特許第6010945号(P6010945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6010945-ダイシングフィルム 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010945
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ダイシングフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-60922(P2012-60922)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-197194(P2013-197194A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池永 雅範
【審査官】 西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033741(JP,A)
【文献】 特開2011−216563(JP,A)
【文献】 特開2012−043929(JP,A)
【文献】 特開2011−216595(JP,A)
【文献】 特開2003−109916(JP,A)
【文献】 特開2004−281751(JP,A)
【文献】 特開2012−015236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードダイシングに用いられるダイシングフィルムであって、
基材層、粘着剤層、および保護層がこの順に積層してなり、
基材層の粘着剤層と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)が、0.03以上0.4以下であり、
基材層の粘着剤層側の面にのみエンボス加工がされ、基材層の粘着剤層側の面の平均面粗さSa2(μm)が、0.1以上0.8以下であり、
基材層の粘着剤層側と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)が、基材層の粘着剤層側の面の平均面粗さSa2(μm)より小さく、
基材層がポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物から構成されることを特徴とするダイシングフィルム。
【請求項2】
ダイシングフィルムの400nm以上、800nm以下の分光透過率が、50%以上であることを特徴とする請求項に記載のダイシングフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する工程において、半導体ウエハやパッケージ等の半導体部材を切断する際にダイシングフィルムが用いられている。ダイシングフィルムは、半導体部材を貼り付け、ダイシング(切断、個片化)し、さらに当該ダイシングフィルムをエキスパンティング等することにより、前記半導体ウエハ等をピックアップするために用いられる。
【0003】
前記ダイシングは、主にブレードダイシングが用いられているが、ダイシング時には半導体ウエハ割れや、半導体部材のカット残り、およびダイシング時の切り屑やダイシングフィルムの基材ヒゲが発生し、半導体デバイスへ付着する等、個片化された半導体部材に不良が発生することがある。このような不良が発生した半導体部材は、パッケージにおいて信頼性の低下等の不具合を生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開H05−211234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不良が発生した半導体部材の含まれたパッケージは、出荷前の検査で不良を検知して、出荷停止等の措置が取られるが、パッケージを完成させるまで不良の発生を検知することができないため、パッケージ製造の歩留まりを低下させていた。
【0006】
本発明の目的は、ダイシングにおいて発生した不良を、予め検知して、パッケージ製造の歩留まりを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1)ブレードダイシングに用いられるダイシングフィルムであって、
基材層、粘着剤層、および保護層がこの順に積層してなり、
基材層の粘着剤層と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)が、0.03以上0.4以下であり、
基材層の粘着剤層側の面にのみエンボス加工がされ、基材層の粘着剤層側の面の平均面粗さSa2(μm)が、0.1以上0.8以下であり、
基材層の粘着剤層側と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)が、基材層の粘着剤層側の面の平均面粗さSa2(μm)より小さく、
基材層がポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物から構成されることを特徴とするダイシングフィルム。
)ダイシングフィルムの400nm以上、800nm以下の分光透過率が、50%以上であることを特徴とする()に記載のダイシングフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダイシングにおいて発生した不良を、予め検知して、パッケージ製造の歩留まりを向上させ得るダイシングフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のダイシングフィルムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のダイシングフィルムは、ブレードダイシングに用いられるダイシングフィルムであって、基材層、粘着剤層、および保護層がこの順に積層してなり、基材層の粘着剤層と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)が、0.6以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明のダイシングフィルムは、上述のような構成をとることにより、透明性が増す。そして、透明性が増すことにより、ブレードダイシングして個片化された半導体部材を、該ダイシングフィルムを通して検査することが可能となる。このような検査が可能となることにより、ダイシングにおいて発生した不良を、予め検知して、パッケージ製造の歩留まりを向上させることができる。このようにして、本発明のダイシングフィルムは、パッケージ製造の歩留まりを向上させることができる。ここで、半導体部材とは、半導体ウエハや一括封止された半導体装置の集合体等を含む。
【0012】
また、半導体装置の製造方法は、ダイシングフィルムから保護層を剥離する剥離工程と、前記ダイシングフィルムと半導体部材とを貼付する貼付工程と、前記半導体部材をブレードダイシングして個片化された半導体部材を得るブレードダイシング工程と、前記個片化された半導体部材を前記ダイシングフィルムを通して検査する検査工程と、前記個片化された半導体部材をピックアップするピックアップ工程と、を有する。
【0013】
半導体装置の製造方法は、上述のような構成をとることにより、ダイシングにおいて発生した不良を、予め検知することができる。これにより、不良の発生した半導体部材を除き、不良の発生していない半導体部材を選択してパッケージを組み立てることが可能となる。このように予め不良の発生していない半導体部材を選択してパッケージを組み立てることで、パッケージ製造の歩留まりを向上させることができる。
【0014】
<ダイシングフィルム>
まず、本発明のダイシングフィルムについて説明する。
本発明のダイシングフィルム10は、図1に示すように基材層1と、粘着剤層2と、保護層3とがこの順に積層してなる。
【0015】
ダイシングフィルム10の基材層1の粘着剤層2と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)は、0.6以下である。このような平均面粗さSa1(μm)を有することによって、ダイシングフィルムの透明性が向上し、ブレードダイシングして個片化された半導体部材を、ダイシングフィルムを通して検査することができる。
【0016】
また、ダイシングフィルム10の基材層1の粘着剤層2と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)は、好ましくは0.01以上0.5以下であり、より好ましくは0.03以上0.4以下である。前記下限値以上であることにより、ダイシングフィルムの透明性を確保しつつ基材層1の滑り性が向上し、ダイシングフィルム10の製造時の歩留まりが上昇する効果や、ダイシングフィルム10の搬送時において巻ずれ等の不良を抑制する効果を発揮し、また、前記上限値以下であることにより、ダイシングフィルム10の透明性を向上させることができる。
【0017】
また、ダイシングフィルム10の基材層1の粘着剤層2と反対側の面の平均面粗さSa1(μm)は、好ましくはダイシングフィルム10の基材層1の粘着剤層2側の面の平均面粗さSa2(μm)より小さいことが好ましい。このような構成にすることにより、面粗さの大きい粘着剤層側の面により、基材層1の滑り性が向上し、ダイシングフィルム10の製造時の歩留まりを上昇させる効果を発揮し、一方で粘着剤層2を積層したときに、粘着剤層2が基材層1の表面の粗い面に積層されることで、アンカー効果により密着性が上昇して、半導体部材に転写することを抑制できる。さらに粘着剤層2によって基材層1の表面の粗い面が埋め込まれることにより、十分な透明性が確保できるという効果が得られる。
【0018】
また、ダイシングフィルム10の基材層1の粘着剤層2側の面の平均面粗さSa2(μm)は、特に限定されないが、1.0以下であることが好ましく、0.1以上0.8以下であることがより好ましい。前記下限値以上であることにより、ダイシングフィルム10の透明性を保ちながら、基材層1の滑り性が向上し、ダイシングフィルム10の製造時の歩留まりが上昇する効果を発揮し、一方で、基材層1と粘着剤層2との密着が上昇し、粘着剤層が半導体部材に転写することを抑制することができる。また、前記上限値以下であることにより、ダイシングフィルムの透明性をより上昇させることができる。
【0019】
ダイシングフィルム10の基材層の平均面粗さSa1(μm)及びSa2(μm)は、三次元算術平均表面粗さであって、下記数式1で求めることができる。すなわち、平均面をX−Y平面とし、高さ方向をZ軸として、市販の表面粗さ計により測定された起伏カーブから得られる表面起伏形態の面積zをz=f(x,y)で表し、数式1から求められる。ここで、L、LはそれぞれX方向、Y方向の測定長さである。
【0020】
【数1】
【0021】
市販の表面粗さ計は、ZYGO社製の光干渉による非接触式表面粗さ計等が挙げられ、本発明の平均面粗さSa(μm)は基材表面からの反射光を厚み方向にスキャンすることにより測定を行った。
【0022】
本発明のダイシングフィルム10は、基材層1の表面粗さを調節することで、ダイシングシート10における光の吸収および乱反射を防ぐものである。そして、光の吸収および乱反射を防ぐことで、ダイシングシート10の透明性を上げたものである。このように設計されたダイシングフィルム10により、ブレードダイシングして個片化された半導体部材を、ダイシングフィルム10を通して検査することを可能となる。さらに、このような検査が可能となることにより、半導体装置の歩留まりを上昇させるものである。
【0023】
ダイシングフィルム10の透明性は、ブレードダイシングして個片化された半導体部材を、ダイシングフィルムを通して検査することができるようであれば特に限定されないが、例えば400nm以上、800nm以下の分光透過率が、50%以上95%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以上90%以下である。前記下限値以上であることにより、半導体部材の検査精度が上昇し、パッケージ製造の歩留まりをより向上させることができる。前記上限値以下であることで、ダイシングフィルムを自動認識して工程を進めるオートマウンター等で好適に使用することができる。
【0024】
分光透過率の測定方法は、特に限定されないが、市販の分光透過率測定機を用いて測定することができる。本発明の400nm以上、800nm以下の分光透過率は、測定するフィルムに入射光を入射させ、透過した平行光線の割合から測定を行った。
【0025】
基材層1は、特に限定されないが、樹脂材料から構成されることが好ましく、樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられる。これらの中でも、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物が用いられることが好ましい。また、このエラストマーとして、一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。このような樹脂材料を用いることにより、ダイシングフィルムは上述のような透明性に加え、粘着剤層2を支持し、後述するエキスパンド工程において、引延しに耐え得るだけの強度を有することできる。
【0026】
【化1】
(式(1)中、nは2以上の整数)
【0027】
【化2】
(式(2)中、nは2以上の整数)
【0028】
また、基材層1は、ダイシングフィルム10の物性を損ねない範囲内で、帯電防止剤、フィラーなどを添加することができる。
【0029】
基材層1厚みは、特に限定されないが、50μm以上300μm以下であるのが好ましく、80μm以上200μm以下であるのがより好ましい。基材層1の厚みが前記下限値以上であることにより、ダイシング工程およびエキスパンド工程において、ダイシングフィルムが破れる等の不良を防止することができ、前記上限値以下であることで、ダイシングフィルムの透明性が上昇する。
【0030】
基材層1の製造方法として、特に限定されないが、例えばカレンダー法、押出成形法などの一般的な成形方法が用いられる。基材層1の粘着剤層2側の面には、粘着剤層2を構成する材料と反応する官能基、例えば、ヒドロキシル基またはアミノ基などが露出していることが好ましい。
【0031】
また、基材層1の表面に上述のような平均面粗さSa1(μm)及びSa2(μm)を設計する方法は、特に限定されないが、例えば、フィラー添加する方法や、基材層1の粘着剤層2側の面にのみエンボス加工する方法、基材層の両面に差が出るようにエンボス加工する方法が挙げられ、なかでも基材層1の粘着層2側の面のみにエンボス加工する方法や、基材層1の粘着層2側の面に強くエンボス加工する方法を用いることが好ましい。エンボス加工は、溶融したフィルムに表面加工したロールのエンボス形状を転写させることで得ることができる。従来、基材層1には一般的に両面に同条件でエンボス加工をしていたところ、基材層の粘着層2側の面に強くエンボス加工するという方法や、粘着層2側の面のみにエンボス加工するという方法を用いることで、基材層1の粘着剤層2と反対側の面については平均面粗さSa1(μm)を0.5以下とすることが容易にでき、かつ、基材層1の粘着剤層2側にはある程度の粗さを設計することができる。これにより、ダイシングフィルムの透明性を上昇することができ、かつ基材層1の滑り性が向上し、ダイシングフィルム10の製造時の歩留まりが上昇する効果を発揮することができる。
【0032】
粘着剤層2は、ダイシングフィルム10の透明性を大きく損なわず、半導体部材を貼り付けて、かつブレードダイシング後に個片化された半導体部材を好適に剥がすことができるものであれば特に限定されないが、アクリル系粘着剤、UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂、イソシアネート系架橋剤等を含む樹脂組成物から構成されるものが好ましい。このような構成にすることで、ブレードダイシング前には半導体部材を十分に保持することができ、かつ、個片化された半導体部材をピックアップする前にUV照射を行うことで粘着剤層2の個片化された半導体部材に対する保持力を低下させて、好適にピックアップすることができる。また、これらの中でも半導体部材の貼付け、ブレードダイシング時の端材飛び及びチッピング抑制のためには、極性基を含有したアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。アクリル系粘着剤としては、例えば、カルボキシル基含有のアクリル酸ブチル等が好ましく、カルボキシル基含有のアクリル酸ブチルを用いることにより、半導体部材のマウント、端材飛び及びチッピングの抑制に特に好適なものとなる。
【0033】
粘着剤層2の厚みは、2μm以上40μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上30μm以下である。前記下限値以上であることにより、半導体部材との密着が十分なものとなり、前記上限値以下であることにより、半導体部材に対しての糊残りをふせぐことができ、併せて基材層1の表面の粗さを十分に埋め込み、透明性を向上させるという効果を得ることができる。ここで、半導体ウエハダイシング用ダイシングフィルムでは2μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上10μm以下である。また、一括封止された半導体装置の集合体等の特殊部材ダイシング用ダイシングフィルムでは5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。粘着剤層2の厚みを前記範囲下限値以上とすることにより被着体の保持力に優れ、また前記範囲上限値以下とすることによりダイシング時の加工性に優れるダイシングフィルムを得ることができる。
【0034】
保護層3は、ダイシングフィルム10の使用時まで粘着剤層2を保護し、ダイシングフィルムの使用時に好適に除去できるものであれば特に限定はされないが、樹脂フィルムで構成されているものが好ましく、これらの中でも、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が好ましい。これらを用いることで、ダイシングフィルム10の使用時における作業性が向上する。また、保護層3の粘着剤層2側の面には、離型処理を行っていることが好ましい。これにより、ダイシングフィルム10の使用時に保護層2をより好適に除去することができる。離型処理する方法は、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂等の離型樹脂を塗布する方法を用いることができる。
【0035】
<ダイシングフィルムの製造方法>
ダイシングフィルム10の製造方法は、特に限定されないが、例えば粘着剤層2として用いられる樹脂組成物を適宜溶剤に溶解または分散させた塗工液を用いることが好ましい。保護層3、または基材層1に対して、ロールコーティングやグラビアコーティングなどの公知のコーティング法により前記塗工液を塗布し、乾燥することにより粘着剤層2が形成される。
【0036】
<半導体装置の製造方法>
半導体装置の製造方法は、ダイシングフィルム10と半導体部材とを貼付する貼付工程と、前記半導体部材をブレードダイシングして個片化された半導体部材を得るブレードダイシング工程と、前記個片化された半導体部材をダイシングフィルム10を通して検査する検査工程と、前記個片化された半導体部材をピックアップするピックアップ工程と、を有する。
【0037】
前記半導体装置の製造方法は、個片化された半導体部材を、ダイシングフィルム10を通して検査することで、ダイシングにおいて発生した不良を、予め検知して、パッケージ製造の歩留まりを向上させることができる。
【0038】
ダイシングフィルム10と前記半導体部材とを貼付する貼付工程は、特に限定されないが、市販のマウンター等を使用することができる。ダイシングフィルム10の保護層3を除去しながら、粘着剤層2と半導体部材とをロール等で貼りつけることができる。また、併せてウエハリング等を粘着剤層2に貼付することが好ましい。このようにすることで、後にブレードダイシングするときに、ダイサー等に固定するときにダイシングフィルム10にシワが生じることを防ぐことができ、ブレードダイシング工程においてダイシングフィルム10が破れることをふせぐことができる。
【0039】
前記半導体部材をブレードダイシングして個片化された半導体部材を得るブレードダイシング工程は、特に限定されないが、市販のダイサー等を使用することができる。
【0040】
前記個片化された半導体部材をダイシングフィルム10を通して検査する検査工程は、特に限定されないが、市販の対物顕微鏡等を用いることで行うことができる。ダイシングフィルム10は、従来のダイシングフィルムと比べて透明性が上昇していることから、従来行うことができなかったピックアップ工程前における検査工程を行うことが可能となった。検査工程を含めることにより、ダイシングにおいて発生した不良を、予め検知して、パッケージ製造の歩留まりを向上させることができる。また、検査工程の前に、エキスパンド工程を含んでもよい。エキスパンド工程とは、ダイシングフィルム10を引き伸ばすことにより、個片化された半導体部材の間を拡張する工程であり、エキスパンド工程を含むことで、検査工程を好適に行うことができ、検査精度を向上させ、パッケージ製造の歩留まりを向上させることができる。また、後述のピックアップ工程においても、隣り合う個片化された半導体部材の接触を防ぐことができ、ピックアップ工程を好適にするとともに、半導体部材の接触による割れ、欠け等を防ぎ、パッケージ製造の歩留まりを向上させることができる。
【0041】
前記個片化された半導体部材をピックアップするピックアップ工程は、特に限定されないが、市販のチップボンダー等を用いることで行うことができる。このとき、粘着剤層にUV硬化性ウレタンアクリレート樹脂等を含む場合、ピックアップ工程の前にUV照射工程を含んでもよい。UV照射工程を含むことにより、粘着剤層2の個片化された半導体部材に対する保持力を低下させることができ、好適にピックアップすることができる。
【0042】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
次に、本発明のダイシングフィルムに係る実施例と、比較例とについて説明する。なお、実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
<ダイシングフィルムの作製>
基材層を構成する材料樹脂として、ポリプロピレン60重量部と、一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体40重量部とを準備した。
【0045】
【化3】
(式(1)中、nは2以上の整数)
【0046】
【化4】
(式(2)中、nは2以上の整数)
【0047】
上記の基材層を構成する材料を2軸混練機で混練した後、混練したものを押出し機で押し出して、片面を鏡面処理された金属ロール(以下、「鏡面ロール(1)」とも言う。)の表面形状を転写させ、もう片面をエンボス加工されたゴムロール(平均面粗さSa(μm)=0.8以下、「エンボスロール(1)」とも言う。)の表面形状を転写させることで、厚み100μmの基材層を作製した。得られた基材層のエンボスロール(1)により加工された面の平均面粗さSa2(μm)は0.6であり、鏡面ロール(1)により加工された面の平均面粗さSa1(μm)は0.04であった。
【0048】
粘着剤層を構成する材料として、アクリル酸2−エチルヘキシル50重量部と、アクリル酸ブチル10重量部と、酢酸ビニル37重量部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部とを共重合させて得られた重量平均分子量が300000の共重合体を100重量部と、15官能のオリゴマーのウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品番:Miramer SC2152)を140重量部と、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、品番:コロネートL)を5重量部と、ベンジルジメチルケタール(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、品番:イルガキュア651)を3重量部と、を所定の量の溶剤に溶解させた塗工液を準備した。
【0049】
保護層を構成する材料として、PETフィルムを準備し、この表面に乾燥後の粘着剤層の厚みが10μmになるようにして粘着剤層をバーコート塗工した後、80℃で5分間乾燥させて、粘着剤層を基材層のエンボスロール(1)により加工された面に貼りつけて、ダイシングフィルムを得た。得られたダイシングフィルムの400nm以上、800nm以下の分光透過率は90%であった。
【0050】
<半導体部材の検査>
得られたダイシングフィルムの保護層を剥離し、直径5インチで厚み600μmの円型の半導体ウエハをダイシングフィルムの粘着剤層に貼り付けた。ダイシングフィルムを半導体ウエハに貼着後、半導体ウエハを、ブレード回転数40000rpm、カット速度70mm/sec、ブレードハイト90μmの条件で、2mm×2mmのサイズにダイシングした。その後、ダイシングフィルムを通して個片化された半導体部材の検査を行った。検査結果を下記の指標で評価し、Aを合格とした。評価結果を表1に示す。
A:割れや欠け等の不良が発生した半導体部材を確認することができた。
B:割れや欠け等の不良が発生した半導体部材を確認することができなかった。
【0051】
<粘着剤と基材層との密着性試験>
粘着剤層の表面にカッターでXカットを入れ、その上にスコッチテープを貼り付けた後に、180°ピールテストを行った。密着性の判定は、下記の指標で行い、AおよびBを合格とした。評価結果を表1に示す。
A:粘着剤層の剥がれがない。
B:Xカット部分に粘着剤層の剥がれが確認される。
C:Xカット部分以外に粘着剤層の剥がれが確認される。
【0052】
(実施例2)
実施例1において、両面とも鏡面処理されたゴムロール(以下、「鏡面ロール(2)」とも言う。)に変更し、形状転写させ、その片面に粘着剤層を貼りつけた。それ以外は実施例1と同様に行った。鏡面ロール(2)により加工された面の平均面粗さSa1(μm)およびSa2(μm)は両面とも0.04であった。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
実施例1において、両面にエンボス加工されたゴムロール(平均面粗さSa(μm)=1.0以下、「エンボスロール(2)」とも言う。)の表面形状を転写させることで加工を行い、その片面に粘着剤層を貼りつけた。それ以外は実施例1と同様に行った。エンボスロール(2)により加工された面の平均面粗さSa1(μm)およびSa2(μm)は両面とも1.0であった。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
実施例1において、エンボスロール(1)をエンボスロール(2)に変更し、鏡面ロール(1)により加工された面に粘着剤層を貼りつけた。エンボスロール(2)により加工された面の平均面粗さSa1(μm)は、1.0、鏡面ロール(1)で加工された面の平均面粗さSa2(μm)は、0.04だった。それ以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から明らかのように、実施例ではダイシング後に不良が発生した半導体部材が確認されたが、比較例では確認ができなかった。
【符号の説明】
【0057】
10 ダイシングフィルム
1 基材層
2 粘着剤層
3 保護層
図1