特許第6010981号(P6010981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000002
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000003
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000004
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000005
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000006
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000007
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000008
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000009
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000010
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000011
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000012
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000013
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000014
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000015
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000016
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000017
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000018
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000019
  • 特許6010981-プラズマ処理装置 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010981
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20161006BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20161006BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H05H1/46 L
   C23C16/50
   H01L21/302 101C
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-84739(P2012-84739)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-214444(P2013-214444A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 朋子
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−262541(JP,A)
【文献】 特開2004−143592(JP,A)
【文献】 特開平10−261631(JP,A)
【文献】 特開平08−306659(JP,A)
【文献】 特開2008−147526(JP,A)
【文献】 国際公開第01/019144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
C23C 16/50
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給される真空チャンバと、
交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、前記交流電源の接地側に接続され前記給電側電極棒に離間して対向配置された接地側電極棒、前記給電側電極棒および接地側電極棒を通電可能に接続する接続部材を有し、前記交流電源からの電力供給により前記処理室内でプラズマを発生させるアンテナ体と、
処理対象の被処理面を前記給電側電極棒および前記接地側電極棒に対向させて保持可能な処理対象保持手段と、を備え、
前記処理対象保持手段は、前記給電側電極棒および前記接地側電極棒の対向間隔によって形成される処理空間に、前記処理対象配置することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給される真空チャンバと、
交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、前記交流電源の接地側に接続され前記給電側電極棒に離間して対向配置された接地側電極棒、前記給電側電極棒および接地側電極棒を通電可能に接続する接続部材を有し、前記交流電源からの電力供給により前記処理室内でプラズマを発生させるアンテナ体と、
処理対象の被処理面を前記給電側電極棒および前記接地側電極棒に対向させて保持可能な処理対象保持手段と、を備え、
前記給電側電極棒および接地側電極棒のそれぞれは、
当該両電極棒の対向方向に交差する方向に、当該電極棒の一部を屈曲もしくは湾曲させた転回部と、
前記転回部を境にして一端側に位置する第1の部分、および、前記転回部を境にして他端側に位置するとともに前記第1の部分に対向する第2の部分と、を有し、
前記接地側電極棒の内部には、前記ガス供給源から供給された前記反応ガスが流通するガス供給路が形成されており、該ガス供給路を通過した反応ガスは、該接地側電極棒に形成された噴出孔を介して前記真空チャンバに供給され、
前記処理対象保持手段は、前記第1の部分および第2の部分の対向空間によって形成される処理空間に、前記処理対象配置することを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内でプラズマを発生させて処理対象の被処理面に薄膜を生成したり、エッチングを行ったりするプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜3に示されるプラズマ処理装置(プラズマCVD装置)が知られている。これらのプラズマ処理装置は、真空状態に減圧可能な処理室を有する真空チャンバを備えており、この真空チャンバの天井部に、高周波電源に電気的に接続された複数のコネクタが配設されている。また、処理室内には、複数本の電極棒を有するアレイアンテナユニットが設けられており、このアレイアンテナユニットの電極棒が、複数のコネクタそれぞれに接続されている。
【0003】
そして、真空状態に減圧された処理室内に、処理対象である基板を保持する基板搬送用の台車を搬送するとともに、当該基板をアレイアンテナユニットに対向させた状態で、真空チャンバ内に反応ガスを供給しつつ、電極棒に高周波電力を供給する。これにより、真空雰囲気中にプラズマが発生するとともに、プラズマによって分解された反応ガスの成分が基板の表面に付着し、非結晶シリコン膜または微結晶シリコン膜などの薄膜が基板表面に生成されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262541号公報
【特許文献2】特開2003−86581号公報
【特許文献3】特開2003−109798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプラズマ処理装置においては、複数本の電極棒が並列に配置されている。したがって、平面状の1つの被処理面のみを有する処理対象に対しては、被処理面に対して、薄膜生成やエッチングを均一に施すことが可能である。しかしながら、例えば、被処理面が湾曲している円柱形状の処理対象や、表裏関係を有する2面を被処理面として備える処理対象など、処理対象の形状によっては、被処理面に対する処理が不均一になってしまったり、均一な処理を施すためにプラズマ処理を複数回に分けて行ったりしなければならない。
【0006】
また、例えば、表裏関係を有する2面を被処理面として備える処理対象にプラズマ処理を施す場合には、複数のアレイアンテナユニットを並列に配置するとともに、これらアレイアンテナユニットの間に処理対象を保持した状態でプラズマ処理を施すことが考えられる。しかしながら、複数のアレイアンテナユニットによって、異なる被処理面に均一なプラズマ処理を施そうとすると、アレイアンテナユニットそれぞれの個体差等を緩和するための制御が必要となる。
【0007】
本発明は、特に、平面状の1つの被処理面のみを有する処理対象以外の処理対象に対しても、特別な制御を要することなく、一度のプラズマ処理によって施される薄膜やエッチングの均一性を向上することができるプラズマ処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
また、本発明のプラズマ処理装置は、真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給される真空チャンバと、交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、前記交流電源の接地側に接続され前記給電側電極棒に離間して対向配置された接地側電極棒、前記給電側電極棒および接地側電極棒を通電可能に接続する接続部材を有し、前記交流電源からの電力供給により前記処理室内でプラズマを発生させるアンテナ体と、処理対象の被処理面を前記給電側電極棒および接地側電極棒に対向させて保持可能な処理対象保持手段と、を備え、前記処理対象保持手段は、前記給電側電極棒および前記接地側電極棒の対向間隔によって形成される処理空間に、前記処理対象配置することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のプラズマ処理装置は、真空状態に減圧可能な処理室にガス供給源から反応ガスが供給される真空チャンバと、交流電源の給電側に接続される給電側電極棒、前記交流電源の接地側に接続され前記給電側電極棒に離間して対向配置された接地側電極棒、前記給電側電極棒および接地側電極棒を通電可能に接続する接続部材を有し、前記交流電源からの電力供給により前記処理室内でプラズマを発生させるアンテナ体と、処理対象の被処理面を前記給電側電極棒および前記接地側電極棒に対向させて保持可能な処理対象保持手段と、を備え、前記給電側電極棒および接地側電極棒のそれぞれは、当該両電極棒の対向方向に交差する方向に、当該電極棒の一部を屈曲もしくは湾曲させた転回部と、前記転回部を境にして一端側に位置する第1の部分、および、前記転回部を境にして他端側に位置するとともに前記第1の部分に対向する第2の部分と、を有し、前記接地側電極棒の内部には、前記ガス供給源から供給された前記反応ガスが流通するガス供給路が形成されており、該ガス供給路を通過した反応ガスは、該接地側電極棒に形成された噴出孔を介して前記真空チャンバに供給され、前記処理対象保持手段は、前記第1の部分および第2の部分の対向空間によって形成される処理空間に、前記処理対象配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特に、平面状の1つの被処理面のみを有する処理対象以外の処理対象に対しても、特別な制御を要することなく、一度のプラズマ処理によって施される薄膜やエッチングの均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】真空チャンバの正面側を示す斜視図である。
図2】真空チャンバの背面側を示す斜視図である。
図3】(a)は真空チャンバの正面側の断面を模式的に示す図であり、(b)は真空チャンバの上面を模式的に示す図である。
図4】コネクタ群の詳細を説明する図である。
図5】アレイアンテナユニットが真空チャンバに取り付けられた状態の正面側の断面を模式的に示す図である。
図6】アレイアンテナユニットが真空チャンバに取り付けられた状態の右側面図である。
図7】アレイアンテナユニットの上面図である。
図8】(a)は図7のVIII(a)−VIII(a)線断面図、(b)は図7のVIII(b)−VIII(b)線断面図である。
図9】アレイアンテナユニットが掛止された状態の真空チャンバの右側面図である。
図10】第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図11】第2実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図12】第3実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図13】第4実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図14】第5実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図15】第6実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図16】第7実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図17】第8実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図18】第9実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
図19】第10実施形態における第1電極棒および第2電極棒と、処理対象の被処理面との相対位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
本実施形態のプラズマ処理装置は、処理対象の被処理面に薄膜を生成するプラズマCVD装置や、処理対象の被処理面をエッチング加工するプラズマエッチング装置として用いることが可能であるが、ここでは、プラズマ処理装置をプラズマCVD装置として用いる場合について説明する。
【0016】
(真空チャンバの構成)
まず、図1図4を用いて、本実施形態のアレイアンテナ式(誘導結合型)プラズマ処理装置の真空チャンバの構造について説明する。図1は、真空チャンバの正面側を示す斜視図、図2は、真空チャンバの背面側を示す斜視図である。
【0017】
図1および図2に示すように、真空チャンバ1は、筐体2を備えて構成されている。この筐体2は、図中y方向に対面配置された天井部2aおよび底面部2bと、図中x方向に対面配置された右側面部2cおよび左側面部2dと、図中z方向に対面配置された正面部2eおよび背面部2fと、を備えている。以下では、天井部2a側を真空チャンバ1の上方または上面とし、右側面部2c側を真空チャンバ1の右方または右側面とし、左側面部2d側を真空チャンバ1の左方または左側面として説明する。
【0018】
正面部2eおよび背面部2fには、それぞれフロント開口部3およびリヤ開口部4が形成されており、これらフロント開口部3およびリヤ開口部4を開閉するフロント開閉扉5およびリヤ開閉扉6がそれぞれ設けられている。また、右側面部2cにも右開口部7が形成されており、この右開口部7を開閉する開閉扉8が設けられている。さらに、左側面部2dにも左開口部9が形成されているが、この左開口部9は、不図示の基板搬送チャンバに接続可能となっている。この左開口部9には、真空チャンバ1と基板搬送チャンバとを真空状態を維持したまま接続したり、あるいはその接続状態を遮断したりする不図示のゲートバルブが設けられている。そして、このゲートバルブを閉じるとともに、フロント開閉扉5、リヤ開閉扉6および開閉扉8を閉じることにより、筐体2の内部に、外部から完全に密閉された処理室10が形成されることとなる。
【0019】
図3(a)は、真空チャンバ1の正面側の断面を模式的に示す図であり、図3(b)は、真空チャンバ1の上面を模式的に示す図である。これらの図に示すように、天井部2aには、コネクタ群11が設けられている。このコネクタ群11は、複数のコネクタが図中x方向に沿って直列配置された第1コネクタ群11aおよび第2コネクタ群11bを備えており、これら第1コネクタ群11aおよび第2コネクタ群11bが、図中z方向に所定の間隔を維持して配列されている。
【0020】
図4は、コネクタ群11の詳細を説明する図である。この図に示すように、第1コネクタ群11aおよび第2コネクタ群11bは、高周波電力(本実施形態では85MHzの交流電力)を供給する高周波電源12の供給側(給電側)に接続された第1天井側コネクタ13と、高周波電源12の接地側に接続された第2天井側コネクタ14と、を備えている。第1コネクタ群11aおよび第2コネクタ群11bにおいては、いずれも第1天井側コネクタ13および第2天井側コネクタ14が、図中x方向に交互に設けられている。また、第1コネクタ群11aおよび第2コネクタ群11bにおいては、第1天井側コネクタ13および第2天井側コネクタ14が、互いに図中z方向に対向配置されるように設けられている。これら第1天井側コネクタ13および第2天井側コネクタ14は、その接続部が鉛直方向下方(底面部2b)に向けられており、後述するアレイアンテナユニットの電極棒が、鉛直方向下方から上方に向かって接続可能となっている。
【0021】
また、第2天井側コネクタ14にはガス供給源15が接続されており、このガス供給源15から供給される反応ガスが、第2天井側コネクタ14に接続されたアレイアンテナユニットの電極棒から処理室10内に噴出可能となっている。なお、図3(a)に示すように、筐体2の天井部2aには真空ポンプ16が接続されており、処理室10を密閉した状態で真空ポンプ16を駆動することにより、処理室10内が真空状態に減圧可能となっている。
【0022】
(アレイアンテナユニットの構成)
図5は、アレイアンテナユニット30が真空チャンバ1に取り付けられた状態の正面側の断面を模式的に示す図であり、図6は、アレイアンテナユニット30が真空チャンバ1に取り付けられた状態の右側面図である。これらの図に示すように、アレイアンテナユニット30は、アンテナ支持部材31を備えており、このアンテナ支持部材31に複数のアンテナ体50が支持されている。
【0023】
このアンテナ体50は、アンテナ支持部材31の幅方向(図中z方向)に対向配置される第1電極棒51(給電側電極棒)と第2電極棒52(接地側電極棒)とが、接続部材53によって電気的に接続されたアンテナ素子であり、アンテナ支持部材31の長手方向に所定の間隔を維持して複数体支持されている。両電極棒51、52は、その長手方向の上端部がアンテナ支持部材31に支持されており、長手方向を鉛直方向に沿わせた状態で、アンテナ支持部材31に垂下支持されることとなる。
【0024】
図7は、アレイアンテナユニット30の上面図、図8(a)は図7のVIII(a)−VIII(a)線断面図、図8(b)は図7のVIII(b)−VIII(b)線断面図である。ただし、図7においては、説明の都合上、図8(a)および図8(b)に示す後述のカバー部材を省略して示している。これらの図に示すように、アンテナ支持部材31は、断面U字形の部材によって構成されており、その開口を鉛直方向下方に臨ませている。このアンテナ支持部材31には、当該アンテナ支持部材31の長手方向に沿って形成される長孔形状のアンテナ支持孔32a、32bが設けられており、これらアンテナ支持孔32a、32bに、第1電極棒51および第2電極棒52が垂下支持されている。
【0025】
より詳細に説明すると、第1電極棒51の上端部には、真空チャンバ1の天井部2aに設けられた第1天井側コネクタ13に接続可能な第1アンテナ側コネクタ54が固定されている。また、第2電極棒52の上端部には、真空チャンバ1の天井部2aに設けられた第2天井側コネクタ14に接続可能な第2アンテナ側コネクタ55が固定されている。
【0026】
第1アンテナ側コネクタ54は、円筒状の本体54aを備えており、この本体54aの底面部54bに、第1電極棒51が貫通した状態で固定されている。また、本体54aの開口側には、当該本体54aよりも大径のフランジ部54cが設けられている。このフランジ部54cは、アンテナ支持部材31に形成されたアンテナ支持孔32a、32bの幅よりも大径となる寸法関係を維持している。また、本体54aは、円筒状の外周面の一部が面取りされており、これら面取りした部分がアンテナ支持孔32a、32bの内周縁に対面する寸法関係を維持している。
【0027】
したがって、アンテナ支持孔32a、32bの上方から第1アンテナ側コネクタ54を挿入すると、本体54aがアンテナ支持孔32を挿通するとともに、フランジ部54cがアンテナ支持部材31の上面に接触して掛け止められ、これによって第1電極棒51がアンテナ支持部材31に垂下支持されることとなる。このとき、アンテナ支持部材31に支持された第1アンテナ側コネクタ54に回転応力が作用したとしても、本体54aに形成された面取り部がアンテナ支持孔32の内周縁に接触し、第1アンテナ側コネクタ54の回転が制限される。
【0028】
なお、ここでは第1アンテナ側コネクタ54について説明したが、第2アンテナ側コネクタ55の構成も上記第1アンテナ側コネクタ54と同様である。つまり、第2アンテナ側コネクタ55は、本体55aと、底面部55bと、フランジ部55cと、本体55aに形成された面取り部と、を備えており、底面部55bに第2電極棒52が貫通した状態で固定されている。そして、本体55aの開口側には、当該本体55aよりも大径のフランジ部55cが設けられている。このように、この第2アンテナ側コネクタ55も、上記第1アンテナ側コネクタ54と同様に、アンテナ支持部材31に垂下支持されることとなる。
【0029】
また、図8(a)、図8(b)に示すように、各第1電極棒51は、その外周にセラミックスまたは樹脂などの誘電体からなる被覆部材56を備えている。一方、各第2電極棒52は円筒形状をなしており、その長手方向に延在するガス供給路52aが内部に形成されている。また、各第2電極棒52は、ガス供給路52aに垂直に連通する噴出孔52bを備えている。この第2電極棒52は、上述したように、アレイアンテナユニット30が処理室10内に掛け止められたときに、第2天井側コネクタ14に接続されて、上記したガス供給源15とガス供給路52aとが連通する関係をなしている。
【0030】
したがって、アレイアンテナユニット30が処理室10内に掛け止められた状態で、ガス供給源15から反応ガスが供給されることにより、噴出孔52bから処理室10に向けて反応ガスが噴出することとなる。なお、アンテナ支持部材31には、両アンテナ側コネクタ54、55を被覆する断面U字形のカバー部材33が固定されている。このカバー部材33には、両アンテナ側コネクタ54、55の本体54a、55aに一致する円形の貫通孔33aが複数設けられている。これにより、各アンテナ側コネクタ54、55の本体54a、55aの開口、すなわち、両電極棒51、52の上端は、カバー部材33の貫通孔33aを介して上方に臨むこととなる。
【0031】
上記の構成からなるアレイアンテナユニット30は、図5に示すように、真空チャンバ1の天井部2aに設けられた掛止ピン19を、アンテナ支持部材31に設けられた不図示の掛止孔に挿通させた状態で、上記の掛止ピン19にボルトを固定することにより、処理室10内に掛止されることとなる。このように、アレイアンテナユニット30が処理室10内に掛止された状態では、第1アンテナ側コネクタ54が第1天井側コネクタ13に接続され、第2アンテナ側コネクタ55が第2天井側コネクタ14に接続されることとなる。
【0032】
図9は、アレイアンテナユニット30が掛止された状態の真空チャンバ1に、処理対象である基板Wが搬入された状態の右側面図である。上記したとおり、天井部2aには、第1コネクタ群11aおよび第2コネクタ群11bが設けられている。この図においては、第1電極棒51が、第1コネクタ群11aに設けられた第1天井側コネクタ13に接続され、第2電極棒52が、第2コネクタ群11bに設けられた第2天井側コネクタ14に接続されたアンテナ体50を示している。
【0033】
そして、アンテナ体50は、当該アンテナ体50を構成する第1電極棒51および第2電極棒52が図中z方向に対向配置され、これら両電極棒51、52の対向間隔に処理空間Xが形成される。このように、本実施形態においては、アンテナ体50を構成する第1電極棒51および第2電極棒52間に形成される処理空間Xに、処理対象となる基板Wが搬入され、当該処理空間Xにおいて基板Wにプラズマ処理が施されることとなる。
【0034】
なお、詳細な説明は省略するが、真空チャンバ1には、左側面部2dから右側面部2cまで延在するガイドレールが設けられている。また、基板Wを真空チャンバ1内に搬入するとともに、処理空間Xに基板Wを保持する処理対象保持手段には、上記のガイドレール上を転動するガイドローラが設けられている。これにより、基板Wを保持する処理対象保持手段は、ガイドローラがガイドレールに案内されて真空チャンバ1内の処理空間Xに搬入されることとなる。また、基板Wは、表裏関係にある被処理面W1、W2を備えており、処理空間Xに搬入された状態では、被処理面W1が真空チャンバ1の正面部2e側に位置し、被処理面W2が真空チャンバ1の背面部2f側に位置している。
【0035】
図10は、第1電極棒51および第2電極棒52と、基板Wの被処理面W1、W2との相対位置関係を示す図である。この図に示すように、第1電極棒51および第2電極棒52は、被処理面W1、W2の双方に対して、図中z方向に同一の離間距離を維持しており、また、図中x方向に同一の離間距離を維持して交互に配置されている。次に、上記のような相対位置関係を有する本実施形態のプラズマ処理装置におけるプラズマ処理について、図5を参照して説明する。
【0036】
(プラズマ処理)
まず、真空チャンバ1の処理室10を密閉するとともに、真空ポンプ16を駆動して処理室10を真空状態に減圧する。この状態で、ゲートバルブを介して真空チャンバ1に接続され内部が真空状態に維持された基板搬送チャンバから、処理室10内より詳細には処理空間Xに基板Wを搬入する。そして、ガス供給源15から第2電極棒52に反応ガスを供給して、噴出孔52bから真空チャンバ1内に反応ガスを噴出させる。この状態で、高周波電源12によってアンテナ体50に高周波電力を供給すると、アレイアンテナユニット30の周辺、より詳細には、図中x方向に隣り合って配置された両電極棒51、52間にプラズマが発生し、このプラズマによって分解された反応ガスの成分が基板Wの被処理面W1、W2に付着する。このようにして、基板Wの被処理面W1、W2に、非結晶シリコン膜または微結晶シリコン膜などの薄膜が成膜されることとなる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、特別な制御を要することなく、1回のプラズマ処理によって、基板Wにおいて表裏関係にある被処理面W1、W2に対して、同時に、かつ、均一に薄膜を生成することが可能となる。また、本実施形態のプラズマ処理装置を、処理対象の被処理面W1、W2にエッチング加工を施すプラズマエッチング装置として用いた場合においても、上記と同様に、均一なエッチング加工を実現可能である。
【0038】
なお、上記実施形態においては、被処理面W1、W2に対して、それぞれ第1電極棒51、52が交互に配置されることとしたが、図11に示す第2実施形態のように、被処理面W1に対して第1電極棒51のみを対向配置し、被処理面W2に対して第2電極棒52のみを対向配置することとしてもよい。この場合にも、基板Wの周囲にプラズマが発生するため、被処理面W1、W2に同時に薄膜生成処理やエッチング加工を施すことが可能となる。
【0039】
また、上記各実施形態においては、表裏関係を有する一対の平面状の被処理面を有する基板を処理対象として説明したが、処理対象の形状や材質等はこれに限らない。例えば、処理対象は、表裏関係を有する一対の湾曲面状の被処理面を有するものであってもよい。この場合、図12に示す第3実施形態の第1電極棒100および第2電極棒101のように、各電極棒を、被処理面に沿った形状とすることにより、被処理面に対してより均一な処理を施すことが可能となる。
【0040】
また、上記各実施形態においては、表裏関係を有する一対の被処理面を備える処理対象にプラズマ処理を施す場合について説明したが、例えば、円柱状の部材のように、円周面を被処理面とする処理対象にも適用可能である。この場合、図13に示す第4実施形態の第1電極棒110および第2電極棒111のように、各電極棒を、円周状の被処理面に沿った形状とすることにより、被処理面に対してより均一なプラズマ処理を施すことが可能となる。
【0041】
また、処理対象が、内周面と外周面とを被処理面とする円筒状の部材である場合には、図14に示す第5実施形態の第1電極棒120および第2電極棒121のように構成することも可能である。この場合にも、相対的に給電側に位置する第1電極棒120と、接地側に位置する第2電極棒121とが対向配置され、この対向間隔に形成される処理空間に処理対象が位置することとなり、異なる方向に臨む被処理面に対して、同時に、プラズマ処理を施すことが可能となる。
【0042】
また、上記各実施形態においては、高周波電源12の給電側に接続される第1電極棒と、接地側に接続される第2電極棒と、を接続部材によって接続してアンテナ体を構成している。そして、これら第1電極棒、第2電極棒、接続部材からなるアンテナ体を1つの電極棒と見た場合に、給電側から接地側へと延伸する電極棒が、接続部材によって転回する(折り返す)構成とした。
【0043】
つまり、1つのアンテナ体において、相対的に給電側に位置する電極棒(第1電極棒)と、相対的に接地側に位置する電極棒(第2電極棒)とを対向配置させ、この対向間隔に処理空間を形成するためには、電極棒の一部を屈曲もしくは湾曲させて、先端側を基端側に折り返す転回部が必要となる。上記実施形態においては、この転回部としての機能を接続部材が担うこととしたので、両電極棒は、直線状の簡易な棒状部材によって構成することが可能となっている。
【0044】
ただし、両電極棒は、必ずしも直線状の棒状部材で構成しなければならないものではなく、例えば、上記のアンテナ体を一体成形によって1つの部材で構成することとしてもよい。いずれにしても、アンテナ体は、給電側から接地側へと延伸する電極棒の一部を屈曲もしくは湾曲させた転回部を有し、この転回部を境にして給電側に位置する電極棒の一部(第1の部分)、および、転回部を境にして接地側に位置するとともに第1の部分に対向する電極棒の一部(第2の部分)を備え、これら第1の部分および第2の部分の対向空間によって処理空間が構成されればよい。
【0045】
したがって、アンテナ体は、図15に示す第6実施形態のように構成することも可能である。この第6実施形態においては、給電側となる第1電極棒130と、接地側となる第2電極棒131と、が図中x方向に対向配置されており、これら両電極棒103、131が、接続部材132によって通電可能に接続されている。ただし、両電極棒130、131は、当該両電極棒130、131の対向方向(図中x方向)に交差する方向(図中z方向)に当該電極棒130、131を屈曲させる転回部130a、131aをそれぞれ有している。そして、電極棒130、131のうち、転回部130a、131aを境にして給電側(一端側)に位置する部分(第1の部分)と、接地側(他端側)に位置する部分(第2の部分)と、が対向する関係を有しており、この対向間隔に、処理空間X1が構成されている。このような構成によっても、上記実施形態と同様の作用効果を実現することができる。
【0046】
なお、両電極棒のそれぞれが転回部を備える場合において、処理対象が湾曲面状の被処理面を有するときには、図16に示す第7実施形態の第1電極棒140および第2電極棒141のように、各電極棒を、被処理面に沿った形状とすることにより、被処理面に対してより均一な処理を施すことが可能となる。
【0047】
また、両電極棒のそれぞれが転回部を備える場合において、処理対象が、例えば、円柱状の部材のように、円周面を被処理面とするときには、図17に示す第8実施形態の第1電極棒150および第2電極棒151のように、各電極棒を、円周状の被処理面に沿った形状とすることにより、被処理面に対してより均一なプラズマ処理を施すことが可能となる。
【0048】
また、処理対象が、内周面と外周面とを被処理面とする円筒状の部材である場合には、図18に示す第9実施形態の第1電極棒160および第2電極棒161のように構成することも可能である。この場合にも、相対的に給電側に位置する電極棒と、接地側に位置する電極棒とが対向配置され、この対向間隔に形成される処理空間に処理対象が位置することとなり、異なる方向に臨む被処理面に対して、同時に、プラズマ処理を施すことが可能となる。
【0049】
さらには、図19に示す第10実施形態のように、電極棒170を輪状に構成するとともに、この輪状の電極棒170の内側に形成される処理空間に、処理対象を配置することとしてもよい。
【0050】
なお、上記各実施形態におけるアンテナ体の数や、各アンテナ体を構成する電極棒の数は一例に過ぎず、いずれの実施形態においても、少なくとも1体のアンテナ体を備えるとともに、そのアンテナ体に少なくとも1本の電極棒を備えていればよい。また、上記実施形態においては、電極棒が、その長手方向を鉛直方向に沿わせて垂下支持される構成としたが、例えば、電極棒を、その長手方向を水平方向に沿わせて設けるようにしてもよく、電極棒の向きは特に限定されるものではない。
【0051】
いずれにしても、上記各実施形態によれば、相対的に給電側に位置する電極棒の一部分と、接地側に位置する電極棒の一部分と、において対向する部分が設けられ、その対向間隔に処理対象が配置されることにより、異なる方向に臨む被処理面に同時にプラズマ処理を施すことができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、真空チャンバ内でプラズマを発生させて処理対象の被処理面にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 真空チャンバ
10 処理室
12 高周波電源
15 ガス供給源
50 アンテナ体
51、100、110、120、130、140、150、160 第1電極棒
52、101、111、121、131、141、151、161 第2電極棒
53 接続部材
130a、131a 転回部
W 基板
W1、W2 被処理面
X 処理空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19