特許第6010836号(P6010836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010836
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ステント及びステント付き人工弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-10954(P2013-10954)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-140520(P2014-140520A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(73)【特許権者】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】大野 正順
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝晴
(72)【発明者】
【氏名】野村 由美子
(72)【発明者】
【氏名】中山 泰秀
(72)【発明者】
【氏名】武輪 能明
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−509805(JP,A)
【文献】 特表2010−540079(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/032187(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/147849(WO,A1)
【文献】 特表2012−528697(JP,A)
【文献】 特表2012−528691(JP,A)
【文献】 特表2011−500241(JP,A)
【文献】 特開2012−5846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0154355(US,A1)
【文献】 特表2004−535240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状要素によって管状に形成されるとともに、筒状部と該筒状部の内周側に設けられる複数の弁膜とを有する弁形成部を保持するための人工弁用のステントであって、
当該ステントの軸線方向に延びるとともに当該ステントの周方向に所定の間隔で配設され、かつ、前記筒状部とそれぞれ一体化される複数の柱部と、
前記周方向に隣り合う前記柱部同士を互いに連結する連結部と、
を備え、
前記柱部は、
前記軸線方向に延びるとともに前記周方向に並んで設けられた一対の柱材と、
それら各柱材同士を繋ぐ複数の繋ぎ材と、
を有しており、
前記一対の柱材のそれぞれには、前記周方向において異なる前記連結部が連結されており、
前記複数の繋ぎ材には、前記軸線方向に対して傾斜して延びる第1斜め繋ぎ材と、前記軸線方向に対して前記第1斜め繋ぎ材とは逆側に傾斜して延びる第2斜め繋ぎ材と、前記軸線方向に対して直交する方向に延びる直交繋ぎ材とのうち少なくともいずれか2つが含まれていることを特徴とするステント。
【請求項2】
前記複数の繋ぎ材には、前記直交繋ぎ材が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記複数の繋ぎ材には、前記直交繋ぎ材に加え、前記第1斜め繋ぎ材及び前記第2斜め繋ぎ材のうちいずれかの斜め繋ぎ材が含まれており、
前記直交繋ぎ材は、前記斜め繋ぎ材よりも太い線状要素により形成されていることを特徴とする請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記柱部では、前記一対の柱材のうち一方の柱材における前記連結部との連結箇所と、他方の柱材における前記連結部との連結箇所とが前記軸線方向において同位置に設定されており、
前記直交繋ぎ材は、それら各連結箇所を繋ぐように設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のステント。
【請求項5】
前記複数の繋ぎ材には、前記第1斜め繋ぎ材、前記第2斜め繋ぎ材及び前記直交繋ぎ材のうちのいずれか2つである第1繋ぎ材及び第2繋ぎ材がそれぞれ複数ずつ含まれており、
前記第1繋ぎ材と前記第2繋ぎ材とはそれぞれ前記軸線方向に交互に並ぶように配置され、それらの各端部となる位置で互いに連続するようにして接合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のステント。
【請求項6】
前記第1斜め繋ぎ材及び前記第2斜め繋ぎ材のうちいずれかの斜め繋ぎ材は、その中間部において他の繋ぎ材と互いに交差しないように配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のステント。
【請求項7】
X線不透過性を有する材料により形成されているステントであり、
前記柱部には、前記ステントをX線投影下にて視認するに際し、当該柱部を前記ステントの径方向外側及び内側のうちいずれの側から見ているのかを判別するための識別表示部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のステント。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載されたステントと、
前記ステントによって保持された前記弁形成部と、
を備えるステント付き人工弁であって、
前記弁形成部は、生体の組織体によって前記ステントの少なくとも一部を埋設させるように形成されており、それによって前記ステントと一体化されていることを特徴とするステント付き人工弁。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載されたステントと、
前記ステントによって保持された前記弁形成部と、
を備えるステント付き人工弁であって、
前記弁形成部は、前記ステントの各柱部に対して一体化されており、
その一体化状態において前記各柱部にはそれぞれ前記筒状部よりも前記軸線方向に延出した延出部が設けられていることを特徴とするステント付き人工弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント及びステント付き人工弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、疾患のある心臓弁(例えば大動脈弁)の治療法として、人工の心臓弁(人工弁)をカテーテル等の搬送器具を用いて心臓弁のある部位まで搬送し留置する方法が提案されている。この方法によれば、心臓弁手術により人工弁を疾患のある心臓弁に置換して留置する従来の外科的方法と比べ、患者への負担を大いに軽減させることができる。
【0003】
この種の経カテーテル的な心臓弁の治療法として、例えば特許文献1には、人工弁をステントと一体化させた状態で所定の留置部位へと搬送し留置する方法が開示されている。この場合、人工弁としては、筒状部とその筒状部の内周側に設けられる複数の弁膜とを有したものが用いられる。また、ステントとしては、複数の線状要素によって管状に形成されるとともに、軸線方向に延びかつ周方向に所定間隔で設けられた複数の柱部と、隣り合う柱部同士を互いに連結する連結部とを有したものが用いられる。より具体的には、柱部は、軸線方向に延びるとともに周方向に並んで配置された一対の柱材と、それら各柱材同士を繋ぐ複数の繋ぎ材とを有しており、連結部が隣り合う各柱材において互いに近い側の各柱材同士を連結している。そして、人工弁は、筒状部をステントと同軸に配置した状態で、当該筒状部をステントの各柱部に縫合等により接合することでステントと一体化されている。なお、柱部の各繋ぎ材は、軸線方向と直交する方向に延びている。
【0004】
体内に留置された人工弁(詳しくは弁膜)は心臓の心拍動に合わせて開閉する。具体的には、心臓が収縮して心臓から血液が送り出される際にはその血流によって弁膜が押されて開状態となるのに対し、心臓が弛緩して心臓からの血液の送り出しが終わると弁膜が閉じて閉状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2011−509805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人工弁が開状態となる際には、弁膜が血流によって軸線方向の下流側に押圧されて開くことになるため、人工弁には下流側へ向けた力が作用することとなる。また、人工弁が閉状態にある際には、上流側へと逆流しようとする血液が閉状態の弁膜に当たり、人工弁には上流側への力が作用することとなる。つまり、人工弁の留置状態では、人工弁に軸線方向への力が作用することとなる。したがって、人工弁が接合されているステントの各柱部にもそれぞれ軸線方向への力が作用することとなる。
【0007】
この点に関してより具体的には、人工弁の各弁膜は例えば生体組織よりなり、その形状や大きさが必ずしも同じではなく互いに異なっていると考えられるため、各弁膜が血流によってそれぞれ受ける力の大きさは互いに異なることが考えられる。そうすると、人工弁に作用する軸線方向の力は周方向において異なることが考えられ、ひいてはステントの各柱部に作用する軸線方向の力の大きさも互いに異なることが考えられる。この場合、各柱部は互いに軸線方向へ位置ずれしようとし、その結果隣り合う柱部を連結する各連結部にはそれぞれ軸線方向への引張力が生じることが想定される。
【0008】
ここで、隣り合う柱部における互いに近い側の柱材同士が連結部によって連結される特許文献1の構成では、柱部の一対の各柱材にそれぞれ周方向において異なる連結部が連結されている。したがって、上記したように連結部に軸線方向への引張力が生じた場合に、柱部の各柱材がそれぞれ異なる連結部によって、軸線方向への位置ずれを生じさせる向きに引っ張られることが想定される。
【0009】
この点上記特許文献1のステントでは、柱材同士を繋ぐ繋ぎ材が軸線方向に対して直交する方向に延びているため、かかる軸線方向への力に対して十分な抵抗力を発揮するのが難しいと考えられる。そのため、各柱材の軸線方向へのずれを招いて柱部に変形が生じてしまうおそれがある。その場合、人工弁を安定した状態で留置することが困難になるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、体内において人工弁を安定した状態で留置することを可能とする人工弁用のステント及びステント付き人工弁を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、第1の発明のステントは、複数の線状要素によって管状に形成されるとともに、筒状部と該筒状部の内周側に設けられる複数の弁膜とを有する弁形成部を保持するための人工弁用のステントであって、当該ステントの軸線方向に延びるとともに当該ステントの周方向に所定の間隔で配設され、かつ、前記筒状部とそれぞれ一体化される複数の柱部と、前記周方向に隣り合う前記柱部同士を互いに連結する連結部と、を備え、前記柱部は、前記軸線方向に延びるとともに前記周方向に並んで設けられた一対の柱材と、それら各柱材同士を繋ぐ複数の繋ぎ材と、を有しており、前記一対の柱材のそれぞれには、前記周方向において異なる前記連結部が連結されており、前記複数の繋ぎ材には、前記軸線方向に対して傾斜して延びる第1斜め繋ぎ材と、前記軸線方向に対して前記第1斜め繋ぎ材とは逆側に傾斜して延びる第2斜め繋ぎ材と、前記軸線方向に対して直交する方向に延びる直交繋ぎ材とのうち少なくともいずれか2つが含まれていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、柱部において各柱材を繋ぐ複数の繋ぎ材に少なくとも斜め繋ぎ材(詳しくは第1斜め繋ぎ材及び第2斜め繋ぎ材の少なくともいずれか)が含まれている。斜め繋ぎ材は、軸線方向に対して傾斜する方向に延び、換言すると軸線方向への成分を含む所定方向に延びているため、柱部の各柱材が各々の柱材に連結された異なる連結部により、軸線方向への位置ずれを生じさせる向きに引っ張られた場合に、その引張力に対して抵抗力を付与することができる。これにより、各柱材の軸線方向への位置ずれを抑制することができ、その結果柱部の変形を抑制することができる。したがって、体内においてステント付き人工弁を安定した状態で留置することが可能となる。
【0013】
第2の発明のステントは、第1の発明において、前記複数の繋ぎ材には、前記斜め繋ぎ材に加え、前記軸線方向と直交する方向に延びる直交繋ぎ材が含まれていることを特徴とする。
【0014】
柱部の変形を抑制する上では、一対の柱材間に、繋ぎ材として斜め繋ぎ材を数多く配置することが望ましいが、斜め繋ぎ材は、柱材間にそれ程多く配置することはできない。そこで本発明では、繋ぎ材として、斜め繋ぎ材に加え直交繋ぎ材を設けるようにしている。この場合、柱材間に斜め繋ぎ材のみを設ける場合と比べ、柱材間に繋ぎ材を数多く配置することができる。そのため、柱部の強度を好適に高めることができ、その結果柱部の変形を好適に抑制することが可能となる。
【0015】
第3の発明のステントは、第2の発明において、前記直交繋ぎ材は、前記斜め繋ぎ材よりも太い線状要素により形成されていることを特徴とする。
【0016】
柱部の変形を抑制する上では、繋ぎ材を太い線状要素によって形成し柱部の強度を高めることが望ましい。しかしながら、繋ぎ材を太くすると、柱材間において繋ぎ材が占める割合が大きくなり、柱材間において繋ぎ材同士の間に形成される隙間の大きさが小さくなってしまう。そうすると、かかる隙間を利用して弁形成部を柱部に一体化させる際不都合となる。例えば、弁形成部を一部隙間に通すことで柱部と一体化させる際、あるいは弁形成部を隙間を利用して柱部に縫合し一体化させる際等に不都合が生じる。
【0017】
そこで本発明では、この点に鑑みて、繋ぎ材として斜め繋ぎ材と直交繋ぎ材との双方を設ける上記第2の発明において、それら直交繋ぎ材と斜め繋ぎ材とのうち、長さが短い側の直交繋ぎ材について、斜め繋ぎ材よりも太い線状要素により形成するようにしている。この場合、柱材間において繋ぎ材が占める割合が大きくなるのを抑制しながら、すなわち繋ぎ材同士の隙間が小さくなるのを抑制しながら、柱部の強度を高めることができる。
【0018】
第4の発明のステントは、第2又は第3の発明において、前記柱部の各柱材のうち一方の柱材における前記連結部との連結箇所と、他方の柱材における前記連結部との連結箇所とは前記軸線方向において同位置に設定されており、前記直交繋ぎ材は、それら各連結箇所を繋ぐように設けられていることを特徴とする。
【0019】
この種のステントでは、各柱部間ごとにそれぞれ配設される各連結部が周方向に並んで配置されることが考えられる。この場合、柱部の各柱材においてそれぞれ連結部と連結される互いの連結箇所が軸線方向で同位置になることが考えられる。そこで本発明では、かかる構成において、それら各柱材における連結部との連結箇所同士を繋ぐように直交繋ぎ材を設けるようにしている。この場合、柱部を挟んで隣り合う連結部同士を直交繋ぎ材を介して繋ぐことができるため、それら連結部同士の位置ずれを抑制することができる。その結果、各連結部が連結された柱材同士の位置ずれ抑制効果を高めることができ、ひいては柱部の変形を抑制する効果を高めることができる。
【0020】
第5の発明のステントは、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記複数の繋ぎ材には、前記第1斜め繋ぎ材、前記第2斜め繋ぎ材及び前記直交繋ぎ材のうちのいずれか2つである第1繋ぎ材及び第2繋ぎ材がそれぞれ複数ずつ含まれており、前記第1繋ぎ材と前記第2繋ぎ材とはそれぞれ前記軸線方向に交互に並ぶように配置され、互いの端部同士で接合されることにより連続していることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、柱部において、第1繋ぎ材と第2繋ぎ材と柱材とによるトラスを軸線方向に連続して形成することができるため、柱部を極めて強固にすることができる。これにより、柱部の変形を顕著に抑制することができ、人工弁の留置状態を著しく安定なものとすることができる。
【0022】
第6の発明のステントは、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記斜め繋ぎ材は、他の繋ぎ材と互いに交差しないように配置されていることを特徴とする。
【0023】
斜め繋ぎ材と他の繋ぎ材とが互いに交差して配置される構成では、各柱材間において繋ぎ材同士の間に形成される隙間が非常に小さなものとなってしまうおそれがある。その場合、隙間を利用して弁形成部を一体化させるのが困難になってしまうおそれがある。その点本発明では、斜め繋ぎ材を他の繋ぎ材と互いに交差しないように配置しているため、それら両者間の隙間が小さくなってしまうのを抑制することができ、隙間を利用して柱部に弁形成部を一体化させる上で好都合な構成となる。
【0024】
第7の発明のステントは、第1乃至第6のいずれかの発明において、X線不透過性を有する材料により形成されているステントであり、前記柱部には、前記ステントをX線投影下にて視認するに際し、当該柱部を前記ステントの径方向外側及び内側のうちいずれの側から見ているのかを判別するための識別表示部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
ところで、ステントの各柱部は周方向に並んで設けられているため、人工弁の留置に際しステントをX線投影下で視認する場合に、柱部を径方向の外側(表側)及び内側(裏側)のうちいずれの側から見ているのかを判別しにくいことが想定される。そのため、体内における柱部の前後位置(詳細には視認方向における位置)が把握しづらいことが想定される。したがって、例えば人工弁を大動脈弁の置換弁として体内に留置する場合に、柱部が大動脈弁付近にある冠動脈の入口部と周方向にて重複する位置に配置されてしまい、その柱部により当該入口部を塞いでしまうといった事態が生じることが懸念される。
【0026】
そこで本発明では、この点に鑑みて、柱部に識別表示部を設け、その識別表示部により当該柱部をステントの径方向外側及び内側のうちいずれの側から見ているのかを判別できるようにしている。この場合、人工弁の留置に際し、柱部の前後位置が把握し易くなり、柱部によって冠動脈の入口部を塞いでしまう事態が生じるのを抑制又は回避することが可能となる。
【0027】
第8の発明のステント付き人工弁は、第1乃至第7のいずれかの発明のステントと、前記ステントによって保持された前記人工弁と、を備えるステント付き人工弁であって、前記弁形成部は、生体の組織体によって前記ステントの少なくとも一部を埋設させるように形成されており、それによって前記ステントと一体化されていることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、弁形成部が生体の組織体によってステントの少なくとも一部を埋設させるように形成されているため、ステント付き人工弁を体内に留置した状態で、ステントが体内の管壁に接触するのを抑制又は防止することができる。これにより、血栓症等の症状が発生するのを抑制又は防止することができる。
【0029】
第9の発明のステント付き人工弁は、第1乃至第7のいずれかの発明のステントと、前記ステントによって保持された前記弁形成部と、を備えるステント付き人工弁であって、前記弁形成部は、前記ステントの各柱部に対して一体化されており、その一体化状態において前記各柱部にはそれぞれ前記筒状部よりも前記軸線方向に延出した延出部が設けられていることを特徴とする。
【0030】
ところで、体内において心臓の大動脈弁周辺には左冠動脈や右冠動脈の入口部が存在している。したがって、ステント付き人工弁を大動脈弁の置換弁として体内に留置する場合、当該人工弁の軸線方向長さが長いと、かかる入口部を当該人工弁により、詳しくは弁形成部の筒状部により塞いでしまうおそれがある。これに対して、人工弁の軸線方向長さをある程度確保しないと、人工弁を安定した状態で留置させることが困難になってしまう。そこで本発明では、これらの点に鑑みて、ステントの各柱部に筒状部よりも軸線方向に延出した延出部を設けている。この場合、筒状部の軸線方向長さを短く抑えながら、ステントの柱部の軸線方向長さを確保することができるため、左冠動脈や右冠動脈の入口部を塞いでしまう事態を回避しながら、人工弁を安定した状態で留置させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の実施形態におけるステント付き人工弁を示す斜視図であり、(a)が人工弁の閉弁状態を示しており、(b)が開弁状態を示している。
図2】ステント付き人工弁を軸線方向から見た正面図。
図3】ステントを示す斜視図。
図4】ステントを展開した状態で示す展開図。
図5】人工弁が大動脈弁の置換弁として体内に留置された様子を説明するための説明図であり、(a)が当該様子を正面から見た図、(b)が上方から見た図となっている。
図6】第2の実施形態におけるステントを示す斜視図。
図7】ステントを展開した状態で示す展開図。
図8】人工弁が大動脈弁の置換弁として体内に留置された様子を説明するための説明図。
図9】他の実施形態における人工弁の配置状態を説明するための説明図。
図10】他の実施形態におけるステントを示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では、ステント付き人工弁を疾患のある心臓の大動脈弁に置き換えられる置換弁として具体化している。図1は本実施形態におけるステント付き人工弁を示す斜視図であり、(a)が当該人工弁の閉弁状態を示しており、(b)が開弁状態を示している。また、図2はステント付き人工弁を軸線方向から見た正面図である。図3はステント付き人工弁を構成するステントの斜視図であり、図4はそのステントを展開した状態で示す展開図である。
【0033】
図1及び図2に示すように、ステント付き人工弁10(以下、単に人工弁10という)は、ステント11と、そのステント11によって保持される弁形成部12とを備える。ステント11は、図3及び図4に示すように、複数の線状要素によって全体として管状(円管状)に形成されている。ステント11は、塑性変形可能な金属材料により形成されており、具体的にはコバルトクロム合金により形成されている。ステント11は、塑性変形を行うことで収縮状態とそれよりも外径が大きくなる拡張状態との間で遷移可能となっており、図3及び図4ではいずれもステント11の拡張状態を示している。また、ステント11の形成材料であるコバルトクロム合金は造影機能(X線不透過性)を有する材料であり、X線投影下においてステント11を視認することが可能となっている。
【0034】
なお、ステント11は、例えばコバルトクロム合金よりなる筒状体(チューブ)をレーザカットすることにより製造される。また、ステント11は、必ずしもコバルトクロム合金により形成される必要はなく、ステンレスやチタン等他の金属材料により形成されてもよい。
【0035】
ステント11は、軸線方向に延びるとともに周方向に所定の間隔(詳しくは等間隔)で設けられた複数(具体的には3つ)の柱部14と、周方向に隣り合う柱部14同士を互いに連結する複数の連結部15とを備える。柱部14は、軸線方向に延びるとともに周方向に並んで設けられた一対の柱材17と、それら各柱材17同士を繋ぐ複数の繋ぎ材18とを有している。柱材17と繋ぎ材18とはいずれも線状要素によって形成されている。
【0036】
連結部15は、線状要素によって周方向に延びる波線状に形成されており、軸線方向の両端部において交互に折り返された形状を有している。連結部15は、隣り合う柱部14の間に配設され、周方向の両端部がそれら各柱部14にそれぞれ連結されている。具体的には、連結部15は、その両端部が隣り合う柱部14において周方向に互いに近い側の各柱材17にそれぞれ連結されている。
【0037】
連結部15は、隣り合う柱部14間ごとにそれぞれ軸線方向に所定間隔(詳しくは等間隔)で複数ずつ配置され、本実施形態では3つずつ配置されている。また、隣り合う柱部14間における各連結部15の軸線方向の位置(関係)は、各柱部14間でそれぞれ同じとされている。したがって、周方向で見た場合、複数の連結部15が同方向に沿って並んで配置されており、そしてその周方向に並んだ複数の連結部15の列が3列に亘って設けられている。なお、連結部15の列の数は必ずしも3列に限ることなく、1列や2列又は4列以上であってもよい。
【0038】
各連結部15はいずれも同じ構成を有しており、互いに同じ向きで配置されている。連結部15は、その周方向の両端部がそれぞれ当該連結部15の波線の頂部15aに相当しており、詳しくは軸線方向における同じ側の頂部15aに相当している。この場合、連結部15における周方向の両端部がそれぞれ軸線方向において同位置に位置しており、したがって連結部15両端における各柱部14との連結箇所がそれぞれ軸線方向にて同位置に位置している。
【0039】
柱部14において一対の柱材17にはそれぞれ当該柱部14を挟んで周方向に隣り合う各連結部15が連結されている。この場合、一対の柱材17のうち一方の柱材17における連結部15との連結箇所と、他方の柱材17における連結部15との連結箇所とが軸線方向において同位置とされている。
【0040】
続いて、柱部14について詳しく説明する。
【0041】
柱部14には、上述したように、一対の柱材17同士を繋ぐ複数の繋ぎ材18が設けられている。これら複数の繋ぎ材18は、一対の柱材17間において軸線方向(換言すると柱材17の長手方向)に並べて設けられている。
【0042】
複数の繋ぎ材18には、軸線方向(換言すると柱材17の長手方向)に対して所定の側に傾斜して延びる第1斜め繋ぎ材18aと、軸線方向に対して第1斜め繋ぎ材18aとは逆側に傾斜して延びる第2斜め繋ぎ材18bと、軸線方向に対して直交する方向に延びる直交繋ぎ材18cとが含まれている。これら各繋ぎ材18a〜18cはいずれも略四角形状の断面を有する線状要素によって形成されている。
【0043】
第1斜め繋ぎ材18aは、各柱材17間において一方の柱材17から他方の柱材17に向かうにつれて軸線方向の一方側に傾斜して延びており、第2斜め繋ぎ材18bは、一方の柱材17から他方の柱材17に向かうにつれて軸線方向の他方側に傾斜して延びている。第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bとはそれぞれ複数ずつ設けられている。第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bとは軸線方向に交互に並ぶように配置されており、隣り合う第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bとが互いの端部同士にて連結されている。これにより、複数の第1斜め繋ぎ材18aと複数の第2斜め繋ぎ材18bとが軸線方向にジグザグ状に連続している。なお、この場合第1斜め繋ぎ材18aが第1繋ぎ材に相当し、第2斜め繋ぎ材18bが第2繋ぎ材に相当する。また、各斜め繋ぎ材18a,18bは、一対の柱材17間において当該柱材17の長手方向全域に亘って配置されている。
【0044】
隣り合う第1斜め繋ぎ材18a及び第2斜め繋ぎ材18bは、それら斜め繋ぎ材18a,18b同士が連結する連結端部28においてそれぞれ柱材17と連結されている。これにより、柱部14では、第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bと柱材17とからなるトラス(三角)が軸線方向に連続して形成されている。
【0045】
第1斜め繋ぎ材18aは、軸線方向に対する傾斜角度α(詳しくは鋭角側の傾斜角度α)が30°〜60°の範囲に設定されており、具体的には45°に設定されている。一方、第2斜め繋ぎ材18bも、第1斜め繋ぎ材18aと同様、軸線方向に対する傾斜角度β(詳しくは鋭角側の傾斜角度β)が30°〜60°の範囲に設定されており、具体的には45°に設定されている。したがって、本実施形態では、第1斜め繋ぎ材18aの傾斜角度αと第2斜め繋ぎ材18bの傾斜角度βとがそれぞれ同じ角度に設定されている。
【0046】
但し、第1斜め繋ぎ材18aの傾斜角度αと第2斜め繋ぎ材18bの傾斜角度βとは必ずしも同じ角度とする必要はなく、異なる角度としてもよい。また、第1斜め繋ぎ材18aの傾斜角度αを各第1斜め繋ぎ材18aごとに異ならせてもよく、また第2斜め繋ぎ材18bの傾斜角度βを各第2斜め繋ぎ材18bごとに異ならせてもよい。
【0047】
また、第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bとはそれぞれ同じ太さの線状要素によって形成されている。したがって、各斜め繋ぎ材18a,18bの線幅はいずれも同じ線幅D1となっており、本実施形態ではその線幅D1が0.254mmに設定されている。なお、各斜め繋ぎ材18a,18bは必ずしも同じ太さの線状要素により形成する必要はなく、互いに異なる太さの線状要素により形成してもよい。
【0048】
直交繋ぎ材18cは、一対の柱材17間において軸線方向に所定間隔で複数設けられている。直交繋ぎ材18cは、柱部14を挟んで周方向に隣り合う各連結部15の間ごとにそれぞれ配置されている。直交繋ぎ材18cは、柱部14の各柱材17のうち一方の柱材17における連結部15との連結箇所と、他方の柱材17における連結部15との連結箇所とを互いに繋ぐように設けられている。
【0049】
直交繋ぎ材18cは、隣り合う第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bとの境界部に配置されており、その一端部がそれら斜め繋ぎ材18a,18b同士が連結し合う連結端部28に連結されている。したがって、当該連結端部28では、第1斜め繋ぎ材18a、第2斜め繋ぎ材18b、直交繋ぎ材18c及び柱材17の4者が連結されている。
【0050】
直交繋ぎ材18cは、斜め繋ぎ材18a,18bよりも太い線状要素により形成されている。したがって、直交繋ぎ材18cの線幅D2は斜め繋ぎ材18a,18bの線幅D1よりも大きくなっており、本実施形態では0.439mmに設定されている。但し、直交繋ぎ材18cは必ずしも斜め繋ぎ材18a,18bよりも太い線状要素により形成する必要はなく、斜め繋ぎ材18a,18bより細い線状要素により形成してもよいし、斜め繋ぎ材18a,18bと同じ太さの線状要素により形成してもよい。
【0051】
一対の柱材17間において隣り合う繋ぎ材18a〜18c同士の間には所定の隙間23が形成されている。この隙間23は、後述するように弁形成部12の一部が入り込む部分となっている。
【0052】
柱部14には、上記各繋ぎ材18a〜18cの他に、一対の端部繋ぎ材18d,18eが繋ぎ材18として設けられている。端部繋ぎ材18dは各柱材17における軸線方向の一端部同士を連結しており、端部繋ぎ材18eは各柱材17における軸線方向の他端部同士を連結している。これら各端部繋ぎ材18d,18eは、軸線方向において互いに逆側に凸となる円弧状をなしている。
【0053】
各柱部14はそれぞれ、複数の連結部15よりも軸線方向の一方側に延出する延出部19を有している。延出部19の延出長さは、軸線方向に隣り合う連結部15間の間隔(ピッチ)と同じか又はそれよりも大きい寸法に設定されている。一方、各柱部14はそれぞれ、複数の連結部15よりも軸線方向における他方側には延出していない。具体的には、各柱部14はそれぞれ、軸線方向における他方側の端部が、複数の連結部15における当該他方側の端部(より詳しくは他方側の連結部15における当該他方側の頂部)と同位置に設定されている。
【0054】
以上が、ステント11についての説明である。
【0055】
次に、弁形成部12について図1及び図2に基づいて説明する。
【0056】
弁形成部12は、動物の組織体により形成されている。本実施形態では、弁形成部12が人体の組織体により形成されており、具体的には患者自ら(自己)の組織体(すなわち自家組織)により形成されている。したがって、弁形成部12は、生体適合性及び血液適合性に優れたものとなっている。弁形成部12は、図1及び図2に示すように、ステント11全体を覆う(埋設させる)ように形成されており、これによりステント11と一体化されている。
【0057】
弁形成部12は、円筒状の筒状部21と、筒状部21の内周側に設けられる複数(本実施形態では3つ)の弁膜22とを備える。これら筒状部21と各弁膜22とは上記組織体によって一体的に形成されている。筒状部21は、ステント11と同軸(中心位置が同一)に配置され、軸線方向において複数の連結部15における一方側の端部から他方側の端部までの範囲(換言すると、柱部14における延出部19を除いた部分の全域)に亘り形成されている。筒状部21の内部には、各連結部15と各柱部14とがそれぞれ埋設され、それによって筒状部21が各連結部15及び各柱部14と一体化されている。
【0058】
特に、柱部14では、筒状部21(弁形成部12)の組織体の一部が当該柱部14の各隙間23に入り込んでおり、その隙間23に入り込んだ組織体が、当該柱部14をその(表裏)両側からそれぞれ覆う組織体同士を互いに繋いでいる。そのため、筒状部21は、各柱部14に対して比較的強固に一体化された状態となっている。また、柱部14において延出部19は筒状部21よりも軸線方向の一方側に延出しており、筒状部21には埋設されていない。
【0059】
弁膜22は、心臓の拍動に合わせて開弁及び閉弁動作する可動部であり、心臓が収縮して心臓から血液が送り出される際にはその血流により押されて開弁状態(図1(b)参照)となり、心臓が弛緩して心臓からの血液の送り出しが終わると閉弁状態(図1(a)参照)となる。弁膜22は、軸線方向から見て扇状をなしており、筒状部21の軸線回りに複数並べて配置されている(図2参照)。
【0060】
各弁膜22はそれぞれ筒状部21から内周側に向けて扇状に延びており、隣り合う弁膜22との境界部においてさらに軸線方向の一方側(延出部19の延出側)に向けて延びている。弁膜22において当該一方側に延びている部分は開閉部22aとなっている。隣り合う弁膜22同士の境界部では、それら各弁膜22の開閉部22a同士が互いに向き合って配置されており、それら開閉部22a同士が互いに接離することで弁膜22が閉弁状態と開弁状態とに開閉動作するようになっている。また、開閉部22aは、軸線方向において筒状部21よりも前記一方側に延出しており、より詳しくはその延出長さが柱部14における延出部19の延出長さと略同じとなっている。
【0061】
隣り合う弁膜22同士の各境界部は、それぞれ周方向においてステント11の各柱部14と同位置に位置している。それら隣り合う弁膜22の各開閉部22aは、その径方向外側の端部にて柱部14の延出部19と接合されている。詳しくは、各開閉部22aは当該端部において延出部19を覆うように形成されており、それによって延出部19(ひいては柱部14)と一体化されている。この場合、各弁膜22は隣り合う柱部14(延出部19)間では径方向内側に凹んだ形状をなしている。なお、延出部19においてもその隙間23に組織体が入り込み、その入り込んだ組織体により延出部19を挟んだ両側部分の組織体が互いに繋がれている。
【0062】
なお、本実施形態の弁形成部12は、ステント11に対して一切縫合されることなくステント11と一体化されている。また、弁形成部12は人工物を一切含まず、人体の組織体のみによって形成されたものとなっている。
【0063】
次に、人工弁10を製造する際の製造手順について簡単に説明する。
【0064】
まず、弁形成部12の形状に合わせて形成された鋳型(型部材)に拡張状態のステント11を外挿し組み付ける。そして、この組み付け状態でステント11を鋳型とともに患者(自己)の体内に埋入する。この際、ステント11は、例えば腹腔内や四肢部等ある程度の大きさ(容積)を有する部位に埋入される。なお、ステント11は、皮下に埋入してもよい。
【0065】
ステント11を体内に埋入すると、ステント11周りの組織体が当該ステント11を覆うように鋳型表面上で成長を始める。組織体の成長は時間の経過とともに進行し、やがてステント11全体が組織体により覆われた状態となる。その後、ステント11を鋳型とともに体内から取り出す。
【0066】
ステント11の取り出し後、ステント11を覆った状態で形成された組織体に切り込みを入れたり、組織体のうち不要な部分をカットしたりする等して、弁形成部12を形成する。その後、ステント11から鋳型を引き抜く。これにより、人工弁10の製造が完了する。
【0067】
次に、人工弁10を疾患のある大動脈弁の置換弁として体内に留置する場合の様子について図5を用いながら説明する。図5は、人工弁10が大動脈弁の置換弁として体内に留置された様子を説明するための説明図であり、(a)が当該様子を正面から見た図、(b)が上方から見た図となっている。
【0068】
本実施形態では、上述したように、人工弁10を大動脈弁がある所定の留置部位までバルーンカテーテルを用いて搬送することとしている。図示は省略するが、バルーンカテーテルは、周知の通り、その先端側に膨張及び収縮可能なバルーンを有している。人工弁10は、収縮状態にあるバルーンの外周面上に搭載された状態で留置部位へと搬送される。具体的には、人工弁10は、ステント11がバルーン上にクリンプされて収縮状態とされることでバルーン上に搭載される。この搭載状態では、弁形成部12(筒状部21)の内側にバルーンが挿通され弁膜22が開いた状態とされる。
【0069】
人工弁10をバルーンカテーテルを用いて大動脈弁のある所定の留置部位へ搬送するためのアプローチとしては、種々のアプローチが考えられる。例えば、心臓の左心室下部の壁部に孔部を設け、その孔部を通じて人工弁10を左心室を経由させて留置部位へ導入するアプローチが考えられる。この場合、予めその孔部を通じてガイドワイヤGを上行大動脈BV1(図5(a)参照)まで導入しておき、そのガイドワイヤGに沿って人工弁10が搭載されたバルーンカテーテルを導入する。そして、バルーン上の人工弁10を上行大動脈BV1の起始部に位置するバルサルバ洞BV2(図5(a)参照)における留置部位まで搬送する。
【0070】
搬送後、バルーン内に圧縮流体を注入することでバルーンを膨張させ、ステント11(ひいては人工弁10)を収縮状態から拡張状態へと変形させる。これにより、図5(a)に示すように、人工弁10がステント11の拡張状態で所定の留置部位に留置される。人工弁10を留置後、バルーン内に注入された圧縮流体を抜き取ることでバルーンを収縮させ、バルーンカテーテルを体内から抜き取る。これにより、人工弁10の留置作業が完了する。
【0071】
続いて、体内における人工弁10の留置状態について説明する。
【0072】
図5(a)に示すように、人工弁10は、バルサルバ洞V2において疾患のある大動脈弁BV3が形成されている部位に留置されている。人工弁10は、大動脈弁BV3の内側部分に配置され、その配置によって大動脈弁BV3が上側に捲れ上がった状態となっている。上行大動脈BV1において、大動脈弁BV3よりも上側(血流方向の下流側)には左冠動脈BV4の入口部と右冠動脈BV5の入口部とが設けられている。左冠動脈BV4の入口部と右冠動脈BV5の入口部とは、図5(b)に示すように、バルサルバ洞V2を挟んで互いに向き合うように位置している。
【0073】
人工弁10は、ステント11の各柱部14の延出部19を上側(換言すると冠動脈BV4,BV5の入口部側)に向けた状態で留置されている。この場合、人工弁10は、筒状部21が各冠動脈BV4,BV5の入口部よりも下方に位置するように配置されている。これにより、筒状部21により各冠動脈BV4,BV5の入口部が塞がれてしまうことが回避されている。
【0074】
また、人工弁10は、各柱部14がそれぞれ周方向において各冠動脈BV4,BV5の入口部と重複しないように配置されている(図5(b)参照)。これにより、各冠動脈BV4,BV5の入口部が柱部14の延出部19によって塞がれてしまうことが回避されている。したがって、かかる人工弁10の留置状態では、バルサルバ洞V2から各冠動脈BV4,BV5への血液の流れ込みが当該人工弁10により阻害されてしまうことがないようになっている。
【0075】
なお、人工弁10を、各柱部14が各冠動脈BV4,BV5の入口部と重複しないように留置する際には、X線投影下で各柱部14の位置を確認しながら留置作業を行うこととなる。
【0076】
また、人工弁10には、柱部14に延出部19が設けられているため、筒状部21の軸線方向長さを短く抑えながら、ステント11(柱部14)の軸線方向長さをある程度確保することが可能となっている。このため、人工弁10の留置に際し冠動脈BV4,BV5の入口部を塞いでしまう事態を回避しながら、人工弁10を安定した状態で留置することが可能となっている。
【0077】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0078】
ステント11の柱部14に、一対の柱材17を繋ぐ繋ぎ材18として、軸線方向に対して傾斜して延びる第1斜め繋ぎ材18aと、軸線方向に対して第1斜め繋ぎ材18aとは逆側に傾斜して延びる第2斜め繋ぎ材18bと、軸線方向に対して直交する方向に延びる直交繋ぎ材18cとを設けた。斜め繋ぎ材18a,18bは、軸線方向への成分を含む所定方向に延びている。そのため、柱部14の各柱材17がそれぞれ各々の柱材17に連結された異なる連結部15によって、軸線方向への位置ずれを生じさせる向きに引っ張られた場合に、その引張力に対して抵抗力を付与することができる。これにより、各柱材17の軸線方向への位置ずれを抑制することができ、その結果柱部14の変形を抑制することができる。そのため、体内において人工弁10を安定した状態で留置することが可能となる。
【0079】
柱部14の変形を抑制する上では、一対の柱材17間に、繋ぎ材18として斜め繋ぎ材18a,18bを数多く配置することが望ましいが、斜め繋ぎ材18a,18bは、柱材17間にそれ程多く配置することはできない。この点、繋ぎ材18として、斜め繋ぎ材18a,18bに加えて直交繋ぎ材18cを設けたことで、柱材17間に繋ぎ材18を比較的多く配置することができ、柱部14の強度を好適に高めることが可能となる。したがって、柱部14の変形を抑制する効果を高めることが可能となる。
【0080】
直交繋ぎ材18cと斜め繋ぎ材18a,18bとのうち、その長さが短い側の直交繋ぎ材18cについて、斜め繋ぎ材18a,18bよりも太い線状要素により形成した。この場合、一対の柱材17間において繋ぎ材18が占める割合が大きくなるのを抑制しながら、つまり繋ぎ材18同士の隙間23が小さくなるのを抑制しながら、柱部14の強度を高めることが可能となる。
【0081】
柱部14の各柱材17のうち一方の柱材17における連結部15との連結箇所と、他方の柱材17における連結部15との連結箇所とが軸線方向において同位置に設定されている構成において、それら各連結箇所を繋ぐように直交繋ぎ材18cを設けた。この場合、柱部14を挟んで隣り合う連結部15同士を直交繋ぎ材18cを介して繋ぐことができるため、それら連結部15同士の位置ずれを抑制することができる。その結果、各連結部15が連結された柱材17同士の位置ずれ抑制効果を高めることができ、ひいては柱部14の変形を抑制する効果を高めることができる。
【0082】
繋ぎ材18として、第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bとをそれぞれ複数ずつ設けるとともに、第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bとを軸線方向に交互に並べて配置し互いの端部同士で連結することで連続させた。この場合、柱部14に、第1斜め繋ぎ材18aと第2斜め繋ぎ材18bと柱材17とによるトラスを軸線方向に連続して形成することができるため、柱部14を極めて強固にすることができる。これにより、柱部14の変形を顕著に抑制することができ、人工弁10の留置状態を著しく安定なものとすることができる。
【0083】
斜め繋ぎ材18a,18bを、他の繋ぎ材18と互いに交差しないように配置したため、各柱材17間においてそれら両者間に形成される隙間23が著しく小さくなってしまうのを回避することができる。この場合、隙間23を利用して柱部14に弁形成部12を一体化させる上で好都合な構成となる。
【0084】
弁形成部12を、人体の組織体によってステント11全体を覆う(埋設させる)ように形成したため、人工弁10を体内に留置した状態においてステント11が体内の管壁に直接接触するのを回避することができる。これにより、血栓症等の症状が発生するのを防止することができる。
【0085】
〔第2の実施形態〕
本実施形態では、ステント付き人工弁を構成するステントの構成が第1の実施形態とは相違する。以下、本実施形態におけるステント付き人工弁の構成について図6及び図7に基づいて説明する。図6は本実施形態におけるステントを示す斜視図であり、図7はそのステントを展開した状態で示す展開図である。なお、図6及び図7ではそれぞれステントの拡張状態を示している。
【0086】
本実施形態における人工弁30(図8参照)は、ステント31と、ステント31によって保持される弁形成部32とを備える。弁形成部32は、第1の実施形態における弁形成部12と基本的に同じ構成であるため、ここでは詳細な説明を割愛する。簡単に説明すると、弁形成部32は、弁形成部12と同様、人体の組織体によってステント31を覆うように形成されており、筒状部33と、筒状部33の内周側に設けられる複数の弁膜(図示略)とを有している。図7では便宜上、弁形成部32のうち筒状部33だけを一点鎖線で図示している。
【0087】
図6及び図7に示すように、ステント31は、複数の線状要素によって全体として管状(円管状)に形成されている。ステント31は、弾性を有する金属材料により形成されており、具体的には超弾性合金の一種であるニッケルチタン(Ni−Ti)合金により形成されている。ステント31は、自らの弾性によって収縮状態から拡張状態へと変形するいわゆる自己拡張型のステントとなっている。なお、ステント31は、Au―Cd合金、Cu―Al−Ni合金又はNi―Ti―Co合金等といった他の超弾性合金により形成されてもよい。
【0088】
ステント31は、軸線方向に延びるとともに周方向に並んで設けられた複数(具体的には3つ)の柱部34と、周方向に隣り合う柱部34同士を互いに連結する複数の連結部35と、各柱部34における軸線方向の両端側に設けられた一対の保持部36,37とを備える。柱部34は、軸線方向に延びるとともに周方向に並んで設けられた一対の柱材38と、それら各柱材38同士を繋ぐ複数の繋ぎ材39とを有している。柱材38と繋ぎ材39とはいずれも線状要素により形成されている。
【0089】
連結部35は、線状要素によって周方向に延びる波線状に形成されている。連結部35は、周方向の両端部が隣り合う柱部34における当該周方向に互いに近い側の各柱材38にそれぞれ連結されている。連結部35は、各柱部34間ごとにそれぞれ配置され、それら各連結部35が周方向に1列に並んで配置されている。なお、連結部35の列は必ずしも1列とすることは必要なく、2列以上であってもよい。
【0090】
保持部36は、各柱部34における軸線方向の一方側の端部に設けられ、保持部37は、各柱部34における軸線方向の他方側の端部に設けられている。これら各保持部36,37は、人工弁30が体内に留置された際に体内の管壁に押し付けられることでステント31(ひいては人工弁30)を保持する部分となっている。各保持部36,37はいずれも線状要素によって形成されている。
【0091】
保持部36は、周方向に隣り合う柱部34における軸線方向の一方側の端部同士を連結する連結部41を有する。連結部41は、隣り合う柱部34における周方向に互いに近い側の各柱材38同士を連結している。連結部41は、隣り合う柱部34間ごとにそれぞれ設けられ、それら各連結部41が周方向に並んで配置されている。なお、図6及び図7では、連結部41が各柱部34間ごとにそれぞれ2つずつ設けられているが、1つずつ又は3つ以上ずつ設けられていてもよい。
【0092】
各連結部41はそれぞれ柱部34よりも軸線方向の一方側に延びており、その一方側の端部において他方側に折り返された折り返し形状を有している。各連結部41は、当該一方側に向かうにつれて径方向外側に変位するように形成されており、その一方側の端部では柱部34よりも径方向外側に位置している。したがって、保持部36は、全体として当該一方側の端部に向けて拡がるフレア状をなしている。なお、図6では便宜上、保持部36をフレアさせない状態で図示している(保持部37も同様)。
【0093】
一方、保持部37は、各柱部34及び各連結部35よりも軸線方向の他方側に設けられており、ステント31の軸線を中心とする環状(円環状)でかつ波線状をなしている。保持部37は、各柱部34及び各連結部35にそれぞれ線状の中間材43を介して連結されている。保持部37は、軸線方向の他方側に向かうにつれて径方向外側に変位するように形成されており、当該他方側の端部では柱部34よりも径方向外側に位置している。したがって、保持部37は、全体として当該他方側の端部に向けて拡がるフレア状をなしている。なお、図6及び図7では、保持部37が1つだけ設けられているが、保持部37を軸線方向に所定間隔で複数(2つ以上)設けてもよい。また、保持部37の数、連結部41の数、連結部35の列数は、ステント31において目的とする拡張性能が得られる範囲であれば任意に設定してよい。
【0094】
続いて、柱部34について詳しく説明する。
【0095】
柱部34には、繋ぎ材39として、軸線方向に対して所定の側に傾斜して延びる斜め繋ぎ材39aと、軸線方向に対して直交する方向に延びる直交繋ぎ材39bとがそれぞれ複数ずつ設けられている。斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bとは軸線方向に交互に並んで配置され、隣り合う斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bとが互いの端部同士で連結されている。これにより、斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bとが軸線方向にジグザグ状に連続している。また、隣り合う斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bとは、それら両者が連結し合う互いの端部にて柱材38と連結されている。これにより、斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bと柱材38とによるトラスが軸線方向に連続して形成されている。なおここで、斜め繋ぎ材39aが第1繋ぎ材に相当し、直交繋ぎ材39bが第2繋ぎ材に相当する。
【0096】
直交繋ぎ材39bは、柱部34を挟んで周方向に隣り合う連結部35の間ごとにそれぞれ配置され、また柱部34を挟んで周方向に隣り合う連結部41の間ごとにそれぞれ配置されている。これらの直交繋ぎ材39bは、柱部34の各柱材38のうち一方の柱材38における連結部35(41)との連結箇所と、他方の柱材38における連結部35(41)との連結箇所とを互いに繋ぐように設けられている。また、一対の柱材38間において隣り合う繋ぎ材39a,39b同士の間には所定の隙間45が形成されている。
【0097】
以上がステント31についての説明である。
【0098】
上記ステント31に対して弁形成部32は当該ステント31と同軸に配置されており、その筒状部33が軸線方向においてステント31の各柱部34の全域に亘るように形成されている。筒状部33の内部にはステント31の各柱部34と各連結部35とがそれぞれ埋設されており、これによって筒状部33が各柱部34及び各連結部35と一体化されている。この場合、柱部34では、筒状部33の組織体の一部が当該柱部34の各隙間45に入り込んでおり、その隙間45に入り込んだ組織体が当該柱部34をその(表裏)両側からそれぞれ覆う組織体同士を互いに繋いでいる。そのため、筒状部33は、各柱部34に対して比較的強固に一体化されている。また、ステント31の各保持部36,37はそれぞれ筒状部33から軸線方向両側に露出した状態となっている。
【0099】
なお、弁形成部32の弁膜については図示を省略しているが、弁膜は、隣り合う弁膜同士の境界部が周方向においてステント31の各柱部34と同位置に位置するよう配置され、当該境界部において柱部34と一体化されている。
【0100】
次に、人工弁30を疾患のある大動脈弁の置換弁として体内に留置する場合の様子について図8を用いながら説明する。図8は、人工弁30が大動脈弁の置換弁として体内に留置された様子を説明するための説明図である。
【0101】
本実施形態では、人工弁30を所定の留置部位まで搬送するに際し、専用のデリバリカテーテルを用いて搬送する。かかるデリバリカテーテルとしては例えば、内側チューブと外側チューブとの二重構造からなるものが挙げられる。この場合、当該カテーテルの先端側における内側チューブと外側チューブとの間に、人工弁30をステント31を収縮させた状態で配置し、その配置状態で人工弁30を留置部位まで搬送する。そして、搬送後、内側チューブの外周面に設けられたストッパで人工弁30の基端側への移動を規制しながら、外側チューブを基端側へ引き抜くことで、人工弁30を外側チューブから遠位側に導出させる。これにより、ステント31が自らの弾性によって収縮状態から拡張状態へと変形し、そのステント拡張状態で人工弁30が留置部位に留置される。
【0102】
続いて、人工弁30の留置状態について説明する。
【0103】
図8に示すように、人工弁30は、バルサルバ洞V2における所定の留置部位にステント31の保持部36を上側、保持部37を下側に向けて留置されている。人工弁30は、弁形成部32(筒状部33)が各冠動脈BV4,BV5の入口部よりも下方に位置するように配置され、これにより、筒状部33により各冠動脈BV4,BV5の入口部が塞がれてしまうことが回避されている。また、人工弁30の留置状態において、保持部36は自らの弾性によってバルサルバ洞VB2の管壁に押し付けられており、これによってステント31ひいては人工弁30が安定した状態で保持されている。
【0104】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0105】
ステント31の柱部34に、一対の柱材38を繋ぐ繋ぎ材39として、軸線方向に対して傾斜して延びる斜め繋ぎ材39aと、軸線方向に対して直交する方向に延びる直交繋ぎ材39bとを設けた。斜め繋ぎ材39aは、軸線方向への成分を含む所定方向に延びている。そのため、柱部34の各柱材38がそれぞれ各々の柱材38に連結された異なる連結部35,41によって、軸線方向への位置ずれを生じさせる向きに引っ張られた場合、その引張力に対して抵抗力を付与することができる。これにより、各柱材38の軸線方向への位置ずれを抑制することができ、その結果柱部34の変形を抑制することができる。そのため、体内において人工弁30を安定した状態で留置することが可能となる。
【0106】
繋ぎ材39として、斜め繋ぎ材39aに加え、直交繋ぎ材39bを設けたため、柱材38間に斜め繋ぎ材39aのみを設ける場合と比べ、柱材38間に繋ぎ材39を数多く配置することができる。そのため、柱部34の強度を好適に高めることができ、その結果柱部34の変形を好適に抑制することが可能となる。
【0107】
柱部34の各柱材38のうち一方の柱材38における連結部35との連結箇所と、他方の柱材38における連結部35との連結箇所とが軸線方向において同位置に設定されている構成において、それら各連結箇所を繋ぐように直交繋ぎ材39bを設けた。この場合、柱部34を挟んで隣り合う連結部35同士を直交繋ぎ材39bを介して繋ぐことができるため、それら連結部35同士の位置ずれを抑制することができる。その結果、各連結部35が連結された柱材38同士の位置ずれ抑制効果を高めることができ、ひいては柱部34の変形を抑制する効果を高めることができる。
【0108】
繋ぎ材39として、斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bとをそれぞれ複数ずつ設けるとともに、斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bとを軸線方向に交互に並べて配置し互いの端部同士で連結することで連続させた。この場合、柱部34に、斜め繋ぎ材39aと直交繋ぎ材39bと柱材38とによるトラスを軸線方向に連続して形成することができるため、柱部34を極めて強固にすることができる。これにより、柱部34の変形を顕著に抑制することができ、人工弁30の留置状態を著しく安定なものとすることができる。
【0109】
斜め繋ぎ材39aを、他の繋ぎ材39と互いに交差しないように配置したため、各柱材38間においてそれら両者間に形成される隙間45が著しく小さくなってしまうのを回避することができる。この場合、隙間45を利用して柱部34に弁形成部32を一体化させる上で好都合な構成となる。
【0110】
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0111】
(1)上記第1の実施形態において、一対の柱材17間に、繋ぎ材18として斜め繋ぎ材18a,18bのみを設けるようにしてもよい。つまり、直交繋ぎ材18cを不具備としてもよい。この場合にも、斜め繋ぎ材18a,18bが設けられていることで、各柱材17を軸線方向へ位置ずれさせようとする引張力に対し抵抗力を付与することができる。そのため、柱部14の変形を抑制することができ、人工弁10を安定した状態で留置することが可能となる。
【0112】
また、上記第2の実施形態においても、これと同様に、一対の柱材38間に、繋ぎ材39として、斜め繋ぎ材のみを設けるようにしてもよい。すなわち、繋ぎ材39として、斜め繋ぎ材39aと、軸線方向に対して斜め繋ぎ材39aとは逆側に傾斜して延びる斜め繋ぎ材とのみを設けるようにしてもよい。
【0113】
(2)上記各実施形態において、斜め繋ぎ材18a,18b,39aと、他の繋ぎ材18,39とを互いの中間部で交差させて配置し、その交差部でそれら両者を連結するようにしてもよい。
【0114】
(3)隣り合う繋ぎ材18,39同士を軸線方向に離間させて配置し、それら繋ぎ材18,39同士を非連結としてもよい。この場合、柱材17間に比較的大きな隙間23を形成することができるため、隙間23を利用して弁形成部12を一体化させるに際しより一層好都合となる。
【0115】
(4)上記実施形態では、弁形成部12を、ステント11全体を覆うように形成したが、ステント11の一部だけを覆うように形成してもよい。その場合にも、人工弁10の留置状態においてステント11が体内の管壁に接触するのを抑制することができ、血栓症の発生を抑制することができる。
【0116】
(5)弁形成部12は必ずしも自己の組織体により形成する必要はなく、他人の組織体により形成してもよい。この場合、ステント11を他人の体内に埋入しそのステント11周りに弁形成部12を形成させることとなる。また、弁形成部12を人以外の動物(異種動物)の組織体で形成してもよい。この場合、ステント11を異種動物の体内に埋入しそのステント11周りに弁形成部12を形成させることとなる。かかる異種動物としては例えば、ブタ、ウシ、ヤギ、イヌ、ウサギ等が挙げられる。なお、異種動物の組織体により弁形成部12を形成する場合には、脱細胞化処理を行うのが望ましい。
【0117】
上記実施形態では、ステント11を体内に埋入することでステント11周りに弁形成部12を一体形成したが、弁形成部12をステント11とは別体で形成してもよい。例えば、生体の体内に円柱状人工物(例えばマンドレル)を埋入することでその人工物周りに組織体を形成させ、その組織体により弁形成部を形成することが考えられる。この場合、弁形成部を、ステント11の各柱部14に隙間23を利用して縫合等することでステント11と一体化させることができる。
【0118】
また、弁形成部は、必ずしも生体の組織体により形成する必要はなく、高分子材料等他の材料で形成してもよい。その場合も、弁形成部を各柱部14に縫合等することでステント11と一体化させることができる。
【0119】
(6)上記実施形態では、心臓の大動脈弁の置換弁として本発明のステント付き人工弁10を用いたが、心臓に設けられたその他の弁(心臓弁)、具体的には僧帽弁、三尖弁又は肺動脈弁の置換弁として用いることもできる。また、本発明の人工弁は必ずしも置換弁として用いる必要はなく、例えば血管内に留置して血管弁として用いるようにしてもよい。この場合、血液の逆流を抑制することで効率のよい血流を確保することが可能となる。また、血管以外の管内に留置してもよく、例えば食道に留置すれば逆流性食道炎の治療を行うことができる。
【0120】
(7)ところで、人工弁10を大動脈弁の置換弁として体内に留置する際、当該人工弁10を図9(a)に示す向きで配置した場合と、図9(b)に示す向きで配置した場合とでは、X線投影下で前方からステント11の各柱部14を視認した際、各柱部14の位置がいずれの場合も同じ位置にあるように見えてしまうことが考えられる。そのため、人工弁10の留置に際し、人工弁10を各柱部14が冠動脈BV4,BV5の入口部と重複しない向き(すなわち図9(a)に示す向き)で配置したと思っていても、実際には各柱部14が冠動脈BV4,BV5の入口部と重複する向き(すなわち図9(b)に示す向き)で配置されていて当該入口部が柱部14の延出部19により塞がれていたといった事態が生ずることが考えられる。
【0121】
そこで、この点に鑑みて、柱部14に、当該柱部14をステント11の径方向内側及び外側のうちいずれの側から見ているのかを判別するための識別表示部を設けてもよい。すなわち、柱部14に、径方向の外側から見た場合と、内側から見た場合とで見え方が異なる識別表示部を設けてもよい。具体的には、かかる識別表示部として、非対称形状からなる非対称マーカを設けることが考えられる。図10では、柱部14の延出部19に、かかる非対称マーカとして「G」の文字からなるマーカ48が設けられた構成が示されている。図10では、このマーカ48が径方向外側から見た場合に正しく見えるように設けられている。つまり、径方向内側から見た場合に、「G」の文字が反転して見えるように設けられている。なお、マーカ48は、柱部14において延出部19以外の部位に設けてもよい。
【0122】
かかる構成によれば、人工弁10が図9(a)に示す向きで配置された場合には、正面の柱部14Aのマーカ48が正しく見え、図9(b)に示す向きで配置された場合には、正面の柱部14Aのマーカ48が反転して見えることとなる。この場合、体内における当該マーカ48の前後位置を把握することが可能となり、その結果人工弁10が図9(a)に示す向き又は図9(b)に示す向きのいずれの向きで配置されたのかを判別することが可能となる。これにより、人工弁10の留置に際し、柱部14(詳しくは延出部19)により冠動脈BV4,BV5の入口部を塞いでしまう事態を回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0123】
10…人工弁、11…ステント、12…弁形成部、14…柱部、15…連結部、17…柱材、18…繋ぎ材、18a…第1斜め繋ぎ材、18b…第2斜め繋ぎ材、18c…直交繋ぎ材、19…延出部、30…人工弁、31…ステント、32…弁形成部、34…柱部、35…連結部、38…柱材、39…繋ぎ材、39a…斜め繋ぎ材、39b…直交繋ぎ材、48…識別表示部としてのマーカ。
図1
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図10