向上させることができる。
【0016】
また、
第4の構成は、上記第3の構成に加えて、アウトリガー部(3)は、板材を湾曲させることにより挿入部(2)に一体形成され、エッジ部(3C)は、板材を切断成形した際に板材の端面に発生する角であり、さらに、取付対象体(60)に取り付けられた状態において、アウトリガー部(3)は、その板面より取付対象体(60)側に曲率中心が存在するように湾曲していることを特徴とする。
【0017】
これにより、
上記第4の構成では、エッジ部(3C)を含め取付具全体を容易に成形することができる。
そして、アウトリガー部(3)は、その板面より取付対象体(60)側に曲率中心が存在するように湾曲しているので、エッジ部(3C)を強く取付対象体(60)の表面に押し当てることができるので、確実に皮膜を除去することができる。
【0018】
第5の構成は、表面に皮膜が形成され、かつ、当該表面に取付穴(61)が形成された金属製の取付対象体(60)に、固定用の開口部(51)を有する圧着端子(50)を取り付けるための取付具であって、互いに対向する帯板状に形成された一対の板面(2A)、及び当該一対の板面(2A)を連結する連結部(2D)を有し、U字状又はV字状に屈曲した金属製の挿入部(2)と、板面(2A)の幅方向端部から外方側に突出した突起状の端子仮止め部(2B)と、挿入部(2)に対して連結部(2D)と反対側に設けられ、一対の板面(2A)のうち一方の板面側から他方の板面側に延びて圧着端子(50)に接触する第1端子押圧部(4A)と、挿入部(2)に対して連結部(2D)と反対側に設けられ、他方の板面側から一方の板面側に延びて圧着端子(50)に接触する第2端子押圧部(4B)と、第1端子押圧部(4A)の延び方向先端側に設けられ、連結部(2D)側に向けて湾曲した第1湾曲部(41A)と、第2端子押圧部(4B)の延び方向先端側に設けられ、連結部(2D)と反対側に向けて湾曲した第2湾曲部(41B)とを備えることを特徴とする。
【0019】
これにより、
上記第5の構成においても、
上記第1の構成と同様に、圧着端子(50)を挿入部(2)に仮固定することが可能となるので、仮固定した状態で、挿入部(2)を取付穴(61)に挿入することで圧着端子(50)の固定作業が終了する。
【0020】
また、皮膜は、取付対象体(60)の表面に形成されているので、通常、取付穴(61)の内周面(61A)は、皮膜の無い金属面が露出した状態となる。そして、端子仮止め部(2B)は、取付対象体(60)に取り付けられた状態においては、取付穴(61)の内周面(61A)に接触するので、端子仮止め部(2B)を介して取付対象体(60)との導通を確保しながら、挿入部(2)を取付穴(61)に固定することができる。
【0021】
以上のように、
上記第5の構成においても、圧着端子(50)と取付対象体(60)との導通を容易に確保しつつ、圧着端子(50)の固定する際の作業性を向上させることができる。
【0022】
また、第1端子押圧部(4A)の延び方向先端側には、連結部(2D)側に向けて湾曲した第1湾曲部(41A)が設けられ、第2端子押圧部(4B)の延び方向先端側には、連結部(2D)と反対側に向けて湾曲した第2湾曲部(41B)が設けられているので、
上記第5の構成では、取付具を容易に取り外すことができる。
【0023】
すなわち、取付具を取り外す際には、一対の板面(2A)を近接させるように挿入部(2)を弾性変形させればよい。
このとき仮に、第2端子押圧部(4B)の延び方向先端側に第2湾曲部(41B)が設けられていない場合には、第1端子押圧部(4A)及び第2端子押圧部(4B)のうちいずれか一方の先端が他方に食い込んでしまう可能性が高い。そして、いずれか一方の先端が他方に食い込んでしまうと、一対の板面(2A)を十分に近接変位させることができないので、取付具を取り外すことが難しい。
【0024】
一方、
上記第5の構成では、一対の板面(2A)が近接すると、第1端子押圧部(4A)の先端と第2端子押圧部(4B)の先端とが互いに近づき、第1湾曲部(41A)の曲面と第2湾曲部(41B)の曲面とが摺接するため、第2端子押圧部(4B)が第1端子押圧部(4A)に乗り上げる。このため、一対の板面(2A)を十分に近接変位させることができるので、取付具を容易に取り外すことができる。
【0025】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0028】
そして、本実施形態は、丸形圧着端子をフレーム等の取付対象体に取り付けるための取付具1に本発明を適用したものである。以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
なお、
図1は取付具1の正面図である。
図2は取付具1の左側面図である。
図3は取付具1の右側面図である。
図4は取付具1の上面図である。
図5は取付具1の下面図である。
図6は取付具1の背面図である。
図7は
図2のA−A断面図である。
図8、9は取付具1の斜視図である。
【0030】
また、取付対象体60は、酸化皮膜等の絶縁皮膜が形成されたアルミニウム製の部材である。そして、取付対象体60には、
図15に示すように、表面から裏面まで貫通した取付穴61が設けられている。
【0031】
なお、取付穴61は、絶縁皮膜が取付対象体60に形成された後にドリル等の切削工具にて形成された穴である。このため、取付穴61の内周面は、取付対象体60の母材(本実施形態では、アルミニウム)が暴露した状態となっている。
【0032】
また、丸形圧着端子50は、固定用の開口部51を有する環状の平板であり、この丸形
圧着端子50には、ハンダ付け又はカシメ等の固定方法により、図示されていないリード線やアース線等の電気線が固定されている。
【0033】
1.取付具の構成・形状
取付具1は、
図8又は
図9に示すように、挿入部2、アウトリガー部3及び端子押圧部4等を有して構成されている。そして、挿入部2〜押圧部4等は、1枚の金属板にプレス加工を施すことにより一体成形されている。なお、本実施形態に係る取付具1は、ステンレス等の弾性(バネ性)を有する金属製である。
【0034】
<挿入部>
挿入部2は、
図15に示すように、取付対象体60に取り付けられた状態において、開口部51を貫通して取付穴61に至る部位である。そして、挿入部2は、
図10に示すように、互いに対向する一対の板面2A、及び当該一対の板面2Aを連結する連結部2Dを有している。
【0035】
連結部2Dは、挿入部2の挿入方向前端に設けられてU字状又はV字状に屈曲した部位である。そして、一対の板面2Aと連結部2Dとは、1枚の金属板材にプレス成形等の塑性加工を施すことにより一体形成されている。
【0036】
このため、挿入部2は、帯板状に形成された一対の板面2Aが近接又は離間するように弾性変形できる。そして、一対の板面2Aは、取付具1が取付穴61に挿入される際に、互いに近接するように弾性変形する。このため、取付具1が取付穴61に挿入されると、挿入部2で発生する弾性力により一対の板面2Aが取付穴61の内周面に圧接した状態となる。
【0037】
また、
図9に示すように、各板面2Aの幅方向両端部には、端子仮止め部2Bが設けられている。これら4つの端子仮止め部2Bは、
図2に示すように、板面2Aの幅方向端部から外方側に突出した突起部であって、挿入方向後退側に向かうほど、当該端部からの突出寸法が次第に大きくなるような三角状の突起部である。なお、幅方向とは、板面2Aと略平行な方向であって挿入方向と直交する方向いう。
【0038】
このため、丸形圧着端子50の開口部51に挿入部2が挿入されると、開口部51の内周面に一対の板面2Aに押し当てられ、各端子仮止め部2Bと丸形圧着端子50とが係合可能な状態となる。そして、各端子仮止め部2Bのいずれかと丸形圧着端子50とが係合した場合には、丸形圧着端子50が挿入部2から脱落することを防止される。
【0039】
そして、取付具1が取付穴61に挿入されると、
図16に示すように、各端子仮止め部2Bのうち少なくとも1つは、挿入部2から取付穴61の内周面61A側に突出して当該内周面61Aに接触した状態となる。
【0040】
また、一対の板面2Aそれぞれには、
図14に示すように、取付具1が取付対象体60に取り付けられた状態において、取付対象体60と係合する係合突起2Cが設けられている。これらの係合突起2Cは、板面2Aの一部を切り起こすことにより挿入部2に一体形成されている。
【0041】
すなわち、各係合突起2Cは、帯板バネ状の突起であって、挿入方向前進側で板面2Aに連結されている。そして、各係合突起2Cは、挿入方向後退側に向かうほど、板面2Aから離隔している。
【0042】
このため、挿入部2が取付穴61に挿入される際には、各係合突起2Cが各板面2Aに近接するように弾性変形し、挿入が完了すると、各係合突起2Cが復元し、
図15に示すように、各係合突起2Cの先端側が取付対象体60の裏面に接触するように係合する。
【0043】
<アウトリガー部>
アウトリガー部3は、
図13に示すように、取付具1のうち挿入部2の挿入方向後退側に設けられている。そして、アウトリガー部3は、取付具1が取付対象体60に取り付けられた状態において、取付対象体60の表面に接触する。
【0044】
すなわち、
図15に示すように、各板面2Aの挿入方向後退側に連なる部位が、取付穴61の外方に向けて延びるように曲げられている。そして、この曲げられた部位が丸形圧着端子50の外方側まで延びて取付対象体60の表面に接触してアウトリガー部3を構成している。
【0045】
また、アウトリガー部3の延び方向先端側の部位Aは、少なくとも取付対象体60に取り付けられた状態において、部位Aの板面より取付対象体60側に曲率中心が存在するように湾曲している。
【0046】
つまり、アウトリガー部3は、平坦部3A及び先端湾曲部3B等を有している。平坦部3Aは、挿入部2とアウトリガー部3との境界をなす湾曲部Bから丸形圧着端子50と平行に外方側に延びる部位である。先端湾曲部3Bは、平坦部3Aから先端に至る部位であって、取付対象体60の表面に向けて表面に対して鋭角状に突入するように延びる部位である。
【0047】
また、先端湾曲部3Bのうち取付対象体60の表面に接触する部位は、角状のエッジ部3Cが設けられている。このエッジ部3Cは、取付具1を構成する板材を切断成形した際に板材の端面に発生する角をそのまま利用している。このため、エッジ部3Cは、例えば金属板をシャー加工にて切断した際に板材の端面に発生する角と同様な形状となっている。
【0048】
そして、取付具1が取付穴61に挿入されて各係合突起2Cが取付対象体60と係合した状態においては、先端湾曲部3Bの曲率半径は、取付具1が取付対象体60に取り付けられ前に比べて大きくなるように弾性変形した状態となる。
【0049】
このため、各係合突起2Cが取付対象体60と係合して取付具1の取付が完了した状態では、先端湾曲部3Bの弾性変形に伴う弾性力がエッジ部3Cに作用するので、エッジ部3Cと取付対象体60との接触面圧は非常に大きくなる。
【0050】
<端子押圧部>
端子押圧部4は丸形圧着端子50に圧接する部位である。そして、本実施形態では、端子押圧部4を丸形圧着端子50に圧接することにより、丸形圧着端子50と取付具1との導通を確実に担保している。
【0051】
また、端子押圧部4は、
図13に示すように、アウトリガー部3の延び方向と平行な方向において、湾曲部Bを挟んで各エッジ部3Cと反対側に2ずつ設けられている。つまり、各端子押圧部4は、
図12に示すように、挿入部2に対して連結部2Dと反対側に設けられている。
【0052】
そして、各端子押圧部4は、一対の板面2Aのうち一方の板面側から他方の板面側に延びている。具体的には、挿入部2に対して紙面左側の端子押圧部4Aは、紙面左側から紙面右側に向けて延びている。一方、挿入部2に対して紙面右側の端子押圧部4Bは、紙面右側から紙面左側に向けて延びている。
【0053】
4つの端子押圧部4それぞれは、
図16に示すように、挿入部2を避けるように板面2Aから幅方向にずれた位置において、湾曲部Bからアウトリガー部3の延び方向と逆向きに延びて丸形圧着端子50に接触している。
【0054】
つまり、各端子押圧部4は、平坦部3Aから分岐するように各エッジ部3Cと反対側に向けて延びている。そして、各端子押圧部4の延び方向先端側は、
図15に示すように、丸形圧着端子50に向けて鋭角状に突入するように延びて湾曲した湾曲部41が設けられている。このため、各端子押圧部4の延び方向先端側、つまり湾曲部41も、アウトリガー部3と同様に、取付対象体60側に曲率中心が存在するように湾曲している。
【0055】
そして、取付具1が取付穴61に挿入されて各係合突起2Cが取付対象体60と係合した状態においては、各端子押圧部4の延び方向先端側の曲率半径は、取付具1が取付対象体60に取り付けられ前に比べて大きくなるように弾性変形した状態となる。
【0056】
このため、各係合突起2Cが取付対象体60と係合して取付具1の取付が完了した状態では、各端子押圧部4の延び方向先端側の弾性変形に伴う弾性力が各端子押圧部4の先端角部に作用するので、各端子押圧部4と丸形圧着端子50との接触面圧は非常に大きくなる。
【0057】
2.取付具の取付作業(取付具の使用方法)
先ず、
図10に示すように、丸形圧着端子50が湾曲部Bと端子仮止め部2Bとの間に位置するまで挿入部2を開口部51に挿入する。これにより、丸形圧着端子50が端子仮止め部2Bと係合可能な状態となり、丸形圧着端子50が取付具1に仮固定された状態となる。
【0058】
次に、
図15に示すように、丸形圧着端子50が仮固定された取付具1の挿入部2を、取付対象体60の取付穴61に挿入し、各係合突起2Cを取付対象体60に係合させる。これにより、丸形圧着端子50が取付具1と取付対象体60との間に挟まれた状態となって丸形圧着端子50が取付対象体60に固定される。
【0059】
また、端子仮止め部2B及びエッジ部3Cが取付対象体60と導通可能な状態となるので、丸形圧着端子50は取付具1を介して取付対象体60と導通可能な状態となる。
3.本実施形態に係る取付具の特徴
本実施形態では、端子仮止め部2Bを備えているので、丸形圧着端子50を挿入部2に仮固定することが可能となる。このため、仮固定した状態で、挿入部2を取付穴61に挿入することで丸形圧着端子50の固定作業が終了する。
【0060】
また、端子仮止め部2Bは、取付対象体60に取り付けられた状態においては、取付穴61の内周面61Aに接触するので、端子仮止め部2Bを介して取付対象体60との導通を確保しながら、挿入部2を取付穴61に固定することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、丸形圧着端子50と取付対象体60との導通を容易に確保しつつ、丸形圧着端子50の固定する際の作業性を向上させることができる。
ところで、本実施形態では、一対の板面2A間の距離が挿入方向後退側に向かうほど大きくなるように、挿入部2がU字状又はV字状に屈曲している。このため、丸形圧着端子50が端子押圧部4と接触するまで、挿入部2が開口部51に深く挿入されると、端子仮止め部2Bと丸形圧着端子50とが係合することなく、一対の板面2Aが開口部51の内周面に圧接する場合がある。
【0062】
そして、上記の場合においては、端子仮止め部2Bと丸形圧着端子50とが係合していなくても、一対の板面2Aと開口部51の内周面との接触部で発生する摩擦力により、丸形圧着端子50が挿入部2から脱落することを防止される。
【0063】
しかし、挿入部2を取付穴61に挿入する前に、作業者が誤って丸形圧着端子50に触れる等すると、上記の摩擦力のみでは、その際の衝撃力により丸形圧着端子50が挿入部2から脱落してしまう可能性が非常に高い。
【0064】
これに対して、本実施形態では、端子仮止め部2Bが設けられているので、衝撃力が丸形圧着端子50に作用した場合であっても、端子仮止め部2Bが丸形圧着端子50と必ず係合する。このため、丸形圧着端子50が挿入部2から脱落してしまうことを確実に防止できるので、確実に丸形圧着端子50を取付具1に仮固定した状態で取付作業を行うことができる。
【0065】
また、本実施形態では、取付具を取付対象体60に取り付ける際に、角状のエッジ部3Cと取付対象体60の表面とが必然的に擦れ合うので、取付具の取付時に、エッジ部3Cと接触する部位の皮膜が除去される。
【0066】
したがって、端子仮止め部2Bに加えて、エッジ部3Cにおいても導通を確保することができるので、取付具1を介して丸形圧着端子50と取付対象体60との間で導通を確実に確保しつつ、丸形圧着端子50を容易に取付対象体60に固定することができる。
【0067】
また、本実施形態では、挿入部2が弾性変形することにより係合突起2Cを容易に変位させることができるので、取付具1、つまり挿入部2を取付穴61に挿入装着する際の作業性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、アウトリガー部3は、その板面より取付対象体60側に曲率中心が存在するように湾曲しているので、エッジ部3Cを強く取付対象体60の表面に押し当てることができるので、確実に皮膜を除去することができる。
【0069】
(第2実施形態)
第1実施形態では、各端子押圧部4に設けられた湾曲部41は、全て連結部2D側に向けて湾曲し、かつ、端子仮止め部2Bは、板面2Aと平行な方向に突出していた。
【0070】
これに対して、本実施形態に係る取付具1は、
図17に示すように、挿入部2を挟んで一方側の端子押圧部4Aと他方側の端子押圧部4Bとで形状が異なり、かつ、端子仮止め部2Bは板面2Aに対して傾いた方向に突出している。なお、その他の構成は、第1実施形態に係る取付具1と同じである。
【0071】
以下、説明の理解を容易にするため、一対の板面2Aのうち一方の板面側から他方の板面側に延びて丸形圧着端子50に接触する端子押圧部4を第1端子押圧部4Aと呼ぶ。他方の板面側から一方の板面側に延びて丸形圧着端子50に接触する端子押圧部4を第2端子押圧部4Bと呼ぶ。さらに、第1端子押圧部4A及び第2端子押圧部4Bを総称するときには、端子押圧部4と呼ぶ。
【0072】
1.取付具の具体的な構成・形状
本実施形態では、第1端子押圧部4Aの延び方向先端側には、連結部2D側に向けて湾曲した第1湾曲部41Aが設けられている。一方、第2端子押圧部4Bの延び方向先端側には、連結部2Dと反対側に向けて湾曲した第2湾曲部41Bが設けられている。
【0073】
第1湾曲部41Aは、第1実施形態に係る湾曲部41に相当するものである。つまり第1湾曲部41Aは、丸形圧着端子50に向けて鋭角状に突入するように延びて湾曲した部位である。
【0074】
なお、第1湾曲部41Aの湾曲形状は、第1実施形態に係る湾曲部41と同一ではない。しかし、第1湾曲部41Aの主たる機能は、第1実施形態に係る湾曲部41の主たる機能と同一である。
【0075】
一方、第2湾曲部41Bは、丸形圧着端子50に圧接するものの、連結部2Dと反対側に向けて湾曲している。このため、第2湾曲部41Bは、丸形圧着端子50に向けて鋭角状に突入して食い込むことはない。
【0076】
第1端子押圧部4A及び第2端子押圧部4Bは、
図20に示すように、挿入部2を挟んで幅方向両側に設けられている。つまり、本実施形態においても、4つの端子押圧部4が設けられている。
【0077】
そして、幅方向において、挿入部2を挟んで第1端子押圧部4Aと反対側に第2端子押圧部4Bが設けられている。このため、本実施形態に係る取付具1では、挿入方向と直交する仮想平面に4つの端子押圧部4が投影されると、挿入部2を中心に右回りに、第1端子押圧部4A→第2端子押圧部4B→第1端子押圧部4A→第2端子押圧部4Bの順に並ぶ。
【0078】
また、板面2Aの幅方向両端に設けられた端子仮止め部2Bは、
図18に示すように、当該板面2Aから他方の板面2A側に傾いた方向に突出している。つまり、紙面左側の板面2Aに設けられた端子仮止め部2Bは、紙面右側の板面2A側に傾いている。一方、紙面右側の板面2Aに設けられた端子仮止め部2Bは、紙面左側の板面2A側に傾いている。
【0079】
2.本実施形態に係る取付具の特徴
本実施形態では、取付具1を容易に取り外すことができる。すなわち、取付具1を取り外す際には、
図22(a)に示すように、一対の板面2Aを近接させるように挿入部2を弾性変形させればよい。
【0080】
このとき仮に、4つの端子押圧部4が第1実施形態と同様に、第2端子押圧部4Bの延び方向先端側に第2湾曲部41Bが設けられていない場合には、以下の可能性がある。
すなわち、第1端子押圧部4A及び第2端子押圧部4Bのうちいずれか一方の先端が他方に食い込んでしまう可能性が高い。そして、いずれか一方の先端が他方に食い込んでしまうと、一対の板面2Aを十分に近接変位させることができないので、取付具1を取り外すことが難しい。
【0081】
これに対して、本実施形態では、
図22(b)に示すように、一対の板面2Aが近接すると、第1端子押圧部4Aの先端と第2端子押圧部4Bの先端とが互いに近づき、第1湾曲部41Aの曲面に対して第2湾曲部41Bの曲面が滑るため、第2端子押圧部4Bが第1端子押圧部4Aに乗り上げる。
【0082】
このため、第1端子押圧部4A及び第2端子押圧部4Bのうちいずれか一方の先端が他方に食い込むことはなく、一対の板面2Aを十分に近接変位させることができるので、取付具1を容易に取り外すことができる。
【0083】
また、端子仮止め部2Bが板面2A側に傾いた方向に突出しているので、挿入部2(特に、板面2A)の剛性及び強度を向上させることができる。
そして、端子仮止め部2Bが板面2A側に傾いた方向に突出していると、端子仮止め部2Bが板面2Aと平行に突出している場合に比べて、取付対象体60への食い込み量が小さくなるので、取付具1を容易に取り外すことができる。
【0084】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、圧着端子として丸形圧着端子を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば先開形圧着端子等を用いてもよい。
【0085】
また、上述の実施形態では、アウトリガー部3及び端子押圧部4を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらのうちいずれか廃止してもよい。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。