(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水性混合物におけるアルミナゾルの含有量が、水性混合物の総質量に対してα−アルミナ換算で5質量%以上30質量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子α−アルミナの製造法。
【背景技術】
【0002】
α−アルミナは研磨剤や切削工具に用いられる物質である。α−アルミナの製造方法としては、例えば、以下のものが知られている。
【0003】
アルミナゲルに極めて微細なα−アルミナを種晶として添加し、1400℃より低い温度で焼成して、1μmより微細な粒子を製造する方法(特許文献1)。
【0004】
水酸化アルミニウムをか焼して得たα−アルミナにステアリン酸を添加し、震動ミルポットで粉砕する。α−アルミナ焼成後に更に粉砕して、0.5μmのα−アルミナを得る製法(特許文献2)。
【0005】
三塩化アルミニウム蒸気と水素の混合気体と酸素含有ガスとを混合して燃焼させ、生成する微粉末を90℃以下で燃焼排ガスから分離する超微粒状酸化アルミニウムの製造方法(特許文献3)。
【0006】
アルミニウムアンモニウムカーボネイトハイドロオキサイドを1350℃以下の温度で常圧下又は減圧下で焼成して易焼結性アルミナ粉体を製造する方法(特許文献4)。
【0007】
アルミニウム化合物の粉末を炭素質物質で被覆して、非酸化性雰囲気で加熱焼成して、α−アルミナ化処理を施し、その後炭素質物質を酸化性雰囲気で燃焼、除去してα−アルミナを製造する方法(特許文献5)。
【0008】
アルミナを有機α−アルミナ含有懸濁液から電気泳動的に電極上に付着させ、この電極を取り出し、乾燥し、焼結する、サブミクロンの微結晶粉末の製造方法(特許文献6)。
【0009】
アルファ酸化アルミニウムゲルの分散体にアルファ酸化第二鉄を添加し、乾燥した固形物をか焼する研磨材粒子の製法(特許文献7)。
【0010】
塩化アルミニウム水溶液と炭酸アンモニウム水溶液とを混合して得られる水酸化アルミニウム水和物を回収後、微細なシリカ粉末を酸化アルミニウムに対して0.5から5質量%を加えて焼成することにより、微細なα−アルミナ粉末を得る方法(特許文献8)。
【0011】
ベーマイト粒子の周囲にバリヤを形成する物質をベーマイトのゲルに分散させ、乾燥、焼成するα−アルミナ粒子の製造法(特許文献9)。
【0012】
250℃以上の水性媒体及び無水アルミナ前駆体の混合物から得た無水アルミナ生成物を凝集して、平均粒径が約1μm以下のサブミクロン無水アルミナ粉末を得る方法(特許文献10)。
【0013】
焼成するとα−アルミナに転化するα−アルミナ前駆体のゾル又はゲルに1μmより小さいα−アルミナ粒子を種晶として添加して混合物を得、該混合物を900℃〜1350℃で処理するα−アルミナの製造法(特許文献11)。
【0014】
水酸化アルミニウムと微粒α−アルミナを混合し、ハロゲン化合物を添加して焼成する微粒α−アルミナの製造方法(特許文献12)。
【0015】
気相法で生成されたγ‐アルミナ超微粒子を1200℃〜1300℃でα−アルミナ相に転移するまで焼成するα−アルミナ超微粒子の製造方法(特許文献13)。
【0016】
α−アルミナ前駆体及び種晶粒子を含み、更に金属換算のアルミニウム成分1モル当り2.8モル以上3.3モル以下の硝酸イオンを含む水性化合物から水を除去し、得られた粉末混合物を焼成する微粒アルミナの製法(特許文献14)。
【0017】
アルミニウム加水分解物を種晶粒子と共にpH5以下の水素イオン濃度の水性媒体中で分散させて得た混合物を乾燥、焼成させる微粒アルミナの製法(特許文献15)。
【0018】
α−アルミナ前駆体及び種晶粒子を含み、硝酸イオン含有量がアルミニウム分1モル当り2.7モルの水性混合物から水分を除去し、得られた粉末混合物を焼成する方法(非特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の微粒子α−アルミナ製造法は、アルミナゾル及び種晶粒子を、テトラオールを含む水性媒体中に分散させて、水性混合物を得る工程であって、前記テトラオールの濃度が前記水性混合物の総質量に対して0.05質量%以上である工程、前記水性混合物のpHを0.1〜5.0に調製する工程、前記水性混合物を乾燥し、粉末混合物を得る工程、前記粉末混合物を950℃以上1200℃以下の温度で焼成する工程、前記焼成で得られた焼成品を粉砕して微粒子α−アルミナを得る工程、を含むものである。
【0034】
本発明の製造法に用いられるアルミナゾルは、α−アルミナ1水和物、例えばベーマイト、を解膠して得られる生成物である。具体的には、解膠剤を使用して、pH4以下の水溶液中で100℃以下の温度でα−アルミナ1水和物を解膠して得られるゾルである。アルミナゾル中のα−アルミナ1水和物濃度は、アルミナゾルの質量に対して2〜30質量%、好ましくは15〜20質量%である。解膠剤としては、通常、一価無機酸や一価有機酸を使用することができる。一価無機酸としては、硝酸や塩酸などが挙げられる。一価有機酸としては、蟻酸、酢酸やモノクロル酢酸などが挙げられる。解膠剤は、装置の腐食や環境汚染の問題が少ない酢酸が好ましい。解膠剤の使用量は、水性媒体のpHが0.5〜5.0の範囲に成るように調製されることが好ましい。好ましくはpH1.0〜4.5の範囲、更に好ましくは1.5〜4.0の範囲である。例えば、一価無機酸の使用量は、無機酸の酸根/α−アルミナ1水和物のモル比が、好ましくは0.005〜0.30となる量である。また、一価有機酸の使用量は、有機酸の酸根/α−アルミナ1水和物のモル比が、好ましくは0.01〜0.80となる量である。
水性混合物におけるアルミナゾルの含有量は、水性混合物の総質量に対してα−アルミナ換算で5質量%以上であれば生産効率が上がり、30質量%以下であれば水性混合物の粘度が高くなりすぎずに取扱が容易であることから、水性混合物の総質量に対してα−アルミナ換算で5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、更に10質量%以上18質量%以下であることが好ましい。
【0035】
また、下記の公知のα−アルミナゾルも本発明に使用することができる
【0036】
B.E.Yoldas,Amer.Ceram.Soc.Bull.54,289(1975)に記載されている、アルミニウムイソプロポキシドを加水分解し、酸を添加して解膠するアルミナゾル。
【0037】
特公昭39−20150号公報に記載されている、稀薄な塩酸や酢酸などの水溶液と金属アルミニウム粉末とを加熱下で反応させて得られる擬ベーマイトゾル。
【0038】
特公昭40−14292号公報に記載されている、アルミナゲルの水性スラリーに酸/アルミニウムモル比量が0.5〜2.4の酸を加えて水熱処理して得られる擬ベーマイトゾル。
【0039】
特開昭54−116398号公報、特開昭55−23034号公報及び特開昭55−27824号公報に記載されている、塩基性アルミニウム塩に酸やアルカリを反応させることにより、或いは酸性アルミニウム塩にアルカリを反応させることにより得られるアルミナゲルを酸で解膠することにより得られるアルミナゾル。
【0040】
特開昭57−88074号公報に記載されている、アルミニウムアルコキシドを加水分解して得たアルミナ1水和物を解膠して得たアルミナゾル。
【0041】
特開昭59−78925号公報に記載されている、金属アルミニウムを酢酸の存在下で加水分解して得られたアルミナゾル。
【0042】
特開昭62−56321号公報に記載されている、アルミニウムアルコキシドを稀酢酸水溶液中で加水分解して得られたベーマイトに硝酸の解膠剤を加えて解膠したアルミナゾル。
【0043】
特開昭57−77026号公報に記載されている、塩化アルミニウム水溶液と炭酸ソーダ水溶液の中和で得た水酸化アルミニウムゲルを酸の存在下で処理して得られたアルミナゾル。
【0044】
特開平4−275917号公報に記載されている、アルミニウムアルコキシドを有機酸または無機酸で解膠して得られるアルミナゾル。
【0045】
本発明の製造法に用いられるテトラオールはヒドロキシ基を4つ有するアルコールである。具体例としては、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エーテル、1,2,7,8−オクタンテトラオール等がある。本発明に用いるのに好ましいテトラオールはジグリセリン及びペンタエリスリトールである。テトラオールは公知物質であり、市場において容易に入手することができるか、又は、調製可能である。上記のテトラオールは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。テトラオールの濃度は、水性混合物の総質量に対して0.05質量%以上である。上限は特にないが、8.0質量%あれば十分である。テトラオールの濃度はより好ましくは0.1〜5.0質量%、更に好ましくは0.5〜3.0質量%である。テトラオール使用量が0.05質量%以上であれば、十分なアルミナゾル及びアルミナ粒子間の凝集抑制効果が得られる。
【0046】
本発明においてテトラオールは、アルミナ焼成で発生するα−アルミナ粒子の凝集抑制に寄与していると考えられる。その作用機構は、次のように推察される。テトラオールは、アルミナゾルのアルミナ粒子の周囲に配位し、非常に薄い膜を形成し、該膜は、水性混合物から粉末混合物を得る工程、及び粉末混合物の焼成工程で、アルミナ粒子が粒子境界面に沿って移動することを抑制し、よって、アルミナ粒子がα相に転移する時の凝集の形成を防止、または少なくとも実質的に抑制するものと推察される。
【0047】
上記のテトラオールの作用により、水性混合物の焼成品は、結合が比較的緩い凝集物を形成している。従って、焼成品は、手動粉砕で容易に微粒子化が可能である。
【0048】
本発明の製造法に用いられる種晶粒子は、結晶構造がコランダム型の金属酸化物である。具体例としては、結晶水のないα−アルミナ、α−酸化鉄、α−酸化クロムが挙げられる。得られる微粒子α−アルミナと同じ金属成分であるα−アルミナが好ましい。かかる種晶粒子の粒子径は、微粒子α−アルミナを得るには、α−アルミナ結晶成長の核となる種晶粒子も小さい方が望ましく、0.01μm以上0.2μm以下であることが好ましく、更に0.01μm以上0.1μm以下であることが好ましい。種晶粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定できる。種晶粒子の使用量は、アルミナゾル100質量部につき好ましくは1質量部〜20質量部、より好ましくは5質量部〜15質量部、更に好ましくは7質量部〜13質量部である。
【0049】
本発明に使用されるアルミナ種晶の結晶型は、α相であるα−アルミナである。かかるα−アルミナ種晶は、通常のα−アルミナの粉末を湿式粉砕、或いは乾式粉砕することにより得られる。より好ましくは、湿式粉砕である。
【0050】
湿式粉砕により種晶を得るには、α−アルミナ粉末を水性溶媒と混合してスラリーとし、ボールミル等の粉砕装置を使用して粉砕する。水性溶媒としては、純水、イオン交換水や水道水を使用することができ、用途により適宜選択をすることが出来る。水性溶媒の使用量は、通常、α−アルミナ粉末100質量部に対して100質量部〜1000質量部である。
【0051】
湿式粉砕後に粉砕物を遠心分離処理することにより、種晶α−アルミナ粒子と水性溶媒を分離することができる。種晶α−アルミナ粒子と溶媒との分離には、その他にカートリッジセパレーターのフィルターを使用することもできる。好ましくは遠心分離方式である。
【0052】
本発明のアルミナゾルを原料とする微粒子α−アルミナの製造方法で、種晶粒子の作用について、α−アルミナの種晶を例に挙げてその作用機構を説明する。種晶α−アルミナ粒子は、アルミナの焼成過程におけるθ相→α相への遷移で、転移の核として作用する。該核は、動力学的に転移速度を増加させ、転移温度を下げる。転移温度の低下はα−アルミナの結晶成長を抑制する効果をもたらす。
【0053】
α−アルミナの種晶粒子を使用するとα−アルミナの種晶粒子を使用しない場合と比較し、転移温度を約170℃下げられる。アルミナゾルを原料とするα−アルミナの転移温度は、1150℃〜1250℃である。従って、α−アルミナの種晶粒子の共存下で焼成した場合にα−アルミナの転移温度は、980℃〜1080℃となる(J.Am.Ceram.Soc.,68〔9〕500−505(1985))。
【0054】
本発明のアルミナゾルを原料とする微粒子α−アルミナの製造方法では、テトラオールによるα−アルミナ粒子間の凝集抑制効果と、α−アルミナの種晶粒子の使用によるアルミナのα相への転移温度低下によりα−アルミナの結晶成長が抑制される効果との相乗効果により、微粒子α−アルミナを容易に得ることができる。
【0055】
本発明に使用される水性媒体は、水を主成分とするものである。具体例としては、超純水、純水、水道水、井戸水、などがあり、好ましくは、超純水または純水である。
【0056】
本発明の水性混合物におけるアルミナゾル及び種晶粒子の分散は、それらが水性混合物中に均一に拡散、混合された状態をもたらすあらゆる手段を用いることができる。例えば、モーター攪拌、ホモミキサー、超音波による分散がある。
【0057】
本発明の水性混合物の水素イオン濃度は、pH0.1〜5.0の範囲である。好ましくはpH1.0〜4.0、更に好ましくはpH1.5〜3.5である。pH0.1以上であると、装置の腐食の問題を回避できる。pH5.0以下であると、α−アルミナ粒子の凝集を抑えることができる。pH調整には、酢酸、硝酸、塩酸、蟻酸又はモノクロル酢酸などを用いることができ、好ましくは酢酸、硝酸又は塩酸が用いられる。
【0058】
[水性混合物の乾燥]
本発明の微粒子α−アルミナの製造法では、水性混合物から水性媒体を留去させることにより、アルミナゾル、種晶α−アルミナ粒子、テトラオールを含む粉末混合物を得る。水性溶媒の留去温度は、70℃以上100℃以下が好ましい。乾燥工程では、例えば、恒温乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、高周波乾燥などの通常の方法を用いることができる。具体的な乾燥機器には、棚段乾燥機、スプレードライヤーやスラリードライヤー等が挙げられる。
【0059】
〔粉末混合物の焼成〕
本発明の微粒子α−アルミナの製造方法による水性混合物の粉末品の焼成温度は、950℃〜1200℃、好ましくは1000℃〜1150℃である。950℃以上であると、微粒子α−アルミナのα化率を高くすることができ、1200℃以下であると、α−アルミナ同子のネッキングを抑えることができる。焼成温度に達するまでの昇温速度は、アルミナゾルがα−アルミナに転移するのに十分な時間があればいくらでも良い。焼成時間は、種晶α−アルミナの粒子径、種晶α−アルミナ/アルミナゾルの比率、焼成炉の種類及び形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10時間〜12時間である。焼成雰囲気は、大気中及び窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中でも良い。通常は、大気中で実施される。
【0060】
水性混合物の焼成には、材料静置型焼成炉(回分式通気流型、回分式並行流型、箱型焼成炉)、トンネルキルン、ロータリーキルン、管状電気炉、遠赤外炉、マイクロ波加熱炉や反射炉などを用いることができる。
【0061】
水性混合物の焼成法としては、回分式焼成法、連続式焼成法、静置式焼成法、流動式焼成法のいずれの焼成法も使用することができる。
【0062】
〔水性混合物の焼成品の粉砕〕
水性混合物の焼成品は、凝集物の結合が緩く、例えば、磁製乳鉢による手粉砕で容易に微粒子α−アルミナを得ることが可能である。従って、ジェットミル、振動ミルによる粉砕で微粒子α−アルミナとなる。
【0063】
α−アルミナのα化率とは、α-アルミナになっているアルミナの割合を示すものである。本明細書においては、「高α化率」とは、α化率80%以上であることをいう。α−アルミナのα化率は、X線回折装置(例えば、理学電気株式会社製X線回折装置MINIFLEX)を用いて得た微粒子α−アルミナの回折スペクトルから2θ=25.6°の位置に現れるα−アルミナα相(012面)のピーク高さI
25.6と2θ=46°の位置に現れるγ相、η相、χ相、κ相、θ相及びδ相のピーク高さI
46とから(式1)により算出することができる。
α化率=I
25.6/(I
25.6+I
46)×100 (式1)
【0064】
本明細書においては、平均粒子径とは、質量基準で求めた累積百分率50%相当粒子径[D
50]を意味する。
【0065】
粒度分布とは、粒子径のばらつきのことである。
【0066】
α−アルミナの平均粒子径及び粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、日機(株)製、「Microtrac HRA(X‐100))により、質量基準で求めた累積百分率10%相当粒子径[D
10]、質量基準で求めた累積百分率50%相当粒子径[D
50]、質量基準で求めた累積百分率90%相当粒子径[D
90]として求めることができる。
【0067】
本発明の方法により製造された微粒子α−アルミナは、研磨剤、切削工具、半導体製造用装置部品、電子部品(酸素センサー等)、透光管(ナトリウムランプ、メタルハライドランプ等)、セラミックフィルター(食品濾過用等)、ガス選択透過フィルター、化粧品用添加剤、触媒担体、導電性焼結体、内燃機関の点火栓碍子、耐摩耗性磁器として用いることもできる。
【0068】
以下、本発明の微粒子α−アルミナの製造方法について実施例を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定される訳でなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の態様に実施できることは、云うまでもない。
【実施例】
【0069】
〔α−アルミナの平均粒子径及び粒度分布測定の試料調製〕
α−アルミナの平均粒子径及び粒度分布の測定のため、α−アルミナ粉末を蒸留水で稀釈して1%濃度(質量)とした後、超音波工業株式会社 ULTRASONIC CLEANERRC20Dで3分間処理し、均一に分散した水溶液を調製した。
〔α−アルミナの平均粒子径及び粒度分布の測定〕
α−アルミナの平均粒子径及び粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装(株)製、「Microtrac HRA(X‐100))により質量基準で求めた累積百分率10%相当粒子径[D
10]、質量基準で求めた累積百分率50%相当粒子径[D
50]、質量基準で求めた累積百分率90%相当粒子径[D
90]として求めた。
〔結晶系α相への転移比率〕
本発明の微粒子α−アルミナのα化率は、理学電気株式会社製X線回折装置MINIFLEXを用いて得た微粒子α−アルミナの回折スペクトルから2θ=25.6°の位置に現れるα−アルミナα相(012面)のピーク高さI
25.6と2θ=46°の位置に現れるγ相、η相、χ相、κ相、θ相及びδ相のピーク高さI
46とから(式1)により算出した。
α化率=I
25.6/(I
25.6+I
46)×100 (式1)
〔嵩比重〕
JIS−Z−9301に準じて、測定した。
【0070】
(調製例1)
〔アルミナゾルの調製〕
攪拌機(新東科学(株)製スリーワンモーター、回転数:650r.p.m)、温度計、還流冷却管を備えた2Lビーカーに純水850g、酢酸15g(キシダ化学(株)製、試薬特級)を入れ、攪拌、混合した。該水溶液にベーマイト(Condea(株)製SB Pural)150gを1.5時間かけて、連続的に投入した。更に、熟成を1時間、実施した。反応温度は、25℃〜27℃であった。その後、反応マスを5時間、静置した。傾斜法で未反応のベーマイト3gを分別し、アルミナゾル950g(濃度:14.7%)を得た。
【0071】
(調製例2)
〔アルミナゾル粉末の調製〕
アルミナゾルの調製例1で得られたアルミナゾル950gをアルミニウムトレイ(厚み:約2.5cm)に入れ、ヤマト科学(株)製定温乾燥機 型式DX402を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末を約140g得た。
【0072】
(調製例3)
〔種晶α−アルミナ粒子の調製〕
市販のα−アルミナ粉末[大明化学工業(株)製タイミクロン“TM‐D]20質量部を純水80質量部と混合し、アルミナビーズ(ビーズ径0.50mm)100質量を充填したボールミルで30時間、粉砕した。得られた粉砕混合物を静置し、上澄液80質量部を得た。その濃度は、2.0%で、平均粒子径は、100nmであった。エバポレーター(東京理化機械(株)製 型式SB‐1100)で濃縮し、濃度30%に調製した。
【0073】
(実施例1)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α−アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)14g、純水3gを入れ均一に攪拌、混合し、酢酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をアルミニウムトレイ(厚み:約2.5cm)に入れ、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機 型式DX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末149gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝にいれ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK‐3N)で、室温〜1150℃で8時間、1150℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁製乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は97%、平均粒子径は260nmであった。
【0074】
(実施例2)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例2で得たアルミナゾル粉末140g、調製例3で得た種晶α−アルミナ粒子混合液47g(濃度:30%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)20g、純水793gを入れ均一に攪拌、混合し、硝酸でpH2.9に調製した。得られた混合物をアルミニウムトレイ(厚み:約2.5cm)に入れ、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機 型式DX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末153gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝にいれ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK‐3N)で、室温〜1150℃で8時間、1150℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁製乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は96%、平均粒子径は232nmであった。
【0075】
(実施例3)
ジグリセリンの使用量を5gへ、種晶α−アルミナ粒子混合液の使用量を30gへ、純水の使用量を15gへ、pHを3.2へ変えたことを除き、実施例1と同じ手順により微粒子α−アルミナを得た。得られたアルミナのα化率は96%、平均粒子径は275nmであった。
【0076】
(実施例4)
調製例2のアルミナゾル粉末を140g使用し、ジグリセリンの使用量を30gへ、種晶α−アルミナ粒子混合液の使用量を60gへ、純水の使用量を770gへ、pHを3.2へ変えたことを除き、実施例1と同じ手順により微粒子α−アルミナを得た。得られたアルミナのα化率は96%、平均粒子径は220nmであった。
【0077】
(実施例5)
ジグリセリンの使用量を25gへ、種晶α−アルミナ粒子混合液の使用量を23gへ、純水の使用量を2gへ、pHを3.1へ変えたことを除き、実施例1と同じ手順により微粒子α−アルミナを得た。得られたアルミナのα化率は95%、平均粒子径は300nmであった。
【0078】
(実施例6)
アルミナゾルの使用量を900gへ、ジグリセリンの使用量を45gへ、種晶α−アルミナ粒子混合液の使用量を10gへ、純水の使用量を45gへ、pHを3.4へ変えたことを除き、実施例1と同じ手順により微粒子α−アルミナを得た。得られたアルミナのα化率は93%、平均粒子径は430nmであった。
【0079】
(実施例7)
アルミナゾルの使用量を900gへ、ジグリセリンの使用量を70gへ、種晶α−アルミナ粒子混合液の使用量を15gへ、純水の使用量を15gへ、pHを3.3へ変えたことを除き、実施例1と同じ手順により微粒子α−アルミナを得た。得られたアルミナのα化率は94%、平均粒子径は370nmであった。
【0080】
(実施例8)
アルミナゾルの使用量を900gへ、ジグリセリンの使用量を10gへ、種晶α−アルミナ粒子混合液の使用量を57gへ、純水の使用量を33gへ、pHを3.5へ変えたことを除き、実施例1と同じ手順により微粒子α−アルミナを得た。得られたアルミナのα化率は93%、平均粒子径は230nmであった。
【0081】
(実施例9)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α-アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ペンタエリスリトール(キシダ化学(株)試験研究用)14g、純水3gを均一に攪拌、混合し、硝酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をステンレストレイに入れ(厚み約2.5cmに調製)、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機型式DX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末152gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で、室温〜1150℃で8時間、1150℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁製乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は95%、平均粒子径は275nmであった。
【0082】
(実施例10)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α-アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ペンタエリスリトール(キシダ化学(株)試験研究用)14g、純水3gを均一に攪拌、混合し、酢酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をステンレストレイに入れ(厚み約2.5cmに調製)、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機型式DX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末150gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で、室温〜1150℃で8時間、1150℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁製乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は95%、平均粒子径は290nmであった。
【0083】
(実施例11)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α-アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)14g、純水3gを均一に攪拌、混合し、硝酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をステンレストレイに入れ(厚み約2.5cmに調製)、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機型式DX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末149gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で室温〜1050℃で8時間、1050℃で1.5時間焼成した。アルミナ焼成物を磁製乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は98%、平均粒子径は225nmであった。
【0084】
(実施例12)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α‐アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)14g、純水3gを入れ均一に攪拌、混合し、酢酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をアルミニウムトレイ(厚み:約2.5cm)に入れ、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機 型式SX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末149gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で、室温〜1200℃で8時間、1200℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁性乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は98%、平均粒子径は295nmであった。
【0085】
(実施例13)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α‐アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)14g、純水3gを入れ均一に攪拌、混合し、酢酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をアルミニウムトレイ(厚み:約2.5cm)に入れ、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機 型式SX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末149gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で、室温〜1000℃で8時間、1000℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁性乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は85%、平均粒子径は252nmであった。
【0086】
(実施例14)
2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α-アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)14g、純水3gを均一に攪拌、混合し、硝酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をステンレストレイに入れ(厚み約2.5cmに調製)、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機型式DX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末149gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で室温〜950℃で8時間、950℃で1.5時間焼成した。アルミナ焼成物を磁製乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は89%、平均粒子径は205nmであった。
【0087】
(比較例1)
ジグリセリンを除き、実施例1に準じ、実施した。得られたアルミナのα化率は93%、平均粒子径は479nmであった。
【0088】
(比較例2)
種晶粒子を使用しない場合の効果を調べるため、2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)14g、純水36gを均一に攪拌、混合し、硝酸でpH2.9に調製した。得られた混合物をステンレストレイに入れ(厚み約2.5cmに調製)、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機型式DX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末149gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で、室温〜1150℃で8時間、1150℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁性乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は65%、平均粒子径は723nmであった。
【0089】
(比較例3)
テトラオールを使用しない場合の効果を調べるため、2Lのポリエチレン製ビーカーに調整例1で得たアルミナゾル900g(濃度:14.7%)、調整例3で得た種晶α−アルミナ粒子混合液50.0g(濃度:30%)、純水50gを均一に撹拌、混合し、塩酸でpH2.9に調整した。得られた混合物をステンレストレイに入れ(厚み約2.5cmに調整)、アルミナゾル143gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で、室温から950℃まで8時間かけて昇温し、950℃で3時間焼成した。得られたアルミナ焼成物を磁性乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は67%、平均粒子径は1590nmであった。
【0090】
(比較例4)
焼成温度を950℃未満とした場合の効果を調べるため、比較例2で、焼成条件を室温〜700℃で8時間、700℃で8時間へ変えたことを除き、比較例2と同じ手順により実施した。得られたアルミナのα化率は0%、平均粒子径は175nmであった。
【0091】
(比較例5)
焼成温度を950℃未満とした場合の効果を調べるため、2Lのポリエチレン製ビーカーに調製例1で得たアルミナゾル950g(濃度:14.7%)、調製例3で得た種晶α‐アルミナ粒子混合液32.7g(濃度:30%)、ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)14g、純水3gを入れ均一に攪拌、混合し、酢酸でpH3.0に調製した。得られた混合物をアルミニウムトレイ(厚み:約2.5cm)に入れ、乾燥機(ヤマト科学(株)製定温乾燥機 型式SX402)を使用し、95℃で乾燥し、アルミナゾル粉末149gを得た。アルミナゾル乾燥物を坩堝に入れ、電気炉((株)共栄電気炉製作所 型式TK−3N)で、室温〜900℃で8時間、900℃で3時間焼成した。アルミナ焼成物を磁性乳鉢で粉砕した。得られたアルミナのα化率は30%、平均粒子径は205nmであった。
【0092】
実施例及び比較例で得られたアルミナのα化率、粒子径、及び嵩比重の測定結果を表5にまとめた。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0093】
表5の実施例と比較例の測定結果から明らかなように、本発明のアルミナゾル、種晶粒子、テトラオールを含む水性混合物から得られた焼成品は、比較例のα−アルミナゾルから得られた焼成品と比較すると、高α化率であり、平均粒子径は小さく、粒度分布も狭く、かつ嵩比重も大きいものとなっている。