(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の導電路構造は、導電路における導体の切断可能部分に対しこの外側を絶縁部材にて覆う構造である。そして、このような構造の導電路を複数本備えると、本発明のワイヤハーネスになる。
【0027】
本発明のワイヤハーネスは、ハイブリッド自動車又は電気自動車に配索するものを対象にしている。以下では、ハイブリッド自動車での例を挙げて説明をするものとする(電気自動車の場合でも本発明のワイヤハーネスの構成、構造、及び効果は基本的に同じであるものとする。尚、ハイブリッド自動車又は電気自動車に限らず、通常の自動車等でも本発明を適用することができるものとする)。
【0028】
図1(a)は本発明のワイヤハーネスの配索例を示す模式的な図、
図1(b)はワイヤハーネス端部の模式的な斜視図である。
【0029】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介して図示しないバッテリー(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本形態において前輪等がある位置のエンジンルーム5に設置(搭載)されている。また、図示しないバッテリーは、エンジンルーム5の後方に存在する自動車室内、又は後輪等がある自動車後部に設置(搭載)されている。
【0030】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧となる本発明のワイヤハーネス21により接続されている。また、図示しないバッテリーとインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス6により接続されている。ワイヤハーネス6は、エンジンルーム5から例えばフロアパネルの地面側となる床下にわたって配索されている。
【0031】
ここで本形態での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケース7を含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケース8を含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。図示しないバッテリーは、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。図示しないバッテリーは、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0032】
インバータユニット4は、本形態においてモータユニット3の直上に配置固定されている。すなわち、インバータユニット4とモータユニット3は近接するように設置されている。このような設置状態であることから、ワイヤハーネス21は短いものとなっている。インバータユニット4とモータユニット3とに関し、引用符号9はモータユニット3の直上に配置固定するための固定脚部を示している。
【0033】
ワイヤハーネス21は、ハーネス本体22と、このハーネス本体22の一端に設けられるモータ側コネクタ23と、ハーネス本体22の他端に設けられるインバータ側コネクタ24とを備えて構成されている。ハーネス本体22は、略同一平面上に所定の間隔をあけて並ぶ複数本(ここでは三本)の高圧導電路25(導電路)と、この複数本の高圧導電路25を一括して覆う電磁シールド部材26とを備えて構成されている。
【0034】
電磁シールド部材26は、電磁シールド機能を発揮させるための部材であって、例えば編組又は金属箔を筒状にすることにより形成されている。電磁シールド部材26は、本形態においてモータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24を覆うような長さで形成されている。
【0035】
モータ側コネクタ23は、モータユニット3のシールドケース7に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。また、インバータ側コネクタ24も同様で、インバータユニット4のシールドケース8に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。
【0036】
高圧導電路25は、図示しない導体に設けられる切断可能部分に対しこの外側を絶縁部材にて覆う構造を有している。具体的な構造は後述するが、ワイヤハーネス21は高圧導電路25を切断するような事態が生じても、導体切断端部の露出を防止することができるようになっている。また、導体切断端部の露出を防止できることから、安全性を確保することもできるようになっている。以下、実施例を参照しながら具体的に説明をする。
【実施例1】
【0037】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図2は本発明の導電路構造を示す断面図である。また、
図3は導電路の切断状態の断面図である。
【0038】
図2において、ワイヤハーネス31は、ハーネス本体32と、このハーネス本体32の一端に設けられる図示しないモータ側コネクタと、ハーネス本体32の他端に設けられるインバータ側コネクタ33とを備えて構成されている。ハーネス本体32は、略同一平面上に所定の間隔をあけて並ぶ複数本(ここでは三本)の高圧電線34(導電路)と、この複数本の高圧電線34を一括して覆う電磁シールド部材35とを備えて構成されている。図示しないモータ側コネクタは、基本的にインバータ側コネクタ33と同様に構成されている。
【0039】
高圧電線34は、導体36と、この導体36を被覆する絶縁体37とを備えて構成されている。高圧電線34は、この端末において所定の長さ分だけ絶縁体37が皮剥されて導体36が露出するように加工されている。導体36は、ここでは素線(銅や銅合金やアルミニウム製)を撚り合わせてなる導体構造のものが用いられている。導体36は、特に限定するものでないが、断面略丸形(円形)となる形状に形成されている。尚、導体36に関し、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造)のものであってもよいものとする。また、例えば編組バスバーからなる導体構造のものであってもよいものとする。
【0040】
絶縁体37は、絶縁性を有する樹脂材料を導体36の外側に押し出し被覆することによりなるものであって、ここでは公知のものが用いられている。
【0041】
高圧電線34は、高圧用であることから、太物の電線に形成されている。
【0042】
電磁シールド部材35は、電磁シールド機能を発揮させるための部材であって、例えば編組又は金属箔を筒状にすることにより形成されている。電磁シールド部材35の一端は、例えば加締めによりインバータ側コネクタ33の後述するシールドシェル45に固定されている。また、他端も図示しないモータ側コネクタに同様に固定されている(電磁シールド部材35の固定は一例であるものとする)。
【0043】
インバータ側コネクタ33は、インバータユニット4のシールドケース8(
図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされる部分であって、端子金具38と、ハウジング39と、端子係止部材40と、防水用のシール部材41〜43と、リアホルダ44と、シールドシェル45と、固定用のボルト(図示省略)と、加締めリング46とを備えて構成されている。
【0044】
端子金具38は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。端子金具38は、ここでは雄型のものが用いられている。端子金具38は、電気接触部47と、この電気接触部47に連続する電線接続部48とを有している。
【0045】
電気接触部47は、タブ状に形成されている。電気接触部47には、第一貫通孔49と、第二貫通孔50とが形成されている。第一貫通孔49は、インバータユニット4(
図1参照)の内部において電気的な接続に用いられる部分として形成されている。一方、第二貫通孔50は、端子係止部材40により係止される部分として形成されている。
【0046】
電線接続部48は、高圧電線34の導体36を接続固定することができるように形成されている。本実施例においては、バレル形状であって加締めにより導体36を圧着して接続することができるように形成されている(接続に関しては、溶接等も可能であるものとする)。
【0047】
ハウジング39は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、本実施例においては特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものとなっている。ハウジング39は、ハウジング本体51(絶縁部材本体)と、このハウジング本体51の後端に一体となる本体延長部52とを有して図示形状に形成されている(形状は一例であるものとする)。
【0048】
ハウジング本体51の内部には、端子収容室53が形成されている。端子収容室53は、高圧電線34の導体36に接続固定された端子金具38の電線接続部48を主に収容することができるように形成されている。端子収容室53には、ハウジング先端に向けて貫通する電気接触部導出穴54が形成されている。端子金具38は、端子収容室53に収容されると、電気接触部導出穴54を介して電気接触部47がハウジング先端から突出するようになっている。
【0049】
ハウジング本体51には、電気接触部導出穴54に連通する端子係止部材収容穴55が下方から上方へ向けて形成されている。端子金具38は、端子係止部材収容穴55に嵌合する端子係止部材40により第二貫通孔50が係止され、これにより抜け止めがなされるようになっている。
【0050】
端子収容室53と電気接触部導出穴54との連続部分には、シール部材収容穴56が形成されている。シール部材収容穴56に収容されたシール部材41は、電気接触部47に対して水密に接触するようになっている。
【0051】
端子収容室53には、この後方に連続するようにシール部材収容穴57が形成されている。また、この後方には、リアホルダ収容穴58が連成されている。シール部材収容穴57に収容されたシール部材42は、高圧電線34の絶縁体37に対して水密に接触するようになっている。リアホルダ収容穴58は、リアホルダ44を嵌合させることができるような形状に形成されている。リアホルダ収容穴58には、本体延長部52が連成されている。
【0052】
本体延長部52は、後述する導体切断端部67の外側を覆うことができるように形成されている。本体延長部52は、リアホルダ収容穴58から後方へ長く伸びるように形成されている。本体延長部52は、図示の如く高圧電線34に対して別体であることから、後述する導体切断端部67の外側を間接的に覆う部分になっている。
【0053】
尚、本体延長部52は本実施例においてリアホルダ収容穴58に連成されているが、この限りでないものとする。すなわち、リアホルダ収容穴58に筒状のものを後付けして、これを本体延長部の替わりとしてもよいものとする。上記筒状のものとしては、絶縁性を有するパイプ又はチューブや、絶縁テープを筒状に巻き付けてなるもの等が一例として挙げられるものとする。このような筒状の本体延長部は、後述する導体切断端部67を覆うことができれば、剛体であっても或いは伸張性を有していてもよいものとする。上記絶縁テープからなる筒状の本体延長部は、この一端がリアホルダ収容穴58に固定されるとともに、他端も高圧電線34の絶縁体37に固定されるような、所謂テープ巻きの形状に形成してもよいものとする。剛体のような伸びのない本体延長部は、後述する導体切断端部67の移動量を考慮して全長が設定されるものとする。
【0054】
ハウジング本体51の外部には、フランジ部59が形成されている。このフランジ部59には、シール部材収容溝60が形成されている。シール部材収容溝60に収容されたシール部材43は、インバータユニット4のシールドケース8(
図1参照)に対して水密に接触するようになっている。
【0055】
リアホルダ44は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、特に図示しないが二分割可能な形状に形成されている。リアホルダ44は、高圧電線34の直径に合わせて貫通する電線挿通孔61と、リアホルダ収容穴58に嵌合する大径の嵌合部62と、この嵌合部62に連続して高圧電線34を引き出す小径の電線引き出し部63とを有している。電線引き出し部63は、この端部が本体延長部52の内部に位置するように形成されている。
【0056】
シールドシェル45は、導電性を有する金属部品であって、略筒状のシェル本体64と、複数のシェル固定部65とを有している。シェル本体64は、この内部にハウジング本体51を収容することができるような形状に形成されている。シェル固定部65は、図示しない固定用のボルトを用いてインバータユニット4のシールドケース8(
図1参照)に固定されるような形状に形成されている。
【0057】
シェル本体64には、加締め受け部66が形成されている。この加締め受け部66と加締めリング46との間には、電磁シールド部材35の一端が挟み込まれるようになっている。電磁シールド部材35は、この一端が加締めにより挟み込まれて固定されると、シールドケース8(
図1参照)に対し電気的に接続されるようになっている。
【0058】
上記構成及び構造に基づきながら、ハイブリッド自動車1(
図1参照)に衝突が起こった場合におけるワイヤハーネス31の作用について、以下に説明をする。
【0059】
図1において、ハイブリッド自動車1に衝突が起こった場合を考えると、エンジン2及びモータユニット3に対してインバータユニット4が例えば後方へ移動する。ワイヤハーネス31はモータユニット3及びインバータユニット4に接続された状態にあることから、インバータユニット4が後方へ移動した場合、ワイヤハーネス31には自身を引っ張るような衝撃が加わることになる。
【0060】
ワイヤハーネス31に上記の衝撃が加わると、この力は高圧電線34の導体36及び端子金具38の電線接続部48の接続部分に掛かり、接続部分での導体36は
図3に示す如く切断される。具体的には、電線接続部48における加締め部分に導体36の一部が残り、また、高圧電線34側は導体切断端部67が露出するような状態で切断される。この時、高圧電線34は導体切断端部67が露出するものの、導体切断端部67の外側は本体延長部52により覆われることから、電気的な接触が規制された状態になる(移動量が小さい場合、導体切断端部67の外側はハウジング本体51により覆われ、これにより電気的な接触が規制された状態になる)。
【0061】
以上、
図1ないし
図3を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電路である高圧電線34に対しこれを切断するような事態が生じても、本体延長部52等の絶縁部材の存在により導体切断端部67の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネス31を提供することができるという効果も奏する。
【実施例2】
【0062】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。
図4は本発明の導電路構造と導電路の切断状態とを示す断面図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
図4において、ワイヤハーネス71は、ハーネス本体32と、このハーネス本体32の一端に設けられる図示しないモータ側コネクタと、ハーネス本体32の他端に設けられるインバータ側コネクタ72とを備えて構成されている。
【0064】
インバータ側コネクタ72は、インバータユニット4のシールドケース8(
図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされる部分であって、端子金具38と、ハウジング73と、端子係止部材40と、防水用のシール部材41〜43と、リアホルダ74と、シールドシェル45と、固定用のボルト(図示省略)と、加締めリング46とを備えて構成されている。
【0065】
実施例2は、実施例1に対しハウジング73及びリアホルダ74の構造が異なるものの、得られる効果は同じになっている。
【0066】
ハウジング73は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、本実施例においては特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものとなっている。ハウジング73は、ハウジング本体51(絶縁部材本体)のみで構成されている。すなわち、実施例1での本体延長部52(
図2及び
図3参照)は存在しない構成及び構造になっている。本実施例2では、以下の説明で分かるようになるが、ハウジング本体51に対し別体となるリアホルダ74の一部が本体延長部52(
図2及び
図3参照)と同じに機能するようになっている。
【0067】
リアホルダ74は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、特に図示しないが二分割可能な形状に形成されている。リアホルダ74は、高圧電線34の直径に合わせて貫通する電線挿通孔61と、リアホルダ収容穴58に嵌合する大径の嵌合部62と、この嵌合部62に連続して高圧電線34を引き出す小径の電線引き出し部63と、電線引き出し部63を後方に伸ばすような形状に形成される本体延長部75とを有している。電線引き出し部63及び本体延長部75は、ハウジング73の後端よりも後方に位置するように形成されている。
【0068】
本体延長部75は、導体切断端部67の外側を覆うことができるように形成されている。本体延長部75は、図示の如く高圧電線34に対して別体であることから、導体切断端部67の外側を間接的に覆う部分になっている。
【0069】
尚、本体延長部75は本実施例において電線引き出し部63に連成されているが、この限りでないものとする。すなわち、電線引き出し部63に筒状のものを後付けして、これを本体延長部の替わりとしてもよいものとする。上記筒状のものとしては、絶縁性を有するパイプ又はチューブや、絶縁テープを筒状に巻き付けてなるもの等が一例として挙げられるものとする。このような筒状の本体延長部は、導体切断端部67を覆うことができれば、剛体であっても或いは伸張性を有していてもよいものとする。上記絶縁テープからなる筒状の本体延長部は、この一端が電線引き出し部63に固定されるとともに、他端も高圧電線34の絶縁体37に固定されるような、所謂テープ巻きの形状に形成してもよいものとする。剛体のような伸びのない本体延長部は、導体切断端部67の移動量を考慮して全長が設定されるものとする。
【0070】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネス71に衝突等の衝撃が加わると、この力は高圧電線34の導体36及び端子金具38の電線接続部48の接続部分に掛かり、接続部分での導体36は図示の如く切断される。具体的には、電線接続部48における加締め部分に導体36の一部が残り、また、高圧電線34側は導体切断端部67が露出するような状態で切断される。この時、高圧電線34は導体切断端部67が露出するものの、導体切断端部67の外側は本体延長部75により覆われることから、電気的な接触が規制された状態になる(移動量が小さい場合、導体切断端部67の外側はハウジング本体51、又はリアホルダ74における嵌合部62や電線引き出し部63により覆われ、これにより電気的な接触が規制された状態になる)。
【0071】
以上、
図4を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電路である高圧電線34に対しこれを切断するような事態が生じても、本体延長部75等の絶縁部材の存在により導体切断端部67の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネス71を提供することができるという効果も奏する。
【実施例3】
【0072】
以下、図面を参照しながら実施例3を説明する。
図5(a)は本発明の導電路構造を示す断面図、
図5(b)は導電路の切断状態を示す断面図である。また、
図6(a)は
図5の切断可能部分における切断部の拡大斜視図、
図6(b)及び(c)は変形例の拡大斜視図である。
【0073】
図5において、ワイヤハーネスは一又は複数本の導電路81を含んで構成されている。尚、ワイヤハーネスにおける他の構成に関しては省略するが、実施例1、2と同じであってもよいものとする。以下で詳細に説明する導電路81は、実施例1、2に適用することができるものとする。
【0074】
導電路81は、導体82と、この導体82を被覆する絶縁体83とを備えて構成されている。導体82は、本実施例において、導電性を有する金属板(銅や銅合金やアルミニウム製)をプレス加工することにより形成されている。すなわち導体82は、所定の導体幅及び肉厚を有するバスバー形状(帯板形状)に形成されている。
【0075】
尚、導体82はバスバー形状に限らないものとする。例えば、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造)のものであってもよいものとする。導体82は、後述する切断部84を設けることが可能であれば、すなわち切断可能な部分を設けられれば特に限定されないものとする。このような導体82の中間には、切断部84が設けられている(配置は一例であるものとする)。
【0076】
切断部84は、導体82における切断可能な部分に設けられている。また、切断部84は、例えば衝突のような外力が加わった場合に、導体82において真っ先に切断される部分として設けられている。
【0077】
切断部84は、
図6(a)に示す如く溝84aを全周に形成する形態や、特に図示しないがバスバー平面部分にV溝やU溝を形成する形態や、
図6(b)に示す如くノッチ84bをバスバー両側部分に形成する形態や、
図6(c)に示す如くバスバー平面部分を貫通する穴84cとノッチ84bとの組み合わせによる形態や、特に図示しないがバスバー平面部を潰して薄肉に形成する形態等が挙げられるものとする。
【0078】
絶縁体83は、絶縁性及び伸張性を有する樹脂材料やエラストマーを導体82の外側に設けてなるものであって、押し出しによる成形やオーバーモールドが一例として挙げられるものとする。絶縁体83は、特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものであって、導体82の外側を直接的に覆う部分として設けられている。
【0079】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネスに衝突等の衝撃が加わると、この力は導電路81の導体82における切断可能部分、具体的には切断部84に掛かり、導体82は
図5(b)に示す如く切断される。この時、導体82は、一方の導体切断端部85と他方の導体切断端部86とに分離した状態になる。切断部84の位置で導体82の切断・分離が生じると、絶縁体83は分離せずに伸びた状態になる。すなわち、伸び部87が生じた状態になる。
【0080】
上記一方の導体切断端部85は、この外側に絶縁体83(伸び部87)が存在することから、これにより電気的な接触が規制された状態になる。また、上記他方の導体切断端部86も、この外側に絶縁体83(伸び部87)が存在することから、電気的な接触が規制された状態になる。
【0081】
以上、
図5及び
図6を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電路81に対しこれを切断するような事態が生じても、絶縁部材である絶縁体83(伸び部87)の存在により導体切断端部85、86の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネスを提供することができるという効果も奏する。
【実施例4】
【0082】
以下、図面を参照しながら実施例4を説明する。
図7(a)は本発明の導電路構造を示す断面図、
図7(b)は導電路の切断状態を示す断面図である。尚、上記実施例3と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0083】
図7において、ワイヤハーネスは一又は複数本の導電路91を含んで構成されている。尚、ワイヤハーネスにおける他の構成に関しては省略するが、実施例1、2と同じであってもよいものとする。以下で詳細に説明する導電路91は、実施例1、2に適用することができるものとする。
【0084】
導電路91は、切断可能部分に切断部84を有する導体82と、この導体82を被覆する絶縁体92と、絶縁体92の外側に設けられる絶縁部材93とを備えて構成されている。
【0085】
絶縁体92は、絶縁性を有する樹脂材料を導体82の外側に押し出し被覆することによりなるものであって(オーバーモールドも可)、ここでは公知のものが用いられている。絶縁体92の外周には、特に限定するものでないが切断部94が設けられている。切断部94は、導体82の切断部84の位置に合わせて設けられている。切断部94は、絶縁体92の切断がし易くなれば形態は特に限定されないものとする。
【0086】
絶縁部材93は、特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものであって、導体82における切断可能部分の外側を間接的に覆う部分として設けられている。絶縁部材93は、絶縁性及び伸張性を有する樹脂材料やエラストマーを用いてなり、絶縁体92の外側に設けられている。絶縁部材93は、押し出しによる成形やオーバーモールド、或いは、筒状に形成してこれを絶縁体92に固着したり、絶縁テープを巻き付けてこれを筒状にしたりして設けられている。
【0087】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネスに衝突等の衝撃が加わると、この力は導電路91の導体82における切断可能部分及び絶縁体92における切断可能部分、具体的には切断部84及び94に掛かり、導体82及び絶縁体92は
図7(b)に示す如く切断される。この時、導体82は、一方の導体切断端部85と他方の導体切断端部86とに分離した状態になる。切断部84の位置で導体82の切断・分離が生じると、絶縁部材93は分離せずに伸びた状態になる。すなわち、伸び部95が生じた状態になる。
【0088】
上記一方の導体切断端部85は、この外側に絶縁部材93(伸び部95)が存在することから、これにより電気的な接触が規制された状態になる。また、上記他方の導体切断端部86も、この外側に絶縁部材93(伸び部95)が存在することから、電気的な接触が規制された状態になる。
【0089】
以上、
図7を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電路91に対しこれを切断するような事態が生じても、絶縁部材93(伸び部95)の存在により導体切断端部85、86の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネスを提供することができるという効果も奏する。
【0090】
尚、本実施例の絶縁部材93は伸張性を有しているが、この限りでないものとする。すなわち、一方の導体切断端部85と他方の導体切断端部86との分離に係る量を考慮して全長を設定すれば剛体であってもよいものとする(伸びのないものであってもよいものとする)。絶縁部材93は、剛性を有するパイプやチューブなどで形成してもよいものとする。
【実施例5】
【0091】
以下、図面を参照しながら実施例5を説明する。
図8は本発明の導電路構造を示す断面図である。尚、上記実施例3、4と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0092】
図8において、ワイヤハーネスは一又は複数本の導電路101を含んで構成されている。尚、ワイヤハーネスにおける他の構成に関しては省略するが、実施例1、2と同じであってもよいものとする。以下で詳細に説明する導電路101は、実施例1、2に適用することができるものとする。
【0093】
導電路101は、切断可能部分に切断部84を有する導体82と、この導体82を被覆する絶縁体92と、絶縁体92の外側に設けられる絶縁部材102とを備えて構成されている。
【0094】
絶縁部材102は、特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものであって、導体82における切断可能部分の外側を間接的に覆う部分として設けられている。絶縁部材102は、絶縁性及び伸張性を有する樹脂材料やエラストマーを用いてなり、絶縁体92の外側に設けられている。絶縁部材102は、略筒状に形成されている。絶縁部材102は、絶縁体92に対して固着する一対の固着部103と、この一対の固着部103間に設けられる蛇腹部104とを有して図示形状に形成されている。蛇腹部104は、蛇腹形状やブーツ形状であって、伸張性を有している。
【0095】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネスに衝突等の衝撃が加わると、この力は導電路101の導体82における切断可能部分及び絶縁体92における切断可能部分、具体的には切断部84及び94に掛かり、導体82及び絶縁体92は切断される(図示省略)。この時、導体82は、一方の導体切断端部と他方の導体切断端部とに分離した状態になる(
図7(b)が参考になる)。切断部84の位置で導体82の切断・分離が生じると、絶縁部材102は蛇腹部104が伸びた状態になる。
【0096】
上記一方の導体切断端部は、この外側に蛇腹部104が存在することから、これにより電気的な接触が規制された状態になる。また、上記他方の導体切断端部も、この外側に蛇腹部104が存在することから、電気的な接触が規制された状態になる。
【0097】
以上、
図8を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電路101に対しこれを切断するような事態が生じても、絶縁部材102における蛇腹部104の存在により導体切断端部の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネスを提供することができるという効果も奏する。
【実施例6】
【0098】
以下、図面を参照しながら実施例6を説明する。
図9は本発明の導電路構造を示す断面図である。
【0099】
図9において、ワイヤハーネスは一又は複数本の導電路111を含んで構成されている。尚、ワイヤハーネスにおける他の構成に関しては省略するが、実施例1、2と同じであってもよいものとする。以下で詳細に説明する導電路111は、実施例1、2に適用することができるものとする。
【0100】
導電路111は、導体112と、この導体112を被覆する絶縁体113と、絶縁体113の外側に設けられる絶縁部材114とを備えて構成されている。
【0101】
導体112は、切断可能部分に配置される切断用導体115と、この切断用導体115の両端にそれぞれ連成されるバスバー導体116とを備えて構成されている。切断用導体115は、本実施例において公知の編組バスバーにて形成されている(一例であるものとする。切断可能であれば特に限定されないものとする)。バスバー導体116は、上記導体82と同じものが用いられている。切断用導体115とバスバー導体116は、本実施例において溶接117により接合されている(接合方法は特に限定されないものとする)。
【0102】
絶縁体113は、絶縁性を有する樹脂材料をバスバー導体116の外側にオーバーモールドすることによりなるものであって、端部118には係合用の環状凸部119が形成されている。環状凸部119には、絶縁部材114の後述する係合凹部120が係合するようになっている。
【0103】
絶縁部材114は、特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものであって、導体112における切断可能部分(切断用導体115が位置する部分)の外側を覆う部分として設けられている。絶縁部材114は、絶縁性及び伸張性を有する樹脂材料やエラストマーを用いてなり、絶縁体113の外側かつ端部118間を繋ぐように設けられている。絶縁部材114は、略筒状に形成されている。絶縁部材114は、絶縁体113の環状凸部119に係合する一対の係合凹部120と、この一対の係合凹部120間に設けられる蛇腹部121とを有して図示形状に形成されている。蛇腹部121は、蛇腹形状やブーツ形状であって、伸張性を有している。
【0104】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネスに衝突等の衝撃が加わると、この力は導電路111の導体112における切断可能部分、具体的には切断用導体115に掛かり、切断用導体115は切断される(図示省略)。この時、切断用導体115は、一方の導体切断端部と他方の導体切断端部とに分離した状態になる。切断用導体115の位置で導体112の切断・分離が生じると、絶縁部材114は蛇腹部121が伸びた状態になる。
【0105】
上記一方の導体切断端部は、この外側に蛇腹部121が存在することから、これにより電気的な接触が規制された状態になる。また、上記他方の導体切断端部も、この外側に蛇腹部121が存在することから、電気的な接触が規制された状態になる。
【0106】
以上、
図9を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電路111に対しこれを切断するような事態が生じても、絶縁部材114における蛇腹部121の存在により導体切断端部の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネスを提供することができるという効果も奏する。
【実施例7】
【0107】
以下、図面を参照しながら実施例7を説明する。
図10は本発明の導電路構造を示す断面図である。尚、上記実施例6と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0108】
図10において、ワイヤハーネスは一又は複数本の導電路131を含んで構成されている。導電路131は、導体112と、この導体112を被覆する絶縁体113と、絶縁体113の外側に設けられる絶縁部材132とを備えて構成されている。導電路131は、絶縁部材132が上記実施例6と異なっている。具体的には、後述するチューブ部133のみが異なっている。
【0109】
絶縁部材132は、特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものであって、導体112における切断可能部分(切断用導体115が位置する部分)の外側を覆う部分として設けられている。絶縁部材132は、絶縁性及び伸張性を有する樹脂材料やエラストマーを用いてなり、絶縁体113の外側かつ端部118間を繋ぐように設けられている。絶縁部材132は、略筒状に形成されている。絶縁部材132は、絶縁体113の環状凸部119に係合する一対の係合凹部120と、この一対の係合凹部120間に設けられる伸張性のチューブ部133とを有して図示形状に形成されている。
【0110】
実施例7は、実施例6と同じ作用が生じる。従って、導電路131に対しこれを切断するような事態が生じても、絶縁部材132におけるチューブ部133の存在により導体切断端部の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネスを提供することができるという効果も奏する。
【実施例8】
【0111】
以下、図面を参照しながら実施例8を説明する。
図11は本発明の導電路構造と導電路の切断状態とを示す断面図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0112】
図11において、ワイヤハーネス141は、ハーネス本体32と、このハーネス本体32の一端に設けられる図示しないモータ側コネクタと、ハーネス本体32の他端に設けられるインバータ側コネクタ142とを備えて構成されている。
【0113】
インバータ側コネクタ142は、インバータユニット4のシールドケース8(
図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされる部分であって、端子金具38と、ハウジング143と、端子係止部材40と、防水用のシール部材41〜43と、リアホルダ144と、絶縁カバー145と、シールドシェル45と、固定用のボルト(図示省略)と、加締めリング46とを備えて構成されている。
【0114】
実施例8は、実施例1に対しハウジング143及びリアホルダ144の構造が異なるものの、また、新たに絶縁カバー145が加わるものの、得られる効果は同じかそれ以上になっている。
【0115】
ハウジング143は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、本実施例においては特許請求の範囲に記載された絶縁部材に相当するものとなっている。ハウジング143は、ハウジング本体51(絶縁部材本体)と、このハウジング本体51に取り付けられるリアホルダ144(絶縁部材本体)とを備えて構成されている。すなわち、実施例1での本体延長部52(
図2及び
図3参照)はハウジング143に存在しない構成及び構造になっている。
【0116】
本実施例8では、以下の説明で分かるようになるが、リアホルダ144に取り付けられる絶縁カバー145が本体延長部52(
図2及び
図3参照)と同じに機能するようになっている。すなわち、絶縁カバー145が本体延長部として機能するようになっている。
【0117】
リアホルダ144は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、特に図示しないが二分割可能な形状に形成されている。リアホルダ144は、高圧電線34の直径に合わせて貫通する電線挿通孔61と、リアホルダ収容穴58に嵌合する大径の嵌合部62と、この嵌合部62に連続して高圧電線34を引き出す小径の電線引き出し部63と、電線引き出し部63の端部に例えば上下に突出形成される係止凸部146とを有している。係止凸部146は、絶縁カバー145を引っ掛けてこの抜けを規制することができるように形成されている。
【0118】
絶縁カバー145は、特許請求の範囲に記載した本体延長部に相当する部材であって、上記の如く絶縁体本体の一部となるリアホルダ144に対し別体になっている。絶縁カバー145は、絶縁性及び柔軟性を有する部材であって、ここではエラストマー製(例えばゴム製)のものとなっている。絶縁カバー145は、筒形状に形成されており、大径の係止部147と、この係止部147から後方に伸びるカバー部148とを有している。係止部147には、リアホルダ144の係止凸部146に引っ掛かり係止される係止凹部149が形成されている。絶縁カバー145は、これを180度回転させ、上下逆にしてもリアホルダ144に係止されるように形成されている。
【0119】
本体延長部に相当する絶縁カバー145は、図示の如く高圧電線34に対して別体であることから、導体切断端部67の外側を間接的に覆う部分になっている。
【0120】
尚、絶縁カバー145は、複数本の高圧電線34を一括して覆う形状であってもよいし、個々に覆う形状であってもよいものとする。
【0121】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネス141に衝突等の衝撃が加わると、この力は高圧電線34の導体36及び端子金具38の電線接続部48の接続部分に掛かり、接続部分での導体36は図示の如く切断される。具体的には、電線接続部48における加締め部分に導体36の一部が残り、また、高圧電線34側は導体切断端部67が露出するような状態で切断される。この時、高圧電線34は導体切断端部67が露出するものの、導体切断端部67の外側は本体延長部に相当する絶縁カバー145により覆われることから、電磁シールド部材35に対し電気的な接触が規制された状態になる(移動量が小さい場合、導体切断端部67の外側はハウジング本体51、又はリアホルダ144における嵌合部62や電線引き出し部63により覆われ、これにより電気的な接触が規制された状態になる)。
【0122】
以上、
図11を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電路である高圧電線34に対しこれを切断するような事態が生じても、本体延長部に相当する絶縁カバー145等の絶縁部材の存在により導体切断端部67の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、上記効果により安全性の高いワイヤハーネス141を提供することができるという効果も奏する。
【0123】
尚、ワイヤハーネス141は、モータユニット3とインバータユニット4(
図1参照)とを電気的に接続してエンジンルーム5に配索されているがこの限りでないものとする。すなわち、特に図示しないが、リアモータユニットやリアインバータユニットを搭載する場合には、これらを接続するために自動車後部に配索されてもよいものとする。このような配索位置に関しては、実施例8に限らず、他の実施例にも適用可能であるものとする。
【0124】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。