(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)が、ナフタレン変性エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノールA型エポキシ樹脂よりなる群から選択される1種以上である
請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記リン含有シアン酸エステル化合物(B)以外のシアン酸エステル化合物(E)が、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物及びナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物よりなる群から選択される1種以上である
請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記シート基材が、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリピロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレートを含有するフィルム、アルミ箔及び銅箔よりなる群から選択される1種以上である
請求項17に記載の積層シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、従来、樹脂組成物に窒素含有化合物やリン含有化合物を配合することで、ハロゲン系化合物を使用しなくても難燃性を高めることは可能であった。しかしながら、高い難燃性を有するのみならず、耐熱性、銅箔とのピール強度、熱膨張率、吸湿耐熱性、低誘電率・低誘電正接等の電気特性においても高次元でバランスしたものは得られていない。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、高い難燃性を有するのみならず、耐熱性、銅箔とのピール強度、熱膨張率、吸湿耐熱性及び電気特性にも優れるプリント配線板を実現し得る樹脂組成物、これを用いたプリプレグ及び単層或いは積層シート、並びに前記プリプレグを用いた金属箔張り積層板やプリント配線板等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の数平均分子量を有するポリフェニレンエーテル、特定のリン含有シアン酸エステル化合物、シクロホスファゼン化合物、非ハロゲン系エポキシ樹脂、前記リン含有シアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物、スチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー、並びに充填材を含有する樹脂組成物を使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下<1>〜<19>を提供する。
<1> 数平均分子量が500〜5000のポリフェニレンエーテル(A)、下記式(13):
【化1】
(式中、mは、1〜3の整数を表す。)
で表されるリン含有シアン酸エステル化合物(B)、シクロホスファゼン化合物(C)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)、前記リン含有シアン酸エステル化合物(B)以外のシアン酸エステル化合物(E)、スチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー(F)、並びに充填材(G)を含有し、前記リン含有シアン酸エステル化合物(B)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し1〜10質量部である樹脂組成物。
<2> 前記シクロホスファゼン化合物(C)が、下記式(14):
【化2】
(式中、nは、3〜6の整数を表す。)
で表されるものである上記<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記シクロホスファゼン化合物(C)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し10〜25質量部である上記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記ポリフェニレンエーテル(A)が、下記一般式(4):
【化3】
(式(4)中、−(O−X−O)−は、下記一般式(5)又は(6):
【化4】
(式中、R
21,R
22,R
23,R
27及びR
28は、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、R
24,R
25及びR
26は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよい。)
【化5】
(式中、R
29,R
30,R
31,R
32,R
33,R
34,R
35及びR
36は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
で表される構造からなり、−(Y−O)−は、下記一般式(7):
【化6】
(式中、R
39及びR
40は、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、R
37及びR
38は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよい。)
で表される構造からなり、1種類の構造又は2種類以上の構造がランダムに配列している。a及びbは、それぞれ独立して、0〜100の整数を表し、少なくともいずれか一方は0ではない。)
で表されるものである上記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<5> 前記ポリフェニレンエーテル(A)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し40〜80質量部である上記<1>〜<4>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<6> 前記非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)が、ナフタレン変性エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノールA型エポキシ樹脂よりなる群から選択される1種以上である上記<1>〜<5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<7> 前記非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し3〜20質量部である上記<1>〜<6>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<8> 前記リン含有シアン酸エステル化合物(B)以外のシアン酸エステル化合物(E)が、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物及びナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物よりなる群から選択される1種以上である上記<1>〜<7>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<9> 前記リン含有シアン酸エステル化合物(B)以外のシアン酸エステル化合物(E)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し5〜30質量部である上記<1>〜<8>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<10> 前記スチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー(F)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し0.1〜5質量部である上記<1>〜<9>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<11> 前記スチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー(F)が、200〜1000の数平均分子量を有する上記<1>〜<10>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<12> 前記充填材(G)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し20〜150質量部である上記<1>〜<11>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<13> 前記充填材(G)が、シリカである上記<1>〜<12>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0010】
<14> 上記<1>〜<13>のいずれか一項に記載の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布してなるプリプレグ。
<15> 上記<14>に記載のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形してなる金属箔張り積層板。
<16> 上記<1>〜<13>のいずれか一項に記載の樹脂組成物をシート状に成形してなる単層シート。
<17> 上記<1>〜<13>のいずれか一項に記載の樹脂組成物をシート基材の表面に塗工及び乾燥させてなる積層シート。
<18> 前記シート基材が、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリピロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレートを含有するフィルム、アルミ箔及び銅箔よりなる群から選択される1種以上である上記<17>に記載の積層シート。
<19> 絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、上記<1>〜<13>のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難燃性のみならず、耐熱性、銅箔とのピール強度、熱膨張率、吸湿耐熱性及び電気特性にも優れる、プリプレグ、単層或いは積層シート、金属箔張り積層板等を実現することができ、高性能なプリント配線板を実現することができる。また、本発明の好適な態様によれば、非ハロゲン系化合物のみからなる樹脂組成物(換言すれば、ハロゲン系化合物を含まない樹脂組成物、非ハロゲン系樹脂組成物)、プリプレグ、単層或いは積層シート、金属箔張り積層板等を実現することもでき、その工業的な実用性は極めて高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物は、数平均分子量が500〜5000のポリフェニレンエーテル(A)、下記式(13)で表されるリン含有シアン酸エステル化合物(B)、シクロホスファゼン化合物(C)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)、前記リン含有シアン酸エステル化合物(B)以外のシアン酸エステル化合物(E)、スチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー(F)、並びに充填材(G)を含有し、前記リン含有シアン酸エステル化合物(B)の含有量が、前記(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し1〜10質量部である樹脂組成物である。
【0014】
【化7】
(式中、mは、1〜3の整数を表す。)
【0015】
本実施形態の樹脂組成物において用いられるポリフェニレンエーテル(A)は、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されないが、下記一般式(1):
【化8】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、炭素数6以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子又は水素原子であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよい。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含む重合体であることが好ましい。該重合体は、下記一般式(2):
【化9】
(式中、R
5,R
6,R
7,R
11及びR
12は、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、R
8,R
9及びR
10は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよい。)
で表される繰り返し単位、及び/又は、下記一般式(3):
【化10】
(式中、R
13,R
14,R
15,R
16,R
17,R
18,R
19及びR
20は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
で表される繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0016】
ポリフェニレンエーテル(A)は、その一部又は全部が、ビニルベンジル基等のエチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、及びシリル基等で官能基化されたもの、すなわち、変性ポリフェニレンエーテルであってもよい。
【0017】
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、特に限定されず、常法にしたがって行うことができる。例えば、ビニルベンジル基で官能基化されたものは、2官能フェニレンエーテルオリゴマーとビニルベンジルクロライドを溶剤に溶解させ、加熱攪拌下で塩基を添加して反応させることによって製造することができる。また、カルボキシル基で官能基化されたものは、例えばラジカル開始剤の存在下又は非存在下において、ポリフェニレンエーテルに不飽和カルボン酸やその誘導体を溶融混練し、反応させることによって製造することができる。或いは、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸やその誘導体とをラジカル開始剤存在下又は非存在下で有機溶剤に溶かし、溶液下で反応させることによって製造することもできる。
【0018】
これらのなかでも、ポリフェニレンエーテル(A)は、両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテルを含むものが好ましい。ここで、エチレン性不飽和基としては、これらに特に限定されないが、例えば、エテニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ビニルベンジル基及びビニルナフチル基等のアルケニルアリール基等が挙げられ、これらのなかでも、ビニルベンジル基が好ましい。なお、上述したポリフェニレンエーテルは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、両末端の2つのエチレン性不飽和基は、同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。
【0019】
とりわけ、本実施形態において用いられるポリフェニレンエーテル(A)は、下記一般式(4):
【化11】
(式(4)中、−(O−X−O)−は、下記一般式(5)又は(6):
【化12】
(式中、R
21,R
22,R
23,R
27及びR
28は、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、R
24,R
25及びR
26は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよい。)
【化13】
(式中、R
29,R
30,R
31,R
32,R
33,R
34,R
35及びR
36は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
で表される構造からなり、−(Y−O)−は、下記一般式(7):
【化14】
(式中、R
39及びR
40は、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、R
37及びR
38は、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよい。)
で表される構造からなり、1種類の構造又は2種類以上の構造がランダムに配列している。a及びbは、それぞれ独立して、0〜100の整数を表し、少なくともいずれか一方は1以上の整数である。)
で表される変性ポリフェニレンエーテルを含むものがより好ましい。
【0020】
ここで、炭素数6以下のアルキル基とは、炭素数が1〜6個の直鎖状または分枝状のアルキル基を意味し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、アリール基とは、炭素数が6〜14個の単環性環式基、または二環性もしくは三環性環式基等の縮合環式基を意味し、その具体例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、シクロペンタシクロオクテニル基、またはベンゾシクロオクテニル基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。さらに、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(3)及び(6)における−A−としては、例えば、メチレン、エチリデン、1−メチルエチリデン、1,1−プロピリデン、1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)、1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1−フェニルエチリデン等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
上記一般式(4)で表されるポリフェニレンエーテルのなかでは、R
21,R
22,R
23,R
27,R
28,R
39及びR
40が炭素数3以下のアルキル基であり、R
24,R
25,R
26,R
29,R
30,R
31,R
32,R
33,R
34,R
35,R
36,R
37及びR
38が水素原子又は炭素数3以下のアルキル基であるポリフェニレンエーテルがより好ましい。とりわけ、上記一般式(5)又は(6)で表される構造中の−(O−X−O)−が、下記式(8)、下記一般式(9)又は(10)であり、上記一般式(7)で表される構造中の−(Y−O)−が、下記式(11)又は(12)であるか、或いは、下記式(11)と下記式(12)とがランダムに配列したものであるポリフェニレンエーテルが特に好ましい。
【0023】
【化15】
【化16】
(式中、R
31,R
32,R
33及びR
34は、水素原子又はメチル基であり、これらは互いに同一又は異なっていてもよく、−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である)
【化17】
(式中、−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である)
【化18】
【化19】
【0024】
上記一般式(4)で表される変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化することで製造することができる。
【0025】
ポリフェニレンエーテル(A)の数平均分子量は、取扱性の観点から、GPC法によるポリスチレン換算で500〜5000の範囲であり、1000〜2500の範囲がより好ましい。数平均分子量が500以上であることにより、塗膜状にした際にべたつき難く、また、5000以下であることにより、溶剤への溶解性の低下を防止することができる。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、所望する性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、上述した(A)〜(F)成分100質量部に対し、40〜80重量部が好ましく、電気特性や難燃性、ピール強度の観点から、45〜75質量部がより好ましく、50〜70質量部が特に好ましい。なお、ポリフェニレンエーテル(A)は本実施形態の樹脂組成物の主成分であることが好ましい。一般に、ポリフェニレンエーテルは難燃性が低い傾向にあるため、上述した作用効果の技術的意義は、本実施形態の樹脂組成物の主成分がポリフェニレンエーテル(A)である態様に格別顕著となる。ここで、主成分とは、上述した(A)〜(F)成分のなかで最も質量割合の大きなものを意味する。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物において用いられるリン含有シアン酸エステル化合物(B)は、下記式(13)で表されるものである。このようにリン原子及びシアナト基を有するリン含有シアン酸エステル化合物(B)を用いることで、得られるプリント配線板用材料の難燃性及び樹脂耐熱性を向上させることができる。下記式(13)で表されるリン含有シアン酸エステル化合物(B)の市販品としては、例えばLonza社製の商品FR−300が挙げられる。
【0028】
【化20】
(式中、mは、1〜3の整数を表す。)
【0029】
本実施形態の樹脂組成物における上記式(13)で表されるリン含有シアン酸エステル化合物(B)の含有量は、耐熱性、難燃性及び電気特性の観点から、上述した(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し1〜10質量部であることが必要とされる。リン含有シアン酸エステル化合物(B)の含有量は、2〜8質量部であることが好ましい。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物において用いられるシクロホスファゼン化合物(C)としては、リンと窒素とが二重結合で交互に結合した環状構造を有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。そのなかでも、例えば、下記式(14)で表される化合物が、難燃性を向上させることができる観点から好ましい。このようなシクロホスファゼン化合物(C)は、市販品として容易に入手することが可能である。市販品としては、例えばFP−100((株)伏見製薬所)、SPS−100、SPB−100、SPE−100(大塚化学(株))等が挙げられる。
【0031】
【化21】
(式中、nは、3〜6の整数を表す。)
【0032】
本実施形態の樹脂組成物におけるシクロホスファゼン化合物(C)の含有量は、所望する性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、上述した(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し、10〜25質量部であることが好ましく、耐熱性、難燃性及び電気特性の観点から、15〜20質量部であることが特に好ましい。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物において用いられる非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、ハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物などが挙げられる。これらの非ハロゲン系エポキシ樹脂のなかでは、ナフタレン骨格変性したノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が耐熱性の面で好ましい。これらの非ハロゲン系エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物における非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)の含有量は、所望する性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、上述した(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し、3〜20質量部であることが好ましく、耐熱性、難燃性及び電気特性の観点から、5〜15質量部であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物において用いられるシアン酸エステル化合物(E)としては、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物であり、かつ式上記(13)で表されるリン含有シアン酸エステル化合物(B)以外のものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物及びそのプレポリマー、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物及びそのプレポリマー、1,3−又は1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、ビス(4−ジシアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、並びにノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアン酸エステル化合物などが挙げられる。これらのなかで、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物及びそのプレポリマーやナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物及びそのプレポリマーが、耐熱性の面で特に好ましい。これらのシアン酸エステル化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物(E)の含有量は、所望する性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、上述した(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し、5〜30質量部であることが好ましく、電気特性や難燃性の観点から、7〜20質量部であることがより好ましい。また、電気特性、ピール強度及び難燃性の観点から、前記非ハロゲン系エポキシ樹脂(D)が有するエポキシ基に対する前記シアン酸エステル化合物(E)が有するシアナト基の当量比が2〜8であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物において用いられるスチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー(F)は、架橋構造を有するポリスチレンの重合体、又はスチレンと他の芳香族ビニル化合物との共重合体である。ここで芳香族ビニル化合物としては、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、クロルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのスチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、スチレンオリゴマーの製法としては、例えば、ジビニル化合物との共重合、過酸化物の併用や放射線処理等が挙げられるが、これらに特に限定されず、公知の手法を適宜用いることができる。例えばスチレンモノマーとジビニルベンゼンを使用し、重合触媒下で懸濁重合、又は溶液重合などさせることにより製造することもできる。
【0038】
上記スチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー(F)の数平均分子量は、所望する性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、耐熱性の向上及び溶剤への溶解性の観点から、GPC法によるポリスチレン換算で200〜1000であることが好ましく、300〜800であることがより好ましい。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物におけるスチレン及び/又は置換スチレンのオリゴマー(F)の含有量は、所望する性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、上述した(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、電気特性の観点から、0.5〜4質量部であることがより好ましい。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物において用いられる充填材(G)は、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。積層板用途において一般に使用されているものを好適に用いることができる。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化モリブデンやモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E−ガラス、A−ガラス、NE−ガラス、C−ガラス、L−ガラス、D−ガラス、S−ガラス、M−ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなど無機系の充填材の他、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型などのゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダーなど有機系の充填材などが挙げられる。これらのなかでも、シリカ類、タルクが好ましく、電気特性の観点から、シリカ類が特に好ましい。これらの充填材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物の充填材(G)の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、分散性、成形時の流れ特性や小径ドリルビットの使用時の折損などを考慮すると、平均粒子径(D50)が0.1〜3μmであることが好ましい。このような平均粒子径(D50)が0.1〜3μmの好ましい充填材としては、メソポーラスシリカ、球状溶融シリカ、球状合成シリカ、中空球状シリカ等が挙げられる。なお、本明細書において、充填材(G)の平均粒子径(D50)とは、メジアン径(D50)を意味し、測定した粉体の粒度分布を2つに分けたときの大きい側と小さい側が等量となる値である。より具体的には、レーザー回折散乱式の粒度分布測定装置により、水分散媒中に所定量投入された粉体の粒度分布を測定し、小さい粒子から体積積算して、全体積の50%に達したときの値を意味する。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物における充填材(G)の含有量は、所望する性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、上述した(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し、20〜150質量部であることが好ましく、難燃性やピール強度、成形性、耐熱性、電気特性の観点から、40〜100質量部であることがより好ましい。
【0043】
ここで充填材(G)を使用するにあたり、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシランなどのアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルートリ(β−メトキシエトキシ)シランなどのビニルシラン系、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、湿潤分散剤としては、一般に塗料用に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。好ましくは、共重合体ベースの湿潤分散剤が使用され、その具体例としては、ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、111、161、180、BYK−W996、BYK−W9010、BYK−W903、BYK−W940などが挙げられる。湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化速度を適宜調節するための硬化促進剤を含有していてもよい。この硬化促進剤としては、シアン酸エステル化合物やエポキシ化合物の硬化促進剤として一般に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン類等が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、硬化促進剤の使用量は、樹脂の硬化度や樹脂組成物の粘度等を考慮して適宜調整でき、特に限定されないが、通常は、上述した(A)〜(F)成分の合計100質量部に対し、0.005〜3質量部程度である。
【0045】
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、上述したもの以外の成分を含有していてもよい。このような任意の配合物としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、難燃性化合物、各種添加剤などが挙げられる。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性化合物としては、4,4’−ジブロモビフェニル等の臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。また、各種添加剤としては、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられる。これら任意の配合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
なお、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤を含有していてもよい。この場合、本実施形態の樹脂組成物は、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解或いは相溶した態様(溶液或いはワニス)として用いることができる。有機溶剤としては、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解或いは相溶可能なものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類などの極性溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤等が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層、半導体パッケージ用材料として用いることができる。例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を基材に含浸又は塗布し乾燥することでプリプレグとすることができる。
また、基材として剥離可能なプラスチックフィルムを用いて本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液をプラスチックフィルムに塗布し乾燥することでビルドアップ用フィルム又はドライフィルムソルダーレジストとすることができる。ここで、溶剤は20℃〜150℃の温度で1〜90分間加熱することで乾燥できる。また、樹脂組成物は溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもできるし、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。
【0048】
以下、本実施形態のプリプレグについて詳述する。本実施形態のプリプレグは、上述した本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸または塗布させたものである。プリプレグの製造方法は、本実施形態の樹脂組成物と基材とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されない。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、120〜220℃で2〜15分程度乾燥させる方法などによって半硬化させることで、本実施形態のプリプレグを製造することができる。このとき、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量に対する樹脂組成物量(無機充填材(C)を含む。)は、20〜95質量%の範囲であることが好ましい。
【0049】
本実施形態のプリプレグを製造する際に使用する基材としては、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することができる。例えば、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の有機繊維、液晶ポリエステル等の織布が挙げられるが、これらに特に限定されない。基材の形状としては、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が知られているが、いずれであっても構わない。基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、基材の厚みは、特に限定されないが、積層板用途であれば0.01〜0.2mmの範囲が好ましく、特に超開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の観点ら好適である。さらに、エポキシシラン処理、アミノシラン処理などのシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布は吸湿耐熱性の観点から好ましい。また、液晶ポリエステル織布は、電気特性の面から好ましい。
【0050】
一方、本実施形態の金属箔張り積層板は、上述したプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形したものである。具体的には、前述のプリプレグを一枚或いは複数枚重ね、その片面もしくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置して、積層成形することにより作製することができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられているものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔等の銅箔が好ましい。高周波領域における導体損失を考慮すると、マット面の粗さが小さい電解銅箔がより好ましい。また、金属箔の厚みは、特に限定されないが、2〜70μmが好ましく、3〜35μmがより好ましい。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを使用し、温度180〜220℃、加熱時間100〜300分、面圧20〜40kg/cm
2で積層成形することにより本実施形態の金属箔張り積層板を製造することができる。また、上記のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることもできる。多層板の製造方法としては、例えば、上述したプリプレグ1枚の両面に35μmの銅箔を配置し、上記条件にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成し、その後、この内層回路板と上記のプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に銅箔を配置して、上記条件にて好ましくは真空下で積層成形することにより、多層板を作製することができる。
【0051】
そして、本実施形態の金属箔張り積層板は、プリント配線板として好適に使用することができる。プリント配線板は、常法にしたがって製造することができ、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。まず、上述した銅張積層板等の金属箔張り積層板を用意する。次に、金属箔張り積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ね、さらにその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、さらに外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
【0052】
上記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態の樹脂組成物を含む構成となる。すなわち、上述した本実施形態のプリプレグ(基材及びこれに含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物)、上述した本実施形態の金属箔張り積層板の樹脂組成物の層(本実施形態の樹脂組成物からなる層)が、本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層から構成されることになる。
【0053】
他方、本実施形態の積層シートは、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液をシート基材に塗布し乾燥することで得ることができる。ここで用いシート基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS板、FRP等の板状のものが挙げられるが、これらに特に限定されない。塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等でシート基材上に塗布する方法が挙げられる。また、乾燥後に、積層シートからシート基材を剥離又はエッチングすることで、単層シート(樹脂シート)とすることもできる。なお、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、シート基材を用いることなく単層シート(樹脂シート)を得ることもできる。
【0054】
なお、本実施形態の単層或いは積層シートの作製において、溶剤を除去する際の乾燥条件は、特に限定されないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、20℃〜170℃の温度で1〜90分間が好ましい。また、本実施形態の単層或いは積層シートの樹脂層の厚みは、本実施形態の樹脂組成物の溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができ、特に限定されないが、一般的には塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、0.1〜500μmが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を表す。
【0056】
(実施例1)
ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(OPE−2St 1200、両末端にビニル基を有するポリフェニレンオリゴマー(2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,6−ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物)、三菱ガス化学(株)製、数平均分子量1187、ビニル基当量:590g/eq.)55質量部、上記式(13)におけるmが2であるリン含有シアン酸エステル化合物(FR−300、ロンザジャパン(株)製、シアネート当量:187g/eq.)2.0質量部、上記式(14)におけるnが3〜6の混合物であるシクロホスファゼン化合物(FP−100、(株)伏見製薬所製)18.8質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680、DIC(株)製、エポキシ当量:215g/eq.)8.9質量部、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物(CA210、三菱ガス化学(株)製、シアネート当量:139g/eq.)12.8質量部、スチレンオリゴマー(KA3085、イーストマンケミカルジャパン(株)製、数平均分子量604)2.5質量部、球状シリカ(SC2050、(株)アドマテックス製、平均粒子径0.5μm)75質量部、オクチル酸マンガン0.034質量部を混合し、メチルエチルケトンで固形分を65質量%に希釈しワニスを得た。このようにして得られたワニスを厚さ0.08mmのEガラスクロスに含浸塗工し、乾燥機(耐圧防爆型スチーム乾燥機、(株)高杉製作所製))を用いて170℃、5分加熱乾燥し、樹脂組成物55質量%のプリプレグを得た。そして、このプリプレグ8枚を重ね合わせ、得られた積層体の両面に18μm銅箔(3EC−III、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力30kg/cm
2、温度210℃で150分間真空プレスを行い、厚さ約0.8mmの両面銅箔張り積層板を得た。得られた両面銅箔張り積層板を用いて、耐燃性、熱膨張率、吸湿耐熱性、ガラス転移温度、電気特性、ピール強度の測定及び評価を行った。これらの結果を、表1に示す。
【0057】
(測定方法及び評価方法)
1)耐燃性:厚さ約0.8mmの両面銅箔張り積層板をダイシングソーで13mm×130mm×厚さ約0.8mmのサイズに切断後、両面の銅箔をエッチングによりすべて除去して試験片を得た。この試験片を用い、UL94垂直試験法に準じて耐燃性試験を実施した(n=5)。
2)熱膨張係数(α1、α2):厚さ約0.8mmの両面銅箔張り積層板の銅箔をエッチングによりすべて除去して試験片を得た。この試験片を用い、熱機械分析装置(TAインスツルメント製)を用い、JlS C6481に規定されるTMA法により、厚さ方向の熱膨張係数を測定した。
3)吸湿耐熱性:厚さ約0.8mmの両面銅箔張り積層板をダイシングソーで50mm×50mm×厚さ約0.8mmのサイズに切断後、片面の半分以外の銅箔をすべてエッチング除去して、片面にのみ銅箔が半分残された試験片を得た。この試験片を115℃で20時間乾燥した後、プレッシャークッカー試験器(平山製作所製 PC−3型)で121℃、2気圧で3時間処理後、288℃の半田浴に30秒浸漬して、膨れの有無を目視観察し、異常なし:(○)、膨れ発生:(×)とした(n=3)。
4)ガラス転移温度(Tg):厚さ約0.8mmの両面銅箔張り積層板をダイシングソーで40mm×20mm×厚さ約0.8mmのサイズに切断して試験片を得た。得られた試験片を用い、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法によりガラス転移温度を測定した。
5)誘電正接:厚さ約0.8mmの両面銅箔張り積層板の銅箔をすべて除去した試験片を使用し、空洞共振器摂動法(Agilent 8722ES、アジレントテクノロジー製)にて2GHzでの誘電正接を測定した。
6)ピール強度:JIS C6481のプリント配線板用銅張積層板試験方法(5.7 引き剥がし強さ参照。)に準じて、厚さ約0.8mmの両面銅箔張り積層板の試験片(30mm×150mm×厚さ約0.8mm)を用い、銅箔の引き剥がし強度を測定した。
【0058】
(実施例2)
リン含有シアン酸エステル化合物(FR−300)の配合量を5.0質量部に、シクロホスファゼン化合物(FP−100)の配合量を17.0質量部に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680)の配合量を9.3質量部に、シアン酸エステル化合物(CA210)の配合量を11.2質量部に、オクチル酸マンガンの配合量を0.043質量部にそれぞれ変更すること以外は、実施例1と同様に行った。得られた両面銅箔張り積層板の各種物性値を、表1に示す。
【0059】
(実施例3)
ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(OPE−2St 1200)の配合量を53質量部に、リン含有シアン酸エステル化合物(FR−300)の配合量を3.0質量部に、シクロホスファゼン化合物(FP−100)の配合量を18.0質量部に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680)の配合量を7.0質量部に、シアン酸エステル化合物(CA210)の配合量を12.4質量部にそれぞれ変更し、さらにビスフェノールA型エポキシ樹脂(E−1051、DIC(株)製、エポキシ当量:475g/eq.)4.6質量部を配合し、オクチル酸マンガンに代えてイミダゾール化合物(2P4MZ、四国化成(株)製)0.10質量部を配合すること以外は、実施例1と同様に行った。得られた両面銅箔張り積層板の各種物性値を、表1に示す。
【0060】
(比較例1)
実施例1で使用したビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(OPE−2St)55質量部、同シクロホスファゼン化合物(FP−100)20.0質量部、同クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680)8.6質量部、同シアン酸エステル化合物(CA210)13.9質量部、同スチレンオリゴマー(KA3085)2.5質量部、同球状シリカ(SC2050)75質量部、同オクチル酸マンガン0.009質量部を混合し、メチルエチルケトンで固形分65質量%に希釈しワニスを得た。このようにして得られたワニスを使用すること以外は、実施例1と同様に行った。得られた両面銅箔張り積層板の各種物性値を、表2に示す。
【0061】
(比較例2)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N680)の配合量を6.2質量部に、シアン酸エステル化合物(CA210)の配合量を12.2質量部に、オクチル酸マンガンの配合量を0.008質量部にそれぞれ変更し、さらに実施例3で使用したビスフェノールA型エポキシ樹脂(E−1051)4.1質量部を配合すること以外は、比較例1と同様に行った。得られた両面銅箔張り積層板の各種物性値を、表2に示す。
【0062】
(比較例3)
シクロホスファゼン化合物に代えて実施例1で使用したリン含有シアン酸エステル化合物(FR−300)20.0質量部を用い、オクチル酸マンガンの配合量を0.010質量部に変更すること以外は、比較例1と同様に行った。得られた両面銅箔張り積層板の各種物性値を、表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1及び2から明らかなように、本発明の樹脂組成物を用いることで、高い難燃性を有するのみならず、耐熱性、銅箔とのピール強度、熱膨張率、吸湿耐熱性及び電気特性にも優れるプリプレグ及びプリント配線板を実現できることが確認された。また、非ハロゲン系化合物のみからなる樹脂組成物を用いることで、環境への負担が軽減される。
【0066】
なお、本出願は、2012年3月29日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2012−077449号)に基づく優先権を主張しており、その内容はここに参照として取り込まれる。