(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記刺激条件は、前記温度刺激を付与する刺激部位と、当該刺激部位に付与する温度刺激の温度と、前記温度刺激を付与する時間と、により規定されてある請求項1に記載の深部体温上昇誘導システム。
前記刺激条件決定部は、前記演算された温度差が予め設定された腹部用閾値よりも小さい場合には前記腹部に対する温度刺激を禁止するように決定し、前記演算された温度差が予め設定された腰部用閾値以上である場合には前記腰部に対する温度刺激を禁止するように決定し、前記演算された温度差が予め設定された下腿部前面用閾値以上である場合には前記下腿部前面に対する温度刺激を禁止するように決定する請求項3又は4に記載の深部体温上昇誘導システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、同一の刺激強度を付与した場合でも、例えば季節や室温等の環境変化によって、体温調節反応が変化することが知られている。このため、特許文献1−4に記載の技術のような一定の刺激条件では、安定して深部体温の上昇を誘導することができない。
【0009】
また、温度刺激の刺激強度の基準として利用される皮膚温は対象者の年齢、性別、体型、出身地などに応じて個人差があり、共通の基準を設けることは容易ではない。深部体温を基準とする場合には、鼓膜温や直腸温などの測定が必要となるが、測定作業が難しく、現実的でない。
【0010】
更に、一般的に、刺激を受ける部位に応じて、温度刺激に対する体温調節反応が異なることが知られ、身体全体や身体の広範囲に亘る温度刺激では、効果的に体温上昇を誘導できるものではなく、対象者の身体的負担も大きくなってしまう。
【0011】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、効率的に、且つ、安定的に深部体温の上昇を誘導することが可能な深部体温上昇誘導視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る深部体温上昇誘導システムの特徴構成は、
同一の足における足背部及び足底部の夫々の皮膚温を測定する温度センサと、
前記足背部の皮膚温と前記足底部の皮膚温との温度差を演算する温度差演算部と、
前記演算された温度差に基づいて、体の一部に設定された刺激部位に付与する温度刺激の刺激条件を決定する刺激条件決定部と、
前記決定された刺激条件に基づいて温度刺激を行う温度刺激実行部と、
を備えている点にある。
【0013】
人の生理状態は、季節や環境温度や、体型等に伴って変化することが知られている。上記特徴構成のように、足背部の皮膚温と足底部の皮膚温との温度差を測定すると生理状態を容易に判断できることがわかった。このため、深部体温の上昇を促すために刺激部位に付与する温度刺激の条件を決定することができる。したがって、効率的に、且つ、安定的に深部体温の上昇を誘導することが可能となる。
【0014】
また、前記刺激条件は、前記温度刺激を付与する刺激部位と、当該刺激部位に付与する温度刺激の温度と、前記温度刺激を付与する時間と、により規定されてあると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、足背部の皮膚温と足底部の皮膚温との温度差に応じて、最適な温度刺激を設定できることがわかった。したがって、深部体温の上昇を効果的に促すことができる。
【0016】
また、前記温度刺激を付与する刺激部位は、腹部、腰部、及び下腿部前面のうちの少なくとも一つであると好適である。
【0017】
これらの刺激部位に温度刺激を付与すると、深部体温の上昇を誘導できることがわかった。このため、効率良く深部体温の上昇を促すことができる。
【0018】
また、前記腹部及び前記腰部に対する温度刺激は、前記刺激部位を温める加温刺激であり、前記下腿部前面に対する温度刺激は、前記刺激部位を冷やす冷温刺激であると好適である。
【0019】
このように腹部及び腰部には加温刺激を行い、下腿部前面には冷温刺激を行うことにより、効果的に深部体温が上昇し易いことがわかった。したがって、深部体温の上昇を誘導できる。
【0020】
また、前記刺激条件決定部は、前記演算された温度差が予め設定された腹部用閾値よりも小さい場合には前記腹部に対する温度刺激を禁止するように決定し、前記演算された温度差が予め設定された腰部用閾値以上である場合には前記腰部に対する温度刺激を禁止するように決定し、前記演算された温度差が予め設定された下腿部前面用閾値以上である場合には前記下腿部前面に対する温度刺激を禁止するように決定すると好適である。
【0021】
このような構成の場合には、温度刺激に対して深部体温の上昇の効果が小さいことがわかった。このため、上記の状態では、温度刺激を付与しないようにすることで、温度刺激の付与による身体的負担を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る深部体温上昇誘導システム100は、人1の体温を上昇させる機能を備えている。
【0024】
1.深部体温上昇誘導システムの構成
図1は、本発明に係る深部体温上昇誘導システム100の構成を模式的に示したブロック図である。
図1に示されるように、深部体温上昇誘導システム100は、温度センサ11、温度差演算部12、刺激条件決定部13、刺激条件格納部14、温度刺激実行部15、ヒータ16の各機能部を備えて構成される。各機能部はCPUを中核部材として、人1の深部体温を上昇させる種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0025】
温度センサ11は、足背部2及び当該足背部2の裏側の足底部3の夫々の皮膚温を測定する。足背部2とは深部体温を上昇させる人1の足の甲である。足底部3とは深部体温を上昇させる人1の足の裏である。温度センサ11は、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温を測定可能に、足背部2の皮膚温を測定する足背部用温度センサ11Aと、足底部3の皮膚温を測定する足底部用温度センサ11Bとを備えて構成される。以下の説明では、足背部用温度センサ11Aと足底部用温度センサ11Bとを区別する必要が無い場合には、単に温度センサ11として説明する。このように温度センサ11により、同一の足の甲及び裏の皮膚温が測定される。温度センサ11により測定された足背部2の皮膚温及び足底部3の皮膚温は、夫々、皮膚温情報として後述する温度差演算部12に伝達される。このような足背部2及び当該足背部2の裏側の足底部3の夫々の皮膚温を温度センサ11により検出する工程は、検出工程と称される。
【0026】
温度差演算部12は、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差を演算する。足背部2の皮膚温は足背部用温度センサ11Aから伝達される。足底部3の皮膚温は足背部用温度センサ11Aから伝達される。温度差演算部12は、これら2つの皮膚温の温度差を演算する。演算された温度差は、温度差情報として後述する刺激条件決定部13に伝達される。このような足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差を演算する工程は、温度差演算工程と称される。
【0027】
刺激条件決定部13は、演算された温度差に基づいて、体の一部に設定された刺激部位に付与する温度刺激の刺激条件を決定する。演算された温度差とは、温度差演算部12から伝達される温度差情報に含まれる。体の一部に設定された刺激部位とは、人1の体に設定された部位である。本実施形態では、後述する腹部、腰部、及び下腿部前面のうちの少なくとも一つが相当する。付与する温度刺激とは、人1の体温を上昇させるために付与する温度刺激である。このような温度刺激の条件は、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差により予め設定されている。本実施形態では、このような温度刺激の条件は、刺激条件格納部14に予め格納(記憶)されている。したがって、刺激条件決定部13は、刺激条件格納部14に格納されている温度条件の中から、温度差演算部12から伝達された温度差情報に含まれる温度差に応じた温度刺激を参照し、これを人1に付与する温度刺激として決定する。このような演算された温度差に基づいて、付与する温度刺激の刺激条件を決定する工程は、刺激条件決定工程と称される。
【0028】
刺激条件格納部14は、人1に付与する温度刺激の刺激条件が予め格納されている。本実施形態では、刺激条件は、温度刺激を付与する刺激部位と、当該刺激部位に付与する温度刺激の温度と、温度刺激を付与する時間と、により規定されている。温度刺激を付与する刺激部位とは、体温を上昇させる人1の身体のうち、温度刺激が与えられる部位である。本実施形態では、温度刺激を付与する刺激部位は、腹部、腰部、及び下腿部前面のうちの少なくとも一つが相当する。腹部は人1の腹であり、腰部は人1の腰である。また、下腿部前面とは、人1の下腿部のうち前面である。
【0029】
刺激部位に付与する温度刺激の温度及び温度刺激を付与する時間は、温度刺激の強度に関するものであるので、夫々紐付けして刺激条件格納部14に格納されている。このような刺激条件の一例が
図2−
図4に示される。
図2は、腹部が刺激部位である場合の刺激条件であり、
図3は、腰部が刺激部位である場合の刺激条件である。また、
図4は、下腿部前面が刺激部位である場合の刺激条件である。夫々の刺激条件は、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差に応じて、複数の水準(本実施形態では3つの水準)に分割して規定される。この水準毎に、刺激強度(温度及び時間)が設定される。
【0030】
図2に示されるように、腹部に対する温度刺激は、刺激部位を温める加温刺激となる。すなわち、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA2℃以上である場合には、刺激条件決定部13は、温度刺激の刺激条件として38℃又は40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与するよう決定する。一方、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃以上、且つ、A2℃未満である場合には、刺激条件決定部13は、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与するよう決定する。
【0031】
一方、刺激条件決定部13は、演算された温度差が予め設定された腹部用閾値よりも小さい場合には腹部に対する温度刺激を禁止するように決定する。すなわち、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃未満である場合には、刺激条件決定部13は、腹部に温度刺激を付与しないように決定する。
【0032】
また、
図3に示されるように、腰部に対する温度刺激も、刺激部位を温める加温刺激となる。すなわち、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃未満である場合には、刺激条件決定部13は、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与するよう決定する。一方、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃以上、且つ、B2℃未満である場合には、刺激条件決定部13は、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、或いは、38℃の温度で30分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与するよう決定する。
【0033】
一方、刺激条件決定部13は、演算された温度差が予め設定された腰部用閾値以上である場合には腰部に対する温度刺激を禁止するように決定する。すなわち、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB2℃以上である場合には、刺激条件決定部13は、腰部に温度刺激を付与しないように決定する。
【0034】
また、
図4に示されるように、下腿部前面に対する温度刺激は、刺激部位を冷やす冷温刺激となる。すなわち、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃未満である場合には、刺激条件決定部13は、温度刺激の刺激条件として20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与するよう決定する。一方、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃以上、且つ、C2℃未満である場合には、刺激条件決定部13は、温度刺激の刺激条件として25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与するよう決定する。
【0035】
一方、刺激条件決定部13は、演算された温度差が予め設定された下腿部前面用閾値以上である場合には下腿部前面に対する温度刺激を禁止するように決定する。すなわち、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC2℃以上である場合には、刺激条件決定部13は、下腿部前面に温度刺激を付与しないように決定する。
【0036】
ここで、温度刺激を付与する刺激部位は、腹部、腰部、及び下腿部前面の全てであっても良いし、一部であっても良い。このため、上述の
図2−
図4において、A1〜A3、B1〜B3、及びC1〜C3は、夫々温度差が重複しているように規定することも可能であるし、夫々が重複しないように規定することも可能である。刺激条件決定部13は刺激条件格納部14を参照して刺激条件を決定し、当該刺激条件を後述する温度刺激実行部15に伝達する。
【0037】
温度刺激実行部15は、決定された刺激条件に基づいて温度刺激を行う。決定された刺激条件とは、刺激条件決定部13により決定された刺激条件である。温度刺激実行部15は、この刺激条件に沿って対象となる刺激部位に対して温度刺激を行う。もちろん、刺激条件決定部13により刺激部位に温度刺激を付与しないように決定された場合には、温度刺激実行部15により温度刺激は行われない。このような決定された刺激条件に基づいて温度刺激を行う工程は、温度刺激実行工程と称される。
【0038】
このような温度刺激の付与は、起床時や入浴時等、深部体温の上昇が求められる種々の状況において行うことが可能なように構成されている。例えば電熱線等からなるヒータ16やペルチエ等を利用した温度調節機能を、
図5及び
図6のように衣服(パジャマやインナーや腹巻等)に内蔵し、起床時刻に合わせて温度刺激を付与するよう構成することが可能である。ここで、
図5は腹部に対向するパジャマの内側の部位にヒータ16を配設した例であり、
図6は腰部に対向するパジャマの内側の部位にヒータ16を配設した例である。
【0039】
また、ベッドのマットレスに上述の温度調節機能を内蔵して温度刺激を付与するように構成することも可能である。更には、入浴中においては、浴槽に備えられる水流制御や内蔵される温度調節機能により、
図7に示されるように低温湯下においても腹部や腰部や下腿部前面等の付与部位に温度刺激(設定された温度の冷水)を付与するように構成することも可能である。このように、温度刺激を付与することにより、効果的に身体の加温効果を高めることが可能となる。
【0040】
2.温度刺激による深部体温の変化
以下、腹部、腰部、及び下腿部前面に温度刺激を行った場合の深部体温の変化について図を用いて説明する。
【0041】
2−1.腹部に温度刺激を行った場合の深部体温の変化
図8−
図10には、腹部に対して温度刺激を行った場合の深部体温の時間変化について示される。本実施形態では、深部体温は人1の直腸の温度を測定した結果(白丸)である。横軸には温度刺激を開始してからの経過時間が示され、縦軸には温度刺激を開始してからの深部体温の変化量が示される。また、比較結果として、温度刺激を行っていない場合の深部体温の時間的変化(黒丸)も示される。
【0042】
図8(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA2℃以上であり、温度刺激の刺激条件として38℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図8(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA2℃以上であり、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0043】
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、温度刺激を行っていない場合の深部体温(黒丸)よりも、温度刺激を行った場合の深部体温(白丸)の方が、温度変化量が大きいことが明らかである。なお、身体的負担の軽減の点からは、40℃の温度で15分間の温度刺激よりも38℃の温度で15分間の温度刺激の方が望ましい。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA2℃以上である場合には、38℃の温度で15分間、又は40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であることが本発明者により見出された。
【0044】
図9(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃以上、且つ、A2℃未満であり、温度刺激の刺激条件として38℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図9(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃以上、且つ、A2℃未満であり、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0045】
図9(a)に示されるように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃以上、且つ、A2℃未満である場合には、38℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は、温度刺激を付与しない場合の深部体温(黒丸)と差異が見られない。一方、
図9(b)に示されるように、40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は、温度刺激を付与してから40分以上経過すると、温度刺激を行っていない場合の深部体温(黒丸)よりも、大きく変化することが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃以上、且つ、A2℃未満である場合には、40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であることが本発明者により見出された。
【0046】
図10(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃未満であり、温度刺激の刺激条件として38℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図10(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃未満であり、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0047】
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃未満である場合には、38℃の温度で15分間、又は40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与しても、深部体温(白丸)は、温度刺激を付与しない場合の深部体温(黒丸)に比べて低下していることが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃未満である場合には、温度刺激を付与すると深部体温が低下し、深部体温の上昇誘導効果が得られないことが本発明者により見出された。
【0048】
このように、深部体温上昇誘導システム100によれば、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA2℃以上である場合には、38℃の温度で15分間、又は40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であり、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃以上、且つ、A2℃未満である場合には、40℃の温度で15分間、腹部に当該腹部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能である。また、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がA1℃未満である場合には、温度刺激を禁止することにより深部体温の低下を防止できる。
【0049】
2−2.腰部に温度刺激を行った場合の深部体温の変化
図11−
図13には、腰部に対して温度刺激を行った場合の深部体温の時間変化について示される。ここでも、上述の腹部への温度刺激と同様に、深部体温は人1の直腸の温度を測定した結果(白丸)が示される。横軸には温度刺激を開始してからの経過時間が示され、縦軸には温度刺激を開始してからの深部体温の変化量が示される。また、比較結果として、温度刺激を行っていない場合の深部体温の時間的変化(黒丸)も示される。
【0050】
図11(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃未満であり、温度刺激の刺激条件として38℃の温度で30分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図11(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃未満であり、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0051】
図11(a)に示されるように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃未満である場合には、38℃の温度で30分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は、温度刺激を付与しない場合の深部体温(黒丸)と差異が見られない。一方、
図11(b)に示されるように、40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は、温度刺激を行っていない場合の深部体温(黒丸)よりも、大きく変化することが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃未満である場合には、40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であることが本発明者により見出された。
【0052】
図12(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃以上、且つ、B2℃未満であり、温度刺激の刺激条件として38℃の温度で30分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図12(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃以上、且つ、B2℃未満であり、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0053】
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、温度刺激を行っていない場合の深部体温(黒丸)よりも、温度刺激を行った場合の深部体温(白丸)の方が、温度変化量が大きいことが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃以上、且つ、B2℃未満である場合には、38℃の温度で30分間、又は40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であることが本発明者により見出された。
【0054】
図13(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB2℃以上であり、温度刺激の刺激条件として38℃の温度で30分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図13(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB2℃以上であり、温度刺激の刺激条件として40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0055】
図13(a)に示されるように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB2℃以上である場合には、38℃の温度で30分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与しても、深部体温(白丸)は、温度刺激を付与しない場合の深部体温(黒丸)と変化が小さいことが明らかである。また、
図13(b)に示されるように、40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与すると、深部体温(白丸)は、温度刺激を付与しない場合の深部体温(黒丸)と比べて深部体温が低下していることが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB2℃以上である場合には、温度刺激を付与しても深部体温の上昇には効果が少ないことが本発明者により見出された。
【0056】
このように、深部体温上昇誘導システム100によれば、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃未満である場合には、40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であり、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB1℃以上、且つ、B2℃未満である場合には、38℃の温度で30分間、又は40℃の温度で15分間、腰部に当該腰部を温める温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能である。また、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がB2℃以上である場合には、温度刺激を禁止することにより人1への無用な温度刺激を防止することにより、身体的負担を軽減できる。
【0057】
2−3.下腿部前面に温度刺激を行った場合の深部体温の変化
図14−
図16には、下腿部前面に対して温度刺激を行った場合の深部体温の時間変化について示される。ここでも、上述の腹部への温度刺激と同様に、深部体温は人1の直腸の温度を測定した結果(白丸)が示される。横軸には温度刺激を開始してからの経過時間が示され、縦軸には温度刺激を開始してからの深部体温の変化量が示される。また、比較結果として、温度刺激を行っていない場合の深部体温の時間的変化(黒丸)も示される。
【0058】
図14(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃未満であり、温度刺激の刺激条件として25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図14(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃未満であり、温度刺激の刺激条件として20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0059】
図14(a)に示されるように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃未満である場合には、25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は、温度刺激を付与しない場合の深部体温(黒丸)よりも低下している。一方、
図14(b)に示されるように、20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は、温度刺激を行っていない場合の深部体温(黒丸)よりも、大きく変化することが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃未満である場合には、20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であることが本発明者により見出された。
【0060】
図15(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃以上、且つ、C2℃未満であり、温度刺激の刺激条件として20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図15(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃以上、且つ、C2℃未満であり、温度刺激の刺激条件として25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0061】
図15(a)に示されるように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃以上、且つ、C2℃未満である場合には、20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は低下している。また、温度刺激を行っていない場合の深部体温(黒丸)に対して変化も小さい。一方、
図15(b)に示されるように、25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した際の深部体温(白丸)は、温度刺激を行っていない場合の深部体温(黒丸)よりも、大きく変化することが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃以上、且つ、C2℃未満である場合には、25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であることが本発明者により見出された。
【0062】
図16(a)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC2℃以上であり、温度刺激の刺激条件として20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。また、
図16(b)には足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC2℃以上であり、温度刺激の刺激条件として25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与した場合の深部体温の変化が示される。
【0063】
図16(a)及び
図16(b)に示されるように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC2℃以上である場合には、20℃の温度で30分間、又は25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与しても、深部体温(白丸)は、温度刺激を付与しない場合の深部体温(黒丸)に対して変化が小さいことが明らかである。このように、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC2℃以上である場合には、温度刺激を付与しても深部体温の上昇には効果が少ないことが本発明者により見出された。
【0064】
このように、深部体温上昇誘導システム100によれば、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃未満である場合には、20℃の温度で30分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能であり、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC1℃以上、且つ、C2℃未満である場合には、25℃の温度で15分間、下腿部前面に当該下腿部前面を冷やす温度刺激を付与すると深部体温を上昇可能である。また、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差がC2℃以上である場合には、温度刺激を禁止することにより人1への無用な温度刺激を防止することにより、身体的負担を軽減できる。
【0065】
上記結果は、単に腹部、腰部、下腿部前面に対して温度刺激を付与すれば深部体温の上昇を誘導できるわけではなく、温度刺激の付与時点での生理状態(足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差)に応じた最適な刺激強度を設定しなければ、安定的な深部体温の上昇を誘導できないことを意味している。そこで、深部体温上昇誘導システム100によれば、その時々の生理状態に応じた最適な刺激強度を設定することができるので、効果的に、且つ、安定的に深部体温の上昇を誘導することが可能である。また、より低強度での刺激条件を設定できるので、身体的負担の軽減にも寄与する。
【0066】
また、本発明により、身体各部位における温度刺激に対する体温調節反応の特性、及び刺激強度に対する体温調節反応(深部体温の変化挙動)の変化特性の分析、その変化を反映する生理指標を行った結果、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差によって、付与する温度刺激に対する体温調節反応(深部体温の変化挙動)の予測が可能であることが見出された。この知見により、刺激を付与する時点での上記足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差に応じて、最適な刺激部位と刺激強度(温度及び時間)を設定することで、効果的に、且つ、安定的に深部体温の上昇を誘導することができる。また、局所部位への最小限の範囲に、最低限の強度の刺激を付与するため、温度刺激が付与される人1の身体的負担を軽減することができる。
【0067】
人1の生理状態は、季節や環境温度や、体型等に伴って変化することが知られている。本発明により、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差を測定すると生理状態を容易に判断できることがわかった。このため、深部体温の上昇を促すために刺激部位に付与する温度刺激の条件を決定することができる。したがって、効率的に、且つ、安定的に深部体温の上昇を誘導することが可能となる。
【0068】
3.その他の実施形態
上記実施形態では、温度センサ11は、同一の足における足背部2及び足底部3の夫々の皮膚温を測定するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。足背部2及び足底部3の皮膚温の測定は、異なる足について測定する構成とすることも当然に可能である。係る場合、異なる足において足背部2及び足底部3の皮膚温を測定すると誤差を含む可能性があるが、このような誤差を考慮して温度刺激の刺激条件を決定することで適切に体温の上昇を誘導することが可能となる。
【0069】
上記実施形態では、刺激条件は、温度刺激を付与する刺激部位と、当該刺激部位に付与する温度刺激の温度と、温度刺激を付与する時間と、により規定されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。温度刺激を付与する刺激部位と、当該刺激部位に付与する温度刺激の温度と、温度刺激を付与する時間とのうち少なくとも何れか一つのみを規定する刺激条件とすることも当然に可能である。
【0070】
すなわち、温度刺激を付与する刺激部位のみを刺激条件として規定する構成も可能であるし、刺激部位に付与する温度刺激の温度のみを刺激条件として規定する構成も可能であるし、温度刺激を付与する時間のみを刺激条件として規定する構成も可能である。更には、温度刺激を付与する刺激部位と、当該刺激部位に付与する温度刺激の温度とを刺激条件として規定する構成も可能であるし、温度刺激を付与する刺激部位と、温度刺激を付与する時間とを刺激条件として規定する構成も可能であるし、刺激部位に付与する温度刺激の温度と、温度刺激を付与する時間とを刺激条件として規定する構成も可能である。
【0071】
上記実施形態では、温度刺激を付与する刺激部位が、腹部、腰部、及び下腿部前面のうちの少なくとも一つであるとして説明した。すなわち、温度刺激を付与する部位は、腹部、腰部、及び下腿部前面のうちの一つであっても良いし、腹部、腰部、及び下腿部前面のうちの二つであっても良いし、腹部、腰部、及び下腿部前面の全てであっても良い。
【0072】
上記実施形態では、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差に基づいて、刺激条件が決定されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。温度差と共に、当該温度差以外のパラメータ、例えば性別や年齢等の情報を考慮して刺激条件を決定することも当然に可能である。もちろん、上記以外のパラメータと温度差とを用いて刺激条件を決定することも当然に可能である。
【0073】
上記実施形態では、深部体温上昇誘導システム100について説明した。本発明にあっては、このような深部体温上昇誘導システム100に使用される方法(深部体温上昇誘導方法)、すなわち、足背部2及び当該足背部2の裏側の足底部3の夫々の皮膚温を温度センサ11により測定する測定工程と、足背部2の皮膚温と足底部3の皮膚温との温度差を演算する温度差演算工程と、演算された温度差に基づいて、付与する温度刺激の刺激条件を決定する刺激条件決定工程と、を備えている深部体温上昇誘導方法についても当然に権利範囲である。このような深部体温上昇誘導方法に係る発明も、深部体温上昇誘導システム100と同様に、上述した作用効果を得ることが可能である。
【0074】
本発明は、人の体温を上昇させ易くする体温上昇誘導システムに用いることが可能である。