特許第6010964号(P6010964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010964
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】電子写真有機感光体および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/06 20060101AFI20161006BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20161006BHJP
   G03G 5/10 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   G03G5/06 371
   G03G5/047
   G03G5/10 B
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-73727(P2012-73727)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-205580(P2013-205580A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳司
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼村 友男
(72)【発明者】
【氏名】徳竹 重明
(72)【発明者】
【氏名】小倉 都宏
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−248189(JP,A)
【文献】 特開2012−003048(JP,A)
【文献】 特開2011−227113(JP,A)
【文献】 特開2004−009227(JP,A)
【文献】 特開2006−201686(JP,A)
【文献】 特開2000−143978(JP,A)
【文献】 特開2011−257584(JP,A)
【文献】 特開2011−257585(JP,A)
【文献】 特開2012−058305(JP,A)
【文献】 特開2012−008534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00 − 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤の切削バイトに由来する繰り返し形状を有する導電性支持体上に電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層されてなる電子写真有機感光体であって、
電荷発生層が、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンよりなる電荷発生物質を含有するものであり、
当該電荷発生層がアルミニウム製の支持体上に積層された状態において測定される反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにおける反射率(R780)との比(R700/R780)が0.8〜1.3であり、
前記旋盤の切削バイトに由来する繰り返し形状を有する導電性支持体は、表面粗さRzが0.5μm以上1.3μm以下であり、かつ、表面粗さRa(S80)が0.07μm以下である表面粗さ形状を有することを特徴とする電子写真有機感光体。
【請求項2】
電子写真有機感光体に静電潜像を形成する手段、当該静電潜像をトナーによって現像してトナー像を形成する手段、形成されたトナー像を画像支持体に転写する手段、転写されたトナー像を画像支持体上に定着する手段を有し、
前記電子写真有機感光体が、請求項1に記載の電子写真有機感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽印刷分野などに用いられる、極めて高画質なハーフトーン画像を形成することができる電子写真有機感光体および当該電子写真有機感光体を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の発達に伴って電子写真法を利用した複写機やプリンターの使用頻度が高まっており、高感度な電子写真有機感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)やこれに用いられる電荷発生物質などの開発が盛んに行われている。中でも、粉末X線回折スペクトルにおいてブラッグ角2θの27.2±0.2°に最大ピークを有するY型チタニルフタロシアニンは、高感度な電荷発生物質として知られている。このY型チタニルフタロシアニンは、乾燥した不活性ガス中において脱水処理を行うことによって光量子効率が低下することが見いだされており、常温常湿環境に放置して水を再吸収させることによって再び光量子効率が上がることから、当該Y型チタニルフタロシアニンは水分子を含んだ結晶構造を有し、当該水分子が光によって生成された励起子のホールと電子との解離を促進することが、高い光量子効率を示す要因の一つであると推測されている。
【0003】
従って、このようなY型チタニルフタロシアニンを電荷発生物質として用いた感光体について、環境変動、特に湿度変動によって感度特性が変化することが懸念されている。特に、この感度の湿度依存性が大きいという欠点は、近年、デジタル複写機における高画質化が進むにつれて問題とされる度合いが高くなってきた。例えば、夜に降雨があった翌日に晴天となった場合、感光体の密閉された部分、例えば現像器付近においては前夜の高湿度雰囲気が保持されるために、感光体の他の開放された部分との間に感度差が生じることとなる。そして、このような感度差が生じた状態のまま中間濃度の画像を形成する場合には、当該画像に感度差に起因する帯状の画像欠陥が発生してしまうことがある。
【0004】
この感度の湿度依存性に係る問題を解決するために、水分子の代わりに他の極性基をY型チタニルフタロシアニンに付与する試みがなされており、例えば特許文献1には、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンが開示されている。また、その中で特に優れた性質を有するものとして、特許文献2、3には、立体規則性を有する2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンが開示されており、さらにその中でも、高感度を示すものとして2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンと未付加のチタニルフタロシアニンとの混晶が報告されている(特許文献4参照)。
【0005】
しかしながら、上記のチタニルフタロシアニン化合物を用いた場合には、いずれも感度の湿度依存性は小さく抑制することができるものの、従来用いてきた電荷発生物質に比べて、電荷発生層の膜厚の偏差が大きい場合に導電性支持体の表面の凹凸が粗いものであるとそれがいわゆる切削スジとして画像に現われてしまい、逆に粗さが抑えられすぎたものであると木目調の干渉縞が画像に現われてしまう、という問題がある。これらの切削スジや木目調の干渉縞は、ハーフトーン画像において顕著に現われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−273775号公報
【特許文献2】特開平7−173405号公報
【特許文献3】特開平8−82942号公報
【特許文献4】特開平9−230615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、感度の湿度依存性が小さく抑制されて帯状の画像欠陥の発生が抑制されながら、切削スジおよび木目調の干渉縞の発生が抑制された高画質のハーフトーン画像を得ることができる電子写真有機感光体および当該電子写真有機感光体を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子写真有機感光体は、旋盤の切削バイトに由来する繰り返し形状を有する導電性支持体上に電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層されてなる電子写真有機感光体であって、
電荷発生層が、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンよりなる電荷発生物質を含有するものであり、
当該電荷発生層がアルミニウム製の支持体上に積層された状態において測定される反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにおける反射率(R780)との比(R700/R780)が0.8〜1.3であり、
前記旋盤の切削バイトに由来する繰り返し形状を有する導電性支持体は、表面粗さRzが0.5μm以上1.3μm以下であり、かつ、表面粗さRa(S80)が0.07μm以下である表面粗さ形状を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置は、電子写真有機感光体に静電潜像を形成する手段、当該静電潜像をトナーによって現像してトナー像を形成する手段、形成されたトナー像を画像支持体に転写する手段、転写されたトナー像を画像支持体上に定着する手段を有し、
前記電子写真有機感光体が、上記の電子写真有機感光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子写真有機感光体によれば、電荷発生層が特定の反射率比を有すること、および、導電性支持体が特定の表面粗さ形状を有することにより、感度の湿度依存性が小さく抑制されて帯状の画像欠陥の発生が抑制され、しかも、切削スジおよび木目調の干渉縞の発生が抑制された高画質のハーフトーン画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電子写真有機感光体の構成の一例を示す部分断面図である。
図2】(1)は9.5°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトル、(2)は8.3°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルを示す。
図3】本発明の電子写真有機感光体が搭載された画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
図4】(a)は実施例1の感光体〔1〕に係る電荷発生層の反射スペクトル、(b)は比較例15の感光体〔30〕に係る電荷発生層の反射スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
〔感光体〕
本発明の感光体は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層されてなるものであって、電荷発生層が、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンよりなる電荷発生物質を含有するものであり、当該電荷発生層に係る反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにおける反射率(R780)との比(R700/R780)が0.8〜1.3である特定の反射率比を有すると共に、導電性支持体が特定の表面粗さRzおよび表面粗さRa(S80)とされた特定の表面粗さ形状を有するものである。
【0014】
本発明の感光体は、例えば図1に示されるように、特定の表面粗さ形状を有する導電性支持体1a上に、中間層1b、電荷発生層1c、電荷輸送層1dおよび保護層1eがこの順に積層されて感光体1が形成されてなり、電荷発生層1cおよび電荷輸送層1dから電子写真有機感光体の構成に必要不可欠な有機感光層1αが構成されている。
【0015】
(導電性支持体)
本発明の感光体を構成する導電性支持体は、その表面に特定の表面粗さ形状が形成されたシート状または円筒状のものである。
円筒状の導電性支持体は、回転することによりエンドレスに画像を形成することができるものであり、真直度0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にあるものを用いることが好ましい。この真直度および振れの範囲を超えるものを用いた場合には、良好な画像形成を行うことが困難になる。
【0016】
導電性支持体における特定の表面粗さ形状は、表面粗さRzが0.5μm以上1.3μm以下、好ましくは0.55μm以上1.25μm以下であり、かつ、表面粗さRa(S80)が0.07μm以下、好ましくは0.01μm以上0.068μm以下である形状である。
導電性支持体の表面粗さRzおよび表面粗さRa(S80)が上記の範囲にあることによって、切削スジおよび木目調の干渉縞の発生が抑制された高画質のハーフトーン画像を得ることができる。一方、導電性支持体の表面粗さRzが過小である場合は、ハーフトーン画像に木目調の干渉縞が発生してしまい、また、導電性支持体の表面粗さRzあるいは表面粗さRa(S80)が過大である場合は、ハーフトーン画像に切削スジが発生してしまう。
【0017】
本発明において、表面粗さRzは、ISO4287に準じて測定される最大高さ粗さであり、表面粗さRa(S80)は、ISO4287に準じてRa値を測定するときに、短波長カットオフ値λsを80μmとして測定した算術平均粗さである。
【0018】
導電性支持体としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム、ニッケルなどをドラム状に成形したもの、アルミニウム、酸化錫、酸化インジウムなどをプラスチックドラムに蒸着したものなどが挙げられる。
【0019】
導電性支持体は、常温における比抵抗が103 Ω・cm以下であることが好ましい。
【0020】
また、導電性支持体は、その表面にアルマイト処理および封孔処理が行われて封孔されたアルマイト膜が形成されたものを用いてもよい。アルマイト処理は、通常、例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中で行われるが、硫酸を用いたアルマイト処理を行うことが最も好ましい。硫酸を用いたアルマイト処理においては、硫酸濃度が100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度が1〜10g/l、液温が20℃前後、印加電圧が約20Vの条件で行うことが好ましいが、これに限定されるものではない。また、アルマイト膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下とされることが好ましい。
【0021】
(導電性支持体の作製方法)
導電性支持体は、例えば円筒状のものを作製する場合には円筒管よりなる素管の表面にバイト切削加工によって特定の表面粗さ形状を形成させることにより、作製することができる。
具体的には、素管の表面をバイト切削加工によって整形する際のダイヤモンド焼結バイトなどの切削バイトの素管に対する当接角度や用いる切削バイトの種類などを変更することにより、導電性支持体を特定の表面粗さRzおよび表面粗さRa(S80)を有するよう調整することができる。
なお、導電性支持体のバイト切削加工は、導電性支持体の外径などの寸法精度を所望のレベルにする、導電性支持体の表面の酸化膜を除きフレッシュにする、導電性支持体の表面を所望の形状にするなどの目的で行われる。
【0022】
(中間層)
中間層は、導電性支持体と有機感光層との間にバリアー機能と接着機能とを付与するものである。種々の故障防止などの観点から、このような中間層を設けることが好ましい。
【0023】
中間層としては、特に、ポリアミド樹脂などのバインダー樹脂中に酸化チタン微粒子が分散されてなるものが好ましい。酸化チタン微粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲であることが好ましく、15nm以上200nm以下の範囲であることがより好ましい。酸化チタン微粒子の数平均一次粒径が上記の範囲にあることにより、中間層における酸化チタン微粒子の良好な分散安定性が得られて、当該中間層によって黒ポチの発生を抑制させる効果に加え、良好な環境特性および耐クラッキング性が得られる。酸化チタン微粒子の数平均一次粒径が10nm未満である場合は、中間層によるモアレ発生の抑止効果が小さい。一方、酸化チタン微粒子の数平均一次粒径が400nmより大きい場合は、中間層を形成するための塗布液における酸化チタン微粒子の沈降が発生しやすく、その結果、中間層における酸化チタン微粒子の分散性が低く、最終的に得られる感光体が黒ポチの発生を十分に抑制することができないものとなるおそれがある。
【0024】
酸化チタン微粒子は、樹枝状、針状および粒状などのいずれの形状を有するものを用いてもよく、また、アナターゼ型、ルチル型およびアモルファス型などのいずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型のものを混合して用いてもよい。酸化チタン微粒子としては、これらの中でも結晶型がルチル型であり粒状の形状を有するものを用いることが特に好ましい。
【0025】
酸化チタン微粒子は、表面処理されていることが好ましい。中でも複数回の表面処理を行い、かつ当該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理であるものが好ましい。また、当該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ処理、シリカ処理およびジルコニア処理から選ばれる表面処理であり、かつ、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理であるものがより好ましい。
【0026】
アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とは、酸化チタン微粒子の表面に、アルミナ、シリカあるいはジルコニアを析出させる処理をいい、これらの表面に析出させるアルミナ、シリカ、ジルコニアとは、アルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含むものとする。また、反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を含むことを意味する。
【0027】
このように複数の表面処理を行った酸化チタン微粒子によれば、得られた酸化チタン微粒子の表面が均一に表面被覆処理されたものとなり、当該酸化チタン微粒子を中間層に含有させることにより、中間層における酸化チタン微粒子の良好な分散性が得られて最終的に得られる感光体が黒ポチの発生を十分に抑制することができるものとなる。
【0028】
表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキチシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどの各種のアルコキシシランおよびメチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0029】
以上のような中間層は、例えば、バインダー樹脂を公知の溶媒に溶解して中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体の表面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することにより形成することができる。
【0030】
中間層の形成に用いられる溶媒としては、特に限定されず、例えばn−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブなどを用いることができ、これらの中でもトルエン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなどが好ましく用いられる。これらの溶媒は1種単独であるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0031】
中間層形成用塗布液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法などが挙げられる。
【0032】
中間層の膜厚は、0.1〜30μmであることが好ましく、0.3〜15μmであることがより好ましい。
【0033】
(電荷発生層)
本発明の感光体を構成する電荷発生層は、電荷発生物質(CGM)が含有されたものであり、必要に応じて分散媒としてバインダー樹脂や、その他の添加物が含有されたものとすることもできる。
【0034】
本発明の感光体を構成する電荷発生層には、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンを含む顔料(以下、「特定のチタニルフタロシアニン混合顔料」ともいう。)を電荷発生物質として少なくとも有するものである。
本発明において、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンとは、未付加のチタニルフタロシアニンに2,3−ブタンジオールを付加させた化合物をいう。
また、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンを含む顔料とは、少なくとも未付加のチタニルフタロシアニンと2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンとが1つの顔料粒子中に混合状態あるいは混晶状態で含有された顔料を意味する。
【0035】
2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンは、原料となる(2R,3R)−2,3−ブタンジオールまたは(2S,3S)−2,3−ブタンジオール(以下、「原料ブタンジオール化合物」ともいう。)の付加比の違いによって、それぞれ特有の結晶型を有し、本発明における2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンとしては、どのような結晶型のものを用いてもよいが、特に、良好な感度および繰り返し電位安定性が得られる点から、後記に詳述する8.3°型のものを用いることが好ましい。
【0036】
具体的には、未付加のチタニルフタロシアニンに対して原料ブタンジオール化合物を過剰量反応させた場合には、図2(1)に示されるような、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角2θ:9.5°(±0.2°)に特徴的なピークを有する結晶型(以下、「9.5°型」という。)のものが得られる。当該9.5°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルには、9.5°以外にも16.4°、19.1°、24.7°、26.5°にピークが見られる。なお、X線回折スペクトルにおける特徴的なピークとは、バックグランドのバラツキを超えて明確に異なるピークをいう。
9.5°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンは、IRスペクトルにおいて970cm-1付近のTi=O吸収がなく、630cm-1付近にO−Ti−Oの吸収が現れること、熱分析(TG)において390〜410℃に約11%の質量減少があること(熱分解によるブチレンオキシドの脱離のためと考えられる)、およびマススペクトルの結果から、未付加のチタニルフタロシアニンと原料ブタンジオール化合物とが、1/1で脱水縮合した構造を有するものと推測される。
【0037】
また、未付加のチタニルフタロシアニン1モルに対して原料ブタンジオール化合物を1モル以下の量反応させた場合には、図2(2)に示されるような、X線回折スペクトルにおいてブラッグ角2θ:8.3°(±0.2°)に特徴的なピークを有する結晶型(以下、「8.3°型」という。)のものが得られる。当該8.3°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルには、8.3°以外にも24.7°、25.1°、26.5°にピークが見られる。
8.3°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンは、IRスペクトルにおいて970cm-1付近にTi=Oの吸収が現われると共に630cm-1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れること、熱分析において390〜410℃における質量減少が11%未満であること、およびマススペクトルの結果から、ブタンジオール/チタニルフタロシアニン=1/1付加体とチタニルフタロシアニンとが、ある割合で混晶を形成しているものと推測される。原料ブタンジオール化合物の付加比は、熱分析における390〜410℃における質量減少から、40〜70モル%と推測される。
【0038】
未付加のチタニルフタロシアニン1モルに対する原料ブタンジオール化合物の使用量は、0.2〜2.0モルとされることが好ましい。原料ブタンジオール化合物の使用量が1.0モル以上であることによって上記の9.5°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンが得られ、1.0モル未満であることによって上記の未付加のチタニルフタロシアニンとの混晶である8.3°型の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンが得られる。
【0039】
2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを形成するための未付加のチタニルフタロシアニンと原料ブタンジオール化合物との反応は、未付加のチタニルフタロシアニンと原料ブタンジオール化合物とを、各種の溶媒中において室温あるいは加熱下で反応させることによって合成することができる。
原料である未付加のチタニルフタロシアニンは、フタロニトリルおよび四塩化チタンから得る合成法、ジイミノイソインドリンおよびアルコキシチタンから得る合成法、フタロニトリル、尿素およびアルコキシチタンから得る合成法など通常知られているいずれの合成法を用いて合成することもできるが、特に、塩素含有量の少ない高純度なチタニルフタロシアニンが得られることから、ジイミノイソインドリンおよびアルコキシチタンから得る合成法を用いることが好ましい。
また、未付加のチタニルフタロシアニンとしては、上記の合成法によって得られた粗チタニルフタロシアニンをアシッドペースト処理などの方法によって無定形化したものを用いることが好ましい。
未付加のチタニルフタロシアニンと原料ブタンジオール化合物との付加反応には、通常原料の5〜30質量倍の溶媒が使用される。
溶媒としては、特に限定されず、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、クロロナフタレン、キノリンなどの芳香族溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジグライムなどのエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;その他ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒などを挙げることができる。
【0040】
未付加のチタニルフタロシアニンと原料ブタンジオール化合物との反応を下記反応式(1)に示す。この反応は、広範囲な温度条件下で行うことができ、反応温度は例えば25〜300℃の範囲が好ましく、BET比表面積が20m2 /g以上のものを合成する観点から、30〜100℃の範囲であることがより好ましい。
【0041】
【化1】
【0042】
原料ブタンジオール化合物としては、光学異性を示す(2R,3R)−2,3−ブタンジオールまたは(2S,3S)−2,3−ブタンジオールを用いることが好ましいが、光学異性を示さないラセミ体を用いることもできる。
【0043】
特定のチタニルフタロシアニン混合顔料は、BET比表面積が20m2 /g以上、好ましくは25〜35m2 /gであることが好ましい。
BET比表面積が上記の範囲にある特定のチタニルフタロシアニン混合顔料を用い、さらに当該特定のチタニルフタロシアニン混合顔料の分散性を維持するよう後述する電荷発生層形成用塗布液の調製時に低いシェアで当該特定のチタニルフタロシアニン混合顔料を分散させることによって、良好な感度および繰り返し電位安定性が得られる感光体を作製することができる。
BET比表面積は、流動式比表面積自動測定装置「マイクロメトリックス・フローソープ型」(島津製作所社製)を用いて測定されるものである。
【0044】
電荷発生物質としては、上記の特定のチタニルフタロシアニン混合顔料以外にも、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを併用して用いることができる。
【0045】
そして、本発明の感光体を構成する電荷発生層は、当該電荷発生層に係る反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにおける反射率(R780)との比(R700/R780)が0.8〜1.3、好ましくは0.85〜1.25とされた、特定の反射比を有するものである。
【0046】
(反射スペクトルの測定方法)
本発明に係る電荷発生層の反射スペクトルは、当該電荷発生層のみを乾燥膜厚0.3μmとなるようアルミニウム製の支持体上に積層させた試料について、光学式膜厚測定装置「Solid Lambda Thickness」(スペクトラコープ社製)を用いて、支持体の反射率を100%としたときの相対反射率として実測データを得、この実測データにおける干渉縞による凹凸除去するために、当該実測データにおける685〜715nmの範囲並びに765〜795nmの範囲をそれぞれ二次の多項式によって近似することにより、得られるものである。
そして、当該反射スペクトルにおいて、当該反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにおける反射率(R780)とから、その比(R700/R780)が算出される。
【0047】
特定の反射率比が上記の範囲にあることにより、得られる感光体の感度の湿度依存性が極めて小さく抑制され、従って、湿度変動があるときにも感度差に起因する帯状の画像欠陥の発生が抑止された画像を形成することができる。一方、特定の反射率比が0.8未満である場合は、含有される特定のチタニルフタロシアニン混合顔料が結晶の破砕されたものとなって結晶の欠陥箇所における2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンの分解が起こりやすくなり、その結果、十分な感度が得られず、さらに、長期間にわたって安定的な感度を得ることができない。また、特定の反射率比が1.3を超える場合は、含有される特定のチタニルフタロシアニン混合顔料が分散不良による二次凝集した粒子や粗大粒子として存在することによって、感度差に起因する帯状の画像欠陥の発生を確実に抑止することができない。
【0048】
電荷発生層に係る特定の反射率比は、後述する電荷発生層の形成方法における特定のチタニルフタロシアニン混合顔料の分散時のシェア(剪断力)を調整することにより制御することができる。分散液にかかるシェアは、具体的には、分散方法や分散時に用いるメディアの径や量、分散時間などにより制御することができる。
特定のチタニルフタロシアニン混合顔料の分散においては、シェアを大きくするに従って二次凝集の分散や結晶の破砕が進み、電荷発生層に係る反射スペクトルの780nmにおける反射率(R780)が増大し、従って特定の反射率比が減少する。
【0049】
電荷発生層がバインダー樹脂を含有するものとして構成される場合において、バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えばホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂などが、得られる感光体における繰り返し使用に伴う残留電位の増加を極めて抑制することができるという理由から、好ましく挙げられる。
【0050】
バインダー樹脂と電荷発生物質との混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が20〜600質量部とされることが好ましく、さらに好ましくは50〜500質量部である。バインダー樹脂と電荷発生物質との混合割合が上記の範囲にあることにより、後述する電荷発生層形成用塗布液に高い分散安定性が得られ、かつ、形成された感光体において電気抵抗が低く抑制されて繰り返し使用に伴う残留電位の増加を極めて抑制することができる。
【0051】
(電荷発生層の形成方法)
本発明の感光体を構成する電荷発生層は、電荷発生物質を溶媒中に添加、分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この電荷発生層形成用塗布液を中間層の表面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することにより形成することができる。電荷発生層がバインダー樹脂を含有するものとして構成される場合においては、電荷発生層形成用塗布液を溶媒中に当該バインダー樹脂が溶解されたものとして構成すればよい。
【0052】
電荷発生層の形成に用いられる溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジグライムなどのエーテル系溶媒、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブタノールなどのアルコール系溶媒、その酢酸エチル、酢酸t−ブチルなどのエステル系溶媒、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香属溶媒、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン系溶媒など多数を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。電荷発生層がバインダー樹脂を含有するものとして構成される場合においては、溶媒として当該バインダー樹脂を溶解させることができるものを用いればよい。
【0053】
電荷発生物質の分散手段としては、分散時のシェアが低いものとなる方法を用いることが好ましく、具体的には、超音波分散法や比重の小さいメディア(ガラス(比重2.5)ビーズなど)を用いたメディア分散法を用いることが好ましい。
メディア分散法は、容器内にメディアとしてビーズが充填され、さらに回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクが高速回転されることにより、凝集粒子を砕いて粉砕・分散する方法である。
【0054】
上記のようなシェアの低い分散方法を採用することによって、二次凝集した粒子や粗大粒子などが十分に解砕された状態が得られながら、電荷発生物質を構成する特定のチタニルフタロシアニン混合顔料の結晶構造が変化してその特性が損なわれることが回避され、従って、形成される感光体に良好な感度および繰り返し電位安定性が得られる電荷発生層形成用塗布液を調製することができる。
【0055】
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法としては、中間層形成用塗布液の塗布方法として挙げた方法と同じ方法を挙げることができる。
【0056】
電荷発生層の膜厚は、電荷発生物質の特性、バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.15〜1.5μmである。
【0057】
(電荷輸送層)
感光体を構成する電荷輸送層は、バインダー樹脂中に電荷輸送物質(CTM)が含有されたものである。
【0058】
電荷輸送物質としては、例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などの電荷(正孔)を輸送する物質が挙げられる。
【0059】
電荷輸送層を形成するためのバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよく、具体的には、例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、吸水率が低く、電荷輸送物質を高い分散性で分散させることができることから、ポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
【0060】
電荷輸送層には、必要に応じて例えば酸化防止剤などのその他の成分が含有されていてもよい。
【0061】
バインダー樹脂に対する電荷輸送物質の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質10〜200質量部が好ましく、さらに好ましくは20〜100質量部である。
電荷輸送物質の混合割合が過少である場合は、十分な電荷輸送性が得られず、電荷発生層において発生した電荷を感光体の表面まで十分に輸送できないおそれがある。一方、電荷輸送物質の混合割合が過多である場合は、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が顕著となりやすい。
【0062】
電荷輸送層の膜厚は、電荷輸送物質の特性、バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが、例えば10〜40μmとすることが好ましい。
【0063】
以上のような電荷輸送層は、例えば、電荷輸送物質(CTM)を、公知の溶媒で溶解したバインダー樹脂中に添加して電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の表面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することにより形成することができる。
電荷輸送層の形成において用いられる溶媒としては、中間層の形成に用いられる溶媒と同じものを挙げることができる。
また、電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としても、中間層形成用塗布液の塗布方法として挙げた方法と同じ方法を挙げることができる。
【0064】
(保護層)
感光体を保護層が形成されたものとして構成する場合において、当該保護層はバインダー樹脂中に無機粒子が含有されたものとすることができ、当該バインダー樹脂中には、必要に応じて酸化防止剤や滑剤などのその他の成分が含有されていてもよい。
【0065】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウムなどの粒子を好ましく用いることができ、特に、表面を疎水化させた疎水性シリカや疎水性アルミナ、疎水性ジルコニア、微粉末焼結シリカなどを用いることが好ましい。
【0066】
無機粒子としては、数平均一次粒子径が1〜300nmのものを用いることが好ましく、5〜100nmのものを用いることが特に好ましい。
無機粒子の数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡によって10,000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として選択して画像解析によりフェレ径を測定し、これの数平均径を算出することにより得られた値とされる。
【0067】
保護層を形成するためのバインダー樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、具体的には、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0068】
滑剤としては、例えばフッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂などの樹脂微粉末;例えば酸化チタン、酸化アルミ、酸化スズなどの金属酸化物微粉末;例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなどの固体潤滑剤;例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル;例えば四フッ化エチレン樹脂粉体、三フッ化塩化エチレン樹脂粉体、六フッ化エチレンプロピレン樹脂粉体、フッ化ビニル樹脂粉体、フッ化ビニリデン樹脂粉体、フッ化二塩化エチレン樹脂粉体およびこれらの共重合体などのフッ素系樹脂粉体;例えばポリエチレン樹脂粉体、ポリプロピレン樹脂粉体、ポリブテン樹脂粉体、ポリヘキセン樹脂粉体などのホモポリマー樹脂粉体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのコポリマー樹脂粉体、これらとヘキセンなどの三元共重合体、さらにこれらの熱変成物のようなポリオレフィン系樹脂粉体などのポリオレフィン系樹脂粉体などが挙げられる。
【0069】
滑剤としては、当該滑剤を構成する樹脂の分子量や粉体の粒径が適宜に選択されたものとされればよく、例えば粉体の粒径は特に0.1〜10μmであることが好ましい。また、保護層に滑剤を含有させる場合においては、これらの滑剤を均一に分散させるために、バインダー樹脂にさらに分散剤が添加されていてもよい。
【0070】
保護層は、例えばバインダー樹脂および無機粒子並びに必要に応じてその他の構成成分を溶媒に添加して保護層形成用塗布液を調製し、この保護層形成用塗布液を電荷輸送層の表面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することによって形成することができる。
保護層の形成において用いられる溶媒としては、中間層の形成に用いられる溶媒と同じものを挙げることができる。
保護層形成用塗布液の塗布方法としては、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、特開昭58−189061号公報に開示される円形スライドホッパー法などの公知の方法が挙げられる。これらの中でも、感光層を極力溶解させないこと、および、均一な塗布状態が得られることから、スプレーコーティング法または円形スライドホッパー法を用いることが好ましい。
【0071】
保護層の膜厚は、例えば0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜9μmである。
【0072】
以上のような感光体によれば、電荷発生層が特定の反射率比を有すること、および、導電性支持体が特定の表面粗さ形状を有することにより、感度の湿度依存性が小さく抑制されて帯状の画像欠陥の発生が抑制され抑制され、しかも、切削スジおよび木目調の干渉縞の発生が抑制された高画質のハーフトーン画像を得ることができる。
【0073】
〔画像形成装置〕
図3は、本発明の電子写真有機感光体が搭載された画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置は、タンデム型のカラー画像形成装置と称せられるもので、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンまたは黒のトナー像を形成する画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkと、これらの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkにおいて形成された各色のトナー像を画像支持体P上に転写する中間転写ユニット7と、画像支持体Pに対してトナー像を定着させる定着手段24とを備える画像形成装置本体Aを有し、当該画像形成装置本体Aの上部に、原稿を光学的に走査して画像情報をデジタルデータ(原稿画像データ)として読み取るための原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0074】
画像形成ユニット10Yについて、以下に詳細に説明する。
画像形成ユニット10M、10C、10Bkは、各々、イエロートナーに代えて、マゼンタトナー、シアントナー、黒トナーによってトナー像を形成するものであり、基本的には画像形成ユニット10Yと同様の構成を有するものである。
【0075】
画像形成ユニット10Yは、像形成体であるドラム状の感光体1Yの周囲に、当該感光体1Yの表面に一様な電位を与える帯電手段2Y、一様に帯電された感光体1Y上に露光用画像データ信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する露光手段3Y、カラートナーを感光体1Y上に搬送して静電潜像を顕像化する現像手段4Y、一次転写後に感光体1Y上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段6Yが配置されてなり、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。
【0076】
帯電手段2Yとしては、コロナ放電型の帯電器が用いられている。
【0077】
露光手段3Yとしては、露光光源として発光ダイオードを用いた、例えば感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光ダイオードからなる発光素子が配列されたLED部と結像素子とから構成される光照射装置、あるいは、露光光源として半導体レーザーを用いた、レーザー光学系のレーザ照射装置などよりなり、図3の画像形成装置においては、レーザー照射装置が用いられている。
【0078】
露光手段3Yにおいては、発振波長が350〜850nmの半導体レーザーまたは発光ダイオードを、露光光源として用いた装置からなることが望ましい。このような露光光源を、書き込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込んで用い、感光体1Y上にデジタル露光を行うことにより、600dpiから2400dpi、あるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像を得ることができる。
【0079】
露光手段3Yにおける露光方法としては、半導体レーザーを用いた走査光学系であってもよく、LEDによる固体型であってもよい。光強度分布についても、ガウス分布およびローレンツ分布などがあるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を露光ドット径とすればよい。
【0080】
この例の画像形成装置においては、画像形成ユニット10Yにおける感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yが一体化されたプロセスカートリッジとして設けられている。
【0081】
以上のような画像形成装置は、一の画像形成ユニットにおける感光体と、現像手段、クリーニング手段などの構成要素とをプロセスカートリッジとして一体に結合させて構成し、このプロセスカートリッジが画像形成装置本体に対して着脱自在とされるよう構成されていてもよい。また、一の画像形成ユニットにおける帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段または図示しない分離手段、およびクリーニング手段の少なくとも1つを感光体と共に一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、レールなどの案内手段を用いて画像形成装置本体に対して着脱自在とされるよう構成してもよい。
【0082】
中間転写ユニット7は、複数の支持ローラ71〜74により張架され、循環移動可能に支持された無端ベルト状の中間転写体70と、それぞれ画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkによって形成されたトナー像を中間転写体70に転写するための一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkと、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkによって中間転写体70上に転写されたトナー像を画像支持体P上に転写する二次転写ローラ5bと、中間転写体70上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段6bとを有する。
【0083】
中間転写ユニット7における一次転写ローラ5Bkは、画像形成処理中の常時、感光体1Bkに当接されており、他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cは、カラー画像を形成する場合にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接される。
【0084】
また、二次転写ローラ5bは、ここを画像支持体Pが通過して二次転写が行われるときにのみ、中間転写体70に当接される。
【0085】
この画像形成装置においては、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkにおけるプロセスカートリッジのそれぞれと、中間転写ユニット7の二次転写ローラ5b以外のものが筐体8に収納されており、当該筐体8が、画像形成装置本体Aから支持レール82L、82Rを介して引き出し可能に構成されている。
【0086】
この画像形成装置においては、全ての画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkの感光体1Y、1M、1C、1Bkのうち、全ての感光体1Y、1M、1C、1Bkが上記の本発明の感光体からなるものであることが好ましいが、感光体1Y、1M、1C、1Bkのうち少なくとも1つが上記の本発明の感光体から構成されていれば、感度の湿度依存性が小さく抑制されながら切削スジおよび木目調の干渉縞の発生が抑制された高画質なハーフトーン画像を形成することができる効果を得ることができる。
【0087】
本発明の画像形成装置は、電子写真複写機、レーザープリンター、LEDプリンターおよび液晶シャッター式プリンターなどの電子写真装置一般に適応するが、さらに、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版およびファクシミリなどの装置にも幅広く適用することができる。
【0088】
以上のような画像形成装置においては、感光体1Y、1M、1C、1Bkの表面が帯電手段2Y、2M、2C、2Bkより帯電され、露光手段3Y、3M、3C、3Bkが原稿画像読み取り装置SCによって得られた原稿画像データに各種の画像処理などが施されて得られた各色の露光用画像データ信号に従って動作され、具体的には当該露光用画像データ信号に対応して変調されたレーザー光が露光光源から出力され、このレーザー光によって当該感光体1Y、1M、1C、1Bkが走査露光されることにより、原稿画像読み取り装置SCにより読み取られた原稿に対応したイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色に対応した静電潜像が各感光体1Y、1M、1C、1Bk上にそれぞれ形成される。
【0089】
次いで、感光体1Y、1M、1C、1Bk上に形成された静電潜像が、現像手段4Y、4M、4C、4Bkにおいて各色のトナーによって現像されることにより各色のトナー像が形成され、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより各色のトナー像が中間転写体70上に逐次転写されて重ね合わされて合成され、カラートナー像が形成される。
さらに、カラートナー像の形成に同期して、給紙カセット20内に収容された普通紙や透明シートなどの画像支持体Pが、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22Dおよびレジストローラ23を経て、二次転写ローラ5bに搬送され、当該画像支持体P上に、二次転写ローラ5bによって中間転写体70上に転写されたカラートナー像が一括して転写される。
画像支持体P上に転写されたカラートナー像は、定着手段24において例えば加熱および加圧により定着されて可視画像が形成され、その後、可視画像が形成された画像支持体Pが、排紙ローラ25によって機外に排出されて排紙トレイ26上に載置される。
【0090】
各色のトナー像を中間転写体70に転写させた後の感光体1Y、1M、1C、1Bkは、それぞれクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkにより当該感光体1Y、1M、1C、1Bkに残留したトナーを除去した後に、次の各色のトナー像の形成に供される。
一方、二次転写ローラ5bにより画像支持体P上にカラートナー像を転写し、画像支持体Pが曲率分離された後の中間転写体70は、クリーニング手段6bにより当該中間転写体70上に残留したトナーを除去した後に、次のトナー像の中間転写に供される。
【0091】
〔トナーおよび現像剤〕
本発明の画像形成装置に用いられるトナーは、粉砕トナーであっても重合トナーであってもよいが、本発明の画像形成装置においては、高い画質の画像が得られる観点から、重合法で作製された重合トナーを用いることが好ましい。
【0092】
重合トナーとは、トナーを形成するバインダー樹脂の生成とトナー粒子形状の形成が、バインダー樹脂を得るための原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理とにより並行して行われて得られるトナーを意味する。
【0093】
より具体的には、懸濁重合、乳化重合などの重合反応により樹脂微粒子を得る工程と、必要によりその後に行われる樹脂微粒子同士を融着させる工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0094】
トナーの体積平均粒径、すなわち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0095】
本発明に係るトナーは、それのみで一成分現像剤として用いてもよく、キャリアと混合して二成分現像剤として用いてもよい。
【0096】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものが挙げられ、いずれも使用することができる。
【0097】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いる場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料を用いることができ。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0098】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0099】
キャリアは、磁性粒子がさらに樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0100】
以上の画像形成装置によれば、感光体の電荷発生層が特定の反射率比を有することおよび当該感光体の導電性支持体が特定の表面粗さ形状を有することにより、感度の湿度依存性が小さく抑制されて帯状の画像欠陥の発生が抑制されながら、切削スジおよび木目調の干渉縞の発生が抑制された高画質のハーフトーン画像を得ることができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、感光体の具体的な層構成は、上記の構成に限定されるものではない。
【実施例】
【0102】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
<電荷発生物質の合成例1>
(1)無定形チタニルフタロシアニンの合成
1,3−ジイミノイソインドリン29.2gをオルトジクロロベンゼン(ODB)200mlに分散させ、チタニウムテトラ−n−ブトキシド20.4gを加えて窒素雰囲気下において150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムによる洗浄、2%塩酸水溶液による洗浄、水洗、メタノールによる洗浄を順に行い、乾燥することにより、26.2g(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
次いで、この粗チタニルフタロシアニンを濃硫酸250ml中に添加し、5℃以下で1時間撹拌して溶解させ、これを20℃の水5Lに注ぎ、析出した結晶を濾過し、充分に水洗することによりウェットペースト品225gを得、これを冷凍庫にて凍結させ、解凍した後、濾過、乾燥することにより、無定形チタニルフタロシアニン〔1〕24.8g(収率86%)を得た。
【0104】
(2)電荷発生物質の生成
無定形チタニルフタロシアニン〔1〕10.0gおよび(2R,3R)−2,3−ブタンジオール0.94g(無定形チタニルフタロシアニンに対する当量比=0.6)を、オルトジクロロベンゼン(ODB)200ml中に混合し、反応温度60〜70℃で6.0時間加熱撹拌した。一夜放置後、当該反応液にメタノールを加えて生じた結晶を濾過し、濾過後の結晶をメタノールにより洗浄することにより、電荷発生物質〔CG−1〕10.3gを得た。
この電荷発生物質〔CG−1〕のX線回折スペクトルを測定したところ、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークが見られた。また、マススペクトルを測定したところ、576および648にピークが見られ、また、IRスペクトルを測定したところ、970cm-1付近にTi=Oの吸収が現われると共に630cm-1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れた。また、熱分析(TG)を行ったところ、390〜410℃に約7%の質量減少があった。以上のことから、当該電荷発生物質〔CG−1〕が、チタニルフタロシアニンおよび(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンの混晶と推定した。
この電荷発生物質〔CG−1〕のBET比表面積を測定したところ、31.2m2 /gであった。
【0105】
X線回折スペクトルは、電荷発生物質〔CG−1〕を透明ガラスプレート上に塗布し、乾燥させた試料を用いて測定した。また、BET比表面積は、流動式比表面積自動測定装置「マイクロメトリックス・フローソープ型」(島津製作所社製)を用いて測定した。以下において同じである。
【0106】
<電荷発生物質の合成例2>
電荷発生物質の合成例1の電荷発生物質の合成工程において、(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの代わりに(2S,3S)−2,3−ブタンジオールを用いたことの他は同様にして、(2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニおよび未付加のチタニルフタロシアニンの混晶からなる電荷発生物質〔CG−2〕10.5gを得た。
電荷発生物質〔CG−2〕のX線回折スペクトルにおいては、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークが見られ、IRスペクトルにおいては970cm-1付近にTi=Oの吸収が現われると共に630cm-1付近にO−Ti−Oの吸収が現れた。
また、電荷発生物質〔CG−2〕のBET比表面積は30.5m2 /gであった。
【0107】
<電荷発生物質の合成例3>
電荷発生物質の合成例1の電荷発生物質の合成工程において、反応温度を90〜100℃に変更したことの他は同様にして、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンの混晶からなる電荷発生物質〔CG−3〕10.6gを得た。
電荷発生物質〔CG−3〕のX線回折スペクトルにおいては、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークが見られ、IRスペクトルにおいては970cm-1付近にTi=Oの吸収が現われると共に630cm-1付近にO−Ti−Oの吸収が現れた。
また、電荷発生物質〔CG−3〕のBET比表面積は20.5m2 /gであった。
【0108】
<電荷発生物質の合成例4>
電荷発生物質の合成例1の電荷発生物質の合成工程において、反応温度を130〜140℃に変更したことの他は同様にして、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンの混晶からなる電荷発生物質〔CG−4〕10.6gを得た。
電荷発生物質〔CG−4〕のX線回折スペクトルにおいては、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークが見られ、IRスペクトルにおいては970cm-1付近にTi=Oの吸収が現われると共に630cm-1付近にO−Ti−Oの吸収が現れた。
また、電荷発生物質〔CG−4〕のBET比表面積は13.5m2 /gであった。
【0109】
<電荷発生物質の合成例5>
電荷発生物質の合成例1の電荷発生物質の合成工程において、(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとして、光学異性を示さないラセミ体の2,3−ブタンジオールを用いたことの他は同様にして、(ラセミ体)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンおよび未付加のチタニルフタロシアニンの混晶からなる電荷発生物質〔CG−5〕11.5gを得た。
電荷発生物質〔CG−5〕のIRスペクトルにおいては970cm-1付近にTi=Oの吸収が現われると共に630cm-1付近にO−Ti−Oの吸収が現れた。
また、電荷発生物質〔CG−5〕のBET比表面積は28.6m2 /gであった。
【0110】
<電荷発生物質の合成例6>
電荷発生物質の合成例1の電荷発生物質の合成工程において、(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの使用量を2.35g(無定形チタニルフタロシアニンに対する当量比=1.5)に変更すると共に、反応温度を130〜140℃に変更したことの他は同様にして、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンからなる電荷発生物質〔CG−6〕11.0gを得た。
電荷発生物質〔CG−6〕のX線回折スペクトルにおいては、9.5°、16.4°、19.1°、24.7°、26.5°に明確なピークが見られ、IRスペクトルにおいては970cm-1付近のTi=Oの吸収がなく、630cm-1付近にO−Ti−Oの吸収が現れた。
また、電荷発生物質〔CG−6〕のBET比表面積は10.2m2 /gであった。
【0111】
<導電性支持体の作製例1〜8>
長さ362mmのアルミニウム合金製の素管を、NC施盤に装着し、適宜のダイヤモンド焼結バイトを用いて、当該ダイヤモンド焼結バイトの素管に対する当接角度を0°〜3°の間で変更することにより、外径59.95mm、表面粗さRzおよび表面粗さRa(S80)が表1に従ったものとなるように、素管の端部をスタートとして、バイト送り速度を400μmに設定して切削加工を行うことにより、導電性支持体〔1〕〜〔8〕を得た。当該導電性支持体〔1〕〜〔8〕の表面粗さRzおよびRa(S80)を測定した。結果を表1に示す。
なお、ダイヤモンド焼結バイトの素管に対する当接角度とは、素管が水平面内にその軸が伸びるよう設置された状態において、切削バイトが当該水平面内において素管の軸方向に垂直な方向に伸びた状態でその先端が当該素管に当接する場合を0°として、素管の回転方向に切削バイトを立てた角度をいう。
【0112】
導電性支持体の表面粗さRzは、ISO4287に準じて測定した。また、表面粗さRa(S80)は、ISO4287に準じてRa値を測定するときに、短波長カットオフ値λsを80μmとして測定した。
【0113】
〔感光体の作製例1〕
(1)中間層の形成
・ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 10質量部
・酸化チタン(数平均一次粒径35nm、一次表面処理;シリカ・アルミナ処理、
二次表面処理;メチルハイドロジェンポリシロキサン処理) 30質量部
・メタノール 100質量部
からなる組成物を、循環式湿式分散機を用いて分散することにより、中間層塗布液を調製した。
この中間層塗布液〔1〕を、上記の導電性支持体〔1〕を洗浄した後の外周面に浸漬塗布法によって塗布、乾燥することにより、導電性支持体〔1〕上に乾燥膜厚4μmの中間層〔1〕を形成した。
【0114】
(2)電荷発生層の形成
・電荷発生物質〔CG−1〕 24質量部
・ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12質量部
・3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400質量部
からなる電荷発生層用組成物〔1〕を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP」(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz,600W)にて循環流量40L/Hで1.5時間にわたって分散することにより、電荷発生層塗布液〔1〕を調製した。
この電荷発生層塗布液〔1〕を浸漬塗布法によって中間層〔1〕上に塗布して、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
【0115】
(3)電荷輸送層の形成
次いで、下記成分を混合し、溶解させることにより、電荷輸送層塗布液を調製した。
この電荷輸送層塗布液を浸漬塗布法によって電荷発生層〔1〕上に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、乾燥膜厚25μmの電荷輸送層〔1〕を形成し、これにより、感光体〔1〕を作製した。
・下記式(CTM)で表わされる電荷輸送物質 225質量部
・ポリカーボネート樹脂「Z300」(三菱ガス化学社製) 300質量部
・酸化防止剤「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 6質量部
・テトラヒドロフラン/トルエン混合液(体積比;3/1) 2000質量部
・レベリング剤:シリコーンオイル「KF−54」(信越化学工業(株)製) 1質量部
【0116】
【化2】
【0117】
〔電荷発生層の反射スペクトルの測定〕
感光体の作製例1の電荷発生層の形成工程において調製した電荷発生層塗布液〔1〕を、導電性支持体〔1〕を洗浄した後の外周面に浸漬塗布法によって塗布、乾燥することにより、導電性支持体〔1〕上に乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層〔1〕が形成された試料〔1〕を作製した。
この試料〔1〕について、光学式膜厚測定装置「Solid Lambda Thickness」(スペクトラコープ社製)を用いて、導電性支持体〔1〕の反射率を100%としたときの相対反射率として実測データを得、この実測データにおける干渉縞による凹凸除去するために、当該実測データにおける685〜715nmの範囲並びに765〜795nmの範囲をそれぞれ二次の多項式によって近似することにより、反射スペクトルを得た。当該反射スペクトルを図4(a)に示す。
そして、当該反射スペクトルにおいて、当該反射スペクトルの700nmにおける反射率(R700)と780nmにおける反射率(R780)とから、反射率比(R700/R780)を算出した。結果を表1に示す。
【0118】
〔感光体の作製例2〜6、8〜12、14〜18、20〜25、27〜29〕
感光体の作製例1において、表1に従って、導電性支持体〔1〕〜〔8〕のいずれかを用いると共に電荷発生物質〔CG−1〕〜〔CG−6〕のいずれかを用いることの他は同様にして、感光体〔2〕〜〔6〕、〔8〕〜〔12〕、〔14〕〜〔18〕、〔20〕〜〔25〕、〔27〕〜〔29〕を作製した。
【0119】
〔感光体の作製例7〕
感光体の作製例1の電荷発生層の形成工程において、電荷発生層塗布液〔1〕の代わりに、
・電荷発生物質:未付加のチタニルフタロシアニン顔料〔CG−X〕(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するもの)
20質量部
・バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)
10質量部
・溶媒:酢酸t−ブチル 700質量部
・溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
からなる原料を分散機としてサンドミルを用いて、10時間の分散を行うことにより調製した電荷発生層塗布液〔7〕を用いたことの他は同様にして、感光体〔7〕を作製した。
【0120】
〔感光体の作製例13、19、26〕
感光体の作製例7において、表1に従って導電性支持体〔2〕、〔4〕、〔5〕のいずれかを用いることの他は同様にして、感光体〔13〕、〔19〕、〔26〕を作製した。
【0121】
〔感光体の作製例30〕
感光体の作製例1の電荷発生層の形成工程において、分散時間を15時間としたことの他は同様にして、感光体〔30〕を作製した。
【0122】
〔感光体の作製例31〕
感光体の作製例1の電荷発生層の形成工程において、分散時間を0.1時間としたことの他は同様にして、感光体〔31〕を作製した。
【0123】
以上の感光体〔2〕〜〔31〕に係る電荷発生層について、上記と同様にして反射スペクトルを測定し、反射率比を算出した。結果を表1に示す。感光体〔30〕に係る電荷発生層についての反射スペクトルを図4(b)に示す。
【0124】
〔画質の評価〕
図3の構成を有する市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製;600dpi、発振波長が780nmの半導体レーザーを露光光源として使用)に、上記の感光体〔1〕〜〔31〕のいずれかを搭載(各色に係る画像形成ユニットに搭載する感光体は同一種類の感光体とする。)したものによって、常温常湿環境(温度25℃、湿度50%RH)において、内部搭載パターン(No.53 Dot1)を用いて、濃度指示値を75に設定して黒色単色のハーフトーン画像を出力してテスト画像を得た。得られたテスト画像について、切削スジおよび木目調干渉縞についての画質評価を行った。結果を表1に示す。
【0125】
(1)切削スジ
切削スジの発生に関して、下記の評価基準に従って画質評価を行った。
−評価基準−
○:画像上に細かいピッチスジは見られない(合格)。
△:画像上に細かなピッチスジがとぎれとぎれに見えるが、実用上は問題ない(不合格)。
×:画像上に細かなピッチスジはっきりと見られ、実用上問題あり(不合格)。
【0126】
(2)木目調の干渉縞
木目調の干渉縞の発生に関して、下記の評価基準に従って画質評価を行った。
−評価基準−
○:木目調の干渉縞が全く見られない(合格)。
×:木目調の干渉縞が僅かに見られ、実用上問題あり(不合格)。
××:木目調の干渉縞がはっきりと見られ、実用上極めて問題あり(不合格)。
【0127】
〔湿度依存性の評価〕
図3の構成を有する市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製;600dpi、発振波長が780nmの半導体レーザーを露光光源として使用)に、上記の感光体〔1〕〜〔31〕のいずれかを搭載(各色に係る画像形成ユニットに搭載する感光体は同一種類の感光体とする。)したものによって、高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)において、イエロー、マゼンタ、シアン、黒色の各色の印字率がそれぞれ2.5%であるA4画像をA4の中性紙に50万枚の出力する耐刷試験を行った後、直ぐにフルカラー複合機の主電源を停止し、停止12時間後に電源を入れ、出力が可能となったら直ちにA3中性紙の全面にマクベス濃度計による相対反射濃度が0.4となるハーフトーン画像と、A3中性紙の全面に6dot格子画像をそれぞれ出力した。これらの画像の状態を目視で観察し、以下の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
−評価基準−
○:ハーフトーン画像および格子画像のいずれにも帯状の濃度変化が見られない(合格)。
×:格子画像には濃度変化は見られないが、ハーフトーン画像に感光体の長軸方向に伸びる薄い帯状の濃度変化が認められ、実用上問題あり(不合格)。
××:ハーフトーン画像に帯状の濃度変化が認められ、また、格子画像にも濃度変化あるいは線幅の変化が認められ、実用上極めて問題あり(不合格)。
【0128】
【表1】
【0129】
表1から明らかなように、特定の電荷発生物質を含有すると共に特定の反射率比を有する電荷発生層と、特定の表面粗さ形状を有する導電性支持体とを有して構成される本発明の感光体を用いて画像を形成した場合においては、感度の湿度依存性が小さく抑制されながら切削スジおよび木目調の干渉縞の発生の抑制された良好な画像が得られたのに対し、比較例1〜4、11,15,16のように特定の反射率比を有さない感光体を用いて画像を形成した場合においては、感度の湿度依存性が大きく、また、比較例4〜14のように特定の表面粗さ形状を有さない導電性支持体による感光体を用いて画像を形成した場合においては、切削スジまたは木目調の干渉縞が発生することが判明した。
【符号の説明】
【0130】
1、1Y、1M、1C、1Bk 感光体
1a 導電性支持体
1b 中間層
1c 電荷発生層
1d 電荷輸送層
1e 保護層
1α 有機感光層
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
5Y、5M、5C、5Bk 一次転写ローラ
5b 二次転写ローラ
6Y、6M、6C、6Bk クリーニング手段
6b クリーニング手段
7 中間転写ユニット
8 筐体
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
20 給紙カセット
21 給紙手段
22A、22B、22C、22D 中間ローラ
23 レジストローラ
24 定着手段
25 排紙ローラ
26 排紙トレイ
70 中間転写体
71〜74 支持ローラ
82L、82R 支持レール
A 画像形成装置本体
P 画像支持体
SC 原稿画像読み取り装置



図1
図2
図3
図4