特許第6011007号(P6011007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6011007-塗工システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011007
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】塗工システム
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   B05C11/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-103115(P2012-103115)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-230422(P2013-230422A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂幹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 則之
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−164278(JP,A)
【文献】 特許第4651809(JP,B2)
【文献】 特開2006−165305(JP,A)
【文献】 特開昭62−117669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0107796(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料の供給源となる給液部と、
前記給液部から供給される塗料を送る送液配管部と、
前記送液配管部から送られる塗料を塗布する塗工ヘッド部と、
前記送液配管部の塗料を前記給液部に還流させる還流配管部と、
前記送液配管部の塗料を前記塗工ヘッド部に送る流路の開閉、及び前記送液配管の塗料を前記還流配管部に還流させる流路の開閉を切替える流路切替部と、
前記還流配管部における塗料の前記給液部への還流を調整する送液圧力調整器と、
前記給液部、前記流路切替部、及び前記送液圧力調整器を駆動制御する制御部と、
前記送液配管部の圧力を検出する圧力センシング部と、を備える塗工装置によって間欠塗工塗膜を形成する塗工システムであって、
間欠塗工における非塗工時から塗工時へと変化する際、前記圧力センシング部で検出した非塗工時と塗工時の圧力差を算出し、塗工時の圧力が非塗工時の圧力よりも高い場合には非塗工時の圧力が高くなるように、塗工時の圧力が非塗工時の圧力よりも低い場合には非塗工時の圧力が低くなるように、前記制御部により、前記送液圧力調整器をフィードバック制御することを特徴とする塗工システム。
【請求項2】
塗料の供給源となる給液部と、
前記給液部から供給される塗料を送る送液配管部と、
前記送液配管部から送られる塗料を塗布する塗工ヘッド部と、
前記送液配管部の塗料を前記給液部に還流させる還流配管部と、
前記送液配管部の塗料を前記塗工ヘッド部に送る流路の開閉、及び前記送液配管部の塗料を前記還流配管部に還流させる流路の開閉を切替える流路切替部と、
前記還流配管部における塗料の前記給液部への還流を調整する送液圧力調整器と、
前記給液部、前記流路切替部、及び前記送液圧力調整器を駆動制御する制御部と、
前記送液配管部のうち、前記流路切替部よりも上流側で、且つ前記流路切替部に近い位置に設けられ、前記送液配管部の圧力を検出する圧力センシング部と、を備える塗工装置によって間欠塗工塗膜を形成する塗工システムであって、
間欠塗工における非塗工時から塗工時へと変化する際、前記圧力センシング部で検出した非塗工時と塗工時の圧力差が小さくなるように、前記制御部により、前記給液部をフィードバック制御することを特徴とする塗工システム。
【請求項3】
塗料の供給源となる給液部と、
前記給液部から供給される塗料を送る送液配管部と、
前記送液配管部から送られる塗料を塗布する塗工ヘッド部と、
前記送液配管部の塗料を前記給液部に還流させる還流配管部と、
前記送液配管部の塗料を前記塗工ヘッド部に送る流路の開閉、及び前記送液配管部の塗料を前記還流配管部に還流させる流路の開閉を切替える流路切替部と、
前記還流配管部における塗料の前記給液部への還流を調整する送液圧力調整器と、
前記給液部、前記流路切替部、及び前記送液圧力調整器を駆動制御する制御部と、
前記送液配管部のうち、前記流路切替部よりも上流側で、且つ前記流路切替部に近い位置に設けられ、前記送液配管部の圧力を検出する圧力センシング部と、を備える塗工装置によって間欠塗工塗膜を形成する塗工システムであって、
間欠塗工における非塗工時から塗工時へと変化する際、前記圧力センシング部で検出した非塗工時と塗工時の圧力差が小さくなるように、前記制御部により、前記流路切替部をフィードバック制御することを特徴とする塗工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定のスリットから塗料を吐出し、所望の厚みの間欠塗工塗膜を形成するようなスリットダイ方式で均一な膜厚形状を得るシステムであって、特にリチウムイオン二次電池電極用に応用できる間欠塗工塗膜を均一化するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、近年、自動車用に搭載されるなど、その発展が著しい。自動車分野にとっての電池への要求性能は、高容量化、高出力、サイクル安定性、コスト、安全性などが重要視されている。
リチウムイオン二次電池を構成している部材は、正極及び負極電極、セパレータ、電解液を備え、電極は、集電体、活物質、バインダー、導電材といった材料から構成されている。
【0003】
近年、車載用のリチウムイオン二次電池に関して鋭意研究がなされており、材料面のみならず、加工プロセスの面でも究開発が進んでいる。
特に、電極作製の際、電極基材上に前述したような活物質を含むスラリーを塗布する場合が多いが、塗布精度や乾燥条件によって、性能に大きく影響してしまう。
【0004】
塗布精度に関しては、平滑な塗布面を得ることで、安定した電池性能が発現できる。
平滑な塗布面を得て、積層や巻回をすることで大容量の電池ができたり、材料の持つ理論値に近い電池性能をロスなく発現させたりすることができる。逆に、膜厚ムラなど平滑な塗布面が得られない場合は、積層、捲回ができない、充放電バランスが崩れることでのロス、内部ショートなどの不具合が生じる場合がある。
【0005】
しかしながら、従来の間欠塗工の技術では、間欠塗工の塗布始め部分において、塗布終わり部分より膜厚が厚くなってしまったり薄くなってしまったりと、安定しない場合が多い。すなわち、塗布面内での膜厚ムラ(膜圧変化)が生じていることになる。
【0006】
このような膜圧ムラは、塗布時の送液圧力と非塗布時の送液圧力との差が大きいことに起因しており、特に非塗布時から塗布時へ切替時の圧力差が大きいと、塗布始め部分の膜厚差が生じることになる。非塗布時の方が塗布時よりも送液圧力が高い場合、非塗布時から塗布時への切替直後、一時的に送液配管内圧力が上昇し、塗布始め部分の膜厚も厚くなってしまい、逆に非塗布時の方が塗布時よりも送液圧力が低い場合は薄くなってしまう。また、圧力差が大きいことで、塗布時の安定した平衡圧力に達するまで時間が長くなり、送液圧力が安定するまでは、膜厚も変動してしまうことになる。
【0007】
膜厚に差が生じてしまうと、設計された正極、負極の目付量にも差が生じ、例えば正極の目付けが多く、負極が少ない場合には、リチウムイオンの享受バランスが崩れ、設計電池容量を低下させてしまうといった不具合が生じることがある。
また、前述したように積層したり巻回したりする場合、厚み差があると、均一な積層や巻回ができない。場合によっては、電池作製後に内部ショートしてしまうといった不具合を生じる可能性もある。
【0008】
このような課題を解決するために、種々の提案がなされてきた。
例えば特許文献1、2においては、塗布部、非塗布部を形成するために、塗工ヘッド部に吸引バルブを設け、塗料の吸引、吐出を繰り替えしている。
また、特許文献3では、吸引バルブにて間欠塗布を可能としつつ、さらに面内膜厚を均一化するため、その吸引分の塗料を塗布経路外に放出し、吸引された分の塗料の逆流影響を最小限としている。
【0009】
また、特許文献4においては、塗工装置として、塗料タンク、ダイコーター、送液ポンプ、三方弁及び送液ラインを用いている。
また、特許文献5においては、ダイヘッドの直前に三方弁を設け、戻りライン中に設けた圧力調整弁を用い、非塗布時も戻りライン中の圧力が塗布時と同じになるように調整している。
【0010】
また、特許文献6においては、塗料タンク、ポンプ、切替バルブ、塗工ヘッドからなる流路上で、切替バルブからタンクに戻る戻りライン中に背圧調整バルブを設け、さらに背圧調整バルブを迂回するバイパスラインを設けることで、非塗布時の圧力が塗布時の圧力になるよう調整している。
また、特許文献7では、塗布部にブレードとシャッターを有し、このシャッターの開閉を制御することにより、面内膜厚における均一性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−229481号公報
【特許文献2】特開2005−222911号公報
【特許文献3】特開2008−243658号公報
【特許文献4】特許第4651809号公報
【特許文献5】特開2004−344695号公報
【特許文献6】特開2010−33791号公報
【特許文献7】特開2003−68279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1、2に記載された従来技術では、吸引バルブで吸引するだけであると、塗布、非塗布の間欠塗工は可能になるが、塗布部の平坦性までは確保できない。また、特許文献3に記載された従来技術にあっては、系外に放出した塗料分については面内均一性に影響を及ぼさないが、塗布、非塗布切替時の送液圧力又は送液量をコントロールできておらず、要求通りの均一性を確保することが難しい。
【0013】
さらに、上記特許文献1〜3に記載された従来技術では、何れの場合も吸引バルブが塗工ヘッド部かその近傍に接続されているため、吸引の効果は高いものの、塗布時の送液系内に存在することで、非塗布時も含めた送液圧力に寄与することができず、送液圧力の安定化が難しい。
【0014】
また、特許文献4に記載された従来技術では、塗布時のダイ内圧力と三方弁部圧力がずれるため、塗布始め部の膜厚にムラを生じてしまうと考えられる。また、特許文献5に記載された従来技術のように、戻りライン中の圧力をコントロールしても、非塗布時から塗布時に切り替えたときに、塗料の流れが追従できず、塗布始め部の膜厚にムラを生じてしまう可能性がある。
【0015】
また、特許文献6に記載された従来技術では、戻りライン上の圧力計で検出していることでタイムラグが生じ、塗布始め部の厚みに影響が生じる可能性がある。また、背圧調整バルブで圧力が規定に達した時点でないと、安定して塗布できないことから、フレキシブルな塗布パターンや塗布速度などが選択できず、実際の生産には不向きである。また、特許文献7に記載された従来技術では、塗布、非塗布切替時のタイミングから、塗布部への圧力伝播する時間によっては、有効性が異なる場合が多い。特に、圧力伝播が速いと、シャッターのコントロールが間に合わず塗布膜厚に影響を及ぼすため、有効性が低くなってしまう。
【0016】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、間欠塗工塗膜を形成する際に、塗布始め部分と塗布終わり部分での厚みムラを抑制し、塗布面内の膜厚を均一化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、
本発明の一態様に係る塗工システムは、
塗料の供給源となる給液部と、
給液部から供給される塗料を送る送液配管部と、
送液配管部から送られる塗料を塗布する塗工ヘッド部と、
送液配管部の塗料を給液部に還流させる還流配管部と、
送液配管部の塗料を塗工ヘッド部に送る流路の開閉、及び送液配管の塗料を還流配管部に還流させる流路の開閉を切替える流路切替部と、
還流配管部における塗料の給液部への還流を調整する送液圧力調整器と、
給液部、流路切替部、及び送液圧力調整器を駆動制御する制御部と、
送液配管部の圧力を検出する圧力センシング部と、を備える塗工装置によって間欠塗工塗膜を形成する塗工システムであって、
間欠塗工における非塗工時から塗工時へと変化する際、圧力センシング部で検出した非塗工時と塗工時の圧力差を算出し、塗工時の圧力が非塗工時の圧力よりも高い場合には非塗工時の圧力が高くなるように、塗工時の圧力が非塗工時の圧力よりも低い場合には非塗工時の圧力が低くなるように、制御部により、送液圧力調整器をフィードバック制御することを特徴とする。
【0018】
本発明の他の態様に係る塗工システムは、
塗料の供給源となる給液部と、
給液部から供給される塗料を送る送液配管部と、
送液配管部から送られる塗料を塗布する塗工ヘッド部と、
送液配管部の塗料を給液部に還流させる還流配管部と、
送液配管部の塗料を塗工ヘッド部に送る流路の開閉、及び送液配管の塗料を還流配管部に還流させる流路の開閉を切替える流路切替部と、
還流配管部における塗料の給液部への還流を調整する送液圧力調整器と、
給液部、流路切替部、及び送液圧力調整器を駆動制御する制御部と、
送液配管部のうち、流路切替部よりも上流側で、且つ流路切替部に近い位置に設けられ、送液配管部の圧力を検出する圧力センシング部と、を備える塗工装置によって間欠塗工塗膜を形成する塗工システムであって、
間欠塗工における非塗工時から塗工時へと変化する際、圧力センシング部で検出した非塗工時と塗工時の圧力差が小さくなるように、制御部により、給液部をフィードバック制御することを特徴とする。
【0019】
本発明の他の態様に係る塗工システムは、
塗料の供給源となる給液部と、
給液部から供給される塗料を送る送液配管部と、
送液配管部から送られる塗料を塗布する塗工ヘッド部と、
送液配管部の塗料を給液部に還流させる還流配管部と、
送液配管部の塗料を塗工ヘッド部に送る流路の開閉、及び送液配管の塗料を還流配管部に還流させる流路の開閉を切替える流路切替部と、
還流配管部における塗料の給液部への還流を調整する送液圧力調整器と、
給液部、流路切替部、及び送液圧力調整器を駆動制御する制御部と、
送液配管部のうち、流路切替部よりも上流側で、且つ流路切替部に近い位置に設けられ、送液配管部の圧力を検出する圧力センシング部と、を備える塗工装置によって間欠塗工
塗膜を形成する塗工システムであって、
間欠塗工における非塗工時から塗工時へと変化する際、圧力センシング部で検出した非塗工時と塗工時の圧力差が小さくなるように、制御部により、流路切替部をフィードバック制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、間欠塗工における非塗工時から塗工時へと変化する際、圧力センシング部で検出した非塗工時と塗工時の圧力差が小さくなるように、給液部、流路切替部、及び送液圧力調整器の少なくとも一つをフィードバック制御することで、間欠塗工の塗布膜厚を平坦化し、積層、捲回することができる。また、電極間でスムースなリチウムイオンの享受が可能となり、電池性能が向上させ、且つ電池内でのショートなどを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】塗工装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、一定のスリットから塗料を吐出し所望の厚みの間欠塗工塗膜を形成するようなスリットダイ方式で均一な膜厚形状を得るシステムで、塗工時、非塗工時に、塗料を送液する送液配管部の圧力を測定した圧力値を用いて制御コンピュータ部で計算し、その結果をコントローラ部にフィードバックし、コントローラ部によって制御される給液部、流路切替部、又は送液圧力調整器装置によって、塗布、非塗布の切り替え時、送液配管内圧力を平坦化することを特徴とするシステムによって塗工を行なうものである。
本実施形態では、特にリチウムイオン電池における電極部に塗布を行なう場合に使用されるため、リチウムイオン二次電池電極塗布を例にして説明する。
【0024】
本実施形態における塗工装置について説明する。
塗工装置は、給液部1と、流路切替部2と、塗工ヘッド部3と、送液配管部4と、圧力センシング部5と、制御コンピュータ部6と、コントローラ部7と、送液圧力調整器8と、を備えている。
給液部1は、塗料供給タンク1aと、送液ポンプ1bと、を備えている。また、送液配管4は、塗料を塗工ヘッド部3に送る塗工側配管4aを備えている(流路切替部2よりも下流側)。また、送液配管4には、塗料を給液部1の塗料供給タンク1aに還流させる還流配管4bが連通されている。
【0025】
給液部1は、前述したように、主に、塗料供給タンク1a、送液ポンプ1bから成っている場合が多く、個々を接続して使用したり、一つの装置でタンクとポンプを兼ねていたりするものもある。
【0026】
塗料供給タンク1aは、塗布送液塗料量に対し、不足ない十分な容量があればよく、容量は特に規定されるものではない。また、タンク中の塗料中の無機成分の沈降防止や分散状態の確保のため、攪拌翼を設けることも可能である。また、必要に応じタンク内を減圧したり、加圧したりし、脱泡、送液補助とすることもある。また、タンク内壁面と塗料の抵抗を下げ、流動性をよくするため、内面をフッ素加工や鏡面加工しても構わない。
【0027】
送液ポンプ1bは、モーノポンプ、ダイヤフラムポンプ、サインポンプ、ベローズポンプ、チューブフラムポンプ、プランジャポンプ、シリンジポンプなど、塗料粘度と吐出量、脈動、摺動異物等の特性に合わせ、適宜選択するとよい。一回転あたりの吐出量は、一定時間内に塗布する量、すなわち塗布幅、塗布厚み、塗布速度により決定され、回転数が送液ポンプの時間あたりの回転数の規格内であれば、制限されることはない。但し、可能な限り規格内で運転し適切な吐出量を選択するとよい。
【0028】
流路切替部2は、ダイヤフラムバルブ、サンプリングバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ、チャッキバルブ、シリンジバルブなどの機構で流路を遮断し、他方向に流路を変更できる切替可能なバルブであれば選択は可能である。もちろん、複数の流路に対し、同時開放、同時遮断もできるように、各バルブは単独で制御され、その制御は、制御コンピュータ部6、コントローラ部7を通じて制御される。
【0029】
塗工ヘッド部3は、前述したようにスロットダイ方式であり、その際の、ヘッドの刃先形状、マニホールド形状、マニホールド容量、ヘッド内面の鏡面度、シム形状、供給口径、供給位置は、塗料を塗布、非塗布部に間欠塗工可能であれば、限定されるものではない。
但し、供給位置に関しては、塗布幅によって適宜選択するとよいが、基本的には、幅方向の圧力ムラすなわち塗布ムラを軽減させる場合、センター部より供給する場合が好ましい。
【0030】
送液配管部4は、送液条件に合わせ配管材質、内面形状、内面コーティングなどを適宜選択するとよい。もちろん、配管内径、配管長についても同様である。
【0031】
圧力センシング部5は、塗布時の送液圧力をセンシングし、必要なモードに変換し、データロガーなどを通じ、制御コンピュータ部6にデータ送信する。
圧力をセンシングする部分は、得られた圧力を電圧、電流などに変換し、制御コンピュータに送る圧力トランスデューサーなどを用いるとよい。
また、送液配管内圧力を測定する位置は、塗布時、非塗布時、両方の場合の配管圧力を検知することができれば、特段の位置は限られたものではないが、流路切替部2に近い場所(例えば流路切替部2の直前など)に設置するほうが、流路切替時の圧力変動を検知しやすいため、圧力変動を極力おさえることができ、膜厚の平坦化に効果的である。
【0032】
制御コンピュータ部6は、圧力センシング部5で測定された塗布時の送液圧力値と、制御コンピュータ部6内部に持つデータベースより、塗布時と非塗布時の送液圧力との差圧を換算し、その差圧分を補正する方法と制御量をコントローラに送信する。
制御コンピュータ部6での換算に関しては、塗料粘度、固形分、粘弾性等の塗料性状と、配管、バルブでの圧力損失、ポンプ回転数変化に応じた吐出量と圧力変化やバルブ開閉タイミング等と圧力上昇傾斜等、送液圧力調整器の調整量と塗料流量、配管内圧力への影響相関の情報がインプットされており、塗料粘度など必要な可変な必要情報を入力しておくと塗布時及び非塗布時に測定された圧力から制御コンピュータ部6で計算し、計算結果をコントローラ部7にアウトプットして送液圧力を制御する。
【0033】
コントローラ部7は、制御コンピュータ部6で計算された送液配管圧力補正のために、効果的な装置に対し働きかけ、必要な変化量分だけ動かす作動機構である。
すなわち、送液圧力に影響を及ぼす部分に対し結線され、それを制御することができるようにシステムを組んでいる。例えば、ポンプ回転数、配管流量調整バルブ開度調整、流路切替バルブ開閉タイミングなどである。もちろん、圧力補正時、一箇所以上の部分を同時に、又は時間をずらして作動してもよい。
【0034】
例えば、塗布時の送液配管内圧力が、非塗布時の送液配管内圧力より高い場合、非塗布時の配管内圧力を上げなければならない。そこで、コントローラ部7は、効果的な還流側配管4bに具備した送液圧力調整器8によって配管内圧力を上げるよう指示する。送液圧力調整器8への指示は、配管流量調整器やダイヤフラム弁などを使用し、還流側流量を規制し圧力を上げるようにしている。
【0035】
逆に、塗布時の送液配管内圧力が非塗布時の送液配管内圧力より低い場合の例として、コントローラ部7は、流路切替部2に指示を出す。非塗布時の還流側配管4bに流れるようになっている状態から、塗布時の塗工側配管4aに流れるように流路切替部2が流路を切り替える際、一時的に、塗工側配管4a、還流側配管4b両方に通液するように開とし、送液配管内圧力を低下させ、塗工時の配管内圧力になるよう調整し、還流側配管に通じる切替弁を閉とするといったこともできる。
【0036】
送液圧力調整器8は、制御コンピュータ部6で計算され、主に非塗布時の還流側配管4bに具備された装置であり、非塗布時に、コントローラ部7で指示された制御機構を有していればよい。
例えば、前述したようなバルブ等と同じ原理で流量をコントロールしたり、配管径変動装置などを具備してもよい。さらには、リークバルブを設け、一定圧力以上になった場合は、系外に塗料を放出し送液圧力を安定化させることもできる。また、迂回流路を設け、その迂回流路側に加圧装置を具備したりしてもよい。
【実施例1】
【0037】
以下、実施例1〜3について説明する。
(実施例1)
先ず、塗料の作製、及び基材について説明する。
電池電極用塗料として、下記の正極塗料を準備した。
活物質として、LiMn2O4(三井金属製):90質量部、導電材:アセチレンブラック(DENKA製):5質量部、バインダー:PVDF(クレハ製):5質量部、さらに溶剤として、NMPを混合し、固形分50%とした塗料を作製した。基材は20μm厚みのアルミニウム箔(日本製箔製)を使用した。
【0038】
次に、装置、及び製造方法について説明する。
上記で作製した塗料用い、塗布部の平均膜厚(dry)が100μmになるようにし、塗布ヘッド開口厚み1.0mmで、塗布部500mm、非塗布部100mmとなる間欠塗布を行った。図1に示すように、30L入る塗料タンク1aに、送液ポンプ1b(モーノポンプ:ヘイシン製)をつなぎ、呼び径1Sの送液配管5を約1m長でつなぎ、流路切替部2(三方切替バルブ:コガネイ製)に接続した。ここから、2方向に分かれて、塗工側配管4aとして呼び径1S配管を用いて塗工ヘッド3としてのスリットダイに接続した。また、還流側配管4bには、呼び径1.5S配管と送液圧力調整器8(コガネイ製)を設置した。
【0039】
このときの送液配管4の圧力をセンシングする圧力センシング部5を流路切替部2のすぐ上流側に設置し、非塗布時から塗布時に切り替わる際、非塗布時と塗布時の送液配管4の圧力値を測定したところ、非塗布時の送液配管4の圧力が塗布時の送液配管4の圧力より小さかった。そのため、非塗布時と塗布時の送液圧力が一致するように、制御コンピュータ部6で塗料粘度、塗料密度、配管径、配管長、流体摩擦係数などから計算させ、その結果からコントローラ部7を経由し還流側配管4bの送液圧力調整器8で非塗布時の流量を制御し、非塗布時の送液配管圧力を上げた。このような送液配管圧力を平坦化するシステムを作動させた結果、非塗布から塗布切替時の送液配管圧力の最大圧力差が8KPaであった。この状態を繰り返し、リチウムイオン電池電極用間欠塗工塗膜を得た。
【0040】
(実施例2)
この実施例2では、前述した実施例1と同じ塗料、基材を用い、同様の塗工操作を行い、間欠塗工塗膜を得た。
但し、非塗布時から塗布時に切り替わる際、非塗布時と塗布時の送液配管4の圧力値を測定したところ、非塗布時の送液配管4の圧力が塗布時の送液配管4の圧力より小さいため、非塗工時から塗工時に切替の際、制御コンピュータの計算結果より、コントローラ部7は、非塗工時の送液吐出量を給液部1の給液ポンプ1aの回転数を上げることで増すよう指示した。そして、非塗工時の送液配管内圧力を上げてから塗工時に切り替えることによって送液配管圧力を平坦化するシステムを実行させた。その際、非塗布から塗布切替時の最大送液圧力差は、15KPaであった。
【0041】
(実施例3)
この実施例3では、前述した実施例1と同じ塗料、基材を用い、同様の塗工操作を行い、間欠塗工塗膜を得た。
但し、非塗布時から塗布時に切り替わる際、非塗布時と塗布時の送液配管4の圧力値を測定したところ、非塗布時の送液配管4の圧力が塗布時の送液配管4の圧力より小さかったため、コントローラ部7は、流路切替部2のバルブ開閉タイミングを、非塗工から塗工に切り替わる際、塗工側配管4a、還流側配管4bへ通じるバルブを瞬間的に両方閉とし、配管内圧力を高めた。それから、塗工側配管4a側のバルブを開とするよう調整し、送液配管圧力が平坦化するシステムを実行させた。具体的には、非塗布から塗布に切り替わる際、塗布側配管4b側のバルブを開にする1ms前、還流側配管4b側バルブを閉とした。そのときの非塗布から塗布切替時の最大送液圧力差は、12KPaであった。
【0042】
(比較例)
この比較例では、実施例1と同じ塗料、基材を用い、同様の塗工を実施して間欠塗工塗膜を得たが、非塗布時と塗布時の送液圧力を測定したが、その圧力値から制御コンピュータ部6で計算させず、コントローラ部7も作動させず、送液圧力を平坦化させるシステムを実行させなかった。
そのときの、非塗布時と塗布時の送液差圧は310KPaであった。
その状態で間欠塗工を実施し、塗工膜を得た。
【0043】
(評価項目、評価方法)
各実施例、及び比較例について、各々、接触式連続膜厚測定器(アンリツ製)を用い、塗布流れ方向に連続して膜厚測定を行った。
その際、間欠塗布流れ方向の中央部の塗布厚みを平均膜厚として、塗布始め部の膜厚厚みとの差を計算した。なお、各結果は、3点測定し平均値から膜厚差を計算し表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果が示すように、本実施形態の送液圧力を平坦化するシステムを具備、作動させることにより、間欠塗布時の塗布膜厚ムラが小さくなり、塗布面内膜厚を平坦化させることが明らかとなった。
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0046】
1 給液部
1a 塗料供給タンク
1b 送液ポンプ
2 流路切替部
3 塗布ヘッド部
4 送液配管部
4a 塗工側配管
4b 還流側配管
5 圧力センシング部
6 制御コンピュータ部
7 コントローラ部
8 送液圧力調整器
図1