(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、本明細書中において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、シート状の部材は、フィルム状の部材としてもよいし、板状の部材としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態の背面投射型表示装置1の構成を説明する図である。
図1では、背面投射型表示装置の奥行き方向に平行かつ鉛直方向に平行な断面を示している。
背面投射型表示装置1は、透過型スクリーン10と、光源部80と、筐体90とを備えている。この背面投射型表示装置1は、光源部80から、透過型スクリーン10の背面側へ映像光を投射して透過型スクリーン上に映像を表示する。
本実施形態の背面投射型表示装置1は、太陽光や照明光等といった外光の影響が大きい環境で使用されるものであり、例えば、自動車の内部や船舶の内部(例えば、運転席や機関室等)に配置される車載用や船舶用の背面投射型表示装置である。
【0013】
透過型スクリーン10は、
図1に示すように、観察者O側(映像光の出光側)に凸となる湾曲形状を有している。この透過型スクリーン10の詳細に関しては、後述する。
光源部80は、透過型スクリーン10に対してその背面側から映像光を投射する映像光源である。本実施形態の光源部80は、
図1に示すように、透過型スクリーン10の背面側下方に配置され、ミラー等を介さずに直接投射するように構成されているが、これに限らず、例えば、光源部80から投射された光をミラーで一度反射して透過型スクリーンに投射する形態としてもよい。
この光源部80は、照射領域が次第に広がっていく発散光束(拡大投影された光束)として、透過型スクリーン10の背面側の面(入光面)の全域に映像光を投射する。このような光源部80としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)やレーザを利用したピコプロジェクタ等の小型の光源を用いることができる。
筐体90は、透過型スクリーン10を支持し、かつ、その内部に光源部80を配置可能な部材である。
【0014】
図2は、実施形態の透過型スクリーン10の斜視図である。
図2に示すように、透過型スクリーン10は、全体的にみた場合のスクリーン面が三次元曲面をなすような湾曲形状を有している。
ここで、本明細書において、「二次元曲面」とは、単一の軸を中心として二次元的に湾曲しているもの、或いは、互いに平行な複数の軸を中心として異なる曲率で二次元的に湾曲しているものを意味する。また、「三次元曲面」とは、互いに対して角度をなす複数の軸をそれぞれ中心として、部分的に又は全体的に湾曲しているもの意味するものとする。
【0015】
本実施形態では、透過型スクリーン10は、
図2に示すように、略矩形の板状の部材であり、正面方向から見た場合の対角線の一方と平行で透過型スクリーン10の背面側に位置する第1の軸A1を中心とした方向B1に観察者側(出光側)に凸となるように湾曲し、かつ、他方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(入光側)に位置する第2の軸A2を中心とした方向B2に観察者側に凸となるように湾曲している。そして、透過型スクリーン10の観察面(出光面)において、その表示領域の幾何学的中心となる点C(透過型スクリーン10の平面形状をなす矩形状の一対の対角線が交わる点)が最も観察者側に突出している。
透過型スクリーン10は、観察者側の面(出光面)の最も観察者側に凸となっている点Cにおける法線方向Nに直交する平面(即ち、最も観察者側に凸となった点Cでの接面)が、鉛直方向に平行となっている。
透過型スクリーン10において、この湾曲形状の曲率半径は、2000mm以下であることが好ましく、250mm以上であり1500mm以下であることがより好ましい。
【0016】
なお、本実施形態では、透過型スクリーン10は、観察者側(出光側)に凸となる湾曲形状を有する例を示したが、これに限らず、例えば、光源側(入光側)に凸(即ち、観察者側へ凹)となるような湾曲形状を有していてもよい。また、観察者側に凸となる部分と光源側に凸となる部分とを組み合わせた形状としてもよい。
また、湾曲形状の軸となる第1の軸A1,第2の軸A2は、透過型スクリーン10を正面方向から見た場合の観察画面の矩形形状の対角線にそれぞれ平行である例を示したが、これに限らず、透過型スクリーン10を正面方向から見た場合に、観察画面の幾何学的中心Cを通り画面上下方向に平行な方向と、画面左右方向に平行な方向とをそれぞれ第1の軸、第2の軸としてもよい。
【0017】
図3は、実施形態の透過型スクリーンの層構成を説明する図である。
この透過型スクリーン10は、
図3に示すように、その光源側(入光側)から順に、フレネルレンズ層11、基板層12、光制御層13、光拡散層14、着色層15、表面機能層16等を備えており、これらが接合層17a〜17c等により一体に積層された形状となっている。
以下、本実施形態の透過型スクリーン10を構成する各層について説明する。
フレネルレンズ層11は、光源側(入光側)に設けられたフレネルレンズ部112と、フレネルレンズ部112の観察者側に配置されたフレネル基材部113とを備えている。このフレネルレンズ層11は、光源部80が発散光束として投射した映像光の進行方向を偏向させ、この透過型スクリーン10の正面方向(点Cにおける接面の法線方向)へ進む平行光束とする機能を有している。
このフレネルレンズ部112の機能により、観察者によって観察される映像、特に、観察者によって透過型スクリーン10の斜め方向から観察される場合の映像の明るさの面内ばらつきを低減することができる。
【0018】
フレネルレンズ部112は、フレネル基材部113の入光側の面に一体に形成され、単位レンズ111が複数配列されて形成されたフレネルレンズ形状部である。このフレネルレンズ部112は、所謂、全反射型のフレネルレンズである。
図4は、実施形態のフレネルレンズ部112を説明する図である。
図4(a)は、フレネルレンズ部112を光源側(入光側)正面方向から見た図であり、
図4(b)は、単位レンズ111の配列方向に平行であって厚み方向に平行な面でのフレネルレンズ部112の断面の一部を拡大した図である。
図4に示すように、単位レンズ111は、点Oを中心として同心円状に配列されている。本実施形態では、その中心Oは、透過型スクリーン10の入光側の正面方向(点Cにおける接面の法線方向)から見て、透過型スクリーン10の入光面側の下方であって、点Cに対応する入光面側の点C2(幾何学的中心)を通り画面の上下方向に平行な直線上に位置している。
【0019】
また、
図4(b)に示すように、単位レンズ111は、映像光Lが入射する入射面111aと、入射面111aから入射した光の少なくとも一部を全反射して観察者側へ向ける全反射面111bとを備えている。単位レンズ111は、その配列方向に平行であって、透過型スクリーン10の厚み方向に平行な断面形状が、
図4(b)に示すように、光源側(入光側)に凸となる略三角形形状である。
本実施形態のフレネルレンズ部112は、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂を用いてフレネル基材部113に一体に形成されているが、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂を用いて形成してもよい。
【0020】
このような全反射型のフレネルレンズ部112を備えることにより、通常の屈折型のフレネルレンズ部を備える場合よりも、背面投射型表示装置1の奥行き方向における透過型スクリーン10と光源部80との距離短くすることができ、背面投射型表示装置1の薄型化を図ることができる。
【0021】
フレネル基材部113は、光透過性を有するシート状の部材である。このフレネル基材部113は、フレネルレンズ層11のベースとなる部材である。
フレネル基材部113は、例えば、ポリカーネート(PC)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂や、メタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂、メタクリル酸メチル・スチレン(MS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)等を用いて形成されている。
このフレネル基材部113の厚みは、0.5〜4mmの範囲内で適宜選択可能である。
フレネル基材部113は、光を拡散する拡散材を含有していてもよいし、拡散材を含有しない層と拡散材を含有する層を共押し出し成形した形態としてもよい。
【0022】
基板層12は、透過型スクリーン10の剛性を高める機能を有する層であり、フレネルレンズ層11よりも出光側に配置される。この基板層12は、光透過性を有する板状の部材である。
本実施形態の基板層12は、
図3に示すように、透過型スクリーン10の厚み方向において、フレネルレンズ層11と光制御層13との間に設けられており、それぞれ接合層17a,17bを介して一体に積層されている。
基板層12は、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、PC樹脂、アクロニトリル・スチレン(AS)樹脂等により形成された板状の部材を用いることができる。
また、基板層12の厚さは、約1.5〜5.0mmの範囲内が好ましい。
【0023】
図5は、実施形態の光制御層13を説明する図である。
図5(a)は、光制御層13の断面の一部(透過型スクリーン10の画面上下方向に平行であって厚み方向に平行な断面の一部)を拡大して示している。
図5(b)は、光制御層13を観察者側の正面方向から見た一部を拡大して示している。なお、
図5では、理解を容易にするために、光制御層13は、略平板状である例を示しているが、実際は、前述のように湾曲形状を有している。
光制御層13は、基材部131と、光学形状部134とを備えており、
図3に示すように、接合層17bを介して基板層12の観察者側(出光側)に一体に積層されている。
【0024】
基材部131は、この光制御層13のベースとなる層であり、光透過性を有するシート状の部材である。この基材部131の厚みは、75〜200μmの範囲内で選択可能である。
基材部131を形成する材料としては、PC樹脂や、PET樹脂、TAC樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂等を用いることができる。
【0025】
光学形状部134は、基材部131の観察者側(出光側)の面に一体に積層されており、複数の光透過部132及び光吸収部133を有している。
光透過部132は、
図5(b)に示すように、画面左右方向に延在し、基材部131の観察者側の面に沿って画面上下方向に複数配列された単位光学形状であり、その配列方向に平行であって透過型スクリーン10の厚み方向に平行な断面形状は、
図5(a)に示すように、観察者側を上底とし、光源側を下底とする略台形形状である。本実施形態の光透過部132の断面形状は、等脚台形であり、
図5(a)に示すように、画面上下方向(配列方向)において対称な形状である。
この光透過部132は、光透過性を有する樹脂で形成されている。本実施形態の光透過部132は、ウレタンアクリレート等の紫外線硬化型樹脂により基材部131の出光面に一体に形成されているが、これに限らず、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
また、光透過部132は、PET樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いて熱溶融押出成形により形成されてもよく、この場合において、十分な厚みを有するならば、前述の基材部131を設けない形態としてもよい。
【0026】
光吸収部133は、
図5(a)に示すように、隣り合う光透過部132の間の谷状の部分に形成され、光を吸収する作用を有する部分である。この光透過部132の出光側の面と光吸収部133の出光側の面とで光制御層13の出光側の面が形成されている。
本実施形態の光吸収部133は、
図5(a),(b)に示すように、画面左右方向に延在氏、光制御層13の出光側の面に沿って光透過部132と画面上下方向に交互に配置される形態となっている。
光吸収部133は、その配列方向に平行であって透過型スクリーンの厚み方向に平行な断面における断面形状が楔形形状である。ここでいう楔形形状とは、一方の端部の幅が広く、他方に向けて次第に幅が狭くなる形状をいい、三角形形状や台形形状等を含む。光吸収部133は、
図5(a)に示すように、その断面形状が、観察者側(出光側)を下底、光源側(入光側)を上底とする略台形形状としてもよいし、光源側を頂点とする略三角形形状としてもよい。
【0027】
光吸収部133は、光吸収材等を含有した光透過性を有する樹脂を、光透過部132間の谷部にワイピング(スキージング)して充填し、硬化させる等して形成されている。
光吸収部133に用いられる光透過性を有する樹脂は、光透過部132を形成する樹脂よりも屈折率が小さいものが好ましい。光吸収部133に用いられる光透過性を有する樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂が好適に使用される。
なお、光吸収部133の屈折率は、光透過部132の屈折率よりも小さいことが、映像光の光線制御の観点から好ましいが、光透過部132の屈折率と同じものとしてもよいし、光透過部132の屈折率よりも大きくしてもよい。
光吸収部133に用いられる光吸収材は、可視光領域の光を吸収する機能を有する粒子状等の部材であり、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、顔料や染料、顔料や染料で着色された樹脂粒子等である。顔料や染料で着色された樹脂粒子を用いる場合には、その樹脂粒子は、アクリル系樹脂製や、PC樹脂製、PE樹脂製、PS樹脂製、MBS樹脂、MS樹脂等により形成されたものを用いることができる。
【0028】
図5(a)に示すように、この光透過部132(光吸収部133)の配列ピッチがPであり、光学形状部134の厚み(光透過部132の厚み)がDであり、配列方向における光透過部132の上底の寸法がW1であり、配列方向における光吸収部133の下底の寸法がW2であり、上底の寸法がW3である。また、透過型スクリーン10の厚み方向における光吸収部133の寸法がHであり、光透過部132と光吸収部133との界面が、透過型スクリーン10の厚み方向となす角度がθである。
【0029】
光拡散層14は、光制御層13よりも出光側に設けられ、光を等方的に拡散する作用を有するシート状の部材である。本実施形態の光拡散層14は、光制御層13の観察者側に接合層17cを介して一体に積層されている。光拡散層14は、粒子状等の光拡散材を含有する光透過性を有する樹脂により形成されている。
光拡散層14の母材となる光透過性を有する樹脂は、例えば、MBS樹脂、アクリル樹脂、PC樹脂、PET樹脂等を用いることができる。
また、光拡散材としては、プラスチックビーズ等の有機フィラーであり、特に、透明度の高いものが好ましい。プラスチックビーズとしては、メラミン樹脂製、アクリル樹脂製、AS樹脂製、PC樹脂製等のものを適用可能である。また、シリコン系ビーズも光拡散材として使用可能である。さらに、所望する拡散性能等に合わせて、これらの光拡散材を適宜選択し、所定の割合で組み合わせる等して使用可能である。
光拡散層14の厚さは、0.05〜2.0mmの範囲内が好ましく、0.1〜1.5mmの範囲内とすることがより好ましい。ここで、光拡散層14の厚みが、0.05mm未満となると、光拡散効果が不十分となる可能性があり、また、2.0mmを超えると、透過型スクリーン10に表示される映像がぼやけ、解像度が低下する可能性がある。従って、光拡散層14の厚さは、上記の範囲内が好ましい。
【0030】
着色層15は、光拡散層14よりも観察者側(出光側)に設けられ、所定の色及び濃度で着色されたシート状の部材である。着色層15は、観察者側から透過型スクリーン10に入射する外光を吸収する機能や、透過型スクリーン10内で発生した迷光等を吸収する機能や、光源部80の非点灯時の観察画面の黒味を向上させて観察画面の外観の品位を向上させる機能を有する。
着色層15は、光吸収材や着色剤を含有した透明樹脂により形成されている。着色層15の母材となる透明樹脂は、MBS樹脂や、アクリル樹脂、PC樹脂、PET樹脂等を用いることができる。また、光吸収材は、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等が用いられ、着色剤としては、グレー系や黒色系等の暗色系の染料や顔料等を用いることができる。
【0031】
着色層15は、その厚さが、10〜200μmの範囲内が好ましく、30〜150μmの範囲内とすることがより好ましい。着色層15の厚みが10μm未満であると、外光等を吸収する作用が不十分となる可能性があり、200μmを超えると、映像光の透過率が低下することに加え、光源部80の出力を高める必要が生じて消費電力が増大する可能性がある。従って、着色層15の厚さは、上記範囲内とすることが好ましい。
【0032】
この着色層15は、そのティント率が30%以上70%以下であることが好ましい。ティント率A%は、着色されていない状態の光の透過率を100%とし、着色された状態での光の透過率をB%としたとき、A=100−Bで表されるものである。
この着色層15のティント率が、30%未満の場合には、外光等の吸収作用が不十分となる可能性があり、また、映像非表示時(映像光の非投射時)に外光によって光源部80側が透けて見える等の外観不良やが生じやすくなる。さらに、ティント率が30%未満の場合であって、透過型スクリーン10のピークゲインが高い(ピークゲイン3.0超)場合には、映像表示時(光源部80の点灯時、映像光投射時)に光源部80のシルエット(光源像)が視認される等の表示不良等も生じるおそれがある。
一方、着色層15のティント率が70%を超える場合には、映像光の透過率が低下して映像の輝度が低下することや、光源部80の出力増大に伴う消費電力の増加等が生じる可能性がある。従って、着色層15のティント率は、上記の範囲内とすることが好ましい。
【0033】
本実施形態の着色層15と光拡散層14とは、共押し出し成形することにより一体に形成されており、着色層15と光拡散層14との間には、接合層等を有していない。しかし、これに限らず、着色層15及び光拡散層14を別々に成形してもよいし、不図示の接合層等を介して一体に積層される形態としてもよい。
【0034】
表面機能層16は、着色層15よりも観察者側に配置された層であり、ハードコート機能や、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能等の少なくとも1つの機能を有する層である。
本実施形態の表面機能層16は、ハードコート機能を有しており、光透過性を有し、JIS K 600−5−4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度を有している。
表面機能層16は、着色層15の観察者側の面に、ハードコート機能を有する塗料をスプレー塗装して形成されている。
【0035】
接合層17a,17b,17cは、透過型スクリーン10を構成する各層を一体に接合する層である、本実施形態の接合層17a,17b,17cは、フレネルレンズ層11と基板層12との間、基板層12と光制御層13との間、光拡散層14と光制御層13との間に設けられ、これらの層を一体に接合している。
この接合層17a,17b,17cは、紫外線硬化型のアクリル系樹脂や、圧力により粘着性が顕在化する感圧粘着型のアクリル系樹脂等を用いることができる。また、接合層17a,17b,17cの厚さは、透過型スクリーン10の大きさや使用環境、接合する各層の樹脂の特性、接合層として使用する樹脂の特性等に合わせて、10〜100μmの範囲内で適宜選択できる。
【0036】
本実施形態の透過型スクリーン10は、例えば、フレネルレンズ層11、基板層12、光制御層13、光拡散層14、着色層15を一体に積層して接合した後、加熱して軟化させ、着色層15側が凸となるように、上述のような所定の曲面形状を有した型に押圧する等して、その曲面形状を賦形する。そして、着色層15上に表面機能層16を形成することにより、透過型スクリーン10が形成される。なお、表面機能層16は、曲面形状の形成前に、着色層15上に形成してもよい。
【0037】
本実施形態の透過型スクリーン10は、上述のような着色層15及び光制御層13の光吸収部133を備えており、透過型スクリーン全体としてのピークゲインが、0.3以上3.0以下であることが好ましい。
ここで、ゲインとは、透過型スクリーン10の背面側から光を入射させたとき、透過型スクリーン10の入光面での照度と、透過型スクリーン10の出光面での輝度を、透過型スクリーン10のスクリーン面(透過型スクリーン10全体としてみたときの平面方向)の法線方向となす角度ごとに測定し、以下に示す(式1)より求められる値である。
G=π×A/I ・・・(式1)
なお、(式1)において、ゲインをG、円周率をπ、輝度をA(cd/m
2)、照度をI(lx)で示している。
そして、ピークゲインとは、上記式で得られるゲインのうち最もピーク(最大値)となるものであり、照度が一定の場合には、最も輝度が高いときに得られるゲインである。
【0038】
このピークゲインが、0.3未満の場合、透過型スクリーン10に表示される映像の明るさやコントラストが不十分であり、暗く不明瞭な映像となり、外光の影響が大きい使用環境下においては、使用に適さないという問題がある。また、この場合、映像として所定の明るさを得るために、光源部80消費電力の増大を招くという問題がある。
一方、ピークゲインが3.0を超える場合には、視野角が狭くなったりするという問題がある。また、特に、ピークゲインが3.0を超え、着色層15のティント率が低い(ティント率30%未満)場合には、映像光投射時(光源部80の点灯時)に光源部80のシルエット(光源像)が視認されるという問題がある。
従って、透過型スクリーン10のピークゲインを、0.3以上3.0以下とすることが、良好な映像を表示するという観点から好ましい。
【0039】
本実施形態の透過型スクリーン10において、
図1、
図3、
図4、
図5等に示すように、光源部80から投射され透過型スクリーン10に入射した発散光束である映像光Lは、フレネルレンズ層11のフレネルレンズ部112によって正面方向(前述の点Cにおける接面の法線方向)への平行光束となる。そして、光制御層13に入射し、一部はそのまま正面方向へ出射し、一部は光透過部132と光吸収部133との界面で全反射する等して画面上下方向へ拡散される。このとき、角度θは所定の値となっており、画面上下方向への拡散の度合いは小さいので、正面輝度の低下や画面上下方向への必要以上の拡散を招くことはない。そして、さらに光拡散層14で等方的に拡散して着色層15及び表面機能層16を透過して出射する。
【0040】
一方、観察者側から透過型スクリーン10へ入射する太陽光や照明光等の外光G(
図3参照)は、一部が着色層15で吸収され、一部が光吸収部133で吸収されるので、光源部80側へ到達する光量が大幅低減される。従って、外光によるコントラストの低下を大幅に改善することができる。また、非映像表示状態での透過型スクリーン10の画面の黒味が増し、非映像表示状態(光源部80の非点灯状態)での光源部80側の背面投射型表示装置1の内部が透けて見える等の不具合も防止できる。さらに、映像表示状態(光源部80点灯状態)において光源像が透けて見えるといった不具合も改善できる。
【0041】
さらに、光吸収部133と光透過部132との界面の角度θが決まっているため、太陽光等のように時間によって入射角度が異なる外光の場合、光吸収部133では吸収しきれない外光が存在する。しかし、本実施形態によれば、着色層15を備えているので、そのよな外光も十分吸収できる。
このような外光吸収作用を有しているので、透過型スクリーン10に表示される映像のコントラストが向上し、透過型スクリーン10は、視認性が高く良好な映像を表示できる。
【0042】
(各測定例の透過型スクリーンを備える背面投射型表示装置の評価)
ここで、本実施形態の透過型スクリーン及び背面投射型表示装置の実施例及び比較例に相当する測定例1〜16の透過型スクリーン及び背面投射型表示装置を作製し、その外観性(光源側が透けて見えるか否か)や、表示される映像のコントラスト、消費電力等について評価した。
測定例1〜16の透過型スクリーン及び背面投射型表示装置は、光源部80や筐体90、その画面サイズ(10インチ相当)や湾曲形状、各層の形状や厚み等は共通している。しかし、測定例1〜7の透過型スクリーンは、着色層15のティント率がそれぞれ異なっている。また、測定例8〜16の透過型スクリーンは、ティント率が一定であり、ピークゲインがそれぞれ異なっている。なお、測定例14の透過型スクリーンは、測定例4の透過型スクリーンと同様である。
測定例1〜16において、本実施形態の実施例に相当するもの透過型スクリーン及び背面投射型表示装置は、測定例2〜5,10〜15であり、比較例に相当するものは、測定例1,7〜9,16である。
測定例1〜16の透過型スクリーンの各層の詳細は以下の通りである。
【0043】
着色層15は、厚さが70μm、着色剤としてアクリル系ビーズ(平均粒径約8μm、屈折率1.55)をカーボンブラックで着色したものを含有するMBS樹脂(屈折率1.55)により形成されている。測定例1〜7では、カーボンブラックの配合量を変化させてそのティント率を変えている。また、測定例8〜16では、着色剤の配合量は一定であり、各着色層15のティント率は60%である。
【0044】
光拡散層14は、厚さが140μmであり、光拡散材としてシリコン系ビーズ(平均粒径約2μm、屈折率1.42)とアクリル系ビーズ(平均粒径約10μm、屈折率1.50)とが所定量組み合わされて配合されたMBS樹脂(屈折率1.55)により形成されている。
測定例1〜7においては、光拡散層14の光拡散材の配合量は一定である。また、測定例8〜16においては、光拡散層14の光拡散材の配合量を変化させることにより、透過型スクリーンのピークゲインを変化させている。なお、測定例1〜7においてもピークゲインは変化しているが、これは、着色層15のティント率を変化させたことによるものであり、測定例1〜7の透過型スクリーンの画面左右方向における1/2角は一定である。
なお、ピークゲインに関しては、微小変角輝度計(GP−500、村上色彩技術研究所社製)により測定した。
【0045】
光制御層13は、基材部131が、PC樹脂製のシート状の部材であり、その厚さが150μmである。
光透過部132は、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂(屈折率1.55)により形成され、光吸収部133は、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂(屈折率1.49)に、光吸収材としてカーボンブラックを練りこんだアクリルビーズ(平均粒径約4μm)を含有している。
また、光吸収部133の配列ピッチP=60μm、光吸収部133の下底W2=30μm、光吸収部133の上底W3=6.4μm、光吸収部133の高さH=150μm、光透過部132(光学形状部134)の厚さD=168μm、光透過部132と光吸収部133の界面がなす角度θ=4.5°である。この光制御層13の観察者側面における開口率(光制御層13の観察者側面において、光透過部132が締める面積)は、50%である。
【0046】
基板層12は、PC樹脂製の板状の部材であり、その厚さが2mmである。
フレネルレンズ層11は、フレネル基材部113がPC樹脂製のシート状の部材であり、その厚さが130μmである。また、フレネルレンズ部112には、ウレタンアクリレート系樹脂により、
図4に示すような全反射フレネルレンズ形状が形成されている。
【0047】
評価方法に関しては、以下の通りである。
外観性の評価(外光によって光源部80側が透けて見える現象の有無)に関しては、明室環境下において、映像非表示状態(光源部80の非点灯状態)で、表示装置の観察面から正面方向に1メートル離れたの位置から画面を観察した場合に、照明光等の外光によって光源部80側が透けてみるか否かを目視により評価している。光源部80側が透けて見えるものを不可(×)とし、光源側がやや透けて見えるものを不適(△)とし、光源部80側が透けて見えないものを良(○)とした。
【0048】
コントラストに関しては、暗室環境下、明室環境下(観察画面中央において500lx、5000lx)で、その観察画面上に、黒画面上に白線が格子状に入ったクロスハッチ画像を表示し、観察画面の正面方向に1mの位置からそのクロスハッチ画像の白と黒を目視により観察した場合のコントラストを評価した。この評価は、暗室環境下及び明室環境下(観察画面中央において500lx,5000lx)の総合評価とした。いずれの環境条件においても、コントラストが非常に高く、視認性が非常に高いものを優(◎)とし、コントラストが高く、視認性が高いものを良(○)とし、コントラストがやや低く、映像の視認性がやや低く使用にはやや適さないものを不適(△)とし、コントラストが低く、視認性が低く使用に全く適さないものを不可(×)とした。
【0049】
消費電力に関しては、同サイズの従来の液晶パネルに使用される同じ画面サイズの表示装置を基準として評価し、消費電力計によりその消費電力を測定し、消費電力が非常に低いものを優(◎)とし、消費電力が低いものを良(○)として示し、消費電力が高くやや適さないものを不適(△)として示し、消費電力が大幅に高く使用に適さないものを不可(×)として示した。
【0052】
表1に示すように、測定例1〜7の背面投射型表示装置において、着色層15のティント率が20%の測定例1では、映像非表示時に照明等の外光により光源部80側が透けて視認される外観不良が生じており外観性が低下し、また、コントラスト(特に、5000lxでのコントラスト)が低下していた。
また、表1に示すように、ティント率が80%や90%となる測定例6,7では、光源部80側が透けて見えることがなく、また、コントラストも良好であったが、消費電力が増大していた。
【0053】
これに対して、ティント率が30%〜70%である測定例2〜5では、映像非表示時に外光により光源部80側が透けて見えることがなく外観性の品位も高く、コントラストも良好である。また、消費電力に関しても良好であった。
従って、着色層15のティント率は、30%以上70%以下の範囲とすることにより、映像非表示時に外光により光源部80側が透けて見える等の外観性の品位の低下を極力抑え、コントラストが高く、消費電力も低減された良好な映像を表示できる背面投射型表示装置とすることができる。
【0054】
次に、測定例8〜16の背面投射型表示装置において、ピークゲインが4や5である測定例8,9では、コントラストや消費電力が良好であったが、映像非表示時(光源部80の非点灯時)に、照明等の外光によって光源部80側が透けて観察される等の外観不良があった。
また、ピークゲインが0.2である測定例16では、上述のような、映像非表示時(光源部80の非点灯時)に外光によって光源部80側が透けて見えるといった外観不良は生じていないが、コントラストの低下や、明るい映像を表示するための消費電力の増大が生じており、好ましくない。
【0055】
これに対して、透過型スクリーンのピークゲインが、0.3以上3.0以下の範囲内である測定例10〜15では、光源側が透けて見えることがなく、また、外観の品位も高く、コントラストも良好である。また、消費電力に関しても良好であった。
従って、透過型スクリーンのピークゲインは、0.3以上3.0以下の範囲内とすることにより、コントラストが高く、外光によって光源部80側が透けて見える等の品位の低下を極力抑え、消費電力も低減された良好な背面投射型表示装置とすることができる。
【0056】
上述のように、本実施形態の実施例に相当する測定例2〜5,10〜15の透過型スクリーン及び背面投射型表示装置は、着色層15のティント率及びピークゲインが、上述の好ましい範囲を満たしており、コントラストが高く、外光によって光源部80側が透けて見える等の外観不良が大幅に改善され、良好な映像を表示することができ、さらに、消費電力も低減できた。
以上のことから、本実施形態によれば、コントラストが高く、良好な映像を表示でき、外観の品位が高く、光源側が透けて見える等の不良がない良好な透過型スクリーン及びこれを備えた背面投射型表示装置とすることができる。
【0057】
(他の実施形態)
図6は、実施形態の透過型スクリーンの他の層構成の例を示す断面図である。
ここでは、前述した
図3等に示す透過型スクリーン10と同様の機能を果たす部分には、同一の符号や末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。また、
図6では、実施形態の透過型スクリーンの他の例において、
図3に示す断面に相当する断面を示しており、
図6(a)〜(c)において、紙面左側が観察者側であり、紙面右側が光源側である。
図6(a)に示す透過型スクリーン20Aのように、基板層12を着色層15の出光側に設ける形態としてもよい。
また、
図6(b)に示す透過型スクリーン20Bのように、基板層12を着色層15と光拡散層14との間に設ける形態としてもよい。
さらに、
図6(c)に示す透過型スクリーン20Cのように、所定のティント率で着色された基板層22を光拡散層14の出光側に設けてもよい。このとき、基板層22が含有する着色剤は、前述の着色層15の着色剤と同様のものを用いることができる。
【0058】
なお、
図6において、符号17d〜17hが付される層は、接合層であり、その両面に位置する層を接合する機能を有する。これらの接合層17d〜17hは、前述の接合層17a〜17cと同様のものである。これらの透過型スクリーン20A〜20Cは、前述の透過型スクリーン10と同様に、背面投射型表示装置1に用いることができる。
透過型スクリーン20A〜20Cは、所望する光学性能や意匠性や外観性(光源部80の非点灯時の表示画面の黒さ等)に応じて適宜選択可能である。
【0059】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態において、光源部80は、背面投射型表示装置1の使用状態において、透過型スクリーン10に対して鉛直方向下側から斜めに映像光を投射する例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、透過型スクリーン10に対して鉛直方向上側から斜めに映像光を投射する形態としてもよい。この場合、透過型スクリーン10の上下方向を逆にして配置することが好ましい。
【0060】
(2)本実施形態において、フレネルレンズ層11は、光制御層13に接合され一体に形成される例を示したが、別体のフレネルレンズシートを光制御層13の光源側(入光側)に配置してもよい。
また、本実施形態において、フレネルレンズ部112は全反射型のフレネルレンズ形状である例を示したが、これに限らず、屈折型のフレネルレンズ形状ととしてもよい。
図7は、変形形態の透過型スクリーン40の層構成を説明する図である。
このように屈折型のフレネルレンズを使用する際には、フレネルレンズ部413の位置がフレネル基材層411の出光側に位置するため、別体のフレネルレンズシート41とし、光制御層13、光拡散層14、着色層15らが一体に積層された積層体42とフレネルレンズシート41からなる2枚ものの透過型スクリーン40としてもよい。
なお、この場合、フレネルレンズ形状の光学的中心が透過型スクリーンの幾何学的中心近傍に位置する形状(即ち、偏心していない形状)のフレネルレンズ形状としてもよい。
【0061】
(3)本実施形態において、背面投射型表示装置1は、タッチパネル機能等を備えていない例を示したが、これに限らず、例えば、タッチパネル機能を備えていてもよい。タッチパネル機能としては、例えば、透過型スクリーン10の背面側から赤外光を投射する赤外光投射装置と、透過型スクリーン10の背面側に配置され、赤外光を検出可能な赤外光検出装置とを備える赤外線方式のタッチパネル等を用いることも可能である。
【0062】
(4)本実施形態において、光透過部132及び光吸収部133の断面形状は、略等脚台形状である例を示したが、これに限らず、例えば、1つの光透過部132の画面上下方向において、光吸収部133との界面がシートの厚み方向となす角度θが、上側の角度θと下側の角度θとが異なる大きさのもの(即ち、光透過部及び光吸収部が、画面上下方向において非対称な形状のもの)としてもよい。
また、角度θは、光透過部及び光吸収部の配列方向(画面上下方向)において、変化する形態としてもよい。
【0063】
(5)本実施形態において、透過型スクリーン10は、基板層12を備えている例を示したが、これに限らず、透過型スクリーン10の湾曲形状や画面サイズ、使用環境等に応じて、基板層12を備えない形態としてもよい。
【0064】
(6)本実施形態において、接合層17a〜17cは、着色剤や拡散材を含有していない例を挙げて説明したが、これに限らず、適宜拡散材や着色剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。
【0065】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態等によって限定されることはない。