特許第6010970号(P6010970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6010970硬化性樹脂組成物およびそれを用いてなる塗料および樹脂被覆金属板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010970
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物およびそれを用いてなる塗料および樹脂被覆金属板
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20161006BHJP
   C09D 201/08 20060101ALI20161006BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161006BHJP
   C08K 5/151 20060101ALI20161006BHJP
   C08K 5/156 20060101ALI20161006BHJP
   C08K 5/35 20060101ALI20161006BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20161006BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20161006BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20161006BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C08L101/08
   C09D201/08
   C09D7/12
   C08K5/151
   C08K5/156
   C08K5/35
   C08K5/19
   C08K5/49
   C08K5/548
   B05D7/14 F
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-77305(P2012-77305)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203995(P2013-203995A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 努
(72)【発明者】
【氏名】小出 昌史
(72)【発明者】
【氏名】濱田 直宏
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−320454(JP,A)
【文献】 特開平04−161424(JP,A)
【文献】 特開平04−146981(JP,A)
【文献】 特開2002−268221(JP,A)
【文献】 特開平04−218561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
C09D1/00−10/00
C09D101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基として水酸基及び/又はカルボキシル基を有するアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式(1)で表される二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)10〜200重量部、オニウム塩(C)0.1〜10重量部含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】

(式中 X1価の換基を有してもよい複素環基を表し、R1は、NHCOO−、2はラクトン環である1価の有機置換基、nはである)
【請求項2】
合物(B)に含有される二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量が式量換算にて化合物(B)全体の式量に対して25〜70%であることを特徴とする請求項1載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂(A)が、酸価10〜200mgKOH/gを有することを特徴とする請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂(A)が、水酸価10〜200mgKOH/gを有することを特徴とする請求項1〜いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
オニウム塩(C)がアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩からなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂(A)100重量部に対して、さらに、樹脂(A)に含有される水酸基及び/又はカルボキシル基、及び/又は四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)に含有される環状構造の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有する反応性化合物(D)を0.1〜50重量部含んでなることを特徴とする請求項1〜いずれか記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜の何れかに記載の硬化性樹脂組成物からなる缶外面被覆用の缶外面被覆用硬化性製罐塗料。
【請求項8】
請求項記載の缶外面被覆用硬化性製罐塗料が金属基体上に被覆層として少なくとも一層形成されていることを特徴とする樹脂被覆金属板。
【請求項9】
請求項記載の樹脂被覆金属板から形成されることを特徴とする缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及び塗料組成物に関し、詳しくは缶用塗料に好適な塗料組成物に関し、さらに詳しくは飲料や食品(以下、合わせて飲食料という)を収容する缶の外面を被覆するのに好適な硬化性樹脂組成物およびそれを用いた樹脂被覆金属板および缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクリル樹脂やポリエステル樹脂に対し、硬化剤としてアミノ樹脂やイソシアネート基を有する化合物を組み合わせた硬化性樹脂組成物がある。上記硬化性樹脂組成物は、缶の外面を被覆する際に好適に用いられ、樹脂被服金属板を用いた缶が用いられている。
しかし、アクリル樹脂等に対し、アミノ樹脂を硬化剤として用いた場合には、その塗膜が酸性雨に弱く、耐レトルト性が悪いという欠点をもっている。また、アミノ樹脂は硬化時に、脱離基であるアルコールやホルマリンが揮発し、炉内を汚染するという問題があった。さらに、ホルマリンは、外因性内分泌攪乱化学物質( 環境ホルモン) の疑いがあるとされホルマリン発生懸念のない塗料の開発が急務となっている(特許文献1)。また、アクリル樹脂等に対し、イソシアネート基を有する化合物を硬化剤として用いる場合には、2液型で使うか、又はイソシアネート基をブロック化したものを使う必要がある。前者は、使用前に主剤たるアクリル樹脂等と硬化剤とを混合してから用いるが、混合後の可使時間が比較的短いという問題があり、使い難いという欠点を持っている。一方、後者、即ちブロック化イソシアネートを用いる場合、一般にブロック化剤の解離温度が高いので塗膜硬化の際に多大な熱エネルギーを必要とし、省エネルギーの点から難があり、また硬化時に解離したブロック化剤が炉内を汚したりするという問題があった。さらに、イソシアネート基を有する化合物は、飲食料用の缶を被覆するための塗料には密着性、黄変性の観点から不適であるという問題もある。(特許文献2)
【0003】
一方、上記課題を解決するための塗料として、環状カーボネートを用いたアルコキシシリル基を有するポリウレタン塗料組成物などが提案されているが、塗膜の経時的な架橋度の変化に伴って、塗膜性能が変化してしまい、外観も満足の行くものではないなどの、種々の欠点がある。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−269889号公報
【特許文献2】特許3107869号公報
【特許文献3】特開2008−57658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬化時に加熱炉の汚染や、ホルマリンを発生することなく、硬化性に優れる硬化性樹脂組成物であって、耐レトルト性、耐溶剤性、密着性に優れる塗膜を形成し得る新規な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。さらに上記硬化性樹脂組成物を用いた樹脂被覆金属板および缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、官能基として水酸基及び/又はカルボキシル基を有するアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式(1)で表される二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)10〜200重量部、オニウム塩(C)0.1〜10重量部含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
一般式(1)
【化2】

(式中 X1価の換基を有してもよい複素環基を表し、NHCOO−、2はラクトン環である1価の有機置換基、nはである
【0007】
また、本発明は、上記化合物(B)に含有される二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量が式量換算にて化合物(B)全体の式量に対して25〜70%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、樹脂(A)が、酸価10〜200mgKOH/gを有することを特徴とする上記硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、樹脂(A)が、水酸価10〜200mgKOH/gを有することを特徴とする上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、オニウム塩(C)がアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩からなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする上記硬化性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、樹脂(A)100重量部に対して、さらに、樹脂(A)に含有される水酸基及び/又はカルボキシル基、及び/又は四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)に含有される環状構造の反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有する反応性化合物(D)を0.1〜50重量部含んでなることを特徴とする上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
さらに、本発明は、上記硬化性樹脂組成物からなる缶外面被覆用の缶外面被覆用硬化性製罐塗料に関する。
さらに、本発明は、上記缶外面被覆用硬化性製罐塗料が金属基体上に被覆層として少なくとも一層形成されていることを特徴とする樹脂被覆金属板に関する。
くわえて本発明は、上記樹脂被覆金属板から形成されることを特徴とする缶に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は外因性内分泌攪乱化学物質の疑いのあるホルマリンを含まない硬化性樹脂組成物であって、従来使用してきたアミノ樹脂やブロックイソシアネート硬化剤を使用した硬化性樹脂組成物と比して、硬化性に優れ、環境汚染も少ないとともに、耐レトルト性、耐溶剤性、密着性に優れた硬化性樹脂組成物を提供することができる。
また、上記硬化性樹脂組成物を用いた缶外面被覆用硬化性製罐塗料および金属基体上に被覆層として少なくとも一層形成されていることを特徴とする樹脂被覆金属板および缶を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、官能基として水酸基及び/又はカルボキシル基を有するアクリル系樹脂(A)について説明する。
樹脂(A)は水酸基及び/又はカルボキシル基を有するより好ましくは、カルボキシル基を有する
【0012】
樹脂(A)中の酸価、あるいは水酸基価は10〜200が好ましく、20〜100がより好ましい。
酸価、あるいは水酸基価の双方が、それぞれ10未満であると化合物(B)の反応基との架橋反応が少なくなるため、硬度が得られない場合や、相溶性が悪化し塗膜が濁る場合があり、好ましくない。また、酸価、あるいは水酸基価が200を超えると、溶剤や化合物(B)に対する溶解性が低下し塗膜が濁る場合があることや、架橋密度が高くなり、密着性が低下してしまう場合があるため、好ましくない。
【0013】
樹脂(A)は、アクリル系樹脂ある。
【0014】
クリル樹脂、ビニル樹脂および、スチレン−アクリル樹脂を総称して「アクリル系樹脂」と表記する。
【0015】
アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和単量体を、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合することで得ることができる。ラジカル重合は、公知の重合方法で行うことができ、特に溶液重合で行うのが好ましい。無溶剤でも重合させることが可能であるが、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、オクタノール等のアルキルアルコール溶剤;
エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のエーテル系溶剤;
酢酸エチル、メトキシプロピルアセテ−トと等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;
キシレン、トルエン等の石油系溶剤などの溶剤の存在下で重合させるのが好ましい。ラジカル重合温度は60〜120℃の範囲が好ましく、重合時間は5〜12時間が好ましい。
【0016】
本発明の樹脂(A)に用いられるエチレン性不飽和単量体としては、公知のものを使用することができる。官能基としてカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔アクリル酸とメタクリル酸とを併せて「(メタ)アクリル酸」と表記する。以下同様。〕、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシメチル)メタクリル酸、p−ビニル安息香酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体類;等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0017】
官能基として水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート〔2−ヒドロキシエチルアクリレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートを併せて「(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート」と表記する。以下同様。〕、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシフェニルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;
【0018】
例えば、p−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等の水酸基含有ビニル系単量体類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0019】
本発明におけるカルボキシル基、あるいは水酸基を有するエチレン性不飽和単量体の使用量は、酸価、あるいは水酸基の範囲の中で、樹脂(A)100重量部中、0.1〜60重量部が好ましい。
【0020】
本発明において、樹脂(A)を得るための単量体としては、前記したカルボキシル基含有あるいは水酸基含有以外のエチレン性不飽和単量体を使用する事ができる。重量平均分子量(Mw)200〜2,000,000の重合体部位及びエチレン性不飽和二重結合を有する高分子量のエチレン性不飽和単量体、いわゆるマクロモノマーであっても良い。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロぺンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロ−(5,2,1,0、2.6)−デカニル(メタ)アクリレート、トリシクロ−(5,2,1,0、2.6)−デカニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート類;
【0021】
例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ロジンアクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類;
【0022】
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジエーテル、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5−メチル−5,6−エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート類;
【0023】
例えば、アリルグリシジルエーテル、クロトニルグリシジルエール、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,4−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,5−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,6−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,4−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン、3,4,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,4,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン等のグリシジル基含有ビニル系単量体類;
【0024】
例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカー2−イル)メチル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、3−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド[N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドとN−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを併せて「N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド」と表記する。以下同様。〕等の複素環式(メタ)アクリレート類;
【0025】
例えば、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
【0026】
例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、イソブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
【0027】
例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;
及び、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;
【0028】
例えば、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー類;
【0029】
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、インデン等のスチレン類;
【0030】
例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
【0031】
例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;
【0032】
例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN置換マレイミド類があげられる。特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0033】
ラジカル重合開始剤としては、公知のものを使用できるが、重合温度条件下でラジカルを発生しうる化合物であれば特に制限はない。例示するならばジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;
t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;
シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール類;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;
ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類などの有機過酸化物、又はこれらの混合物があげられる。
【0034】
又、ラジカル重合開始剤としてアゾ化合物も使用することもできる。例示するならば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル類;
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル類;
2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル類;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの1,1’−アゾビス−1−アルカンニトリル類などが使用できる。
【0035】
ラジカル重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対し、0.01〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で使用する。
【0036】
また合成時には、ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用しても良い。
【0037】
本発明の樹脂(A)を形成し得るエチレン性不飽和単量体において、構成成分である各エチレン性不飽和単量体から形成され得る単独重合体のTgが既知であれば、各単独重合体のTgとエチレン性不飽和単量体の構成比とに基づいて、樹脂(A)のガラス転移点(以下、Tgと称す)を理論的に求めることが可能である。
ところで、硬化性樹脂組成物の場合、主成分たる樹脂(A)に対し、後述の化合物(B)を配合することが一般的である。このような硬化性樹脂組成物から形成される塗布層は、緻密に架橋される硬化塗膜となり、塗布層のTgは、架橋後のTgが架橋前と大幅に異なるため、DSC測定(示差走査熱量測定)や動的粘弾性測定により求めることが好ましい。後述の金属板との密着性と塗膜硬度のバランスを維持するためには、架橋塗膜のTgを制御することが必要であり、そのためには、樹脂(A)のTgを−20〜70℃、より好ましくは0〜40℃の樹脂(A)を形成し得るように樹脂(A)を構成するエチレン性不飽和単量体選択することが好ましい。樹脂(A)のTgが−20℃未満の場合、硬化性樹脂組成物を用いて得られる塗布層の凝集力が低下し、硬度が低下したり、浮き剥がれが生じやすくなる場合がある。一方、Tgが70℃を超えると、金属板との密着性が十分得ることができない場合がある。
【0038】
次に、二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)について説明する。以下、「化合物(B)」と称す。
【0039】
化合物(B)は以下の構造であることを特徴とする。
一般式(1)
【化3】

(式中 価の換基を有してもよい複素環基を表し、R1は、NHCOO−、2はラクトン環である1価の有機置換基、nはである)
【0040】
また、化合物(B)の添加量は、樹脂(A)100重量部に対して、10〜200重量部添加することが好ましく、25〜100重量部添加することがより好ましい。10重量部未満であると、架橋密度が上がらず、耐溶剤性の低下や、硬度の不足が生じる場合があり、200重量部を超えると架橋密度が高く、基材との密着性が低下する場合がある。
【0041】
本発明の化合物(B)において、R2はラクトン環であるラクトン類(b−1)有する。上記環状構造は、熱により、樹脂(A)含有のカルボキシル基および水酸基と開環付加反応を起こす反応性官能基として働き、架橋反応が進行する
【0042】
本発明において、化合物(B)中の二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は以下の式にて算出することができる。
二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量(%)=(Rの式量×n/((Xの式量)+(Rの式量×n)+(Rの式量×n))×100
【0043】
上記二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は、式量換算にて化合物(B)全体の式量に対して25〜70%の範囲で含有することが好ましい。さらに好ましくは30〜70%である。70%を超えると溶剤に対する溶解性が低下する場合があり、25%未満であると架橋密度が低く、耐溶剤の低下や硬度の不足が発生する場合がある。
【0044】
また、化合物(B)中には二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造が2つ以上、すなわち一般式(1)中のnが2以上有することが必要である。さらに、nが3〜6であることがさらに好ましい。nが1であると、架橋密度が上がらず、耐溶剤性の低下や、硬度の不足が生じる場合がある。
【0045】
本発明の化合物(B)において、Rがラクトン環であるラクトン類(b−1)は以下の方法で作成することが可能である。
例えば、カルボキシル基、あるいは水酸基を極性官能基として含有する単一環状ラクトンを用いて、含有するカルボキシル基、あるいは水酸基と反応しうる他の化合物と反応させることで、化合物(b−1)を作成することが可能である。具体的な反応としては、ウレタン化、エーテル化、エステル化、カーボネート化等公知の方法で製造することが可能である。
【0046】
カルボキシル基、水酸基を有する単一環状ラクトン化合物としては、例えば、メバロノラクトン、グルクロノラクトン、グルコノデルタラクトン、パントラクトン、3α−ヒドロキシ−5α−コラノ−24,17−ラクトン、4−ヒドロキシ−4、5−ジカルボキシペンタデカン酸γ-ラクトン等が挙げられる。
【0050】
(1)ウレタン化反応に使用する多官能イソシアネート類としては以下のものが挙げられる。
【0051】
例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリジンイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3−(2’−イソシアナトシクロヘキシル)プロピルイソシアネート、ジアニシジンイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ダイマージイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の二官能イソシアネート類;
【0052】
例えば、リジントリイソシアネート、トリス(イソシアナトフェニル)メタン、トリス(イソシアナトフェニル)チオホスフェート等の三官能イソシアネート類;等が挙げられる。
また、上記多官能のイソシアネート類のビウレット、ウレトジオン、イソシアヌレート、アダクト体、も挙げられる。
【0053】
上記の多官能イソシアネート類や、多官能イソシアネート類のビウレット、ウレトジオン、イソシアヌレート、アダクト体、から選ばれる含有のイソシアネート基と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、フェノール、ベンジルアルコール、メチルアミン、エチルアミン、ジブチルアミン、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリカプロラクトン、などの活性水素化合物とを反応させてなる化合物(ブロックイソシアネート類とも称する)も挙げられる。
【0054】
(1)ウレタン化反応時に必要に応じて触媒を使用してもよい。適当な触媒としては、たとえば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、などのアミン類やその塩、テトラブチルチタネート、ジブチルスズジラウリレート、オクチル酸スズなどの金属塩や錯体などが挙げられる。
【0055】
(1)ウレタン化反応時に必要に応じて溶媒を使用してもよい。活性水素を有さない溶媒が反応基質との副反応を起こさないため好ましい。適当な溶媒としてはたとえば、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、などが挙げられる。
【0056】
(2)エーテル化反応に使用する多官能ハロゲン化物類としては以下に塩化物の例を挙げる。下記化合物の塩素原子の一部または全部を臭素原子、ヨウ素原子に置き換えたものも用いることができる。
【0057】
例えば、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、ジクロロメチルプロパン、ジクロロブタン、ジクロロペンタン、ジクロロヘキサン、ジクロロヘプタン、ジクロロオクタン、ジクロロデカン、ジクロロブテン、ジクロロブチン、メタリルジクロリド、ジクロロシクロヘキサン、ジクロロプロパノール、ジクロロブタノール、ジクロロアセトン、キシリレンジクロリド、ビス(クロロエチル)ベンゼン、ビス(クロロメチル)メシチレン、トリクロロメシチレン、ビス(クロロメチル)ジュレン、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(4−クロロフェニル)エタンなどが挙げられる。
【0058】
(2)エーテル化反応は、上記の多官能ハロゲン化物類、強塩基の存在下で反応させる。このとき用いる塩基性触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、ハロゲン化アルキルマグネシウム、水素化ナトリウム、ブチルリチウムなどが挙げられる。副反応が少なく、反応性を十分に有する塩基性触媒として水素化ナトリウムが好ましい。
【0059】
エーテル化反応において、必要に応じて溶媒を使用することができる。使用する溶媒は、反応基質や強塩基性触媒と反応する溶媒以外であれば使用できる。たとえば例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテルなどが挙げられる。特に強塩基性触媒である水素化ナトリウム等を使用する場合は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの炭化水素やテトラヒドロフラン、ジメチルエーテルなどのエーテルを用いるのが好ましい。
【0060】
(3)エステル化反応に使用する多官能カルボン酸類としては以下のものが挙げられる。
【0061】
例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸類:
【0062】
例えば、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、イソプロピルマロン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、ブチルコハク酸、オクチルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、メチルグルタル酸、ジメチルグルタル酸、エチルメチルグルタル酸、ジエチルグルタル酸、メチルアジピン酸、テトラメチルピメリン酸等の分岐飽和脂肪族ジカルボン酸類;
【0063】
例えば、アリルコハク酸、メタリルコハク酸、ヘキセニルコハク酸、オクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、ドコセニルコハク酸、デカジエン−1,2−ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、ムコン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸類;
【0064】
例えば、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、カンファー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、シクロペンチルマロン酸、シクロペンタン二酢酸、シクロヘキサン二酢酸、アダマンタン二酢酸等の脂環式ジカルボン酸類;
【0065】
例えば、フェニルマロン酸、ベンジルマロン酸、チオフェンマロン酸、フェニルコハク酸、ジフェニルコハク酸等の芳香環を有する脂肪族ジカルボン酸類(カルボキシに結合する炭素原子が芳香環を形成しない):
【0066】
例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジピバロイル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、ジ(p−アニソイル)酒石酸、リンゴ酸、アセチルリンゴ酸、クエン酸、シトラマル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、ガラクタル酸、エポキシコハク酸、オキサル酢酸、オキソグルタル酸、オキソアゼライン酸、4,5−ジカルボキシ−γ−ペンタデカノラクトン、3,6−エポキシ−1,2,3,6−ヘキサヒドロフタル酸、ブチロラクトンジカルボン酸等のカルボキシ基以外に酸素原子を含む脂肪族または脂環式カルボン酸;
【0067】
例えば、アスパラギン酸、N−メチルアスパラギン酸、N−(tert−ブトキシカルボニル)−アスパラギン酸、N−(ベンジルオキシカルボニル)アスパラギン酸、N−カルバモイルアスパラギン酸、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]アスパラギン酸、グリシルアスパラギン酸、3−ヒドロキシアスパラギン酸、グルタミン酸、N−アセチルグルタミン酸、N−(tert−ブトキシカルボニル)−グルタミン酸、N−(ベンジルオキシカルボニル)グルタミン酸、N−ベンゾイルグルタミン酸、N−(4−アミノベンゾイル)グルタミン酸、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニル]グルタミン酸、メチルグルタミン酸、グリシルグルタミン酸、グアジニノグルタル酸、N−フタリルグルタミン酸、アミノアジピン酸、アミノピメリン酸、ジアミノピメリン酸、アミノスベリン酸、葉酸、メトトレキサート等の窒素原子を含む脂肪族または脂環式ジカルボン酸類;
【0068】
例えば、ジメルカプトコハク酸、チオリンゴ酸等の硫黄原子を含む脂肪族または脂環式ジカルボン酸類;
【0069】
例えば、テトラフルオロコハク酸、ジブロモコハク酸、ヘキサフルオログルタル酸、オクタフルオロアジピン酸、ドデカフルオロスベリン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、クロレンド酸《ヘット酸》等のハロゲン原子を含む脂肪族または脂環式ジカルボン酸類;
【0070】
例えば、フタル酸、メチルフタル酸、tert−ブチルフタル酸、エチニルフタル酸、(フェニルエチニル)フタル酸、メトキシフタル酸、フルオロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、トリフルオロメチルフタル酸、クロロフタル酸、ジクロロフタル酸、テトラクロロフタル酸、ブロモフタル酸、テトラブロモフタル酸、ニトロフタル酸、ヒドロキシフタル酸、アミノフタル酸、スルホフタル酸、イソフタル酸、メチルイソフタル酸、tert−ブチルイソフタル酸、メトキシイソフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、ブロモイソフタル酸、ニトロイソフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、アミノイソフタル酸、アミノトリヨードイソフタル酸、スルホイソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、ニトロテレフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸、アミノテレフタル酸、スルホテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、アントラキノンジカルボン酸、1,3−ジベンジル−2−オキソ−4,5−イミダゾリジンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;
【0071】
例えば、トリカルバリル酸(1,2,3−プロパントリカルボン酸)、アニコット酸、ブテントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、トリス(2−カルボキシエチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(3−カルボキシプロピル)−1,3,5−トリアジン、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、イソシアヌル酸トリス(3−カルボキシプロピル)等の脂肪族または脂環式トリカルボン酸類;
【0072】
例えば、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸、ベンゾフェノントリカルボン酸等の芳香族トリカルボン酸類
【0073】
例えば、ブタンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、チオジコハク酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、5−(1,2−ジカルボキシエチル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−(1,2−ジカルボキシエチル)1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸類;
【0074】
例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸、ナフタレンテトラカルボン酸、フルオレン−9,9−ビスフタル酸等の芳香族テトラカルボン酸類;
【0075】
例えば、シクロヘキサンヘキサカルボン酸等の脂肪族または脂環式のペンタカルボン酸またはヘキサカルボン酸類;
【0076】
例えば、ベンゼンペンタカルボン酸、メリット酸等の脂肪族または脂環式のペンタカルボン酸またはヘキサカルボン酸類が挙げられる。
【0077】
また、多官能カルボン酸の誘導体類としては上記カルボン酸無水物、酸クロリド、酸ブロミド、メチルエステル、エチルエステル、フェニルエステル、tert−ブチルなどが挙げられる。
【0078】
(3)エステル化反応に使用する多官能カルボン酸がフリーのカルボキシル基として存在している場合は水、カルボン酸エステルの状態の場合はアルコール、ハロゲン化物の状態の場合は酸を取り除くことで反応を進行させることができる。水やアルコールの場合は加熱により反応系外へ除去することが用意である。酸の場合はトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基性化合物によって取り除くことができる。
【0079】
(3)エステル化反応の際に触媒を使用することができる。例えば、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基触媒、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、イミダゾール、N−メチルイミダゾールなどのアミン触媒、鉄(III)、ジルコニウム(IV)、スカンジウム(III)、チタン(IV)、スズ(IV)、ハフニウム(IV)などの金属イオンを含む塩や錯体の触媒、ジフェニルアンモニウムトリフラート、ペンタフルオロフェニルアンモニウムトリフラートなどのアンモニウム塩触媒、などが挙げられる。
【0080】
(3)エステル化反応において、必要に応じて溶媒を使用することができる。使用する溶媒は、アルコール、アミン、カルボン酸など反応基質と反応する溶媒以外であれば使用できる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0081】
(3)エステル化反応において、縮合剤を用いて行うことができる。縮合剤とは、カルボキシル基またはアルコール性水酸基を活性化させ、エステル化反応を温和な条件で行うことができると同時に、副生成物の水は縮合剤と結合して別の化合物となるため、触媒作用と水除去作用を兼ね備えた化合物である。このような縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、p−トルエンスルホニルクロリド、1−エチル−3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルボニルジイミダゾール、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル、2,4,6−トリクロロ安息香酸クロリド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートなどが挙げられる。
【0082】
(4)カーボネート化反応においては、エステル化反応と同様の溶剤、触媒を使用することが可能である。カーボネート化反応により生成する酸はトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩基性化合物によって取り除くことができる。
【0088】
次にオニウム塩(C)について説明する。
オニウム塩(C)は、樹脂(A)中の水酸基及び/又はカルボキシル基と化合物(B)とのとの反応性を向上させることを目的として用いられる。これにより、硬化時間の短縮や、硬化温度を下げることが可能となる。
【0089】
オニウム塩(C)の添加量は樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部添加することが好ましく、0.3〜3重量部がより好ましい。0.1重量部未満であると触媒効果が得られにくく、優れた架橋反応性が得られない場合があり、10重量部を超えると触媒活性が高すぎてしまい、保存安定性の確保が困難になる場合がある。
【0090】
オニウム塩(C)は、公知のアミン類、第4級アンモニウム塩類、ホスフィン類、第4級ホスホニウム塩類、アミン類とボラン、および三フッ化ホウ素とのコンプレックス、第3級スルホニウム塩類、第2級ヨードニウム塩類、鉱酸類およびこれらの半エステル類、ルイス酸類、有機酸類およびこれらの半エステル類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸、スズ化合物類等が使用される。その中でも、優れた架橋反応性と、透明性の観点から、アンモニウム塩(c−1)、ホスホニウム塩(c−2)、スルホニウム塩(c−3)がより好ましい。
【0091】
具体的には、アンモニウム塩(c−1)としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(n−ブチル)アンモニウムブロマイド、テトラ(n−ブチル)アンモニウムクロライド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムブロマイド等が用いられる。
【0092】
例えば、ホスホニウム塩(c−2)として、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等が用いられる。
【0093】
例えば、スルホニウム塩(c−3)としては、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ピリジウム、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が用いられる。
これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0094】
次に、樹脂(A)に含有される水酸基及び/又はカルボキシル基、及び/又は四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)に含有される環状構造の反応性官能基のうち、少なくともいずれか一つの官能基と反応し得る反応性官能基を有する反応性化合物(D)について説明する。以下、「反応性化合物(D)」と示す。
【0095】
反応性化合物(D)は、樹脂(A)に含有される水酸基及び/又はカルボキシル基、及び/又は四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)に含有される環状構造の反応性官能基と反応し得ることが必要である。



















【0096】
反応性化合物(D)を用いることで、塗膜の架橋密度や、相溶性の制御を行うことが容易となり、硬度、密着性、加工性等の物性の制御可能幅を広げることが可能となる。
【0097】
反応性化合物(D)は、樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜50.0重量部、より好ましくは5〜30重量部の量で用いることができる。反応性化合物(D)を50.0重量部以上添加すると、架橋密度が高くなり過ぎて、密着性や加工性が悪化する場合がある。0.1重量部未満であると添加効果が得られにくく、架橋密度や相溶性の制御が困難となる場合がある。
【0098】
本発明の反応性化合物(D)は、樹脂(A)に含有される水酸基及び/又はカルボキシル基と反応する反応極性基を有する化合物であることが好ましく、例えば、樹脂(A)の水酸基と反応しうる反応性化合物(D)としては、イソシアネート基含有化合物、アミノ樹脂、アルコキシシリル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられるが、中でも、アルコキシシリル基含有化合物(d−1)が好ましい。イソシアネート基、カルボジイミド基含有化合物は硬化塗膜が着色する場合があり、アミノ樹脂は、硬化時にホルマリンが発生してしまう場合がある。
【0099】
例えば、樹脂(A)のカルボキシル基と反応しうる反応性化合物(D)としては、イソシアネート基含有化合物、アミノ樹脂、エポキシ基含有化合物、オキセタニル基含有化合物、アジリジンニル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドロキシエチルアミド基含有化合物等が挙げられるが、透明性や反応性制御の観点から、エポキシ基含有化合物(d−2)、オキセタン基含有化合物(d−3)、ヒドロキシエチルアミド基含有化合物(d−4)がこのましい。イソシアネート基含有化合物は硬化塗膜の着色や、密着性の低下が起きる場合があり、アジリジン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物は、カルボキシル基との反応性が高く、保存安定性が悪化する場合がある。また、アミノ樹脂は、硬化時にホルマリンが発生してしまう場合がある。
【0100】
反応性化合物(D)は、ホルマリンを含まないものを用いることで環境への負荷を低減することが可能である。具体的には、フェノールノボラック樹脂の誘導体や、クレゾールノボラックの誘導体を出発物質とした化合物は使用しないことが好ましい。
【0101】
例えば、樹脂(A)の水酸基と反応しうる反応性化合物(D)として使用することが出来るアルコキシシリル基含有化合物(d−1)としては、具体的には、例えば、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
【0102】
例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
【0103】
例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基を有するアルコキシシラン化合物;
【0104】
例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、β−メルカプトメチルフェニルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、6−メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
【0105】
例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどのアルキル基を有するアルコキシシラン化合物;
【0106】
例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシランなどのフェニル基を有するアルコキシシラン化合物;
【0107】
例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシジル基を有するアルコキシシラン化合物;
【0108】
例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1, 3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス( 2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのその他のアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0109】
樹脂(A)のカルボキシル基と反応しうる反応性化合物(D)として使用することが出来るエポキシ基含有化合物(d−2)としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエステル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジジグリシジルエステル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、1,2:8,9ジエポキシリモネン、ラクトン変性エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニルメチル)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,1−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−m−ジオキサン、ノルボルネンジオールジグリシジルエーテル、イソボルニルジオールジグリシジルエーテル、トリシクロデカニルジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0110】
樹脂(A)のカルボキシル基と反応しうる反応性化合物(D)として使用することが出来るオキセタニル基含有化合物(d−3)としては、例えば、3-エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン、1,4‐ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1‐エチル‐3‐オキセタニル)メチルエーテル、3-エチル‐3‐(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル‐3‐(2‐エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、3‐エチル‐{(3‐トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン、などが挙げられる。
【0111】
樹脂(A)のカルボキシル基と反応しうる反応性化合物(D)として使用することが出来るヒドロキシエチルアミド基含有化合物(d−4)としては、例えば、N,N,N‘,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジピンアミド、N,N,N‘,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)アジピンアミド、N,N,N‘,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)セバシンアミド等の2価以上のカルボン酸またはその誘導体と、β位にヒドロキシル基を1つ以上有する1級または2級アミンとを反応させた化合物が挙げられる。
【0112】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化塗膜の傷付きを防止する目的で、ワックス等の滑剤を添加することもできる。
ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、ラノリンワックス、パーム油、キャンデリラワックス、ライスワックス等の動植物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、ポリオレフィンワックス、テフロン(登録商標)ワックス等の合成ワックス等が好適に用いられる。
【0113】
本発明の硬化性樹脂組成物が適用できる被塗面としては、特に制限されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム等の金属;コンクリート、モルタル、スレート板、木材、石材等の無機基材;プラスチック等の有機基材等の基材面及びこれらの表面処理面等が挙げられ、特に金属面及びその表面処理面に好適である。
【0114】
金属板としては、一般の金素材ないし金属製品等に広く用いることが可能であり、建材、車両等に使用する金属材料、鋼板、及び飲料缶、食品用缶、その蓋、キャップ等に用いることができる金属板であれば、いずれへも塗装することができる。特に、飲料や食品を収容する缶の外面被覆用塗料として用いることが好適である。缶及び缶蓋の素材としては、アルミニウム、錫メッキ鋼板、クロム処理鋼板、ニッケル処理鋼板等が用いられ、これらの素材はジルコニウム処理や燐酸処理等の表面処理を施される場合がある。
【0115】
本発明硬化性樹脂組成物の塗装方法としては、エアースプレー、エアレススプレー、静電スプレー等のスプレー塗装が望ましいが、ロールコーター塗装、浸漬塗装、電着塗装等でも塗装することが出来る。
本発明の硬化性樹脂組成物は、塗装した後、加熱硬化工程(焼き付け工程ともいう。以下、焼き付け工程と称する)を経ることで硬化させる。焼き付けの条件としては、150℃〜280℃の温度で10秒〜30分間焼き付けることが望ましい。
【0116】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例における「部」及び「%」は、特にことわらない限り「重量部」及び「重量%」を表す。
【0117】
合成例1〜6で得られた各樹脂の重量平均分子量(Mw)を以下の方法に従って求めた。
【0118】
<重量平均分子量(Mw)測定>
Mwの測定は、東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0119】
合成例1 アクリル系樹脂(A−1)の合成
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにメトキシプロピルアセテート150部を仕込み、窒素置換下で100℃まで加熱した後、アクリル酸6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部、メチルメタクリレート32部、n−ブチルアクリレート42部、アゾビスイソブチロニトリル1.51部を2時間かけて滴下し重合反応を開始した。滴下終了後1時間後から1時間おきに3時間後までそれぞれアゾビスイソブチロニトリル0.08部を添加し、更に1時間重合反応を行った。その後、冷却を行い、重合反応を終了させ、アクリル樹脂(A−1)を得た。樹脂酸価は47mgKOH/g、水酸価は86mgKOH/g重量平均分子量Mwは25000であった。
【0120】
合成例2〜6 アクリル系樹脂(A−2)〜(A−6)および比較合成例(比較A−1)〜(比較A−3)の合成
表1に示す組成にて合成例1と同様の方法で合成を行い、アクリル系樹脂(A−2)〜(A−6)、比較合成例(比較A−1)〜(比較A−3)を作成した。
【0121】
【表1】
【0122】
化合物(B)の合成
合成例7 攪拌機、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体37.8部、メバロラクトン22.2部を入れ、窒素気流下、80℃で加熱して反応を開始した。3時間後赤外吸収スペクトル(PerkinElmer社製のSpectrum One)(以下、IRと称す)にて2260cm−1付近のNCOピークの消失を確認して、反応を終了した。反応液を取り出して化合物(b−1−1)を得た。二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は31%であった。
【0123】
合成例8 攪拌機、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート12.8部、グリセリンカーボネート13.6部を入れ、窒素気流下、80℃で加熱した。3時間後、IR測定にて2260cm−1付近のイソシアネート基(以下、NCOと称す)ピークの消失を確認した。反応液を取り出して化合物(b−2−1)を得た。二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は、44.0%であった。
【0124】
合成例9 攪拌機、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体39.2部、グリセリンカーボネート20.9部を入れ、窒素気流下、80℃で加熱して反応を開始した。3時間後IR測定にて2260cm−1付近のNCOピークの消失を確認して、反応を終了した。反応液を取り出して化合物(b−2−2)を得た。二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は30%であった。
【0125】
合成例10 攪拌機、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(4−クロロフェニル)エタン60.0部、テトラヒドロフラン755部、水素化ナトリウム(純度55%)55.5部を仕込み、窒素気流下、120℃で加熱還流させた。グリセリンカーボネート60.0部を30分かけて滴下し、4時間反応させた。プロトン核磁気共鳴測定装置(JEOL社製のJNM−ECX400P)(以下、1H−NMRと称す)で反応が完結しているのを確認した。反応溶液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターでテトラヒドロフランを留去して化合物(b−2−3)を得た。二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は、51.0%であった。
【0126】
合成例11 攪拌機、温度計、滴下装置、ディーンスターク管、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、ビフェニルテトラカルボン酸24.7部、グリセリンカーボネート35.3部、硫酸水素ナトリウム一水和物0.8部、トルエン60部を入れ、窒素気流下、120℃で加熱し、反応を開始した。ディーンスターク管にはトルエンを満たし、反応容器にトルエンが流れるようにした。6時間後に酸価を測定し反応が完結したことを確認した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターでトルエンを留去して化合物(b−2−4)を得た。二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は55.9%であった。
【0127】
合成例12
攪拌機、温度計、滴下装置、還流冷却器、ガス導入管を備えた反応容器に、グリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量144)28.8部、トリフェニルホスフィン3.9部、塩化アルミニウム0.33部を仕込み、80℃で攪拌しながら二酸化炭素を吹き込み続けて、反応を開始した。24時間後、1H−NMRでエポキシ基が消失していることを確認し、反応を終了した。これにトルエン50部を加え、水洗して取り出し、化合物(b−2−5)を得た。二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造の含有量は53.8%であった。
【0128】
[実施例4、参考例1〜3、5〜15
酸素濃度が10%以下に置換された遮光された500ccのマヨネーズ瓶に、樹脂(A)、二個以上の酸素原子を有する四員環以上の環状構造を2つ以上有する化合物(B)、及びオニウム塩(C)、反応性化合物(D)を表2に示す比率で仕込み(樹脂(A)を100重量部とする)、エアモーターにて十分に攪拌を行い、十分に脱泡を行った後、表2の配合例に示す硬化性樹脂組成物を得た。尚、表2中、実施例1〜3、5〜15は、いずれも参考例を表す。
【0129】
【表2】
【0130】
b−1−1:合成例7にて作成した化合物(B)
b−2−1:合成例8にて作成した化合物(B)
b−2−2:合成例9にて作成した化合物(B)
b−2−3:合成例10にて作成した化合物(B)
b−2−4:合成例11にて作成した化合物(B)
b−2−5:合成例12にて作成した化合物(B)
c−1−1:テトラブチルアンモニウムブロミド
c−1−2:テトラ(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド
c−3−1:p−トルエンスルホン酸ナトリウム
d−2−1:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物
d−3−1:1,4‐ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン
d−1−1:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
d−4−1:N,N,N‘,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アジピンアミド
【0131】
[比較例1〜10]
比較例についても実施例と同様の方法で仕込み表3の配合例に示す硬化性樹脂組成物を得た。
【0132】
【表3】

【0133】
[塗膜の評価]
実施例4、参考例1〜3、5〜15、比較例1〜10で得た各硬化性樹脂組成物を用い、アルミ板にバーコーター#18で塗工し、ガスオーブンを用い雰囲気温度200℃で4分間焼き付け、評価用テストパネルを得て、以下のようにして塗膜の性能を評価した。結果を表4、及び5に示す。尚、表4中、実施例1〜3、5〜15は、いずれも参考例を表す。
各評価の方法を以下に説明する。尚、○以上を実用上問題ないレベルとするが、△が1〜2個含まれる場合も実用上問題ない。×は実用上不可レベルである。
【0134】
<外観>テストパネルを目視で評価する。
○:問題なし。
△:ややブツあるいは発泡あり。
×:著しくブツあるいは発泡あり。
【0135】
<硬化性>2ポンドハンマーにガーゼを巻きMEKを含浸させ、テストパネルの塗膜上を往復させ、塗膜が溶解するまでの回数を求める。
◎:200回以上。
○:100回以上200回未満。
△:50回以上100回未満。
×:50回未満
【0136】
<硬度>JIS K5600に準拠し、鉛筆硬度試験機(テスター産業社製「クレメンス型引掻硬度試験機」)を用い、鉛筆の芯の硬さを種々変えて、荷重500gにてサテストパネルを5回試験した。5回中、1回も傷がつかない、もしくは1回のみキズがつくときの芯の硬さを、その塗膜の鉛筆硬度とした。
◎:3H以上
○:2H以上
△:H以上
×:H未満
【0137】
<密着性> JIS K−5400碁盤目テープ法に準拠し、テストパネルに1mm×1mmのマス目を100個作成した後、粘着セロハンテープを貼着し、急激に剥した後の剥がれた碁盤目塗膜の数を数え、下記基準で評価した。
◎:0個
○:1〜5個
△:6〜39個
×:40個以上
【0138】
<加工性> テストパネルを大きさ40mm×50mmに切断し、塗膜を外側にして、試験部位が40mmになるように2つ折りにし、この2つ折りにした試験片の間に厚さ0.26mmのアルミ板を2枚はさみ、1kgの荷重を高さ40cmから折り曲げ部に落下させた後に、折り曲げ先端部に6.0V×6秒通電し、加工性5cm巾の電流値(mA)を測定した。
◎ :1.5mA未満
○ :1.5mA以上〜5.0mA未満
△ :5.0mA以上〜15.0mA未満
× :15.0mA以上
【0139】
<耐レトルト密着性> テストパネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で125℃−30分レトルト処理を行い、塗膜の状態を目視で評価した。その塗面にセロハン粘着テープを貼着し、強く剥離したのちの塗面の評価を行った。
目視評価
○:問題なし
△:やや白化および微量のブツ発生。
×:著しく白化、ブツ発生
セロハン粘着テープ剥離評価
○:全く剥離なし
△:少し剥離
×:著しく剥離
【0140】
<耐レトルト白化> テストパネルを水に浸漬したまま、レトルト釜で125℃−30分レトルト処理を行い、塗膜の白化性について目視で評価した。
○:問題なし
△:やや白化
×:著しく白化
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】

【0143】
本発明の硬化性樹脂組成物は、表4に示すように、実施例、本発明の硬化性樹脂組成物は、優れた硬化性を有し、かつ加工性、密着性に優れていることがわかった
一方、表5に示した比較例1〜10においては、化合物(B)を用いない比較例1および3では、樹脂の硬化が進行しておらず、硬度や、硬化性が満足できるものではない。また、比較例2のオニウム塩(C)を用いない系では、化合物(B)の硬化の進行が遅く、硬化性が得られていないことから触媒効果が確認された。また、比較例8〜10より、樹脂(A)と化合物(B)との架橋を進行させ相溶性を向上させることが重要であることがわかる。