特許第6010794号(P6010794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010794
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】手術用ジグ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/90 20060101AFI20161006BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   A61B17/90
   A61F2/46
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-159968(P2012-159968)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-18437(P2014-18437A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】505351979
【氏名又は名称】バイオメット・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】金粕 浩一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和昭
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−521384(JP,A)
【文献】 特開2012−139304(JP,A)
【文献】 特開2012−029769(JP,A)
【文献】 特表2009−525824(JP,A)
【文献】 特表2006−510403(JP,A)
【文献】 特表2005−536299(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/125576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/90
A61B 17/56
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
に取付けられる手術用ジグであって、
に取付けられるジグ本体と、
前記ジグ本体に取付けられた指示部と、
皮膚の基準位置に取付けられる基準マーカーと、を有し、
前記基準マーカーは、第1の磁石を有し、前記指示部は、第2の磁石を有し、前記第2の磁石を前記第1の磁石に吸着させることによって、前記ジグ本体が前記基準位置に対して位置合わせされることを特徴とする手術用ジグ。
【請求項2】
前記指示部は、前記ジグ本体から延びる第1のロッドと、前記第1のロッドに回転可能に取付けられた第2のロッドを有し、前記第2の磁石は、前記第2のロッドの先端に配置されることを特徴とする請求項1に記載の手術用ジグ。
【請求項3】
前記第2のロッドは、伸縮可能であることを特徴とする請求項2に記載の手術用ジグ。
【請求項4】
前記第1の磁石及び前記第2の磁石はそれぞれ、軸線を有する円筒形であり、吸着するときに互いに前記軸線方向に整列することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の手術用ジグ。
【請求項5】
前記基準マーカーは、前記第1の磁石の周りに同心に配置された放射線不透過性リングを有することを特徴とする請求項4に記載の手術用ジグ。
【請求項6】
前記手術用ジグは、人工膝関節設置術用ジグであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の手術用ジグ。
【請求項7】
前記ジグ本体は、大腿骨の膝蓋面及び/又は顆間窩に形成された溝に保持可能な取付けベースと、大腿骨の前後方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に前記取付けベースに取付けられた回動ホルダと、を有し、
前記指示部は、前記回動ホルダに保持され且つ大腿骨の近位方向に延びる骨頭指示部を有し、
前記ジグ本体は、更に、前記回動ホルダに保持され且つ大腿骨遠位端部の前部に当接するように構成された当接ガイドを有することを特徴とする請求項6に記載の手術用ジグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術用のジグに関し、詳細には、人工膝関節設置術等の外科手術において身体に取付けられる手術用ジグに関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術において、骨を切除したり、骨に孔をあけたりするために、身体に取付けられるジグが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。ジグの位置合わせが常に正確であれば、精度の高い手術が可能であり、その結果、患者に対してばらつきのない手術が可能になる。この例を、人工膝関節設置術用ジグを参照して説明する。
【0003】
膝の軟骨がすり切れることにより変形性関節症又は慢性リウマチ等になった患者の治療に人工膝関節が使用されることがある。図10は、人工膝関節を設置した左脚の大腿骨及び脛骨を示す概略的な側面断面図である。図10に示すように、人工膝関節100は、脛骨Tの近位端部Teに固定される脛骨トレイ102及びサーフェスライナ104と、大腿骨Fの遠位端部Feを覆うように大腿骨Fに固定される大腿骨コンポーネント106を有している。場合によって、脛骨トレイ102と脛骨Tの間にスペーサ(図示せず)が挿入される。大腿骨Fと脛骨Tとは、主に、その左右両側に配置された靭帯(図示せず)によって連結され且つ互いに引っ張られており、それにより、大腿骨コンポーネント106は、サーフェスライナ104に押付けられている。人工膝関節100では、膝を、曲げた位置(屈曲位)と伸ばした位置(伸展位)との間で動かすと、大腿骨コンポーネント106がサーフェスライナ104に沿って摺動する。
【0004】
図11は、人工膝関節を設置するために部分的に切除された左脚の脛骨及び大腿骨を示す概略的な側面図である。図11に示すように、脛骨近位端部Teは、すり切れた軟骨を除去するために、且つ、脛骨トレイ102を脛骨Tに固定するための設置面、すなわち、近位端面Tcを形成するために切除されている。同様に、大腿骨遠位端部Feは、すり切れた軟骨を除去するために、且つ、大腿骨コンポーネント106を大腿骨Fに固定するための5つの設置面Fc1〜Fc5を形成するために切除されている。5つの設置面は、遠位端面Fc1と、遠位端面Fc1に対して垂直な前設置面Fc2及び後設置面Fc3と、遠位端面Fc1と前設置面Fc2及び後設置面Fc3との間の2つの傾斜設置面Fc4、Fc5である。
【0005】
人工膝関節を、患者に適した向きに設置するために、設置面Fc1〜Fc5を適切な方向に形成すること、すなわち、骨を適切な方向に切除する必要がある。骨を切除する(骨切りする)適切な方向を決定するために、人工膝関節設置術用のジグが用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。従来のジグでは、大腿骨の遠位端から髄腔内に挿入したロッドの位置をジグの位置合わせの基準にして、設置面の適切な方向、すなわち、適切な骨切り方向を決定していた。例えば、髄腔内に挿入したロッドの位置をジグの位置合わせの基準にして、骨切りガイドを大腿骨遠位端部Feに適切な方向で固定し、骨切りガイドのガイド面に沿ってブレードカッタを案内し、骨切りを行っていた。
【0006】
また、髄腔内にロッドを挿入する向きを決める際、患者の外部に外部ロッドを設け、手術中に外部ロッドと大腿骨の位置関係を確認しながら、外部ロッドを大腿骨骨頭に位置合わせをすることも行われていた(特許文献2参照)。
【0007】
ジグの位置合わせが正確であれば、骨を適切な方向に切除することができ、精度の高い手術が可能になる。その結果、例えば人工膝関節設置術において、ジグの正確な位置合わせを行うことにより、患者に対してばらつきのない手術が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平11−504532号公報
【特許文献2】米国特許第5735904号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
外部ロッドを大腿骨骨頭に位置合わせする際、目視によって基準を合わせるので、例えば経験の少ない医師の場合、外部のロッドの位置合わせにばらつきが生じることがあった。その結果、ジグ自体の位置合わせにばらつきが生じ、患者に対する手術のばらつきが生じることがあった。
【0010】
また、人工膝関節設置術において、ロッドを大腿骨の遠位端から髄腔内に挿入することが好ましくない症例がある。例えば、大腿骨骨幹部の湾曲が大きいためにロッドを深く挿入できない症例、人工股関節などのインプラントが髄腔内に埋没しているために大腿骨髄腔内にロッドを挿入するスペースがない症例、大腿骨髄腔内にロッドを挿入することによって血栓等による合併症が予想される症例等である。これらの症例では、ロッドを基準にして適切な骨切方向を決定することができないため、適切な骨切り方向は、経験が豊富な医師の技術に頼るところが大きくなる。したがって、人工膝関節設置術の経験の少ない医師であっても、かかる症例において適切な骨切り方向を決定できるジグが望まれる。
【0011】
そこで、本発明の第1の目的は、位置合わせのばらつきを少なくすることができる手術用ジグを提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、人工膝関節設置術において、大腿骨髄腔内にロッドを挿入することなしに大腿骨端部の適切な骨切方向を決定することができる手術用ジグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第1の目的を達成するために、本発明による手術用ジグは、身体に取付けられる手術用ジグであって、身体に取付けられるジグ本体と、ジグ本体に取付けられた指示部と、身体の皮膚の基準位置に取付けられる基準マーカーと、を有し、基準マーカーは、第1の磁石を有し、指示部は、第2の磁石を有し、第2の磁石を第1の磁石に吸着させることによって、ジグ本体が基準位置に対して位置合わせされることを特徴としている。
【0014】
このように構成された手術用ジグでは、基準マーカーを皮膚の基準位置に予め正確に取付けておくので、ジグ本体に取付けられた指示部の第2の磁石を、基準マーカーの第1の磁石に吸着させることにより、指示部が基準位置に対して正確に位置合わせされ、その結果、ジグ本体が基準位置に対して正確に位置合わせされる。その結果、位置合わせのばらつきを少なくすることができる。
【0015】
本発明による手術用ジグにおいて、好ましくは、指示部は、ロッドを有し、第2の磁石は、ロッドの先端に配置される。更に好ましくは、ロッドは伸縮可能である。
【0016】
また、本発明による手術用ジグにおいて、好ましくは、第1の磁石及び第2の磁石は円筒形であり、吸着するときに互いに軸線方向に整列する。更に好ましくは、基準マーカーは、第1の磁石の周りに同心に配置された放射線不透過性リングを有する。
【0017】
また、本発明による手術用ジグにおいて、好ましくは、手術用ジグが人工膝関節設置術用ジグである。更に、上記第2の目的を達成するために、ジグ本体は、大腿骨の膝蓋面及び/又は顆間窩に形成された溝に保持可能な取付けベースと、大腿骨の前後方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に取付けベースに取付けられた回動ホルダと、を有し、指示部は、回動ホルダに保持され且つ大腿骨の近位方向に延びる骨頭指示部を有し、ジグ本体は、更に、回動ホルダに保持され且つ大腿骨遠位端部の前部に当接するように構成された当接ガイドを有する。
【0018】
このように構成された手術用ジグを使用する際、大腿骨の膝蓋面及び/又は顆間窩に形成された溝に保持された取付けベースを基準にして、回動ホルダに保持された骨頭指示部を回動させ、骨頭指示部を大腿骨骨頭の上に延びるように位置合わせする。そのように位置合わせしたときの回動ホルダの位置で、当接ガイドは、回動ホルダに保持される。例えば、当接ガイドのガイド孔を案内にして、大腿骨遠位端部の前部にドリル孔をあける。このドリル孔が、人工膝関節設置術における骨切りのための基準位置になる。例えば、ドリル孔を基準に骨切りガイドを大腿骨遠位端部に位置決めし、骨切りガイドによって定められる骨切り方向に合わせて、骨切りを行う。すなわち、人工膝関節設置術において、大腿骨髄腔内にロッドを挿入することなしに大腿骨端部の適切な骨切方向を決定することができる。変形例として、当接ガイドのガイド面によって、骨切り方向が定められる。これによっても、人工膝関節設置術において、大腿骨髄腔内にロッドを挿入することなしに大腿骨端部の適切な骨切方向を決定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による手術用ジグにより、位置合わせのばらつきを少なくするという第1の目的を達成することができる。
【0020】
また、本発明による手術用ジグが、取付けベース等を有する人工膝関節設置術用ジグである場合、大腿骨髄腔内にロッドを挿入することなしに大腿骨端部の適切な骨切方向を決定するという第2の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による人工膝関節設置術用のジグの第1の実施形態の斜視図である。
図2】骨頭指示部を取外したジグの斜視図である。
図3】ジグの分解斜視図である。
図4】当接ガイドの斜視図である。
図5】取付けベース、ハンドル部及び指示部の斜視図である。
図6】取付けベース、ハンドル部及び指示部の分解斜視図である。
図7】骨切りガイドの斜視図である。
図8】骨頭指示部を取外した本発明による人工膝関節設置術用のジグの第2の実施形態の斜視図である。
図9】基準マーカーの側面図(a)と底面図(b)である。
図10】人工膝関節を設置した左脚の大腿骨及び脛骨を示す概略的な側面断面図である。
図11】人工膝関節を設置するために部分的に切除された左脚の脛骨及び大腿骨を示す概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明による人工膝関節設置術用のジグの実施形態を説明する。以下の説明において、向きを表す用語「遠位」、「近位」、「前」及び「後」を、大腿骨を基準として用いる。
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態による人工膝関節設置術用のジグ1は、取付けベース2と、取付けベース2に回動可能に取付けられた回動ホルダ4と、回動ホルダ4に保持される細長い骨頭指示部6と、回動ホルダに保持される当接ガイド8と、を有している。取付けベース2、回動ホルダ4及び当接ガイド8は、特許請求の範囲に記載した発明におけるジグ本体に対応する。
【0024】
取付けベース2は、大腿骨Fの膝蓋面及び/又は顆間窩F1に形成された溝F2(図5参照)に保持可能である。溝F2は、好ましくは、大腿骨Fの前後方向ABに延びている。術中、前後方向ABは、略上下方向になる。溝F2の幅は、例えば、0.5〜1.0mmであり、溝F2の深さは最深部で、例えば、5〜10mmである。
【0025】
図3に示すように、取付けベース2は、溝F2に係合し且つ保持される取付け部分2aと、取付け部分2aに隣接して形成された筒状部分2bとを有している。取付け部分2aは、好ましくは、板状である。板状の取付け部分2aの厚さは、先端に向かって僅かに薄くなっていることが好ましい。筒状部分2bは、板状の取付け部分2aに沿ってそれと一体に形成され、大腿骨Fの前後方向ABに延びる回動軸線Xに沿った円形断面の細長い孔2cと、取付け部分2aの反対側に位置する遠位平面2dとを有している。細長い孔2cは、上開口を有している。回動軸線Xは、膝蓋面及び/又は顆間窩F1に近接していることが好ましく、その結果、膝の回転軸線の近傍に位置することが好ましい。術中、膝の回転軸線の方向を正確に把握することはできないので、実際には、回動軸線Xは、大腿骨Fの前部の比較的平らな部分に対して垂直な方向に向けられることが好ましい。遠位平面2dは、板状の取付け部分2aが大腿骨に向かって延びる方向に対して垂直であることが好ましい。また、遠位平面2dは、回動軸線Xと平行であることが好ましい。
【0026】
回動ホルダ4は、回動軸線Xを中心に回動可能に取付けベース2に保持される。具体的には、回動ホルダ4は、筒状部分2bの細長い孔2cに回動可能に嵌合する軸部分10と、軸部分10の前側に位置し且つ当接ガイド8が保持される第1の保持部分12と、第1の保持部分12の前側に位置し且つ骨頭指示部6が保持される第2の保持部分14とを有している。軸部分10は細長い孔2cに挿入可能であり、かくして、回動ホルダ4は、取付けベース2から分離可能である。
【0027】
第1の保持部分12は、当接ガイド8を回動ホルダ4に対して位置決めするために回動軸線Xに対して横方向に延びる溝12aと、当接ガイド8を回動ホルダ4にねじ留め固定するためのねじ山付きの孔12bと、ねじ留め固定により当接ガイド8が押付けられる近位平面12cとを有している。
【0028】
第2の保持部分14は、骨頭指示部6を保持する孔14aを有している。孔14aは、回動軸線Xの上に位置し、それに対して横方向に延びている。孔14aが延びる方向は、近位平面12cに対して垂直方向であることが好ましい。孔14aは、回動ホルダ4に保持される骨頭指示部6と大腿骨との間の距離を調整できるように複数設けられることが好ましい。本実施形態では、筒状をなす突起を貫通する3つの孔14aが設けられている。
【0029】
骨頭指示部6は、大腿骨Fの近位方向Cに延びている。手術中、近位方向Cは、略水平方向である。具体的には、骨頭指示部6は、大腿骨Fに沿って真直ぐに延びる第1のロッド16と、第1のロッド16から大腿骨に向かって延びる第2のロッド18とを有している。第1のロッド16は、孔14aに挿入可能であり、かくして、骨頭指示部6は、回動ホルダ4から分離可能である。第1のロッド16は、孔14aよりも拡径の遠位端部16aと、遠位端部16aに隣接し且つ孔14aに嵌合する嵌合部分16bとを有しており、第1のロッド16を孔14aに遠位側から近位側に挿入可能である。第2のロッド18は、第1のロッド16の近位端部16cに挿入可能な孔18aを有し、第1のロッド16に沿って摺動可能である。また、第2のロッド18は、その自重で真下を向くように、第1のロッド16に対して回転可能であることが好ましい。骨頭指示部6は、取付けベース2に対する回動ホルダ4の回動により、大腿骨骨頭の上に延びるように位置合わせすることが可能である。
【0030】
第2のロッド18は、伸縮可能であることが好ましい。具体的には、第2のロッド18は、二重管構造をなし、外側管状ロッド部分18bと、外側管状ロッド部分18bの内側に配置された内側ロッド部分18cを有している。外側管状ロッド部分18bと内側ロッド部分18cは、上下方向に互いに摺動可能である。本実施形態では、上述した孔18aが、内側ロッド部分18cの上端部に設けられている。また、内側ロッド部分18cは、外側管状ロッド部分18bに設けられた上下方向の溝18dの中に配置された突起18eを有し、外側管状ロッド部分18bが内側ロッド部分18cから分離することを防止している。また、磁石18fが、外側管状ロッド部分18bの下端部に設けられている。磁石18fは、上下方向の軸線を有する円筒形の永久磁石であることが好ましい。
【0031】
図1及び図2に示すように、当接ガイド8は、大腿骨遠位端部Feの前部に当接するように構成され、取付けベース2から分離可能である。図3及び図4に示すように、当接ガイド8は、回動ホルダ4の溝12aに嵌合する凸部分8aと、ねじ山付きの孔12bに螺合するねじ部8bと、ねじ部8bを回転可能に保持する保持部分8cと、大腿骨遠位端部の前部の上に延びる当接部分8dとを有している。当接部分8dは、大腿骨に当接する平面8eと、大腿骨遠位端部Feの前部にドリル孔(図示せず)をあけるドリル(図示せず)を案内する少なくとも2つのガイド孔8fとを有している。本実施形態では、筒状をなす突起を貫通する2つのガイド孔8fが設けられている。
【0032】
図1に示すように、ジグ1は、更に、身体の皮膚の基準位置に取付けられる基準マーカー30を有している。本実施形態では、基準位置は、大腿骨骨頭Fhの中心の上に対応する皮膚の位置である。基準マーカー30は、その中心に磁石30aを有している。磁石30aは、上下方向の軸線を有する円筒形の永久磁石であることが好ましく、第2のロッド18の磁石18fと吸着可能な向きに配置される。図9に示すように、基準マーカー30は、更に、磁石30aと同心に配置された3つの放射線不透過性リング30bと、磁石30a及び放射線不透過性リング30bを包囲する放射線透過性樹脂30cを有している。
【0033】
図5及び図6に示すように、ジグ1は、好ましくは、回動ホルダ4の代わりに取付けベース2に取付け可能なハンドル部20を更に有している。ハンドル部20は、取付けベース2の筒状部分2bの孔2cに挿入可能な第1の軸部分20aと、第1の軸部分20aの前端部に連結され且つ第1の軸部分20aに沿って延びる支持部分20bと、支持部分20bから大腿骨Fの遠位方向Dに延びる操作部分20cと、第1の軸部分20aの前端部から前方Aに延びる第2の軸部分20dとを有している。支持部分20bは、ハンドル部20が取付けベース2に対して回動軸線Xを中心に回動することを防止するように筒状部分2bの平面2dに係合する近位平面20eを有している。第2の支持部分20dは、遠位平面20fを有している。操作部分20cは、ロッド状であることが好ましい。
【0034】
ジグ1は、好ましくは、ハンドル部20に取付けられ、大腿骨Fに対する取付けベース2の取付け方向を指示する指示部22を有している。指示部22は、ハンドル部20の第2の軸部分20dに挿入可能な筒状部分22aと、指示部22をハンドル部20の第2の軸部分20dに固定するためのねじ部22bと、筒状部分22aから大腿骨遠位端部Feの前部の上に延びる指示要素22cとを有している。筒状部分22aは、指示要素22cと大腿骨Fとの間の距離を調整するために第2の軸部分20dに沿って摺動可能である。ねじ部22bは、第2の軸部分20dに対する筒状部分22aの位置を固定するために、第2の軸部分20dの遠位平面20fに押付けられる。指示要素22cの先端部22dは、取付けベース2の回動軸線Xに対して垂直に延びることが好ましい。本実施形態では、指示要素22cは、折れ曲がり形態をなしている。
【0035】
図7に示すように、ジグ1は、好ましくは、骨切りガイド24を有している。骨切りガイド24は、大腿骨遠位端部Feの前部にあけられたドリル孔(図示せず)に挿入された位置決め用ピン26に嵌合するピン孔24aと、大腿骨Fに人工膝関節のための遠位設置面Fc1を形成するためにブレードカッタ(図示せず)を案内するガイド面24bを有している。本実施形態では、ガイド面24bは、スロットによって形成されている。
【0036】
ジグの各構成要素は、滅菌装置(オートクレーブ)による滅菌を可能にする材料で作られるのがよい。かかる材料は、例えば、ステンレススチール材である。
【0037】
次に、本発明による人工膝関節設置用のジグの使用方法を説明する。
【0038】
患者の膝を屈曲位にした状態で、大腿骨Fの膝蓋面及び/又は顆間窩F1に、深さ6〜7mm(最深部)の溝F2を医療用のこぎりで形成する。
【0039】
ハンドル部20を取付けベース2に取付ける。具体的には、ハンドル部20の近位平面20eの向きを取付けベース2の遠位平面2dに合わせ、ハンドル部20の第1の軸部分20aを、取付けベース2の孔2cに挿入する。
【0040】
また、指示部22をハンドル部20に取付ける。具体的には、指示部22の筒状部分22aをハンドル部20の第2の軸部分20dに挿入する。ねじ部22bを用いて、指示部22を適当な位置で第2の軸部分20dに固定してもよい。
【0041】
ハンドル部20の操作部分20cを持って、取付けベース2の取付け部分2aを大腿骨Fに形成した溝F2に押込み、取付けベース2を溝F2に取付ける。操作部分20cを動かして、回動軸線Xが前後方向ABに向くように取付けベース2の取付け方向を調整する。この調整を、大腿骨Fに対して操作部分20cが延びる方向を参考にして行ってもよいし、大腿骨Fに対して指示部22の先端部22dが延びる方向を参考にして行ってもよい。先端部22dが延びる方向を参考にする場合、第2の軸部分20dに対する指示部22の位置を調整し、先端部22dを大腿骨Fの前部に当接させるのがよい。
【0042】
次いで、回動ホルダ4に当接ガイド8を取付ける。具体的には、当接ガイド8の凸部分8aを回動ホルダ4の第1の保持部分12の溝12aに嵌合させ、ねじ部8bをねじ付きの孔12bに締め付け、当接部分8dを近位平面12cに押付けるようにして、当接ガイド8を回動ホルダ4に固定する。
【0043】
ハンドル部20及び指示部22を取付けベース2から取外し、その代わりに、当接ガイド8を取付けた回動ホルダ4を取付けベース2に取付ける。具体的には、ハンドル部20の軸部分20aを取付けベース2の孔2cから抜取り、回動ホルダ4の軸部分10を取付けベース2の孔2cに挿入する。
【0044】
また、骨頭指示部6の第1のロッド16を、回動ホルダ4の第2の保持部分14の任意の孔14aに挿入し、第2のロッド18を第1のロッド16の近位端部16cに挿入する。第1のロッド16及び第2のロッド18は、患者の外部に位置している。
【0045】
また、基準マーカー30を、身体の皮膚の基準位置に取付ける。詳細には、基準マーカー30を皮膚の上に載せた状態で、X線を基準マーカー30及び大腿骨骨頭Fhに照射して、その画像をディスプレイに表示させる。X線を透過しない磁石30aと大腿骨骨頭がディスプレイに表示されるので、基準マーカー30を大腿骨骨頭Fhに対する所望の位置に移動させる。磁石30aの周りに配置された放射線不透過性リング30bも、磁石30aの同心円としてディスプレイに表示されるので、基準マーカー30の位置合わせがやり易くなる。基準マーカー30を所望の位置に移動させたら、例えば、テープ等を用いて、基準マーカー30を皮膚の上に貼り付ける。
【0046】
骨頭指示部6及び回動ホルダ4を、回動軸線Xを中心に回動させることによって、骨頭指示部6を大腿骨骨頭Fhの上に延びるように骨頭指示部6を位置合わせする。詳細には、第2のロッド18を基準マーカー30に近づけると、第2のロッド18の磁石18fと基準マーカー30の磁石30aが吸着され、それにより位置合わせが可能である。磁石18f、30aが円筒形であるので、磁石18f、30aは、それらの軸線方向が互いに整列するように吸着する。それにより、精度の高い位置合わせが自動的に行われる。磁石18fと磁石30aの吸着力を強くすることにより、基準マーカー30を含む患者の皮膚の上に布E等を被せた場合であっても、磁石18fと磁石30aによる位置合わせが可能である(図1参照)。
【0047】
骨頭指示部6が大腿骨骨頭Fhの上に延びるように位置合わせしたときの回動ホルダ4の位置を維持したまま、当接ガイド8のガイド孔8fにドリル(図示せず)を挿入し、大腿骨遠位端部Feの前部にドリル孔(図示せず)を形成する。その後、ドリル孔(図示せず)に位置決め用ピン26を挿入する。
【0048】
ジグ1(取付けベース2、回動ホルダ4、骨頭指示部6、及び当接ガイド8)を大腿骨Fから取外す。骨切りガイド24のピン孔24aを位置決め用ピン26に合わせて、骨切りガイド24を大腿骨Fに取付け、ブレードカッタを骨切りガイド24のガイド面24bに沿って動かし、大腿骨Fの遠位設置面Fc1を形成する。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態による人工膝関節設置術用のジグを説明する。図8に示すように、本発明の第2の実施形態による人工膝関節設置術用のジグ50は、当接ガイド8’以外、本発明の第1の実施形態による人工膝関節設置用のジグ1と同様の構造を有している。
【0050】
当接ガイド8’は、大腿骨遠位端部Feの前部に当接するように構成され、取付けベース2から分離可能である。図8に示すように、当接ガイド8’は、回動ホルダ4の溝12aに嵌合する凸部分(図示せず)と、大腿骨遠位端部Feの前部の上に延びる当接部分8d’とを有している。当接部分8d’は、大腿骨に当接する平面8e’と、大腿骨遠位端部Feの前部にドリル孔(図示せず)をあけるドリル(図示せず)を案内する少なくとも2つのガイド孔8f’と、大腿骨Fに人工膝関節のための遠位設置面Fc1を形成するためにブレードカッタ(図示せず)を案内するガイド面24b’を有している。凸部分8a’は、マグネットを内蔵し、当接部分8’を回動ホルダ4に磁力で取付け可能である。
【0051】
このジグ50では、骨頭指示部6が大腿骨骨頭Fhの上に延びるように位置合わせしたときの回動ホルダ4の位置を維持したまま、大腿骨遠位端部Feの前部にドリル孔(図示せず)を形成して、ドリル孔(図示せず)に位置決め用ピン26を挿入した後、ブレードカッタを当接ガイド8’のガイド面24b’に沿って動かし、大腿骨Fの遠位設置面Fc1を形成することが可能である。
【0052】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0053】
上記実施形態では、手術用ジグを、人工膝関節設置術用ジグとして説明したけれども、本発明による手術用ジグはそれに限らず、任意の種類の手術用ジグに適用可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、指示部がロッドの形態を有していたけれども、基準マーカー30と位置合わせで切れば、指示部の形態は任意である。また、上記実施形態では、磁石18f、30aは円筒形であったが、互いに吸着できれば、磁石の形状は任意である。また、上記実施形態では、孔18aが、内側ロッド部分18cの上端部に設けられ、磁石18fが、外側管状ロッド部分18bの下端部に設けられているけれども、それとは逆に、孔18aが、外側管状ロッド部分18bの上端部に設けられ、磁石18fが、内側ロッド部分18cの下端部に設けられてもよい。
【0055】
上記実施形態では、取付けベース2の取付け部分2aは、1つの板状部分であるけれども、取付け部分2aの形状は、取付けベース2が溝F2に取付けることができれば任意である。例えば、取付け部分2aは、複数の突起又は板状部分であってもよい。
【0056】
上記実施形態では、取付けベース2、回動ホルダ4、骨頭指示部6及び当接ガイド8が互いに分離可能であったが、それらの一部分又は全部が分離しないようになっていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、骨頭指示部6の第1のロッド16は、孔14aに遠位側から近位側に挿入可能に構成されているが、孔14aに近位側から遠位側に挿入可能に構成されていてもよい。また、骨頭指示部6の形態は、骨頭の上に延びるように構成されていれば任意であり、第1のロッド16と第2のロッド18を一体に形成してもよいし、第2のロッド18を省略してもよいし、細長い板状に形成されていてもよいし、折れ曲がり形態であってもよい。
【0058】
上記実施形態では、取付けベース2に孔2cが設けられ、回動ホルダ4に筒部分10が設けられていたが、その逆に、取付けベースに軸部分が設けられ、回動ホルダに孔が設けられてもよい。
【0059】
当接ガイド8、8’について、第1の実施形態のように、ガイド孔8fだけが設けられていてもよいし、第2の実施形態のように、ガイド孔8fとガイド面24b’が設けられていてもよいし、ガイド面24b’だけが設けられていてもよい。ガイド面24b’だけが設けられる場合、当接ガイドは、第1の実施形態のように、ねじ部8bによって回動ホルダ4に保持されることが好ましい。
【0060】
ジグ1は、ハンドル部20及び指示部22を有していてもよいし、それらを有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ジグ
2 取付けベース(ジグ本体)
4 回動ホルダ(ジグ本体)
6 骨頭指示部
8 当接ガイド(ジグ本体)
18 第2のロッド
18f 磁石(第2の磁石)
30 基準マーカー
30a 磁石(第1の磁石)
F 大腿骨
Fh 大腿骨骨頭
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11