(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一のポリマーを射出成形する工程が、180℃〜250℃なる範囲の溶融温度、180℃〜250℃なる範囲のバレル温度、30℃〜70℃なる範囲のスロート温度、30℃〜95℃なる範囲の金型温度、1秒〜5秒なる範囲の滞留時間、50mm/秒〜250mm/秒なる範囲の射出速度、100mm/秒〜300mm/秒なる範囲の可塑化速度、5〜18MPa(50〜180bar)なる範囲の射出成形圧力、1〜20MPa(10〜200bar)なる範囲の保持圧力、0.5〜2.5MPa(5〜25bar)なる範囲の背圧、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、プロセス設定を使用する、請求項4記載の方法。
前記方法が、更に、前記マトリックスと前記成形面の第二部分とを結合して、前記成形面全体を形成した後、前記重合性組成物を配置して、該成形面全体と直接接触させる工程を含む、請求項7記載の方法。
前記第一のポリマーを使用して前記成形面の第一部分を形成する前記工程が、該第一のポリマーを、前記第二のポリマーで形成され、予備成形された成形面上に直接適用する工程を含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
前記第一のポリマーを前記予備成形された成形面上に直接適用する前記工程が、前記第一のポリマーを流延して、前記第二のポリマーで形成された前記成形面の第二部分を含む、予備成形された金型部材とする工程を含む、請求項9記載の方法。
前記方法が、更に、前記成形面の第一部分及び第二部分両者から、前記ポリマー製眼科学デバイス本体を離型する工程を含み、かつ該ポリマー製眼科学デバイス本体が、該成形面の第一部分から離型される前に、該デバイス本体が、該成形面の第二部分から離型される、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
前記方法が、更に、前記ポリマー製眼科学デバイス本体又は前記成形面の第二部分を液体と接触させる工程を含まない方法を利用して、該デバイス本体を少なくとも該成形面の第二部分から離型する工程をも含む、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
前記方法が、更に、前記ポリマー製眼科学デバイス本体及び前記成形面の第一部分を液体と接触させることによって、少なくとも該成形面の第一部分から、該デバイス本体を離型する工程をも含む、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
前記重合性組成物が、少なくとも1種のケイ素-含有モノマーを含み、かつ前記ポリマー製眼科学デバイス本体が、シリコーンヒドロゲル眼科学デバイス本体を含む、請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
前記成形面全体が、コンタクトレンズの後部面を成形するように形作られた全成形面を含み、かつ前記ポリマー製眼科学デバイス本体が、ポリマー製コンタクトレンズ本体を含む、請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。
前記成形面の第一部分が、前記デバイスの少なくとも一つの表面から、該デバイスの本体内に伸びている、少なくとも一つのチャンネルを形成するように形作られている、請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
新規な眼科学デバイス成型金型を見出した。これら眼科学デバイス成型金型は、眼球インサート本体及びコンタクトレンズ本体を含む、ポリマー製眼科学デバイス本体を流延成形するのに使用することができる。これらの金型は、1又はそれ以上の成型面を含み、ここで該成型面各々は、第一のポリマーから作成した該成型面の第一部分及び第二のポリマーから作成した該成型面の第二部分を含む。該第一部分及び該第二部分は、一緒になって、該成型面全体を形成する。即ち、該成型面は、眼科学デバイスの全表面、例えばコンタクトレンズの前面全体又はコンタクトレンズの後部面全体を形成するように形作られている。ここで使用するような、成型面とは、デバイスの単一の表面、例えば前面又は後部面を成形するように形作られている、金型部材の部分を意味するものと理解される。成型面を、眼科学デバイスの成形に使用する場合、該表面の品質は、眼の中に装着する上で許容される品質を持つ、該デバイス上の表面を形成するに十分なものである。例えば、コンタクトレンズの表面を成形するために使用される成型面は、眼の中に装着する上で許容されるデバイスを成形するのに十分な品質を持つものであり、また視力矯正ゾーンを形成するのに使用する場合には、視力-矯正レンズを製造するのに十分な品質をも持つものであり得る。
【0021】
眼科学デバイスを流延成形するために使用する場合、前記第一部分及び前記第二部分は結合されて、単一の完全な成型面を形成する。該第一部分及び第二部分の結合は、予備成形された第一の部分及び予備成形された第二の部分を、相互に物理的接触状態に配置する物理的な工程を含み、あるいは該第一部分を、予備成形された第二部分との接触状態で成形する工程を含むことができる。しかし、該成型面全体の成形は、前記第一のポリマーと前記第二のポリマーとの混合物を生成し、また該ポリマー混合物を使用して、該成型面全体を形成する工程を含むことはない。その代わりに、別個の第一及び第二部分を結合して、該成型面全体が作成され、また一旦該第一及び第二部分を結合して、該成型面全体を作成した後にも、別々の第一及び第二部分は残される。即ち、該成型面の該第一部分及び該第二部分を結合して、成型面全体を形成した場合、該第一部分及び該第二部分は、物理的に相互に隣接し、また相互に十分に密に接触しており、結果として該成型面全体は、該第一部分及び該第二部分間の界面において、液状重合性組成物が、該第一部分と該第二部分との間で流動することなしに、該組成物を流延成形するのに使用することができる。
【0022】
眼科学デバイスの表面を流延成形するために、前記成型面全体を使用する工程において、重合性組成物は、該成型面上に配置される。該成型面上に配置する場合、該重合性組成物は、該成型面の前記第一部分及び該成型面の前記第二部分両者との直接的な接触状態にある。流延成形においてしばしば行われているように、該第一部分及び該第二部分から作られた該成型面を含む第一の金型部材は、第二の金型部材と結合され、結果的に該第一の金型部材の成型面と該第二の金型部材の成型面との間に、デバイス-形状を持つキャビティが形成される。本明細書において使用するような、金型アセンブリーとは、第一の金型部材と第二の金型部材との組合せを意味するものと理解される。該第二の金型部材は、ここに記載するような金型部材であり得、あるいは公知の金型部材、即ち異なるポリマー製の2又はそれ以上の別個の部分を結合することにより形成されることのない、単一の成型面を持つ金型部材であり得る。
【0023】
前記金型アセンブリーの前記第一の金型部材及び前記第二の金型部材両者の成型面と接触した状態で、一旦前記重合性組成物を配置した後には、該金型アセンブリーを反応させて、該重合性組成物を重合し、ポリマー製デバイス本体を製造することができる。該硬化工程中に、該重合性組成物及び該生成するポリマー製デバイス本体は、該第一の金型部材及び該第二の金型部材両者の該成型面と接触状態に維持されている。
【0024】
眼科学デバイス表面を流延成形するのに使用する場合、前記成型面の第一部分は、該デバイス表面の第一の領域を成形し、また前記成型面の第二部分は、該デバイス表面の第二の領域を成形する。例えば、該成型面の第一部分により成型されたレンズの第一の領域は、コンタクトレンズの前面又は後部面上の、周辺ゾーン(即ち、非-視力矯正ゾーン)を含み、又は該ゾーンからなるものであり得、また該成型面の第二部分により成型された該レンズの第二の領域は、コンタクトレンズの前面又は後部面上の、光学的ゾーン(即ち、視力矯正ゾーン)を含み、又は該ゾーンからなるものであり得る。
【0025】
前記成型面の第一部分を形成するのに使用する前記第一のポリマーは、少なくとも1種のビニルアルコールコポリマーを含み、又は該コポリマーからなるものであり得る。ここで使用するような、ビニルアルコールコポリマーは、少なくとも1種のビニルアルコール官能基を持つ単位及びビニルアルコール以外の官能基を持つ単位を含むポリマーである。これは、ビニルアルコールホモポリマーとは異なり、後者はビニルアルコール官能基を持つ繰返し単位のみを含むポリマー、即ちポリ(ビニルアルコール)(PVOH)、又は変性された形状にあるPVOH、例えば該PVOHを射出成形可能なものとする、融点等のPVOHの特性を変更する可塑剤等の成分と物理的に結合(即ち、反応又は共重合されたものではない)されたPVOHの一形態にあるものである。
【0026】
前記第一のポリマーは、水溶性ポリマー、例えば水溶性ビニルアルコールコポリマー等を含み、又はこれからなるものであり得る。ここで使用する「水溶性ビニルアルコールコポリマー」とは、室温(例えば、約20-25℃)にて、水又は水性溶液に対して明らかに可溶性のビニルアルコールコポリマーであるものと理解すべきである。例えば、ビニルアルコールコポリマーは、当業者には公知の標準的な振とうフラスコ法を用いて測定した場合に、該コポリマーの50g又はそれ以上が、20℃にて1Lの脱イオン水に対して明らかに完全に溶解性であるようなコポリマーであり得る(即ち、このコポリマーは、少なくとも5%(w/w)なる濃度で水に対して溶解性である)。もう一つの例において、該ビニルアルコールコポリマーは、20℃において、1Lの脱イオン水に対して、100g又はそれ以上の該コポリマーが明らかに溶解性であるようなコポリマーであり得る。別の例において、該ビニルアルコールコポリマーは、20℃において、1Lの脱イオン水に対して、150g又はそれ以上の該コポリマーが明らかに溶解性であるようなコポリマーであり得る。更に別の例において、該ビニルアルコールコポリマーは、20℃において、1Lの脱イオン水に対して、200g又はそれ以上の該コポリマーが明らかに溶解性であるようなコポリマーであり得る。
【0027】
前記第一のポリマーは、迅速に水又は水性溶液に溶解し得る。一例において、30℃の脱イオン水1L中で攪拌した場合に、該第一のポリマーのサンプルは、20分又はそれ以下に期間内に、少なくとも40%(w/w)の割合で溶解し得る。別の例において、30℃の脱イオン水1L中で攪拌した場合に、該第一のポリマーのサンプルは、20分又はそれ以下に期間内に、少なくとも50%(w/w)の割合で溶解し得る。更に別の例において、30℃の脱イオン水1L中で攪拌した場合に、該第一のポリマーのサンプルは、20分又はそれ以下に期間内に、少なくとも60%(w/w)の割合で溶解し得る。
【0028】
一例において、前記第一のポリマーは、溶解した際に、低レベルの、該溶液中に存在する不溶性(即ち、溶解されない及び溶解し得ない)固形分を含むような、ビニルアルコールコポリマー等のポリマーであり得る。例えば、該第一のポリマーのサンプルを水又は水性溶液中に投入した場合、該コポリマーの溶解性部分が完全に溶解した後に、固体コポリマー物質のほんの僅かな部分のみが残される。例えば、質量基準での該ポリマーの量の約20%未満、又は質量基準での該ポリマーの約15%未満、又は約10質量%未満、又は約8質量%未満、又は質量基準での該ポリマーの量の約6%未満、又は質量基準での該ポリマーの量の約5%未満が、不溶性固形分として残留し得る。
【0029】
一例において、前記第一のポリマーは、溶解した際に、該溶液中に存在する低レベルの不溶性固形分を含むポリマーであり得、該ポリマーは、20分又はそれ以下の期間内に、約30℃〜約80℃なる範囲の温度にて、水に溶解して、3%(w/w)の該ビニルアルコールコポリマーの水溶液を生成することができ、この溶液は、約10%(w/w)又はそれ以下の不溶性固形分レベル(即ち、水に添加した該コポリマーサンプルの10質量%が、該溶液中に存在する不溶性固形分として残留する)を持つ。もう一つの例において、該第一のポリマーは、20分又はそれ以下の期間内に、約30℃〜約80℃なる範囲の温度にて、水に溶解して、6%(w/w)の該第一のポリマーの水溶液を生成することができ、この溶液は、約6%(w/w)又はそれ以下の不溶性固形分レベルを持つ。更に別の例において、該第一のポリマーは、20分又はそれ以下の期間内に、約30℃〜約80℃なる範囲の温度で、水に溶解して、10%(w/w)の該第一のポリマーの水溶液を生成することができ、この溶液は、約15%(w/w)又はそれ以下の不溶性固形分レベルを持つ。
【0030】
液体中に前記成型面の第一部分を溶解することにより形成される、前記第一のポリマーの溶液は、例えば過度の発泡、該液体のゲル化、又は溶解しない又は沈殿したコポリマーによる該液体の濁り等の、製造上の難点を示す恐れはない。例えば、本開示に係る該第一のポリマーは、物理的に安定な水性溶液を生成する、ビニルアルコールコポリマー等のポリマーであり得る。該第一のポリマーの水性溶液は、該溶液の製造後3時間、6時間、12時間、24時間、又は48時間に渡り、溶液中でゲル化する恐れはない。該第一のポリマーの水性溶液は、少なくとも12時間という期間に渡り、約90℃又はそれ以下の温度にて保存した場合に、約20%未満、約15%未満、又は約10%未満の変動を示す粘度を持つことができる。もう一つの例において、該第一のポリマーの溶液は、高剪断下に置かれた場合に、沈殿に対して高い抵抗性を示すものであり得る。該第一のポリマーの該溶液は、高剪断ミキサ内で1,000rpmにて30分間、10℃にて混合した後に、その初期の濁り度レベルを維持することができる。もう一つの例において、該第一のポリマーの該溶液は、高剪断ミキサ内で1,000rpmにて30分間、10℃にて混合した後に、その初期の濁り度レベルの±15%未満、又は±10%未満、又は±5%未満の濁り度レベルを持つことができる。該第一のポリマーの該水性溶液は、有意に発泡を引起す恐れがなく、即ち該溶液は、「湿式」の成型品取出し、又は成形レンズの取出し工程中に、破壊的レベルの発泡を引起す恐れはない。
【0031】
乾燥フィルムに成形した場合に、前記第一のポリマーは、低レベルの酸素透過率を持つことができる。例えば、該ポリマーから作成した乾燥フィルムを介する酸素透過率は、20℃にて乾燥サンプルについて測定した値として、2.0cc 20μm/m
2/日/0.13MPa(atm)未満、又は1.5cc 20μm/m
2/日/0.13MPa(atm)未満、1.0cc 20μm/m
2日/0.13MPa(atm)未満、又は0.5cc 20μm/m
2/日/0.13MPa(atm)未満、又は0.2cc 20μm/m
2/日/0.13MPa(atm)未満であり得る。もう一つの例においては、該酸素透過率は、0.005cc 20μm/m
2/日未満、又は0.004cc 20μm/m
2/日未満、又は0.003cc 20μm/m
2/日未満であり得る。低い酸素透過率を持つ第一のポリマーを使用して、眼科学デバイスを流延成形するのに使用する金型部材の成型面を製造する場合、該成型面の低レベルの酸素透過率のために、雰囲気中の酸素の存在が硬化工程を乱すことなしに、該眼科学デバイスを酸素-含有雰囲気中で硬化することが可能となる可能性がある。従って、一例において、本開示に係る製法は、低い酸素透過率を持つ該第一のポリマーで作成した成型面を用いる方法であり得、また酸素-含有又は酸素に富む雰囲気の存在下で該重合性組成物を硬化して、ポリマー製の該眼科学デバイスを製造する工程を含むことができるが、低酸素含有率の又は本質的に酸素を含まない雰囲気、例えば窒素ガス又は他の不活性ガスに富む雰囲気の存在下で、該重合性組成物を硬化することも可能である。
【0032】
前記第一のポリマーは、生分解性のものであり得る。例えば、該第一のポリマーは、約600mLのサンプル、約300mLの標準テスト溶液、及び約25℃なる温度を用いて、テスト法ISO 14851を利用して測定した値として、約30日という静置期間後に、少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%なる生分解性レベルを持つことができる。
【0033】
前記第一のポリマーは、可視光に対して比較的高い透明性を持つものであり得る。前記固体、乾燥ポリマーの透明度を、濁り度(%)として測定した場合、該ポリマーの濁り度(%)は、30%未満、又は27%未満、又は24%未満、又は22%未満、又は20%未満、又は18%未満であり得る。
【0034】
前記第一のポリマーは、比較的低レベルのUV光透過率を持つことができる。該ポリマーで作成した成型面の第一部分を介する該UV光透過率は、15%未満(即ち、85%を越える該UV光が、透過しない)であり得る。該成型面の第一部分を介する該UV光透過率は、10%未満、又は5%未満、又は3%未満であり得る。低UV光透過率を持つ該ポリマーで製造した成型面を、UV光の使用を含む硬化工程において使用した場合、そのデバイス-形成キャビティ内に透過するUV光のレベルは、高いものである必要があり、従って高レベルの入射UV光を、該成型面の外側(背後)に適用する必要が生じる恐れがある。例えば、500μWを越える、又は750μWを越える、又は1,000μWを越える、又は1,200μWを越える、又は1,500μWを越えるレベルのUV光を、該硬化工程中に該成型面の外側に適用することができる。多くのUV光発光性電球が、高レベルで動作させた場合に最良の機能を発揮することが知られているので、このように高い入射光レベルを与えることは、該UV発光電球がより効率的に動作し、電球寿命が延長される可能性がある。
【0035】
良好な水溶性を持つ前記第一のポリマーは、1種又はそれ以上の有機溶媒に対して事実上不溶性であり得る。該用語「有機溶媒」とは、少なくとも1種の物質を溶媒和又は溶解する能力を持つ有機物質を意味する。一例において、該有機溶媒は、該第一のポリマーを溶解するのに使用できる。有機溶媒の例は、非-限定的な意味でなく、アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール等のアルカノール、クロロホルム、酢酸ブチル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等、及びこれらの混合物を含む。例えば、該第一のポリマーは、事実上酢酸エチルに対して不溶であり得、又はベンゼンに対して事実上不溶であり得、又はトルエンに対して事実上不溶であり得、又は酢酸エチル、ベンゼン及びトルエンに対して事実上不溶性であり得る。
【0036】
前記第一のポリマーは、熱可塑性ポリマー又はコポリマー、即ち加熱した場合に液体又は可鍛性物質となり、又は十分に冷却した場合に凍結してガラス状態となり、また繰返し再-溶融し、また再-成形することのできるポリマーであり得る。
【0037】
前記第一のポリマーは、水又は水性溶液中に迅速に溶解し得るポリマーであり得;又は溶解した場合に、該溶液中に存在する低レベルの不溶性固形分を含むポリマーであり得;又は過度に発泡する傾向のない溶液を生成するポリマーであり得;又は安定な粘度を持つ溶液を生成するポリマーであり得;又は高剪断条件下に置かれた場合に、過度に沈殿することのない溶液を生成するポリマーであり得;又は乾燥フィルムに成形した場合に、低酸素透過率を持つポリマーであり得;又は生分解性のポリマーであり得;又は固体状態において、可視光に対して比較的透明性の高いポリマーであり得;又は比較的低レベルのUV光に対する透過率を持つポリマーであり得;又は熱可塑性のポリマーであり得;又はこれらの任意の組合せであり得る。
【0038】
前記第一のポリマーは、極性ポリマーであり得る。例えば、該第一のポリマーは、約1%〜約70%なる範囲、又は約1%〜約50%なる範囲、又は約1%〜約10%なる範囲、又は約10%〜約45%なる範囲、又は約20%〜約40%なる範囲、又は約30%〜約45%なる範囲、又は約20%〜約30%なる範囲の極性を持つことができる。
【0039】
前記ポリマーの平均極性は、オウエンス(Owens)-ベント(Wendt)-ラベル(Rabel)-ケーベル(Kaebel)モデルに基いて決定することができ、ここで該熱可塑性ポリマーの接触角は、既知極性を持つ幾つかの異なる液体を用いて決定される。該オウエンス-ベント-ラベル-ケーベルの式は、線型方程式の形で書くことができ、そこでyは、該ポリマーに関する該異なる液体各々の観測された接触角(θ)に基いて計算され、またxは、該異なる液体各々の全表面エネルギー(σ
LT)の既知の極性(σ
LP)及び分散(σ
LD)成分に基いて計算される。異なる液体由来のデータ点(x,y)をプロットすることができ、また次に該プロットの線形回帰を使用して、傾き(m)及びy-切片(b)を決定することができる。次いで、該計算された傾き及びy-切片を使用して、該極性熱可塑性ポリマーの全表面エネルギー(σ
ST,ここでσ
ST= σ
SP + σ
SD )の極性(σ
SP)及び分散(σ
SD)成分を計算することができる。
線型方程式としてのオウエンス-ベント-ラベル-ケーベルの式は、以下の通りである:
【0041】
前記ポリマーの平均極性を決定するために使用できる、異なる極性を持つ前記液体の例は、脱イオン水、ジヨードメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びホルムアミドを含むが、これらに限定されない。該異なる極性を持つ液体の選択において、理想的には、異なる全表面エネルギー(σ
LT)を持つ幾つかの液体を選択するのではなく、寧ろ該液体の、全表面エネルギーの極性成分(σ
LP)に基いて、ある範囲の極性を持つ幾つかの液体が選択される。この方法を利用すれば、該ポリマーの平均極性は、該ポリマーの全表面エネルギーの該計算された極性成分(σ
SP)を、その計算された全表面エネルギー(σ
ST)によって割り、また極性の百分率を得るために100を乗じることにより計算される。
【0042】
特定の一つの例において、前記第一のポリマーは、日本国、大阪の日本合成(Nippon Gohsei)社により製造されている、ニチゴG-ポリマー(NICHIGO G-POLYMER
TM)であり得る。
【0043】
前記第一のポリマーは、高いビニルアルコール含有率を有する、又は低いビニルアルコール含有率を有する、ビニルアルコールコポリマーを含むことができる。即ち、夫々、該ビニルアルコールコポリマー中に存在する主な単位は、ある型のビニルアルコール単位であり得、又は該ビニルアルコールコポリマー中に存在する主な単位は、ある型のビニルアルコール単位であり得る。該ビニルアルコールコポリマーは、約95%に等しいか又はそれ以上、約90%に等しいか又はそれ以上、約85%に等しいか又はそれ以上、約80%に等しいか又はそれ以上、約75%に等しいか又はそれ以上、約70%に等しいか又はそれ以上、約65%に等しいか又はそれ以上、約60%に等しいか又はそれ以上、約55%に等しいか又はそれ以上、約50%に等しいか又はそれ以上、約45%に等しいか又はそれ以上、約40%に等しいか又はそれ以上、約35%に等しいか又はそれ以上、約30%に等しいか又はそれ以上、約25%に等しいか又はそれ以上、約20%に等しいか又はそれ以上、約15%に等しいか又はそれ以上、約10%に等しいか又はそれ以上、約5%に等しいか又はそれ以上、又は約5%に等しいか又はそれ以下のビニルアルコール単位の含有率を持つビニルアルコールコポリマーであり得る。該ポリマー鎖におけるビニルアルコール単位の百分率は、質量%基準又はモル%基準で表すことができる。
【0044】
前記第一のポリマーは、エチレン-ビニルアルコールコポリマー以外のビニルアルコールコポリマーであり得る(即ち、該水溶性ビニルアルコールコポリマーは、エチレン単位を含まないものである)。該ビニルアルコールコポリマーは、本質的にエチレン単位を含まないビニルアルコールコポリマーであり得る。
【0045】
ここに記載された、1種又はそれ以上の前記第一のポリマーは、眼科学デバイスを流延成形するための、前記成型面の第一部分を製造するのに使用することができる。例えば、金型部材の該成型面の第一部分は、該第一のポリマーを射出成形することにより、該第一のポリマーを機械加工することにより、あるいは該第一のポリマーを射出成形し、かつ機械加工することによって製造することができる。該機械加工によれば、該ビニルアルコールコポリマーを旋盤加工、又は削摩加工、あるいは旋盤加工かつ削摩加工して、成型面の全て又は一部を形成することができる。
【0046】
当業者には公知の様々なポリマーを、本開示に係る前記第二のポリマーとして使用することができる。該第二のポリマーは、極性ポリマーを含み、又はこれからなるものであり得る。極性ポリマーの例は、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマー(PVOH)又はエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を含み、あるいはポリブチレンテレフタレート(PBT)、又は任意のこれらの組合せを含むことができる。該第二のポリマーは、非-極性ポリマーを含み、又はこれからなるものであり得る。非-極性ポリマーの例は、ポリプロピレン、又はポリスチレン、又はポリエチレン、又は任意のこれらの組合せを包含する。該第二のポリマーは、熱可塑性ポリマーを含み、又はこれからなるものであり得る。該第二のポリマーは、前記第一のポリマーよりも、少なくとも20℃、又は少なくとも50℃高い融点を持つ熱可塑性ポリマーを含み、又はこれからなるものであり得る。該第二のポリマーは、水溶性ではない、又は本質的に水に対して不溶性のポリマーを含み、又はこれからなるものであり得る。
【0047】
前記第一のポリマーで作られた前記成型面の第一部分は、眼科学デバイスの前面全体を成形するように形作られた、全成型面を含む第一の金型部材の一部であり得る。該第一のポリマーで作られた該成型面の第一部分は、眼科学デバイスの後部面全体を成形するように形作られた、全成型面を含む第二の金型部材の一部であり得る。該第一の金型部材及び該第二の金型部材は、これら2つの金型部材を相互に結合して金型アセンブリーとした場合に、該2つの金型部材間に眼科学デバイス-形状を持つキャビティを形成するように形作ることができる。
【0048】
ここで使用するような、眼科学デバイスは、眼球インサートを含むことができる。眼球インサートは、着用中、結膜又は眼球表面の前部、又は点、又はこれらの任意の組合せと接触した状態で配置される、ポリマー製のデバイスである。着用中、眼球インサートと接触状態にある該眼球表面の前部は、角膜、又は強膜、又はこれら両者を含むことができる。一例において、該眼球インサートは、点状のプラグを含むことができる。眼球インサートは、透明なデバイスであり得、又はそのようなデバイスでなくてもよく、また視力矯正をもたらす光学ゾーンを含んでいても、また含まなくてもよい。場合により、該眼球インサートは、薬物-放出デバイス、診断デバイス、又はこれら両者を含むことができる。該眼球インサートが薬物-放出デバイスを含む場合、該薬物-放出デバイスは、所定期間、例えば2時間、又は12時間、又は24時間、又は1週間、又は1ヵ月、又は1ヵ月を越える期間に渡り、該薬物の制御放出性を与えるように、形作ることができる。
【0049】
前記第一のポリマーで作成した前記成型面の第一部分は、眼球インサートの前面全体を成形するように形付けられた全成型面を含む金型部材の、成型面の第一部分であり得る。該第一のポリマーで作成した該成型面の第一部分は、眼球インサートの後部面全体を成形するように形付けられた全成型面を含む、第二の金型部材の一部であり得る。該第一の金型部材及び該第二の金型部材は、これら第一及び第二金型部材を金型アセンブリーとして結合した場合に、これらの間に眼球インサート-形状を持つキャビティを形成するような形状で作成することができる。
【0050】
ここで使用するような、コンタクトレンズは、動物又はヒトの目の角膜上に配置又は排列するように形付けられたポリマー製のデバイスとして理解される。一般に、コンタクトレンズは、凸型の前面及び凹型の後部面を含み、該後部面は、着用中角膜と接触する可能性がある。コンタクトレンズは、化粧学的レンズ、又は視力矯正レンズ又は化粧学的かつ視力矯正レンズであり得る。視力矯正レンズは、透明な視力矯正性の光学的ゾーンを含む。該視力矯正性の光学的ゾーンは、同様に透明であってもよく、又は目の色彩又は外観を隠蔽、強調又は変更するための領域を含んでいてもよい、視力矯正性ではない周辺ゾーンによって包囲することができる。化粧学的レンズは、目の色彩又は外観を隠蔽、強調又は変更するためのレンズであり、また透明であってもそうでなくてもよく、また視力矯正性光学ゾーンを含んでいても、含まなくてもよい。
【0051】
前記第一のポリマーで作成した、前記成型面の第一部分は、第一の金型部材の成型面の第一の部分であり得、その全成型面は、コンタクトレンズの前面全体を成形するように形付けられた凹型成型面を含む。該第一のポリマーで作成した該成型面の第一部分は、第二の金型部材の成型面の第一部分であり得、その全成型面は、コンタクトレンズの後部面全体を成形するように形付けられた凸型成型面を含む。該第一の金型部材及び該第二の金型部材は、これら第一及び第二金型部材を金型アセンブリーとして結合した場合に、これらの間にコンタクトレンズ-形状を持つキャビティを形成するような形状で作成することができる。
【0052】
前記第一のポリマーで作成した、前記成型面の第一部分は、金型部材の成型面の第一部分、又は金型アセンブリーの成型面の第一部分を含むことができる。同様に、前記第二のポリマーで作成した、前記成型面の第二部分は、金型部材の成型面の第二部分、又は金型アセンブリーの成型面の第二部分を含むことができる。該第一及び第二部分が、金型アセンブリーの成型面の第一及び第二部分を含む場合、該成型面の第一部分及び第二部分は、該金型アセンブリーの、少なくとも全成型面内に存在するものと理解すべきである。一例において、該成型面の第一部分及び第二部分両者は、該金型アセンブリーの全成型面各々の中に存在し得る。
【0053】
もう一つの例において、前記第一のポリマーで作成した、前記成型面の第一部分は、一個構成金型部材(即ち、前記眼科学デバイスの前面及び後部面両者を成形するのに使用される単一の金型部材)の、全成型面の一部を含むことができる。このような例において、該成型面全体は、また前記第二のポリマーで作成された該成型面の第二部分をも含むであろう。該一個構成金型部材は、一体として形成された金型部材であり得、ここで該デバイス-形状を持つキャビティは、該金型部材と一体化されている。換言すれば、該デバイス-形状を持つキャビティは、該金型部材と一体化された中空領域であり得、また多数の金型部材を組み立てることによって形成されるものではない。該一個構成金型部材は、これを作成した後に、少なくとも一つの入口が、該金型部材に存在して、該金型内へのモノマーの注入を可能とするような形状で作ることができる。該一個構成金型部材は、これを製造した後に、モノマーの該金型内への注入中又は注入後に、過剰なモノマーの該金型部材からの流出を可能とするように、少なくとも一つのベントが、該金型部材内に存在するように形作ることができる。該一個構成金型部材は、当業者には公知のロストコア成型技術又はガスアシスト射出成型技術等の技術を用いて製造することができる。該一個構成金型部材の使用は、複数の金型部材から形成される金型アセンブリーと比較して、前記眼科学デバイスを製造するのに必要なモノマーの量を減じることができ、また前記水溶性コポリマーから作成する場合、該一個構成金型部材からの該ポリマー製の眼科学デバイスの取出しに要する物理的な操作を減じることを可能とする。というのは、該一個構成金型部材では、水に溶解させて、該ポリマー製のデバイス本体を取出すことが可能であり、従って該デバイスを取出すための機械的な方法と比較して、該デバイスを損傷させる機会が減じられる。更に、一個構成金型部材の使用は、複数の金型部材を使用して作成することが更に一層困難であると考えられる、例外的な独特の幾何形状を持つ眼科学デバイスの製造を可能とする。
【0054】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ本体を含む、コンタクトレンズ本体を流延成形する方法は、典型的に1対の金型部材(即ち、第一の金型部材及び第二の金型部材)を製造することにより開始される。これらの金型部材は、熱可塑性ポリマーの成形材料を、成型すべき形状のキャビティ内で射出成形することにより、該ポリマー製の成形材料を旋盤処理して、完全な金型部材を製造することにより、あるいは射出成型と旋盤処理との組合せ、例えば射出成型して、該金型部材の基本的な形状を作成し、次いで該金型部材のレンズ形成領域の全て又は一部を旋盤処理することにより製造することができる。例えば、該デバイス-形成用成型面の第一の部分は、射出成型されたレンズ-形成用成型面を含むことができ、また該デバイス-形成用成型面の第二の部分は、機械加工処理されたデバイス-形成用成型面を含むことができる。一つのこのような例において、該レンズ-成形用成型面の該第一の部分は、周辺領域、即ちコンタクトレンズの端部を成形する、該レンズ-成形用成型面の一部を含むことができ、また該レンズ-成形用成型面の第二の部分は、コンタクトレンズの光学的ゾーンを成形する、該レンズ-成形用成型面の一部を含むことができる。
【0055】
典型的には、光学的ゾーンを持つ眼科学デバイスを流延成形する場合、2つの金型部材を結合して金型アセンブリーを形成する。該2つの金型部材は、これらの間にデバイスの形状を持つキャビティを画成するために、一緒に組み立てできる様なサイズとされまた構造とされる。一例において、コンタクトレンズを成形するために、該2つの金型部材の各々は、レンズの前面を成形するのに使用するための、光学的性能を持つ凹型のレンズ形成用成型面、又はレンズの後部面を成形するのに使用するための、凸型の光学的性能を持つレンズ形成用成型面の何れかを含むことができる。本開示の目的にとって、凹型の成型面を持つ該金型部材は、第一の金型部材又は雌金型部材と呼ばれ、また凸型の成型面を持つ該金型部材は、第二の金型部材又は雄金型部材と呼ばれる。該第一及び第二の金型部材は、これらが相互に結合されて、金型アセンブリーを形成する際に、これらの間にレンズ形状を持つキャビティを形成するような構造をもたせることができる。上記とは別の金型部材の構成、例えば3個以上の金型部材又は上記のものとは異なる形状又は構造を持つ金型部材を含む金型アセンブリーを、ここに記載した該ビニルアルコールコポリマーと共に使用することができる。更に、該金型部材は、2以上のレンズ形成領域を含む構成のものとすることも可能である。例えば、一個の金型部材を、前部レンズ表面並びに後部レンズ表面を成形するように、即ち雌又は雄金型部材の何れかとして作用するように形作られた、領域を含むような形状として製造することができる。
【0056】
前記成型面の第一部分を構成する前記第一のポリマーは、前記成型面の第二部分を構成する前記第二のポリマーとは異なるポリマーであることを理解すべきである。該第一のポリマー及び該第二のポリマーが、異なるモノマー単位を含むポリマーであり、あるいは異なる平均分子量を持つポリマーであり、あるいは異なる分子量分布を持つポリマーであり、あるいはこれらの任意の組合せである点に基いて、該第一のポリマーは、該第二のポリマーとは異なるものであり得る。
【0057】
前記第一のポリマーは、ポリマー製の眼科学デバイス本体を成形するための、金型部材又は金型アセンブリー又は一個構成金型の少なくとも一つの成型面(即ち、少なくとも一つの金型の少なくとも一つの成型面)の第一部分を製造するのに使用できる。前記第二のポリマーは、ポリマー製の眼科学デバイス本体を成形するための、金型部材又は金型アセンブリー又は一個構成金型の少なくとも一つの成型面(即ち、少なくとも一つの金型の少なくとも一つの成型面)の第二部分を製造するのに使用できる。該少なくとも一つの金型の該少なくとも一つの成型面の一部は、当業者には公知の、従来の射出成型手順により製造できる。例えば、所定量の該第一のポリマー又は該第二のポリマーを加熱して、溶融熱可塑性ポリマーを生成し得る。該溶融熱可塑性ポリマーを、成型面の一部又は成型面全体を含む、眼科学デバイス成型体の形状を持つ金型キャビティに計量分配することができる。一例において、該金型キャビティは、1又は2種の光学的性能を持つコンタクトレンズ形成用成型面の少なくとも一部を含むことができる。該金型の該光学的特性を持つレンズ形成用成型面を作成するのに使用する該成型面は、プレート又は他のハウジング内に納められた1又はそれ以上の取外し可能なインサートの部品として与えることができ、又は該成型キャビティの一部として機械加工することができる。
【0058】
一例において、本開示に係る前記第一のポリマーを射出成形するのに使用されるプロセス設定は、以下に列挙するものを含むことができる:
約160℃〜約250℃なる範囲の溶融温度;
約160℃〜約250℃なる範囲のバレル温度;
約30℃〜約70℃なる範囲のスロート温度;
約30℃〜約95℃なる範囲の金型温度;
約1秒〜約5秒なる範囲の滞留時間;
約50mm/秒〜約250mm/秒なる範囲の射出速度;
約100mm/秒〜約300mm/秒なる範囲の可塑化速度;
約5〜約18MPa(約50〜約180bar)なる範囲の射出成型圧力;
約1〜約20MPa(約10〜約200bar)なる範囲の保持圧力;
約0.5〜約2.5MPa(約5〜約25bar)なる範囲の背圧。
【0059】
例えば、これらのプロセス設定の少なくとも2つを使用して、前記第一のポリマーを射出成形することができる。もう一つの例においては、これらプロセス設定の3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は全てを使用して、該第一のポリマーを射出成形することができる。一例において、該溶融温度は、約160℃〜約220℃なる範囲の値であり得、また該バレル温度は、約160℃〜約220℃なる範囲の値であり得る。もう一つの例において、該溶融温度は、約180℃〜約250℃なる範囲の値であり得、また該バレル温度は、約180℃〜約250℃なる範囲の値であり得る。
【0060】
前記少なくとも一つの金型の前記少なくとも一つの成型面は、射出成型と機械加工、例えば旋盤処理又は削摩との組合せによって製造することができ、ここでは、該金型の基本的な形状を射出成型により作成し、かつ該デバイス-形成用成型面の全て又は一部を、該金型の一部を除去することにより、例えば該金型の一部、例えば眼科学デバイスの光学的ゾーンを成形するのに使用する該金型の領域全て又は一部を、機械加工によって除去することにより製造する。換言すれば、本開示によれば、該少なくとも一つの金型の該デバイス-形成用成型面は、射出成形により完全に形成することができ、機械加工することにより完全に製造することができ、あるいは射出成型して、金型を製造し、そのデバイス-形成用成型面の一部を、引続き機械加工して、該金型の最終的なデバイス-形成用成型面を作成することにより製造し得る。かくして、一例において、上記少なくとも一つの第一の金型部材及び第二の金型部材の射出成形は、該第一及び第二金型部材の少なくとも一方の非-成形部分を、射出成型法により製造する工程、及び該第一及び第二金型部材の少なくとも一方のデバイス-形成用成型面を、該金型部材の該非-成形部分の、機械加工又は旋盤加工又は削摩加工又はこれらの組合せにより加工することによって製造する工程を含むことができる。
【0061】
前記第一のポリマーは、金型の前記デバイス-形成用成型面の少なくとも第一部分を作成するために使用でき、ここで該金型の前記デバイス形成用成型面の少なくとも第二部分は、前記第二のポリマーで作られる。一例において、該金型の前記非-成形領域(即ち、デバイス本体の表面を作成するのに使用されることのない、該金型の領域)の少なくとも幾分かは、該第二のポリマーで作ることができる。一例において、該金型の該デバイス形成用成型面の該第二部分、又は非-成型部分又はこれら両者は、水又は水性溶液に対して本質的に不溶性の第二のポリマー、例えば金属又はポリプロピレン等のポリマー材料で作ることができる。一例において、該非-成型部分は、該第一のポリマー及び該第二のポリマーを含むデバイス-形成用成型面全体に対するフレーム又は支持体を含むことができる。該デバイス-形成用成型面の該第一部分は、射出成型法又はフィルム流延法等の様々な方法を利用して製造することができる。同様に、該デバイス-形成用成型面の該第二部分は、射出成型法又はフィルム流延法等の様々な方法を利用して製造することができる。
【0062】
前記金型の前記成型面の部分を製造するのに使用した方法とは無関係に、該金型は、その表面の一方に印刷された意匠、図柄を持つ化粧学的コンタクトレンズを成形するのに使用することができる。これら化粧学的コンタクトレンズは、視力-矯正ゾーンを有していてもよく、又は持たなくてもよい。該成型面全体と直接接触した状態で前記重合性組成物を配置するのに先立って、任意の種類の意匠、図柄を、該レンズを成形するのに使用すべき1つ又はそれ以上の該金型部材の、1つ又はそれ以上の該成型面上に配置することができる。該金型上に印刷された該意匠は、目の外観を隠蔽し、該目の外観を変更し、例えば該目の色彩上の外観を変更し、あるいは該目の外観を強調し、例えば周辺リングにより強調するように、形作ることができる。
【0063】
前記意匠、図柄は、前記金型部材の任意の成型面上、即ちその凹型表面又は凸型表面上に印刷することができる。該意匠、図柄は、任意の印刷法、例えばインク-ジェット印刷法、クラッチ版法等を用いて、該金型の該成型面上に印刷することができる。
【0064】
前記成型面上に印刷されたインク又は顔料は、水性インク又は顔料ビヒクルであり得、あるいは有機溶媒系インク又は顔料ビヒクルであり得る。
【0065】
一例において、前記意匠、図柄が印刷されている、前記成型面の第一部分を製造するための、前記第一のポリマー、例えばビニルアルコールコポリマーの使用により、プラズマ処理等の表面処理は、該意匠を該成型面上に再現性良く印刷するために、該成型面に適用する必要はないが、表面処理を施すことも可能である。一例において、該金型部材の該成型面に適用された該インク又は顔料ビヒクルは、該成型面に適用された場合に、数珠玉状になることはない。前記重合性組成物が、該印刷成型面と接触状態で配置され、またその後硬化され、金型から取出され、かつレンズが取出された場合、該印刷物は、該ポリマーレンズ本体内に一体化され、該金型からの取出し及びレンズの取出し後には、該レンズと共に残される。
【0066】
2又はそれ以上の金型部材が、前記デバイスを成形するために使用された場合、所定体積の重合性組成物が、該金型部材の一方の該成型面と直接接触した状態で配置され、その後該金型部材が結合されて前記金型アセンブリーを形成する。典型的に、これは、予め決められた量の該重合性組成物を、該成型面の一方の上に配置することにより、例えば該重合性組成物を第一の金型部材の凹型成型面に配置することにより達成される。次いで、該金型アセンブリーは、もう一つの金型部材を、該重合性組成物を含む該第一の金型部材と接触状態に置くことにより、例えば第二の金型部材の凹型成型面と、該第一の金型部材とを、これら第一及び第二の金型部材間にデバイス-形状を持つキャビティを形成するように、接触状態に置くことにより組み立てられ、ここで該デバイス-形状を持つキャビティが、該重合性組成物を保有する。接続部が使用される場合、これを該第一及び第二金型部材間に、何らかの手段により形成し、前記硬化工程中の、該金型部材の成型面を適当な整合状態に維持する。典型的には、該接続部は、該金型部材の非-成形部分間(即ち、該金型部材の成型面間ではなく)に形成される。
【0067】
2又はそれ以上の金型部材を、金型アセンブリーとして結合する場合、該金型部材を金型アセンブリーに組み立てる工程は、更に該金型部材間に接続部を形成し、あるいは該金型部材を相互に貼付する工程を含むことができる。該金型部材は、永続的に相互に貼付することができ、あるいは一時的に相互に貼付することができる。前記第一の金型部材及び前記第二の金型部材は、好ましくは該レンズ形状のキャビティ内で製造された前記ポリマー製眼科学デバイス本体に実質的な損傷を与えることなしに、一緒に組み立てられた後に、容易に分離し得る構造のものとすることができる。
【0068】
一例において、前記金型部材は、その要素の形状に基いて、機械的接続部を形成するように形作ることが可能である。例えば、該金型部材は、その一方又は両者に圧力が印加される場合には、絞締めを形成するように形作ることが可能である。もう一つの例において、該金型部材を、両者共にネジ切りし、結果として該金型部材同士の連結用ネジを嵌合させて、接続を形成することができる。機械的接続の他の例は、該金型部材間の穴と突出部を含むことができ、あるいは他の型締め構造を含むことができる。
【0069】
もう一つの例において、前記金型部材は、これらの間に配置された接着性物質を使用して、相互に貼付することができる。該接着性物質は、熱可塑性物質を含み、あるいはこれからなるものであり得る。該熱可塑性物質は、相互に貼付すべき該金型部材の少なくとも一つを作成するのに使用したものと同一の熱可塑性材料を含み、あるいはこれからなるものであり得る。例えば、該熱可塑性金型部材の一方又は両者の非-成形部分は、これらの金型部材を互いに貼付するために変形又は溶融することができる。
【0070】
一例において、前記金型部材の一方又は両者の非-成形部分は、該金型部材の一方又は両者の一部を溶融して、これら金型部材を相互に接着すべくこれらの間に溶着部を形成するために、加熱することができる。該金型部材間に形成された該溶着部は、該金型部材間の単一の非-成形位置に配置された単一の溶着部、例えば前記デバイス形状のキャビティを包囲する周辺領域内の単一のスポットとしての単一の溶着部を含むことができる。該金型部材間に形成された該溶着部は、各々該金型部材間に位置する単一の非-成形位置に配置されている複数の溶着部、例えば各々周辺領域に単一のスポットとして形成された、2又は3又は4又は5又はそれ以上の個々の溶着部を含むことができ、ここで、該複数の溶着部は、該デバイス形状にあるキャビティの周辺部の回りに配置されている。該複数の溶着部は、該デバイス形状にあるキャビティの周辺部の回りに、相互に等間隔で配置でき、あるいは非対称的なパターンで配置することができる。該金型部材間に形成された該溶着部は、前記レンズ形成キャビティの全周辺部の回りに配置された単一の溶着部を含むことができる。このような例において、該溶融熱可塑性物質の厚みは該溶着部の異なる位置間で変えることができるが、単一の連続する溶着部は、該金型部材間に形成された該デバイス形状にあるキャビティの周囲を完全に取り巻く領域において、該金型部材間に存在する。
【0071】
もう一つの例においては、前記金型部材の一方又は両方を溶解し得る溶媒の一部を、該金型部材の一方又は両方の非-成形部分を溶解し、該金型部材の一方の表面を、他方の金型部材の表面に融合するために、該金型部材の一方又は両方に適用することができる。該溶解された金型部材が再度固化するにつれて、該溶融した材料は、該金型部材を相互に貼付するように作用し得る。該溶媒は、水又は水性溶液を含むか、これからなるものであり得る。適用すべき該溶媒の量は、該溶媒の、例えば数マイクロリットル程度の極少量であり得る。該溶媒は、例えば接合すべき表面上に滴下することができ、接合すべき表面上に噴霧することができ、接合すべき表面上に押印することができる。例えば、一緒に配置して上記金型アセンブリーを形成する前に、該金型部材の一つ又は全てを、該溶媒で湿らせた刻印により接触させることができる。該刻印は、接合すべき該表面の形状と一致するような形状とすることができる。例えば、該刻印は、リング-型であって、結果として、これが、該金型部材の前記デバイス-形状にある領域を包囲する該金型部材の一方の非-成形領域と接触した場合に、他方の金型部材に接合すべき該金型部材の該非-成形領域のみを、湿潤させることができる。該溶媒が、依然として湿潤状態を維持している間に、該金型部材を、接触状態に置き、また一緒に融合し得る。場合により、該金型アセンブリーに圧力を印加して、該金型部材を相互に貼付する工程を助けることができる。この圧力は、該金型部材が相互に完全に融合するまで、所定の期間に渡り適用することができる。場合により、熱又は空気を適用して、これら金型部材の融合及び該溶媒の蒸発を助けて、該融合部が形成される時間及び該融合物質が再度固化する時間を短縮し、結果的に該金型部材を相互に堅固に貼付し、前記金型アセンブリーを生成することができる。
【0072】
溶媒を使用して、金型部材の一部を溶解し、また該金型部材間に溶着部を形成している例において、前記融合物質は、該金型部材間の単一の非-成形位置、例えば前記デバイス-形状を持つキャビティを包囲する周辺領域における単一のスポットとして配置することができる。該融合物質は、該金型部材間の複数の非-成形位置、例えば周辺領域における2又は3又は4又は5又はそれ以上の個々のスポットとして配置することができ、ここで該複数の位置は、該デバイス-形状を持つキャビティの周辺部の回りに配置されている。該複数の位置は、該デバイス-形状を持つキャビティの周辺部の回りに相互に等間隔で配置し、あるいは非対称形のパターンで配置することができる。該金型部材間に形成された該融合物質の領域は、該デバイス-形状を持つキャビティの周辺部全体の回りに位置する単一の連続した領域であり得る。このような例においては、該融合熱可塑性物質の厚みは、該接着領域の異なる部分間で変えることができるが、融合材料の単一の連続する領域は、該金型部材間に存在することができ、また該金型部材間に形成された該デバイス-形状にあるキャビティの周囲を完全に取巻くことができる。
【0073】
もう一つの例においては、接着性物質、例えば糊、コンタクトセメント又は封止剤を使用して、前記金型部材同士を結合することができる。更に別の例において、該金型部材は、付随的な要素、例えばクリップ、クランプ又はブラケットを用いて結合することができる。該金型部材間に使用する接続の型とは無関係に、該接続は、該硬化工程中に該金型部材を整合状態に維持するためのものであり、また前記金型からの取出し工程の前に、あるいは該成型品の取出し工程の一部として、取外すことができるものであり得る。
【0074】
前記金型アセンブリーの前記成型面及び金型部材の少なくとも一つが、水溶性材料、例えば水溶性ビニルアルコールコポリマー等の水溶性物質から作られている場合、該金型アセンブリーの該金型部材は、該金型アセンブリーの該金型部材の少なくとも一つの、少なくとも部分的な溶解以外の手段によっては、これらが相互に分離し得ないように接続できる。換言すれば、該金型アセンブリーは、一旦形成した後には、非-開放性の金型アセンブリーであり得、ここで該ポリマー製のデバイス本体は、該金型アセンブリーを構成する該金型部材の全て又は一部を溶解することにより分離される。
【0075】
次いで、前記デバイス-形状を持つキャビティ内に前記重合性組成物を含む、前記一個構成金型部材又は前記金型アセンブリーを硬化する。該デバイス-形状を持つキャビティ内の該重合性組成物の硬化は、該デバイス-形状を持つキャビティの形状を持つ重合反応生成物、即ちポリマー製デバイス本体を生成する。典型的に、硬化は、一形態の電磁輻射を、該重合性組成物を含む該金型アセンブリーに適用することを含み、これにより該金型アセンブリーの該デバイス-形状を持つキャビティ内の該重合性組成物の重合が起る。該一形態の電磁輻射は、熱輻射、マイクロ波輻射、可視光、紫外(UV)光等を含むことができる。2又はそれ以上の型の電磁輻射の任意の組合せ並びに1又はそれ以上の型の電磁輻射の2又はそれ以上のレベルの組合せを利用して、該金型アセンブリーを硬化することができる。この硬化法は、通常該重合性組成物において使用される型の開始剤と適合するものであり、即ちUV開始剤を含む重合性組成物は、通常UV光を用いて硬化され、また熱開始剤を含む重合性組成物は、通常輻射熱を利用して、また通常該熱開始剤の開始温度以上の温度にて硬化される。使用する硬化法とは無関係に、該硬化工程中の温度は、前記第一のポリマー又は前記第二のポリマー又は該第一のポリマー及び該第二のポリマー両者の融点以下の温度、又は該第一のポリマー又は該第二のポリマー又は該第一のポリマー及び該第二のポリマー両者のガラス転移点以下の温度に維持することができる。該硬化法は、典型的には、成型品の取出し及びレンズ製品の取出し後に、前記ポリマー製デバイス本体が、該デバイス-形状を持つキャビティの形状を維持するのに十分な程度に、該重合性組成物が重合されるまで、該一個構成金型又は金型アセンブリーを硬化する工程を含む。故に、該硬化工程は、該重合性組成物の重合性成分全ての完全な反応を結果しない可能性がある。
【0076】
一例において、マイクロ波輻射は、一個構成金型部材内の又は少なくとも1種のビニルアルコールコポリマーを含む成型面を用いて製造した金型アセンブリー内の前記重合性組成物を硬化するのに使用し得る。該ビニルアルコールコポリマーを含む成型面において該重合性組成物を硬化するためのマイクロ波輻射の使用は、UV光又は熱輻射(即ち、加熱されたオーブン)の使用と比較して、該組成物の硬化に要する時間の量を減じることを可能とする。例えば、マイクロ波輻射を用いて、該ビニルアルコールコポリマーを含む成型面において該重合性組成物を硬化するに要する時間は、30分に等しいかそれ以下、又は20分に等しいかそれ以下、又は15分に等しいかそれ以下、又は10分に等しいかそれ以下であり得る。もう一つの例において、該重合性組成物は、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN, バゾ(VAZO
TM)-64)等の熱開始剤を含むことができ、また該重合性組成物は、マイクロ波輻射を用いて硬化することができる。もう一つの例において、該重合性組成物は、AIBN等の熱開始剤を含む、コンフィルコン(Comfilcon) A重合性組成物を含むことができ、また該重合性組成物は、マイクロ波輻射を用いて硬化することができる。更に別の例において、該重合性組成物は、マイクロ波輻射を用いて硬化することができ、また該ポリマー製デバイス本体は、該ビニルアルコールコポリマーを含む該成型面から、湿式成型品取出し、あるいは湿式レンズ取出しを行い、あるいはその両者を行うことを可能とする。該湿式成型品取出し、あるいは湿式レンズ取出し、又はその両者は、少なくとも部分的に溶解している、該ビニルアルコールコポリマーを含む該成型面を与えることができる。特定の一例において、該ビニルアルコールコポリマーを含む該成型面を使用し、マイクロ波輻射を用いて硬化し、かつ湿式成型品取出し、及び湿式レンズ取出しを含む製造方法による、ポリマー製デバイス本体の収率は、同一の工程を使用するが、全く異なる材料、例えばポリプロピレン又はEVOHから製造した成型面を使用して作成した、同様なポリマー製デバイス本体の収率よりも高い値であり得る。
【0077】
少なくとも一つの前記デバイス形成用成型面の一つの少なくとも第一部分が、ビニルアルコールコポリマーを含む又はこれからなる材料で作成されている場合、前記重合性組成物を硬化して、前記ポリマー製デバイス本体を製造する工程中に、該重合性組成物は、該ビニルアルコールコポリマーと直接接触した状態にあり、また得られる眼科学デバイス本体表面の少なくとも一つの部分は、結果として該ビニルアルコールコポリマーと直接接触した状態で形成される。該ビニルアルコールコポリマーが、水溶性ビニルアルコールコポリマーである場合、前記一個構成金型部材から該ポリマー製デバイス本体を離型する工程は、該一個構成金型部材と、水又は水性溶液とを接触させ、また該一個構成金型部材の少なくとも一部を溶解する工程を含むことができる。
【0078】
ここで使用する用語「成型品の取出し」とは、前記重合性組成物の硬化後に、前記金型アセンブリーの前記成型面を分離する工程を意味する。該金型からの取出しの結果、該成型面は、相互に分離され、また前記デバイス本体は、これを流延成形するのに使用した該成型面の一方及び唯一つのみと接触した状態、又はこれと結合された状態、又はこれに接着した状態に維持されている。該ポリマー製デバイス本体から分離すべき前記第一の成型面が、第一のポリマー製の第一部分及び第二のポリマー製の第二部分を含む成型面である場合、該成型面の第一部分及び該成型面の第二部分から成型品取出しを行うために、別の成型品取出し工程が必要となる可能性がある。これら別の成型品取出し工程は、乾式成型品取出し工程又は湿式型品取出し工程であり得る。
【0079】
「乾式」成型品取出し工程は、硬化後に前記金型アセンブリーの前記成型面又はその一部を分離するための機械的な工程の利用を含む。乾式成型品取出し工程において、前記ポリマー製のデバイス本体を含む該金型アセンブリーは、該成型品取出し工程中に、有機溶媒、水又は水性溶液等の液体とは接触しておらず、また典型的に該ポリマー製のデバイス本体を含む該金型アセンブリーは、該乾式成型品取出し工程に先立って液体に暴露されることはない。乾式成型品取出し工程後に、該ポリマー製のデバイス本体は、該デバイス本体を成形するのに使用した該成型面全体の一つ及び唯一つと接触状態に維持されている。換言すれば、成型品の取出し処理すべき該第一の成型面が、第一部分及び第二部分を含む場合、該成型品取出し工程は、同時に又は順次に、該第一の成型面の該第一部分及び該第二部分両者からの成型品取出しを必要とする可能性がある。該第一の成型面の該第一部分及び該第二部分が、順次成型品取出し処理される場合、該成型面の該第一部分の取出し処理後、該成型面の該第二部分を、前記第二の成型面と共に、該ポリマー製デバイス本体と接触状態に維持することができる。同様に、該第一の成型面の該第一部分及び該第二部分が、順次成型品の取出し処理に付される場合、該成型面の該第二部分からの取出し工程後、該第一の成型面の該第一部分を、該成型品取出し工程後に、該第二の成型面と共に、該ポリマー製デバイス本体と接触状態に維持することができる。
【0080】
一例において、乾式成型品取出し工程は、前記成型面又は金型部材の一つ又はそれ以上を絞って、該成型面又は金型部材を変形させ、また該成型面を分離する工程、該ポリマー製のデバイス本体と、該成型面の一つ又は該成型面の一つの部分とを接触状態に維持する工程を含むことができる。前記金型アセンブリーの該金型部材が、該金型部材間の絞締めによって、少なくとも部分的に一緒に維持されている場合、乾式成型品取出し工程は、該成型面又は金型部材の1又はそれ以上に圧力を印加して、該成型面又は金型部材を相互に引離し、該絞締めを破壊する工程を含むことができる。該金型アセンブリーの該金型部材が、該成型面又は金型部材の間の溶着部によって少なくとも部分的に一緒に維持されている場合、乾式成型品取出し工程は、該溶着材料を相互に切断又は分解する工程を含むことができる。
【0081】
「湿式」成型品取出し工程は、液体を適用して、硬化後の前記金型アセンブリーの前記成型面全体又はその一部を分離する工程を含む。湿式成型品取出し工程において、前記ポリマー製のデバイス本体を含む該金型アセンブリーは、該取出し工程中、有機溶媒、水又は水性溶液等の液体と接触状態に置かれる。湿式成型品取出し工程後、該ポリマー製のデバイス本体は、これを成形するのに使用した該全成型面の一つ、及び唯一つとの接触状態に維持することができ、あるいは該デバイス本体を成形するのに使用した第一の成型面の一部から分離することができ、あるいは該デバイス本体を成型するのに使用した該第一及び第二の成型面の一部から分離することができ、又は該デバイス本体を成型するのに使用した該第一及び第二の成型面両者の全成型面から分離することができる。湿式成型品取出し工程は、付随的に、該金型アセンブリーに液体を適用することに加えて、該成型面又はその一部を分離するための機械的な方法の使用を含み、該機械的な方法は、該成型面又は金型部材の1又はそれ以上を絞り、該成型面を変形させる工程、該成型面又は金型部材の1又はそれ以上に圧力を印加して、該成型面又は金型部材を相互に離し、絞締めを破壊する工程、又は該金型アセンブリーを一緒に維持している溶着部又は接着部を介してこれを切断する工程を含む。追加の機械的な分離工程を使用する場合、これは、典型的には、先ず液体を該金型アセンブリーに適用し、例えば該金型アセンブリーを液体中に漬け、又は浸漬した後に行われる。
【0082】
湿式又は乾式成型品取出し工程の一部として、該取出し工程後、該デバイス本体を、特定の一つの全成型面又は成型面の一部、例えば前記第一又は第二金型部材の前記成型面又はその一部の何れかと接触状態に維持しておくことが望ましい可能性がある。該デバイス本体と、所定の該成型面又はその一部との接触状態の維持を助けるために、熱を、該第一又は第二成型面又は金型部材に、例えば加熱空気を該成型面又は金型部材の背面に吹き付けることにより、適用することができる。あるいはまた、該第一又は第二成型面又は金型部材を、例えば冷却空気を該成型面又は金型部材の背面に吹き付けることにより、あるいは該成型面又は金型部材の一方に冷却液体を適用することにより、冷却することができる。また、該金型からの取出し前又は該取出し工程と同時に、該第一又は第二成型面又は金型部材の何れかに対する圧力の印加は、該取出し工程後に、該デバイス本体と、特定の成型面又は金型部材(即ち、該第一又は第二成型面又は金型部材)との接触状態の維持を、補助的に助けることを可能とする。一例においては、該取出し工程の終了時点において、該ポリマー製デバイス本体と、該第二の成型面又は金型部材との接触状態を維持したい場合には、該成型品取出し工程の直前又はその最中に、該第一の成型面又は金型部材の背面に、熱を適用することができる。該熱は、該成型面又は金型部材の融点以下の温度にて適用することができる。該熱は、短期間、例えば15秒に等しいか又はそれ以下、又は10秒に等しいか又はそれ以下、又は5秒に等しいか又はそれ以下の期間に渡り適用し得る。
【0083】
用語「レンズ取出し」とは、前記デバイス本体の全表面が、前記金型アセンブリーの前記第一の成型面全体から分離された後に、該デバイス本体と接触状態にある、成型面の一つ又は成型面の一部から、該デバイス本体を分離する工程を意味する。ここで使用する該用語「レンズ取出し」とは、眼球インサート本体又はコンタクトレンズ本体を包含する、任意の眼科学デバイス本体を含む工程を意味するものであり得る。
【0084】
乾式レンズ取出し工程は、前記金型からの取出し工程の後に、前記デバイス本体と接触状態にある成型面全体又は一つの残された成型面の一部から、該デバイス本体を分離するための機械的加工工程の使用を含む。乾式レンズ取出し工程において、該デバイス本体及びこれが接触状態にある該一つの残された成型面全体又は成型面の一部は、該レンズ取出し工程の一部として、有機溶媒、水、又は水性溶液等の液体と接触させられることはない。湿式成型品取出し工程(ポリマー製デバイス本体を含む金型アセンブリーに液体を適用する工程を含む)は、乾式レンズ取出し工程前に使用することができるが、乾式レンズ取出し工程の前に、乾式成型品取出し工程を使用することがより一般的である。乾式成型品取出し工程及び乾式レンズ取出し工程を一緒に使用する場合、該デバイス本体が、該金型アセンブリーの両成型面全体から分離(即ち、該第一及び第二成型面両者の該第一及び第二部分から分離)される後まで、該デバイス本体は、有機溶媒、水、又は水性溶液等の液体に暴露されることはなかった。一例において、乾式レンズ取出し工程は、前記成型品の取出し段階後に、該一つの残された成型面全体又は該デバイス本体が接触状態にある成型面の一部から該本体を持ちあげるための真空装置の使用を含むことができる。また、乾式レンズ取出し工程は、該一つの残された成型面又は成型面の一部を絞って、該一つの残された成型面又は成型面の一部と該レンズ本体との間の結合を、少なくとも部分的に破壊する工程を含むことができる。乾式レンズ取出し工程は、該デバイス本体の端部と該成型面全体又は該成型面の一部との間に空気を吹込んで、少なくとも部分的に、該デバイス本体と該成型面との間の結合を破壊する工程を含むことができる。乾式レンズ取出し工程は、該デバイス本体の端部と該成型面との間に掻出し工具を挿入して、少なくとも部分的に、該デバイス本体と該成型面との間の結合を破壊する工程を含むことができる。
【0085】
乾式成型品取出し及び乾式レンズ取出し工程の完了後、前記ポリマー製デバイス本体を、有機溶媒を主成分とする液体、又は有機溶媒を本質的に含まない液体の何れかにおいて、洗浄(例えば、濯ぎ又は抽出又は水和処理又はこれらの任意の組合せ)することができる。あるいはまた、乾式成型品取出し及び乾式レンズ取出し工程後に、該ポリマー製デバイス本体を、包装用溶液を含むパッケージに直接収容し、封止し、かつ滅菌処理することができる。
【0086】
湿式レンズ取出し工程は、有機溶媒、水、又は水性溶液等の液体を適用して、前記成型品の取出し工程後に、前記デバイス本体が接触状態にある成型面の一部又は前記一つの残された成型面全体から、該デバイス本体を分離する工程を含む。該液体の適用後又はこれと同時に、湿式レンズ取出し工程は、更に前記成型品の取出し段階後に、該デバイス本体が接触状態にある該一つの残された成型面から該デバイス本体を持ちあげるための真空装置を使用する工程をも含むことができる。場合により、湿式レンズ取出し工程は、該デバイス本体の分離を補助するための機械的手段を使用する工程、例えば該一つの残された成型面を絞って、該一つの成型面との間の結合を少なくとも部分的に破壊する工程、該デバイス本体の端部と該成型面との間に空気を吹込む工程、あるいは該デバイス本体の端部と該成型面との間に掻出し工具を挿入して、該デバイス本体と該成型面との間の結合を、少なくとも部分的に破壊する工程を含むことができる。
【0087】
一例において、乾式成型品取出し及び乾式レンズ取出し工程、及びこれに伴う有機溶媒を含まない液体を用いた洗浄工程を使用する場合、あるいは湿式成型品取出し、湿式レンズ取出し及び有機溶媒を含まない液体を用いた洗浄工程を使用する場合、得られるデバイス本体は、その製造工程中に有機溶媒に暴露されることはないであろう。未だ有機溶媒に暴露されていないこのようなデバイス本体が、引続き包装用溶液を含むコンタクトレンズパッケージに入れられ、封止されまた滅菌された場合、得られるデバイス製品は、その製造工程中に有機溶媒に暴露されることはないであろう。
【0088】
前記第一のポリマーが水溶性ポリマー、例えば水溶性ビニルアルコールコポリマーである場合、その水溶性のために、水溶性ポリマーで作成された成型面の一部を含む1又はそれ以上の成型面を使用する場合には、水性液体を適用して、該水溶性ポリマーで作成された該成型面の一部を少なくとも部分的に溶解することを含む、湿式成型品取出し工程、湿式レンズ取出し工程、又はこれらの湿式成型品取出し及び湿式レンズ取出し両工程を使用することが可能である。このような方法の一例においては、前記ポリマー製デバイス本体を含む前記金型アセンブリー、金型部材又は成型面を、トレーに移し、その後液体の適用に付すことができる。該トレーは該成型面の一部を、該液体に溶解した後に、該デバイス本体を収容するようなサイズ及び形状にある別々の窪みを含むことができる。例えば、該デバイス本体を成形するのに使用した金型アセンブリーの全ての成型面が水溶性ポリマーで作成された該成型面の第一部分を含む場合、硬化後に、該ポリマー製デバイス本体を含む該金型アセンブリーを、該トレーに移すことができる。もう一つの例において、該金型アセンブリーの全成型面の一つの第一部分が、水溶性ポリマーで作られており、また該金型アセンブリーの該成型面の第二部分及び非-成形部分が、前記液体に対して不溶性の材料で形成されている場合、該金型アセンブリーの該成型面の第二部分及び該非-成形部分は、該成型面の第一部分及び該デバイス本体から分離することができ、また該ポリマー製デバイス本体と結合状態に維持されている該成型面の第一部分は、該トレーに移すことができる。もう一つの例において、該金型アセンブリーの少なくとも一つの成型面の該第一部分が、水溶性ポリマーで作られており、また該金型アセンブリーの少なくとも一つの成型面の該第二部分及び該金型アセンブリーの非-成形部分が、前記液体に対して不溶性の1又はそれ以上の物質で作られている場合、該成型面の第二部分及び不溶性物質で作られた該非-成形部分を包含する、該金型アセンブリー全体は、該トレー内に収容することができ、また該成型面の可溶性部分が溶解して、該金型アセンブリーから該デバイス本体を取出すことが可能となる。該不溶性物質で作成された該金型アセンブリーの該成型面の一部及び非-成形部分、並びに該デバイス本体は、次いで該トレーから取出すことができる。更に別の例において、成型品取出し工程後、水溶性ポリマーで作られた第一の成型面及び該結合したポリマー製デバイス本体は、該トレーに移すことができる。
【0089】
前記湿式成型品取出し工程、前記湿式レンズ取出し工程、又はこれら湿式成型品取出し及び湿式レンズ取出し工程両者において適用される前記液体は、水又は水性溶液を含むことができる。一例において、該水性溶液は、加工助剤の水性溶液を含むことができ、該加工助剤は、前記第一のポリマーの溶解速度を高める。もう一つの例において、該加工助剤は、前記ポリマー製デバイス本体の洗浄を助け、あるいは該ポリマー製デバイス本体からの抽出性物質の除去を助ける化合物であり得る。更に別の例において、該加工助剤は、加工中の該デバイス本体の損傷又は変形に対する保護を補助する化合物、例えばツイーン(Tween) 80を含む界面活性剤であり得る。
【0090】
前記用語「界面活性剤」とは、この物質が存在している、水又は水性溶液等の水の表面張力を低下する能力を持つ物質を意味する。該水の表面張力を低下することにより、該界面活性剤は、以前に有機溶媒による抽出処理に付されていないポリマー製デバイス本体と接触している場合に、該界面活性剤又は界面活性成分を含まない水と比較して、該界面活性剤を含有する該水が、該デバイス本体と一層密に接触し、及び/又はより効果的な洗浄を行い又は該デバイス本体からそこに存在する少なくとも1種の物質を除去することを容易にする。一般的に、界面活性剤は、該少なくとも1種の物質に直接作用して、該少なくとも1種の物質を溶媒和し又は溶解することはない。界面活性剤の例は、非-限定的に、ベタイン型のものを含む両性イオン型界面活性剤、ポリソルベート80等のポリソルベート型のものを含むノニオン性界面活性剤、ポロキサマー又はポロキサミン型のもの、フッ素化界面活性剤等、及びこれらの混合物を含む。一例において、1種又はそれ以上の界面活性剤を、ここに記載する前記重合性組成物、ここに記載する洗浄液体、ここに記載する前記包装用溶液、及び任意のこれらの組合せに配合することができる。
【0091】
前記液体を適用して、前記成型面の第一部分を溶解する工程は、前記ポリマーの溶解速度を高める工程、又は該ポリマーの溶解に伴う、該溶液の発泡又はゲル化を減じる工程を含むことができる。
【0092】
一例において、前記成型面全体又は成型面の第一部分のサイズ又は体積を、前記液体を適用して、該第一のポリマーを溶解する前に、例えば該成型面の一部又は成型面の複数の部分を切断、機械加工又は削摩により減じることができる。
【0093】
もう一つの例において、前記液体を適用する工程の前に、又はその最中に、又はその後に、又はこれらの任意の組合せにおいて、例えば前記第一のポリマーの溶解速度を高める温度に、又は該第一のポリマーの溶液粘度を比較的安定に維持する温度に該液体を維持するために、該液体の温度を調節することができる。
【0094】
更に別の例において、前記第一のポリマーは、該第一のポリマーを含む前記成型面、又は金型部材、又は金型アセンブリー上で新鮮な溶媒を循環する工程又は装置、例えばソックスレー(Soxhlet)装置を用いて溶解することができる。
【0095】
前記液体を適用する工程中に、又はその後に、該液体、又は前記第一のポリマーを含む前記成型面、又は金型部材、又は金型アセンブリーを攪拌して、例えば該第一のポリマーの溶解速度を高めることが可能である。
【0096】
前記液体を適用する工程中に、又はその後に、超音波エネルギーを、該液体、又は前記第一のポリマーを含む前記金型アセンブリー、又は金型部材、又は成型面に印加することができる。もう一つの例において、該超音波エネルギーは、トレー内に収容されている該液体、及び該第一のポリマーを含む金型アセンブリー、金型部材、又は成型面に適用することができる。
【0097】
前記第一のポリマーを含む前記成型面、又は金型部材、又は金型アセンブリーに適用される前記液体は、湿式成型品取出し工程の一部として適用でき、あるいはデバイス本体及び全成型面又は成型面の一部に対して、湿式レンズ取出し工程の一部として適用できる。該液体の温度は、約90℃又はそれ以下、又は約80℃又はそれ以下、又は約70℃又はそれ以下、又は約60℃又はそれ以下、又は約50℃又はそれ以下、又は約40℃又はそれ以下、又は約30℃又はそれ以下であり得る。
【0098】
前記液体の適用によって、約240分又はそれ以下、又は約180分又はそれ以下、又は約120分又はそれ以下、又は約90分又はそれ以下、又は約60分又はそれ以下、又は約30分又はそれ以下、又は約20分又はそれ以下の期間内に、前記第一のポリマーを含む前記成型面部分又は金型部材又は金型アセンブリーの完全な溶解を達成することができる。あるいはまた、該液体の適用により、該第一のポリマーを含む該成型面部分又は金型部材又は金型アセンブリーの部分的な溶解を達成することができ、ここで、該部分的な溶解は、該金型アセンブリーの該成型面を分離(即ち、該金型アセンブリーからの成型品取出し)して、一つの成型面全体又は成型面の一部から該デバイス本体を分離し(即ち、該デバイス本体を取出し)、あるいは成型品取出し及びレンズ取出し両者(即ち、該デバイス本体を、その成型のために使用した全ての成型面から完全に分離する)のために十分なものである。例えば、該液体の適用によって、10%、25%,50%,75%、又は90質量%又は体積%を越える、該第一のポリマーを含む該成型面部分の溶解の達成が可能となる。
【0099】
前に論じた如く、幾つかの例において、ここに記載のビニルアルコールコポリマーを、前記第一のポリマーとして使用することによって、該ビニルアルコールコポリマーの溶解を含む、成型品取出し工程、レンズ取出し工程又はこれら工程両者は、水性溶液中に他の水溶性ポリマーを溶解する際に経験する諸問題点の幾つかにより、著しく影響されることはない。例えば、PVOHは、これを水性溶液に溶解する場合、大量の泡の生成、該溶液のゲル化、不透明な溶液の生成、又はこれら問題の任意の組合せをもたらす恐れがある。泡、ゲル又は不透明溶液の存在は、機械的加工及び製造段階にとって破壊的であるので、これらの問題点を制御し又は排除するために、追加の手段及び経費が必要とされる。ここに記載する該ビニルアルコールコポリマーを含む成型面を水又は水性溶液に溶解する工程を含む、湿式成型品取出し工程、レンズ取出し工程又はこれら両工程の一部として生成される、該ビニルアルコールコポリマーの溶液は、該液体及び該成型面を攪拌した場合においてさえ、大容量の泡を生成することはない。更には、該溶液は容易にゲル化することはなく、このことは、大きなタンク又は浴内で、該成型品取出し工程、レンズ取出し工程又はこれら両工程を実施することを可能とし、該タンク又は浴では、単一の所定容積の液体が、複数のレンズ及び成型面に適用される。これら条件の下で、該溶液はゲル化することがないので、該タンク又は浴から該溶液を容易に空にし、また該タンク又は浴を新たな又は再循環液体で再度満たすことが可能となる。該液体中の該ビニルアルコールコポリマーの溶液は、透明な状態を維持しているので、該デバイス本体が該成型面から分離されたか否か、又は該成型面が溶解されたか否かを決定するために、該デバイス本体及び該金型部材を、手作業で又は自動化システムを用いて観測することが可能となる。該ビニルアルコールコポリマーの溶液は、該溶媒単独の値と比較して高い比重を有しているので、該コポリマーの溶液は、溶解工程中、タンクの底部に沈む可能性がある。該溶解工程中に使用する該タンクは、その底部にドレン及びバルブを備えていて、該溶解工程中又はその後に該タンクから該コポリマー溶液の全て又は一部を取出すことを可能とする。該溶解工程中に使用される該タンクを、ロート状の形状を持つように形作り、該溶解工程中又はその後に、該タンクの最下部に、より重質の該コポリマー溶液を導くことができる。
【0100】
前記製造工程の一部として作成された前記ビニルアルコールコポリマー溶液の取出しに続き、該ビニルアルコールコポリマー溶液を再循環し又は再生利用することができる。該再循環又は再生利用工程は、該再生利用されるビニルアルコールコポリマーを使用して、眼科学的金型部材を再生することを可能とし、あるいは該再生利用されるコポリマーを他の目的で使用することを可能とする。例えば、該コポリマーを溶解するのに使用した該溶媒を蒸発させて、固体状の再生コポリマー又はより濃厚なコポリマー溶液を得ることが可能となる。
【0101】
前記金型アセンブリーから、例えば前記ポリマー製眼科学デバイス本体を流延成形するのに使用した全ての前記成型面から、該デバイス本体を分離した後、一例においては、前記第一のポリマーは、最早該ポリマー製デバイス本体の表面上には存在しない可能性がある。換言すれば、該第一のポリマーを含む少なくとも一つの該成型面から、一旦該デバイス本体を分離した後には、該第一のポリマーの層は、該デバイス本体の表面上には残されていない可能性がある。少なくとも一つの該成型面からの該デバイス本体の分離は、乾式成型品取出し工程又は乾式レンズ取出し工程又は湿式成型品取出し工程又は湿式レンズ取出し工程を含むことができる。該第一のポリマーを含む少なくとも一つの成型面からの該デバイス本体の分離後に、該第一のポリマーの一部は、溶液中に残されたままであり得、また該デバイス本体は、該溶液中に存在することができる。しかし、該デバイス本体が、該溶液中に存在する場合には、該第一のポリマーの溶解した部分は、該デバイス本体の表面に化学的又は物理的に付着又は結合していてはならず、またその結果本例においては、該第一のポリマーは、該第一のポリマーを含まない溶液を用いて、該デバイス本体表面から洗い流すことができる。該溶解した第一のポリマーを、このようにして該デバイス本体表面から洗い流すことが可能な場合、該溶液中に存在する該デバイス本体の表面と接触状態にある可能性のある、該溶解した第一のポリマーの部分は、ここで使用するような該第一のポリマーの「層」を構成することはない。
【0102】
前記デバイス本体の型及び使用する前記成型品の取出し/レンズの取出し工程に依存して、成型品の取出し及びレンズの取出し後、該デバイス本体を、1又はそれ以上の洗浄段階に掛けることができ、該段階は、有機溶媒、有機溶媒の水性溶液、水、又は本質的に有機溶媒を含まない水性溶液中での洗浄段階を含む。この洗浄段階を使用して、該デバイス本体から汚れ又は破壊屑を排除し、該デバイス本体から物質を抽出し、あるいは該デバイス本体を水和することができる。例えば、洗浄段階を使用して、該デバイス本体から希釈物を除去し、該デバイス本体から未反応あるいは部分的に反応したモノマーを除去し、又は該デバイス本体の湿潤性を高めることができる。
【0103】
一例において、前記洗浄溶液は、有機溶媒又は有機溶媒の水性溶液を含むことができる。該有機溶媒は、揮発性有機溶媒、例えば揮発性アルコールを含むことができる。揮発性アルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを含むことができる。
【0104】
前に論じた如く、前記用語「有機溶媒」とは、少なくとも1種の物質を溶媒和又は溶解する能力を持つ有機物質を意味する。この有機溶媒を用いて、前に抽出加工に付されていない、ポリマー製デバイス本体中に存在する未反応物質、希釈剤等を溶解することができる。一例において、該物質は、水又は水性溶液に対して不溶性であり、あるいはこれら溶媒に溶解しない物質である。もう一つの例において、該物質は、水又は水性溶液に対してそれ程溶解性ではなく、あるいはこれら溶媒にそれ程溶解しない物質である。即ち、該物質は、水又は水性溶液と比較して、有機溶媒に対して高い溶媒和能を持つ。従って、このような抽出処理されていないデバイス本体と接触状態にある該有機溶媒は、該デバイス本体中に存在する少なくとも1種の物質を溶媒和又は溶解するのに有効であり、又は該デバイス本体中に存在する少なくとも1種の物質を、かなりの程度まで、溶媒和又は溶解して、該デバイス本体中に存在する少なくとも1種の物質の濃度を減じるのに有効であり、あるいは水又は水性溶液で処理されたデバイス本体に比して、該デバイス本体中に存在する少なくとも1種の物質の濃度を減じるのに有効である。該有機溶媒は、希釈することなしに、即ち100%有機溶媒として使用することができ、又は100%未満の有機溶媒を含む組成物として、例えば非-限定的に、有機溶媒含有水性溶液として使用し得る。一般に、有機溶媒は、該少なくとも1種の物質に作用して、例えば直接作用して、これを溶媒和又は溶解する。
【0105】
もう一つの例において、前記洗浄溶液は、水、又は本質的に有機溶媒を含まない水性溶液を含むことができる。本件レンズを洗浄するのに使用される、該本質的に有機溶媒を含まない水性溶液は、水性塩溶液、緩衝溶液、界面活性剤溶液、湿潤剤溶液、快適化剤(comfort agent)溶液、これらの組合せ等を含むことができる。一例において、1種又はそれ以上のポリマー型湿潤剤又は快適化剤は、本発明のデバイス本体を洗浄するために、あるいは該デバイス本体と共に使用される包装用溶液において使用することができる。しかし、本発明のデバイス本体が、如何なるポリマー型湿潤剤又は快適化剤をも含まない、水性溶液で洗浄され又は該溶液中に包装された場合、該本体は、眼科学的に許容される湿潤性表面を持つことができることを理解すべきである。従って、該ポリマー型湿潤剤又は快適化剤を使用して、このようなデバイスの湿潤性を高めることができるが、その湿潤性は、このような薬剤の使用のみに依存するものではない。
【0106】
前記成型面全体及び使用する場合には1又はそれ以上の随意の洗浄段階からの前記デバイス本体の取出し後、該デバイス本体を、包装用溶液の一部と共にブリスターパッケージ内に収容することができる。一例において、該ブリスターパッケージは、疎水性のポリマーを含むことができる。次いで、該ブリスターパッケージを封止し、また例えば該パッケージを滅菌するのに適した条件下で、これをオートクレーブ処理することによって滅菌することができる。あるいはまた、水溶性ポリマーを使用して、1又はそれ以上の前記成型面の第一部分を製造する場合、該デバイス本体及び該水溶性ポリマーで作成した該成型面の部分を、直接、溶液の一部と共に該ブリスターパッケージに収容することができ(該ブリスターパッケージに該デバイス本体を収容する前に、該水溶性ポリマーで作られた該成型面の部分からの、該本体の取出し、レンズの取出しあるいはこれら両工程を行うことなしに)、また該水溶性ポリマーで作られた、該成型面の部分又は金型アセンブリーを、その製造工程中に又はその完了後に、該溶液中に溶解することが可能である。該パッケージ内に収容され、また該水溶性ポリマーを溶解するのに使用される該溶液は、包装用溶液を含むことができ、あるいは該パッケージを封止しかつ滅菌する前に、該パッケージから後に取出され、また包装用溶液で置換される溶液を含むことができる。
【0107】
前記水溶性ポリマーで作られた前記成型面の部分を溶解するのに使用される溶液の体積を増大する目的で、PCT特許出願:PCT/US11/28197号に記載されているデバイス等のデバイスを使用することができる。この特許出願の内容全体を、参考としてここに組入れるものとする。あるいはまた、前記デバイス本体及び成型面は、前記ブリスターパッケージを封止する前に、包装用溶液で置換される、洗浄溶液の一部を含む該ブリスターパッケージ内に収容することができる。ここでも、この目的のために、PCT特許出願:PCT/US11/28197号に記載されたデバイスを使用することができる。
【0108】
前記水溶性ポリマーで作成された前記成型面の部分は、前記ブリスターパッケージを封止する前、該ブリスターパッケージを封止した後、該ブリスターパッケージをオートクレーブ処理する前又は該ブリスターパッケージをオートクレーブ処理した後に、前記溶液部分に溶解することができる。例えば、該ブリスターパッケージを封止する前、該ブリスターパッケージを封止した後、該ブリスターパッケージをオートクレーブ処理する前又は該ブリスターパッケージをオートクレーブ処理した後に、該ブリスターパッケージに添加された該水溶性ポリマーの約15質量%未満、約10質量%未満、約5質量%未満、又は約1質量%未満が、該ブリスターパッケージ内に、不溶状態で残される可能性がある。
【0109】
前記水溶性ポリマーで作られた前記成型面の部分が、前記レンズ本体を含む、前記ブリスターパッケージ内に封止された前記包装用液体に溶解している例において、該水溶性ポリマーは、該包装用溶液中に存在する、眼科学的に許容される成分を含むことができる。一例において、該水溶性ポリマーは、該包装用溶液中に溶解した場合、更に湿潤剤、快適化剤、該レンズ本体の該ブリスターパッケージに対する固着を防止する薬剤、又はこれらの任意の組合せとして機能し得る。
【0110】
ここに記載した前記成型面は、様々な型の重合性組成物を流延成形するのに使用できる。該重合性組成物は、少なくとも1種の親水性モノマーを含むことができる。該重合性組成物は、更に少なくとも1種の架橋剤、又は少なくとも1種の開始剤、又は少なくとも1種の着色剤、又は少なくとも1種のUV遮断剤、又はこれらの任意の組合せを含むことができる。該少なくとも1種の開始剤は、少なくとも1種のUV開始剤又は少なくとも1種の熱開始剤を含むことができる。一例において、該親水性モノマーは、シリコーンを含まないモノマー、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含むことができる。もう一つの例において、該重合性組成物は、更に少なくとも1種のケイ素-含有モノマーを含むことができる。更に別の例において、該重合性組成物は、重合した場合に、ヒドロゲルポリマー型の眼科学デバイス本体を生成する重合性組成物であり得る。
【0111】
ここで使用する用語「ヒドロゲル」とは、ポリマー材料、典型的には、水中で膨潤し得るあるいは水で膨潤され得る、ポリマー鎖の網状構造又はマトリックスを意味する。また、ヒドロゲルは、平衡状態で水を保持する材料であるものと理解することができる。該網状構造又はマトリックスは、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。ヒドロゲルは、水膨潤性又は水で膨潤された、眼科学デバイス、眼球インサート及びコンタクトレンズを含むポリマー材料を意味する。従って、ヒドロゲルは、(i) 水和されておらずかつ水膨潤性の、又は(ii) 部分的に水和されかつ水で膨潤している、又は(iii) 完全に水和されかつ水で膨潤されているものであり得る。該ヒドロゲルは、シリコーンヒドロゲル、シリコーンを含まないヒドロゲル、又は本質的にシリコーンを含まないヒドロゲルであり得る。
【0112】
前記用語「シリコーンヒドロゲル」又は「シリコーンヒドロゲル材料」とは、ケイ素(Si)-含有成分を含む特定のヒドロゲルを意味する。例えば、シリコーンヒドロゲルは、典型的にケイ素-含有モノマーと公知の親水性ヒドロゲルプリカーサとを結合することにより調製される。シリコーンヒドロゲル眼科学デバイスは、シリコーンヒドロゲル材料を含む、視力矯正コンタクトレンズを包含する眼科学デバイスである。
【0113】
前記重合性組成物は、重合した場合に、シリコーンヒドロゲルポリマーを生成し得る重合性組成物であり得る。該シリコーンヒドロゲル重合性組成物は、a) 少なくとも1種のケイ素-含有モノマー及びb) 少なくとも1種の親水性モノマーを含むことができる。該シリコーンヒドロゲル重合性組成物において、該少なくとも1種の親水性モノマーは、N-ビニル基を持つ親水性モノマーを含むことができる。該少なくとも1種の親水性モノマーは、ビニルアミドを含むことができる。該シリコーンヒドロゲル重合性組成物の該少なくとも1種のケイ素-含有モノマーは、3,000ダルトンを越える分子量を持つケイ素-含有モノマーであり得る。該少なくとも1種のケイ素-含有モノマーは、少なくとも2種のケイ素-含有モノマーを含むことができ、その各々は、異なる数の重合性基と異なる分子量とを持つ。場合により、該シリコーンヒドロゲル重合性組成物は、更に希釈剤、例えばシリコーンオイル型の希釈剤を含むことができる。一特別な例において、該シリコーンヒドロゲル重合性組成物は、コンフィルコン(Comfilcon) A重合性組成物を含むことができ、またその重合反応生成物は、コンフィルコンAポリマー製レンズ本体であり得る。
【0114】
前記重合性組成物が、ケイ素-含有モノマーを含む場合、該組成物は、更に少なくとも1種の相溶性架橋剤を含むことができる。特別な例において、該シリコーン-含有成分は、架橋剤及びシリコーン-含有成分両者として作用し得る。ここで論じるような重合性組成物に関連して、「相溶性」成分とは、重合前に重合性組成物中に存在した場合に、該組成物からポリマー製レンズ本体の製造を可能とするに十分な期間に渡り安定な、単一の相を形成する成分を意味する。幾つかの成分に対しては、ある範囲の濃度が、相溶性であるものと理解することができる。更に、該重合性組成物をコンタクトレンズの製造に使用した場合に、「相溶性」成分は、ポリマー製レンズ本体を製造すべく重合した場合に、コンタクトレンズとして使用するのに十分な物理的諸特性(例えば、十分な透明性、モジュラス、引張強さ等)を持つレンズを生成する成分である。
【0115】
ここに記載するポリマーに関連した「分子量」とは、典型的にはサイズ排除クロマトグラフィー技術、光散乱技術、又は1,2,4-トリクロロベンゼン中での極限粘度測定により測定される、ポリマーの公称平均分子質量を意味する。ポリマーに関連する分子量は、数-平均分子量又は重量-平均分子量の何れかで表すことができ、また販売者により供給される材料の場合、該分子量は、その供給元に依存するであろう。典型的には、任意のこのような分子量測定の基本は、その包装材料に与えられていない場合には、該供給元から容易に得ることができる。典型的に、ここで言う、マクロマー及びプレポリマーを含むモノマーの分子量、又はここでのポリマーの分子量は、数-平均分子量を意味する。数-平均及び重量-平均両者の分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー又は他の液体クロマトグラフィー技術を利用して決定することができる。分子量値を測定するための他の方法を用いることも可能であり、その例は、数-平均分子量を決定するための末端基分析の利用又は束一性の測定(例えば、凝固点降下、沸点上昇、又は浸透圧)、又は重量-平均分子量を決定するための光散乱技術、超遠心分離法又は粘度測定法の利用等である。
【0116】
ある物質の親水性又は疎水性は、公知の技術、例えば該物質の水に対する溶解度に基く技術を利用して決定することができる。本開示の目的にとって、親水性物質は、室温(例えば、約20-25℃)にて、水性溶液に対して明らかに可溶性の物質である。例えば、親水性モノマーは、当業者には公知の標準的な振とうフラスコ法を利用して測定した値として、その50g又はそれ以上が、20℃にて1Lの水に対して明らかに十分に可溶性である任意のモノマー(即ち、このモノマーは、水に対して少なくとも5%(w/w)なるレベルで可溶性である)であるものと理解することができる。ここで使用する、疎水性物質とは、室温において、該水性溶液中に別異の肉眼で同定し得る相が存在し、あるいは該水性溶液が、濁りを示し、また室温にて静置した後に、経時に伴って2つの明確な相に分離するほどに、水性溶液に対して明らかに不溶性のモノマーである。例えば、疎水性モノマーは、その50gが、20℃にて1Lの水に対して明らかに完全には溶解しない任意のモノマー(即ち、該モノマーは、水に対して5%(w/w)未満なるレベルで可溶性である)であるものと理解することができる。
【0117】
「モノマー」とは、重合性の化合物を意味し、その分子量には無関係である。即ち、モノマーは、以下において説明するように、低分子量モノマー、マクロマー、又はプレポリマーであり得る。
【0118】
「低分子量モノマー」とは、重合性の、比較的低い分子量を持つ化合物、例えば700ダルトン未満の平均分子量を持つ化合物を意味する。一例において、低分子量モノマーは、他の分子と結合すべく重合して、ポリマーを生成することのできる、1又はそれ以上の官能基を含む、1単位の分子を含むことができ、該他の分子は、該低分子量モノマーと同一の構造又はそれとは異なる構造を持つものである。
【0119】
「マクロマー」とは、中程度又は高い分子量を持つ化合物又はポリマーを意味し、これらは、重合可能な、又は更に重合可能な1又はそれ以上の官能基を含むことができる。例えば、マクロマーは、約700ダルトン〜約2,000ダルトンなる範囲の平均分子量を持つ化合物又はポリマーであり得る。
【0120】
「プレポリマー」とは、重合性又は架橋性のより高分子量の化合物を意味する。ここで使用するプレポリマーは、1又はそれ以上の官能基を含むことができる。一例において、プレポリマーは、全体としての分子が、重合性又は架橋性を維持しているような、一緒に結合された一連のモノマー又はマクロマーであり得る。例えば、プレポリマーは、約2,000ダルトンを越える平均分子量を持つ化合物であり得る。
【0121】
「ポリマー」とは、1又はそれ以上のモノマー、マクロマー、プレポリマー又はこれらの混合物を重合することにより生成される物質を意味する。ここで使用するようなポリマーは、重合することはできないが、他のポリマー、例えば重合性組成物中に存在する他のポリマーと架橋し得る、あるいは重合性組成物中の他のポリマーを製造するためのモノマー、マクロマー及び/又はプレポリマーの反応中に架橋し得る分子を意味する。
【0122】
親水性ポリマーの「網状構造」とは、典型的に架橋が、共有結合により又は物理的結合、例えば水素結合により、ポリマー鎖間に形成されることを意味する。網状構造は、2又はそれ以上のポリマー成分を含むことができ、また相互に貫入した網状構造(IPN)を含むことができ、該IPNにおいては、第一のポリマーと第二のポリマーとが、存在する場合には、これらの間に幾分かの共有結合が存在するように、物理的に絡み合っているが、該ポリマーは、該網状構造を破壊することなしには、相互に分離することはできない。
【0123】
「相互に貫入した網状構造」即ち「IPN」とは、網状構造にある2又はそれ以上のポリマーの組合せを意味し、該ポリマーの少なくとも一つは、合成(例えば、重合)されたものであり、及び/又は他方のポリマーの存在下で、これらの間に如何なる共有結合の存在もなしに、又は実質的に共有結合の存在なしに架橋されたものである。IPNは、2つの別々の網状構造を形成するが、並列位置又は相互に貫入している、2種の鎖で構成し得る。IPNの例は、逐次IPN、併発IPN、及びホモ-IPNを含む。
【0124】
「擬似-IPN」とは、前記異なるポリマーの少なくとも一つが架橋しているが、一方で少なくとも一つの他のポリマーが、架橋状態にない(例えば、線状又は分枝状)にある、重合反応生成物を意味し、ここで該非-架橋性ポリマーは、これが該網状構造から実質的に抽出できないように、分子スケールで該架橋ポリマー内に分散し又はこれにより保持されている。
【0125】
親水性モノマー:ケイ素を含まない親水性モノマーを包含する親水性モノマーは、本発明のシリコーンヒドロゲルを製造するのに使用する前記重合性組成物中に含められる。該ケイ素を含まない親水性モノマーは、1又はそれ以上のケイ素原子を含む親水性化合物を排除する。親水性モノマーは、ケイ素-含有モノマー、マクロマー又はプレポリマーとの組合せで、シリコーンヒドロゲルを製造するための該重合性組成物において使用することができる。シリコーンヒドロゲルにおいて、親水性モノマー成分は、他の重合性組成物の成分と組合せた場合に、少なくとも約10%(w/w)、又は更に少なくとも約25%(w/w)なる含水率を、生成する水和レンズに与えることのできるモノマー成分を含む。シリコーンヒドロゲルに関連して、全親水性モノマーは、該重合性組成物の、約25%(w/w)〜約75%(w/w)なる範囲、又は約35%(w/w)〜約65%(w/w)なる範囲、又は約40%(w/w)〜約60%(w/w)なる範囲であり得る。
【0126】
前記親水性モノマーとして含めることのできるモノマーは、典型的に少なくとも一つの重合性二重結合、少なくとも一つの親水性官能基、又はこれら両者を持つ。重合性二重結合の例は、例えばビニル、アクリル系、メタクリル系、アクリルアミド系、メタクリルアミド系、フマール酸系、マレイン酸系、スチリル系、イソプロペニルフェニル系、O-ビニルカーボネート系、O-ビニルカルバメート系、アリル系、O-ビニルアセチル系及びN-ビニルラクタム系、及びN-ビニルアミド系二重結合を含む。一例において、該親水性モノマーは、ビニル基-含有(例えば、アクリル基-含有モノマー又は非-アクリル系のビニル基-含有モノマー)である。このような親水性モノマーは、それ自体架橋剤として使用することができる。
【0127】
本発明のレンズ材料に配合し得る親水性ビニル基-含有モノマーは、非-限定的に、以下に列挙するモノマーを含む:N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン(NVP))、N-ビニル-N-メチルアセタミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセタミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステル等、及びこれらの混合物。ビニル基-含有モノマーの一例は、N-ビニル-N-メチルアセタミド(VMA)である。このVMAの構造は、CH
3C(O)N(CH
3)-CH=CH
2に相当する。前記重合性組成物に配合することのできる親水性モノマーは、またN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、及びポリエチレングリコールモノ-メタクリレート等の親水性モノマーをも含む。幾つかの例においては、DMA、NVP及びこれらの混合物を含む親水性モノマーが使用される。
【0128】
本開示によれば、架橋剤は、分子構造の一部として、2以上の重合性官能基、例えば2又は3又は4個の重合性官能基を含むモノマー、即ち2-官能性、3-官能性又は4-官能性モノマー等の多官能性モノマーであるものと理解される。ここに記載する前記重合性組成物において使用することのできる、1又はそれ以上の非-ケイ素系架橋剤は、例えば非-限定的に、アリル(メタ)アクリレート、又は低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、又はポリ(低級アルキレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、又は低級アルキレンジ(メタ)アクリレート、又はジビニルエーテル、又はジビニルスルホン、又はジ-及びトリ-ビニルベンゼン、又はトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又はペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、又はビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、又はメチレンビス(メタ)アクリルアミド、又はトリアリルフタレート、又はジアリルフタレート、又はエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、又はトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、又はトリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)、又はトリメチレングリコールジメタクリレート(TMGDMA)、又は任意のこれらの組合せを含む。一例において、該架橋剤は、1,500ダルトン未満、1,000ダルトン未満、500ダルトン未満、又は200ダルトン未満の分子量を持つことができる。典型的に、該架橋剤は、該重合性組成物中に比較的少ない総量にて、例えば該重合性組成物の約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)なる範囲、又は約0.5%(w/w)〜約5%(w/w)なる範囲、又は約0.75%(w/w)〜約1.5%(w/w)なる範囲の量で、該重合性シリコーンヒドロゲル組成物中に存在する。
【0129】
幾つかの例において、1種又はそれ以上の前記モノマーが、架橋官能性を含むことができる(即ち、該モノマーは多官能性であり得る)。このような場合において、該架橋官能性を持つ前記モノマー、マクロマー又はプレポリマーに加えて、追加の架橋剤を使用することは随意であり、また該架橋官能性を持つモノマー、マクロマー又はプレポリマーは、前記重合性シリコーンヒドロゲル組成物中に大量に、例えば少なくとも約3%(w/w)、少なくとも約5%(w/w)、少なくとも約10%(w/w)、又は少なくとも約20%(w/w)なる量で存在し得る。
【0130】
有用なケイ素-含有化合物は、重合性官能基、例えばビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、N-ビニルラクタム基、N-ビニルアミド基、及びスチリル基を含む。ここに記載する前記重合性組成物は、ケイ素-含有低分子量モノマー、又はケイ素-含有マクロマー、又はシリコーン-含有プレポリマー、あるいは任意のこれらの組合せを包含するケイ素-含有モノマー、及び親水性モノマー又はコモノマー、及び架橋剤を主成分とするものであり得る。一例において、本開示に係る該重合性組成物は、各々異なる分子量を持つ、少なくとも2種のケイ素-含有モノマーを含むことができる。本発明の重合性組成物において有用であり得るケイ素-含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,139,513号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,496,871号、同第5,959,117号、同第5,998,498号、同第5,981,675号、及び同第5,998,498号;米国特許出願公開第2007/0066706号、同第2007/0296914号、同第2008/0048350号、同第2008/0269429号、及び同第2009/0234089号;及び日本国特許出願公開第2008-202060A号において見出すことができる。これら刊行物の内容全体を、参考としてここに組入れるものとする。
【0131】
ここに記載の如く使用するための前記重合性組成物は、ケイ素を含まない疎水性モノマーを包含する、1種又はそれ以上の疎水性モノマーを含むことができる。このようなケイ素を含まない疎水性モノマーの例は、非-限定的に、アクリル酸及びメタクリル酸並びにメチルメタクリレートを包含するこれらの誘導体を含む。2又はそれ以上の疎水性モノマーの任意の組合せを使用することができる。
【0132】
前記重合性組成物において使用し得る、例示的なアクリル系モノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸、アクリル酸、メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、及びこれらの任意の混合物を含む。一例において、全アクリル系モノマーの含有率は、シリコーンヒドロゲルレンズ製品を製造するのに使用する該重合性組成物の、約5%(w/w)〜約50%(w/w)なる範囲にあり、また該モノマーは、該重合性組成物の約10%(w/w)〜約40%(w/w)なる範囲、又は約15%(w/w)〜約30%(w/w)なる範囲の量で存在し得る。
【0133】
追加のヒドロゲル成分:ここに記載するレンズ及び方法において使用する前記重合性組成物は、また追加の成分、例えば1種又はそれ以上の開始剤、例えば1種又はそれ以上の熱開始剤、1種又はそれ以上の紫外(UV)光開始剤、可視光開始剤、これらの任意の組合せ等、1種又はそれ以上のUV吸収性薬剤又は化合物、又はUV輻射光又はエネルギー吸収剤、着色剤、顔料、離型剤、抗菌性化合物、及び/又はその他の添加剤を含むことも可能である。本開示に関連する用語「添加剤」とは、本発明のヒドロゲルコンタクトレンズ用重合性組成物又は前記重合されたヒドロゲルコンタクトレンズ製品において与えられる化合物又はあらゆる化学薬剤を意味するが、これは、ヒドロゲルコンタクトレンズの製造のために必ずしも必要とされない。
【0134】
前記重合性組成物は、1種又はそれ以上の開始剤化合物、即ち重合性組成物の重合を開始し得る化合物を含むことができる。熱開始剤、即ち「分解開始(立上がり」温度を持つ開始剤を使用することができる。例えば、本発明の重合性組成物において使用し得る例示的な熱開始剤は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、バゾ(VAZO
TM)-64)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)(バゾ(VAZO
TM)-52)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(バゾ(VAZO
TM)-67)、及び1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(バゾ(VAZO
TM)-88)を含む。バゾ熱開始剤に関連して、そのグレード数(即ち、64、52、67、88等)は、溶液中での該開始剤の半減期が10時間であるような、摂氏温度である。ここに記載したこれらバゾ熱開始剤全ては、デュポン(DuPont(米国、デラウエア、ウイルミントン(Wilmington, Del., USA))社から入手できる。ニトリット並びに他の型の開始剤を含む追加の熱開始剤は、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)社から入手できる。眼科学的に相溶性のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約0.05%(w/w)〜約0.8%(w/w)なる範囲、又は約0.1%(w/w)〜約0.6%(w/w)なる範囲のバゾ(VAZO
TM)-64又は他の熱開始剤を含む、重合性組成物から得ることができる。
【0135】
前記重合性組成物は、また成型品取出し助剤、即ち1種又はそれ以上の、硬化されたコンタクトレンズの、その金型からのより容易な取出しを可能とする上で効果的な成分をも含むことができる。例示的な成型品取出し助剤は、親水性シリコーン、ポリアルキレンオキシド、及びこれらの組合せを含む。該重合性組成物は、更に、ヘキサノール、エトキシエタノール、イソプロパノール(IPA)、プロパノール、デカノール及び任意のこれらの組合せからなる群から選択される希釈剤を含むことができる。希釈剤は、これを使用する場合には、典型的に約10%(w/w)〜約30%(w/w)なる範囲の量で存在する。比較的高い希釈剤濃度を持つ組成物は、必ずと言う訳ではないが、低いイオノフラックス値、低いモジュラス、及び高い伸び率並びに20秒を越える水切り(water break up)時間(WBUT)を持つ傾向にある。ヒドロゲルコンタクトレンズの製造において使用するのに適した追加の材料は、米国特許第6,867,245号に記載されている。この特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。しかし、幾つかの例において、該重合性組成物は、希釈剤を含まないものである。
【0136】
重合性組成物の特別な一例において、該組成物は、第一の反応性比を持つ第一のモノマー、及び該第一の反応性比よりも低い第二の反応性比を持つ第二のモノマーを含む。当業者には理解されるように、反応性比は、各成長種の、該種自身のモノマーを添加した際の反応速度定数対他のモノマーを添加した際の速度定数の比として定義し得る。このような組成物は、また該第一の反応性比又は該第二の反応性比と類似する反応性比を持つ、少なくとも1種の架橋剤を含むことができる。このような組成物は、また少なくとも2種の架橋剤を含むことができ、ここでその第一の架橋剤は、該第一の反応性比と類似する反応性比を持ち、また第二の架橋剤は、該第二の反応性比と類似する反応性比を持つ。幾つかの例において、該レンズプリカーサ組成物は、1種又はそれ以上の除去し得る添加剤を含むことができる。例えば、該重合性組成物は、除去することのできる、1種又はそれ以上の相溶化剤、成型品取出し助剤、レンズ取出し助剤、湿潤性増強剤、及びイオノフラックス減衰剤を含むこともできる。
【0137】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、前に記載した如き、低分子量モノマー、マクロマー、プレポリマー又はこれらの任意の組合せを包含するケイ素-含有モノマー、及び少なくとも1種の親水性モノマーを含む、重合性レンズ用処方物を主成分とする。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料の幾つかの例は、以下のUSANを持つ材料を含む:アクアフィルコン(acquafilcon)A又はアクアフィルコンB、バラフィルコン(balafilcon)A、コンフィルコン(comfilcon)A、エンフィルコン(enfilcon)A、ガリフィルコン(galyfilcon)A、レンフィルコン(lenefilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコンB、セノフィルコン(senofilcon)A、ナラフィルコン(narafilcon)A、及びフィルコン(filcon)II3。一例において、眼科学的に許容される湿潤性の前面及び後部面を持ち、該レンズ本体に対して表面処理が施されていない、又は該レンズ本体においてポリマー型湿潤剤の相互貫入性ポリマー網状構造(IPN)の存在しない、該レンズ本体は、コンフィルコン(comfilcon)Aシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ本体である。
【0138】
眼科学デバイスは、前面及び後部面等の表面を持つ本体を含んでいる。ここにおいて使用する、眼科学的に許容される湿潤性の眼科学デバイスは、全て眼科学的に許容される湿潤性の表面を持つデバイスである。湿潤性とは、デバイスの1又はそれ以上の表面が親水性であることを意味する。ここにおいて使用する如き、デバイスの表面は、該デバイスが以下のようにして行われる湿潤性評価アッセイにおいて、3又はそれ以上の評価値を与えられた場合に、眼科学的に許容される湿潤性を持つものと考えることができる。眼科学デバイスを蒸留水に浸漬し、該水から取出し、形成された水膜が、該デバイス表面から後退するに要する時間(例えば、水切り時間(WBUT))の長さを決定する。このアッセイは、1-10なる線形評価値に基いて、デバイスを等級付けし、ここで、10なる評価値は、該デバイスから水滴が落下するのに20秒又はそれ以上かかるようなデバイスを意味する。5秒を越える、例えば少なくとも10秒又はより望ましくは少なくとも約15秒なるWBUTを持つデバイスは、眼科学的に許容される湿潤性表面を持つデバイスであり得る。また、湿潤性は、デバイス表面の一方又は両方における接触角を測定することにより決定することもできる。該接触角は、動的又は静的接触角、定着した液滴の接触角、懸垂液滴の接触角、あるいは係留気泡の接触角であり得る。より低い接触角は、一般にデバイス表面の高い湿潤性を意味する。例えば、デバイスの眼科学的に許容される湿潤性表面は、約120度未満の接触角を持つことができる。しかし、幾つかの例において、該デバイスは、90度程度の接触角を持つことができ、また更なる例において、該デバイスは、約80度未満の前進接触角を持つことができる。
【0139】
ここに記載の前記成型面を用いて流延成形された前記眼科学デバイスは、十分に水和されている際には、眼科学的に許容される湿潤性表面を持つことができ、また該レンズに眼科学的に許容される湿潤性表面を持たせるために、表面処理を適用し、あるいは該デバイス本体内に、ポリマー系湿潤剤のIPN又は擬似-IPNを存在させる必要はない。しかし、該デバイスに対する表面処理の適用又は該デバイス本体内に、ポリマー系湿潤剤のIPN又は擬似-IPNを存在させることは、眼科学的に許容される湿潤性であると考えられるレベル以上に、更に該デバイス表面の湿潤性を高めるために利用することができる。
【0140】
「眼科学的に相溶性のシリコーンヒドロゲルデバイス」とは、着用者が目の刺激等を含む実質的な不快感を経験又は報告することなしに、該ヒトの目に装着し得る、コンタクトレンズ等のシリコーンヒドロゲル眼科学デバイスを意味する。該デバイスが、コンタクトレンズである場合、このようなレンズは、しばしば酸素透過率、表面湿潤性、モジュラス、含水率、イオノフラックス、意匠及び任意のこれらの組合せを有しており、これら特性は、該レンズを、長期間に渡り、例えば少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、又は約1ヵ月間に渡り、患者の目から該レンズを取出す必要性なしに、該目に快適に装着することを可能とする。典型的には、眼科学的に相溶性のシリコーンヒドロゲルデバイスは、著しい角膜の膨潤、角膜の脱水(「ドライアイ」)、上部-上皮湾曲状病変(SEALs)、又はその他の有意の不快さを引起すことはなく、あるいはこれらに関連することはない。眼科学的に相溶性のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、毎日装着される又は長期間装着型コンタクトレンズに対する臨床的許容要件を満たしている。
【0141】
眼科学的に相溶性のシリコーンヒドロゲルデバイスは、眼科学的に許容される湿潤性表面を持つが、眼科学的に許容される湿潤性表面を持つデバイスは、必ずしも眼科学的に相溶性ではない可能性がある。「眼科学的に許容される湿潤性表面」を持つシリコーンヒドロゲルコンタクトデバイスは、デバイスの装着者に、該シリコーンヒドロゲルデバイスの目への配置又は装着に係る不快感を経験させ又はそのような報告をさせる程に、該デバイス着用者の目の涙膜に悪影響を及ぼすことのない、シリコーンヒドロゲルデバイスを意味するものと理解できる。
【0142】
眼科学デバイス、例えばシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製法は、
図1に例示されている。本開示によれば、
図1に示された段階全て、又は
図1に示された段階の部分集合は、コンタクトレンズの製法を含むことができる。
図1の段階の入力、出力又は入力及び出力両者として機能する事項が、
図2に示されている。
【0143】
図1は、第一のポリマーを準備する段階102を含んでいる。この第一のポリマーは、
図2においては要素202として示されている。
【0144】
図1の段階104は、第一の金型部材及び第二の金型部材の少なくとも一方の、成型面の第一部分を製造するために、該第一のポリマーを使用する段階を示すものである。
図2の要素204は、生成される、該第一のポリマーを含む又はこれからなる該成型面の第一部分を示すものである。
【0145】
一例において、前記成型面の第一部分を製造するための前記第一のポリマーを使用する前記段階は、該第一のポリマーのマトリックスを生成する工程を含むことができる。該マトリックスは、該第一のポリマーのネット-状のマトリックスを含むことができる。該ネット-状のマトリックスは、シート状に成形することができ、該シートは、裁断され、また該成型面の第二部分と接触した状態に配置されて、該成型面の該第一部分の生成を可能とし、又は該マトリックスは、該成型面の該第一部分の形状に相当する形状にて、直接成形することができる。例えば、該マトリックスは、コンタクトレンズの周辺ゾーンの形状に対応する形状にて成形することができる。
図3は、コンタクトレンズの周辺ゾーンの形状に対応する、3つの異なる可能なマトリックスのデザイン3A、3B、3Cにて成形することができる。これら3A、3B、3Cにおいて、実線は、該第一のポリマーで作られた領域を表す。当業者は、このようなマトリックスを生成する多数の方法、例えば射出成型法があることを認識しているであろう。
【0146】
図1は、また第二のポリマーを準備する段階106を含んでいる。該第二のポリマーは、要素206として
図2に示されている。
【0147】
図1の段階108は、前記第二のポリマーを使用して、第一の金型部材及び第二の金型部材の少なくとも一つの成型面の第二部分を生成する段階を例示するものである。
図2の要素208は、前記第一のポリマーを含む、又はこのポリマーからなる、生成された前記成型面の第一部分を例示するものである。
【0148】
図1の段階110は、前記成型面の第一部分と前記成型面の第二部分とを結合して、成型面全体を生成する段階を示すものである。該成型面全体は、
図2において要素210として示されている。前記第一のポリマーで作られた該成型面の第一部分が、
図3に示されたマトリックス等の、該第一のポリマー製のマトリックスを含む場合、該成型面の第二部分を生成するための前記第二のポリマーを使用する段階は、従来の成型面、即ちレンズ表面全体を成形するように形作られた成型面を持つ公知のコンタクトレンズ成型用金型部材を製造する段階であり得、また該第一部分及び第二部分を結合する段階は、第一のポリマーで作られたマトリックスを、該第二の金型部材で作られた該成型面上に貼付する段階であり得る。該マトリックスを該成型面に貼付する場合、該第一のポリマー製のマトリックスは、該第二のポリマーで作られた該成型面の部分上にあり、かつこれと直接接触した状態にあり、またその結果として該第一のポリマー製のマトリックスは、該第二のポリマーで作られた該成型面の部分を「封鎖する」であろう。この結合された成型面が、眼科学デバイスを流延成形するのに使用される場合、前記重合性組成物は、該第一のポリマーマトリックスによって「封鎖」されていない領域のみにおいて、該成型面の第二のポリマーと接触し、従って該組成物は、該第一のポリマーマトリックスにより形成された該成型面の第一部分及び該第二のポリマーにより形成された該成型面の第二部分両者と、直接接触した状態にあるであろう。
【0149】
一例において、前記成型面の第一部分又は第二部分を生成する前記段階及び該第一部分及び第二部分を結合する前記段階は、同一の段階を含むことができる。例えば、該成型面の第二部分は、前記第二のポリマーを射出成型して、該成型面の第二部分を含む金型部材を形成することにより製造でき、また引続き、該第一のポリマーを使用して、例えば該第一のポリマーを該第二のポリマーで作られた該成型面上に直接堆積させることにより、あるいは該第一のポリマーを、前記第二の金型部材を含む金型内で成形することにより、該成型面の第二部分を生成することができる。該成型面の第一部分は、前記デバイスの表面上に少なくとも一つのチャンネルを形成するように形付けることができる。換言すれば、該チャンネル全体は、該デバイスの外側表面の一部であり得、結果として該チャンネル自体が、該デバイスの外側表面の一部となる。
【0150】
一例において、前記第一のポリマーのマトリックスを使用する場合、該マトリックスの一部のみを、前記成型面の第一部分として使用することができ、一方で該マトリックスのもう一つの部分は、デバイスの本体内にある構造を形成するのに使用することができる(即ち、該マトリックスのその他の部分は該デバイス表面における構造を形成するのに使用されることはない)。例えば、該成型面の第一部分は、該デバイスの少なくとも一つの表面から該デバイスの本体内に伸びている、少なくとも一つのチャンネルを生成するように形作ることができる。換言すれば、本例においては、該第一のポリマーで作られた該マトリックスは、チャンネルを形成するのに使用することができ、該チャンネルは、該デバイスの外側表面において開始しており、該マトリックスは、またチャンネルを生成するために使用することができ、該チャンネルは、該デバイス本体内にあり、かつ該本体を取巻いており、また該デバイスの少なくとも一つの表面から延びているチャンネルと連絡している。一例において、このようなチャンネルは、デバイス表面に第二の出口を持つことなしに、該デバイスの第一の外側表面から該デバイス本体内に伸びたものであり得る(即ち、該チャンネルは、唯一つだけの開口を持つことができ、即ち該第一の外側表面からの開口が唯一の開口であり、また該チャンネルは、該デバイス本体内に伸びることができるが、そこから戻ることはできない)。もう一つの例において、このようなチャンネルは、該デバイスの第一の外側表面から該デバイス本体内に伸び、次いで該デバイス表面上の第二の開口に戻ることができる。本例において、該第一の開口は、該第二の開口とは異なる開口であり得る。更に、該第一の開口は、第一のデバイス表面上にあり得、また該第二の開口は、該第一の開口と同一のデバイス表面上に存在でき、あるいは該デバイスの異なる表面上に存在し得る。換言すれば、該第一の開口は、該デバイスの前面上にあり、かつ該第二の開口は、該デバイスの前面又は後部面上に存在し得る。
【0151】
例えば、
図3に示されている前記マトリックスの外側周辺部(300A、300B及び300C)のみが、前記第二のポリマーで作られた前記成型面の部分と直接接触した状態で配置でき、またその結果として、該マトリックスの該外側周辺部(300A、300B及び300C)のみが、該成型面の前記第一部分を構成している。前記重合性組成物が、この成型面と接触した状態で配置されている場合、該外側周辺部(300A、300B及び300C)のみが、前記デバイスの外側表面(例えば、コンタクトレンズの端部部分)を成形するのに使用され、一方で該マトリックスの残りの部分は、該重合性組成物によって取り囲まれている。硬化後に、該外側周辺部(300A、300B及び300C)のみが、得られるデバイス本体上に存在し、一方該マトリックスの残りの部分は、該ポリマー製デバイス本体によって包囲されている。該マトリックスを製造するのに使用した該第一のポリマーが、水溶性ポリマーからなる場合、前記金型アセンブリー、取出されたレンズ本体、又は部分的なレンズ取出し処理に付されたレンズ本体は、水又は水性溶液との接触に付されて、該第一のポリマーが溶解される。該第一のポリマーの溶解は、該デバイスの外側表面上に存在する該マトリックスの部分並びに該デバイス本体中に存在する該マトリックスの部分両者を包含する、該第一のポリマー製のマトリックス全体の溶解をもたらし、これにより該デバイス本体内に存在するチャンネルを有するデバイス本体が生成される。
【0152】
もう一つの例において、前記第一部分及び第二部分を結合する段階は、前記第一のポリマー製のマトリックスを、前記第二のポリマーで作られた金型部材と接着する工程を含むことができる。
図4は、該マトリックスと金型部材とを貼付するのに使用し得る、2つの異なる非-成形領域を持つ、2つの異なるマトリックスを示すものである。該マトリックス4Aは、該マトリックスの非-成形領域内に、該第一のポリマーで作られた複数のループ401を有し、該ループは、該第二のポリマーで作られた金型部材の非-成形領域の支柱上に配置して、該成型面の第一部分を含む該マトリックスを、成型面の第二部分に貼付して、全成型面を形成することを可能とする。該マトリックス4Bは、該マトリックスの非-成形領域に該第一のポリマー製のリング402を有し、該リングは、該マトリックスを該成型面の第二部分を含む金型部材に貼付するために使用し得る。例えば、接着剤を、該マトリックスの該非-成形リング上に配置して、該マトリックスを金型部材に貼付することができ、あるいは溶着部を、該マトリックスの該非-成形リングと該第二のポリマーで作られた金型部材の非-成形領域との間に形成して、該成型面の第一部分を、該成型面の第二部分に貼付し、かつ成型面全体を生成することができる。
【0153】
図1は、また重合性組成物を、前記成型面全体210と直接接触した状態に配置する工程をも含む。本開示に関連して、該重合性組成物は、重合した際にシリコーンヒドロゲルポリマーを形成し得る、ケイ素-含有重合性組成物等の重合性組成物であるものと理解することができる。該重合性組成物は、
図2において要素212として示されている。該重合性組成物は、重合に適した予備重合された又は予備硬化された組成物であるものと理解することができる。
【0154】
典型的に、前記重合組成物は、該組成物の硬化又は重合前に重合されることはない。しかし、重合性組成物は、硬化工程を行う前に部分的に重合される恐れがある。幾つかの例において、該重合性組成物は、該硬化工程中に、該重合性組成物の他の成分と架橋を起こすポリマー成分を含んでいる可能性がある。該ポリマー成分は、湿潤剤又は快適化剤であり得る。あるいはまた、該ポリマー成分は、ポリマー型湿潤剤又は快適化剤ではなく、又は該レンズ本体内に相互貫通ポリマー網状構造又は擬似-IPNを形成せず、あるいはポリマー型湿潤剤又は快適化剤ではなく、しかも該レンズ本体内にIPN又は擬似-IPNを形成しない、ポリマー成分であり得る。
【0155】
本発明の重合性組成物は、ここに記載するように、硬化又は重合工程前に、容器、計量分配デバイス、又は金型部材中に与えることができる。
図1に戻ると、段階112において、該重合性組成物は、雌型金型部材又は雄型金型部材の、デバイス-形成用成型面(即ち、レンズ表面等の眼科学デバイスの表面全体を成形するのに使用する全成型面)に配置される。該雌型金型部材は、第一金型部材又は前部金型部材であると理解することができ、また該雄型金型部材は、第二の金型部材又は後部金型部材であると理解することができる。例えば、該雌型金型部材は、該レンズ金型により製造されるレンズの前面又はフロント表面を画成する、成型面を含む。該第二の金型部材は、雄型金型部材又は後部金型部材であると理解することができる。例えば、該第二の金型部材は、該金型部材内で作成されたレンズ等のデバイスの後部面を画成する、成型面を含む(例えば、該第二又は雄型金型部材は、凸型レンズ-形成用成型面を持つことができる)。
【0156】
金型アセンブリーを作成するために、前記第一の金型部材を、第二の金型部材と接触状態において、該第一の金型部材の第一の成型面と該第二の金型部材の成型面との間の空間にデバイスの形状を持つキャビティを形成する。
図1に示された方法は、2つのコンタクトレンズ用金型部材を相互に接触状態において、これらの間にレンズの形状を持つキャビティを形成することにより、コンタクトレンズ用金型アセンブリーを製造する段階114を含む。例えば、
図2を参照すると、該段階114の実施に続き、前記重合性シリコーンヒドロゲル組成物212が、該金型アセンブリー214の該コンタクトレンズ形状のキャビティ内に配置される。
【0157】
段階116において、
図1に示された前記方法は、前記重合性組成物を硬化して、ポリマー製デバイス本体を製造する工程を含み、該デバイス本体は、要素216として
図2に示されているように、金型アセンブリー内に収容されている。該工程のこの点において、該ポリマー製レンズ本体は液体に暴露されてはいない。一例において、該ポリマー製レンズ本体は、重合されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ本体であり得る。硬化中に、該重合性組成物の成分は重合されて、ポリマー製レンズ本体を生成する。従って、該硬化は、重合段階であると考えることもできる。該硬化116は、該重合性レンズプリカーサ組成物を、該レンズプリカーサ組成物の成分を重合するのに有効な一形態の電磁輻射に暴露する工程を含むことができる。例えば、該硬化116は、該重合性組成物を、様々な形態にある電磁輻射の中でも特に、重合に要する量の熱輻射、マイクロ波輻射又は紫外(UV)光に暴露する工程を含むことができる。該硬化116は、また酸素を含まない又は殆ど酸素を含まない環境内で、該組成物を硬化することを含む。例えば、該硬化116は、窒素又は他の不活性ガスの存在下で行うことができる。該硬化116は、該重合性組成物を完全に重合するのに効果的であり得、あるいは該レンズ本体が、処理した場合に(例えば、成型品の取出し、レンズの取出し、洗浄、包装、滅菌等)、コンタクトレンズとして機能するに十分なその成型された形状を維持し得るようなレベルまで、該重合性組成物を重合することを可能とする。
【0158】
液体に暴露されていないポリマー製のデバイス本体は、使用した成型品取出し及びレンズ取出し工程の型及び1又はそれ以上の随意の洗浄工程が実施されたか否かに依存して、該製造工程における様々な段階において存在し得る。例えば、液体に暴露されていないポリマー製レンズ本体は、湿式成型品取出し工程、又は湿式レンズ取出し工程、又は湿式成型品取出し及び湿式レンズ取出し工程、又は随意の洗浄工程、又はこれらの任意の組合せ工程を行う前のポリマー製レンズ本体であり得る。例えば、該洗浄工程は、埃又は破砕屑を除去するための清浄化工程、又は該ポリマー製レンズ本体から1又はそれ以上の抽出性成分の一部、又は実質的全てを除去するための抽出工程、又は該ヒドロゲルレンズ本体を部分的に又は完全に水和させるための水和工程、又はこれらの任意の組合せ工程であり得る。例えば、未だ液体と接触させていない該ポリマー製レンズ本体は、金型アセンブリー又は硬化工程後の2つの成型面のレンズ形状を持つキャビティ内に存在するレンズ本体を含むことができ、又は乾式成型品取出し工程後の、一つの及び唯一つの金型部材と接触状態にあるレンズ本体を含むことができ、又は1又は複数の乾式レンズ取出し工程後の、トレー又は他のデバイス中のコンタクトレンズ本体を含むことができる。未だ液体と接触させていない該ポリマー製レンズ本体は、レンズ-形成成分、例えばレンズの形状にある、ケイ素-含有ポリマーの網状構造又はマトリックス、及び重合後に該レンズ本体から取出すことのできる除去可能な成分を含むことができる。該除去可能な成分は、未反応モノマー、オリゴマー、部分的に反応したモノマー、又は該レンズ-形成成分に対して共有結合により結合あるいはまた固定化されていない他の薬剤を含むものと理解することができる。該除去可能な成分は、また希釈剤を包含する1又はそれ以上の添加剤を含むものと理解することもでき、これらは、ここにおいて論じた如き、清浄化、抽出、又は水和手順中に、該重合されたレンズ製品から除去することができる。このように、該除去可能な成分を含む材料は、該レンズ本体のポリマー主鎖、網状構造、又はマトリックスに対して、架橋も固定化もされていない抽出性物質の、線状で架橋されていない、又は僅かに架橋された又は分枝されているポリマーを含むことができる。
【0159】
前記重合性組成物を硬化した後、
図1に示された方法は、場合により、前記金型アセンブリーの金型部材から、前記ポリマー製デバイス本体を分離する段階118を含むことができる。
図2に示されているように、段階118の出力は、ポリマー製デバイス本体218を生成するために使用された、前記成型面全体から離型されている該デバイス本体である。一例において、該金型部材から該ポリマー製レンズ本体を分離する段階は、該ポリマー製レンズ本体を製造するのに使用した、複数ある該成型面の全成型面の一つ及び唯一つとの接触状態に維持されている、該ポリマー製レンズ本体を与える、成型品取出し工程を含むことができる。該成型品取出し工程に引続き、該ポリマー製レンズ本体は、該金型アセンブリーの該成型面の唯一つ上に位置し、又はこれと接触した状態に維持されている。成型品取出し工程後に、該ポリマー製レンズ本体が接触状態に維持されている該一つの及び唯一つの金型部材は、前記第一のポリマー202を用いて作成された成型面204の第一部分を含む成型面であり得、あるいは異なる成型面であり得る。該成型面から該ポリマー製レンズ本体を分離する前記工程118が、成型品取出し工程を含む場合、該分離段階は、更に該成型品取出し工程後に、接触状態に維持されている該一つの及び唯一つの成型面又は成型面の部分から、該ポリマー製レンズ本体を取出す、レンズ取出し段階を含むことができる。該ポリマー製レンズ本体は、該成型品取出し工程後に、該ポリマー製レンズ本体が何れの金型部材と接触状態にあるかに依存して、前記雄型金型部材の該成型面全体又は該成型面の一部から又は該雌型金型部材の該成型面全体又は該成型面の一部から取出すことができる。あるいはまた、該段階118は、成型品取出し及びレンズ取出し工程の組合せを含むことができ、ここで、該レンズ本体は、これを作成するのに使用された全ての成型面から同時に取出される。該レンズ本体を製造するのに使用した該成型面の少なくとも一つが、水溶性ポリマーを含む場合、該分離工程は、液体を、該レンズ本体及び該成型面(金型アセンブリー、単一の金型部材、一対の成型面、全成型面又は成型面の一部として、ここで該成型面は、該金型部材の非-成形部分と接触状態にあるか、あるいはこれとは分離されている)に適用して、該水溶性ポリマーを少なくとも部分的に溶解し、結果として該レンズ本体を、該成型面から分離する工程を含むことができる。湿式分離工程において使用される該液体は、水又は水性溶液を含むことができる。
【0160】
図1に示された方法は、場合により前記デバイス本体を洗浄する段階120を含む。この洗浄段階は、ポリマー製レンズ本体を、液体、例えば有機溶媒、有機溶媒溶液、水又は有機溶媒を含まない水性溶液と接触させて、該レンズ本体から埃又は破砕屑を除去し、又は該レンズ本体を抽出処理して、該本体から抽出性の物質を除去し、又は該レンズ本体を完全に又は部分的に水和させ、あるいは任意のこれらの組合せを行う工程を含むことができる。一例において、該洗浄段階120は、湿式成型品取出し工程、湿式レンズ取出し工程又はこれら両工程中に使用された該液体を除去し、又は希釈するための洗浄段階を含むことができる。該洗浄段階120は、
図2に示したように、清浄化され、抽出処理され又は水和されたレンズ本体220を与える。該洗浄段階120は、場合によりポリマー製レンズ本体を含む金型アセンブリー、一成型面と接触状態に維持されているポリマー製レンズ本体、ポリマー製レンズ本体を作成するのに使用された該成型面全体から完全に分離されている該レンズ本体について実施でき、また前記製造工程の一部として繰返し実施することができる。
【0161】
前記洗浄段階120は、場合により前記ポリマー製レンズ本体を水和処理する段階を含むことができる。該水和段階は、ポリマー製レンズ本体又は1又はそれ以上の、このようなポリマー製レンズ本体のバッチと、水又は水性溶液とを接触させて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ等の水和レンズ製品を製造する工程を含むことができる。該水和段階は、完全に又は部分的に該レンズ本体を水和することができる。一例において、該水和段階において水和された該ポリマー製レンズ本体は、該水和段階に先立って液体との接触処理に付されていない、レンズ取出し処理されたポリマー製レンズ本体であり、又は既に液体と接触させられているポリマー製レンズ本体を含むことができる。該随意の洗浄段階120が、水和段階を含む場合、得られる出力は、洗浄され、水和されたポリマー製デバイス本体220を含む。
【0162】
前記分離段階118及び前記随意の洗浄段階120の完了後、
図1に示された方法は、場合により前記デバイス本体を包装して、包装された眼科学デバイス製品222を製造するための該デバイス包装段階122を含むことができる。例えば、レンズ本体は、ブリスターパック、バイアルビン又は他の適当な容器に、所定体積の包装用液体、例えば緩衝処理された塩水溶液を包含する塩水溶液と共に収納することができる。一例において、該洗浄段階120及び該包装段階122は、未だ液体との接触処理に付されていないポリマー製レンズ本体を包含する、ポリマー製レンズ本体を、ブリスターパッケージ又は容器内に、包装用溶液及び洗浄溶液両者として機能する包装用液体の一部と共に収容することにより、同時に実施することができる。もう一つの例において、該分離及び包装段階は、ブリスターパッケージ又は容器内に、金型アセンブリー、金型アセンブリーの2つの成型面、金型部材、又は成型面と接触状態にあるポリマー製レンズ本体を、前記ビニルアルコールコポリマー製の金型部材又は成型面を溶解することにより、該レンズ本体を離型するのに役立つ包装用液体の一部と共に収容することにより、同時に行うことができる。該随意の包装段階122が、前記方法に含まれる場合、得られる出力は、
図2に示されているような、包装されたポリマー製デバイス本体222である。
【0163】
場合により、
図1に示された方法は、更に1又はそれ以上の検査段階124を含むことができる。
図1に示された例において、該検査段階は、前記包装段階後であって、前記パッケージを封止し及び滅菌する前に行われるが、1又はそれ以上の該検査段階は、硬化前又は硬化後の、この方法の任意の時点において、乾燥デバイス本体又は湿潤デバイス本体について行われる。例えば、検査は、1又はそれ以上の金型部材について行って、前記成型面の受容性を決定することを可能とし、前記重合性組成物を配置した後に金型部材について行って、該重合性組成物内の気泡の存在を検出し、硬化後の乾燥レンズについて行って、該乾燥レンズ本体の受容性を決定し、又は分離、洗浄又は包装後に湿潤レンズ本体について行って、該湿潤レンズ本体の受容性を決定することができる。
図1に示された如き随意の検査段階124は、包装され、検査された本体224を与えるが、他の工程においては、検査された金型部材、金型部材内の検査された重合性組成物、検査された乾燥レンズ本体、又は検査された湿潤レンズ本体を含むことができる。
【0164】
前記包装されたデバイス本体の検査段階124の完了後に、該包装され、検査されたデバイス本体224を含む前記ブリスターパック又は容器を、
図1の随意の段階126に示されているように、封止し、また引続き滅菌して、例えばコンタクトレンズ等の眼科学デバイス製品を含む、滅菌された包装体を製造することができる。該包装されたデバイス本体を、滅菌に十分な量の、例えばオートクレーブ処理による熱、γ-線輻射、電子ビーム輻射、紫外光輻射等を含む輻射に暴露することができる。使用された前の処理段階に依存して、該滅菌工程は、また該包装されたデバイス本体を部分的に又は完全に抽出し、完全に水和し、又は抽出及び水和両者の機能を果たすことができ、又は前記ビニルアルコールコポリマーを含む前記金型部材又は成型面を溶解する機能を果たすことができる。該工程126は、
図2に示した如き、包装された眼科学デバイス製品226を与える。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕眼科学デバイスの製造方法であって、以下の工程、
(a) 第一のポリマーを準備する工程、
(b) 該第一のポリマーを使用して、眼科学デバイスの前面又は後部面を流延成形するように形作られた、成型面の第一部分を生成する工程、
(c) 第二のポリマーを準備する工程、
(d) 該第二のポリマーを使用して、眼科学デバイスの前面又は後部面を流延成形するように形作られた、成型面の第二部分を生成する工程であって、該第一部分及び該第二部分は、一緒に結合された際に、眼科学デバイスの前面又は後部面全体を成形するように形作られた、成型面全体を生成する工程、
(e) 少なくとも1種の親水性モノマーを含む重合性組成物を、該成型面全体と直接接触した状態に置く工程、及び
(f) 該成型面全体と直接接触した状態にある該重合性組成物を硬化して、ポリマー製眼科学デバイス本体を含む重合反応生成物を生成する工程、
を含むことを特徴とする、前記眼科学デバイスの製造方法。
〔2〕前記第一ポリマーが、エチレン-ビニルアルコールコポリマーではない、少なくとも1種のビニルアルコールコポリマーを含む、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕前記第一ポリマーが、ニチゴG-ポリマーを含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕前記第二ポリマーが、ポリプロピレンを含む、前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項に記載の方法。
〔5〕前記第一のポリマーを使用して、前記成型面の第一部分を形成する前記工程が、該第一のポリマーを射出成形する工程を含む、前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項に記載の方法。
〔6〕前記第一のポリマーを射出成形する工程が、約180℃〜約250℃なる範囲の溶融温度、約180℃〜約250℃なる範囲のバレル温度、約30℃〜約70℃なる範囲のスロート温度、約30℃〜約95℃なる範囲の金型温度、約1秒〜約5秒なる範囲の滞留時間、約50mm/秒〜約250mm/秒なる範囲の射出速度、約100mm/秒〜約300mm/秒なる範囲の可塑化速度、約5〜約18MPa(約50〜約180bar)なる範囲の射出成型圧力、約1〜約20MPa(約10〜約200bar)なる範囲の保持圧力、約0.5〜約2.5MPa(約5〜約25bar)なる範囲の背圧、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、プロセス設定を使用する、前記〔5〕記載の方法。
〔7〕前記第一のポリマーを使用して前記成型面の第一部分を形成する前記工程が、該第一のポリマーを旋盤処理する工程を含む、前記〔1〕〜〔6〕の何れか1項に記載の方法。
〔8〕前記第一のポリマーを使用して前記成型面の第一部分を形成する前記工程が、該第一のポリマーのマトリックスを生成する工程を含む、前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項に記載の方法。
〔9〕前記方法が、更に、前記マトリックスと前記成型面の第二部分とを結合して、前記成型面全体を生成した後、前記重合性組成物を配置して、該成型面全体と直接接触させる工程を含む、前記〔8〕記載の方法。
〔10〕前記第一のポリマーを使用して前記成型面の第一部分を形成する前記工程が、該第一のポリマーを、前記第二のポリマーで作られ、予備成形された成型面上に直接適用する工程を含む、前記〔1〕〜〔9〕の何れか1項に記載の方法。
〔11〕前記第一のポリマーを前記予備成形された成型面上に直接適用する前記工程が、前記ビニルアルコールを流延して、前記第二のポリマーで作られた前記成型面の第二部分を含む、予備成形された金型部材とする工程を含む、前記〔10〕記載の方法。
〔12〕前記方法が、更に、前記成型面の第一部分及び第二部分両者から、前記ポリマー製眼科学デバイス本体を離型する工程を含み、かつ該ポリマー製眼科学デバイス本体が、該成型面の第一部分から離型される前に、該デバイス本体が、該成型面の第二部分から離型される、前記〔1〕〜〔11〕の何れか1項に記載の方法。
〔13〕前記方法が、更に、前記ポリマー製眼科学デバイス本体又は前記成型面の第二部分を液体と接触させる工程を含まない方法を利用して、該デバイス本体を少なくとも該成型面の第二部分から離型する工程をも含む、前記〔1〕〜〔12〕の何れか1項に記載の方法。
〔14〕前記方法が、更に、前記ポリマー製眼科学デバイス本体及び前記成型面の第一部分を液体と接触させることによって、少なくとも該成型面の第一部分から、該デバイス本体を離型する工程をも含む、前記〔1〕〜〔13〕の何れか1項に記載の方法。
〔15〕前記成型面の第一部分と前記液体との接触が、該成型面の第一部分を少なくとも部分的に溶解している該液体をもたらす、前記〔14〕記載の方法。
〔16〕前記重合性組成物が、少なくとも1種のケイ素-含有モノマーを含み、かつ前記ポリマー製眼科学デバイス本体が、シリコーンヒドロゲル眼科学デバイス本体を含む、前記〔1〕〜〔15〕の何れか1項に記載の方法。
〔17〕前記成型面全体が、コンタクトレンズの後部面を成形するように形作られた全成型面を含み、かつ前記ポリマー製眼科学デバイス本体が、ポリマー製コンタクトレンズ本体を含む、前記〔1〕〜〔16〕の何れか1項に記載の方法。
〔18〕前記成型面の第一部分が、前記デバイスの表面上に少なくとも一つのチャンネルを形成するように形作られている、前記〔1〕〜〔17〕の何れか1項に記載の方法。
〔19〕前記成型面の第一部分が、前記デバイスの少なくとも一つの表面から、該デバイスの本体内に伸びている、少なくとも一つのチャンネルを形成するように形作られている、前記〔1〕〜〔17〕の何れか1項に記載の方法。
〔20〕眼科学コンタクトレンズ成型用金型部材であって、以下の部品、
(a) 第一のポリマーで作成された成型面の第一部分であって、該第一部分が、コンタクトレンズ表面の第一の領域を流延成形するように形作られている第一部分、及び
(b) 第二のポリマーで作成された成型面の第二部分であって、該第二の部分が、該表面の第二の領域を流延成形するように形作られている第二部分、
を含み、該第二の部分が、該第一の部分との組合せで、成型面全体を形成するように形作られており、かつ該第一の部分と該第二の部分との組合せが、コンタクトレンズの全表面を流延成形するように形作られていることを特徴とする、前記眼科学コンタクトレンズ成型用金型部材。