【実施例】
【0019】
本発明の実施の形態に係るドラム型乾燥機について、
図1乃至
図4を用いて詳細に説明する。なお、
図1で示した構成要素については、
図2乃至
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1(a)は、実施例に係るドラム型乾燥機の前面扉を省略した状態での正面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA−A線矢視断面図である。但し、
図1(b)では構造理解のために前面扉を追加記載している。
【0020】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施例のドラム型乾燥機1は、後面に接して配設される加温部2と、この加温部2の前方に隣接して配設される乾燥室3と、から構成される。
図1(b)に示すように、加温部2は、後面の上方に開設され外部から空気を取り込む給気口4と,取り込まれた空気を加温して温風とするヒータ5と,温風を送出するファン6と,乾燥室3と連通して温風を乾燥室3内に送気する送気口7と,乾燥室3と連通して温風を乾燥室3から加温部2に吸入する循環用吸入口8と,を備える。給気口4には、開閉式の閉鎖板(図示せず)が設けられ、その開閉程度を調整することで乾燥室3内への送気量が調整される構造である。ヒータ5はバーナ(図示せず)を備えており、排気は煙突5aによってドラム型乾燥機1の外部へ排出される。
次に、
図1(a)に示すように、乾燥室3は、前面扉3aと,側板3b,3cと,後板3dと,天板3eと,底板3fと,から成る箱体であって、食品9を収容する円筒状のドラム10を水平軸回転可能に支持する中央乾燥室11と,送気口7と連通して中央乾燥室11の後方下部に開口する吹出口12と,加温部2と連通して中央乾燥室11の後方上部に開口し温風を加温部2に循環させる循環用送気口13と,中央乾燥室11の後方上部に開口して温風を外部に排気する排気口14と,を備える。加温部2と乾燥室3とは後板3dによって区切られている。また、側板3b,3cには、それぞれ後述するフランジ継手19a,19bの軸部20a,20bが貫通可能な窓部3g,3gが開口している。なお、具体的なドラム10のサイズは直径650mm×長さ1000mm程度であるが、もちろん、被乾燥物たる食品9の量や乾燥効率に応じて適宜サイズは変更するとよい。
【0021】
前面扉3aは、左右1枚ずつの扉によっていわゆる観音開き構造となっており、
図1(b)に示すように、これらの内側面には一辺が100mm程度の三角筒状を成す整流部材15が設置されている。このドラム10は、金属製のメッシュ構造であって、周面の一部に食品9を投入または取り出し可能な開閉扉(図示せず)が設けられる。また、循環用送気口13には金属製のメッシュから形成される集塵フィルタ16が側板3cを貫通して挿入され、循環用送気口13の横断面に沿ってスライド可能な構造を成している。なお、排気口14は常時開放された状態である。
【0022】
さらに、中央乾燥室11は、乾燥室3のうちトレイ11aよりも上方に位置する空間であって、吹出口12の上方に配設される。このトレイ11aのうち前面扉3a寄りの部分は開放部11bが設けられ通気可能な構造となっている。そして側板3b,3cの外側には、軸受部17a,17bがそれぞれ底板3fから同一の高さに設けられる。側板3b,3cの内側には、上面が滑らかな水平面を成す長尺の略立方体形状を成すスライドレール18a,18bが、それぞれ軸受部17a,17bよりも下方において底板3fから同一の高さに固定されている。スライドレール18a,18bのサイズは、具体的には50mm×50mm×500mm程度である。スライドレール18a,18bの上方には、フランジ継手19a,19bが、それぞれ設けられる。このフランジ継手19a,19bは、それぞれの一端が側板3b,3cの外側において軸受部17a,17bに軸支される軸部20a,20bと、他端は側板3a,3bの内側に配置されるフランジ部21a,21bと、から構成される。フランジ継手19a,19b及びフランジ部21a,21bの直径は、いずれも200mm程度である。
そしてドラム10は、左右両端面にフランジ継手19a,19bに着脱可能なディスク22a,22bが設けられる。またディスク22a,22bは、円形を成しそれぞれスライドレール18a,18b上を転動可能な構造である。
【0023】
なお、ドラム型乾燥機1が稼働する際は、前面扉3aが閉鎖され、実測された乾燥室3内部の温度や乾燥時間等が側板3cに設置された表示パネル(図示せず)に数値表示される。なお、温風の温度はダイヤル(図示せず)の操作によって自在に設定可能であり、実測温度は吹出口12に設置してある温度計(図示せず)によって常時計測される。
また、ドラム10は側板3c付近に設置される駆動部23によって駆動される。この駆動部23は、乾燥室3の上方外側に設置されたモータ23aと,外側に延設された軸部20bの端部に備えられるギア23bと,モータ23aの動力をギア23bに伝達するベルト23cと,から構成される。
【0024】
次に、
図2を用いて実施例に係るドラム型乾燥機について、より詳細に説明する。
図2は、実施例に係るドラム型乾燥機における前面扉開放時の斜視図である。前述したように、前面扉3aは左右1枚ずつの扉から構成されており、
図2は向かって右側の扉3aがやや開放され、左側の扉3aは省略された場合を示したものである。
図2に示すように、本実施例のドラム型乾燥機1における前面扉3aの内側面には、整流部材15が横断面における頂点の1つをドラム10の方向へ突出して固定設置されている。この突出の高さは、前面扉3aを閉鎖した場合にドラム10の周面にやや間隔を空けて近接する程度であって、具体的な間隔はおよそ30mmである。整流部材15は、左右1枚ずつの扉3aにそれぞれ1本ずつ備えられ、これらを合計した長さはドラム10の幅と同等である。
【0025】
次に、
図3を用いて実施例に係るドラム型乾燥機におけるドラムの着脱について、より詳細に説明する。
図3(a)及び
図3(b)は、それぞれ実施例に係るドラム型乾燥機におけるドラムの回転軸部分の斜視図及び側面図である。
図3(a)に示すように、フランジ部21aには、4箇所の貫通孔24a〜24dが設けられる。そして、ドラム10の一端面におけるディスク22aには、これらを平行に重ね合わせた場合において貫通孔24a〜24dと同一な位置となる4箇所に、筒状孔25a〜25dが一体的に設けられる。そして、位置が一致する貫通孔24a〜24d及び筒状孔25a〜25dには、それぞれ締付ボルト26a〜26dが挿入される。
【0026】
図3(b)において、位置X
1及び位置X
2は、それぞれディスク22aの中心位置を示している。位置X
1ではディスク22aの中心が軸受部17aの中心と一致している。一方、位置X
2ではディスク22aが軸受部17aより離れ、前面扉3a寄りのスライドレール18a上に直接載置される。このように、ディスク22aは軸受部17a及びスライドレール18aの間を自在に往復可能な構造となっている。また、ディスク22bも同様である。
【0027】
次に、
図4を用いて実施例に係るドラム型乾燥機におけるリフターについて、より詳細に説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、それぞれ実施例に係るドラム型乾燥機におけるドラムのリフター部分の側面図及び斜透視図である。
図4(a)に示すように、本実施例のドラム型乾燥機1におけるドラム10には、横断面において90度間隔の計4箇所に、4枚の長尺の平板状を成すリフター27a〜27dが備えられる。これらリフター27a〜27dは、ディスク22aの中心部に向かって突出している。なお、具体的な突出の高さはおよそ50mmである。
次に、
図4(b)に示すように、図中矢印方向へドラム10が回転すれば、リフター27aの手前の食品9は同方向へ持ち上げられ、ドラム10の最上部付近において自然落下し、他のリフター27b〜27dの周辺に落下する構造である。
【0028】
本実施例の平行流乾燥機1においては、ファン6、ヒータ5を運転することによって空気が給気口4から取り込まれ、ドラム型乾燥機1の内部における温風の循環が開始される。これと同時に駆動部23を駆動させることによって、その駆動力がフランジ継手19bを介してディスク22bに伝達され、ドラム10の回転が開始される。
続いて、
図1及び
図2を用いて実施例に係るドラム型乾燥機内における空気の循環作用について詳細に説明する。
図1(b)に示すように、給気口4から取り込まれた空気(図中黒塗り矢印)は、ファン6によってヒータ5の方向へ押し込まれ、ヒータ5の側方を下降する間に加温されて温風(図中白抜き矢印)となる。温風の温度は、具体的には常温(室温)〜60℃である。この温風は、送気口7、吹出口12及び開放部11bを通過して中央乾燥室11を上昇し、整流部材15の下面に衝突する。衝突により温風はドラム10の回転軸方向へと偏向され、回転中のドラム10の周面に対し略直角方向に沿って流れ込む。温風はドラム10の周面に形成されたメッシュ構造を経由してドラム10内に流れ込む。
その結果、温風はドラム10の周面に沿って流れ去るのではなく、直ちにその内部へ侵入するという作用を有する(
図2参照)。
さらに、ドラム10の内部において温風は食品9の間を通過した後、ドラム10の周面に形成されたメッシュ構造を経由して再び中央乾燥室11に吹き出される。そして、
図1(a)に示すように、循環用送気口13と排気口14が中央乾燥室11の後方上部に開口することから、中央乾燥室11へ排出された温風は速やかに一部が循環用送気口13及び循環用吸入口8を通過して加温部2へと戻され、残りは排気口14から外部へ排気される。排気される温風に含まれる水分が放出されることで食品9を乾燥させることができる。加温部2では、戻ってきた温風と新たに給気口4から取り込まれた空気とが混合され、再び加温されながら送気口7へと送気される。
なお、本実施例ではドラム10の周面にメッシュ構造が形成された場合を説明したが、メッシュ構造の他、周面に複数の孔が穿設されるような場合でもよい。すなわち、メッシュ構造は周面に穿設される複数の孔が多数の場合の究極として概念でき、本願における複数の孔の概念にはメッシュ構造も含まれるのである。
【0029】
上記のような空気の循環においては、整流部材15によってドラム10の内部に収容された食品9に対し温風が集中することとなる。加えて、食品9はドラム10の回転によってその位置を変化させるとともに、その内部に設けられたリフター27a〜27dによって解きほぐされそれぞれ分離されることから、食品9は表面全体に温風を受けて均一に乾燥されるという作用を有する。
また、加温部2では、戻ってきた温風と新たに給気口4から取り込まれた空気とが混合されることから、乾燥室3内の温度が過剰に上昇または下降することが防止され、稼働中に適切な乾燥温度が維持される。その一方で、給気口4に設けられた閉鎖板により乾燥室3内への送気量が調整されることから、全閉鎖又は全開された場合は急激に温度が上昇または下降するという作用を有する。
さらに、循環用送気口13に備えられる集塵フィルタ16によって、温風が加温部2に送気される直前にゴミ等の不純物が除去されるため、不純物が食品9に再付着することが防止されるとともに、ドラム10やドラム型乾燥機1内部の細部に入り込むことが防止される。また、温風がメッシュ構造の外側から内側、内側から外側へと流れることから食品9の残渣等による目詰まりも起こし難い。
【0030】
次に、軸受部17a,17bによるドラム10の支持作用について詳細に説明する。フランジ継手19a,19bの軸部20a,20bが軸受部17a,17bに軸支されることから、位置X
1(
図3(b)参照)においては、フランジ部21a,21bのそれぞれの貫通孔24a〜24dとディスク22a,22bのそれぞれの筒状孔25a〜25dにそれぞれ4本の締付ボルト26a〜26dが挿通されて締め付けが行われると、ドラム10は軸受部17a,17bによって水平に支持されるという作用を有する。
また、4本の締付ボルト26a〜26dを取り外すことでディスク22a,22bはフランジ部21a,21bより切り離され、ドラム10はスライドレール18a,18bによって転動可能に支持される(位置X
2,
図3(b)参照)。
なお、位置X
2から位置X
1にドラム10を押し戻したとき、貫通孔24a〜24dと筒状孔25a〜25dのうちの1箇所に、締付ボルト26a〜26dのうちの1本を挿通させて仮締めする。次にドラム10を回転させて残りの締付ボルトを順次仮締めし、その後これらを本締めすることでドラム10は軸受部17a,17bに支持された状態となる。
【0031】
続いて、ドラム10の内部には合計4枚のリフター27a〜27dが突出していることから、ドラム10が90度回転する毎に持ち上げられ、その後落下する。
【0032】
以上説明したように、本実施例のドラム型乾燥機1によれば、中央乾燥室11に吹き出された温風は、整流部材15によって直ちに回転中のドラム10の内部へ侵入することから、全ての温風を食品9の乾燥のために利用することができる。加えて食品9は、リフター27a〜27dによって均一に乾燥されるので、温風の利用効率が良好であるという条件下で高品質の乾燥食品を製造することができる。また、このリフター27a〜27dによって、食品9にはドラム10の回転によって落下による衝撃が確実に加えられるため、植物繊維を多く含む食品9を短時間で柔軟にすることが可能である。従って、特にゼンマイ等の山菜類の柔軟化に有効であり、商品価値を向上させることができる。
【0033】
また、乾燥室3内は適切な乾燥温度が維持されることから、例えば過剰な温度上昇による食品9の縮みや破損、乾燥不足によるカビの発生といった不良要因を排除することができる。この一方で、給気口4に設けられた閉鎖板によって急激な温度上昇または下降も可能であることから、運転開始時や終了時において乾燥室3の温度を速やかに操作することが容易である。
この乾燥温度の維持に加え、中央乾燥室11から排気口14を介して水分を含む一部の温風を放出した後に、残りの循環する温風と新たに給気口4から取り込まれた空気とが加温部2で混合されて加熱されることで、ドラム型乾燥機1は省エネルギー的にも良好となり、低コストでの稼働が実現できる。
【0034】
続いて、ディスク22a,22bは軸受部17a及びスライドレール18aの間を自在に往復可能な構造であるため、稼働後にドラム10をスライドレール18a,18bに移動させることができる。ドラム10の周面には、開閉扉(図示せず)が設けられることから、これを開放することで容易に内部を清掃することが可能である。加えて、集塵フィルタ16が側板3cを貫通して挿入され、循環用送気口13の横断面に沿ってスライド可能な構造を成していることから、適宜これを取り外して清掃することが可能でメンテナンス性に優れている。従って、常に清潔な状態のドラム10を使用することができるため、商品を衛生的に製造可能となる。このような有利な効果は、固定式ドラムと比較すると明らかに優れているものである。
しかも、ドラム10の着脱は、4本の締付ボルト26a〜26dを締緩するという作業によって行われることから簡便であり、特にドラム10の軸受部17a,17bへの装着はドラム10全体を持ち上げる必要がないので、個人の使用者にとっても過大な負担にはならない。
【0035】
なお、本発明のドラム型乾燥機の構造は本実施例に示すものに限定されない。例えば、整流部材15は三角筒状の他、中実の柱状や平板状であっても良い。また、リフター27a〜27dの枚数は、4枚以外であっても良い。