(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010834
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】抗菌性セラミック体
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20060101AFI20161006BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20161006BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20161006BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20161006BHJP
C04B 35/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
C02F1/50 531E
A01N25/08
A01N59/16 A
A01P3/00
C04B35/00 H
C02F1/50 510A
C02F1/50 540F
C02F1/50 531T
【請求項の数】7
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-106426(P2012-106426)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-233492(P2013-233492A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】507333878
【氏名又は名称】株式会社コバテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100083530
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 祐司
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
【審査官】
井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−157000(JP,A)
【文献】
特開平11−057729(JP,A)
【文献】
特開2003−136074(JP,A)
【文献】
特開2004−269427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00〜 1/78
A01N 25/00〜25/34
A01N 59/00〜59/26
A01P 3/00
C04B 35/00〜35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状のセラミックと一価のAgイオンを含む粉状の水溶性ガラスとの混合物の焼成物で構成されていることを特徴とする抗菌性セラミック体。
【請求項2】
請求項1に記載した抗菌性セラミック体において、
前記一価のAgイオンを含む粉状の水溶性ガラスは、
水溶性ガラスの粉状物、Ag粉体および銀化合物で構成されていることを特徴とする抗菌性セラミック体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した抗菌性セラミック体において、
前記混合物は、球体であることを特徴とする抗菌性セラミック体。
【請求項4】
粉状のセラミックに、一価のAgイオンを含む粉状の水溶性ガラスの粉状物を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を焼成する工程とを含むことを特徴とする抗菌性セラミック体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載した抗菌性セラミック体の製造方法において、
前記混合物を得る工程は、前記混合物を球状に成形することを特徴とする抗菌性セラミック体の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の抗菌性セラミック体の製造方法において、
前記混合物を得る工程は、
水溶性ガラスの粉状物にAg粉体,銀化合物を混合することを特徴とする抗菌性セラミック体の製造方法。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した抗菌性セラミック体の製造方法において、
前記混合物を焼成する工程は、
加熱した前記混合物を徐冷することを特徴とする抗菌性セラミック体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は抗菌性セラミック体に関し、主として、球状に成形され、水の殺菌・浄化に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の抗菌性セラミック体としては、セラミックスにAgの水溶性金属塩を吸着保持させた後、800℃以上の温度で焼成したものが知られており、熱に強いとともに分散性が良いため広範囲な分野に使用でき、また、金属イオンの溶出がないため、安全性を特に必要とする分野に使用できるものとされている。
【0003】
【特許文献1】特許2762423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の抗菌性セラミック体にあっては、800度以上で焼成していたため、Agが酸化物になってイオン化しにくく、又、セラミックにAgイオンの水溶性金属塩を吸着保持させたにすぎないため、Agイオンを均一に溶出しにくいため、抗菌効果が乏しいとともに一定の割合で抗菌効果を発揮しにくいという不都合を有した。
【0005】
この発明の課題は前記不都合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を達成するために、この発明に係る抗菌性セラミック体においては、セラミックに、一価のAgイオンを含む水溶性ガラスの粉状物を混合し、焼成したことを特徴とするものである。
【0007】
この場合、前記混合した後、球状に成形後、焼成することができる。
【0008】
また、前記焼成は、600〜800度Cで行うことができる。
【0009】
さらに、前記セラミックには、アルミナ又はシリカが該当する。
【0010】
さらに、前記一価のAgイオンを含む水溶性ガラスの粉状物は、水溶性ガラスの粉状物にAg粉体,銀化合物を混合することによって製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る抗菌性セラミック体は上記のように構成されているため、即ち、セラミックに、一価のAgイオンを含む水溶性ガラスの粉状物を混合し、焼成したものであるため、Agイオンが水溶性ガラスを介してセラミックに混合され、アモルファスの状態でセラミック中に満遍なく混ざるものである。このため、一定の割合で抗菌効果を発揮するにあたってAgイオンの量が少なくてすむ。
【0012】
また、Agイオンが水溶性ガラスを介してセラミックに混合されているため、接触した液体(湿気)によってガラス成分を溶出し、Agイオンがこのガラスの溶解に応じて徐々に抗菌力を発揮する。長期にわたって、均一の割合で殺菌効果を発揮できる。
【0013】
よって、この抗菌性セラミック体を使用すれば、抗菌効果が優れているとともに一定の割合で長期にわたって抗菌効果を維持することができる。
【0014】
さらに、600〜800度Cで焼成しているため、Agイオンが遊離しやすく殺菌効果が向上する。
【0015】
また、セラミックはポーラス状であるため、ガラス成分がこのポーラスに侵入し、その付着力が強固になるため、Agイオンによる殺菌効果も長期にわたって維持することができる。
【0016】
なお。抗菌、殺菌効果は表1に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明に係る「抗菌性セラミック」において、「セラミック」は粉状であり、アルミナ、シリカ又はこれらの混合物が該当する。
【0018】
「一価のAgイオンを含む水溶性ガラスの粉状物」は、水溶性ガラスの粉状物(200メッシュ以下)に一価のAg粉体,一価の銀化合物を混合したものである。
【0019】
「焼成温度」は600〜800度Cが適している。この理由は600度以下であると球体が壊れ易く、800度以上であるとAgイオンの機能が低下するからである。
【0020】
「球状に成形」する場合、大きさは直径6.0mm位が適している。
【0021】
「Ag」以外に、Pt,Ge,Ti等を少量(5.0%位)添加することもできる。
【実施例1】
【0022】
アルミナ調整品をコアとし、10パーセンン程度のAgイオンを含む水溶性ガラスの粉体に、セラミックの主原料として1.0パーセント以下のバインダーを含むアルミナ90パーセントを750°Cで除熱・除冷することによりボール状に成型(直径6.0mm位)する。
【0023】
この実施例で製造した抗菌性セラミックボール(抗菌性セラミック体)の抗菌試験を次のように行った。
a. 試料名
・精製水(比較対照液)
・抗菌性セラミックボール(Ag1)
(銀コーティング量1.2g)
・抗菌性セラミックボール(Ag2)
(銀コーティング量2.4g)
・抗菌性セラミックボール(Ag3)
(銀コーティング量3.6g)
b.試験項目 E.coli(大腸菌)
c.試験方法
・標準平板培養法
(1).試験品20gをコニカルビーカーに入れ高圧蒸気滅菌したのち、滅菌精製水100mlを加えたものを試料とする。
(2).E.coli培養液(Bio Ball E.coliをSCDブイヨンで増菌)を滅菌精製水で希釈し、1×10
8cfu/mlの菌液を調製する。
(3).(1)で作成した試料に菌液を1mlずつ接種する(菌濃度1×10
4cfu/ml)。
(4).36°Cで振とうし、3時間後、7時間後、24時間後の菌数を標準平板培養法にて測定する。
d.試験結果
【0024】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明に係る抗菌性セラミック体は、Agイオンが水溶性ガラスを介してセラミックに混合されているため、接触した液体(湿気)によってガラス成分を溶出し、Agイオンがこのガラスの溶解に応じて徐々に抗菌力を発揮する。長期にわたって、均一の割合で殺菌効果を発揮できる。産業上の利用可能性は極めて高いものである。