(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記転写部よりも下流であって前記像担持体上に前記トナー像が形成される部分よりも上流には、転写後に前記像担持体上に残留している前記トナー像を除去する残留トナー像除去手段が配置され、
前記残留トナー像除去手段に前記キャリア液が掻き取られることによって、前記像担持体の前記表面上に存在している前記キャリア液の量が低減される、
請求項2に記載の湿式画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0014】
[実施の形態1]
(湿式画像形成装置1000)
図1および
図2を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置1000について説明する。
図1は、湿式画像形成装置1000の全体構成を示す模式図である。
図2は、湿式画像形成装置1000の電気的構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、湿式画像形成装置1000は、記録用紙60上に画像を形成する。記録用紙60は、中間転写ローラー51(詳細は後述する)および加圧ローラー54(詳細は後述する)の間を、所定の搬送方向AR60に沿って搬送される。
【0016】
図2に示すように、湿式画像形成装置1000は、主制御部100、エンジン部200、および、エンジン制御部300(制御手段)を電気的構成として含んでいる。ホストコンピュータなどの外部装置から、画像信号を含む印字指令信号が主制御部100に与えられる。主制御部100は、画像メモリー106を備える。画像メモリー106は、インターフェース102を通して外部装置から与えられた画像信号を記憶する。
【0017】
CPU104(Central Processing Unit)は、外部装置から画像信号を含む印字指令信号をインターフェース102を通して受信すると、その信号をエンジン部200の動作指示に適した形式のジョブデータに変換し、エンジン制御部300に送出する。
【0018】
エンジン制御部300内のメモリー302は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等から構成され、参照テーブル306がデータの一つとして格納されている。ROMは、予め設定された固定データを含むCPU304の制御プログラム等を記憶している。RAMは、エンジン部200の制御データおよびCPU304による演算結果などを一時的に記憶する。参照テーブル306は、トナー量検知センサー30(詳細は後述する)から出力された信号(受光信号)をトナー量に変換する際に使用される。
【0019】
CPU304は、CPU104を介して外部装置から送られた画像信号に関するデータをメモリー302に格納する。主制御部100からの制御信号に応じて、エンジン制御部300は、エンジン部200の各部を制御する。湿式画像形成装置1000は、所定の画像形成条件に制御された状態で、記録用紙60(
図1参照)などの上に上記の画像信号に対応する画像を形成する。
【0020】
図1および
図2を参照して、エンジン部200(
図2参照)は、露光装置23、感光体ユニット20、スクイズ装置25、現像装置10、転写ユニット50、定着ユニット70、および、トナー量検知センサー30を備える。
【0021】
(現像装置10)
図1に示すように、現像装置10は、現像液Wを貯留する現像槽11、供給ローラー12、受け渡しローラー13、現像ローラー14、および、帯電器15を含む。現像装置10のメモリー10M(
図2参照)は、現像装置10の製造ロット、使用履歴、内蔵トナーの特性、現像液Wの残量、または、現像液Wのトナー濃度などに関するデータを記憶する。メモリー10Mによって、現像装置10に関する消耗品管理等の各種情報の管理が行われる。
【0022】
現像装置10においては、現像液Wが、現像槽11内に貯留される。現像液Wは、キャリア液である絶縁性を有する液体と、静電潜像を現像するトナーと、トナーをキャリア液中に分散させる分散剤と、を主要成分として含んでいる。現像槽11には、トナー補給ポンプおよびキャリア液補給ポンプ(いずれも図示せず)がそれぞれ接続される。トナー補給ポンプおよびキャリア液補給ポンプの各動作が制御されることにより、現像槽11内の現像液Wのトナー濃度は適切に調整される。
【0023】
現像槽11内の現像液Wに接触するように、供給ローラー12が設けられる。供給ローラー12が矢印AR12方向に回転することによって、現像液Wは供給ローラー12の表面に汲み上げられる。現像液Wは、供給ローラー12の表面上で担持され、供給ローラー12の回転によって、供給ローラー12と受け渡しローラー13とが相互に対向している部分に向かって搬送される。
【0024】
供給ローラー12の表面上の現像液Wは、ドクターブレード(図示せず)によって余剰の分量が掻き落とされた状態で、供給ローラー12から受け渡しローラー13に受け渡される。その後、現像液Wは、受け渡しローラー13が矢印AR13方向に回転することによって、受け渡しローラー13と現像ローラー14とが相互に対向している部分に向かって搬送される。
【0025】
受け渡しローラー13の表面上の現像液Wは、受け渡しローラー13から矢印AR14方向に回転している現像ローラー14に受け渡される。現像液Wは、現像ローラー14の表面上で担持され、現像ローラー14の回転によって現像位置24に向かって搬送される。受け渡しローラー13の表面に残留した現像液Wは、クリーニングブレード(図示せず)によって受け渡しローラー13の表面から除去される。
【0026】
以上のような工程を経て、現像ローラー14の表面上においては、膜厚が長手方向において均一になるように調整された現像液Wが担持される。現像液Wは、現像ローラー14の表面上において薄層を形成する。薄層を形成した現像液W中のトナー粒子は、帯電器15によってたとえば正極性に帯電される。現像ローラー14(現像位置24)には、現像バイアス発生部310(
図2参照)によって所定の現像バイアスが印加される。
【0027】
(感光体ユニット20)
感光体ユニット20は、感光体21、帯電器22、および、クリーニングブレード27などを含む。現像ローラー14に接触するように、像担持体であるドラム状の感光体21が設けられる。感光体21としては、たとえば正帯電性を有するアモルファスシリコン製の感光体が用いられる。感光体21は、矢印AR21方向に回転する。
【0028】
感光体21の周辺には、感光体21の回転方向(矢印AR21方向)に沿って、帯電器22、露光装置23、上述の現像ローラー14(現像位置24)、スクイズ装置25、トナー量検知センサー30(検知位置E)、中間転写ローラー51(転写部26)、クリーニングブレード27、および、除電器(図示せず)が順に配置される。
【0029】
感光体21の表面は、帯電バイアス発生部320(
図2参照)に接続された帯電器22によって、所定の表面電位に一様に帯電される。その後、露光制御部323(
図2参照)に接続された露光装置23により、感光体21の表面は所定の画像情報に基づいて露光される。
【0030】
具体的には、ホストコンピュータなどの外部装置からインターフェース102を通して主制御部100のCPU104に画像信号を含む印字指令信号が与えられる。主制御部100のCPU104からの指令に応じて、CPU304は露光制御部323に対し所定のタイミングで画像信号に対応した制御信号を出力する。露光制御部323からの制御指令に応じて、露光装置23から光ビームが感光体21の表面に照射される。画像信号に対応する静電潜像が、感光体21の表面上に形成される。
【0031】
上述のとおり、現像ローラー14(現像位置24)には、現像バイアス発生部310(
図2参照)によって所定の現像バイアスが印加され、現像ローラー14と感光体21との間に形成された現像電位差によって、現像ローラー14と感光体21との間には電界が形成される。
【0032】
感光体21上の現像位置24にまで静電潜像が搬送された際、現像ローラー14に担持されている現像液W中のトナー粒子は、現像バイアス発生部310(
図2参照)によって形成された電界の作用により、現像ローラー14の表面から感光体21の表面に静電移動する。この際、トナー粒子だけでなく、キャリア液も感光体21の表面に付着する。感光体21の表面に形成されていた静電潜像は、トナー像として顕像化される。なお、トナー像がいわゆる白ベタ画像(背景部)である場合、キャリア液のみが感光体21の表面に付着する。
【0033】
感光体21は、表面に形成されたトナー像を担持しつつ、トナー像を転写部26(1次転写部)に向かって移動させる。現像ローラー14から感光体21に転移せずに現像ローラー14上に残留した現像液Wは、クリーニングブレード16によって現像ローラー14の表面から掻き取られ、回収される。
【0034】
スクイズ装置25(キャリア液当接手段)は、感光体21の回転方向(矢印AR21方向)において、現像装置10の現像によって感光体21上にトナー像が形成される部分(現像位置24)よりも下流であって、トナー量検知センサー30が配置される検知位置E(詳細は後述する)よりも上流に配置される。スクイズ装置25は、ローラー25Rおよびブレード25Qを含む。ローラー25Rは、感光体21上に存在しているキャリア液に当接可能なように配置されている。
【0035】
ローラー25Rが感光体21の表面上に存在しているキャリア液に当接することによって、そのキャリア液は感光体21からローラー25R上に転移する。ローラー25R上に転移したキャリア液は、ブレード25Qを用いて回収される。スクイズ装置25によれば、感光体21の表面上に存在しているキャリア液の量を低減することができる。したがって、スクイズ装置25は、キャリア液量低減手段の一つとして機能することができる。詳細は後述されるが、スクイズ装置25は、画像形成条件制御処理ST100(
図4参照)において使用される。スクイズ装置25は、スクイズ制御部325(
図2参照)によって駆動される。
【0036】
ローラー25Rと感光体21との間には、通常の画像形成時のことを考慮して、感光体21上に担持されているトナー像中のトナーを感光体21側に押しつける方向のバイアスが印加されていてもよい。スクイズ装置25としては、ローラー25Rに限られず、ブレード状の部材が用いられてもよい。
【0037】
この場合、ブレード状の部材は、感光体21の表面上に存在しているキャリア液に当接可能なように構成される。ブレード状の部材が感光体21の表面上に存在しているキャリア液に当接することによって、そのキャリア液は感光体21上から掻き取られる。ブレード状の部材が用いられる場合であっても、感光体21の表面上に存在しているキャリア液の量を低減することができる。
【0038】
なお、ブレード状の部材が用いられる場合、通常の画像形成時にブレード状の部材がトナー像に当接すると、そのトナー像が乱されてしまう。このため、ブレード状の部材は、通常の画像形成時には感光体21の表面から退避した位置に配置され、必要な際(後述するベースライン補正処理ST10が実行される際)には、感光体21の表面に存在しているキャリア液に当接するように配置される。
【0039】
(トナー量検知センサー30)
トナー量検知センサー30(光学的検知手段)は、感光体21上の検知位置Eに対向するように配置される。検知位置Eは、感光体21の回転方向(矢印AR21方向)において、感光体21の表面上の現像位置24よりも下流であって、転写部26よりも上流に位置する。検知位置Eは、さらに、同方向におけるスクイズ装置25が設けられる位置よりも下流に位置する。
【0040】
図3を参照して、本実施の形態におけるトナー量検知センサー30は、発光部31および受光部32を備える。発光部31は、たとえばLED(Light Emitting Diode)から構成される。受光部32は、たとえばフォトダイオードから構成される。
【0041】
発光部31から感光体21に向けて、検知光31Lが所定の入射角θ1で照射される。検知光31Lの波長は、たとえば200nm〜1500nmである。検知光31Lの反射光32Lは、所定の反射角θ2で受光部32に向かって進み、受光部32によって受光される。受光部32に受光された反射光32Lの強度に応じて、トナー量検知センサー30から受光信号が出力される。この受光信号は、CPU304(
図2参照)に送出される。
【0042】
詳細は後述されるが、トナー量検知センサー30は、画像形成条件制御処理ST100(
図4参照)において使用される。トナー量検知センサー30から出力された受光信号に基づいて、ベースライン補正処理ST10(
図4参照)が行われたり、画像形成条件変更ルーチンST20(
図4参照)が行われたりする。ベースライン補正処理ST10によって、ベースライン補正が行われる。湿式画像形成装置1000の画像形成条件は、ベースライン補正後の状態で画像形成条件変更ルーチンST20が実行されることによって、適切な状態に制御されることができる。
【0043】
(転写ユニット50)
図1を再び参照して、転写ユニット50は、中間転写ローラー51などを含む。中間転写ローラー51は、感光体21に対向するように配置される。中間転写ローラー51は、矢印AR51方向に回転する。感光体21と中間転写ローラー51との間に、転写部26が形成される。中間転写ローラー51と感光体21との間には、転写バイアス発生部350(
図2参照)により所定の転写バイアスが印加されることによって、電界が形成される。
【0044】
感光体21に担持され転写部26に搬送されたトナー像は、電界の作用によって、感光体21の表面から中間転写ローラー51の表面に1次転写される。1次転写されずに感光体21の表面上に残留したトナーおよび感光体21の表面上の汚れ等は、クリーニングブレード27によって感光体21の表面から掻き取られ、回収される。感光体21の表面に残留している電荷は、除電器(図示せず)により除去される。
【0045】
中間転写ローラー51と加圧ローラー54との間には、転写部52(2次転写部)が形成される。矢印AR51方向に回転する中間転写ローラー51および矢印AR54方向に回転する加圧ローラー54によって、記録用紙60は、搬送方向AR60に沿って転写部52を通過する。
【0046】
転写部26において感光体21の表面から中間転写ローラー51の表面にトナー像が1次転写された後、中間転写ローラー51は、表面に転写された(形成された)トナー像を担持しつつ、トナー像を転写部52に向かってさらに移動させる。中間転写ローラー51と記録用紙60との間には、転写バイアス発生部350(
図2参照)により所定の転写バイアスが印加されることによって、電界が形成される。
【0047】
中間転写ローラー51に担持され転写部52に搬送されたトナー像は、電界の作用によって、中間転写ローラー51の表面から記録用紙60の表面に2次転写される。2次転写されずに中間転写ローラー51の表面上に残留したトナーおよび中間転写ローラー51の表面上の汚れ等は、クリーニングブレード53によって中間転写ローラー51の表面から掻き取られ、回収される。
【0048】
(定着ユニット70)
定着ユニット70は、定着ローラー71,72を含む。記録用紙60は、2次転写された後、定着ユニット70に送られる。記録用紙60に転写されたトナー像の中のトナー粒子は、定着ローラー71,72によって加熱および加圧される。
【0049】
記録用紙60に転写されたトナー像は、これらの加熱および加圧によって、記録用紙60の表面に定着される。その後、記録用紙60は排紙装置(図示せず)を通して外部に排出される。以上のようにして、湿式画像形成装置1000における画像形成プロセスが完了する。なお、上記構成に関し、現像ローラー14および中間転写ローラー51は、本実施の形態においてはローラー状に構成されるが、ベルト状に構成されてもよい。
【0050】
(画像形成条件制御処理ST100)
図4を参照して、湿式画像形成装置1000において行われる画像形成条件制御処理ST100について説明する。画像形成条件制御処理ST100(
図4参照)を実行するための制御プログラムは、エンジン制御部300(
図2参照)のメモリー302(
図2参照)内に格納されている。CPU304がこの制御プログラムに従って装置各部を制御することで、画像形成条件制御処理ST100が実行される。
【0051】
CPU304からの制御信号に基づきトナー量検知センサー30の発光部31が動作し、発光部31から検知光31Lが出射される。受光部32が反射光32Lを受光して、反射光32Lの強度に応じた受光信号がCPU304に送出されて、種々の判定が行われる。必要に応じて、CPU304は各種画像形成条件を制御し、その制御された画像形成条件をメモリー302に書き込むことで、メモリー302に格納されている画像形成条件が更新される。
【0052】
画像形成条件制御処理ST100は、ベースライン補正処理ST10および画像形成条件変更ルーチンST20を含む。ベースライン補正処理ST10は、画像形成条件変更ルーチンST20において感光体21上のパッチ画像に含まれるトナー量を高い精度で検知するために実行される。したがって、ベースライン補正処理ST10は、画像形成条件変更ルーチンST20に先立って実行される。
【0053】
ベースライン補正処理ST10においては、まず、スクイズ装置25を用いて感光体21上に存在しているキャリア液の量が除去(もしくは低減)される(ST11)。その後、トナー量検知センサー30の発光部31から、キャリア液の量が低減された感光体21の表面(トナー像が存在しない表面)に向けて検知光31Lが照射され、その反射光32Lが受光部32によって受光される。トナー量検知センサー30は、反射光32Lの強度に応じた受光信号を、ベースライン補正値として出力する(ST12)。
【0054】
ベースライン補正値は、CPU304に送出される。CPU304は、取得したベースライン補正値に基づいて、受光量からトナー量を算出するために参照テーブル306に格納されているデータを補正したり、発光部31から照射される検知光31Lの照射量を補正したりする(ST13)。これらのベースライン補正が実行されることによって、後続の画像形成条件変更ルーチンST20において、パッチ画像中のトナー量を高精度で検知することが可能となり、ひいては湿式画像形成装置1000の画像形成条件を適切に制御することが可能となる。
【0055】
画像形成条件変更ルーチンST20においては、まず、パッチ画像としてのトナー像が感光体21上に形成される(ST21)。トナー量検知センサー30の発光部31から、中間転写ローラー51(被転写部材)に転写される前の感光体21上のパッチ画像に向けて検知光31Lが照射される。検知光31Lは、パッチ画像で反射して、その反射光32L(正反射光およびまたは散乱光)は、受光部32によって受光される。トナー量検知センサー30は、反射光32Lの強度に応じた受光信号を、基準出力値として出力する(ST22)。
【0056】
基準出力値は、CPU304に送出される。CPU304は、参照テーブル306を参照して基準出力値をトナー量の値に変換し、そのトナー量が所定の許容範囲内かを判定する(ST23)。なお、CPU304は、取得した基準出力値を変換することなく直接用いて、その基準出力値が所定の許容範囲内か否かを判定するようにしてもよい。
【0057】
基準出力値(パッチ画像のトナー量)が所定の許容範囲内である場合、画像形成条件制御処理ST100は終了する(ST30)。一方、基準出力値(パッチ画像のトナー量)が所定の許容範囲外である場合、CPU304は画像形成条件を制御し、その制御された画像形成条件はメモリー302に記憶される(ST24)。得られる基準出力値(パッチ画像のトナー量)が許容範囲になるまで、画像形成条件変更ルーチンST20は繰り返される。
【0058】
画像形成条件の制御の例としては、たとえば現像ローラー14と感光体21との当接力を増減させ、現像位置24(ニップ部)での液絞り量を変化させたり、現像位置24に電界を形成するために印加される現像バイアスのバイアス値を変化させたり、トナーの帯電量を変化させたり、現像槽11に貯留されている現像液Wのトナー濃度を変化させたり、供給ローラー12、受け渡しローラー13および現像ローラー14同士の周速比を変化させたりすること等が挙げられる。
【0059】
したがって本実施の形態における湿式画像形成装置1000によれば、エンジン制御部300のCPU304が、ベースライン補正処理ST10で取得したベースライン補正値および画像形成条件変更ルーチンST20で得られる基準出力値に基づいてエンジン部200の各部を制御することによって、画像形成条件を適切に制御することが可能となる。
【0060】
(作用・効果)
ここで、感光体21の表面状態、および、トナー量検知センサー30の発光部31から出射される検知光31Lの光量は、湿式画像形成装置1000が設置される環境に応じて変動しやすい。また、感光体21および発光部31は、製造上の個体差を有している場合が多く、これらの状態は経年によっても変動しやすい。感光体21およびトナー量検知センサー30の間の距離も、個体差または経年によって変動しやすい。
【0061】
したがって、発光部31から同一の設定条件で検知光31Lを出射したとしても、感光体21の表面状態に応じて反射光32Lの反射状態または散乱状態は変化する。仮に、上記のベースライン補正処理ST10が実行されていない場合、トナー量検知センサー30から安定した受光信号を得ることはできなくなり、画像形成条件を適切に制御できなくなる。ベースライン補正処理ST10が実行されることによって、感光体21および発光部31の個体差または状態の変化等が、後続の画像形成条件変更ルーチンST20に影響することは、抑制または防止される。
【0062】
図5を参照して、上述のとおり、湿式画像形成装置1000においては、キャリア液中にトナーが分散された現像液Wが用いられる。ベースライン補正処理ST10を実行する際には、発光部31から感光体21の表面21S(トナー像が存在しない表面)に向けて検知光31Lが照射される。この際、感光体21の表面21Sにキャリア液40が存在していると、キャリア液40の厚さによっては、感光体21の表面21Sでの反射によって得られた反射光32L1と、キャリア液40の表面40Sでの反射によって得られた反射光32L2とが、互いに干渉し合う。これらの反射光32L1,32L2は、干渉によって互いに強め合う場合がある。
【0063】
この場合、受光部32に受光される反射光32Lの光量が大きくなり、適切なベースライン補正値が得られないこととなる。したがって、本実施の形態のベースライン補正処理ST10においては、ベースライン補正値を取得すること(ST12)に先立って、感光体21の表面に存在しているキャリア液の量が、スクイズ装置25によって低減される(ST11)。
【0064】
上述の反射光32L1,32L2同士の干渉による強め合いは、以下のように説明される。湿式画像形成装置においては、たとえば、屈折率が1.4〜1.5程度であり、密度が0.8〜1.0g/m
2程度のパラフィンオイルまたはシリコンオイルが用いられる。感光体21(像担持体)としてアモルファスシリコン製の感光体が用いられる場合、屈折率の値は、空気<キャリア液<アモルファスシリコン製の感光体の順になる。
【0065】
導波する光が屈折率の小さい媒質の中を進んでいき、その後、その光が屈折率の大きい媒質に当たって反射した場合、その反射の際には固定端反射が行われる。したがって、発光部31から出射された検知光31Lは、空気とキャリア液40と間の界面(表面40S)では固定端反射し、キャリア液40とアモルファスシリコン製の感光体21との間の界面(表面21S)でも固定端反射する。
【0066】
反射光32L1,32L2同士が干渉によって強め合う条件について、キャリア液40の厚さをdとし、検知光31Lの入射角をθとし、所定の整数をmとし、検知光31Lの波長をλとし、nをキャリア液40の屈折率とすると、以下の式(1)が成立し、式(1)を変形すると、以下の式(2)が得られる。
2d×cosθ=m×λ/n ・・・式(1)
d=m×λ/(2×n×cosθ) ・・・式(2)
cosθ=0.5となるように発光部31が配置されるとすると、式(2)から、次の式(3)が得られる。
d=m×λ/n ・・・式(3)
式(3)に示されるとおり、干渉の発生を抑制するためにはキャリア液の量は少ない方がよく、特に、キャリア液の厚さが発光部31から出射される検知光31Lの波長の7割程度以下となるようにキャリア液の量が低減されることによって、反射光32L1,32L2同士が干渉によって強め合うことはほとんどなくなる。
【0067】
したがって、本実施の形態のベースライン補正処理ST10のように、感光体21上のキャリア液の量が低減された状態でベースライン補正値が取得されることによって、高い精度でベースライン補正を行うことが可能となる。特に、発光部31から出射される検知光31Lの波長の7割程度以下となるように感光体21上のキャリア液の量が低減されることによって、より高い精度でベースライン補正を行うことが可能となる。
【0068】
[実施の形態2]
図6を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置2000について説明する。
図6は、湿式画像形成装置2000の全体構成を示す模式図である。
【0069】
湿式画像形成装置2000においては、現像装置10に、現像装置退避手段17(キャリア液量低減手段)が設けられる。現像装置退避手段17は、現像ローラー14を矢印AR17方向に往復移動させることができる。現像装置退避手段17は、現像ローラー14を感光体21(現像位置24)から離間するように退避させたり、感光体21に当接するように現像ローラー14を移動させたりする。
【0070】
(画像形成条件制御処理ST200)
図7を参照して、湿式画像形成装置2000において行われる画像形成条件制御処理ST200について説明する。画像形成条件制御処理ST200も、上述の実施の形態1における画像形成条件制御処理ST100と同様に、ベースライン補正処理ST10および画像形成条件変更ルーチンST20を含む。
【0071】
本実施の形態のベースライン補正処理ST10においては、まず、CPU304によって現像装置退避手段17が駆動され、現像装置退避手段17は、現像装置10(現像ローラー14)を現像位置24から退避させる(ST11A)。この状態で、感光体21が回転される(ST11B)。
【0072】
感光体21の表面上に存在しているキャリア液は、感光体21の回転に伴って、転写部26を通過する。感光体21の表面上に存在しているキャリア液は、転写部26を通過する際に、中間転写ローラー51との接触によって略半分が中間転写ローラー51上に転移する。感光体21の表面上に存在しているキャリア液の量は、転写部26を通過後には略半分に低減される。感光体21を複数回回転させて、キャリア液の量が転写部26において十分に低減されるようにしてもよい。
【0073】
本実施の形態のベースライン補正処理ST10においては、転写部26の通過によってのみキャリア液の量が低減されてもよいが、
図6に示すようにスクイズ装置25が湿式画像形成装置2000に設けられている場合は、上述の実施の形態1と同様に、スクイズ装置25を駆動して、キャリア液の量をさらに低減可能なようにしてもよい。
【0074】
現像装置10(現像ローラー14)を退避させた状態で、クリーニングブレード27がさらに用いられてもよい。上述のとおり、クリーニングブレード27は、感光体21の回転方向(矢印AR21方向)において、転写部26よりも下流であって、感光体21上にトナー像が形成される部分(現像位置24)よりも上流に配置される。クリーニングブレード27は、通常の画像形成時には、転写後に感光体21上に残留しているトナー像を除去する残留トナー像除去手段として機能するものである。
【0075】
感光体21の表面上に存在しているキャリア液は、感光体21の回転に伴って、クリーニングブレード27によって掻き取られる。感光体21を複数回回転させて、キャリア液の量がクリーニングブレード27によって十分に低減されるようにしてもよい。感光体21の表面上に存在しているキャリア液の厚さは、そのキャリア液がクリーニングブレード27を1回通過する毎にたとえば0.2μm以下になり、そのキャリア液がクリーニングブレード27を2回以上通過する毎にたとえば0.1μm以下になる。
【0076】
感光体21上のキャリア液の量が低減された後(ST11A,ST11Bの後)、上述の実施の形態1と同様に、トナー量検知センサー30の発光部31から、キャリア液の量が低減された感光体21の表面(トナー像が存在しない表面)に向けて検知光31Lが照射され、その反射光32Lが受光部32によって受光される。トナー量検知センサー30は、反射光32Lの強度に応じた受光信号を、ベースライン補正値として出力する(ST12)。
【0077】
ベースライン補正値は、CPU304に送出される。CPU304は、取得したベースライン補正値に基づいて、受光量からトナー量を算出するために参照テーブル306に格納されているデータを補正したり、発光部31から照射される検知光31Lの照射量を補正したりする(ST13)。これらのベースライン補正が実行されることによって、後続の画像形成条件変更ルーチンST20において、パッチ画像中のトナー量を高精度で検知することが可能となり、ひいては湿式画像形成装置1000の画像形成条件を適切に制御することが可能となる。
【0078】
ベースライン補正の後(ST13の後)、本実施の形態のベースライン補正処理ST10においては、現像装置退避手段17がCPU304によって再び駆動され、現像装置10(現像ローラー14)は、感光体21に当接するように移動される(ST13A)。その後、上述の実施の形態1と同様に、画像形成条件変更ルーチンST20が行われる。
【0079】
本実施の形態の湿式画像形成装置2000によっても、エンジン制御部300のCPU304が、ベースライン補正処理ST10で取得したベースライン補正値および画像形成条件変更ルーチンST20で得られる基準出力値に基づいてエンジン部200の各部を制御することによって、画像形成条件を適切に制御することが可能となる。
【0080】
上述の各実施の形態は、像担持体として感光体21が用いられ、感光体21上に形成されたパッチ画像のトナー量に基づいて画像形成条件が制御されるという構成に基づいて説明した。この構成は、中間転写ローラー51が用いられない場合にも同様に適用することができる。この場合、記録用紙60が被転写部材に相当する。
【0081】
本発明の像担持体は、中間転写ローラー51であってもよい。この場合、中間転写ローラー51がトナー像を担持する像担持体として機能する。トナー量検知センサー30(検知位置E)は、中間転写ローラー51の回転方向(矢印AR51方向)において、中間転写ローラー51上の転写部26よりも下流であって転写部52よりも上流に配置される。スクイズ装置25が用いられる場合、スクイズ装置25は、中間転写ローラー51の回転方向(矢印AR51方向)において、中間転写ローラー51上の転写部26よりも下流であってトナー量検知センサー30よりも上流に配置される。記録用紙60が、被転写部材に相当する。また、クリーニングブレード53が残留トナー像除去手段に相当する。
【0082】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。