(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した樹脂製保持器101は、いずれも柱部102を弾性変形させながら保持器の径方向から円すいころをポケット内に組み込むため、柱部102と円すいころ105との周方向隙間を狭くできなかった。従って、軸受内の空間体積の減少には限界があり、軸受内に滞留する潤滑油量を減少させて攪拌抵抗を低減させ、また円すいころ105を更に安定的に保持するためには、改善の余地があった。また、柱部102を弾性変形させながら円すいころ105を組み込むので、組み付け難く、生産効率が低いという問題があり、柱部102の稜線部に損傷を与える可能性もあった。
更に、柱部102は、軸受内を通過していく潤滑油量を調整することもできないため、例えば、いわゆる循環潤滑の場合等に、必要以上の潤滑油を通過させてしまった。従って、軸受以外の回転部分においても潤滑油の攪拌抵抗を増大させる可能性があった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ころ軸受内を通過する潤滑油量の制御を行い、軸受の潤滑を良好に保つと共に、適量の潤滑油が軸受内を通過する様に調整できるころ軸受用保持器及びころ軸受を提供することにある。さらには、円すいころ軸受内の空間体積を小さくし、軸受内部に滞留する潤滑油の攪拌抵抗を低減させると共に、円すいころの組付け性向上を図った円すいころ軸受用樹脂製保持器及び円すいころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)一方の円環部と、他方の円環部と、前記両円環部を連結するように、円周方向に所定の間隔で配置される複数の柱部と、を備え、前記両円環部と前記隣接する柱部との間に、ころを保持するためのポケット部を形成するころ軸受用保持器であって、
前記柱部は、ころ案内面をそれぞれ有する一対の円周方向側面を有し、
前記ポケット部は、前記隣接する柱部の対向する円周方向側面間における外径側ポケット幅及び内径側ポケット幅がころ径より小さい、ころ抱え込み領域を有することを特徴とするころ軸受用保持器。
(2)保持器が合成樹脂である(1)に記載のころ軸受用保持器。
(3)内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動自在に配置される複数のころと、
該複数のころを円周方向に所定の間隔で保持する(1)又は(2)に記載の保持器と、
を備えるころ軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明のころ軸受用保持器およびころ軸受によれば、ころ軸受内を通過する潤滑油量の制御を行い、軸受の潤滑を良好に保つと共に、適量の潤滑油が軸受内を通過する様に調整することができる。従って、いわゆる循環潤滑の場合等に、必要以上の潤滑油を通過させることが無いので、軸受以外の回転部分においても潤滑油の攪拌抵抗を低減させて回転トルクの低減を図ることができる。
また、本発明の円すいころ軸受用樹脂製保持器及び円すいころ軸受によれば、柱部は、一対の円周方向側面と、周方向幅が小径円環部側より大径円環部側において小さい内側内周面を有し、ころ抱え込み領域では、外径側ポケット幅及び内径側ポケット幅がころ径より小さくされているので、円すいころを軸方向から保持器に組み込み可能とすることで組付け性が向上するとともに、柱部と円すいころとの周方向隙間が、円すいころを径方向から組み込むことが困難な程度にまで小さい状態で組み込むことができ、円すいころを抱え込むようにして安定的に保持すると共に、潤滑油の攪拌抵抗を低減させて回転トルクの低減を図ることができる。
【0009】
また、本発明の円すいころ軸受用樹脂製保持器及び円すいころ軸受によれば、柱部は、一対の円周方向側面と、前記保持器が組み込まれた際に、前記軸受の内輪の小鍔部及び大鍔部の軸方向内側縁部を結んだ線よりも径方向内方に位置する部分を少なくとも有する内側内周面とを備え、ころ抱え込み領域では、外径側ポケット幅及び内径側ポケット幅がころ径より小さくされているので、上記と同様に、円すいころ軸受内の空間体積を小さくして、軸受内部に滞留する潤滑油の攪拌抵抗を低減させると共に、円錐ころの組付け性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る円すいころ軸受の側面図である。
【
図2】
図1に示す円すいころ軸受の縦断面拡大図である。
【
図3】円すいころ軸受用樹脂製保持器の斜視図である。
【
図4】
図3に示す保持器に円すいころを組み込む状態を示す側面図である。
【
図5】(a)は
図3に示す保持器を大径円環部側から見た正面図、(b)は要部拡大図である。
【
図6】(a)は
図2におけるVI−VI断面図、(b)はVI´−VI´断面図である。
【
図7】ころ案内面による円すいころの案内位置と保持器に作用する分力の関係を示す概略図である。
【
図8】第1実施形態の第1変形例に係る、円弧形状からなるころ案内面を示す断面図である。
【
図9】(a)は、第1実施形態の第2変形例の保持器の全体斜視図、(b)は大径円環部の拡大斜視図である。
【
図10】第1実施形態の第3変形例の大径円環部の拡大斜視図である。
【
図11】(a)、(b)は、第1実施形態の第4及び第5変形例の保持器の縦断面図である。
【
図12】(a)は本発明の第2実施形態の円すいころ軸受の縦断面図、(b)は保持器に沿う潤滑油の流れを示す縦断面図である。
【
図13】
図12に示す円すいころ軸受用樹脂製保持器の外観斜視図である。
【
図14】第2実施形態の第1変形例の円すいころ軸受の縦断面図である。
【
図15】(a)は、第2実施形態の第2変形例の円すいころ軸受の縦断面図であり、(b)は、第2実施形態の第3変形例の円すいころ軸受の縦断面図である。
【
図16】(a)は、第2実施形態の第4変形例の円すいころ軸受の縦断面図であり、(b)は、第2実施形態の第5変形例の円すいころ軸受の縦断面図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る円すいころ軸受の縦断面図である。
【
図18】第3実施形態の変形例に係る円すいころ軸受の縦断面図である。
【
図19】(a)は本発明の第4実施形態に係る円すいころ軸受用樹脂製保持器の外観斜視図であり、(b)は、該保持器の柱部を切り出して示す要部拡大斜視図である。
【
図20】(a)は、
図19に示す保持器の大径円環部の外周面の斜視図であり、(b)は該大径円環部の内周面の斜視図であり、(c)は該大径円環部の潤滑油の流れを示す要部斜視図である。
【
図21】潤滑油の流れを大径円環部の内周面側から見た要部斜視図である。
【
図22】(a)は、
図19に示す保持器の変形例の外観斜視図であり、(b)は、該保持器の柱部を切り出して示す要部拡大斜視図である。
【
図23】本発明の第5実施形態に係る円すいころ軸受の縦断面図である。
【
図24】
図23に示す円すいころ軸受の保持器が小径円環部側に移動した状態を示す縦断面図である。
【
図25】(a)及び(b)は、従来の円すいころ軸受の保持器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係る円すいころ軸受用樹脂製保持器及び円すいころ軸受を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態の円すいころ軸受を、
図1〜7を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の円すいころ軸受10は、内周面に外輪軌道面11aを有する外輪11と、外周面に内輪軌道面12aを有し、内輪軌道面12aの軸方向両側に小鍔部12b及び大鍔部12cを有する内輪12と、外輪軌道面11aと内輪軌道面12aとの間に転動自在に配置される複数の円すいころ13と、複数の円すいころ13を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の保持器20と、を備える。
【0013】
保持器20は、
図3、
図5(a)及び(b)に示すように、外輪11の内周面と内輪12の小鍔部12bの外周面とに近接対向するように所定の径方向幅を有する小径円環部21と、内周面が小径円環部21の外周面より大径の大径円環部22と、円周方向に所定の間隔で配置され、軸方向に傾斜して延びて小径円環部21及び大径円環部22を軸方向に連結する複数の柱部23と、を備える。保持器20は、小径円環部21、大径円環部22、及び隣接する柱部23によって画成された複数のポケット部24を有し、それぞれのポケット部24には、円すいころ13が回動自在に保持されている。
【0014】
保持器20は、樹脂材料として、ポリアミド46、ポリアミド66などのポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)などの合成樹脂が挙げられ、射出成形によって形成されている。また、上記した樹脂に、10〜50wt%の繊維状充填材(例えば、ガラス繊維や炭素繊維など)を適宜添加することにより、保持器の剛性および寸法精度を向上させることができる。
【0015】
柱部23は、ころ案内面をそれぞれ有する一対の円周方向側面25と、周方向幅が小径円環部21側より大径円環部22側において小さい内側内周面26と、小径円環部21と大径円環部22の各外周面との間で、外輪軌道面11aと略平行に伸びる外周面27と、を有している。
【0016】
円周方向側面25は、
図4、
図6(a)及び(b)に示すように、円弧形状部25a,25bところ案内面を形成する平面部25cとから構成される。円弧形状部25aと平面部25cとの境界は、大径円環部22側に向かうにつれて径方向外側に直線状に延び、円弧形状部25bと平面部25cとの境界は、略軸線方向に沿って直線状に延びる。このため、各平面部25cは、小径円環部21側から大径円環部22側に向かって径方向距離を徐々に広げた略三角形状を有し、柱部23の大径円環部側端面29と、内側内周面26の内側軌道面12aと略平行な部分26bに達する。(後述する第2〜第4実施形態では、各平面部25cは面取り部35に達する)。また、対向する円周方向側面25の平面部25c間の距離は、各軸方向位置での円すいころ13のころ径と略等しい。
【0017】
内側内周面26は、
図2に示すように、保持器20が組み込まれた際に、内輪12の小鍔部12b及び大鍔部12cの軸方向内側縁部12b1,12c1を結んだ線L1よりも径方向内方に位置する部分を少なくとも有する。また、
図4に示すように、内側内周面26は、小径円環部21の内周面から連続する周方向幅が一様な部分26aと、該部分26aから大径円環部22側に向けて内輪軌道面12aと略平行に延びるとともに、大径円環部22側に向けて徐々に周方向幅を狭くし、さらに略一様な周方向幅で、大径円環部22側端部まで延びる部分26bとを有する。さらに、外周面27は、
図3及び
図4に示すように、小径円環部21から大径円環部22側に向けて周方向幅が徐々に大きくなる部分27aと、該部分27aと大径円環部22との間で周方向幅が略一様な部分27bと、この部分27bの円周方向両側で軸方向に延びる、側面視三角形状のフラット部分27cとを有する。
そして、保持器20が組み込まれた状態で、内側内周面26は、内輪軌道面12aと近接対向する部分を少なくとも有し、外周面27は、外輪軌道面11aと近接対向する部分を少なくとも有している。
【0018】
このように構成されるポケット部24は、
図6(b)に示すように、小径円環部21側から、円周方向側面25の円弧形状部25bと内側内周面26との境界部分において、隣接する柱部23の対向する円周方向側面25間における外径側ポケット幅W1及び内径側ポケット幅W2がころ径Dより小さくなる、ころ抱え込み領域Arを形成する。
【0019】
また、内側内周面26は、周方向幅が小径円環部21側より大径円環部22側において小さくなっていることから、
図6(a)及び(b)に示すように、円すいころ13がポケット部24に組み込まれた際、柱部23と円すいころ13との円周方向隙間は、大径側隙間C2が小径側隙間C1以上となっている(C1≦C2)。
【0020】
このため、円すいころ13をポケット部24に組み込む際、円すいころ13は平面部25c間に案内されながら大径円環部22側から軸方向に組み込まれ、柱部23に当接した後、円弧形状部25aに案内されながら徐々に径方向外側へ円すいころ13の頭部13aを傾け、ポケット部24の適切な位置に収容される。
【0021】
従って、柱部23を弾性変形させて径方向から円すいころ13を組み込む従来の円すいころ軸受では組み付けが不可能な程度まで外径側ポケット幅W1及び内径側ポケット幅W2をころ径Dより小さくして、ころ抱え込み領域Arを大きく設けた状態としても、本実施形態では、柱部23を弾性変形させることなく、円すいころ13を軸方向から組み込むことができる。また、柱部23と円すいころ13との円周方向隙間は、大径側隙間C2が小径側隙間C1以上となっているので、円すいころ13を軸方向から組み込む際に、円すいころ13を内径側にずらして挿入することができ、円すいころ13が大径側円環部22と干渉するのを防止することができる。
【0022】
保持器20は、外輪11と内輪12とで形成される軸受空間において肉厚に形成されており、また、ポケット部24は、ころ抱え込み領域Arにおいて、円すいころ13が配置される空間と、この円すいころ13の組込み時の傾きを許容する空間とから実質的に形成されているので、当該軸受空間の潤滑油量を減らすことができる。
【0023】
また、本実施形態では、柱部23と円すいころ13との円周方向隙間は、大径側隙間C2が小径側隙間C1以上となっており、円弧形状部25aと平面部25cとの境界は、大径円環部22側に向かうにつれて径方向外側に直線状に延び、円弧形状部25bと平面部25cとの境界は、略軸線方向に沿って直線状に延びており、さらに、外周面27は、大径円環部22寄り部分27bの円周方向両側で軸方向に延びる、側面視三角形状のフラット部分27cを有する。これにより、保持器20の成形金型は、図示しない固定金型と、この固定金型に対して保持器20の軸方向に移動する移動金型と、の2つの型からなる簡単な金型構造で、射出成形時の軸方向への型抜きが可能となる。
なお、上述した保持器20に円すいころ13を挿入する際、これら金型のうち、ポケット部24を構成する金型を軸方向に抜いた空間から円すいころ13を挿入するようにすれば、保持器20は弾性変形なく挿入される。
【0024】
また、
図8に示すように、円周方向側面25のころ案内面における案内位置GPは、円すいころ13の略PCD位置、例えば、ポケット部24の中心Oを中心として、±5度以下の角度範囲θに設定されている。これによって、より小さな荷重で円すいころ13のスキューを矯正でき、スキューに起因するトルク損失を低減することができる。また、
図7に示すように、保持器20に作用する力Fの半径方向分力F´が抑制されて保持器20の振れ回りが低減し、軸受トルクの変動を抑制することができる。
なお、本実施形態では、上述のように設定されるころ案内面は、平面部25cによって構成されているが、例えば、
図8に示す第1変形例の保持器20aのように、円弧形状部25a,25bと曲率の異なる他の円弧形状部25dによって構成されてもよい。
【0025】
従って、本実施形態の樹脂製保持器20によれば、柱部23は、一対の円周方向側面25と、周方向幅が小径円環部側より大径円環部側において小さい内側内周面26を有し、外径側ポケット幅W1及び内径側ポケット幅W2がころ径Dより小さくされているので、保持器20の射出成形時に、金型を保持器の軸方向に外すことができる。また、従来の円すいころ軸受では組み付けが困難な程度に、柱部23と円すいころ13との周方向隙間が小さい状態で円すいころ13を軸方向から組み込むことが可能となり、円すいころ13を安定的に保持すると共に、潤滑油量の攪拌抵抗を低減させて回転トルクを低減することができる。
【0026】
また、内側内周面26は、保持器20が組み込まれた際に、内輪12の小鍔部12b及び大鍔部12cの軸方向内側縁部12b1,12c1を結んだ線L1よりも径方向内方に位置する部分を少なくとも有するので、円すいころ軸受内の空間体積を小さくして、軸受内部に滞留する潤滑油の攪拌抵抗を低減させることができる。
【0027】
また、円周方向側面25はころ案内面より径方向内側に曲面部25bを有し、柱部23と円すいころ13との円周方向隙間は、大径側の円周方向隙間C2が小径側の円周方向隙間C1以上であるので、小径側における柱部23と円すいころ13との円周方向隙間を、円すいころ13を径方向から組み込みことができない程度に小さくしても、円すいころ13を内径側にずらして軸方向から組み込みことが可能となる。これによって、組込み時における円すいころ13と保持器20の大径円環部22との干渉を防止し、円滑に組み込むことができる。
【0028】
また、ころ案内面は、円すいころ13の略PCD位置、例えば、ポケット部24の中心Oを中心として、±5度以下の角度範囲θに設定されているので、小さな力で円すいころ13のスキューを矯正することができ、トルク損失を低減することができ、また、保持器の半径方向分力の発生を抑制して、保持器の振れ回りを低減させ、軸受トルクの変動を抑制することができる。
【0029】
図9(a)及び(b)は、第1実施形態の第2変形例に係る円すいころ軸受用樹脂製保持器20bを示す。この樹脂製保持器20bでは、隣接する柱部23間における大径円環部22の内周面33に、2つの平面からなる略三角形状の凹部30が形成されている。大径円環部22の内周面33に形成された凹部30によって、組み込み時における円すいころ13と、保持器20の大径円環部22との干渉がより確実に防止され、円すいころ13の組み込み時に内周側にずらす量が少なく円滑に組み込むことができる。
【0030】
なお、凹部30の形状は、2つの平面からなる三角形に限定されるものではなく、組み込み時に円すいころ13と大径円環部22との干渉を少なくできるものであればよく、例えば、
図10に示す第3変形例の樹脂製保持器20cのように、隣接する柱部23間における大径円環部22の内周面33に、円弧形状の凹部31を形成することもできる。
【0031】
また、
図11(a)、(b)は、第1実施形態の第4及び第5変形例に係る樹脂製保持器20d,20eを示す。これら保持器20d,20eに示すように、三角形状の凹部30、或いは円弧形状の凹部31は、大径円環部22の軸方向外側面34aまで形成されることなく、内周面33に僅かな平面部33aを残して軸方向内側面34bと内周面33との間に形成されてもよい。
なお、第2乃至第5変形例においては、柱部23の強度が下がる虞があるので、芯金などの補強部材を用いて形成することが好ましい。
【0032】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る円すいころ軸受を
図12(a)〜
図13を参照して説明する。なお、第1実施形態と同等又は同一部分については同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0033】
図12(a)〜
図13に示すように、第2実施形態の樹脂製保持器20fは、柱部23の内側内周面26と大径円環部22の内周面33との間に2つの円弧からなる面取り部35を有する。面取り部35は、保持器20fが円すいころ13を支える支持部分36(ころ案内面)より径方向内側、且つ小径円環部21側に設けられる第1円弧部35aと、大径円環部22側に設けられる第2円弧部35bと、の2つの円弧部からなる。第1円弧部35aの傾きは、内側内周面26の傾きより急傾斜であり、また、第2円弧部35bの傾きは、第1円弧部35aの傾きより急傾斜となっている。
【0034】
このような保持器20fを有する円すいころ軸受10aに供給された潤滑油は、
図12(b)の矢印に示すように、遠心力によって内側内周面26に沿って大径円環部22方向に流れた際、内側内周面26より傾斜した第1円弧部35a及び第2円弧部35bによって排出が促進されるので、円すいころ軸受10a内部に滞留する潤滑油量が減少し、これによって攪拌抵抗によるトルク損失が抑制される。また、2つの円弧部35a,35bは、支持部分36の長さが円すいころ13の長さの1/2以上確保されるように形成されており、円すいころ13が安定して保持される。
なお、本実施形態の柱部23の内側内周面26は、小径円環部21の内周面から連続する部分26aを有さず、内輪軌道面12aと略平行な部分26bからなる。このため、小径円環部21の内周面と柱部23の内側内周面26との間には、径方向内側に突出する突起部40が設けられている。これにより、突起部40が内輪12の小鍔部12bに対向するので、保持器20fの軸方向への移動が規制できる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態の保持器20と同様であるので、説明を省略する。
【0035】
図14は、本実施形態の第1変形例に係る樹脂製保持器20gを示す。この樹脂製保持器20gは、面取り部35を傾斜の異なる2つの直線部35c、35dで構成する。この場合も、小径円環部21側に設けられる直線部35cの傾きは、内側内周面26の傾きよりも急傾斜で、大径円環部22側に設けられる直線部35dの傾きは、直線部35cの傾きよりも急傾斜であるので、円すいころ13を支える支持部分36を長く(円すいころ13の長さの1/2以上)確保して、円すいころ13を安定して保持することができる。
なお、面取り部35は、2つの円弧部35a,35bによって構成したほうが、2つの直線部35c、35dによって構成するより、潤滑油の排出性に優れる。一方、製造上からは2つの直線部35c、35dから構成したほうが容易である。
【0036】
また、上記実施形態においては、面取り部35は、2つの円弧部35a,35b、または2つの直線部35c、35dによって構成されたものとして説明したが、これに限定されず、円弧部と直線部との組み合わせとすることもできる。
【0037】
さらに、面取り部35は、単一の円弧部のみや単一の直線部のみによって構成し、製造時の寸法を管理しやすくしてもよい。即ち、
図15(a)に示す本実施形態の第2変形例に係る樹脂製保持器20kでは、柱部23の内側内周面26と大径円環部22の内周面33との間に単一の円弧部とした面取り部35eが形成される。また、
図15(b)に示す本実施形態の第3変形例に係る樹脂製保持器20lでは、柱部23の内側内周面26と大径円環部22の内周面33との間に単一の直線部とした面取り部35fが形成される。
【0038】
また、面取り部35を構成する単一の円弧部や直線部が、大径円環部22の内周面33の一部を構成することで、さらに製造時の寸法を管理しやすくしてもよい。即ち、
図16(a)に示す本実施形態の第4変形例に係る樹脂製保持器20mでは、柱部23の内側内周面26と大径円環部22の軸方向外側面34aとの間に、大径円環部22の内周面の一部を構成する、単一の円弧部とした面取り部35gが連続的に形成される。また、
図16(b)に示す本実施形態の第5変形例に係る樹脂製保持器20nでは、柱部23の内側内周面26と大径円環部22の軸方向外側面34aとの間に、大径円環部22の内周面の一部を構成する、単一の直線部とした面取り部35hが連続的に形成される。
【0039】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る円すいころ軸受用樹脂製保持器を
図17及び
図18を参照して説明する。なお、上記実施形態と同等又は同一部分については、同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0040】
図17に示すように、第3実施形態の樹脂製保持器20oでは、柱部23の内側内周面26を柱部23の軸方向長さLの1/2より短くし、この内側内周面26と大径円環部22の軸方向外側面34aとの間に単一の円弧部として面取り部35iが形成される。このため、保持器20oが円すいころ13を支える支持部分36は、円すいころ13の軸方向長さの1/2より短くなる。このような保持器20oは、予圧荷重が抜けない(非負荷圏がない)条件では、円すいころ13の姿勢が外輪11と内輪12によって維持されることから、保持器20oで姿勢を維持する要求が少ない場合に好適に使用され、また、上記実施形態のものに比べて材料を少なくすることができるというメリットを有する。
その他の構成及び作用は、第2実施形態の保持器20m,20nと同様であるので、説明を省略する。
【0041】
なお、
図18に示す本実施形態の変形例に係る樹脂製保持器20pにおいても、
図17の単一の円弧部の代わりに、単一の直線部によって面取り部35jが形成されてもよく、直線部とすることで製造時の寸法をより管理しやすくできる。また、保持器20pが円すいころ13を支える支持部分36は、上記保持器20oよりも長くとることができる。この場合、面取り部35jは、第2実施形態の保持器20k,20lと同様、内側内周面26と大径円環部22の内周面33との間に形成されている。
なお、本実施形態の面取り部35i,35jは、大径円環部22の内周面33の一部を構成するようにしてもよいし、内周面33と別に形成されてもよい。
【0042】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る円すいころ軸受用樹脂製保持器を
図19(a)〜
図21を参照して説明する。なお、上記実施形態と同等又は同一部分については、同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0043】
図19(a)〜
図20(c)に示すように、第4実施形態の保持器20hは、隣接する柱部23を連結する大径円環部22の内周面33において、円弧形状の凹部31の円周方向両側で、外周面27のフラット部分27cと対応する位置に、2つの平面からなる断面略V字形状に切りかかれた肉ぬすみ部37を備える。また、大径円環部22側隅部の外周部、即ち、大径円環部22寄り部分27bとフラット部分27cとの間の円周方向側面25eと、大径円環部22の軸方向内側面34bとの隅部で、外周面27のフラット部分27cの径方向外側を覆う部分には、略三角形状の庇状突起部38が形成されている。さらに、柱部23のころ案内面25と面取り部35の第2円弧部35bとの稜線部には、面取り加工が施されてテーパ部39が設けられている。
【0044】
円すいころ軸受10cは、外内輪11、12と円すいころ13との転がり接触に加えて、内輪12の大鍔部12cと円すいころ13の頭部13aとが、常にすべり接触しているので、大鍔部12cへの潤滑油供給量が不足すると焼付きが発生する虞がある。肉ぬすみ部37及び庇状突起部38は、大鍔部12cへ供給される潤滑油の油溜りとして機能する。
【0045】
本実施形態の保持器20hにおける大鍔部12cへの潤滑油供給について説明する。
図21及び
図20(c)に示すように、小径円環部21側から供給された潤滑油は、遠心力によって柱部23の内側内周面26、第1円弧部35aに沿って流れ、第2円弧部35bに達すると、
図21の矢印に示すように、柱部23のテーパ部39から肉ぬすみ部37に供給される。このとき、大径円環部22側隅部の外周部には庇状突起部38が設けられているので、肉ぬすみ部37に供給された潤滑油が、保持器20hを通り抜けて外輪11側へ排出されることなく、肉ぬすみ部37に貯留されて円すいころ13の頭部13aに供給される。これにより、内輪12の大鍔部12cと円すいころ13の頭部13aとの接触部が潤滑されて焼付きが防止される。また、肉ぬすみ部37が設けられているので、一時的に潤滑油を貯留すると共に、円すいころ13の頭部13aへの潤滑油の流入がしやすくなる。
その他の構成及び作用は、第1実施形態の保持器20と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
なお、
図22(a)及び(b)は、第4実施形態の変形例に係る樹脂製保持器20iである。この樹脂製保持器20iでは、肉ぬすみ部37を備えていない点で、
図20(a)〜(c)で説明したものと異なるのみである。この変形例においても、小径円環部21側から供給され、柱部23のテーパ部39からポケット部24の大径円環部22側隅部に流入した潤滑油が、庇状突起部38によって流出が阻止され、円すいころ13の頭部13aに供給されて潤滑する。これにより、内輪12の大鍔部12cと円すいころ13の頭部13aとの接触部が潤滑されて焼付きが防止される。
【0047】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る円すいころ軸受を
図23及び
図24を参照して説明する。なお、上記実施形態と同等又は同一部分については、同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0048】
図23に示すように、第5実施形態の保持器20jは、第1実施形態の保持器20の構成において、第2実施形態のように、保持器20jの軸方向移動を規制できる突起部40が設けられている。この場合、突起部40と内輪12の小鍔部12bとの隙間aは、円すいころ13の頭部13aと保持器20jの大径円環部22の内側面22aとの隙間bより小さく設定されている(a<b)。
【0049】
このような保持器20jを有する円すいころ軸受10cは、
図24に示すように、回転時に保持器20jが小鍔部12b方向へ移動して、保持器20jの突起部40と、内輪12の小鍔部12bとが接触する状態となっても、円すいころ13の頭部13aと保持器20の大径円環部22の内側面22aとは接触することがなく、隙間が確保される。従って、円すいころ13の頭部13aに付着する油膜を、保持器20jの大径円環部22でかき取ってしまうことがない。これにより、内輪12の大鍔部12cと円すいころ13の頭部13aとの接触部が良好に潤滑されて焼付きが防止される。
その他の構成及び作用は、第1実施形態の保持器20と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
尚、本発明は、前述した各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0051】
また、第1から第5の実施形態は円すいころ軸受、及び、樹脂製保持器にて開示したが、円筒ころ軸受や金属製保持器にも本発明の思想を適用できることは言うまでもない。