特許第6010807号(P6010807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6010807親水性末端基を持つシリコーン含有モノマー
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  • 特許6010807-親水性末端基を持つシリコーン含有モノマー 図000039
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010807
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】親水性末端基を持つシリコーン含有モノマー
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20161006BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20161006BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20161006BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20161006BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161006BHJP
【FI】
   C07F7/08 XCSP
   C07F7/10 P
   C07F7/10 C
   C08F230/08
   G02C7/02
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-550914(P2013-550914)
(86)(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公表番号】特表2014-505067(P2014-505067A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2012051689
(87)【国際公開番号】WO2012104349
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】13/019,279
(32)【優先日】2011年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/232,849
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シャンガー
(72)【発明者】
【氏名】ジアン, シュウエ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン, ユアン
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/147779(WO,A1)
【文献】 特開平06−256421(JP,A)
【文献】 特表2009−533532(JP,A)
【文献】 特開2000−162556(JP,A)
【文献】 特開昭62−294201(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/005937(WO,A1)
【文献】 特表平06−508858(JP,A)
【文献】 特開2000−169482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08F
G02C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーであって、
式(II):
【化1】

[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキルである)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100の整数であり、Wは1〜6の整数であり、XはOまたはNであり、R55は、H、エタノール(−CHCHOH)、グリセロール(−CHCH(OH)CH(OH))であり、Wは1であり(XがOである場合);またR55はエタノール(−CHCHOH)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基、脂肪族ポリエーテルであり、Wは2である(XがNである場合)]
にしたがった、非イオン性末端基を含むシリコーン含有モノマー。
【請求項2】
親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーであって、
式(IV):
【化2】

[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100の整数であり、Wは1〜6の整数であり、Zは正味荷電の有無にかかわらずイオン基であり、イオン性末端基Zが、式(IV−C)で表される両性イオン基を含む]
にしたがった、イオン性末端基を含むシリコーン含有モノマー。
【化3】

[式中、R61、R62はそれぞれ独立に水素またはC1〜C4アルキルから選択され、tは1〜4の整数である]
【請求項3】
親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーであって、
式(IV):
【化4】

[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100の整数であり、Wは1〜6の整数であり、Zは正味荷電の有無にかかわらずイオン基であり、イオン性末端基Zが、式(IV−D)で表される両性イオン基を含む]
にしたがった、イオン性末端基を含むシリコーン含有モノマー。
【化5】

[式中、R61、R62はそれぞれ独立に水素またはC1〜C4アルキルから選択され、tは1〜4の整数である]
【請求項4】
ヒドロシリル化反応の2つのステップを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーの製造方法であって、
ヒドロシリル化触媒の存在下で、1種のジシランと少なくとも1種の親水基含有化合物または親水基形成化合物とを含んでいる第1反応混合物を、ヒドロシリル化反応が可能なビニル官能基と反応させてモノシランを作り出す第1ステップと、
無溶媒系あるいは有機溶媒中において、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択的に重合抑制剤の存在下で、得られたモノシランを、重合可能基を含むビニル官能性モノマーと反応させる第2ステップと
を含む、親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコーン含有モノマーと少なくとも1種のエチレン性不飽和コモノマーとの混合物を含む組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載のシリコーン含有モノマーと、少なくとも1種のエチレン性不飽和コモノマーと潤滑剤と湿潤剤と薬物との混合物を含む組成物。
【請求項7】
請求項またはに記載の混合物を重合させて製造されるポリマーまたはポリマー網目構造を含む組成物。
【請求項8】
請求項のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
【請求項9】
前記物品が眼科用デバイスである、請求項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景技術]
コンタクトレンズなどのバイオメディカルデバイス(biomedical devices)用の物質を設計および選択するには、多数の因子を考慮して、物理的、化学的、および生物学的な特性を最適化しなければならない。こうした特性の例としては、その幾つかを挙げれば、酸素透過性、湿潤性、生体適合性、物理的強度、モジュラス、および光学的要件がある。シリコーン系物質は、酸素透過性が高いため、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの製造に広く使用されてきた。しかし、シリコーンは疎水性物質であり、そのためシリコーンコンタクトレンズは、製造時に、疎水性レンズ型枠と接触して、比較的疎水性の非湿潤性表面が作り出される傾向がある。レンズ配合物中で、また水媒体で飽和状態にされた最終的なレンズ中で、疎水性シリコーンと親水性成分との相分離が起こると、光学的透明度が損なわれることがある。さらに、脂質およびタンパク質は、疎水性表面に付着し、光学的透明度に影響を及ぼす傾向が大きい。
【0002】
コンタクトレンズ表面に、持続的な親水性(着用快適性(wear comfort)および角膜の健康にとってきわめて重要な特性)を付与するために様々な方法が用いられてきた。湿潤性を増大させる一般的な方法の1つは、ポリビニルピロリドン(PVP)などの内部湿潤剤を添加するか、またはプラズマ、高エネルギー照射および局所コーティングによって表面を変えて、極めて親水性の表面を得るというものである。例えば、欧州特許出願公開第713106(A1)号明細書および欧州特許出願公開第2089069(A1)号明細書を参照されたい。プラズマ処理は、非ハイドロゲルレンズには有効でありうるが、ハイドロゲルレンズでは、水吸収(hydration)(非常に大きな体積増加が生じる過程)の間にプラズマコーティングの破壊およびレンズ変形が起こるため、ある程度の成果しかない。体積増加は、水吸収の間に水が吸収されることによるレンズの体積の増大である。局所コーティングにより表面特性を効率的に変えることができるが、製造において、しばしば本質的に複雑な追加ステップが導入されることになる。
【0003】
レンズ配合物に親水性モノマーを加えることにより表面湿潤性を増大させようとしたものもある。両性イオン基(スルホベタインを含む)を持つアクリレートまたはメタクリレートなどのイオン性モノマー(例えば、米国特許第6733123号明細書、米国特許出願公開第2005/0191335号明細書および米国特許第5936703号明細書を参照)、カルボキシベタイン(例えば、特開昭60−67122号公報(JP 6067122)、米国特許第6590051号明細書および欧州特許出願公開第1760098(A1)号明細書を参照)、およびカルボキシベタインエステル(例えば、国際公開第2008/066381(A1)号パンフレットを参照)は、多くの場合、高親水性であり、涙液膜を維持しかつ脂質またはタンパク質の付着を減少させることができるが、こうした両性イオン基含有モノマーは一般に固体であり、多数の親水性モノマーだけでなく、特に疎水性モノマー(シリコーンハイドロゲルレンズの酸素透過性にとって不可欠なシリコーンモノマーなど)への溶解度がきわめて低い。それらは、レンズ配合物中の他の成分との相溶性がなく、それゆえに、使用量が限られるか、あるいはモノマー混合物から沈殿または相分離して光透過性に影響することになる。
【0004】
非イオン性親水性モノマーは、コンタクトレンズに親水性を付与するために用いられてきた。その例としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−ビニルピロリドン、およびジメチルアクリルアミドがある。他の反応性モノマーまたはプレポリマーも、内部湿潤能(internal wetting capability)を与えることが報告された(国際公開第2006/039466(A1)号パンフレットを参照)。さらに、酸素透過性、湿潤性および物理的特性のバランスを保つために、レンズ配合物中における親水性物質と他の成分とのバランスは、特にシリコーンハイドロゲルレンズの場合、注意深く保つ必要があり、多くの場合、何らかの仕方で他の特性を犠牲にすることなく全体的なレンズ性能を最適化する点で限界がある。
【0005】
その一方で、親水性ならびにシリコーン含有モノマーとの相溶性は、シリコーンを含んでいる分子またはマクロマーに親水基を導入することによって改善できる。例えば、米国特許出願公開第2008/0015282(A1)号明細書は、シリコーンハイドロゲルレンズの湿潤性および相溶性を改善するための一官能性および二官能性のヒドロキシル含有シリコーンモノマーを記載している。ヒドロキシル基は、重合可能な官能基とシリコーン成分との間の分子に結合している。この配置は、表面湿潤性を改善するための最高の効果をもたらす点で最適なものではないことがある。それは、ヒドロキシル基が、隣接基からの移動、配向および表面に存在することに関して制限されるからである。
【0006】
両性イオン基を含んでいるコポリマーを、シリコーンモノマーと第三アミン含有モノマーとのプレポリマーから、様々な両性イオン剤(zwitterionic agents)によるグラフト化によって調製して、いっそう相溶性のあるレンズが製造されたが、その方法は再現性が乏しい(米国特許第6346594(B1)号明細書)。
【0007】
国際公開第2006/039466(A1)号パンフレットは、疎水性シリコーン成分および湿潤性を改善するための内部湿潤剤としての親水性成分を含む、湿潤性シリコーンハイドロゲルを開示している。しかし、シリコーンハイドロゲルの分子構造および官能性は、バッチが変わると再現するのが難しく、多くの場合、レンズ製造の一貫性および高収量を確かなものとするために詳細に及ぶ特徴付けが必要である。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0016514(A1)号明細書は、非架橋性の加水分解可能なポリマーを含むシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであって、加水分解可能なポリマーは水吸収時に親水性ポリマーに変わることができ、それによって、後硬化表面処理を行わなくてもシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが親水性表面となる、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを記載している。
【0009】
前述の刊行物は、親水性モノマーを反応性モノマー混合物に混ぜる方法、より好ましくは、親水性モノマーをマクロマーまたはプレポリマーに混ぜて、均質モノマー混合物および光学的に明澄なレンズができるようにする方法を開示している。親水性モノマーまたはマクロマーをモノマー混合物に加えると、レンズの特性の何らかの面は改善されうるが、それは単純な加算則による結果に達しうるだけである。すなわち、改善の度合いは、最終物質中に存在する親水性モノマーの量に正比例するだけである。酸素透過性、光学的透明度、最適モジュラスおよび含水量、潤滑性、涙液膜の液体の保持力ならびに非特異タンパク質および脂質の吸着に対する抵抗性を含め、しばしば相反するパラメータのセットにおいて、望ましいレベルの性能(湿潤性など)は、限界に達する前に実現できず、悪いことに他の特性(相分離およびその結果としての曇りなど)に関して望ましくない結果がもたらされる。普通なら制約を加える(または相反する)パラメータによって制限されることなく、性能のある特定の面を効果的に向上させうる物質を提供することが必要とされている。
【0010】
親水性の両性イオン基を含んでいるコーティング組成物を用いた局所的表面処理を、望ましい表面特性を実現するために施すことができるが、多くの場合、そうした処理は事前に作られたコーティング組成物を使用し、再現するのが困難であり、架橋ハイドロゲルマトリックスと施された局所コーティングとの間の化学結合を保証することがほとんどできない。プラズマ処理により、表面を疎水性から親水性に変えることができるが、徹底的に方法を開発する必要があるわりに、表面への限定的な益しかもたらされない。バルクの利点(酸素透過性、機械的性質、光学的透明度)と表面の利点(湿潤性、潤滑性、および生体適合性)の両方をもたらす物質を提供することが必要とされている。
【0011】
[発明の概要]
それゆえに本発明の目的は、医療用デバイス(medical devices)のバルク特性および表面特性を改善するために、共有結合した親水基を持つシリコーン含有モノマーを提供することである。親水基とは、水に引きつけられる基である。
【0012】
本発明のさらなる目的は、末端部に結合しかつ重合可能基とは離れている親水基を持つシリコーン含有モノマーであって、重合されてその重合物質を含むデバイスが形成されると、側鎖端部に結合した親水基が、高度な移動性を保ち、体液との接触の際に優先的に表面に移動することができる、親水基を持つシリコーン含有モノマーを提供することである。
【0013】
表面に移動できる基は、本明細書では以下、表面改質基(surface modifying groups)とも呼ぶ。本発明によるモノマーは、バルクから表面に移動し、それによって表面を改質することのできる親水基を含む。表面の親水基により、親水性末端基の多い湿潤性表面が作り出され、好ましくは、含まれる親水基がバルクより10モル%多い表面、より好ましくはバルクより50モル%多い表面、さらにより好ましくはバルクより80モル%親水基の多い表面が作り出される。
【0014】
本発明の目的は、親水性のシリコーン含有モノマー、およびそれから作られる親水性の改善されたマクロマーおよびポリマーを提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、湿潤性、潤滑性、および生体適合性の向上した表面を持つ医療用デバイスおよび眼科用デバイス(ophthalmic devices)といった物品を提供することである。
【0016】
本明細書では以下、末端基を、モノマーの末端部に結合した基と定義する。モノマーの末端部を、本明細書では以下、重合可能基を持たないモノマーの端部と定義する。
【0017】
重合可能基は、本明細書では以下、フリーラジカル及び/またはカチオン重合、縮合重合、開環重合などが可能な基から選択される重合可能基と定義する。ラジカル重合は主にレンズの製造に使用されるので、好ましい重合可能基はフリーラジカル反応性基であり、それには(メタ)アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、C1〜6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C1〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミドがある。より好ましくは、重合可能基は、(メタ)アクリレート、アクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物を含む。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を含む。本明細書で使用される「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドとメタクリルアミドの両方を含む。
【0018】
本明細書では以下、基を、例えばC1〜C4基と呼んでいる場合、それは1〜4個の炭素原子を持つ基を意味し、あるいはC1〜C6の場合、1〜6個の炭素原子を持つ基を意味する。
【0019】
本発明は、式I:
【化1】


[式中、RはHまたはCHであり、aは0または1であり、pは1〜6の整数であり、qは1〜3の整数であり、それぞれのqについて末端基R51、R52、R53は独立に、アルキル基、アルキルエーテル基、ウレタン基、トリメチルシロキシ基、あるいは置換または非置換の芳香族基であり、さらにR51、R52、またはR53の少なくとも1つが、結合している親水性基Zを有し、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、nは1〜100の整数であり、RおよびRは独立に、アルキル基、アルキルエーテル基、トリメチルシロキシ基、あるいは置換または非置換の芳香族基であり、Lは二価のリンカーであり、これには、1〜14個の炭素原子を有する置換または非置換アルキレン基(これは直鎖であっても分岐していてもよい)、2〜12個の炭素を有する置換または非置換のアルコキシ基、ポリエーテル、オキサゾリン、置換および非置換の複素環基が含まれる]
のシリコーン含有モノマーに関する。
【0020】
好適な親水基Zとしては、ヒドロキシル基、アミノ基、アミノ酸基、カルボン酸基、C1〜C6アミノアルキル基、C1〜C6アルキルアミノアルキル基、C1〜C4ヒドロキシアルキル基、C1〜C6ヒドロキシアルコキシ基、第四アミン基、スルホネート基、および両性イオン基がある。1つの実施形態では、親水基Zは、R51、R52、R53の少なくとも1つにおける末端部と結合している。末端基R51、R52、R53の末端部は、本明細書では以下、式Iのモノマー中のシリコーン基に共有結合していない、末端基R51、R52、R53の端部と定義する。
【0021】
更なる実施形態では、親水基Zは、R51、R52、R53の少なくとも1つにおける末端部と共有結合していてよい。
【0022】
別の実施形態では、式(II):
【化2】


[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100の整数であり、Wは1〜6の整数であり、XはOまたはNであり、R55は、H、エタノール(−CHCHOH)、グリセロール(−CHCH(OH)CH(OH))であり、Wは1であり(XがOである場合);またR55は、エタノール(−CHCHOH)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基、脂肪族ポリエーテルであり、Wは2である(XがNである場合)]
にしたがった、非イオン性末端基および親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーがある。
【0023】
別の実施形態では、イオン性末端基と式(IV):
【化3】


[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(式中、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100の整数であり、Wは1〜6の整数であり、Zは正味荷電の有無にかかわらずイオン基である]
にしたがった親水性末端基とを持つシリコーン含有モノマーがある。
【0024】
更なる実施形態では、シリコーン含有モノマーは、式(IV−A):
【化4】


[式中、mは1〜4の整数であり、R61、R62、R63はそれぞれ独立に水素またはC1〜Cアルキルから選択される]
にしたがった両性イオン基を含むイオン性末端基Zを含む。
【0025】
更なる実施形態では、上記の式IVのシリコーン含有モノマーは、
式(IV−B):
【化5】


[式中、R61、R62はそれぞれ独立に水素またはC1〜Cアルキルから選択され、R64はC1〜6アルキルまたはアルキルエーテルであり、tは1〜4の整数である]
で表される両性イオン基のようなイオン性末端基Zを含む。
【0026】
更なる実施形態では、上記の式IVのシリコーン含有モノマーは、式(IV−C):
【化6】


[式中、R61、R62はそれぞれ独立に、水素またはC1〜C4アルキルから選択され、tは1〜4の整数である]
で表される両性イオン基のようなイオン性末端基Zを含む。
【0027】
更なる実施形態では、上記の式IVのシリコーン含有モノマーは、
式(IV−D):
【化7】


[式中、R61、R62はそれぞれ独立に水素またはC1〜C4アルキルから選択され、tは1〜4の整数である]
で表される両性イオン基のようなイオン性末端基Zを含む。
【0028】
更なる実施形態では、上記の式IVのシリコーン含有モノマーは、前記イオン性末端基が、式(IV−E):
【化8】


[式中、(1)R74はハロゲン化物陰イオン、スルホネート陰イオンであり;(2)R71、R72、R73はそれぞれ独立に、1〜22個の個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基および置換または非置換のフェニルまたはベンジル環、脂肪族エステル、脂肪族ポリエーテル、フッ素化脂肪族ポリエーテル、シリコーン、シリコーンポリエーテルからなる群から選択され;(3)R72、R73は、(a)Nと一緒になって5〜7個の原子の飽和または不飽和複素環を形成するか、(b)Nと一緒になりかつ酸素原子と組み合わさってN−モルホリノ基を形成するかのいずれかであってよく;あるいは(4)R71、R72、R73およびNが一緒になってキノリン、イソキノリンまたはヘキサメチレンテトラミンを表す]
で表される第四アミン末端基Zを含む。
【0029】
本発明はさらに、親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーを合成する方法であって、好適なヒドロシリル化触媒(カールシュテット触媒、ウィルキンソン触媒を含め当業者に知られているものを含む)の存在下でのシリコーン二水素化物とビニル官能性親水性物質との間の最初のヒドロシリル化反応によってモノシランを得るステップ、および得られたモノシランと重合可能基を含んでいるビニル官能性モノマーとの、その後のヒドロシリル化反応のステップを含む、親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーを合成する方法に関する。
【0030】
1つの実施形態では、親水性末端基を持つ式(I)のシリコーン含有反応性モノマーの製造方法は、ヒドロシリル化反応の2つのステップを含むことができる。すなわち、
ヒドロシリル化触媒の存在下で、1種のジシランと少なくとも1種の親水基含有化合物または親水基形成化合物とを含んでいる第1反応混合物を、ヒドロシリル化反応が可能なビニル官能基と反応させてモノシランを作り出す第1ステップと、
無溶媒系あるいは有機溶媒中において、ヒドロシリル化触媒の存在下で、また任意選択的に重合抑制剤の存在下で、得られたモノシランを、重合可能基を含むビニル官能性モノマーと反応させる第2ステップと
を含むことができる。
【0031】
本明細書では以下、ジシランを、2つのSi−H結合を含んでいるシラン分子またはシリコーン分子と定義し、モノシランを、1つのSi−H結合を含んでいるシラン分子またはシリコーン分子と定義する。
【0032】
更なる実施形態では、親水基は、保護剤によって一時的に保護し、ヒドロシリル化反応の前に、後で脱保護することができる。親水基形成化合物は、別の化合物と反応して親水性化合物を形成できる化合物である。特に、親水基形成化合物は、ビニル官能性アミン、ビニル官能性エポキシド、ビニル官能性イソシアネートから選択できる。
【0033】
本発明はまた、シリコーン含有モノマーと少なくとも1種のエチレン性不飽和コモノマーとの混合物を含む組成物も包含する。
【0034】
典型的には、こうした組成物は、潤滑剤、湿潤剤、および薬物を含むこともできる。
【0035】
さらに、別の実施形態は、上述の親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーと、少なくとも1種のエチレン性不飽和コモノマー、潤滑剤、湿潤剤、および薬物との混合物の重合によって製造されるポリマーまたはポリマー網目構造を含む組成物を含む。
【0036】
別の実施形態は、上に開示した実施形態のいずれかに従った組成物を含む物品を含む。1つの実施形態では、物品は眼科用デバイスである。
【0037】
したがって、本発明にしたがって製造されるモノマーは、物品、特に(酸素透過性が高く、湿潤性および生体適合性が良好であり、レンズ配合物中の他の広範囲の成分との相溶性のある、接眼レンズ物質を含め)眼科用デバイスを製造するのに役立つ。
【0038】
[発明の詳細な説明]
第1の態様では、本発明は、式(I):
【化9】


[式中、RはHまたはCHであり、aは0または1であり、pは1〜6の整数であり、qは1〜3の整数であり、それぞれのqについて末端基R51、R52、R53は独立に、アルキル基、アルキルエーテル基、ウレタン基、トリメチルシロキシ基、あるいは置換または非置換の芳香族基であり、さらにそれらの末端基の少なくとも1つが、好ましくはR51、R52、R53の末端部に結合している親水性基Zを有し、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、nは1〜100の整数であり、RおよびRは独立に、アルキル基、アルキルエーテル基、トリメチルシロキシ基、あるいは置換または非置換の芳香族基であり、好ましいRおよびRとしては、メチル、エチル、トリメチルシロキシおよびフェニルがあり、Lは二価のリンカーであり、これには、1〜14個の炭素原子を有する置換または非置換アルキレン基(これは直鎖であっても分岐していてもよい)、2〜12個の炭素を有する置換または非置換のアルコキシ基、ポリエーテル、オキサゾリン、置換および非置換の複素環基が含まれる]
の親水性のシリコーン含有モノマーに関する。
【0039】
1つの実施形態では、末端基R51、R52、R53は、アルキルまたはアルキルエーテルである。好適なアルキル基は、C1〜C10アルキルまたはC1〜C10アルキルエーテル、好ましくはC1〜C5アルキルまたはC1〜C5アルキルエーテルである。好ましい実施形態では、2つの末端基R51、R52、R53がメチル基である。
【0040】
1つの実施形態では、Lは、置換アルコキシ基または置換複素環基を含む。好適な置換基としては、アリール基、アミン基、エーテル基、アミド基、ヒドロキシル基、これらの組合せなどがある。別の実施形態では、Lは、2〜12個の炭素を有する直鎖または分岐のアルキレン基を含む。
【0041】
更なる実施形態では、R51、R52、R53のうちの少なくとも1つは、末端部に結合した親水基Zを有する。別の実施形態では、RおよびRはそれぞれ独立に、メチル、エチル、トリメチルシロキシおよびフェニルから選択される。
【0042】
好適な末端の親水基Zとしては、ヒドロキシル基、アミノ基、アミノ酸基、カルボン酸基、C1〜C6アミノアルキル基、C1〜C6アルキルアミノアルキル基、C1〜C4ヒドロキシアルキル基、C1〜C6ヒドロキシアルコキシ基、第四アミン基、スルホネート基、および両性イオン基がある。
【0043】
別の実施形態では、RおよびRそれぞれ独立に、メチル、エチル、トリメチルシロキシおよびフェニルから選択される。
【0044】
更なる実施形態では、Lは、2〜12個の炭素を有する直鎖または分岐のアルキレン基を含み、前記親水基Zは、R51、R52、R53の少なくとも1つにおける末端部と共有結合している。更なる実施形態では、末端親水基Zは、ヒドロキシル基、アミノ基、アミノ酸基、カルボン酸基、C1〜C6アミノアルキル基、C1〜C6アルキルアミノアルキル基、C1〜C4ヒドロキシアルキル基、C1〜C6ヒドロキシアルコキシ基、第四アミン基、スルホネート基、または両性イオン基から選択される。
【0045】
更なる実施形態では、親水基Zは、R51、R52、R53の少なくとも1つにおける末端部と共有結合することができる。
【0046】
別の実施形態では、R51、R52、R53はそれぞれ独立に、基の分子量範囲が15〜4500g/モル、好ましくは15〜1500g/モルである一価の基である。
【0047】
更なる実施形態では、Lは、0〜12個の間のエチレンオキシド単位を持つポリエチレンオキシドであってよい。
【0048】
また、一実施形態では、pは2〜3の整数であってよく、かつ/またはnは1〜20の整数である。更なる実施形態では、nは1〜20の整数であってよい。
【0049】
1つの実施形態では、親水基は両性イオン基であってよい。
【0050】
両性イオン基は、種々の原子上に形式電荷を持つが、総実効電荷が0である親水基であり、これは本質的に極性が非常にあり、水への溶解度が大きく、ほとんどの有機溶媒に難溶性である。両性イオン基の例としては、ほとんどの(生理学的pHの)アミノカルボン酸基、アミノスルホン酸基、およびベタインがある。
【0051】
ベタインは、正電荷を帯びた陽イオン基(水素原子を持たない第四アンモニウム陽イオンまたは第四ホスホニウム陽イオンなど)と、負電荷を帯びた官能基(陽イオン性部位に隣接していなくてもよいカルボキシレート基など)とを持つ任意の中性化合物である。したがってベタインは、特別なタイプの双性イオンでありうる。
【0052】
好ましくは、両性イオン基はベタイン基であり、それには、スルホベタイン、カルボキシベタイン、およびリンベタイン(phosphor−betaine)があるが、これらに限定されない。生物システムでは、多数のベタインは、有機オスモライト(浸透ストレス、干ばつ、高塩分または高温からの保護のために合成されるかまたは細胞によって環境から取り込まれる物質)として働く。ベタインが細胞内に蓄積すると、細胞内に水がとどまることができ、それによって脱水作用から保護される。したがって、自然から学ぶなら、ベタインがレンズ物質に含まれると、湿潤性がよくなるだけでなく、保水性およびレンズ着用快適性もよくなりうることが期待される。保水性とは、涙液膜破壊時間(TBUT)を引き延ばすのに極めて重要な特性であり、最後の完全なまばたきと最初のドライ・スポットの出現(または涙液膜の破壊)との間の間隔として定義される。細胞質膜を構成する脂質成分は、主に両性イオン性リン脂質であり、抗血栓性であると考えられており、多数の両性イオン基(ホスホリルコリン(PC)、スルホベタイン、カルボキシベタインを含む)が表面に存在すると、非特異タンパク質の吸着が劇的に減少しうる。優れた湿潤性および脂質の付着に対する抵抗性は、両性イオン基形成剤を反応させてレンズ物質にすることにより実現できることが報告されている(米国特許第6346594(B1)号明細書)。さらに、両性イオン基を含む表面は、細菌付着およびバイオフィルム形成に対する抵抗性も示した(Gang Cheng,Zheng Zhang,Shengfu Chen,James D.Bryers,Shaoyi Jiang,Biomaterials 28(2007)4192−4199)。
【0053】
本発明によれば、親水基は、シリコーン含有モノマーに共有結合しており、それによりレンズ配合物中への得られたモノマーの溶解度が増大する。こうして得られたシリコーン含有モノマーの両親媒性は、レンズ配合物中および最終的なレンズ組成物中で極性成分および非極性成分を互いに混ざるようにし(compatablizing)、そのようにして酸素透過性および光学的透明度の性能を同時に改善するのにも役立ちうる。
【0054】
本発明によれば、親水基Zは、末端部で、かつ重合可能基Bから離れてシリコーン含有モノマーに結合できる。ポリマーまたはポリマー網目構造(A)が形成されたとき(図1を参照)および水吸収の後、そのような配置により、主鎖および疎水性シリコーンの多い領域から親水性末端基が離れることが可能になるので、そのような配置は不可欠である。そのような分子スケールの(再)配向は、動的温度因子(thermal dynamic factors)およびイオン性相互作用によって推進されうることは当業者にとって理解されうる。(再)配向の結果として、親水性末端基の表面濃度および空間分布が表面で増して、所望の湿潤性および好ましい生体応答が実現されるであろう。
【0055】
図1において、Bは重合可能基、好ましくはエチレン性不飽和基(C=C基と同等)であり、Zは親水基であり、Yは、コモノマー、架橋剤、マクロマーまたはプレポリマー(コンタクトレンズ配合物中に使用される1つまたは複数の重合可能基を持つ)、およびこれらの組合せである。親水基Zは、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、C1〜C6アミノアルキル基、C1〜C6アルキルアミノアルキル基、C1〜C4ヒドロキシアルキル基、C1〜C6ヒドロキシアルコキシ基、第四アミン基、スルホネート基、両性イオン基、およびこれらの組合せを包含する。L1およびL2はどちらも独立に、アルキル、アルキルエーテル、あるいは置換または非置換の芳香族基(直鎖であっても分岐していてもよい)、ポリエーテル、オキサゾリン、置換および非置換の複素環式化合物である。
【0056】
親水基は、ポリマー側鎖の末端に結合しているので、移動性が高くなっており、水吸収された状態では、表面への移動が促進されて、それによって効果的に表面濃度および湿潤性が増大させられる。親水性末端基の表面濃度および空間分布は、親水性末端基と隣接成分(シリコーンセグメントを含む)の極性の違い、および親水性末端基とシリコーンセグメントとを含む側鎖のセグメント移動性に応じて異なることになることは、当業者に理解できることである。極性の違いおよびセグメント移動性が大きくなるほど、推進力は強くなり、疎水性領域からの末端基の分離に関して制限が少なくなり、デバイスと生体との界面で増す。表面への親水性末端基の分散がそのように増すことは、湿潤性表面を増大させ、液体膜の潤滑性を促進して、使用者がまばたきするときにレンズが移動(元に戻ることが)できるようにするのに有益である。これは、栄養素、酸素および電解質の生物学的交換をさらに促進し、そのようにして、生理学的条件のバランスを改善する。
【0057】
親水性末端基の好ましい分布および表面への分離は、医療用デバイスの製造における標準処理段階の間に実現される。コンタクトレンズの製造では、処理には、硬化、抽出、殺菌および包装が含まれうる。硬化の間に、反応性モノマー混合物は疎水性のレンズ型枠にさらされ、硬化されると架橋網を形成する。疎水性シリコーン成分は、型枠と接触するときに、「類は類を呼ぶ」力で動かされて表面に移動し、表面に濃縮される傾向がある。型枠から取り出した後、抽出、殺菌および包装を行うときにレンズを水性媒体にさらす。こうした処置により、シリコーンに結合した親水基はレンズ表面の最も外側の層に向いて配向するようさらに促進され、それによって表面エネルギーは最小化される。そのような処理ステップにより、親水基の再配分が可能になり、バルク中の平均濃度(理論平均の濃度の近似値でありうる)と比べて最低でも10%多い親水基Z(ポリマー組成物中のそうした基のモルパーセントで計算)を含む表面層が作られる。より好ましくは、表面層の親水基Zの濃度とバルクの親水基Zの濃度の差は、30モル%を超え、さらにより好ましくは50モル%を超える。
【0058】
緩衝液を用いた水抽出および包装の間など、水環境にコンタクトレンズをさらす過程で、レンズは接触溶液と質量交換を行い、そのようにして水性媒体との接触の際に、表面への移動性親水基の再配分が促進される。親水性末端基と水性媒体との間の好ましい相互作用により、レンズの外面への末端基の分離が引き起こされる。これは、界面エネルギーの最小化による熱力学的に推進される過程である。界面エネルギーは、デバイスおよび体液または体表との界面におけるギブズの自由エネルギーである。重合可能基Bは、フリーラジカル及び/またはカチオン重合、縮合重合、開環重合などを行うことができる基から選択できる。ラジカル重合が主にレンズ製造に使用されるので、好ましい重合可能基は、フリーラジカル反応性基であり、それには、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、C1〜6アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C1〜6アルキル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、N−ビニルアミドがある。より好ましくは、重合可能基は、式(I)[式中、RはHまたはCHである]に記載されている(メタ)アクリレート、アクリルオキシ、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの混合物である。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を含む。
【0059】
好適な非イオン性親水基Zとしては、ヒドロキシル基、アミノ基、アミノ酸基、カルボン酸基、C1〜C6アミノアルキル基、C1〜C6アルキルアミノアルキル基、C1〜C4ヒドロキシアルキル基、およびC1〜C6ヒドロキシアルコキシ基がある。1つの実施形態では、親水基を含むシリコーンモノマーは、式(II):
【化10】


[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキルである)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100の整数であり、Wは1〜6の整数であり、XはOまたはNであり、R55は、H、エタノール(−CHCHOH)、グリセロール(−CHCH(OH)CH(OH))であり、Wはであり(XがOである場合);またR55は、エタノール(−CHCHOH)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基、脂肪族ポリエーテルであり、Wは2である(XがNである場合)]
にしたがった化合物を含む。
【0060】
1つの好ましい実施形態では、シリコーン含有モノマーは、式(III):
【化11】


[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100、より好ましくは2〜5の整数である]
で記載した、モノマーに結合した末端ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートである。
【0061】
別の好ましい実施形態では、親水基Zは、式(IV):
【化12】


[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、Wは0〜10の整数であり、Wは2〜100の整数であり、Wは1〜6の整数であり、Zは正味荷電の有無にかかわらずイオン基である]
にしたがったシリコーン含有モノマーの端部に結合したイオン性基である。
【0062】
イオン基の例としては、第四アミン基、スルホネート基、あるいは式(IV−A):
【化13】


[式中、mは1〜4の整数、より好ましくは3であり、R61、R62、R63はそれぞれ独立に水素またはC1〜C4アルキルから選択され、より好ましくはメチル基である]
で表される両性イオン基;あるいは、式(IV−B):
【化14】


[式中、R61、R62はそれぞれ独立に水素またはC1〜C4アルキルから選択され、より好ましくはメチル基であり、R64はC1〜6アルキルまたはアルキルエーテルであり、tは1〜4の整数、より好ましくは2である]
で表される両性イオン基;または式(IV−C):
【化15】


[式中、R61、R62はそれぞれ独立に水素またはC1〜C4アルキルから選択され、tは1〜4の整数、より好ましくは3である]
で表される両性イオン性基;または式(IV−D):
【化16】


[式中、R61、R62はそれぞれ独立に水素またはC1〜C4アルキルから選択され、より好ましくはメチル基であり、tは1〜4の整数、より好ましくは1である]
で表される両性イオン基がある。
【0063】
別の好ましい実施形態では、シリコーン含有モノマーは、(IV−E)
【化17】


[式中、(1)R74はハロゲン化物陰イオン、スルホネート陰イオンであり;(2)R71、R72、R73はそれぞれ独立に、1〜22個の個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基および置換または非置換のフェニルまたはベンジル環、脂肪族エステル、脂肪族ポリエーテル、フッ素化脂肪族ポリエーテル、シリコーン、シリコーンポリエーテルからなる群から選択され;(3)R72、R73は、(a)Nと一緒になって5〜7個の原子の飽和または不飽和複素環を形成するか、(b)Nと一緒になりかつ酸素原子と組み合わさってN−モルホリノ基を形成するかのいずれかであってよく;あるいは(4)R71、R72、R73およびNが一緒になってキノリン、イソキノリンまたはヘキサメチレンテトラミンを表す]
で表される第四アミン末端基Zを有する。好ましい実施形態では、R71、R72,R73の少なくとも1つは、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0064】
表面への細菌付着およびその結果としてのバイオフィルム形成は、多数のバイオメディカルデバイスおよびその用途にとって極めて重大な問題である。例えば、デバイスに関連した感染が生じうるし、それは医療用デバイスの使用の利点を損ないうる。バイオフィルム形成を少なくするかまたは防ぐ1つの方法は、親水剤(hydrophilic agents)で表面改質することによって表面へのバクテリアの初期付着を減少させるというものである。その中でも、両性イオン基を含む表面がバクテリア付着を減少させるのに効果的であることが見出された(Gang Cheng et al.,Biomaterials,Volume 28,Issue 29,October 2007,Pages 4192−4199)。第四アミンは、医療用品(創傷被覆材、レンズケア溶液(lens care solutions)、および他の消毒製品を含む)における有効な殺生剤として通常用いられ、第四アミン基を反応性シリコーン含有モノマーに組み込んでいて、それから作られる医療用品(例えば、コンタクトレンズ)の表面に抗微生物性を付与する。
【0065】
シリコーン含有モノマーのシリコーンセグメントは、分岐していても、アルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい。親水基は、置換基R51、R52、R53の末端部にあり、重合可能な官能基から離れていて、親水基の隣の置換基の立体障害が最小化されて親水基の再配向が促進されるようになっているのが好ましい。例えば、2−(トリメチルシロキシ)−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(CAS番号17082−46−1、沸点164℃)が市販されており、シリコーン含有モノマーの合成に使用できる。分岐した2−(トリメチルシロキシ)−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサンに基づくシリコーン含有モノマーの例としては、式(V):
【化18】


[式中、RはHまたはCHであり、XはOまたはNR54(ここで、R54はHであるか、または1〜4個の炭素を持つ一価のアルキル基である)であり、Wは0〜10の整数である]
に基づく化合物がある。
【0066】
2−(トリメチルシロキシ)−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサンの代わりに使用できる分岐シリコーンジシランとしては、例えば、以下に示す1,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシランおよび1,3−ビス(トリメチルシロキシ)−1,3−ジメチルジシロキサン(CAS番号16066−09−4)がある。
【化19】

【0067】
親水性末端基を持つ式(I)のシリコーン含有反応性モノマーを製造する方法は、ヒドロシリル化反応の2つのステップを伴う。
【0068】
反応の第1ステップは、ヒドロシリル化触媒の存在下で、1種のジシランと少なくとも1種の親水基含有化合物または親水基形成化合物とを含んでいる第1反応混合物を、ヒドロシリル化反応を行うことのできるビニル官能基と反応させるステップを含む。合成を実施する際に、副反応を避け、化学反応を促進し、収量を改善するといった実際的な理由で、親水基含有ビニル官能性化合物と反応させる代わりに、親水基形成剤と反応できる官能基を含む前駆体を選択することもできる。
【0069】
ジシランとは、2つのSi−H結合を含んでいるシラン分子またはシリコーン分子と定義される。ジシランの例には、上述の分岐ジシランおよびヘキサメチルシロキサンがある。
【0070】
親水基は、保護剤によって一時的に保護し、ヒドロシリル化反応の前に、後で脱保護することができる。親水基形成化合物は、別の化合物と反応して親水性化合物を形成できる化合物である。特に、親水基形成化合物は、ビニル官能性アミン、ビニル官能性エポキシド、ビニル官能性イソシアネートから選択できる。
【0071】
例えば、ジシランとビニル官能性アミンのヒドロシリル化反応は、好適なヒドロシリル化触媒の存在下で実施させて、アミン含有モノシランを形成させることができる。こうして結合したアミン基は、前駆体として使用して、スルトンと反応させて、例えば、最終化合物中にスルホベタイン基を形成させることができる。それに対し、ジシランとビニル官能性ベタイン化合物との反応は、極性および溶媒への溶解度に劇的な差があるため、困難であろう。
【0072】
モノヒドロシリル化生成物の収量を増大させるために、ジシランと親水基含有ビニル官能性化合物とのモル比は、好ましくは、1:1〜10:1、より好ましくは1.5:1〜5:1である。反応は、ヒドロシリル化触媒の存在下で、有機溶媒の有無にかかわりなく、−20℃〜70℃、より好ましくは,−10℃〜30℃の反応温度において実施する。適切な有機溶媒としては、炭化水素、塩素化炭化水素、有機スルホキシド(organosulphoxides)、エーテル、ケトン、これらの混合物などがある。
【0073】
反応の第2ステップは、得られたモノシランと重合可能基を含むビニル官能性モノマーとのヒドロシリル化反応を伴う。反応は、無溶媒系または有機溶媒中において、ヒドロシリル化触媒の存在下で、任意選択的に重合抑制剤の存在下で実施できる。モノシランとは、1つのSi−H結合を含んでいるシラン分子またはシリコーン分子と定義される。重合可能基は、上で定義した基である。
【0074】
反応の第1ステップで使用されるビニル官能基を持つ親水基含有化合物または親水基形成化合物および反応の第2ステップで使用される重合可能基を含むビニル官能性モノマーはどちらも、ビニル官能性モノマーと呼ぶ。
【0075】
抑制剤は、エチレン性不飽和重合可能基に関連したラジカル重合の割合を減少させることができる化合物である。好適な抑制剤としては、メトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、これらの混合物などがある。反応の第2ステップの間に、抑制剤は、ビニル官能性モノマーのモル量に対して10,000ppmまでの量、好ましくは50〜5,000ppmの間の量を使用してよい。反応の第2ステップの間、モノシランとビニル官能性モノマーとのモル比は、好ましくは5:1〜1:5、より好ましくは1:1〜1:2である。反応の第2ステップの間、副反応(O−シリル化およびメタクリレート基のC=Cのシリル化を含む)を回避し、最終生成物の収量を増大させるために、ビニル官能性モノマーを過剰にするのが望ましいであろう。反応は、ヒドロシリル化触媒の存在下で、有機溶媒の有無にかかわりなく、−20℃〜70℃、より好ましくは,−10℃〜30℃の反応温度において実施する。好適な有機溶媒としては、炭化水素、塩素化炭化水素、有機スルホキシド、エーテル、ケトン、これらの混合物などがある。
【0076】
当業者に知られている好適なヒドロシリル化反応触媒としては、白金化合物およびロジウム化合物がある。有用な触媒の例としては、クロロ白金酸、クロロ白金酸とアルコール、アルデヒド、およびケトンとの錯体、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスフィット錯体、ジカルボニルジクロロ白金、白金−炭化水素錯体、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(ウィルキンソン触媒とも呼ばれる)、ロジウム(III)クロリド、固体キャリヤーに担持された白金、固体キャリヤーに担持されたロジウムおよびこれらの混合物がある。どちらの反応ステップ時にも、ヒドロシリル化触媒は、ビニル官能性モノマーのモル量に対して5ppm〜500ppmの間、好ましくは10ppm〜300ppmの間の量だけ使用する。
【0077】
当業者に知られている様々な精製方法を、モノシランおよび最終的なシリコーン含有反応性モノマー化合物の精製に使用でき、その方法には、標準圧力または減圧下における蒸留、溶媒抽出、吸着剤抽出、超臨界流体抽出、およびこれらの組合せがある。
【0078】
本発明のシリコーン含有モノマーは、好ましくは、眼科用デバイス、より好ましくはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを作製するための組成物に使用される。シリコーン含有モノマーは、少なくとも1種のエチレン性不飽和コモノマーと混ぜてこの組成物に使用される。好ましくは、組成物は、典型的なコンタクトレンズ組成物に使用される様々なモノマーの混合物である。そのようなモノマーの例には、トリメチル−シリル−プロピル−メタクリレート(trimethyl−silyl−propyl−methacrylate)(Tris)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)がある。
【0079】
より好ましくは、眼科用デバイスの作製のために、本発明のシリコーン含有モノマーを用いて、組成物中のある特定量の疎水性シリコーンモノマーと置き換える。そのような疎水性シリコーンモノマーの例は、例えば、米国特許第4153641号明細書に記載されている。組成物中の疎水性シリコーンモノマーの一部またはその量全体を、最終的な眼科用デバイスの特性に対して(例えば、湿潤性および潤滑性に対して)有益な効果のある親水性モノマーで置き換えることができる。
【0080】
当業者なら、組成物中の親水性シリコーンモノマーと疎水性シリコーンモノマーとの最適な比率を見いだすことができるであろうし、眼科用デバイスのバルク特性(酸素透過性、機械的性質、光学的透明度)と表面特性(湿潤性、潤滑性、生体適合性)との間の最適なバランスを得られるであろう。
【0081】
組成物は、例えば、潤滑剤、湿潤剤および薬物のような他の成分を含むこともできる。
【0082】
さらに、別の実施形態としては、親水性末端基を持つ上述のシリコーン含有モノマーと、少なくとも1種のエチレン性不飽和コモノマー、潤滑剤、湿潤剤、および薬物との混合物の重合によって製造されるポリマーまたはポリマー網目構造を含む組成物がある。
【0083】
別の実施形態としては、上に開示した実施形態のいずれかに従った組成物を含む物品がある。1つの実施形態では、物品は医療用デバイスである。医療用デバイスは、好ましくは眼科用デバイス、より好ましくは眼内レンズまたはコンタクトレンズである。更なる実施形態では、コンタクトレンズはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである。
【0084】
したがって本発明のポリマーは、著しく有利な物理的特性、化学的特性および生物学的特性を、眼科用デバイスに、より好ましくはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに与える。こうした特性の例としては、酸素透過性、湿潤性、生体適合性、物理的強度、モジュラス、および光学的要件がある。
【0085】
物質を通り抜ける特定ガスの透過性(Dk)は、その物質中におけるガスの拡散率Dと溶解度を掛けたものである。コンタクトレンズの場合、Dk値は、どれだけの酸素がコンタクトレンズを透過でき、角膜へ到達するか、それゆえに角膜の健康に影響を与えるかについて相関関係を明らかにする。Dkは、拡散セルを用いた光学的または電気化学的センサーを使用して測定でき、単位圧力差をかけたときに、特定条件下で、単位時間に試料のコンタクトレンズ物質の単位面積を通過し、単位厚みのコンタクトレンズ物質を通過する酸素ガスの正味体積によって測定できる。酸素透過性は、10−11(cm/sec)(mlO/[ml×mmHg])、あるいは同じことであるが、10−11(cm[O]×cm)/(cm×sec×mmHg)の単位で示される[American National Standard for Ophthalmics,ANSI Z80.20−2004,8.18−Oxygen Permeability]。
【0086】
湿潤性は、涙液膜形成およびその安定性、ならびにレンズの移動および角膜の回復と関連する潤滑性に関係した特性である。これは、水性媒体がどれほど容易に固体表面に広がってそれを濡らすことができるかを示す大きさであり、接触角で測定されることが多い[American National Standard for Ophthalmics,ANSI Z80.20−2004,8.1 1−Contact Angle]。接触角が小さいことは、湿潤性が良いことを示す。
【0087】
生体適合性とは、生体材料が、どんな望ましくない局所作用も全身作用も、医薬療法を受ける人または受益者にもたらすことなく、その療法に関して所望の機能を果たせることであって、最も適切で有益な細胞応答または組織応答をその特定状況において生み出し、その療法の臨床的に関連した性能を最適化できることを指す(David F.Williams,Biomaterials,Volume29,Issue 20,July 2008,pages 2941−2953)。コンタクトレンズに用いる物質の生体適合性の証拠を確立しなければならない。この要求ための試験には、急性全身毒性、急性眼球刺激、細胞毒性、および感作によるアレルギー反応に関する試験が含まれているべきである。FDAによって述べられている指針をこの評価に使用できる。
【0088】
一般的な医療用デバイスおよび特にコンタクトレンズの場合、強度およびモジュラスを含め適切な物理的性質は、デバイスの取り扱い性と一体性を維持するのに必要である。快適性のためには低いモジュラス、取り扱い性のためには十分な機械的強度が望ましい。こうした物理的−機械的性質は、水吸収したコンタクトレンズ物質に対する標準試験で測定できる[American National Standard for Ophthalmics,ANSI Z80.20−2004,8.11−8.14 Flexural strength,8.16 Hardness,8.17 Modulus of elasticity]。
【0089】
潤滑性は、ある表面と別の表面との摩擦係数によって測定される表面の特徴である。コンタクトレンズでは、潤滑性は、まばたきの間に角膜上でレンズがどれほど容易に移動できるか、それによって角膜表面を回復させ、角膜へのレンズの付着を避けることができるかと関連している。一般に、イオン透過性の高いより湿潤性のレンズは移動性が高く、移動性/潤滑性の高いレンズは常に望ましいものである。
【0090】
涙液を保持する能力は、涙膜破壊時間(tear film break up time)(TBUT)で測定でき、これは、最後のまばたきから涙液膜に最初のドライ・スポットが生じるまでに経過する時間である。涙液膜は、まばたきとまばたきの間に自然に壊れて、コンタクトレンズ表面が空気にさらされ、レンズと角膜の脱水が助長される。目のまばたきのたびに涙液膜は新たにされる。したがって、TBUTがまばたきとまばたきの間の時間(約10秒間)と同じくらいであるなら、眼球表面は濡れた状態が保たれ健康が維持される。
【0091】
コンタクトレンズが、非特異タンパクおよび脂質の吸着に対して抵抗性がある場合も有利である。シリコーンハイドロゲルレンズの場合、疎水性シリコーンセグメントは、表面自由エネルギーを最小化しようとして、空気にさらされたレンズ表面に向かって移動し、そこに濃縮される傾向がある。疎水性シリコーンは涙液膜中の脂質およびタンパク質に対して親和性があり、そのため過剰の付着が起こり、光学的透明度およびレンズの着用快適性に影響を与える。これは、レンズでの付着および蛍光色素の浸透を追跡することにより定性的に測定できる。
【0092】
またコンタクトレンズは特に、光学的に透明であり、コンタクトレンズの作製に用いられるポリマーの色はごくわずかである必要もある。コンタクトレンズ配合物中のシリコーンモノマーおよび親水性モノマーは一般に不混和性であり、それらは可視光線を散乱させるのに十分大きな別個の相を形成する傾向がある。有効量の相溶化剤(compatablizing agent)をレンズ配合物に含めて、別個の相の大きさを可視光線の波長よりも十分小さくするならば、これを最小化またはなくすことができる。可視光線領域の光散乱を測定すると、コンタクトレンズにとって重要な相分離の指標が得られる。コンタクトレンズの光学的透明度は、コンタクトレンズの分光透過率および視感透過率を測定することによって評価できる[American National Standard for Ophthalmics,ANSI Z80.20−2004,8.10−Spectrual and luminous transmittances]。本発明はまた、上述した実施形態の組合せを含む。
【0093】
本発明は、以下の例示的実施例によってさらに理解されるであろう。こうした実施例は、本発明を実施する方法を提案するだけを意図しており、本発明はこれらの実施例に限定されないことを理解すべきである。
【0094】
[実施例]
[末端ヒドロキシル基を持つシリコーンメタクリレートの合成]
末端ヒドロキシル基を持つシリコーンメタクリレートを合成する一般手順を以下に記載する。
【化20】


TMSはトリメチルシロキサンである。
【0095】
[具体的な実施例1]
この方法は、特定のn(ここで、n=2)の場合に示される非限定例によってさらによく理解できる。
【0096】
[ステップ1.トリメチルシロキシプロピルヘキサメチル−トリシロキサンモノシランの合成]
【化21】


滴加漏斗(additional funnel)、窒素雰囲気(nitrogen blanket)、および熱電対(thermal couple)を備えた500mlの三つ口丸底フラスコに、ヘキサメチルトリシロキサン(Gelestの市販試料)、無水トルエンおよびウィルキンソン触媒(トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド)を充填し、次いでそのフラスコを45℃の油浴で加熱した。アリルオキシトリメチルシラン(TCI Americaから入手した市販試料)を滴加漏斗に移し、1時間かけてフラスコに滴加した。滴加後に、反応混合物は、窒素雰囲気下で一晩中、45℃の油浴の中で撹拌した。FT−IRは、アリルオキシトリメチルシランが完全に消費されたことを示唆した。粗生成物(透明な無色の液体だった)を分別蒸留(fractionally distilled)して、所望のトリメチルシロキシプロピルヘキサメチル−トリシロキサンを単離し、75%の収率で回収した。
【0097】
[ステップ2.メタクリルオキシエトキシプロピルヘキサメチル−トリシロキサンプロパノール(methacryloxyethoxypropyl hexamethyl−trisiloxane propanol)の合成]
【化22】


乾燥空気雰囲気下において滴下漏斗および熱電対を備えた250mlの三つ口丸底フラスコに、メタクリル酸アリルオキシエチル(allyloxyethyl methacrylate)、ヘキサン、およびカールシュテット触媒(ジビニルテトラメチルジシロキサンとクロロ白金酸(HPtCl)との反応によって形成される付加物)を充填した。その混合物を氷/水の槽中で冷却し、反応混合物の温度が−5〜50℃の間に保たれるようにして、トリメチルシロキシプロピルヘキサメチル−トリシロキサン(trimethylsiloxy propyl hexamethyl−trisiloxane)を、滴加漏斗を介して添加した。添加の後、混合物は、乾燥空気の下で一晩、−5〜50℃で撹拌した。FT−IRは、トリメチルシロキシプロピルヘキサメチル−トリシロキサンが完全に消費されたことを示唆した。粗混合物は、100mlのメタノール中で一晩中撹拌した。ヘキサン/酢酸エチルの混合物を溶離剤として用いてシリカゲルで脱保護生成物を精製すると、所望の生成物が79%の収率で得られた。H NMR:δ6.11(1H)、5.54(1H)、4.26(2H)、3.65(2H)、3.55(2H)、3.42(2H)、1.92(3H)、1.57(4H)、0.51(4H)、0.06(12H)、0.00(6H)
【0098】
[具体的な実施例2]
市販の出発物質によるテトラシロキサンセグメント(n=3)を持つ末端ヒドロキシル官能性シリコーンメタクリレートの合成について、同じ手順に従った。H NMR:δ6.11(1H)、5.54(1H)、4.26(2H)、3.65(2H)、3.55(2H)、3.42(2H)、1.92(3H)、1.57(4H)、0.51(4H)、0.06(12H)、0.00(12H)。
【化23】

【0099】
他の類似体であるペンタシロキサンセグメント(n=4)およびヘキサシロキサン(n=5)を持つヒドロキシル官能性シリコーンメタクリレートを、それらに応じて合成できる。
【0100】
[具体的な実施例3a]
以下の市販の出発物質によるテトラシロキサンセグメント(n=3)を持つ末端ジヒドロキシル官能性シリコーンメタクリレートの合成について、具体的な実施例1の場合の手順に従った。この実施例では、アリルオキシトリメチルシランの代わりに、TMSで保護された3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールを使用した。脱保護すると、最終生成物であるメタクリルオキシエトキシプロピルヘキサメチル−トリシロキサンプロパノキシ−1,2−プロパンジオールが得られた。
【化24】

【0101】
[具体的な実施例3b]
ジヒドロキシ官能性シリコーンメタクリレートを調製する別の合成経路を以下に示す。合成の第2ステップおよび第3ステップを何度か繰り返すと、ある範囲の収率が、合成方式に示されている各ステップで得られた。
【化25】

【0102】
ステップ1:凝縮器、滴下漏斗、電磁撹拌機、窒素の入口および出口を備えた三つ口丸底フラスコに、無水トルエン(120ml)中にヘキサメチルトリシロキサン(299.45g、1.44モル、GC純度:99.1%)およびウィルキンソン触媒(87.2mg、9.42×10−2ミリモル)を含んだ溶液を加えた。溶液を40℃に加熱し、次いでその中に、無水トルエン(35ml)中にアリルグリシジルエーテル(65.24g、0.57モル、GC純度:99.6%)を含んだ溶液を滴加した。混合物はだんだんと少し濁った。その添加(添加に90分間かかった)が終了した後、混合物を40℃で17時間撹拌した。混合物が再び透明になるのが観察された。その後、混合物を濃縮した。真空下で残留物を蒸留すると(75〜85℃/0.9〜1.35トル)、エポキシド末端シランが無色液体として得られた(140.6g、0.44モル、収率:77%、GC純度:97.2%)。H NMR(CDOD)δ:4.72(1H)、3.75(1H)、3.47(2H)、3.34−3.29(1H)、3.13(1H)、2.77(1H)、2.59(1H)、1.63(2H)、0.58(2H)、0.19−0.05(18H)。
【0103】
ステップ2:滴下漏斗、電磁撹拌機、乾燥空気の入口および出口を備えた三つ口丸底フラスコへ、無水ヘプタン(70ml)中にメタクリル酸アリルオキシエチル(53.50g、1.44モル、GC純度:97.0%)およびカールシュテット触媒(キシレン中に2%のPt、163mg、8.5×10−3ミリモル)を含む溶液を加えた。その混合物を氷−水の槽(8〜12℃)中に保持し、その混合物中へエポキシド末端のシラン(50.62g、156.9ミリモル、GC純度:97.2%)を滴加した(添加に40分間かかった)。次いで混合物を冷蔵庫(3〜5℃)内に12時間保持し、その後その中にジエチルエチレンジアミン(DEED、0.2ml)、およびMEHQ(88.9mg、0.7ミリモル)を加えた。その後、混合物を濃縮した。様々な精製方法(カラムクロマトグラフィーおよび抽出)を用いて未精製残留物に対して精製を行った。全体として、57.16g(116.0ミリモル、収率:74%)のエポキシド末端シリコーンメタクリレートを無色液体として分離した。H NMR(CDOD)δ:6.12(1H)、5.63(1H)、4.28(2H)、3.75(1H)、3.69(2H)、3.47(4H)、3.31(1H)、3.13(1H)、2.77(1H)、2.58(1H)、1.94(3H)、1.62(4H)、0.58(4H)、0.10−0.04(18H)。
【0104】
ステップ3:凝縮器、電磁撹拌機、乾燥空気の入口および出口を備えた三つ口丸底フラスコへ、2−(メチルアミノ)エタノール(1.70g、22.6ミリモル)とエポキシド末端のシリコーンメタクリレート(10.06g、20.4ミリモル)とピリジン(1.64g、20.7ミリモル)との溶液を加えた。溶液を室温で40分間撹拌し、その後60Cで62時間撹拌した。TLCは、制限反応物(limiting reactant)であるエポキシド末端シリコーンメタクリレートのほとんどが反応して新しいスポットを形成したことを示唆した。その後、混合物を濃縮した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc)を用いて未精製残留物に対して精製を行って、化合物であるジヒドロキシを含んだシリコーンメタクリレート(1.65g、2.91ミリモル、NMRによる純度:約85%、収率:14%)を液体として得た。H NMR(CDOD)δ:6.12(1H)、5.63(1H)、4.28(2H)、3.87(1H)、3.70−3.62(4H)、3.49−3.40(6H)、2.65−2.48(4H)、2.33(3H)、1.94(3H)、1.64(4H)、0.57(4H)、0.10−0.04(18H)。
【0105】
[具体的な実施例4]
トリヒドロキシ官能性シリコーンメタクリレートは、以下の合成方式にしたがって調製できる。
【化26】

【0106】
凝縮器、電磁撹拌機、乾燥空気の入口および出口を備えた三つ口丸底フラスコへ、無水THF(20ml)中にジエタノールアミン(2.38g、22.6ミリモル)、エポキシド末端シリコーンメタクリレート(10.00g、20.3ミリモル)、およびピリジン(1.62g、20.5ミリモル)を含む混合物を加えた。混合物を60Cで加熱して均質な溶液を生じさせた。混合物を60Cで44.5時間撹拌した。TLCは、制限反応物であるエポキシド末端シリコーンメタクリレートのほとんどが反応して新しいスポットを生じたことを示唆した。その後、混合物を濃縮した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc)を用いて未精製残留物に対して精製を行って、化合物であるトリヒドロキシを含んだシリコーンメタクリレート(5.0g、8.36ミリモル、NMRによる純度:約96%、収率:41%)を液体として得た。H NMR(CDOD)δ:6.12(1H)、5.63(1H)、4.28(2H)、3.83(1H)、3.69(2H)、3.63−3.58(4H)、3.49−3.42(6H)、2.78−2.53(6H)、1.94(3H)、1.62(4H)、0.58(4H)、0.10−0.04(18H)。
【0107】
[具体的な実施例5]
以下の市販の出発物質を用いた、親水性のカルボン酸末端基とテトラシロキサンセグメント(n=3)とを持つシリコーンメタクリレートの合成について、具体的な実施例1の場合の手順に従った。この実施例では、アリルオキシトリメチルシランの代わりに3−ブテン酸を使用して、最終生成物であるメタクリルオキシエトキシプロピルヘキサメチル−トリシロキサン3−ブテン酸(methacryloxyethoxypropyl hexamethyl−trisiloxane 3−butenoic acid)を製造した。
【化27】

【0108】
[親水性第四アミン末端基、スルホベタイン末端基、またはホスホリルエチルアンモニウムベタイン末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートの合成]
一般に、イオン性末端基を持つこうしたテトラシロキサンメタクリレートの合成は、3つのステップで行うことができる。最初のステップでは、ジメチルプロピルアミンテトラシロキサンモノシランを、カールシュテット触媒の存在下でテトラシロキサンジシランとジメチルアリルアミンとのヒドロシリル化反応から調製した。過剰量のジシランを用いて、モノヒドロシリル化が高収率となるようにした。第2ステップでは、ここでもヒドロシリル化触媒の存在下で、ジメチルプロピルアミンテトラシロキサンモノシランを、メタクリル酸アリルオキシエチルと反応させて、ジメチルプロピルアミン末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートが生じるようにさせた。これは、後で、溶媒(アセトニトリルなど)中でイオン化反応させる場合の前駆体として働くことができるが、それには、クロロエタノールと反応させて第四アミン末端基を形成させる場合;50〜60℃で1,3−プロパンスルトンと反応させてスルホプロピルアンモニウムベタイン末端基を形成させる場合;および2−メトキシ−2−オキソ−1,3、2−ジオキサホスホランと反応させてホスホリルエチルアンモニウムベタイン末端基を形成させる場合がある。
【化28】

【0109】
この方法は、スルホプロピルアンモニウムベタイン末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートの合成に関して示される非限定例(実施例6A)によっていっそうよく理解できる。
【0110】
[具体的な実施例6A]
[スルホプロピルアンモニウムベタイン末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートモノマーの合成に関する実験の詳細]
熱電対、凝縮器、および滴加漏斗を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、150mlの無水ペンタン中に特定量のカールシュテット触媒を含む溶液を、窒素雰囲気の下で充填した。次いでこの溶液に、35gのN,N−ジメチルアリルアミンと245gの1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサンとの混合物を2時間にわたって滴加した。滴加後に、反応混合物を窒素下で室温において一晩中撹拌し、その後、減圧下でペンタンを除去した。次いで、粗生成物を真空下で分別蒸留し、72〜75℃/700mTorrにおける留分を回収した。次いで、7.3gのこの生成物、5.1gのアリルオキシルエチルメタクリレート、および5mlの無水ペンタンを、100mLの丸底フラスコに投入した。次いでフラスコをゴム隔膜で密封し、氷/水の槽中で15分間冷却した後、注射器を用いてある量のカールシュテット触媒を加えた。次いで反応混合物を氷/水の槽中で一晩中撹拌した。その後、FT−IRはシランが完全に消費されたことを示唆した。次いで、酢酸エチル/メタノールを溶離剤として用いてシリカゲルで粗生成物を精製して、7.3gの生成物を無色液体として得た。5.3gのこのメタクリレートおよび1.07gのプロパンスルトンを5mLの無水塩化メチレンに溶かし、次いでその溶液を室温で一晩中撹拌した。ヘキサンで沈殿させた後、目的のメタクリレートを白色半固体として得た。H NMR(CDOD)δ:6.12(1H)、5.63(1H)、4.28(2H)、3.68(2H)、3.54−3.45(4H)、3.31(2H)、3.09(6H)、2.87(2H)、2.19(2H)、1.94(3H)、1.80(2H)、1.60(2H)、0.58(4H)、0.18−0.06(24H)。
【0111】
[具体的な実施例6B]
[ホスホリルコリン末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートモノマーの合成]
ホスホリルコリン末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートの合成は、以下に説明するようにヒドロキシル基末端テトラシロキサンメタクリレートから調製できる。
【化29】

【0112】
[具体的な実施例6C]
[第四アンモニウム塩末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートの合成]
第四アンモニウム塩末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートは、以下に示すようにジメチルアミノ末端テトラシロキサンメタクリレートから調製できる。
【化30】


凝縮器、電磁撹拌機、および乾燥空気パージ(dry air purge)を備えた丸底フラスコに、ジメチルアミノ末端シリコーンメタクリレート(10.11g、18.8ミリモル)およびクロロエタノール(2.5ml、3.01g、37.3ミリモル)を加えた。反応混合物を、乾燥空気の下で60℃において96時間撹拌した。溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル(1/1(v/v))を用いたシリカゲルカラムで精製すると、第四アンモニウム塩末端シリコーンメタクリレートが液体として得られた。1H NMR(CD3OD)δ:6.ll(1H)、5.63(1H)、4.27(2H)、3.98(2H)、3.69(2H)、3.48−3.35(6H)、3.16(6H)、1.94−1.90(3H)、1.81(2H)、1.64−1.59(2H)、0.60−0.56(4H)、0.18−0.05(24H)。
【0113】
[具体的な実施例7]
[ウレタン結合で共有結合しているスルホプロピルアンモニウムベタイン末端基を持つテトラシロキサンメタクリレートモノマーの合成]
【化31】


100mlのRBFに、実施例2からの末端ヒドロキシル官能性シリコーンメタクリレートよび蒸留したIPDIを加えた。混合物を室温で2日間撹拌した。TLCは、開始メタクリレートが完全に消費されたことを示唆した。次いで、反応混合物を氷/水の槽で冷却し、そのフラスコにN,N−ジメチルエタノールアミンを加えた。得られた混合物を氷/水の槽中で一晩中撹拌した。FI−IRはイソシアネートが完全に消費されたことを示した。次いで、粗生成物を、溶離剤として酢酸エチル/メタノールを用いたシリカゲルで精製して、第三アミン官能性シリコーンメタクリレートを無色粘稠液体として得た(収率69%)。次いでこのメタクリレートを無水ジクロロメタンに溶かした。その後この溶液に、プロパンスルトンを加え、その溶液を室温で2日間撹拌した。溶媒を減圧下で除去すると、最終的なベタイン含有シリコーンモノマーが砕けやすい固体として得られた。
【0114】
[実施例8〜13:]
[実施例2及び/または実施例5Aからのモノマーを含んでいるシリコーンハイドロゲルフィルムからなるレンズの作製]
実施例2及び/または実施例5Aからのモノマーと、コンタクトレンズ物質に一般的な他のモノマーとを含んでいる液体モノマー混合物を、表1にある重量パーセントの割合で混合する。表1に示す重量パーセントは、モノマー混合物の全重量に対する重量%である。モノマー混合物をポリプロピレンの型枠に入れ、80℃で50分間加熱した。フィルムを型枠から取り出し、プロパノール/水の混合物(1/1(v/v))で抽出し、脱イオン(DI)水中で最低4時間、水を吸収させる。含水量は、水を吸収させたレンズと乾燥レンズとの間の重量差を、水を吸収させたレンズの重量で割り、100%を掛けて求めた。乾燥レンズは、水を吸収させる前のレンズである。透明度は目視で評価した。表1に示されているデータが示唆しているように、高シリコーン含量および高含水量の光学的に透明なシリコーンハイドロゲルフィルムは、実施例2及び/または実施例5Aのシリコーン含有モノマーを用いて作製できる。さらに、親水性末端基を持つシリコーン含有モノマーは、レンズ配合物中の親水性成分および疎水性成分に対する効果的な相溶化剤となりうるので、実施例9と実施例13との比較で示されるように、光学的に均質な組成物が生み出される。
【0115】
TRISは、レンズ配合物中の疎水性成分である。本発明によるシリコーン含有モノマーは、少なくとも1種の親水基を含む。TRISの量の一部をシリコーン含有モノマーで置き換えた場合、あるいはTRISの全量をシリコーン含有モノマーで置き換えた場合、シリコーン含有モノマーのタイプに応じて、含水量の改善が観察される。これは、コンタクトレンズの湿潤性に対する本発明によるシリコーン含有モノマーの効果を示す。
【0116】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0117】
図1】Bは重合可能基、好ましくはエチレン性不飽和基(C=C基と同等)であり、Zは親水基であり、Yは、コモノマー、架橋剤、マクロマーまたはプレポリマー(コンタクトレンズ配合物中に使用される1つまたは複数の重合可能基を持つ)、およびこれらの組合せである。
図1