(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
偏光素膜に含有されているフォトクロミック化合物以外の二色性染料が、オレンジ系の二色性染料、レッド系の二色性染料、ブルー系の二色性染料、及びグリーン系の二色性染料からなる群から選ばれる二色性染料である、請求項1〜5の何れか一項に記載の有機EL表示装置用偏光素子。
偏光素膜に含有されているフォトクロミック化合物以外の二色性染料が、オレンジ系の二色性染料、レッド系の二色性染料、ブルー系の二色性染料、及びグリーン系の二色性染料のそれぞれを含有してなる二色性染料である、請求項6に記載の有機EL表示装置用偏光素子。
フォトクロミック化合物が、ピラン環がスピロ縮合したスピロピラン構造を有するスピロピラン化合物である、請求項1〜8の何れか一項に記載の有機EL表示装置用偏光素子。
上記フォトクロミック化合物含有層におけるフォトクロミック化合物の濃度が該含有層の総量に対して0.1〜20質量%であるか、又は、上記二色性染料とフォトクロミック化合物の両者を含有する直線偏光素膜中におけるフォトクロミック化合物の濃度が直線偏光素膜の総量に対して0.1〜50質量%である請求項1〜9の何れか一項に記載の有機EL表示装置用偏光素子。
フォトクロミック化合物が、フォトクロミック化合物含有層中において、積層された直線偏光板の偏光方向と同じ方向に配向している請求項1〜10の何れか一項に記載の有機EL表示装置用偏光素子。
直線偏光板における、可視光における直交透過率が0.1〜20%であり、かつ、単体透過率が42%より大きく70%以下であり、色相がニュートラルグレーである、請求項1〜11の何れか一項に記載の有機EL表示装置用偏光素子用の直線偏光板。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の有機EL表示装置の一実施形態を示す縦断面図。
【0012】
以下、本発明について説明する。
本発明の有機EL表示装置に使用する偏光素子は、二色性色素として、フォトクロミック化合物以外の二色性染料を含有する偏光素膜と共に、フォトクロミック化合物を併用することを特徴とする。
フォトクロミック化合物を併用した偏光素子としては、特に限定されないが、具体例としては、フォトクロミック化合物以外の二色性染料を含有する偏光素膜とフォトクロミック化合物を含有する樹脂層を含む偏光素子、及び、上記二色性染料とフォトクロミック化合物の両者を含有した偏光素膜を有する偏光素子等が挙げられる。
通常、有機EL表示装置に使用する偏光素子としては、円偏光板が好ましいことから、本発明の上記偏光素子としては、フォトクロミック化合物以外の二色性染料を含有する偏光素膜を有する直線偏光板とλ/4位相差板を積層した円偏光板に、フォトクロミック化合物含有層を積層した偏光素子、又は、該二色性染料とフォトクロミック化合物の両者を含む偏光素膜を有する直線偏光板とλ/4位相差板を積層した偏光素子などが挙げられる。本発明で使用される該直線偏光板は、通常使用される直線偏光板よりも、光の透過率が高い偏光板が好ましい。そのため、通常の場合に比して、該直線偏光板のコントラストの値も低くなる。
本発明の偏光素子としては、作製の容易性などから、上記二色性染料を含有する円偏光板にフォトクロミック化合物含有層を積層した偏光素子が好ましい。
以下に、本発明で使用される、該直線偏光板、フォトクロミック化合物含有層等につき順次説明する。
【0013】
<直線偏光板>
まず、本発明の偏光素子に使用される上記二色性染料を単独で含む直線偏光板について、以下に説明する。なお、本明細書において、「上記二色性染料を単独で含む直線偏光板」と云った場合、「フォトクロミック化合物を併用していない上記二色性染料を含む直線偏光板」を意味する。
該直線偏光板としては、通常の上記二色性染料を単独で含む直線偏光板を使用することもできるが、屋外での視認性を高めるために、光の透過率の高い直線偏光板を使用することが好ましい。まず、該直線偏光板について、以下に説明する。
本発明の該直線偏光板の単体透過率は、可視光域(380〜700nmの波長領域)で40%以上あれば使用できるが、通常42%より高い方が好ましく、45%以上がより好ましく、46%以上が更に好ましく、47%以上が特に好ましい。最も好ましくは、48%以上であり、49%以上又は50%以上であってもよい。上限としては、本発明の効果が達成される限り特に限定はない。通常70%以下、好ましくは65%以下、より好ましく60%以下であり、更に好ましくは、55%以下である。このように単体透過率が42%を超える直線偏光板を、本明細書においては、高透過率直線偏光板という。
該直線偏光板の可視光域での直交透過率は、通常0.1%以上30%以下程度であり、好ましくは0.1%以上20%以下である。また場合により、1%以上20%以下、好ましくは2%以上20%以下、より好ましくは5%以上20%以下であり、更に好ましくは7%以上15%以下である。
「単体透過率」とは、偏光板を1枚使用したときの透過率を言い、JIS Z8701:1999に準拠した方法により測定される。「直交透過率」とは、2枚の該偏光板を吸収軸が直交するように重ねた場合の透過率を言う。
より好ましい直線偏光板は、上記の好ましい単体透過率と上記の好ましい直交透過率を併せ持つ直線偏光板であり、単体透過率が50%以上60%以下であり、且つ、直交透過率が5%以上15%以下である偏光板は、最も好ましい。
【0014】
本発明で使用する上記直線偏光板は、常法に従って、基材フィルム(例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルム)に、二色性染料による染色処理、延伸処理、及び、必要に応じてホウ酸等による硬化剤処理等を施すことにより偏光素膜を製造し、必要に応じて得られた偏光素膜の片面又は両面に透明保護膜を貼合することにより、製造することができる。上記染色処理及び延伸処理の順序は、何れが先でもよく、また、同時に行ってもよい。また上記延伸処理は、硬化剤処理と同時に行ってもよい。硬化剤処理は通常染色処理と同時又は/及び染色処理の後に行われる。
【0015】
該直線偏光板に使用される基材フィルムとしては、偏光板として使用され得る樹脂フィルムであればいずれも使用でき、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとは、ビニルアルコール又はその変性体の重合体を主体とする樹脂フィルムであり、重合体中の繰り返し単位のうち、ビニルアルコール又はその変性体由来の成分が、モル割合で少なくとも40%、好ましくは50〜100%、更に好ましくは80〜100%である重合体のフィルムである。
具体的には、酢酸ビニルの重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるポリビニルアルコールフィルム;酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、不飽和アミン類、アクリルアミド、アクリル酸誘導体等との共重合体(ポリ酢酸ビニル共重合体)をケン化処理して得られるポリビニルアルコール共重合体フィルム;及び、上記重合体および共重合体をオレフィンや不飽和カルボン酸で変性したポリビニルアルコール変性体フィルムを挙げることができる。具体例としては例えば、ポリビニルアルコール樹脂フィルム、上記共重合体樹脂フィルム、ポリビニルアセタールフィルム(エチレンビニルアセテート樹脂フィルム)等を挙げることができ、これらの中でも、二色性色素の吸着性や配向性の点からポリビニルアルコール樹脂フィルムが好ましい。
【0016】
該直線偏光板に使用されるポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000程度の範囲のものが使用され、好ましくは1500〜7000程度、より好ましくは2000〜7000程度である。ポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル重合体又は共重合体のケン化処理されたものが使用され、そのケン化度は通常85〜100モル%程度、好ましくは98〜100モル%の範囲である。
原料として使用されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、通常10μm〜150μm程度、好ましくは20〜100μm程度である。
【0017】
該直線偏光板に使用される二色性染料は、基材フィルムの延伸により可視光領域において二色性を示す染料であれば、いずれも使用できるが、耐久性に優れた染料が好ましい。
該直線偏光板に使用される二色性染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクト.イエロー12、C.I.ダイレクト.イエロー28、C.I.ダイレクト.イエロー44、C.I.ダイレクト.イエロー142;C.I.ダイレクト.オレンジ26、C.I.ダイレクト.オレンジ39、C.I.ダイレクト.オレンジ71、C.I.ダイレクト.オレンジ107;C.I.ダイレクト.レッド2、C.I.ダイレクト.レッド31、C.I.ダイレクト.レッド79、C.I.ダイレクト.レッド81、C.I.ダイレクト.レッド117、C.I.ダイレクト.レッド247;C.I.ダイレクト.グリーン80、C.I、ダイレクト.グリーン59;C.I.ダイレクト・ブルー1、C.I.ダイレクト・ブルー71、C.I.ダイレクト・ブルー78、C.I.ダイレクト・ブルー168、C.I.ダイレクト・ブルー202;C.I.ダイレクト・バイオレット9、C.I.ダイレクト・バイオレット51;C.I.ダイレクト・ブラウン106、C.I.ダイレクト・ブラウン223等を例示することができる。
また、目的に応じて、WO2009/057676A1、WO2007/145210A1、WO2006/057214A1及び特開2004−251963等に開示されているような偏光板用に開発された染料を用いることもできる。これらの色素は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。
【0018】
該直線偏光板には、二色性染料を一種又は複数を用いてもよく、通常複数使用するのが好ましい。下記の(1)〜(3)の各染料から選択される少なくとも二つの染料、より好ましくは下記の(1)〜(3)の染料をそれぞれ少なくとも1種ずつ使用することにより、色相がニュートラルグレイである偏光板を作製することができるため、好ましい。
(1)400nm以上500nm未満に極大吸収波長(λmax)を有する二色性染料、
(2)500nm以上600nm未満に極大吸収波長(λmax)を有する二色性染料、及び
(3)600nm以上700nm以下に極大吸収波長(λmax)を有する二色性染料。
【0019】
400nm以上500nm未満にλmaxを有する二色性染料(1)としては、例えば、Yellow系又はOrange系の染料のうちλmaxが400nm以上500nm未満である二色性染料が挙げられる。500nm以上600nm未満にλmaxを有する二色性染料(2)としては、例えば、Red系又はViolet系の染料のうちλmaxが500nm以上600nm未満である二色性染料が挙げられる。600nm以上700nm以下にλmaxを有する二色性染料(3)としては、例えば、Blue系又はGreen系の染料のうちλmaxが600nm以上700nm以下である二色性染料が挙げられる。
ニュートラルグレイの偏光板を作製するときに使用する二色性染料は、上記二色性染料(1)〜(3)の何れかの同じ群に含まれる染料であっても、個々の染料により吸収波長が異なるので、必要に応じ、同一の群に含まれる染料を複数使用してもよく、例えば上記二色性染料(1)〜(3)群の染料の合計で4〜5種、またはそれ以上の二色性染料を使用しても良い。好ましい一つの態様としては、オレンジ系の二色性染料を一種、レッド系の二色性染料を一種、及び(3)の二色性染料として、ブルー系及びグリーン系の二種を用いる態様を挙げることができる。
染色液における各染料の含有比率は、特に限定されず、得られる偏光素膜の色相がニュートラルグレイにすることができる割合であればよい。上記の(1)〜(3)の染料をそれぞれ少なくとも1種ずつ使用する場合、例えば、質量割合で、二色性染料(1)を基準として、二色性染料(1):二色性染料(2):二色性染料(3)=1:0.1〜3:1〜8、より好ましくは1:0.2〜2:2〜7程度の割合で含有することが好ましい。各染料の染色液における含有比率を上記の範囲で適宜調整することにより、ニュートラルグレイの偏光板としてより好ましい色相及び光学性能を有する偏光板が得られる。
また本発明で使用する直線偏光板は、上記の二色性染料を単独で又は複数を組み合わせて使用することにより得られるカラー偏光板であってもよい。
【0020】
該直線偏光板に使用する二色性染料としては、下記式(3)によって定義される二色性比が、20〜50の範囲、好ましくは25〜45の範囲に含まれる二色性染料が好ましい。
本明細書では、「染料の二色性比」と言う場合の「二色性比」を次の通り定義する。二色性色素として当該染料のみを使用した偏光板を作製し、該偏光板を1枚使用したときの透過率を単体透過率Ts、2枚の該偏光板を吸収軸方向が同一となるように重ねた場合の透過率を平行位透過率Tp 、2枚の該偏光板を吸収軸が直交するように重ねた場合の透過率を直交位透過率Tcとする。それぞれの透過率は、380〜700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに分光透過率τλを求め、下記式(1)により算出する。
【0021】
【0022】
式中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表し、τλは分光透過率を表す。また偏光度Pyを、平行位透過率Tp及び直交位透過率Tcから、下記式(2)により求める。
Py={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}
1/2×100 式(2)
偏光度Py及び単体透過率Tsから、二色性比Rdを下記式(3)により求める。
Rd=log{Ts/100×(1−Py/100)}/log{Ts/100×(1+Py/100)} 式(3)
【0023】
本発明で使用する直線偏光板は公知の製造方法に従って製造すればよく、例えば下記のようにして製造することができる。但し、本発明で使用する高透過率直線偏光板の場合には、単体透過率を上記の範囲になるように上記二色性染料の染色濃度を適宜調整することが必要である。
通常、二色性染料による染色処理の前に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの膨潤処理が施される(膨潤工程ともいう)。膨潤処理は20〜50℃の膨潤処理溶液に30秒〜10分間浸漬させることによって行われる。該膨潤処理溶液としては水が好ましい。また、必要に応じて、グリセリン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコール等の水溶性有機溶剤、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶液で膨潤処理を行っても良い。フィルムは染色処理時にも膨潤するため、偏光素膜の製造にかかる時間を短縮したいときには、上記膨潤工程を省略することもできる。
【0024】
二色性染料での染色処理は、常法に従い、前記の二色性染料を用いて、二色性染料を含有する染色液、好ましくは二色性染料を溶解した染色液の中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより行う。二色性染料による樹脂フィルムの染色処理は、下記の延伸工程と同時に行ってもよい。
二色性染料の染色液の溶媒としては水が好ましい。二色性染料の染色液中における染料濃度は、染色条件により変わるので一概には言えないが、通常、染色液に対し0.01〜5g/L程度、好ましくは0.01〜2g/L程度、より好ましくは0.02〜1g/L程度、最も好ましくは0.02〜0.9g/L程度である。二色性染料を複数使用する場合は、使用する染料の総量の濃度が上記範囲にある場合好ましい。
二色性染料を含有する染色液は、染色助剤等の助剤を必要に応じて含んでいても良い。染色助剤としては、芒硝、トリポリリン酸ソーダ等の無機塩を挙げることができる。そのときの染色助剤の濃度は、染色液の総量に対して、0.01〜10g/L程度、好ましくは0.05〜5g/L程度である。染色助剤を複数使用する場合は、染色助剤の総量の濃度が上記範囲にあることが好ましい。
二色性染料での染色処理における染色液の温度は20〜60℃程度、好ましくは30〜55℃程度である。浸漬時間は上記濃度に染色できる時間で有れば支障は無く、10〜500秒程度、好ましくは30〜400秒程度の範囲である。
【0025】
二色性染料の配向のため延伸処理は、染色処理と共に行ってもよい。また、延伸処理は複数回に分けて行われてもよい。また、延伸処理は、場合によっては、膨潤後、染色処理前に行われてもよい。
本発明においては、二色性染料により染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを所定の倍率に延伸(好ましくは一軸延伸)することにより、偏光素膜の延伸処理を行うことが好ましい。延伸処理における延伸方法は、乾式延伸法及び湿式延伸法のいずれでもよいが、湿式延伸法が好ましい。湿式延伸法は、通常、水、水溶性有機溶剤又はそれらの混合溶液等からなる溶液を加熱し、その加熱した溶液中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬しながら延伸する方法である。延伸倍率は原フィルムの厚さ等により一概に言えないが、通常最終的に原フィルムの2〜20倍程度、好ましくは3〜10倍程度である。
延伸処理溶液に硬化剤を含有させることにより、延伸処理と同時に硬化剤処理を行ってもよい。そのときの硬化剤としては、下記硬化剤処理の項で例示する硬化剤を使用することができ、ホウ素化合物が好ましく、ホウ酸がより好ましい。このときの延伸処理溶液における硬化剤の含有量は、硬化剤の種類により異なるため一概に言えないが、0.1〜10.0質量%程度であり、好ましくは0.5〜5.0質量%程度である。
延伸方法としては、速度の異なる二つのロールの間で一軸延伸する方法が好ましい。延伸処理により得られるフィルムの、原反フィルムに対する総延伸倍率は2.0〜10.0倍程度であり、好ましくは4.0〜7.0倍である。延伸処理における処理溶液の温度は30〜60℃程度である。
【0026】
二色性染料での染色処理を施した後、硬化剤処理を行うのが好ましい。硬化剤処理は、染色処理と同時に、又は/及び染色処理後、フィルムを硬化剤を含む溶液で処理することを言う。該硬化剤処理としては、染色処理が施されたフィルムを該溶液に浸漬する方法が好ましいが、該溶液を染色処理が施されたフィルムに塗布又は塗工する方法でもよい。
硬化剤処理に使用する硬化剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等のアルカリ金属塩、ホウ砂アンモニウム等)等のホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒド等の多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型等の多価イソシアネート化合物、チタニウムオキシサルフェイト等のチタニウム化合物、エチレングリコールグリシジルエーテル及びポリアミドエピクロルヒドリン等を用いることができる。通常、ホウ素化合物が好ましく、ホウ酸はより好ましい。硬化剤処理溶液の溶媒は水、水溶性有機溶媒又はそれらの混合溶媒等を用いることができ、水が好ましい。
硬化剤処理溶液の硬化剤濃度は、硬化剤の種類により異なるため一概には言えないが、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜6質量%程度であり、例えばホウ酸では、0.1〜6.0質量%程度が好ましい。硬化剤処理の処理温度は10〜60℃が好ましく、30〜60℃がより好ましい。処理時間は30秒〜6分が好ましく、1〜5分がより好ましい。
【0027】
本発明の好ましい態様においては、硬化剤処理及び延伸処理をホウ酸水溶液中で行うため、ホウ酸をポリビニルアルコール系樹脂フィルム中に含有する。このときの偏光素膜中のホウ酸含有量は、得られた偏光素膜を純水中で加熱して完全に溶解させ、フェノールフタレイン指示薬を添加し、水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定することによって求めることができる。
本発明の偏光素膜におけるホウ酸含有量は、5〜40質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。偏光素膜中のホウ酸含有量は、上記延伸処理又は硬化剤処理における溶液の濃度・浸漬時間・溶液温度・延伸倍率をそれぞれ変えることで調整できる。
【0028】
これら染色処理、延伸処理及び硬化剤処理の各工程の後、必要に応じて、フィルム表面に析出した染料や硬化剤、又は付着した異物等を取り除く目的でフィルム表面の洗浄を行ってもよい。通常は水で洗浄することが好ましく、洗浄液の温度は10〜60℃程度、洗浄時間は1秒〜5分程度である。洗浄は必要に応じて1回又は複数回行ってよい。
【0029】
延伸処理が施された偏光素膜は、必要に応じて洗浄を行った後、乾燥処理が行われる。乾燥処理における乾燥温度は、通常30〜70℃程度であり、好ましくは40〜65℃程度である。乾燥時間は10〜500秒程度であり、好ましくは60〜350秒程度である。
得られた偏光素膜の厚さは、10μm〜40μm程度が好ましく、15μm〜30μmは更に好ましい。
【0030】
このようにして得られた偏光素膜は、その片面又は両面に、光学的透明性、機械的強度及び等方性などに優れる透明保護膜を貼合して、偏光板とすることができる。保護膜を形成する化合物としては、例えば、セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂又はポリアミド系樹脂からなるフィルム等が用いられる。好ましくはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムやシクロオレフィン系フィルムが用いられる。保護膜の厚さは通常40〜200μmである。
偏光素膜と保護膜を貼り合わせるのに用いうる接着剤(粘着剤)としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステルーイソシアネート系接着剤などが挙げられ、ポリビニルアルコール系接着剤が好適である。
【0031】
得られた偏光板の表面には、更に透明な保護層を設けても良い。保護層としては、例えばアクリル系樹脂又はポリシロキサン系樹脂からなるハードコート層、ウレタン系樹脂からなる保護層等があげられる。また、この保護層の上にAR層(反射防止層)を設けてもよい。AR層は、例えば二酸化珪素、酸化チタン等の物質を蒸着又はスパッタリング処理することにより、また、フッ素系物質を薄く塗布することにより、形成することができる。
本発明においては、通常該直線偏光板を円偏光板の作製に使用するので、その場合には、該偏光板の片方の面に、下記するように、λ/4位相差板を積層するので、その面には上記の保護層等は通常設けない。また、フォトクロミック化合物含有層を積層する場合、通常、円偏光板の直線偏光板側の外面(直線偏光板のλ/4位相差板が積層されていない面)に、積層されるので、その場合には、該直線偏光板の何れの面にも上記の保護層等を設ける必要は無い。
【0032】
<円偏光板の作製>
上記で得られた直線偏光板に位相差板を貼合することにより、円偏光板を作製する。通常、位相差板としてλ/4位相差板(好ましくは1/4波長板)を使用し、λ/4位相差板(好ましくは1/4波長板)の遅相軸(面内において屈折率が最大となる方向)と直線偏光板の吸収軸との角度が45°をなすように積層される。該位相差板の材質は特に限定されず、公知のもの、例えばポリマーフィルム、液晶フィルム、液晶化合物を配向させたフィルムなどを用いることができる。該位相差板は、1枚でも良いし、2枚以上の複層構造のものでもよい。また、可視光領域の全域において1/4波長板特性を有する広帯域1/4波長板を使用し、広帯域円偏光板を作製することが好ましい。
上記直線偏光板と位相差板の貼合に用いる粘着剤としては、特に限定されず、通常の円偏光板の作製に使用される透明性の高い公知の粘着剤が使用できる。
本発明で使用する上記高透過率直線偏光板とλ/4位相差板とからなる円偏光板を、便宜的に高透過率円偏光板という。
【0033】
<フォトクロミック化合物の併用>
本発明のOLED用偏光素子は、上記二色性染料を含有する偏光素膜と共に、フォトクロミック化合物を併用することを特徴とする。
フォトクロミック化合物を併用する好ましい態様としては、フォトクロミック化合物含有層を、上記色性染料を含有する偏光素膜を有する円偏光板に積層する態様、又は、上記フォトクロミック化合物以外の二色性染料を含有する偏光素膜中に、該二色性染料と共に、フォトクロミック化合物を含有させ、該二色性染料及びフォトクロミック化合物の両者を含む偏光素膜とする方法等を挙げることができる。
前者の場合、上記円偏光板に積層するフォトクロミック含有層の形成方法は、特に限定されない。例えば、上記円偏光板における直線偏光板の表面にフォトクロミック化合物含有樹脂フィルムを積層するか又はフォトクロミック化合物含有樹脂液を塗布、乾燥してフォトクロミック含有層を形成してもよい。通常フォトクロミック化合物含有樹脂フィルムを積層する方法が好ましい。
後者の場合は、得られた該二色性染料及びフォトクロミック化合物の両者を含む偏光素膜を、上記における該二色性染料を単独で含む偏光素膜の場合と同様にして、該二色性染料及びフォトクロミック化合物の両者を含む直線偏光板とし、該直線偏光板に、上記と同様にして、λ/4位相差板を積層することにより、本発明のOLED用偏光素子とすることができる。
本発明のOLED用偏光素子において、上記フォトクロミック化合物含有層、又は、上記二色性染料とフォトクロミック化合物の両者を含有する偏光素膜中におけるフォトクロミック化合物の濃度は、紫外線のない状態で、フォトクロミック化合物を含有しない円偏光板の550nmの光の透過率を通常1〜7%程度、好ましくは2〜6%程度、より好ましくは2〜5%の範囲内で低下させる濃度である。
【0034】
<フォトクロミック化合物>
本発明で用いられるフォトクロミック化合物は、光の強度によって着色及び脱色するフォトクロミック特性を有する化合物であれば、特に制限なく使用できる。紫外線照射されると着色状態に変化し、可視光照射または熱によって消色状態に変化する、正のフォトクロミック特性を有する化合物が好ましい。
該フォトクロミック化合物としては、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物、フルギド化合物、ナフトピラン化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上併用して用いることができる。これらのうち、スピロピラン化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物が好ましい。
【0035】
上記スピロピラン化合物とは、ピラン環がスピロ縮合したスピロピラン構造を有する化合物であり、該化合物としては、例えば、1,3,3−トリメチルインドリノ−6’−ニトロベンゾピリロスピラン、1’,3’,3’−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、1’,3’,3’−トリメチルスピロ−8−ニトロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、1’,3’,3’−トリメチル−6−ヒドロキシスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、1’,3’,3’−トリメチルスピロ−8−メトキシ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、5’−クロル−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、6,8−ジブロモ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、6,8−ジブロモ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、8−エトキシ−1’,3’,3’,4’,7’−ペンタメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、5’−クロル−1’,3’,3’−トリメチルスピロ−6,8−ジニトロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、3,3,1−ジフェニル−3H−ナフト−(2,1−13)ピラン、1,3,3−トリフェニルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2,3,4,5,6−ペンタメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2−メトキシ−5−ニトロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2−ニトロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2−ナフチルメチル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1,3,3−トリメチル−6’−ニトロ−スピロ〔2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール〕などが挙げられる。
【0036】
また、上記スピロオキサジン化合物としては、例えば、1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、5−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、5−クロル−1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、4,7−ジエトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、5−クロル−1−ブチル−3,3−ジメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1,3,3,5−テトラメチル−9’−エトキシスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−ベンジル−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(2−メチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(3,5−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(4−クロロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕などのスピロオキサジン構造を有する化合物を挙げることができる。
【0037】
上記ジアリールエテン化合物としては、例えば、1,2−ビス(2−フェニル−4−トリフルオロメチルチアゾール)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(3−(2−メチル−6−(2−(4−メトキシフェニル)エチニル)ベンゾチエニル))−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(5−メチル−2−フェニルチアゾ−ル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−メトキシ−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(5−シアノ−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンなどが挙げられ、1,2−ジチエニルエテン化合物が好ましい。
【0038】
上記フルギド化合物の例としては、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン〕、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、6,7−ジヒドロ−N−メトキシカルボニルメチル−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−(p−メチルフェニル)−N−ニトロメチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−シクロプロピル−3−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)などが挙げられる。
【0039】
上記ナフトピラン系化合物としては、例えば、3,3−ジフェニル−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、2,2−ジフェニル−2H−ナフト(1,2−b)ピラン、3−(2−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−(2−メチル−4−メトキシフェニル)−3−(4−エトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−(2−フリル)−3−(2−フルオロフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−(2−チエニル)−3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−〔2−(1−メチルピロリル)〕−3−(2−メチル−4−メトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、スピロ〔ビシクロ(3.3.1)ノナン−9,3’−3H−ナフト(2,1−b)ピラン〕、スピロ〔ビシクロ(3.3.1)ノナン−9−2’−3H−ナフト(2,1−b)ピラン〕などが挙げられる。
【0040】
上記ヘキサアリールビスイミダゾール化合物としては、例えば、pseudogem−ビス(ジフェニルイミダゾール)[2.2]パラシクロファン、pseudogem−ビス(3,3’4,4’−テトラメトキシジフェニルイミダゾール)[2.2]パラシクロファンなどが挙げられる。
【0041】
<フォトクロミック化合物含有層>
前記の通り、本発明においては、前記直線偏光板又は前記位相差板とは別に、フォトクロミック化合物含有層(以下、「フォトクロミック樹脂層」とも言う。)を設ける態様は、好ましい態様の一つである。
該フォトクロミック樹脂層を形成する方法としては、前記の通り、フォトクロミック化合物を含有する樹脂フィルム(以下、「フォトクロミック化合物含有フィルム」とも言う)を作製し、前記円偏光板における直線偏光板の表面に貼合する方法、及び、フォトクロミック化合物を含有する樹脂組成物の塗膜を前記円偏光板における直線偏光板の表面に直接形成する方法が挙げられる。
後者の直線偏光板の表面にフォトクロミック化合物を含有する塗膜を直接形成する場合は、上記樹脂組成物を直線偏光板の表面に、乾燥後の厚さが下記フィルムの厚さ程度になるように、ダイコーティング、グラビアコーティング等の公知の方法により塗布、乾燥するすれば良い。
【0042】
<フォトクロミック化合物含有フィルム>
フォトクロミック化合物含有フィルムは、フィルム中に上記フォトクロミック化合物が分散されている樹脂フィルムであればいずれも使用できる。該樹脂フィルムは、例えば、フォトクロミック化合物を含有する樹脂組成物を常法により製膜する方法、及び、フォトクロミック化合物を含有する染色液に基材フィルムを浸漬して、基材フィルムにフォトクロミック化合物を含浸させる方法等により、製造することができる。通常、フォトクロミック化合物の含量を調整しやすい点で前者が好ましい。
【0043】
上記のフォトクロミック化合物を含有する樹脂組成物の製膜は、常法により行うことができる。例えば溶融押出法、塗膜法などによって、フォトクロミック化合物含有フィルムを製造することができる。後者の場合には、例えば、フォトクロミック化合物と樹脂とを含有する樹脂樹脂組成物、好ましくは両者が溶解している樹脂溶液を、離型剤付きフィルムの離型剤の塗布面に、ダイコーティング、グラビアコーティング等の公知の塗膜方法を用いて塗布、乾燥して、塗膜を形成した後、必要に応じて、該塗膜上に更に透明なフィルムを積層して、離型剤付きの本発明で使用するフォトクロミック化合物含有フィルムを作製することができる。
上記フォトクロミック化合物を含有する樹脂組成物において使用される樹脂としては、フォトクロミック化合物との相溶性が良く、フォトクロミック化合物が樹脂中において適度に分散されるものであればいずれも使用できる。例えば、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂、PVA系樹脂などの樹脂が挙げられる。通常、耐久性や光の透過性などからアクリル樹脂が好ましい。
上記フォトクロミック化合物を含有する樹脂組成物は、通常粘度の調整等のため通常溶媒を含む。樹脂組成物における溶媒としては、フォトクロミック化合物及び樹脂を溶解することができる溶媒が好ましい。例えば、トルエン、DMSO等の有機溶媒、及び、水又は水と水溶性有機溶媒との混合溶液等の水性溶媒が挙げられる。通常有機溶媒が好ましい。
【0044】
フォトクロミック化合物を含有する樹脂組成物に含まれるフォトクロミック化合物の含有割合は、該樹脂組成物の固形分の総量(溶媒以外の全成分)に対して、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜7質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%、最も好ましくは0.3〜4質量%である。含有量が少なすぎると、フォトクロミック化合物が着色しても本発明の偏光素子の吸収特性が変化しない。含有量が多すぎると、フォトクロミック化合物を含有する樹脂フィルムの強度や接着性に影響を及ぼす可能性がある。
【0045】
染色によるフォトクロミック化合物含有フィルムの製造方法としては、染色溶液としてフォトクロミック化合物を含有する染色溶液を使用して、従来公知のフィルム染色方法に従って基材フィルムを染色すればよい。例えば、前記の直線偏光板の項における二色性染料を用いた基材フィルムの染色方法に準じて行うことができる。即ち、前記の直線偏光板の染色方法に従って、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムを基材フィルムとして、二色性染料の代わりにフォトクロミック化合物を含有する染色溶液を用いて染色処理を行い、延伸処理、及び、ホウ酸等による硬化剤処理の各工程を行うことにより、フォトクロミック化合物含有フィルムを製造することができる。染色処理及び延伸処理の順序は、何れが先でもよく、同時に行ってもよい。また延伸処理は、硬化剤処理と同時に行ってもよい。硬化剤処理は通常染色処理と同時又は/及び染色処理の後に行われる。
このときの染色処理の条件は特に限定されない。染色処理に用いる染色溶液は、フォトクロミック化合物を水又は水性溶液に溶解することにより得られる。このときの染色溶液の濃度は0.001〜10質量%程度が好ましく、基材フィルムの浸漬時間は20秒〜20分間程度が好ましく、染色温度は20℃〜80℃程度が好ましい。
【0046】
該フォトクロミック樹脂層に含まれるフォトクロミック化合物は、二色性を有してもよい。この場合、上記の方法等で得られたフォトクロミック化合物含有フィルムを延伸(好ましくは一軸延伸)することにより、フォトクロミック化合物を一方向に配向させ、フォトクロミック化合物に二色性を付与することができる。
フィルムの延伸方法としては、湿式法、乾式法など、公知のいずれの方法を用いてもよい。このときの延伸倍率は、原反フィルムに対して総延伸倍率が2倍〜10倍程度であるのが好ましい。
フォトクロミック化合物含有フィルムを染色法により作製する場合、上記のフォトクロミック化合物含有フィルムの作製工程のいずれかにおいて、基材フィルムを延伸(好ましくは一軸延伸)する工程を入れればよく、基材フィルムを延伸する工程は、基材フィルムを染色液に含浸させる工程の前後に行ってもよく、同時であってもよい。
【0047】
フォトクロミック化合物に二色性を付与する場合、分子構造が縦横の長さが異なる長鎖構造であるフォトクロミック化合物、より好ましくは、ベンゼン環や複素環などのπ共役が広がり、π共役で繋がる各構成骨格間における立体的構造が変化しない(但し、着色又は退色時の何れかの状態に変化した際には立体構造が変化しうる)フォトクロミック化合物が、配向性の面で好ましい。そのような化合物としては、前記のスピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、ジアリールエテン系化合物、フルギド系化合物及びナフトピラン系化合物がいずれも好ましく使用できる。
フォトクロミック化合物に二色性を付与したときは、該フォトクロミック化合物含有フィルムの吸収軸と、直線偏光板の吸収軸とが平行になるように、該フォトクロミック化合物含有フィルムと円偏光板とを積層する。このように積層することにより、紫外線が強い環境下において、着色したフォトクロミック化合物含有フィルムと高透過率偏光板とが協働して偏光性能の優れた直線偏光板として働き、優れた反射防止機能を発揮することができる。
【0048】
上記方法等で得られたフォトクロミック化合物含有フィルムを、前記の直線偏光板と位相差板とからなる円偏光板に粘着剤等を介して貼合することにより、本発明のOLED用偏光素子であるフォトクロミック樹脂層付き円偏光板が得られる。このときの粘着剤としては、光学部材に使用される公知の粘着剤を使用すればよい。
【0049】
本発明の偏光素子におけるフォトクロミック樹脂層は、フォトクロミック化合物を含有する樹脂組成物の塗膜を本発明の円偏光板の直線偏光板側に直接形成してもよい。このときの塗膜の形成は、前記の少なくともフォトクロミック化合物と樹脂とを含有する樹脂溶液を用いて透明フィルム上に塗膜を形成する方法に準じて行えばよい。
【0050】
本発明のフォトクロミック樹脂層の位置は、フォトクロミック化合物が外光に含まれる紫外線を吸収することができる位置であれば特に限定されないが、紫外線を効率的に吸収できることから、上記直線偏光板の出射側(観察者側、外光の入射する側)に配置することが好ましい。
本発明のフォトクロミック樹脂層における、フォトクロミック化合物の含有割合は、該樹脂層の総量に対して、通常0.1〜10質量%程度であり、好ましくは0.2〜7質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%、最も好ましくは0.3〜4質量%である。また、該樹脂層を本発明のOLED用偏光素子に用いた場合、該樹脂層におけるフォトクロミック化合物濃度は、該樹脂層を積層した本発明のOLED用偏光素子の550nmの光の透過率が、紫外線のない状態で、該樹脂層を有しない円偏光板の該光の透過率よりも、通常1〜7%程度、好ましくは2〜5%程度、より好ましくは2〜4%の範囲内で低い値となる濃度である。
含有量が少なすぎるとフォトクロミック化合物が着色しても本発明の偏光素子の吸収特性が変化せず、含有量が多すぎるとフォトクロミック樹脂層の強度や接着性に影響を及ぼす可能性がある。
本発明のフォトクロミック樹脂層の厚さは、特に限定されないが、10μm〜100μm程度が好ましい。
【0051】
<フォトクロミック化合物及び二色性染料含有偏光板>
本発明のOLED用偏光素子においては、該直線偏光板が、二色性染料と共にフォトクロミック化合物を含有する直線偏光板(以下、「フォトクロミック化合物含有偏光板」とも言う。)であってもよい。
本発明のフォトクロミック化合物含有偏光板の製造方法としては、直線偏光板の基材フィルム中に二色性染料及びフォトクロミック化合物を適度に含有させることができる方法であれば特に限定されない。例えば、染色液として二色性染料及びフォトクロミック化合物の両者を含有する染色液を使用して、従来公知のフィルム染色方法に従って基材フィルムを染色するか、又は、該二色性染料での染色とは別に、フォトクロミック化合物含有染色液を用いて、フォトクロミック化合物での染色を行うことより、両者を含む直線偏光素膜を作製すればよい。
より具体的には、前記の二色性染料を用いた基材フィルムの染色による直線偏光板の方法において、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムを基材フィルムとして、二色性染料を単独で用いる代わりに二色性染料及びフォトクロミック化合物の両者を含有する染色液を用いて染色処理を行うか、又は、該二色性染料での染色とは別に、フォトクロミック化合物含有染色液を用いて、フォトクロミック化合物での染色を行い、延伸処理、及び、必要に応じて行われるホウ酸等による硬化剤処理等を行うことにより、該二色性染料及びフォトクロミック化合物の両者を含有する直線偏光素膜を製造することができる。
染色処理及び延伸処理の順序は、何れが先でもよく、同時に行ってもよい。また延伸処理は、硬化剤処理と同時に行ってもよい。硬化剤処理は通常染色処理と同時又は/及び染色処理の後に行われる。
このときの染色処理の条件は特に限定されない。染色処理に用いる染色溶液は、上記二色性染料及びフォトクロミック化合物の両者を水又は水性溶液に溶解することにより得られる。また、上記二色性染料の染色とは別個フォトクロミック化合物での染色を行ってもよい。
このときの染色液のフォトクロミック化合物の濃度は染色条件により変わるので一概には言えないが、染色液の総量に対して、フォトクロミック化合物の好ましい濃度は0.01〜10g/L程度である。基材フィルムの浸漬時間は20秒〜20分間程度が好ましく、染色温度は20℃〜80℃程度が好ましい。
該直線偏光素膜中でのフォトクロミック化合物の濃度は、該直線偏光素膜を用いた本発明のOLED用偏光素子の550nmの光の透過率が、紫外線のない状態で、フォトクロミック化合物を含有しない直線偏光素膜を用いた円偏光板の550nmの光の透過率よりも、通常1〜7%程度、好ましくは2〜6%程度、より好ましくは2〜5%の範囲内で低い値となる濃度である。
得られた偏光素膜は保護フィルム等を付けて常法により直線偏光板とすることができる。
【0052】
フォトクロミック化合物が水溶性である場合は上記方法を使用できるが、多くのフォトクロミック化合物は水不溶性である。そのため通常フォトクロミック化合物含有樹脂溶液を用いて塗膜を形成するキャスト法が使用される。例えばポリビニルアルコール系樹脂とフォトクロミック化合物を含有する樹脂溶液を、基材フィルム上、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムに塗工、乾燥して塗膜フィルムを形成した後、基材から剥がした該フィルムに、二色性染料を含有する染色液を用いて、従来公知のフィルム染色方法に従って染色処理を行い、延伸処理、及び、必要に応じて行われるホウ酸等による硬化剤処理等を行うことにより、フォトクロミック化合物及び二色性染料含有素膜を得、これに保護フィルムを付けて偏光板とすることができる。
このときの染色処理及び延伸処理の順序は、何れが先でもよく、同時に行ってもよい。また延伸処理は、硬化剤処理と同時に行ってもよい。硬化剤処理は通常染色処理と同時又は/及び染色処理の後に行われる。
【0053】
上記のフォトクロミック化合物含有直線偏光板の製造方法においては、基材フィルムを延伸する工程が含まれ、フォトクロミック化合物は二色性染料と共に一方向に配向されるため、フォトクロミック化合物に二色性が付与される。フォトクロミック化合物が二色性を有する場合、得られるフォトクロミック化合物含有直線偏光板は、外光が弱い環境下では前記の高透過率偏光板として機能し、外光が強い環境下においては、フォトクロミック化合物が着色して、偏光性能の高い直線偏光板として機能する。
このときのフォトクロミック化合物としては、前記のフォトクロミック化合物に二色性を付与する際に好ましく使用できるフォトクロミック化合物として挙げられた化合物が好ましく使用できる。
上記フォトクロミック化合物含有偏光板に前記位相差板を貼合することにより、本発明のOLED用偏光素子が得られる。本発明の該OLED用偏光素子は、外光が強い環境下では、フォトクロミック化合物が着色して二色性を示し、偏光性能の優れた直線偏光板として機能するため、優れた反射防止機能を発揮する。また、外光が弱い室内環境下においてはフォトクロミック化合物が着色せず上記二色性染料のみでの直線偏光板とほぼ同じになるため、一定の反射機能を有して、室内での視認性も保持される。
【0054】
<OLED用偏光素子>
本発明のOLED用偏光素子は、二色性染料を含有する直線偏光素膜とフォトクロミック化合物を併用することにより得られる。より具体的には、上記で得られた、上記二色性染料を含有する直線偏光素膜を有する直線偏光板とλ/4位相差板とからなる円偏光板に、フォトクロミック化合物含有層を積層するか、又は、上記二色性染料と共にフォトクロミック化合物を含有した偏光素膜を有する直線偏光板とλ/4位相差板とを積層することにより、本発明のOLED用偏光素子を得ることができる。
本発明の偏光素子は、当該偏光素子が有する反射防止機能及び視認性向上効果を阻害しない限り、上記の直線偏光板、位相差板及びフォトクロミック樹脂層以外の光学層を備えていてもよい。例えば、本発明の偏光素子は、前記偏光板の項で記載した保護層(ハードコート層)、AR層(反射防止層)、他の位相差板、カラーフィルター等を備えていてもよい。
本発明の偏光素子に含まれる正のフォトクロミック化合物は、太陽光に含まれる紫外線、又は、紫外線ランプ、水銀ランプ、キセノンランプなどの各種ランプの紫外線を吸収して着色し、可視光及び/又は熱により退色する。フォトクロミック化合物の着色及び消色は可逆的であるので、紫外線の作用が可視光及び/又は熱による作用よりも大きいときに着色し、また、紫外線の作用よりも可視光及び/又は熱による作用が大きいときに消色する。本発明で使用するフォトクロミック化合物としては、波長が250〜400nm程度の紫外線により着色される正のフォトクロミック化合物が好ましい。
【0055】
本発明のOLED用偏光素子の各光学層には、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤などの各種添加剤が添加されていてもよい。
【0056】
本発明のOLED用偏光素子は、使用の目的にもよるが、フォトクロミック化合物の着色時におけるOLEDからの出射光の透過率が、5〜55%程度、より好ましくは10〜45%程度であり、且つ、OLEDのカソード電極による外光の反射率が、10%程度以下、より好ましくは6%程度以下であるのが好ましい。
【0057】
本発明のOLED用偏光素子の好ましい態様としては、下記(I)〜(III)の態様が挙げられる。
(I)二色性染料を含有する直線偏光板及びλ/4位相差板からなる円偏光板における直線偏光板上(λ/4位相差板が積層された面の反対面上)に、更に、フォトクロミック化合物を含有する樹脂フィルムが積層されたOLED用偏光素子。
(II)二色性染料を含有する直線偏光板及びλ/4位相差板からなる円偏光板における直線偏光板上(λ/4位相差板が積層された面の反対面上)に、更に、配向した二色性を有するフォトクロミック化合物を含有する樹脂フィルムが、フォトクロミック化合物が着色したときの該樹脂フィルムの吸収軸と直線偏光板の吸収軸とが平行になるように積層されたOLED用偏光素子。
(III)上記二色性染料とフォトクロミック化合物の両者を含有する直線偏光板及びλ/4位相差板を有するOLED用偏光素子。
【0058】
偏光板に含まれる二色性染料の劣化を防ぐ観点からは、本発明のOLED用偏光素子において、前記フォトクロミック樹脂層が円偏光板の直線偏光板上(λ/4位相差板が積層された面の反対面上)に備えられていることが好ましい。フォトクロミック化合物を含有するフォトクロミック樹脂層を、該偏光板の外光が入射する側に設けることにより、該偏光板における透明保護膜に紫外線吸収剤を添加でき、該偏光板に含まれる二色性染料の偏光能が、紫外線によって劣化するのを防ぐことができるためである。
【0059】
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置(以下OLED表示装置とも云う)は、OLEDと本発明のOLED用偏光素子を有する。具体的には、OLED(有機EL素子)の発光面(画像表示面)と、本発明のOLED用偏光素子における位相差板側が向かい合うように、本発明のOLED用偏光素子を設けることにより本発明のOLED表示装置が得られる。以下に、本発明の有機EL表示装置の特徴を、図面を使って説明する。
本発明のOLED用偏光素子を具備する有機EL表示装置の構造の模式図の一例を
図1に示した。
図1において、1はフォトクロミック層を、2は直線偏光板を、3は位相差板(4分の1波長板)を、4はOLEDを、それぞれ示す。なお
図1では、光の吸収や反射等への関与が少ない必要に応じて設けられる光学層は省略されている。
【0060】
本発明の偏光素子によれば、強い紫外線を含む外光はフォトクロミック層及び円偏光板の両者を2回通過して、外光が遮断されるため、表示画面上に到達する光はわずかなものとなり、効率的に外光を遮断することができる。一方、OLEDから出射された光(表示光)は、円偏光板及びフォトクロミック層を一度通るのみで表示画面の到達するため、フォトクロミック層で遮断される量は外光に比して著しく少なく、表示画面上における、外光の反射光量に対する表示光量の比(コントラスト)を著しく高めることができる。
【0061】
一方、室内においては、紫外線量が少なく、フォトクロミック化合物は消色するため、室内における反射光を減ずる役割を果たさないが、円偏光板により室内反射光が遮断されるため、従来の円偏光板を用いたOLED表示装置を同様に、室内での視認性を確保するできる。
【0062】
本発明のフォトクロミック層付き円偏光板を備える有機EL表示装置は、任意の用途に使用されるが、特に、屋外で使用されることの多い用途、例えば、ノートパソコン、タブレット型パソコン、携帯電話及び携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、カーナビゲーションシステム用モニターなどに好ましく使用できる。