特許第6010793号(P6010793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6010793卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010793
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 13/11 20060101AFI20161006BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B07B13/11 E
   G21F9/28 Z
   G21F9/28 511Z
   G21F9/28 B
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-2515(P2013-2515)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-133205(P2014-133205A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年11月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】711005259
【氏名又は名称】山本 建三
(72)【発明者】
【氏名】山本 建三
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−129487(JP,A)
【文献】 特開2004−275973(JP,A)
【文献】 特開2003−112124(JP,A)
【文献】 実開昭58−019789(JP,U)
【文献】 特開2001−315943(JP,A)
【文献】 特開平08−239112(JP,A)
【文献】 特開2001−158522(JP,A)
【文献】 特開2006−122826(JP,A)
【文献】 特開2005−349321(JP,A)
【文献】 特開平07−179216(JP,A)
【文献】 特開2004−250236(JP,A)
【文献】 特開2010−083648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 13/11,13/16
G21F 9/28
B65G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒体を投入する投入ホッパーとこの投入ホッパーから流下させた前記粉粒体を搬送する振動フィーダとその振動フィーダから搬送排出された粉粒体を貯留する清浄土貯留タンク及びホッパーと振動フィーダのトラフの内面に残留した粉粒体を貯留する分別貯留タンク及びホッパーから構成され、
且つ前記振動フィーダのトラフの内面はフッ素樹脂でコーティングされているとともに、而も該振動フィーダのトラフの最大加速度は重力加速度の10倍以上であって、
粉粒体を振動フィーダで搬送中に,卑金属及びその化合物を含む粉粒体と、振動フィーダのトラフの内面のフッ素樹脂と、の相互作用により発生する卑金属及びその化合物を含む粉粒体の搬送速度の低下と、卑金属及びその化合物を含まない粉粒体の搬送速度と、の搬送速度差を利用して、卑金属及びその化合物を含む粉粒体を前記振動フィーダのトラフの内面に残留させ、卑金属及びその化合物を含まない粉粒体を前記振動フィーダから排出させることで、卑金属及びその化合物を含む粉粒体と、卑金属及びその化合物を含まない粉粒体とを分別することにした、卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置。
【請求項2】
前記粉粒体は最大粒子径を75μm〜355μmとすることを特徴とする請求項1記載の卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置。
【請求項3】
前記振動フィーダの駆動周波数は200〜220ヘルツとし、周波数は可変とすること、且つ、振動強度を可変にすることを特徴とする請求項1、又は、請求項2に記載の卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置を用いて、前記粉粒体を投入ホッパーへ定量投入し、又は清浄土貯留タンク及びホッパー内の粉粒体を投入ホッパーへ投入し、振動フィーダによる搬送を経て、搬送排出された粉粒体を清浄土貯留タンク及びホッパーへ貯留すると共にトラフの内面に残留した粉粒体を分別貯留タンク及びホッパーへ貯留する分別工程において、分別貯留タンク及びホッパー内の粉粒体の累積質量と前分別工程の分別貯留タンク及びホッパー内の粉粒体の累積質量との質量差が所定量以下になるまで繰り返し行う分別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌に含まれる卑金属類を除染するものであり、粉粒体化された汚染土壌を振動フィーダで搬送し、その搬送過程で卑金属及びその化合物の化学的特性による搬送速度の低下を利用して選択的に分別するものであって、特に、汚染土壌から有害物質を除染し健全な土壌にすること、及び有用な資源を回収する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、企業の工場跡地などの再開発等に伴い、工業廃液等による土壌汚染が顕在化してきている。更には、放射性物質による土壌汚染などの問題もある。
これら有害物質による土壌汚染を放置すれば人の健康に影響を及ぼすことが懸念される。
【0003】
除染対策として、各種のものが提案され、対策されているものがある。
土壌を汚染する前に、工業廃液の段階で処理するものとして代表的なものは化学的に処理する方法(特許文献1参照)である。
既に汚染されてしまった場合で、工業廃液等による汚染土壌の場合には
1.汚染範囲を確定後、汚染土壌を掘削し、最終処分場へ搬出するなどの処理方法。
2.更に、有害な物質が水に溶け出さないように安全な無害薬剤を汚染土壌に混合するなどの処理方法。
3.又、汚染土壌を洗浄・分級して清浄土と汚染物資に分離することで対象物を取り出し場外搬出処理する方法が採られる。
即ち、土壌の場合には、以上のような方法で、汚染の除去が行われる。
一方、放射性物質による汚染の場合には
4.汚染物質を分別し可燃性物質は焼却し、不燃性物質は溶融することで減容化する方法(特許文献2参照)。
5.更に焼却灰等を破砕などの処理で減容した後にドラム缶に投入しセメント固化処理等が採用されている(特許文献3参照)。
以上の方法は、減容化による保管容積を小さくすることが目的である。
6.また、汚染物質を検出特定して放射線を吸収する物質を投入混合することで汚染物質の放射線危害を減少する方法が提案されている(特許文献4)。
この方法は、放射線物質の危害を低減化した後に減容化する方法である。
7.又、披汚染物体を粉砕し粉体にした後に、高温で燃焼することでガス化して放射性物質をフィルタにて吸収する方法が提案されている(特許文献5)。
この方法は、汚染物質としての放射性物質を分別して処理する方法である。
8.更には、生化学的な方法として、植物に吸収させる方法などが提案されている。
(従来技術の問題点)
【0004】
工業廃液の有害物質を化学的に溶液処理する方法では、回収すべき物質に対して特殊な選択性を持つ各種試薬を使用する。この試薬が高価なために商業的には相当な制限がある。
工業廃液等による汚染土壌の場合には
前記1.、2.の場合には、汚染範囲が特定され、更に限られた範囲内であれば対応することはできるが、汚染範囲の特定が困難な場合、またその範囲が広い場合には対応が困難となる。
又3.の場合には、汚染範囲が限られていて、その範囲が狭い場合には対応は可能となるが、商業的には相当高価なものになる。
【0005】
特に放射性物質の場合には、
4.、5.、6.、7.は、特定の隔離された場所にある放射性汚染物質の処理をする場合であり、特に、4.、5.、6.の場合には、有害物質の分別はされることなく減容するのが目的である。更に設備も大型化し商業的には相当高価なものになる。
7.の場合には、高温で燃焼し有害物質をガス化するなど、設備の大型化、更には耐熱対策などで、商業的には高価なものとなる。
8.の場合の具体的な事例としては、放射性セシウムを藻に吸着させるものであるが、現段階では、実験的なものであり、今後の課題であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭45−17884公報
【特許文献2】特開2009−192099公報
【特許文献3】特開平08−129100公報
【特許文献4】特開2010−78578公報
【特許文献5】特開2006−234620公報
【0007】
【特許文献6】実開 昭52−61087公報
【特許文献7】特開 昭62−4188公報
【特許文献8】特開2001−158522公報
【特許文献9】特開2006−44734公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JIS B 0601(1994)
【非特許文献2】塩路雄作:粉体工学研究会誌,14,282(1977)
【非特許文献3】中村忠春他:土壌物理性,No.52,2〜8(1985)
【非特許文献4】社団法人日本環境測定分析協会 土壌・水質技術委員会 :土壌分析方法の操作条件に関する検討(平成22年5月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
汚染土壌中から、有害物質の要素のひとつである卑金属及びその化合物を選択的に分別して取り出すことで土壌の健全化を図ると共に、分別された卑金属及びその化合物を有用な資源として再利用化を図ることである。そのために、汚染土壌中から、卑金属及びその化合物を選択的に分別して取り出す装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために発明者は、卑金属及びその化合物を含む所定粒径の粉粒体を振動フィーダで搬送し、その搬送過程でフッ素樹脂と卑金属及びその化合物との化学的特性により、搬送速度が低下することを見出すと共に、この特性が卑金属及びその化合物を選択的に分別する有効な手段になることを見出し発明を完成するに至った。
【0011】
上記課題を解決するための手段としての本発明は、卑金属及びその化合物を含む汚染土壌より生成された所定粒径の粉粒体から、卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置であって、この分別する装置は、前記粉粒体を投入する投入ホッパーとこの投入ホッパーから流下させた前記粉粒体を搬送する振動フィーダとその振動フィーダから搬送排出された粉粒体を貯留する清浄土貯留タンク及びホッパーと振動フィーダのトラフの内面に残留した粉粒体を貯留する分別貯留タンク及びホッパーから構成され、且つ前記振動フィーダのトラフの内面はフッ素樹脂でコーティングされているとともに、而も該振動フィーダのトラフの最大加速度は重力加速度の10倍以上であることを特徴とする卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置である。
【0012】
又、振動フィーダはトラフをステンレス(SUS304)板製で而もトラフの内面の表面粗さを算術平均表面粗さRa0.9程度に表面処理加工した後に、フッ素樹脂でコーティングしたことを特徴とする卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置である。
【0013】
又、粉粒体は最大粒子径を75μm〜355μmとすることを特徴とする卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置である。
【0014】
又、卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置を用いて、粉粒体を投入ホッパーへ定量投入し、又は清浄土貯留タンク及びホッパー内の粉粒体を投入ホッパーへ投入し、振動フィーダによる搬送を経て、搬送排出された粉粒体を清浄土貯留タンク及びホッパーへ貯留すると共にトラフの内面に残留した粉粒体を分別貯留タンク及びホッパーへ貯留する分別工程を所定回数繰り返し行う分別方法である。
【0015】
又、卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置を用いて、粉粒体を投入ホッパーへ定量投入し、又は清浄土貯留タンク及びホッパー内の粉粒体を投入ホッパーへ投入し、振動フィーダによる搬送を経て、搬送排出された粉粒体を清浄土貯留タンク及びホッパーへ貯留すると共にトラフの内面に残留した粉粒体を分別貯留タンク及びホッパーへ貯留する分別工程において、トラフの内面に残留した粉粒体と前分別工程のトラフの内面に残留した粉粒体との質量差が所定量以下になるまで繰り返し行う分別方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1により、実施例に示したように、所定粒径の粉粒体を振動フィーダで搬送すること及び振動フィーダのトラフの内面をフッ素樹脂でコーティングしたことにより、卑金属及びその化合物を含有する粉粒体の搬送速度が低下するので、卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別することができる。
【0017】
請求項2により、振動フィーダのトラフをステンレス(SUS304)板製で而もトラフの内面の表面粗さを算術平均表面粗さRa0.9程度に表面処理加工した後に、フッ素樹脂でコーティングしたことにより、粉粒体の付着性が改善されたことでトラフの内面に残留する卑金属及びその化合物を含有する粉粒体以外の粉粒体を減少させることができるので精度の高い分別ができる。
【0018】
請求項3により、粉粒体の最大粒子径を75μm〜355μmとすることで、振動フィーダの加振力による粉粒体間の相互作用が活発になること及び卑金属及びその化合物を含有する粉粒体とフッ素樹脂との相互作用が活発になることで化学的特性を効率的に現出できるので、効率的な分別ができる。
【0019】
請求項4により、粉粒体を投入ホッパーへ定量投入し、分別工程を所定回数繰り返すだけで、計量や分析などの工程を利用することなく簡便な分別ができる。
【0020】
請求項5により、粉粒体を投入ホッパーへ定量投入し、各分別工程毎に分別貯留タンク及びホッパーの質量を計量し、前分別工程時との質量差を調べることで
1.別の進捗状況を把握しながら
2.さらに、バッジ処理される粉粒体に含有される卑金属及びその化合物が一様に分布していなくても分別できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の卑金属とその化合物を選択的に分別する装置を含む汚染土壌システムの全体構成
図2】本発明の卑金属とその化合物を選択的に分別する装置の全体構成
図3】本発明の卑金属とその化合物を選択的に分別する装置と補助装置
図4】振動フィーダ
図5】投入ホッパーの設置高さ調整図
図6】トラフ構造
図7】貯留ホッパー切替え装置配置図
図8】貯留ホッパー切替え装置の断面図
図9】掻き寄せ搬送装置
図10】所定回数繰返し分別方法のフロー図
図11】計量判定方式の分別方法のフロー図
図12】搬送テスト粉粒体の流下量と振動フィーダ運転時間とのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置及び方法を実施するための最良の形態として、図を参照しながら説明する。
【0023】
図1は本発明の卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置を含む汚染土壌処理システムの全体構成を示すものである。システム構成は、汚染土壌A,粉砕統合工程B,分別工程C、搬送工程Dで構成されている。以下、各工程の概要について説明する。
以下、本発明の卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する装置を本発明の分別装置と呼称とする。
【0024】
汚染土壌Aとは、工業廃液等により汚染された土壌、更には各種廃棄物等の焼却灰、又放射性物質の降灰物により汚染された土壌及びそれらの混成汚染土壌がある。
前記汚染土壌を再生のためには、先ずこれらの汚染土壌を公知の分析機で汚染物質の成分とその含有率を質量%で求めること、更に、本発明の分別装置にて分別可能な卑金属及びその化合物に適合していることが必要である。
更に、その汚染範囲を特定し、汚染処理対象土壌を、掘削装置などで掘削すると共に、中小礫、木片などを取り除き、団粒程度まで破砕されているものとする。
【0025】
粉砕統合工程Bとは、一般的には、乾燥工程B−1、粉砕工程B−2、分級工程B−3を経て所定粒径の粉粒体を生成するものである。
先ず乾燥工程B−1では、小規模のものであれば、自然乾燥できるのであれば風乾、または強制乾燥ならば105℃での炉乾燥が望ましい(非特許文献3、非特許文献4参照)。
商業的、工業的な乾燥では公知の乾燥機を利用すればよい。
また粉砕工程B−2では、公知の粉砕機としてボールミルなどが利用される。
更に分級工程B−3では、公知の分級機またはふるい振とう機により所定粒径に分級された粉粒体となされる。
粉粒体の最大粒径は75〜355μmとするのがよい。
更に、上記いずれかの工程内にて攪拌による粉粒体の一様化を図るのがよい。
【0026】
分別工程Cの基本構成は、粉砕統合工程Bで生成された粉粒体を投入する投入ホッパーとこの投入ホッパーから流下させた前記粉粒体を搬送する振動フィーダとその振動フィーダから搬送排出された粉粒体を貯留する清浄土貯留タンク及びホッパーと振動フィーダのトラフの内面に残留した粉粒体を貯留する分別貯留タンク及びホッパーから構成される。
該残留した粉粒体の大半は卑金属及びその化合物を含む粉粒体で構成されている。
更に、補助的装置として、投入ホッパーを支持する投入ホッパー支持装置、又前記清浄土貯留タンク及びホッパーと分別した粉粒体を貯留する分別貯留タンク及びホッパーの配置を切り替えるための貯留ホッパー切替え装置、更には、トラフ端にて搬送粉粒体の流下状態を監視する流動監視検出器がある。
又、図3に示すように、掻き寄せ搬送装置9を装備することもできる。
更に、本発明の分別装置の制御装置3があるが、公知の一般的な制御装置で達成できるので説明を省略する。
【0027】
搬送工程Dとは、分別工程Cで得られた清浄土を分析検査して、埋戻し用土、又は別途分別処理用土として一時的に保管されると共に、分別貯留された分別卑金属類、即ち卑金属及びその化合物は有用資源として一時的に保管される。
清浄土は、サンプル粉粒体を取り出し、公知の分析機により分析し、その分析結果に基づいて、以下の処理が行われる。
1)目的とした分別が完了している場合
埋戻し用土として一時的に貯蔵保管する。
2)汚染物質が分別されていない場合
別途分別処理用土などのために一時的に保管される。
【0028】
(発明1)
以下、本発明の分別装置および方法について図を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明の分別装置の全体構成を示すものである。該分別装置の基本的な構成は、粉粒体を投入するホッパー1、振動フィーダ4及び、搬送排出された粉粒体を貯留する清浄土貯留タンク及びホッパー5と振動フィーダ4のトラフの内面23に残留した粉粒体10を貯留する分別貯留タンク及びホッパー6より構成される。
更に補助的な装置として、投入ホッパー支持装置2、貯留ホッパー切替え装置7、更には、流動監視検出器8がある。
以下、粉粒体の流れに沿って構成を説明する。
【0030】
粉粒体10を投入する投入ホッパー1は、ホッパーベース19により支持されている。 又、ホッパーベース19はホッパー架台18の上に固定されていると共に、ホッパー架台18は高さを調整できる構造になっている。
投入ホッパー1の設置で注意すべきことは、図5に示すように、ホッパー出口部の下面22とトラフの内面23との隙間21を1〜3mmに調整することである。
この隙間21は、粉粒体10の搬送量を調整するものであり、汚染土壌に含有されている成分の特性及び粉粒体10の粒径に対応して搬送量を調整する必要があり、予備実験にて、ホッパー出口部の下面22とトラフの内面23との隙間21は実験的に定めることが必要である。
又、本発明の分別装置はバッジ処理方式に対応したものであり、初回の粉粒体10を投入ホッパー1への投入するときはホッパー内面に付されている目盛線20を基準にして投入される。
ここで、ホッパーとは粉粒体を一時的に貯留し、必要に応じて搬出する装置であって、一般的な箱型形状で下部が漏斗状になったものであり、底部の蓋を開閉できる構造になっている。但し、投入ホッパー1は底部に蓋がついていないものを使用している。材質は、耐久性、耐腐食性からステンレス(SUS304)製が望ましい。
一方、タンクとは粉粒体の貯蔵、運搬を主体的に行う容器として使用するものとした。
【0031】
本発明の分別装置に採用する振動フィーダ4の振動源は圧電素子形であり、圧電素子を振動源とした振動フィーダは特許文献6によって既に公知である。そこで、その駆動部を図4に基づいて概要のみ説明する。
11は基台、12はこの基台11に支持された下枠、13はこの下枠12に互いに平行で且つ傾斜して立ち上がる2本の板ばね14を介して水平に支持された上枠、15は搬送物である粉粒体10を載せるトラフで、上枠13に支持されている。
17は前記各板ばね14に貼着等により取付けられた圧電素子であり、各板ばね14とこれに貼着した圧電素子17とで加振体たるバイモルフ16を形成しており、その圧電素子17に交流電圧を印加して励振すると、各圧電素子17は正の半サイクルで伸び、負の半サイクルで縮む運動を行うから、それぞれの圧電素子17に印加する電圧を半サイクルずらせばその片持型バイモルフ構造によって前記伸縮運動が撓み運動に変換されて、これら板ばね14と下枠12との連結部を支点としてθ方向に振動してトラフ15をS方向に振動させる。これにより搬送物である粉粒体10が斜め上方に振動され搬送物である粉粒体10は矢印X+方向に搬送される。
【0032】
また、振動フィーダ4のトラフ15について図6に基づいて説明する。
トラフの形状は、断面形状が凹型の箱型であり、トラフ材質は、耐久性、耐腐食性などを考慮してステンレス(SUS304)板製が望ましい。該トラフの内面23の表面処理は、ブラスト処理後にフッ素樹脂のコーティング処理を行ったものである。
1.ブラスト処理
ステンレス(SUS304)板25でトラフ15の所望形状に成形した後に、トラフの内側の面をブラスト処理にて表面処理加工する。そのブラスト処理の仕様は、トラフの内面23の表面粗さは算術平均粗さRa0.9程度に、更に最大高さ粗さRz6.6程度でばらつきが±0.5μmにすることが望ましいこと、及び上記表面粗さを達成するブラスト処理方法は特許文献8に述べられている。
又、今ひとつの方法は特許文献8に対してブラスト処理後に電解研磨を行う方法でもよい。表面粗さについては非特許文献1を参照。
2.フッ素樹脂のコーティング処理
代表的なコーティング方式には
1)焼付けコーティング方式
2)複合めっき方式
無電解ニッケルめっきと四フッ化エチレン樹脂を処理液中で共析させて熱処理を行い強固に密着させたものである。
ここでは公知の複合めっき方式を採用する。その膜厚は10±5μmとする。その目的は、四フッ化エチレン樹脂の成形膜の導電性により、粉粒体のトラフの内面23への付着防止と耐久性を重視するためである。
【0033】
粉粒体の分別搬送後の処理について図3に基づいて説明する。
振動フィーダ4のトラフ端24から流下した粉粒体10を貯留する清浄土貯留タンク及びホッパー5、振動フィーダのトラフの内面23に残留した粉粒体10を貯留する分別貯留タンク及びホッパー6より構成される。
更に、補助的装置として上記清浄土貯留タンク及びホッパー5と分別した粉粒体を貯留する分別貯留タンク及びホッパー6の配置を切り替えるための貯留ホッパー切替え装置7、更には、トラフ端24にて搬送粉粒体10の流下状態を監視する流動監視検出器8がある。
又、図3に示すように、掻き寄せ搬送装置9を装備することもできる。
【0034】
1)投入ホッパー支持装置2
投入ホッパー支持装置2は、ホッパー架台18とホッパーベース19とから構成されている。ホッパーベース19は投入ホッパー1を支持するものであり、ホッパー架台18の上に固定されていると共に、ホッパー架台18は高さを調整できる構造のものである。
粉粒体10を投入する投入ホッパー1は、ホッパーベース19により支持されていることで、投入ホッパー出口部の下面22とトラフの内面23との隙間21を調整することができるようになっている。
又、図5図2のA−A断面図)のホッパーベース19は投入ホッパー1内の粉粒体10の質量を計量する必要がある場合の特殊例のホッパーベース19を示している。ホッパーベース19は、ホッパーサポート50、ドーナツ形質量計51、シングルホッパーベース53から構成されていると共にドーナツ形質量計51に対応する円形溝を基準にして同心状に積層された構造であると同時に回転止めがなされている。
質量計測の必要がない場合には、ホッパーベース19は、ホッパーサポート50、ドーナツ形荷重計51、シングルホッパーベース53が一体型の一部品である。
【0035】
2)貯留ホッパー切替え装置7
貯留ホッパー切替え装置7はスライドベース26、スライダ27、ダブルホッパーベース28で構成され、ダブルホッパーベース28には、清浄土貯留タンク及びホッパー5と分別貯留タンク及びホッパー6が保持される。
ダブルホッパーベース28はスライダ27に固定されて、スライドベース26上をY方向に移動できる構造になっている。
スライダ27がY−方向の移動端にあるときが貯留ホッパー切替え装置7の初期位置であり、振動フィーダ4のトラフ端24と清浄土貯留タンク及びホッパー5の中心が一致する配置である。又、スライダ27がY+方向の移動端にあるときは振動フィーダ4のトラフ端24と分別貯留タンク及びホッパー6の中心が一致する配置である。
貯留ホッパー切替装置7の操作は、振動フィーダ4を駆動する前に、振動フィーダ4から排出される粉粒体10を受け入れるために清浄土貯留タンク及びホッパーを初期位置へ位置決め配置すると共に、振動フィーダ4の駆動停止後は、トラフの内面23に残留する粉粒体10を受け入れるためにスライダ27をY+方向へ移動し移動端に位置決め配置する。更に、トラフの内面23に残留する粉粒体10を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入が完了後は、スライダ27をY−方向へ移動し、スライダ27を初期位置に配置するものである。
図7図8図7のC−C断面図)のダブルホッパーベース28は各貯留タンク及びホッパー内の粉粒体の質量を計量する必要がある場合のダブルホッパーベース28を示している。
ダブルホッパーベース28は、ホッパーサポート50、ドーナツ形質量計51、ダブルホッパーサポートベース54から構成されていると共に各貯留タンク及びホッパーに対応してドーナツ形質量計51に対応する円形溝を基準にして同心状に積層された構造であると同時に回転止めがなされている。更に、計量の必要がない貯留タンク及びホッパーに対しては、ドーナツ形質量計51と同一形状のダミー部品52(図示していない)に置換すればよい。
【0036】
3)流動監視検出器8
振動フィーダ4の駆動中に粉粒体10がトラフ端24から流下している状態を監視するためのものであり、流動監視検出器8は、一般的な透過型光電センサーが利用される。即ち、投光器と受光器とを対向配置し、この間を物体が通過すると投射光が遮光され受光器に入射する光量が変化することを利用して物体検出信号を得るものである。
ここでは、トラフ端24から流下する粉粒体10が検出対象の物体となることで流動監視検出器8の光量が遮光されることにより粉粒体10の流下状態を検出するもので、遮光が極めて低くなると粉粒体10の流下がなくなったものとして、振動フィーダ4を停止するための信号と得る手段として利用するものである。
【0037】
4)掻き寄せ搬送装置9
図3に本発明の分別装置に並行して設置された掻き寄せ搬送装置9を示す。
該掻き寄せ搬送装置9は、ガイドレール30、キャリア31、スイングアーム32、へラ33で構成されている。
該装置は、トラフの内面23に残留した粉粒体を強制的に分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入すると共に、トラフの内面23の清浄化を行うものである。
その操作方法を、図9に基づいて説明する。
スイングアーム32のホームポジションはP1である。
トラフの内面23に残留した粉粒体を強制的に分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入する又はトラフの内面23の清浄化を行う一巡操作は
1.P1→P2:スイングアーム32をS1+方向に回動し、ヘラ33をトラフの内面23に密着させた状態にする。
2.P2→P3:キャリア31をX+方向へ移動させてトラフの内面23に残留する粉粒体を強制的に分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入させる。
3.P3→P4:搬送投入後、スイングアーム32をS1−方向に回動する。
4.P4→P1:キャリア31をX+方向へ移動させて初期状態に戻す。
この操作を2〜3回繰返すことで、トラフの内面23に残留する粉粒体を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入すると共に、トラフの内面23の清浄化を行うものである。
【0038】
図10は、本発明の分別装置を用いて所定回数繰返し分別方法のフロー図である。
粉砕工程で所定の粒径に分級された粉粒体10を投入ホッパー1の目盛線20まで投入する。定量投入方式で、バッチ処理を基本とし、分別目標繰返し回数が目標値に達するまで、分別工程を繰り返し行うものである。
この繰り返し回数は、事前に実験的に求めておくことが必要である。
【0039】
分別工程とは、
1.制御装置3の繰返しカウンタに分別目標繰返し回数をセットする。
2.粉粒体10の投入が完了すると、振動フィーダ4を駆動する。
粉粒体10は、トラフの先端方向、即ちX+方向へ搬送が開始されると共に、搬送が継続される。
3.トラフ端24に設置された流動監視検出器8、又は目視により粉粒体の流下状態を監視し
1)粉粒体10の流下がほぼなくなると、振動フィーダ4の駆動を停止する。
2)粉粒体10の流下が継続している場合には、清浄土貯留タンク及びホッパー5へ流入する。
流動監視検出器8は、流下量の判定ができるように事前に調整されていることが必要である。
4.振動フィーダ4を停止した後は、
1)貯留ホッパー切替装置7により、スライダ27をY+方向へ移動し、分別貯留タンクおよびホッパー6を位置決めする。
2)制御装置3の繰返しカウンタを減算する。
3)振動フィーダ4のトラフの内面23の残留する粉粒体を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入する。
搬送投入する方法は、
イ)振動フィーダ4のトラフの内面23をシリコンゴム製のヘラなどで清浄しながら残留物を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入する。
ロ)又は、掻き寄せ搬送装置9で、トラフの内面23の残留する粉粒体を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入すると共に、トラフの内面23の清浄化を行う。
トラフの内面23を常に清浄化することで、化学特性の活性化を図る。
5.制御装置3の繰返しカウンタの確認検査
繰返しカウンタ値は目標値の0に到達したか。
1)繰返しカウンタ値が0でない場合
イ)清浄土貯留タンクおよびホッパー5の粉粒体を投入ホッパー1へ搬送し投入する。
ロ)2.の工程へ進む
2)繰返しカウンタ値が0の場合
イ)清浄土貯留タンク及びホッパー5の粉粒体10を次の搬送工程Dへ搬送する。
ロ)分別貯留タンク及びホッパー6の粉粒体を次の搬送工程Dへ搬送する。
ハ)貯留ホッパー切替え装置7を初期状態へ戻す。
【0040】
上記の工程1.〜5.を経て、清浄土は清浄土貯留タンク及びホッパー5へ、卑金属類、即ち卑金属及びその化合物は分別貯留タンク及びホッパー6へ分別貯留される。
又、バッジ処理を繰返し実施することで、汚染土壌の処理が可能となるのである。
【0041】
(発明2)
本発明2は、発明1の分別工程の所定回数繰返し分別方法から、分別粉粒体の質量を計量し、目標値の公差内に入るか、又は分別粉粒体の累積計量値が飽和状態に達するまで分別工程を繰返す方法である。
発明1より構造的な追加装置は
1)投入ホッパー1に投入された粉粒体10の質量を計量する手段を設ける。
補完機能として目標分別質量を求めるためのものである。
投入ホッパー支持装置2を参照
2)分別貯留された粉粒体の質量を計量する手段を設ける。
貯留ホッパー切替え装置7を参照
制御的には
イ)初期分析と投入ホッパー1へ投入された粉粒体10の質量から
分別量の目標値を求めること、目標値算出方法は、本発明の分別装置で分別可能な成分の質量%と投入する粉粒体10の質量との積である。
ロ)分別貯留タンク及びホッパー6で分別粉粒体の質量を計測する。
分別累積質量値の収束状態から飽和状態を検出判断する
上記いずれかの検出に基づいて分別工程の繰返しを終了することである。
分別工程内の作業は
発明1のカウンタに対して、発明2では計量演算作業になっただけである。
その他の工程内作業は同じである。
又次工程の搬送工程Dも全く同じである。
【0042】
図11の計量判定方式の分別方法のフロー図を参照しながら説明する
1.粉砕統合工程Bで所定の粒径に分級された粉粒体10の質量を計量する。
ここで、分別される卑金属及びその化合物の目標質量を求める。
2.計量された粉粒体10を、投入ホッパー1へ投入する。
3.投入が完了すると、振動フィーダ4を駆動する。
粉粒体10は、トラフの先端方向、即ちX+方向へ搬送が開始されると共に、搬送が継続される。
4.トラフ端24に設置された流動監視検出器8、又は目視により粉粒体の流下状態を監視し
1)粉粒体10の流下がほぼなくなると、振動フィーダ4の駆動を停止する。
2)粉粒体10の流下が継続している場合には、清浄土貯留タンク及びホッパー5へ流入する。
流動監視検出器8は、流下量の判定ができるように事前に調整されていることが必要である。
5.振動フィーダ4を停止した後は、
1)貯留ホッパー切替え装置7により、スライダ27をY+方向へ移動し、分別貯留タンクおよびホッパー6を位置決めする。
2)振動フィーダ4のトラフの内面23の残留物を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入する。
搬送投入する方法は、
イ)振動フィーダ4のトラフの内面23をシリコンゴム製のヘラなどで清浄しながら残留する粉粒体を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入する。
ロ)又は、掻き寄せ搬送装置9で、トラフの内面23の残留する粉粒体を分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入すると共に、トラフの内面23の清浄化を行う。
トラフの内面23を常に清浄化することで、化学特性の活性化を図る。
6.分別貯留タンク及びホッパー6へ投入された分別された粉粒体の質量を計量する。
1.工程で求めた分別される卑金属及びその化合物の目標質量とこの分別貯留タンク及びホッパー6へ搬送投入された粉粒体の質量とを比較し、目標値への到達の有無にて次工程の処理を行う。
7.4.工程の清浄土貯留タンク及びホッパー6へ流入した粉粒体は以下の如く処理する。
1)目標値に到達していないときには、この粉粒体は2.工程の投入ホッパー1へ投入する。
2)一方、目標値に到達している場合には、次工程の搬送工程Dに進む。
【0043】
上記の工程1.〜7.を経て、清浄土は清浄土貯留タンク及びホッパー5へ、卑金属類、即ち卑金属及びその化合物は分別貯留タンク及びホッパー6へ分別貯留される。
又、バッジ処理を繰返し実施することで、汚染土壌の処理が可能となるのである。
以下に、本発明の機能及び効果を裏付けるために実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0044】
本発明の卑金属及びその化合物を含む粉粒体を選択的に分別する機能について明らかにするために、先ず、2種類のトラフ、即ちトラフA(フッ素コーティング無)とトラフB(フッ素コーティング有)を用いて、粉粒体を振動フィーダで搬送したときにその搬送速度がトラフの表面処理によりどのような影響を受けるかを比較する実験を行った。
【0045】
1)実験条件
1.トラフの表面処理
【表1】
*複合めっきとは、無電解ニッケルめっきと四フッ化エチレン樹脂を処理液中で共析させて熱処理を行い強固に密着させたものである。
2.搬送テスト粉粒体
【表2】
搬送テスト粉粒体には、医薬品を使用した。
そこで、性状は、医薬品付属の添付文書より転載した。
又、性状の参考として非特許文献2を参照。
融点についてはウィキペディア(Wikipedia)より転載した。
3.実験環境
温度:22〜23℃、湿度:37〜44%
実験場所:事務所レベル
4.実験機
分包機(湯山製作所製 全自動散薬分包機 Single_R93z)
5.実験機の運転条件
イ)振動フィーダの駆動周波数は200〜220Hz
ロ)実験機の運転条件の可変部分について
各搬送テスト粉粒体に対して、搬送がスムーズになるように振動強度を変更した。
*振動強度の変更とは、圧電素子への印加電圧を可変したことである。
*スムーズな搬送とは、トラフの内面へ搬送テスト粉粒体が一様に分布して搬送される状態である。
6.測定
搬送テスト粉粒体を投入ホッパーに投入後、実験機のスタート釦を押してから、搬送テスト粉粒体がトラフから搬送排出され、実験機の作業完了信号が発生するまでの時間、即ち配分時間をストップウォッチで計測した。
*配分時間は、図12の搬送テスト粉粒体の流下量と振動フィーダ運転時間とのグラフの時間軸上のt7のことである。
7.実験手順
イ)実験機の操作は、投入ホッパーへ搬送テスト粉粒体を投入し実験機のスタート釦を押す。
ロ)配分された搬送テスト粉粒体を回収する。
更に、ホッパー、トラフを清浄する(空雑巾で拭く)。
ハ)実験回数は各3回とする。
ニ)搬送テスト粉粒体は各5gとする。
搬送テスト粉粒体は、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、タカジアスターゼ・生薬配合剤散、ビフィズス菌製剤散
【0046】
2)実験結果
【表3】
イ)沈降炭酸カルシウムの場合には、四フッ化エチレン樹脂の影響を受けて配分時間が長くなっている。即ち、搬送速度が遅くなっている。
ロ)乳酸カルシウムの場合には、四フッ化エチレン樹脂の影響を受けて配分時間は短くなっている。
乳酸カルシウムは融点が低いために部分的に軟化が発生しても、四フッ化エチレン樹脂の特性として付着性が低い影響が出ているものと推測できる。
ハ)タカジアスターゼ・生薬配合剤散とビフィズス菌製剤散の場合には、四フッ化エチレン樹脂の影響は顕著には見られない。
この両テスト粉粒体は、ともに散剤であり、粒径が大きいこと、更に、医薬原末以外の添加剤を多量に含有していることなどによるものと推察される。
【実施例2】
【0047】
更に、温度の影響が懸念される。そこで、温度の影響を検証する実験を行った。トラフの表面処理による影響に温度の影響を加味した比較実験を行った。
【0048】
1)実験条件
1.トラフの表面処理
実施例1と同様である。
2.実験用搬送テスト粉粒体
搬送テスト粉粒体は、重質炭酸マグネシウム(表2参照)。
3.実験環境
実施例1と同様である。
4.実験機
実施例1と同様である。
5.実験機の運転条件
実施例1と同様である。又、搬送テスト粉粒体は単一なので、可変部分は実験中に変更はない。
6.測定
実施例1と同様である。
7.実験手順
イ)実験機の操作は、投入ホッパーへ搬送テスト粉粒体を投入し
実験機のスタート釦を押す。
ロ)配分された搬送テスト粉粒体を回収する。
更に、ホッパー、トラフを清浄する(空雑巾で拭く)。
ハ)実験は約5分間隔で連続して繰返し行う。
ニ)搬送テスト粉粒体は10gとする。
【0049】
2)実験結果
【表4】
*性状、融点は表2を参照
イ)重質炭酸マグネシウムの場合には、実験回数を重ねると、配分時間が長くなる。これは重質炭酸マグネシウムと四フッ化エチレン樹脂ともに温度が上昇しているためと推察される。
*30分程度の休息時間後に、再度実験を行うと、配分時間は初期状態に戻る。従って、温度の影響を受けているものと推察できる。
【0050】
以上2つの実施例より、
一般的には、フッ素樹脂は、有機物、無機物に対して何の反応もしないと云われているが、実施例からは顕著な影響が見られる。即ち、粉粒体の配分時間が影響を受けている。
これは、
1.粉粒体の物性に基づくものと
2.粉粒体とフッ素樹脂との温度の影響によるものである。
イ)無機物の場合
沈降炭酸カルシウム、重質炭酸マグネシウムは共に、融点も低くはなく、振動フィーダによる攪拌により、粉粒体間の相互作用及び粉粒体とフッ素樹脂との相互作用で温度が上昇するために、これらアルカリ金属系、アルカリ土類金属系及びそれらの化合物の粉粒体はフッ素樹脂との化学的作用が発生し、粉粒体の流動速度が低下することで、トラフの内面に残留する粉粒体になるものと思われる。
実験の範囲は限定的であるが、この化学的作用は、イオン化傾向の大きなものほどその作用が顕著に現れるものと思われる。
ロ)有機物の場合、融点の低いものについては、付着性が現れるものがあるが、フッ素樹脂は非粘着性的に作用する。
【0051】
本発明の分別装置の機能を十分に発揮させるための方策として、以下の結論が得られることを見出した。
即ち、本装置の機能を十分に発揮させるためには、
1)汚染土壌を粉粒体とし、その最大粒径を75〜355μmにすること
イ)355μmの制限は、非特許文献2に述べられているように、粉粒体の最大粒径が355μm以下ならば物性上は粉末の性能をもっていることによる。
ロ)更に、粉粒体の粒径が小さいほど化学的特性が活発になることは想定できるが、75μmの制限を設けた理由は、粉粒体の扱いやすさを考慮したことによるものである。
2)トラフの加速度を大きくすること
特許文献8には、トラフの最大加速度は重力加速度の10倍以上にするのがよいことが示されている。加速度を大きくすることにより、粉粒体を攪拌することで粉粒体間の相互作用及び粉粒体とフッ素樹脂との相互作用が活発になり、粉粒体とフッ素樹脂の温度上昇を図るものである。
3)トラフの内面の粉粒体の搬送時の層厚を1〜2mm程度に押えること
粉粒体と四フッ化エチレン樹脂との接触機会を多くすることである。
これを達成する手段は、投入ホッパーの設定高さ調整によるものであり、本発明の分別装置の運転調整時に行われるものである。
4)強制振動形の振動フィーダを採用すること
実施例では、振動フィーダの駆動周波数は200〜220Hzで行った。
各搬送テスト粉粒体に対して、搬送がスムーズになるように振動強度を変更したが、粉粒体の成分及び粒径によりその流動特性が異なるために振動強度の変更を行わざるを得なかった。
この問題に対処するためには、粉粒体の成分及び粒径に対応して振動フィーダの駆動周波数を可変にするのがよい。
固有の駆動周波数しか対応ができなければ、一台の分別装置で汚染土壌中に含まれる各種の卑金属及びその化合物を分別するには特性的に似通ったものしか分別はできない。
一方、各種の振動周波数に対応した分別装置が利用できれば各化学特性に基づいた粉粒体を分離することが可能になるものと推定される。
【符号の説明】
【0052】
1 投入ホッパー
2 投入ホッパー支持装置
4 振動フィーダ
5 清浄土貯留タンク及びホッパー
6 分別貯留用タンク及びホッパーホッパー
7 貯留ホッパー切替え装置
8 流動監視検出器
9 掻き寄せ搬送装置
10 粉粒体
15 トラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12