(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非密封対象物側ネジ突起の各々は該非密封対象物側ネジ突起の前記密封対象物の側の端部において、前記密封対象物側ネジ突起の少なくとも一部の各々と接続していることを特徴とする請求項1又は2記載の密封装置。
前記密封対象物側ネジ突起は、該密封対象物側ネジ突起の延び方向に直交する断面の形状が一様である平行ネジ突起であり、前記非密封対象物側ネジ突起は、前記大気側面からの高さが前記非密封対象物側ネジ突起の延び方向に沿って漸次変化する舟底状の舟底ネジ突起であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の密封装置。
前記舟底ネジ突起の前記大気側面からの高さは、前記非密封対象物の側に向かって、漸次高くなってから漸次低くなっており、前記密封対象物の側の端部において前記平行ネジ突起の前記高さ以上の高さであることを特徴とする請求項5記載の密封装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば車両等のエンジンにおいて、回転軸とこの回転軸が挿通されたハウジングの貫通穴との間を密封するために密封装置が用いられている。
図8は、従来の密封装置の一例の概略構造を示すための軸線に沿う断面における断面図である。従来の密封装置100は、
図8に示すように、金属製の補強環101に一体的に弾性体から成る弾性体部102が形成されており、弾性体部102には、シールリップ103とダストリップ104とが形成されている。シールリップ103において、オイル等の密封対象物の側には、内周に向かって凸の断面楔形のリップ先端部105が形成されている。リップ先端部105は、密封対象物側の円錐面である密封側面106と、非密封対象物側(大気側)の円錐面である大気側面107とによって画成されている。また、シールリップ103において、リップ先端部105に対向する外周側の面には、リップ先端部105を内周側に付勢するガータスプリング108が取り付けられており、リップ先端部105に回転軸に対する緊迫力を与えている。
【0003】
また、従来の密封装置には、大気側から密封対象物側へ向かう気流を形成して、リップ先端部を超えて大気側に漏れ出したオイル等の密封対象物を密封対象物側に押し戻すポンプ作用を発揮する、等間隔に配列された複数のネジ突起を備えるものがある。例えば、密封装置100は、ポンプ作用を発揮するネジ突起109を大気側面107に備え、ネジ突起109は、リップ先端部105のリップ先端105aから延びる平行ネジ突起110と、大気側において平行ネジ突起110に続く舟底ネジ突起111とを備える。平行ネジ突起110は、リップ先端105aに対して斜めに延びており、その延び方向に直交する断面の形状は延び方向に亘って一様となっている。また、舟底ネジ突起111は、平行ネジ突起110と同一方向に延びており、高さ及び幅が延び方向における中途部において最大となるような舟底の形状を有している(例えば、特許文献1参照)。このような、平行ネジ突起110と舟底ネジ突起111とから成るネジ突起109により、リップ先端部105の摩耗が進行したとしても、ネジ突起109によるポンプ作用が維持されるようになっている。
【0004】
上述のような従来の密封装置100においては、ダストリップ104の摩耗等により、ダストリップ104と回転軸との間に隙間が発生し、この隙間を介して大気側からリップ先端部105と回転軸との間に、泥水や砂、ダスト等の異物が侵入してしまう場合がある。この場合、異物がリップ先端105a側に運ばれ、リップ先端105aと回転軸との間に異物が噛み込み、リップ先端105aと回転軸との間に隙間が発生して密封対象物の大気側への漏洩が起こることがあり、密封装置100の交換若しくは洗浄が必要となる。
【0005】
このため、従来の密封装置には、
図9に示すように、リップ先端部105の大気側面107において、リップ先端105aと平行に延びる円周突起121が形成された密封装置がある。円周突起121は、例えば密封装置120のように、平行ネジ突起110と舟底ネジ突起111との接続部においてネジ突起109と交差し、隣接するネジ突起109の間において大気側面107から突き出している。この円周突起121により、密封装置120においては、ダストリップ104の摩耗等により大気側からリップ先端部105と回転軸との間に異物が侵入した場合でも、異物がリップ先端105aに近づくことが抑制されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記円周突起121を有する密封装置120においては、円周突起121により侵入した異物のリップ先端105a側への更なる侵入を抑制することができるが、ネジ突起109と円周突起121との間に異物が溜まり、ここに異物が堆積してしまう場合がある。ネジ突起109と円周突起121との間に異物が堆積すると、堆積した異物が回転軸と干渉してリップ先端部105を回転軸から浮き上がらせて、リップ先端105aと回転軸との間に隙間が発生し、密封対象物の漏洩が起こることがあり、密封装置120の交換若しくは洗浄等のメンテナンスが必要となる。
【0008】
このように、従来の密封装置120においては、密封装置120の交換若しくはメンテナンスの頻度をより低減すべく、円周突起121より非密封対象物側において、ネジ突起109の間に異物が堆積することを更に抑制することが求められていた。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、円周突起より非密封対象物側において、ネジ突起の間に異物が堆積することを抑制することができる密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、軸線を中心とする環状の補強環と、シールリップを備え、前記補強環に取り付けられている、弾性体から形成されている前記軸線を中心とする環状の弾性体部とを備え、前記シールリップは、リップ先端を介して接続されている密封対象物の側の環状の密封側面と非密封対象物の側の環状の大気側面とにより画成されている、内周側に向かって凸のリップ先端部を備え、前記リップ先端部は、前記大気側面に、円周突起と前記密封対象物の側に向かう気流を形成可能にするネジ部とを備え、前記ネジ部は、前記リップ先端に対して斜めに延びる前記大気側面から突出した密封対象物側ネジ突起と、前記リップ先端に対して斜めに延びる前記大気側面から突出した非密封対象物側ネジ突起とを夫々複数備えており、前記円周突起は、前記大気側面から環状に突出しており、前記リップ先端に対して平行に延びており、前記円周突起の前記大気側面からの高さは、前記密封対象物側ネジ突起及び前記非密封対象物側ネジ突起の前記大気側面からの夫々の高さよりも低く、前記密封対象物側ネジ突起は、前記リップ先端と前記円周突起との間において延びており、互いに平行に等ピッチ間隔で配列されており、前記非密封対象物側ネジ突起は、前記円周突起から前記非密封対象物の側において延びており、互いに平行に等ピッチ間隔で配列されており、前記非密封対象物側ネジ突起の各々は、隣接する前記非密封対象物側ネジ突起と、前記軸線方向において互いに重なっていないことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記非密封対象物側ネジ突起のピッチは前記密封対象物側ネジ突起のピッチよりも大きい。
【0012】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記非密封対象物側ネジ突起の各々は該非密封対象物側ネジ突起の前記密封対象物の側の端部において、前記密封対象物側ネジ突起の少なくとも一部の各々と接続している。
【0013】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記密封対象物側ネジ突起及び前記非密封対象物側ネジ突起は互いに平行に延びている。
【0014】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記密封対象物側ネジ突起は、該密封対象物側ネジ突起の延び方向に直交する断面の形状が一様である平行ネジ突起であり、前記非密封対象物側ネジ突起は、前記大気側面からの高さが前記非密封対象物側ネジ突起の延び方向に沿って漸次変化する舟底状の舟底ネジ突起である。
【0015】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記舟底ネジ突起の前記大気側面からの高さは、前記非密封対象物の側に向かって、漸次高くなってから漸次低くなっており、前記密封対象物の側の端部において前記平行ネジ突起の前記高さ以上の高さである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る密封装置によれば、円周突起より非密封対象物側において、ネジ突起の間に異物が堆積することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る密封装置の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における断面図である。
【
図2】
図1に示す密封装置におけるリップ先端部を拡大して示す密封装置の部分拡大図である。
【
図3】
図1に示す密封装置における互いに接続する平行ネジ突起及び舟底ネジ突起の形状を例示するための図であり、
図3(a)は長尺ネジ突起を大気側面に沿って延び方向に直交する方向に見た長尺ネジ突起の拡大図であり、
図3(b)は長尺ネジ突起における平行ネジ突起の延び方向に直交する断面における断面図であり、
図3(c)は長尺ネジ突起における舟底ネジ突起の延び方向に直交する断面における断面図である。
【
図4】
図1に示す密封装置における平行ネジ突起の形状を例示するための図であり、
図4(a)は短尺ネジ突起における平行ネジ突起を大気側面に沿って延び方向に直交する方向に見た短尺ネジ突起の拡大図であり、
図4(b)は平行ネジ突起の延び方向に直交する断面における断面図である。
【
図5】
図1に示す密封装置における舟底ネジ突起の延び方向に直交する断面における断面形状の他の例を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る密封装置の第1の変形例の概略構成を示すためのリップ先端部を拡大して示す密封装置の部分拡大図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る密封装置の第2の変形例の概略構成を示すためのリップ先端部を拡大して示す密封装置の部分拡大図である。
【
図8】従来の密封装置の一例の概略構造を示すための軸線に沿う断面における断面図である。
【
図9】従来の密封装置の他の一例の概略構造を示すための軸線に沿う断面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る密封装置1の概略構成を示すための、軸線xに沿う断面における部分断面図である。本発明の実施の形態に係る密封装置1は、自動車や汎用機械等において回転軸とこの回転軸が挿通される貫通穴を有する部材との間を密封するために用いられ、例えば、自動車のエンジンにおいて、クランクシャフトとフロントカバーとの間を密封するために適用される。以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(
図1参照)方向を外側とし、軸線x方向において矢印b(
図1参照)方向を内側とする。より具体的には、外側とは、非密封対象物の側であり、密封対象物が存在しないようにする大気側であり、内側とは、密封対象物の側でありオイル等の密封対象物に面する側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(
図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(
図1の矢印d方向)を内周側とする。
【0020】
密封装置1は、
図1に示すように、軸線xを中心とする環状の金属製の補強環10と、軸線xを中心とする環状の弾性体から成る弾性体部20とを備える。弾性体部20は、補強環10に一体的に取り付けられている。補強環10の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。弾性体部20の弾性体としは、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
【0021】
補強環10は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部20は成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形される。この架橋成型の際に、補強環10は成形型の中に配置されており、弾性体部20が架橋接着により補強環10に接着され、弾性体部20が補強環10と一体的に成形される。
【0022】
補強環10は、例えば、
図1に示すように、断面略L字状の形状を呈しており、軸線x方向に延びる円筒状の部分である円筒部11と、円筒部11の外側の端部から内周側に向かって広がる中空円盤状の部分であるフランジ部12とを備える。
【0023】
弾性体部20は、補強環10に取り付けられており、本実施の形態においては補強環10を外側及び外周側から覆うように補強環10と一体的に成形されている。弾性体部20は、シールリップ21と、ダストリップ22と、リップ腰部23とを備える。
図1に示すように、リップ腰部23は、弾性体部20において、補強環10のフランジ部12における内周側の端部の近傍に位置する部分であり、シールリップ21は、リップ腰部23から内側に向かって延びる部分であり、補強環10の円筒部11に対向して配置されている。ダストリップ22は、リップ腰部23から外側に軸線xに向かって延びている。
【0024】
シールリップ21は、内側の端部に、軸線xに沿う断面の形状(以下、断面形状ともいう。)が内周側に向かって凸の楔形状の環状のリップ先端部24を有している。リップ先端部24は、リップ先端25を介して接続されている、密封対象物側(内側)の環状の密封側面26と、非密封対象物側(外側又は大気側)の環状の大気側面27とにより画成されている。密封側面26は、軸線x方向において内側に向かうに連れて拡径する円錐面状のテーパ面であり、大気側面27は、軸線x方向において外側に向かうに連れて拡径する円錐面状のテーパ面である。密封側面26と大気側面27とは互いに小径側で交わっており、この交わる部分においてリップ先端25が形成されている。リップ先端25は、軸線xに直交する断面において軸線xを中心とする円を描いており、リップ先端部24において最も内周側に位置する。リップ先端部24は、使用状態において、リップ先端25の近傍が、図示しない回転軸の外周面が摺動可能にこの外周面に密接して接触するように形成されており、回転軸が挿通される貫通穴を密封するようになっている。
【0025】
また、シールリップ21の外周部側には、リップ先端部24に対向して、ガータスプリング28が嵌着されており、ガータスプリング28は、シールリップ21のリップ先端部24を径方向において内周側に付勢して、リップ先端部24に回転軸に対する所定の大きさの緊迫力を与えている。
【0026】
ダストリップ22は、リップ腰部23から延びる部位であり、外側且つ内周側の方向に延出している。ダストリップ22により、使用状態におけるリップ先端部24方向への、泥水や砂、ダスト等の異物の進入の防止が図られている。
【0027】
また、弾性体部20は、後方カバー29と、ガスケット部30とを備える。後方カバー29は、補強環10のフランジ部12を外側から覆い、ガスケット部30は、補強環10の円筒部11を外周側から覆っている。ガスケット部30は、回転軸が挿通される図示しない部材の貫通穴に密封装置1が圧入された際に、この貫通穴と補強環10の円筒部11との間において径方向に圧縮されて、径方向外側に向かう力である嵌合力を所定の大きさ発生するように、径方向の厚さが設定されている。
【0028】
また、密封装置1のリップ先端部24は、大気側面27に、異物の侵入を抑制する堰としての円周突起31と、密封対象物側(内側)に向かう気流を形成可能にするネジ部32とを備える。
図2は、密封装置1のリップ先端部24を拡大して示す密封装置1の部分拡大図である。
【0029】
図2に示すように、円周突起31は、大気側面27から内周側に突出しており、大気側面27において軸線xを中心として環状に延びている。また、円周突起31は、リップ先端25に対して平行に延びている。円周突起31は、延び方向に直交する断面における断面形状が延び方向に亘って一様であり、その断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、矩形、略矩形、三角形、又は略三角形である。
【0030】
ネジ部32は、リップ先端25に対して斜めに延びる、大気側面27から突出した密封対象物側ネジ突起と、リップ先端25に対して斜めに延びる、大気側面27から突出した非密封対象物側ネジ突起とを夫々複数備えている。密封対象物側ネジ突起は、リップ先端25と円周突起31との間において延びており、互いに平行に等ピッチ間隔で配列されている。また、非密封対象物側ネジ突起は、円周突起31から大気側において延びており、互いに平行に等ピッチ間隔で配列されている。
【0031】
具体的には、ネジ部32は、
図2に示すように、密封対象物側ネジ突起としての複数の平行ネジ突起33と、非密封対象物側ネジ突起としての複数の舟底ネジ突起34とを備えている。平行ネジ突起33は、大気側面27から内周側に突出した突起であり、大気側面27において螺旋状にリップ先端25に対して斜めに延びている。舟底ネジ突起34は、大気側面27から内周側に突出した突起であり、大気側面27において螺旋状にリップ先端25に対して斜めに延びている。平行ネジ突起33は、リップ先端25と円周突起31との間において延びており、互いに平行にピッチw1の等ピッチ間隔で周方向に亘って配列されている。また、舟底ネジ突起34は、円周突起31から大気側に向かって延びており、互いに平行にピッチw2の等ピッチ間隔で周方向に亘って配列されている。平行ネジ突起33及び舟底ネジ突起34は、大気側面27上において、リップ先端25に対して回転軸の摺動方向(
図2の矢印R方向)とは反対方向に傾いており、回転軸の回転に伴って、大気側(外側)から密封対象物側(内側)へ向かう気流を発生可能にする形状となっている。平行ネジ突起33のリップ先端25に対する傾斜角度αと、舟底ネジ突起34のリップ先端25に対する傾斜角度βとは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
また、非密封対象物側ネジ突起の各々は、隣接する非密封対象物側ネジ突起と軸線x方向において互いに重なり合っていない。具体的には、非密封対象物側ネジ突起としての舟底ネジ突起34の各々は、隣接する舟底ネジ突起34と、軸線x方向において互いに重なり合っていない。つまり、互いに隣接する舟底ネジ突起34の軸線x方向の投影図(線)は、互いに重なり合っていない。具体的には、
図2に示すように、各舟底ネジ突起34は、その密封対象物側の端部(端部34a)と、この舟底ネジ突起34に対して回転軸の摺動方向側(矢印R方向側)において隣接する舟底ネジ突起34の大気側の端部(端部34b)とは、リップ先端25の延び方向(回転軸の摺動方向)において間隔dを有している。
【0033】
本実施の形態に係る密封装置1においては、平行ネジ突起33のリップ先端25に対する傾斜角度αと、舟底ネジ突起34のリップ先端25に対する傾斜角度βとは、同一の角度であり(α=β)、平行ネジ突起33と舟底ネジ突起34とは、互いに平行に延びている。また、舟底ネジ突起34のピッチw2は、平行ネジ突起33のピッチw1の2倍となっており(w2=w1×2)、ネジ部32において、平行ネジ突起33の数は、舟底ネジ突起34の数の2倍となっている。平行ネジ突起33のピッチw1は、例えば、0.65mm〜0.75mmである。また、舟底ネジ突起34は夫々、その大気側の端部(端部34a)において、複数の平行ネジ突起33の一部の平行ネジ突起33に大気側の端部において接続しており、より具体的には、円周方向において、1つ置きに平行ネジ突起33に接続している。
【0034】
言い換えると、密封装置1においては、平行ネジ突起33と舟底ネジ突起34とが接続して形成する長尺の長尺ネジ突起35と、平行ネジ突起33のみが形成する長尺ネジ突起35よりも短い短尺ネジ突起36とが、大気側面27において周方向に亘って、互いに等しい間隔w1で交互に配列されている。
【0035】
図3は、互いに接続する平行ネジ突起33及び舟底ネジ突起34の形状を例示するための図であり、
図3(a)は長尺ネジ突起35を大気側面27に沿って延び方向に直交する方向に見た長尺ネジ突起35の拡大図であり、
図3(b)は長尺ネジ突起35における平行ネジ突起33の延び方向に直交する断面における断面図であり、
図3(c)は長尺ネジ突起35における舟底ネジ突起34の延び方向に直交する断面における断面図である。
【0036】
図3(a)に示すように、平行ネジ突起33は、リップ先端25から大気側に向かって延びており、大気側面27からの高さh2が延び方向に亘って一様である。また、平行ネジ突起33は、延び方向に直交する断面における断面形状が延び方向に亘って一様であり、その断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、矩形、略矩形、三角形、又は略三角形である。本実施の形態においては、
図3(b)に示すように、平行ネジ突起33の延び方向に直交する断面における断面形状は、三角形であり、内周側に尖端を備えている。
【0037】
図3(a)に示すように、舟底ネジ突起34は、平行ネジ突起33の大気側の端部から大気側に向かって延びており、大気側面27からの高さが延び方向に亘って一様ではなく漸次変化している。具体的には、この舟底ネジ突起34の大気側面27からの高さは、舟底ネジ突起34が平行ネジ突起33と接続する部分である接続部37(端部34a)において、平行ネジ突起33の高さh2と同じであり、大気側に向かって漸次高くなり、接続部37から大気側方向に所定の位置p1において高さh3となり最大の高さとなる。そして、位置p1から更に大気側に向かうに連れて、舟底ネジ突起34の大気側面27からの高さは、高さh3から漸次減少していき、接続部37から大気側方向に所定の位置p2においてゼロとなる。また、舟底ネジ突起34は、延び方向に直交する断面における断面形状が延び方向に亘って相似しており、この断面形状の面積は、接続部37から大気側に向かうに連れて漸次大きくなり、位置p1において最大となり、そして位置p1から更に大気側に向かうに連れて漸次小さくなっている。舟底ネジ突起34の延び方向に直交する断面における断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、矩形、略矩形、三角形、又は略三角形である。本実施の形態においては、
図3(c)に示すように、舟底ネジ突起34の延び方向に直交する断面における断面形状は、三角形であり、内周側に尖端を備えている。このように、舟底ネジ突起34は、舟底状の形状の突起である。
【0038】
互いに隣接する長尺ネジ突起35の間には、上述のように(
図2参照)、短尺ネジ突起36を成す平行ネジ突起33のみが設けられている。
図4は、平行ネジ突起33の形状を例示するための図であり、
図4(a)は短尺ネジ突起36における平行ネジ突起33を大気側面27に沿って延び方向に直交する方向に見た平行ネジ突起33の拡大図であり、
図4(b)は平行ネジ突起33の延び方向に直交する断面における断面図である。
図4(a),(b)に示すように、互いに隣接する長尺ネジ突起35の間においては、平行ネジ突起33のみが、リップ先端25と円周突起31との間に延びている。
【0039】
また、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、円周突起31は、大気側面27上において、大気側の端部において平行ネジ突起33と接続するように延びている。このため、舟底ネジ突起34が平行ネジ突起33に接続して形成される長尺ネジ突起35においては、円周突起31は、平行ネジ突起33と舟底ネジ突起34とが接続する接続部37の位置を通るように延びている。
【0040】
また、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、円周突起31の大気側面27からの高さh1は、平行ネジ突起33の高さh2よりも低くなっており、回転軸の回転時に、舟底ネジ突起34によって発生される大気側(外側)から密封対象物側(内側)へ向かう気流が、円周突起31によって遮断されないようになっている。
【0041】
上述のように、リップ先端部24のネジ部32において円周突起31から大気側では、ピッチw2の等ピッチ間隔で配列された舟底ネジ突起34が円周突起31から延びており、舟底ネジ突起34の各々は、回転軸の摺動方向側(
図2の矢印R方向側)において隣接する舟底ネジ突起34と軸線x方向において互いに重なり合っていない。一方、リップ先端部24のネジ部32においてリップ先端25と円周突起31との間では、ピッチw2よりも狭いピッチw1の等ピッチ間隔で配列された平行ネジ突起33が延びている。
【0042】
このように、リップ先端部24のネジ部32において、円周突起31から大気側では、各舟底ネジ突起34が、その密封対象物側の端部34aと、隣接する舟底ネジ突起34の大気側の端部34bとの間に、リップ先端25の延び方向において間隔dを有しており、互いに隣接する舟底ネジ突起34の間には、間隔dの軸線x方向にのびる通路(通路A)が形成されている(
図2参照)。このため、円周突起31と互いに隣接する舟底ネジ突起34とによって囲まれる空間に侵入した異物を上記通路Aを介して大気側に戻すことができ、円周突起31と互いに隣接する舟底ネジ突起34とによって囲まれる空間に異物が堆積することを抑制することができる。これにより、ネジ部32と回転軸との間に異物が堆積して、この堆積した異物が回転軸と干渉することにより、リップ先端部24が回転軸から浮き上がることを抑制することができる。また、異物がリップ先端25に近接することを抑制することができる。
【0043】
一方、リップ先端部24のネジ部32において、リップ先端25に近い円周突起31から密封対象物側では、平行ネジ突起33のピッチw1を狭くすることにより、平行ネジ突起33によるポンプ作用が大きく、大気側から密封対象物側に向かう気流が大きくなるようになっている。このように、リップ先端25近傍におけるポンプ作用が、リップ先端25を越えて密封対象物側から漏れ出た密封対象物を密封対象物側に押し戻すために十分な力を発揮可能となるように図られている。
【0044】
上述のように、本発明の実施の形態に係る密封装置1によれば、円周突起31より非密封対象物側(大気側)において、ネジ突起の間に異物が堆積することを抑制することができる。より具体的には、本発明の実施の形態に係る密封装置1によれば、弾性体部20のリップ先端部24のネジ部32において、円周突起31よりも密封対象物側においては密封対象物側から漏れ出た密封対象物を密封対象物側に押し戻す力(ポンプ力)を平行ネジ突起33が十分に発揮可能にしつつ、円周突起31よりも大気側においては異物の堆積を抑制することができる。
【0045】
また、舟底ネジ突起34の延び方向に直交する断面における断面形状は、
図5に示すように、回転軸の摺動方向Rにおいて後方側の面の方が、回転軸の摺動方向Rにおいて前方側の面よりも、大気側面27に対する傾斜を緩くすることにより(θ1<θ2)、隣接する舟底ネジ突起34と円周突起31によって囲まれる空間から大気側に向かう異物の移動を容易にすることができる。
【0046】
また、舟底ネジ突起34の大気側面27からの高さを高くすることにより、舟底ネジ突起34によって発生される大気側から密封対象物側への気流を大きくすることができる。これにより、通路Aを介して堆積した異物の排出を可能にしつつ、舟底ネジ突起34のポンプ力を増強することができる。
【0047】
また、舟底ネジ突起34は、高さが大気側に向かって接続点p1から位置p2まで漸次増大し次いで位置p2から漸次減少する舟底形状となっているので、リップ先端部24が摩耗して、平行ネジ突起33が摩耗又は摩滅した場合であっても、舟底ネジ突起34が回転軸に接触して、ポンプ作用の発揮を維持することができる。
【0048】
また、ネジ部32は、非密封対象物側ネジ突起として、舟底ネジ突起34とは異なる形態のネジ突起を有していてもよい。例えば、非密封対象物側ネジ突起として平行ネジ突起33と同様のネジ突起を有していてもよい。
【0049】
上述の本発明の実施の形態に係る密封装置1においては、平行ネジ突起33と舟底ネジ突起34とは、互いに平行に延びており(傾斜角度α=傾斜角度β)、また、舟底ネジ突起34は夫々、円周方向において1つ置きに平行ネジ突起33と接続しているが、平行ネジ突起33の構成はこれに限られるものではなく、また、舟底ネジ突起34の構成はこれに限られるものではない。平行ネジ突起33と舟底ネジ突起34とは、互いに平行に延びておらず傾斜していてもよい(傾斜角度α≠傾斜角度β)。また、舟底ネジ突起34は夫々、円周方向に複数の平行ネジ突起33を置いて平行ネジ突起33に接続するようにしてもよく、また、舟底ネジ突起34は夫々、平行ネジ突起33に接続して、全ての平行ネジ突起33と接続するようにしてもよい。また、舟底ネジ突起34は夫々、平行ネジ突起33の全てと接続しないようにしてもよい。ただし、舟底ネジ突起34は、上述のように、互いに隣接する舟底ネジ突起34が軸線x方向において重なり合わないようになっており(間隔d>0)、軸線x方向に延びる通路Aを形成している。
【0050】
次いで、上記本発明の実施の形態に係る密封装置1の変形例について説明する。以下、上述の本発明の実施の形態に係る密封装置1と同一の又は類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0051】
図6は、上記本発明の実施の形態に係る密封装置1の第1の変形例の構成を示すためのリップ先端部を拡大して示す密封装置の部分拡大図である。本第1の変形例においては、上記密封装置1においてネジ部32の構成が異なる。
【0052】
図6に示すように、ネジ部32の第1の変形例においては、平行ネジ突起33のピッチw1と舟底ネジ突起34のピッチw2とが同一であり(w1=w2)、平行ネジ突起33と同数の舟底ネジ突起34が設けられている。また、舟底ネジ突起34は夫々、平行ネジ突起33に接続されており、短尺ネジ突起は形成されていない。また、平行ネジ突起33の傾斜角度αと舟底ネジ突起34の傾斜角度βとは同一ではなく、平行ネジ突起33と舟底ネジ突起34とは互いに平行に延びていない。舟底ネジ突起34の傾斜角度βは平行ネジ突起の傾斜角度αよりも大きく(β>α)、舟底ネジ突起34は平行ネジ突起33よりもリップ先端25に対して大きく傾斜している。これにより、ピッチw2が小さくなっても、互いに隣接する舟底ネジ突起34が互いに軸線x方向において重なり合うことはなく、軸線方向に延びる幅dの通路Aが形成されている。本第1の変形例においても、上記密封装置1と同様の効果を奏することができる。
【0053】
図7は、上記本発明の実施の形態に係る密封装置1の第2の変形例の構成を示すためのリップ先端部を拡大して示す密封装置の部分拡大図である。本第2の変形例においては、上述の本発明の実施の形態に係る密封装置1のリップ先端部24の大気側面27上に、円周突起31と同様の円周突起が更に設けられている点において異なる。
【0054】
図7に示すように、本第2の変形例においては、
図7に示すように、リップ先端部24の大気側面27上に、円周突起31に加えて、円周突起38が設けられている。円周突起38は、円周突起31よりも大気側において、円周突起31に対して平行に環状に延びている。円周突起38は、円周突起31よりも大気側において舟底ネジ突起34と交差している。本第2の変形例においても、上記密封装置1と同様の効果を奏することができ、加えて、円周突起38により、リップ先端25方向への異物の侵入の更なる防止を図ることができる。なお、本第2の変形例と同様に上記第1の変形例において、円周突起38を設けてもよい。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係る密封装置1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0056】
具体的には、上述のようなリップ先端部24を有しているものであれば、補強環10や弾性体部20の形態は他の形態であってもよい。また、弾性体部20はダストリップ22を備えないものであってもよい。
【0057】
また、本実施の形態に係る密封装置1は、自動車のエンジンに適用されるものとしたが、本発明に係る密封装置の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等の回転軸等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。
密封装置(1)において弾性体部(20)のシールリップ(21)のリップ先端部(24)はリップ先端(25)を介して接続される密封側面(26)と大気側面(27)とにより画成されており、リップ先端部(24)は大気側面(27)に円周突起(31)とネジ部(32)とを備える。円周突起(31)はリップ先端(25)に対して平行に延び、ネジ部(32)は複数の平行ネジ突起(33)と複数の舟底ネジ突起(34)とを備える。平行ネジ突起(33)はリップ先端(25)と円周突起(31)との間で、舟底ネジ突起(34)は円周突起(31)から大気側に向かって、夫々平行に等ピッチ間隔で配列されている。舟底ネジ突起(34)は隣接する舟底ネジ突起(34)と軸線(x)方向において互いに重なり合っていない。