(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水充填工程において、水は、充填ノズルからプラスチックボトルに充填され、水を充填する際、プラスチックボトルの口部と充填ノズルとが密着していることを特徴とする請求項1または2記載の水充填方法。
水充填工程において、水は、充填ノズルからプラスチックボトルに充填され、水を充填する際、プラスチックボトルの口部と充填ノズルとが離間していることを特徴とする請求項1または2記載の水充填方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図7は本発明の一実施の形態を示す図である。
【0028】
(
水充填システム)
まず
図1乃至
図5により本実施の形態による水充填システムについて説明する。
【0029】
図1に示す水充填システム10は、口部51と、胴部52と、底部53とを有するプラスチックボトル50(
図2)に対して水60を充填し、口部51にキャップ54を装着して閉栓することにより、陽圧化された水充填ボトル70(
図3)を作製するシステムである。
【0030】
図1に示すように、水充填システム10は、ボトル成形部11と、検査部12と、殺菌部13と、リンス部14と、水充填部15と、キャップ装着部16と、ボトル搬出部17とを備えている。これらボトル成形部11と、検査部12と、殺菌部13と、リンス部14と、水充填部15と、キャップ装着部16と、ボトル搬出部17とは、上流側から下流側に向けてこの順に配設されている。
【0031】
また、水充填部15には、プラスチックボトル50に充填される水60に対して予め空気を過溶解させる、空気溶解部18が接続されている。さらに、キャップ装着部16には、キャップ54を滅菌するとともに、この滅菌したキャップ54をキャップ装着部16に搬送するキャップ滅菌部19が接続されている。
【0032】
このうち最上流側に位置するボトル成形部11は、プリフォーム55からプラスチックボトル50(
図2)を成形するものである。このボトル成形部11は、プリフォーム55が搬入されるプリフォーム搬入部25と、プリフォーム搬入部25から送られたプリフォーム55を加熱するプリフォーム加熱部26と、プリフォーム加熱部26で加熱されたプリフォーム55を2軸延伸ブロー成形してプラスチックボトル50を作製するブロー成形部27とを有している。
【0033】
また、ボトル成形部11内には、プリフォーム55および/またはプラスチックボトル50を搬送する複数の搬送機構28が配置されている。なお、プリフォーム加熱部26およびブロー成形部27の構成は、それぞれ特に限定されるものではなく、一般に使用されている装置を用いることができる。例えば、ブロー成形部27は、
図1に示すようなロータリー式の機構に限らず、リニア式の機構を用いても良い。また搬送機構28についても、
図1に示すようなロータリー式の機構に限らず、リニア式の機構を用いても良い。又、以下に説明する検査部12は、ブロー成形部27に含まれていても良い。
【0034】
検査部12は、ボトル成形部11の下流側に位置しており、ボトル成形部11で作製されたプラスチックボトル50の検査を行うものである。この検査部12は、プラスチックボトル50の変形やキズ等を検査する検査装置29を有している。このような検査装置29としては、従来一般に用いられているボトル検査装置を使用することができる。
【0035】
また、検査部12内には、プラスチックボトル50をボトル成形部11側から殺菌部13側へ搬送する複数の搬送機構30が配置されている。
【0036】
殺菌部13は、ボトル成形部11および検査部12の下流側に位置しており、検査部12から送られてきたプラスチックボトル50内を殺菌するものである。この殺菌部13は、空のプラスチックボトル50内を殺菌する殺菌装置31を有している。
【0037】
殺菌装置31で用いられる殺菌方法としては、例えば電子線殺菌(以下、EB(Electron Beam)殺菌ともいう)方法が用いられても良い。又、水は微生物が増え難い為、60℃〜100℃程度の温水を用いた温水リンス殺菌方法を用いても良い。あるいは、殺菌剤によりプラスチックボトル50を殺菌する、薬剤殺菌方法が用いられても良い。
【0038】
また、殺菌部13内には、プラスチックボトル50を検査部12側からリンス部14側へ搬送する複数の搬送機構33が配置されている。
【0039】
リンス部14は、殺菌部13の下流側に位置しており、プラスチックボトル50内部をリンス水により洗浄するものである。このリンス部14は、殺菌部13において内部が殺菌されたプラスチックボトル50内へリンス水を供給するリンス水供給装置34を有している。リンス水供給装置34で用いられるリンス水は、例えば25℃〜80℃程度の温水(無菌水)からなっていても良い。その後リンス水を乾燥させる乾燥装置(図示せず)が設けられている。乾燥装置において用いられる気体としては、例えば空気または窒素等の不活性ガスが挙げられる。なお、殺菌部13において温水リンス殺菌方法を用いる場合、リンス部14においてはエア(空気)リンスによる水切りのみを行うようにしても良い。
【0040】
また、リンス部14内には、プラスチックボトル50を殺菌部13側から水充填部15側へ搬送する複数の搬送機構35が配置されている。
【0041】
なお、リンス部14と水充填部15との間には、リンス部14から水充填部15へプラスチックボトル50を搬送するボトル搬送部20が設けられている。なお、符号36は、ボトル搬送部20内でプラスチックボトル50を搬送する搬送機構を示している。
【0042】
一方、空気溶解部18は、水充填部15に接続されており、上述したように水60に予め空気を過溶解させるものである。この空気溶解部18は、水60を貯留する第1タンク61と、第1タンク61からの水60に空気を過溶解させる空気溶解装置62と、空気溶解装置62によって空気が過溶解された水60を貯留する第2タンク63とを有している。
【0043】
このうち第1タンク61は、空気を過溶解させる前の水60が予め投入されて貯留しておくためのものである。また、空気溶解装置62としては、炭酸飲料の製造で用いられる一般的なカーボネーターやスタティックミキサー等を用いることができる。このような空気溶解装置62を用いた場合、炭酸飲料製造ラインのガス種を変えるだけで空気溶解部18を構成することができるので、水充填システム10の設備コストを低く抑えることができる。
【0044】
この空気溶解装置62には、雰囲気中の空気を圧縮する例えばコンプレッサーからなる空気圧縮装置64が接続されている。この場合、空気溶解装置62と空気圧縮装置64との間には、空気を無菌化する無菌フィルター65が設けられている。この無菌フィルター65に含まれるフィルターの材質としては、樹脂製及び金属製のものを用いることが好ましく、特に樹脂としてはポリオレフィン製やポリイミド製のものを用いることが好ましく、金属としてはステンレス製のものを用いることが好ましい。また、フィルターの目の細かさとしては0.01μm〜1μmのものを採用することが好ましい。そして雰囲気中の空気(Air)は、空気圧縮装置64に取り込まれ、空気圧縮装置64により圧縮された後、無菌フィルター65を介して空気溶解装置62に送られる。
【0045】
第2タンク63は、空気が過溶解された水60を一時的に貯留するためのものであり、その内部が加圧されている。また、第2タンク63において、水60の温度を例えば4℃〜40℃に調整することができる。
【0046】
水充填部15は、リンス部14の下流側に位置しており、空気溶解部18によって空気が過溶解された水60をプラスチックボトル50内に充填するものである。この水充填部15は、プラスチックボトル50をリンス部14側からキャップ装着部16側へ回転しながら搬送する回転搬送機構37と、回転搬送機構37の途中に設けられ、プラスチックボトル50内へ水60を充填する充填ノズル38a(38b)(
図4(a)(b))を有する充填装置38とを有している。充填装置38は、空気溶解部18の第2タンク63に接続されており、充填装置38には第2タンク63からの水60が送り込まれる。水充填部15としては、
図1に示すような回転搬送機構37を用いるロータリー型充填機構のほか、プラスチックボトル50を直線的に移動させて充填するリニア型充填機構を用いても良い。
【0047】
なお、水充填部15において水60を充填する際、
図4(a)に示すようにプラスチックボトル50の口部51と充填ノズル38aとが離間していても良く(口上充填方式ともいう)、あるいは
図4(b)に示すようにプラスチックボトル50の口部51と充填ノズル38bとが密着していても良い(密着充填方式ともいう)。とりわけ、プラスチックボトル50内を加圧状態にしながら口部51と充填ノズル38bとを密着させて充填することが好ましい(密着加圧充填方式)。この場合、充填時の溶解空気の発泡を抑えることが可能となるからである。
【0048】
水充填部15における水60の充填時の温度は、上述したように第2タンク63で調整されており、具体的には4℃〜40℃である。
【0049】
キャップ装着部16は、水充填部15の下流側に位置している。このキャップ装着部16は、プラスチックボトル50の口部51にキャップ54を装着することにより、プラスチックボトル50を閉栓するキャッパー39を有している。
【0050】
また、キャップ装着部16内には、プラスチックボトル50を水充填部15からキャッパー39へ搬送する搬送機構40と、キャップ滅菌部19からのキャップ54をキャッパー39へ搬送するキャップ搬送機構41とが設けられている。
【0051】
このように、キャップ装着部16においてプラスチックボトル50の口部51にキャップ54を装着することにより、陽圧化された水充填ボトル70(
図3)が得られる。
【0052】
ボトル搬出部17は、このようにして得られた陽圧化された水充填ボトル70を水充填システム10の外方へ搬出するものである。
【0053】
さらに、
図1に示すように、キャップ装着部16およびボトル搬出部17の下流側に、水中に過溶解された空気をプラスチックボトル50のヘッドスペース中に押し出す過溶解ガス発生部43が設けられていても良い。この過溶解ガス発生部43は、水中に過溶解された空気を水充填ボトル70(プラスチックボトル50)のヘッドスペース中に押し出し、これにより水充填ボトル70の内部を陽圧化するものである。なお、過溶解ガス発生部43としては、超音波水シャワーを使用等することにより、過溶解された空気を強制的に発生させる装置を用いても良い。あるいは、過溶解ガス発生部43としては、水充填ボトル70がダンボール詰めされるまでの間、ベルトコンベア搬送中に振動が加わることにより、(自然に)過溶解された空気がヘッドスペースに発生するものであっても良い。
【0054】
ところで、
図1に示すように、水充填システム10を構成する、ボトル成形部11、検査部12、殺菌部13、リンス部14、ボトル搬送部20、水充填部15、キャップ装着部16、ボトル搬出部17、空気溶解部18、およびキャップ滅菌部19は、互いに連結されて一体化されたユニットからなっている。すなわち、本実施の形態による水充填システム10は、プリフォーム55をボトル成形部11に搬入してから、水充填ボトル70をボトル搬出部17から搬出するまで、一つの場所で各工程を一貫して行うことができるようになっている。
【0055】
本実施の形態においては、ボトル成形部11、検査部12および殺菌部13のそれぞれの間で、例えばエアシューターを用いることによりプラスチックボトル50を搬送することがないので、水充填システム10の全体をコンパクトに構成することができる。また、エアシューターを用いてエア搬送する間にプラスチックボトル50同士が衝突することもないので、とりわけ軽量化したプラスチックボトル50を用いた場合に、プラスチックボトル50が変形することを防止することができる。さらに、本実施の形態においては、殺菌部13において、ボトル成形部11のプリフォーム加熱部26による熱を予熱として用いることにより、殺菌を行うことができるので、省エネ化を図ることができる。但し、プラスチックボトル50の重量が重い場合、エアシューターを使用した際の衝突による変形が無くなる為、エアシューターを使用したシステムでも良い。
【0056】
なお、
図1において、殺菌部13、リンス部14、ボトル搬送部20、水充填部15、およびキャップ装着部16は、無菌雰囲気とされている。したがって、上記殺菌部13、リンス部14、ボトル搬送部20、水充填部15、およびキャップ装着部16によって実行される各工程(後述)は、いずれも無菌雰囲気下で行われるようになっている。
【0057】
本実施の形態において、殺菌部13からキャップ装着部16までのプラスチックボトル50の生産(搬送)速度は、100bpm〜1500bpmとすることが好ましい。ここでbpm(bottle per minute)とは、1分間当たりのプラスチックボトル50の搬送速度をいう。
【0058】
なお、水充填システム10は、必ずしもボトル成形部11および検査部12を有していなくても良い。この場合、水充填システム10の外部でボトル50を作製し、水充填システム10の殺菌部13に直接供給しても良い。また、この場合、殺菌部13、リンス部14、ボトル搬送部20、水充填部15、キャップ装着部16、ボトル搬出部17、空気溶解部18、およびキャップ滅菌部19は、互いに連結されて一体化されたユニットからなっていても良い。
【0059】
なお、本実施の形態において用いられる水60としては、例えばミネラルウォーターのような飲料用の水のほか、フレーバーウォーター(柑橘系やミントフレーバー等の香料付きウォーター)のように、水に香料等の成分を含有させたものを用いても良い。
【0060】
(
水充填方法)
次に、
図1および
図5により、本実施の形態による水充填方法(DAir(Dissolved Air)技術と定義する)について説明する。本実施の形態による水充填方法は、例えば上述した水充填システム10(
図1)を用いて行われるものである。
【0061】
まず、ボトル成形部11において、プリフォーム55からプラスチックボトル50が成形される(ボトル成形工程)(
図5のステップS1)。
【0062】
この間、まずプリフォーム55が水充填システム10の外部からプリフォーム搬入部25に搬入され、このプリフォーム55がプリフォーム加熱部26によって加熱される。次に、プリフォーム加熱部26で加熱されたプリフォーム55は、ブロー成形部27において2軸延伸ブロー成形され、プラスチックボトル50(
図2)が作製される。なお、ボトル成形部11内では、複数の搬送機構28によってプリフォーム55および/またはプラスチックボトル50が搬送されるようになっている。
【0063】
このようにして作製されたプラスチックボトル50は、ボトル成形部11から検査部12に搬送される。次に、検査部12の検査装置29により、プラスチックボトル50の変形やキズ等の検査が行われる(検査工程)(
図5のステップS2)。
【0064】
仮に、検査部12により、プラスチックボトル50に変形やキズ等の不具合が存在することが検出された場合、このプラスチックボトル50は、検査部12から水充填システム10の外部へ排出される。なお、検査部12内では、複数の搬送機構30によってプラスチックボトル50が搬送される。
【0065】
次に、プラスチックボトル50は、検査部12から殺菌部13に搬送される。
【0066】
なお、水充填システム10がボトル成形部11および検査部12を有していない場合、上述したボトル成形工程および検査工程を経ることなく、水充填システム10の外部で作製されたボトル50を直接殺菌部13に供給しても良い。
【0067】
続いて殺菌部13において、EB殺菌方法、温水リンス殺菌方法または薬剤殺菌方法等により、プラスチックボトル50内を殺菌する(殺菌工程)(
図5のステップS3)。殺菌部13においては、殺菌装置31によりプラスチックボトル50内が殺菌される。なお、殺菌部13内では、複数の搬送機構33によってプラスチックボトル50が搬送される。
【0068】
上述したように、ボトル成形部11、検査部12、および殺菌部13は、互いに連結されて一体化されている。したがって、殺菌部13において、ボトル成形部11のプリフォーム加熱部26による熱を予熱として用いて殺菌効率を高める事ができる。
【0069】
続いて、プラスチックボトル50は、殺菌部13からリンス部14に搬送される。次に、このリンス部14において、プラスチックボトル50内へリンス水が供給される(リンス工程)(
図5のステップS4)。
【0070】
すなわち、リンス水供給装置34により、殺菌部13で内部が殺菌されたプラスチックボトル50内へリンス水を供給することにより、リンス水を用いてプラスチックボトル50内を洗浄し、プラスチックボトル50内に残存する異物等を取り除く。なお、リンス部14内では、複数の搬送機構35によってプラスチックボトル50が搬送される。なお、殺菌部13において温水リンス殺菌方法を用いた場合、リンス部14においてはエア(空気)リンスによる水切りのみを行うようにしても良い。
【0071】
続いて、プラスチックボトル50は、リンス部14からボトル搬送部20に搬送される。このボトル搬送部20において、プラスチックボトル50は、搬送機構36を介して水充填部15に向けて搬送される。
【0072】
続いて、水充填部15において、プラスチックボトル50の口部51から水60が充填される(水充填工程)(
図5のステップS5)。
【0073】
このようにして充填される水60には、空気溶解部18により予め空気が過溶解されている。すなわち本実施の形態において、水充填工程S5の前に、水60に予め空気を過溶解させる空気溶解工程(
図5のステップS8)が設けられている。
【0074】
空気溶解工程S8においては、まず、空気を過溶解させる前の水60を第1タンク61内に貯留しておく。次に、例えばコンプレッサーからなる空気圧縮装置64により、雰囲気中の空気を圧縮し、これを無菌フィルター65を通して無菌化するとともに、空気溶解装置62に送り込む。
【0075】
次に、第1タンク61からの水60を空気溶解装置62に送り、空気溶解装置62は、空気圧縮装置64からの空気を、第1タンク61からの水60に対して過溶解させる。具体的には、加圧した状態で空気を水60に接触させることにより、空気を水60に過溶解させる。その後、空気溶解装置62によって空気が過溶解された水60は、第2タンク63に送られて貯留される。
【0076】
この第2タンク63において、水60の温度が例えば4℃〜40℃に調整され、この水60は、水充填部15の充填装置38に送られる。そして充填装置38において、充填ノズル38aからプラスチックボトル50内へ水60が充填される。この場合、水60は4℃〜40℃の温度で充填される。
【0077】
なお、例えば水60の充填温度が4℃〜40℃であり、水60に対する空気の溶解圧が0.01MPa〜0.3MPaであり、かつプラスチックボトル50の充填量が400ml〜600mlであり、水60の空寸部が0ml〜20mlである場合、プラスチックボトル50内に充填される水60の量に対する、水60中に過溶解された空気の量は、0.02g/L〜0.38g/Lであることが好ましい。水60中に過溶解された空気の量を0.02g/L以上とすることにより、キャップ54を装着して閉栓した後、プラスチックボトル50の内部の圧力を十分に高め、プラスチックボトル50の強度を高めることができる。また、水60中に過溶解された空気の量を0.38g/L以下とすることにより、プラスチックボトル50内部の圧力が高くなりすぎないので、閉栓後にプラスチックボトル50の加圧変形による著しい外観不良もなく、キャップのシール性も確保することができる。
【0078】
なお、上述したように、水充填工程S5において、水60を充填する際、プラスチックボトル50の口部51と充填ノズル38aとが離間していても良く(
図4(a))、あるいはプラスチックボトル50の口部51と充填ノズル38bとが密着していても良い(
図4(b))。プラスチックボトル50の口部51と充填ノズル38bとを密着させる場合、プラスチックボトル50内を加圧状態にしながら充填することが好ましい(密着加圧充填方式)。
【0079】
続いて、プラスチックボトル50は、回転搬送機構37により水充填部15からキャップ装着部16に向けて搬送される。次に、キャップ装着部16において、プラスチックボトル50の口部51にキャップ54が装着される(キャップ装着工程)(
図5のステップS6)。
【0080】
口部51に装着されるキャップ54は、予めキャップ滅菌部19で殺菌される(キャップ殺菌工程)(
図5のステップS9)。その後キャップ54は、キャップ搬送機構41を介してキャッパー39に搬送され、このキャッパー39においてプラスチックボトル50の口部51に装着される。
【0081】
このようにして得られた陽圧化された水充填ボトル70(
図3)は、ボトル搬出部17によって水充填システム10の外方へ搬出される(搬出工程)(
図5のステップS7)。
【0082】
なお、上述した殺菌工程S3、リンス工程S4、水充填工程S5、およびキャップ装着工程S6は、いずれも無菌雰囲気下で行われる。
【0083】
なお、過溶解ガス発生部43が設けられている場合、キャップ装着工程S6の後、この過溶解ガス発生部43において、水中に過溶解された空気を水充填ボトル70(プラスチックボトル50)のヘッドスペース中に押し出し、これにより水充填ボトル70の内部を陽圧化する(過溶解ガス発生工程)(
図5のステップS10)。水中に過溶解された空気を押し出す方法としては、超音波水シャワーの使用等により過溶解された空気を強制的に発生させる方法を用いても良い。あるいは、水充填ボトル70がダンボール詰めされるまでの間、ベルトコンベア搬送中に振動が加わることにより、(自然に)過溶解された空気がヘッドスペースに発生するようにしても良い。
【0084】
以上のように本実施の形態によれば、水60に予め空気を過溶解させ、その後空気が過溶解された水60を、プラスチックボトル50内に充填する。このことにより、プラスチックボトル50の口部51にキャップ54が装着されて閉栓された後、水60中に過溶解された空気はプラスチックボトル50内のヘッドスペース中に気化し、プラスチックボトル50内が陽圧に保持される。
【0085】
一般に、空気は約80%の窒素(N
2)および約20%の酸素(0
2)を含み、水に対する各気体の溶解度(20℃・1atm)は、窒素(N
2)が0.016ml/mlであるのに対し、酸素(0
2)が0.031ml/mlである。この為、空気は窒素ガスと比較して水に溶け込み易い。したがって、窒素ガスのみを過溶解させる場合(上述したDN2技術)と比較して、プラスチックボトル50内の圧力を高めることができる。
【0086】
また本実施の形態によれば、水60に空気を過溶解させることにより、窒素ガスを過溶解させる場合と比較して、省エネルギー化を図るとともに、環境負荷を低下することができる。すなわち、水60に空気を過溶解させる場合、空気圧縮装置64により空気を圧縮して使用するだけなので、使用するエネルギーが少なくて済む。これに対して、水60に窒素ガスを過溶解させる場合、液体窒素を作製したり、あるいは分留器を用いて液化空気から液化窒素を分留する際に膨大なエネルギーが必要となる。したがって、本実施の形態においては、空気を用いることにより低コストでプラスチックボトル50内を陽圧にすることができる。
【0087】
さらに、特にプラスチックボトル50が軽量化ボトルからなる場合、その強度が不足しやすい傾向があるが、本実施の形態によれば、過溶解された空気によってボトルの内圧を陽圧にしているので、ボトル強度を比較的容易な方法で高めることができる。
【0088】
さらにまた、本実施の形態によれば、キャッピング後(保存中)にプラスチックボトル50内のガスがボトルを透過して外気に逃げた場合であっても、水60から気相へガスがチャージされるので、容器の内圧が低下することがない。これに対して、比較例として、上述したLN2(Liquid Nitrogen)技術を用いた場合、キャッピング前に液体窒素を添加した量でボトルの内圧が決まり、その後ガスがチャージされることがないため、容器の内圧が低下するおそれがある。
【0089】
(
水充填ボトル)
次に
図2、
図3、
図6および
図7により、本実施の形態による水充填ボトルについて説明する。
【0090】
図3に示す水充填ボトル70は、プラスチックボトル50と、プラスチックボトル50内に充填された水60とを備えている。このうちプラスチックボトル50は、口部51と、胴部52と、ペタロイド形状からなることにより耐圧補強された底部53とを有している(
図2および
図3)。
【0091】
このような水充填ボトル70は、
図1に示す水充填システム10を用い、
図5に示す水充填方法により作製されたものであり、少なくともキャップ装着部16においてプラスチックボトル50を閉栓した直後には、水60に空気が過溶解されている。一定時間の経過後、水60中に過溶解された空気はヘッドスペース中に気化し、プラスチックボトル50内が陽圧に保持される。このときのプラスチックボトル50内の圧力は、例えば10kPa〜300kPa程度とすることが好ましい。
【0092】
なおプラスチックボトル50の主材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PLA(ポリ乳酸)等を使用する事が好ましい。また、プラスチックボトル50の重量は限定されるものではない。
【0093】
ところで、上記においては、プラスチックボトル50としてその底部53がペタロイド形状からなる場合を例にとって説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、プラスチックボトルとしては、
図6および
図7に示す構成のものを用いることもできる。
【0094】
図6に示す変形例おいて、プラスチックボトル50Aは、口部51と、胴部52と、底部53Aとを有している。底部53Aには、陥没部56が形成されることにより耐圧補強されている。
【0095】
また、
図7(a)〜(c)に示すように、凹部、凸部および/または溝により耐圧補強された底部53B〜53Dを有するプラスチックボトル50B〜50Dを用いても良い。
【実施例】
【0096】
次に、本発明の具体的実施例を説明する。
【0097】
(陽圧化でのエネルギー消費量の計算)
以下に挙げる3種類の水充填ボトル(実施例1、比較例1、2)について、プラスチックボトル50の内部を陽圧化する際に必要となるエネルギー消費量を計算した。
【0098】
(実施例1)
図1に示す本実施の形態による水充填システム10を用い、かつ
図5に示す水充填方法により、
図3に示す水充填ボトル70(実施例1)を作製した(DAir技術)。なお、プラスチックボトル50としては、容量500mlかつ重量12gのPETボトルを用いた。また、プラスチックボトル50内のヘッドスペース体積が20m1であり、プラスチックボトル50内の圧力が50kPaとなるように陽圧化した。また、水60としては水を用いた。
【0099】
(比較例1)
空気溶解工程において、水60に対して、空気ではなく窒素ガスを過溶解したこと、以外は、上記実施例1と同様にして水充填ボトル(比較例1)を作製した(DN2技術)。窒素ガスは窒素ガス発生装置を使用して作製した。
【0100】
(比較例2)
水60に対して予め気体を溶解することなく、通常の水60をプラスチックボトル50に充填した後、閉栓する直前に液体窒素を添加し、プラスチックボトル50内部を陽圧化することにより、水充填ボトル(比較例2)を作製した(LN2技術)。プラスチックボトル50としては、上記実施例1と同様のものを用い、プラスチックボトル50内のヘッドスペース体積およびプラスチックボトル50内の圧力についても上記実施例1の場合と同様にした。
【0101】
このようにして得られた各水充填ボトル(実施例1、比較例1、比較例2)について、プラスチックボトル50内部を陽圧化する際に必要となるエネルギー消費量を計算した(表1)。
【0102】
【表1】
【0103】
この結果、水充填ボトル70(実施例1)のプラスチックボトル50内部を陽圧化する際に必要となるエネルギー消費量を100%とした場合、水充填ボトル(比較例1、比較例2)のプラスチックボトル50内部を陽圧化する際に必要となるエネルギー消費量は、それぞれ168%、350%となった。したがって、本実施の形態による水充填方法(DAir技術)を用いた場合、プラスチックボトル50内部を陽圧化する際に必要となるエネルギー消費量を従来より削減できることが分かった。
【0104】
(空気注入量及びボトル内圧測定結果)
以下に挙げる6種類のプラスチックボトル(実施例2〜
3、
参考例1〜2、比較例3〜4)について、水充填ボトル70のプラスチックボトル50の積載強度を測定した結果について評価した。
【0105】
(実施例2)
図1に示す本実施の形態による水充填システム10を用い、かつ
図5に示す水充填方法により、
図3に示す水充填ボトル70(実施例2)を作製した(DAir技術)。なお、プラスチックボトル50としては、容量500mlで重量12gのPETボトルを用いた。この場合、空気溶解工程(
図5のステップS8)において、水60中に過溶解させる空気の量(空気注入量)は0.20g/Lとした。また、水充填工程(
図5のステップS5)における水60の充填温度は15℃とし、空寸部を10mlとした。
【0106】
(実施例3)
空気溶解工程(
図5のステップS8)において、水60中に過溶解させる空気の量(空気注入量)を0.02g/Lとしたこと、以外は、上記実施例2と同様にして水充填ボトル70(実施例3)を作製した。
【0107】
(
参考例1)
空気溶解工程(
図5のステップS8)において、水60中に過溶解させる空気の量(空気注入量)を0.20g/L、ボトル容量を300mlとしたこと、以外は、上記実施例2と同様にして水充填ボトル70(
参考例1)を作製した。
【0108】
(
参考例2)
空気溶解工程(
図5のステップS8)において、水60中に過溶解させる空気の量(空気注入量)を0.38g/L、ボトル容量を300mlとしたこと、以外は、上記実施例2と同様にして水充填ボトル70(
参考例2)を作製した。
【0109】
(比較例3)
プラスチックボトル50の重量を18gとしたこと、および空気溶解工程(
図5のステップS8)において、水60中に空気を過溶解させなかったこと、以外は、上記実施例2と同様にして水充填ボトル70(比較例3)を作製した。
【0110】
(比較例4)
プラスチックボトル50の重量を15gとしたこと、容量を300mlとしたこと、および空気溶解工程(
図5のステップS8)において、水60中に過溶解させないこと、以外は、上記実施例2と同様にして水充填ボトル70(比較例4)を作製した。
【0111】
このほかの6種類の水充填ボトル70(実施例2〜
3、
参考例1〜2、比較例3〜4)について、プラスチックボトル50の積載強度を測定した(表2)。
【0112】
【表2】
【0113】
この結果、水充填ボトル70(実施例3)のプラスチックボトル50の強度改善効果は10Nとなった。これはわずかに改善された程度であり、強度低下を補填する効果が薄い。他方、水充填ボトル70(実施例2)のプラスチックボトル50の強度改善効果は150Nとなり、強度も280Nであった。プラスチックボトル50の強度は18gのボトル(比較例3)と同程度の強度であった。また、水充填ボトル70(
参考例1)のプラスチックボトル50は、容量が300mlであり容器サイズが小さいため、空気注入量が0.20g/Lでは強度改善効果は10Nとなった。他方、水充填ボトル70(
参考例2)のプラスチックボトル50の強度改善効果は160Nとなり、強度も300Nであった。また、このプラスチックボトル50の強度は、15gのボトル(比較例4)と同程度の強度であった。