特許第6010955号(P6010955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000002
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000003
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000004
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000005
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000006
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000007
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000008
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000009
  • 特許6010955-コヒーレント光受信機および光受信方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010955
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】コヒーレント光受信機および光受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20161006BHJP
   H04J 14/00 20060101ALI20161006BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H04B9/00 610
   H04B9/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-64954(P2012-64954)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-198032(P2013-198032A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 真
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/119321(WO,A1)
【文献】 特開昭62−066732(JP,A)
【文献】 特開2012−054650(JP,A)
【文献】 特開2012−023607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路から受信した、送信側で信号が印加された主信号光とローカル光を入力して混合してコヒーレント検波を行い、前記主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、当該電気信号に基づいて元の信号を再生出力するコヒーレント光受信手段と、
前記主信号光と隣接する前記伝送路上のチャネル情報を受信し、隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従って前記ローカル光の周波数を変化させて出力するローカル光周波数制御手段、とを備え、
前記ローカル光周波数制御手段は、片側のみに前記隣接チャネル信号光が存在する場合は、前記隣接チャネル信号光が存在しない方向に前記ローカル光の周波数をシフトする周波数オフセット制御を実行することを特徴とするコヒーレント光受信機。
【請求項2】
伝送路から受信した、送信側で信号が印加された主信号光とローカル光を入力して混合してコヒーレント検波を行い、前記主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、当該電気信号に基づいて元の信号を再生出力するコヒーレント光受信手段と、
前記主信号光と隣接する前記伝送路上のチャネル情報を受信し、隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従って前記ローカル光の周波数を変化させて出力するローカル光周波数制御手段、とを備え、
前記ローカル光周波数制御手段は、両側に隣接チャネル信号光が存在し、いずれかの隣接チャネル信号光に周波数ずれがあり、当該周波数がずれている隣接チャネル信号光の周波数が前記主信号光のチャネルに近づく方向にずれている場合は、当該周波数がずれている隣接チャネル信号光とは反対側の方向に前記ローカル光の周波数をシフトし、当該周波数がずれている隣接チャネル信号光の周波数が前記主信号光のチャネルから離れる方向にずれている場合は、当該周波数がずれている隣接チャネル信号光の方向に前記ローカル光の周波数をシフトする周波数オフセット制御を実行することを特徴とするコヒーレント光受信機。
【請求項3】
前記コヒーレント光受信手段は、前記電気信号をデジタル信号に変換し、当該変換したデジタル信号に基づいて前記信号の波形等化処理を行って元の信号を再生出力するデジタル信号処理手段をさらに含み、
前記ローカル光周波数制御手段は、前記デジタル信号処理手段が実行する前記ローカル光の周波数オフセット補償処理における許容値の範囲内で、前記ローカル光の周波数をシフトする周波数オフセット制御を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のコヒーレント光受信機。
【請求項4】
送信側で信号が印加された主信号光を伝送路から受信し、
前記主信号光と隣接する前記伝送路上のチャネル情報を受信して隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従ってローカル光の周波数を変化させて出力し、
前記主信号光と前記ローカル光を混合してコヒーレント検波を行って前記主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、
前記電気信号に基づいて元の信号を再生出力し、
前記隣接チャネル信号光が前記主信号光の片側のみに存在する場合は、前記隣接チャネル信号光が存在しない方向に前記ローカル光の周波数をシフトすることを特徴とする光受信方法。
【請求項5】
送信側で信号が印加された主信号光を伝送路から受信し、
前記主信号光と隣接する前記伝送路上のチャネル情報を受信して隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従ってローカル光の周波数を変化させて出力し、
前記主信号光と前記ローカル光を混合してコヒーレント検波を行って前記主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、
前記電気信号に基づいて元の信号を再生出力し、
前記隣接チャネル信号光が前記主信号光の両側に存在し、いずれかの隣接チャネル信号光に周波数ずれがあり、当該周波数がずれている隣接チャネル信号光の周波数が前記主信号光のチャネルに近づく方向にずれている場合は、当該周波数がずれている隣接チャネル信号光とは反対側の方向に前記ローカル光の周波数をシフトし、
当該周波数がずれている隣接チャネル信号光の周波数が前記主信号光のチャネルから離れる方向にずれている場合は、当該周波数がずれている隣接チャネル信号光の方向に前記ローカル光の周波数をシフトする
ことを特徴とする光受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光受信方式を用いたコヒーレント光受信機および光受信方法に関し、特に、隣接チャネルからのクロストークを低減するコヒーレント光受信機および光受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルコヒーレント光受信方式は、送信側で光電場の振幅や位相に信号を印加して送信した信号光をコヒーレント光受信し、コヒーレント光受信して得られた光信号を電気信号に変換し、その電気信号をデジタル処理して元の信号を再生する技術である。デジタルコヒーレント光受信方式では、光ファイバによる長距離伝送の際に大きな問題となる波長分散補償などの波形等化処理を、デジタル信号処理により高精度に行うことができる。
【0003】
コヒーレント光受信は、入力した信号光と当該信号光とほぼ同じ周波数を有するローカル光(局部発振光)を90度光ハイブリッド回路に入力して混合し、混合により発生するダウンコンバートされた周波数の干渉光を出力として得る。90度光ハイブリッド回路の出力は、位相が互いに90度異なる2組の光(同相成分、直交成分)を含み、光電変換回路で光電変換されて信号光の電場エンベロープを表す電気信号として出力される。この電気信号がデジタル信号に変換されてデジタル信号処理により波形等化処理が行われる。
【0004】
このようなコヒーレント光受信機が特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1は、信号光の偏波状態に依存することなく高ビットレートの信号光を受信できるコヒーレント受信方式の光受信機に関する技術を開示している。特許文献1の技術によれば、光周波数が互いに異なる直交偏波成分を有する局部発振光が受信信号光と合波され、その合波信号が光電変換部で電気信号に変換されることにより、各直交偏波成分と受信信号光とのビートによる中間周波数信号がそれぞれ発生する。この直交偏波成分間の光周波数差は、受信信号光の帯域幅の2倍よりも小さく、かつ、受信信号光を発生する光源のスペクトル線幅および局部発振光を発生する光源のスペクトル線幅よりも大きくならないように設定されている。そのため、各中間周波数信号は、各々の電気スペクトルが重なり合うようになり、後段で使用する電子回路に要求される帯域幅を信号帯域幅の2倍程度と狭くすることができる。
【0006】
特許文献2は、受光素子の帯域と同程度まで信号光のビットレートを大きくすることができなかった課題を解決して、光FSK(周波数シフトキーイング)変調された光信号を狭い帯域の信号としてコヒーレント光受信する技術を開示している。特許文献2の技術によれば、局発光信号の光位相を位相誤差信号により制御する光位相同期ループを形成し、局発光源の光周波数が光FSK信号のマーク符号に対応する周波数とスペース符号に対応する周波数の間になるように維持している。そして、ビット判定回路は、光FSK信号の位相が局発光信号に比べて進んでいるか遅れているかを判定して受信信号のマーク、スペースを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−153863号公報
【特許文献2】特開平07−283793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、インターネットの普及などによる急速な通信トラフィックの増大に対処するために、高密度波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)技術による基幹回線における伝送路の高密度化が行われている。しかし、伝送路の高密度化による周波数間隔の狭窄化に伴い、受信側で分波した主信号チャネルの帯域に隣接チャネルの信号帯域が混入し、伝送特性を劣化させる原因になる隣接チャネルクロストークが発生することが課題になっている。
【0009】
特許文献1や特許文献2に開示された技術は、信号光のビットレートを大きくすることを主眼とした技術で、隣接チャネルクロストークについては言及していない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、隣接チャネルからのクロストークを低減するコヒーレント光受信機および光受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を実現するために、本発明の一形態であるコヒーレント光受信機は、伝送路から受信した、送信側で信号が印加された主信号光とローカル光を入力して混合してコヒーレント検波を行い、前記主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、当該電気信号に基づいて元の信号を再生出力するコヒーレント光受信手段と、前記主信号光と隣接する前記伝送路上のチャネル情報を受信し、隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従って前記ローカル光の周波数を変化させて出力するローカル光周波数制御手段とを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の形態である光受信方法は、送信側で信号が印加された主信号光を伝送路から受信し、前記主信号光と隣接する前記伝送路上のチャネル情報を受信して隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従ってローカル光の周波数を変化させて出力し、前記主信号光と前記ローカル光を混合してコヒーレント検波を行って前記主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、前記電気信号基づいて元の信号を再生出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、伝送路の高密度化による周波数間隔の狭窄化に伴って課題となる、主信号チャネルの帯域に隣接チャネルの信号帯域が混入する隣接チャネルクロストークを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態のコヒーレント光受信機の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の光受信方法の動作を示すフロー図である。
図3】第2の実施形態のコヒーレント光受信機の構成を示すブロック図である。
図4】隣接チャネル信号光が存在しない場合のローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。
図5】主信号光の両側に隣接チャネル信号光が存在する場合のローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。
図6】主信号光の片側のみに隣接チャネル信号光が存在する場合のローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。
図7】主信号光の両側に隣接チャネル信号光が存在する場合であって、いずれか片側の隣接チャネル信号光の周波数が所定の位置からずれている場合のローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。
図8】第2の実施形態のコヒーレント光受信機の周波数制御回路の動作を示すフロー図である。
図9】コヒーレント光受信機の周波数制御回路に外部からチャネル情報を与えるための構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する
本発明の実施形態に係るコヒーレント光受信機は、コヒーレント光受信方式を用いた光受信機において、隣接チャネル信号光の状況に応じてローカル光の周波数を変化させることにより、隣接チャネルからのクロストークを低減する。
【0016】
図1は、第1の実施形態のコヒーレント光受信機の構成を示すブロック図である。
【0017】
第1の実施形態のコヒーレント光受信機1は、コヒーレント光受信手段11およびローカル光周波数制御手段12を含む構成となっている。
【0018】
コヒーレント光受信手段11は伝送路から受信した、送信側で信号が印加された信号光とローカル光を入力して混合してコヒーレント検波を行い、その主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、この電気信号に基づいて元の信号を再生出力する。なお、コヒーレント光受信手段11に入力する信号光を主信号光と称する。そして、ローカル光周波数制御手段12は主信号光と隣接する伝送路上のチャネル情報を受信し、隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従ってローカル光の周波数を変化させて出力する。
【0019】
図2は、第1の実施形態の光受信方法の動作を示すフロー図である。
【0020】
まず、送信側で信号が印加された主信号光を伝送路から受信する(S101)。そのとき、主信号光と隣接する伝送路上のチャネル情報を受信する(S102)。そして、隣接チャネルに存在する他の信号光である隣接チャネル信号光の有無に従ってローカル光の周波数を変化させて出力する(S103)。
【0021】
つまり、隣接チャネル信号光が存在しない場合(S103、無)、主信号光に対応して規定されている周波数のローカル光を出力する(S104)。一方、隣接チャネル信号光が存在する場合(S103、有)、主信号光に対応して規定されている周波数を変化させて出力する(S105)。
【0022】
次に、主信号光と、S104またはS105で出力したローカル光を混合してコヒーレント検波を行って主信号光に印加された信号を電気信号として出力し、この電気信号に基づいて元の信号を再生出力する(S106)。
【0023】
このように、第1の実施形態は、隣接チャネル信号光の有無に従ってローカル光の周波数を変化させる。従って、隣接チャネルの信号帯域が混入しない領域に主信号チャネルの帯域をずらすことにより、隣接チャネルクロストークを低減することができる。
【0024】
次に、第2の実施形態を説明する。
【0025】
図3は、第2の実施形態のコヒーレント光受信機の構成を示すブロック図である。
【0026】
第2の実施形態のコヒーレント光受信機100は、90度光ハイブリッド回路101、光受信器102、A/D(アナログ/デジタル)変換器103、デジタル信号処理回路104、ローカル光源105および周波数制御回路106を含む構成となっている。
【0027】
コヒーレント光受信機100に入力した、送信側で信号が印加された主信号光は、ローカル光源105から出力されるローカル光と90度光ハイブリッド回路101において合波される。合波により生じた干渉光の各偏波の同相成分と直交成分が90度光ハイブリッド回路101の4つの出力ポートから出力される。
【0028】
この干渉光は光受信器102で光電変換され、アナログの受信信号が出力される。この受信信号はA/D変換器103でデジタル信号に変換され、デジタル信号処理回路104に入力する。デジタル信号処理回路104に入力したデジタル信号は、分散補償、偏波分離、キャリア周波数オフセット補償、キャリア位相補償、信号識別等の処理が行われ、復調された伝送信号が出力される。
【0029】
一方、コヒーレント光受信機100には、外部からチャネル情報が与えられ、これに基づいて周波数制御回路106がローカル光源105から出力されるローカル光の周波数をシフトする周波数オフセット制御を行う。
【0030】
以下、図4ないし図7を参照して第2の実施形態を説明する。
【0031】
図4は、隣接チャネル信号光が存在しない場合のローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。
【0032】
また、図5は、主信号光の両側に隣接チャネル信号光(隣接チャネル信号光aおよび隣接チャネル信号光b)が存在する場合の主信号光に対するローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。なお、隣接チャネル信号によるクロストークを、主信号の受信帯域の両側の三角(黒色)で示している。また、図6および図7においても隣接チャネル信号によるクロストークを同様に示す。
【0033】
図4に示すように、受信しようとする主信号光の隣接チャネルに隣接チャネル信号光が存在しない場合や、図5に示すように、受信しようとする主信号光の両側の隣接チャネルに隣接チャネル信号光が存在する場合には、ローカル光の周波数は周波数グリッドの中心f0に設定される。
【0034】
つまり、周波数制御回路106は、外部から与えられたチャネル情報が、受信しようとする主信号光の隣接チャネルに隣接チャネル信号光が存在しないことや、両側の隣接チャネルに隣接チャネル信号光が存在することを示す場合には、ローカル光の周波数を変化させない。ローカル光の周波数を変化させないということは、ローカル光源105が出力するローカル光の周波数は、当該コヒーレント光受信機100が受信する主信号光に対応して規定された周波数のままであることを意味する。
【0035】
この場合、受信信号の周波数スペクトルは周波数ゼロを中心とする対称形のものとなり、当該コヒーレント光受信機100が受信する主信号の受信帯域内に入ったスペクトル成分のみがデジタル信号処理回路104において信号処理され、伝送信号が復調される。なおコヒーレント光受信機100の受信帯域は、光受信器102の帯域、A/D変換器103の帯域、あるいはデジタル信号処理回路104内に設けられたフィルタ部の帯域によって決まる。
【0036】
図6は、主信号光の片側のみに隣接チャネル信号光aが存在する場合のローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。
【0037】
外部から与えられたチャネル情報に基づいてこのような状態であることを識別した周波数制御回路106は、隣接チャネル信号光aが存在しない側の隣接チャネル方向にローカル光の周波数をΔfだけシフトする周波数オフセット制御を行う。つまり、周波数制御回路106は、ローカル光源105にシフトすべき周波数オフセット値を指示してローカル光の周波数を変化させる。
【0038】
このようにローカル光の周波数をΔfだけシフトすることにより、受信信号の周波数スペクトルの中心周波数はΔfとなる。そのため、隣接チャネル信号の周波数スペクトルが重なった周辺部分が、当該コヒーレント光受信機100の主信号の受信帯域外となり、結果として隣接チャネル信号のクロストークの影響が小さくなる。
【0039】
なお、周波数制御回路106がシフトするローカル光の周波数オフセットの範囲は次のように設定されている。
【0040】
ローカル光の周波数精度を±Δfe、デジタル信号処理回路104が行うローカル光の周波数オフセット補償処理における許容値を±Δfoffとすると、Δfは、Δf<Δfoff−Δfeの範囲内とする。
【0041】
図7は、主信号光の両側に隣接チャネル信号光が存在する場合であって、いずれか片側の隣接チャネル信号光の周波数が所定の位置からずれている場合のローカル光配置と受信信号周波数スペクトルを示す図である。
【0042】
このように、主信号光の両側に隣接チャネル信号光が存在する場合であっても、いずれか片方の隣接チャネル信号光の周波数が所定の位置からずれている場合には、周波数制御回路106はローカル光の周波数をシフトする周波数オフセット制御を行う。なお、周波数制御回路106が外部から与えられるチャネル情報には所定の位置からの周波数ずれの情報も含まれているものとする。
【0043】
図7は、隣接チャネル信号光aの周波数が主信号チャネルの受信帯域に近づく方向にずれている場合を示している。隣接チャネル信号光aの周波数がΔfnずれているものとすると、周波数制御回路106はローカル光の周波数をΔfn/2だけ、隣接チャネル信号光bの方向にシフトするように周波数オフセット制御を行う。これによって当該コヒーレント光受信機100の主信号の受信帯域内に混入する隣接チャネル信号光aおよび隣接チャネル信号光bの周波数スペクトル成分が最小限に抑えられる。
【0044】
また、図示していないが、隣接チャネル信号光aの周波数が主信号チャネルの受信帯域から離れる方向にずれている場合は、隣接チャネル信号光aの方向にローカル光の周波数をシフトする周波数オフセット制御を行えばよい。
【0045】
図8は上述したコヒーレント光受信機100の周波数制御回路106の動作を示すフロー図である。
【0046】
周波数制御回路106は、外部から与えられたチャネル情報を受信する(S201)。
【0047】
受信したチャネル情報に基づいて隣接するチャネルにおける信号光の存在の有無の状況を識別する(S202)。
【0048】
主信号光に隣接する両側に隣接チャネル信号光が存在しない場合(分岐1)は、ローカル光源105に対してローカル光の周波数変更の指示を行わない(S203)。これは上述した図4の場合である。
【0049】
片側に隣接チャネル信号光が存在する場合(分岐2)は、隣接チャネル信号光が存在しない隣接チャネル方向にローカル光の周波数をシフトする指示をローカル光源105に対して出力する(S204)。これは上述した図6の場合である。
【0050】
主信号光の両側に隣接チャネル信号光が存在する場合(分岐3)は、いずれかの隣接チャネル信号光に周波数ずれがあるかを確認する(S205)。どちらの隣接チャネル信号光にも周波数ずれがない場合(S205、無)は、ローカル光源105に対してローカル光の周波数変更の指示を行わない(S203)。これは上述した図5の場合である。
【0051】
一方、両側の隣接チャネル信号光のうちの、いずれかの隣接チャネル信号光に周波数ずれがある場合(S205、有)は、その周波数ずれの状況に応じてローカル光の周波数をシフトする指示をローカル光源105に対して出力する(S206)。例えば、いずれかの隣接チャネル信号光の周波数が主信号チャネルの受信帯域に近づく方向にずれている場合は、その周波数がずれている隣接チャネル信号光とは反対側の方向にローカル光の周波数をシフトする指示をローカル光源105に対して出力する。これは上述した図7の場合である。また、いずれかの隣接チャネル信号光の周波数が主信号チャネルの受信帯域から離れる方向にずれている場合は、その周波数がずれている隣接チャネル信号光の方向にローカル光の周波数をシフトする指示をローカル光源105に対して出力する。
【0052】
なお、図9は、コヒーレント光受信機100の周波数制御回路106に外部からチャネル情報を与えるための構成の一例を示すブロック図である。
【0053】
送信側ノード20は、複数の光送信機200を備え、信号を印加した信号光を光合波器210により高密度多重して光ファイバ伝送路に送信する。受信側ノード10は、複数のコヒーレント光受信機100を備え、高密度多重されている信号光を光分波器110で分波してそれぞれのコヒーレント光受信機100で受信する。また、伝送路から受信した高密度多重されている信号光を光スプリッタ120で分岐して光分波器130に入力する。光分波器130で分波されたそれぞれのチャネルの信号光は光電変換素子を有する信号検出部140でその有無が識別される。各チャネルの信号光の有無は、各コヒーレント光受信機100に、それぞれの主信号チャネルに隣接するチャネル情報として各コヒーレント光受信機100に与えられる。
【0054】
以上に説明したように、第2の実施形態においては、外部から与えられるチャネル情報に基づいて主信号チャネルに隣接するチャネルに存在する他の信号光の有無を識別し、その状況に応じてローカル光の周波数をシフトする制御を行う。そのため、当該コヒーレント光受信機の主信号の受信帯域において、隣接チャネル信号と周波数スペクトルが重なる周辺部分が受信帯域外となるように、受信帯域を変化させることができる。また、混入する隣接チャネル信号の周波数スペクトル成分を受信帯域から完全に排除することができなくても、その影響を最小限に抑えることができるように受信帯域を変化させることができる。その結果、第2の実施形態のコヒーレント光受信機は、伝送路の高密度化による周波数間隔の狭窄化に伴って課題となる主信号チャネルの帯域に隣接チャネルの信号帯域が混入する隣接チャネルクロストークを低減することができる。
【0055】
なお、第2の実施形態のコヒーレント光受信機は、チャネル情報を外部から与えられる構成として示したが、コヒーレント光受信機の内部で識別する構成であってもよい。例えば、ノード間でのチャネル配置が予め決まっているような場合には、そのチャネル配置に基づいて受信側ノードに設置されるコヒーレント光受信機ごとに予め周波数オフセットを設定しておいてもかまわない。また、コヒーレント受信機の光受信器から出力される受信信号、デジタル信号処理回路の内部または出力された伝送信号などの任意の信号からクロストーク量や受信感度等を検出し、それを周波数制御回路に伝えて周波数オフセットを制御する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、100 コヒーレント光受信機
10 受信側ノード
11 コヒーレント光受信手段
12 ローカル光周波数制御手段
20 送信側ノード
101 90度光ハイブリッド回路
102 光受信器
103 A/D変換器
104 デジタル信号処理回路
105 ローカル光源
106 周波数制御回路
110、130 光分波器
120 光スプリッタ
140 信号検出部
200 光送信機
210 光合波器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9