(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する場合がある。
【0013】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた感光層と、を有する。
下引層は、結着樹脂、金属酸化物粒子、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物、及びイソシアネート化合物を含む組成物であって、電子受容性化合物が金属酸化物粒子100質量部に対して1質量部以上5質量部以下で含む組成物の硬化膜で構成されている。
そして、このような組成物の硬化膜で構成された下引層において、示差熱/熱重量同時測定(TG/DTA測定)における0℃から230℃までの重量変化量が0.05質量%以上0.8質量%以下である。
【0014】
ここで、電子写真感光体においては、下引層に金属酸化物粒子を分散させることによって、例えば、下引層と感光層(例えば電荷発生層)との界面でのブロッキング能が向上し、また抵抗調整機能が調節されて、カブリの発生が抑えられ、かつ電気特性が安定化し、繰り返し使用による濃度低下が抑えられると考えられる。
そして、このような電子写真感光体の下引層の構成において、金属酸化物粒子と共に、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物を金属酸化物粒子100質量部に対し1質量部以上5質量部以下と多量に含有させると、例えば、電子写真感光体の下引層において、アミノ基を有するカップリング剤と導電性支持体の酸化還元反応による導電性支持体の腐食の進行が抑制され、その結果、前画像の履歴が残ることで生じる残像現象(ゴースト)の発生が抑制されると考えられる。
しかしながら、このような利点を有する下引層を持つ電子写真感光体では、残留電位が上昇することがある。
【0015】
そこで、本実施形態に係る電子写真感光体では、上記組成物の硬化膜で構成された下引層において、重量変化量を上記範囲とすることにより、残留電位の上昇が抑制される。
その理由は定かではないが、以下に示す理由と考えられる。
【0016】
まず、残留電位の上昇は、反応残留物(例えば未反応の電子受容性化合物や、イソシアネート化合物等)が下引層中に、過少・過剰に存在することにより、下引層の抵抗値が適切な範囲とならない、又は経時で抵抗値が変動するために生じると考えられる。
つまり、残留電位の上昇は、下引層において、金属酸化物粒子と電子受容性化合物との反応(又は配位)やイソシアネート化合物の反応が過剰に進行したり、十分反応が進行していないことにより生じると考えられる。
そして、下引層の重量変化量が上記範囲とすることは、下引層において、金属酸化物粒子と電子受容性化合物との反応(又は配位)やイソシアネート化合物の反応が適度に進行し、反応残留物(例えば未反応の電子受容性化合物や、イソシアネート化合物等)が下引層中に適度に存在した状態を意味していると考えられる。
つまり、下引層の重量変化量が上記範囲とすることにより、下引層の抵抗値が適切な範囲となり、経時で抵抗値が変動し難い状態となると考えられる。
【0017】
このため、本実施形態に係る電子写真感光体では、残留電位の上昇が抑制されると考えられる。
また、作用機構は明らかではないが、電子受容性化合物としてヒドロキシアントラキノン構造を有する材料を用いることで、より残留電位の上昇が抑制されると考えられる。
そして、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置(プロセスカートリッジ)でばm電子写真感光体の残留電位の上昇に起因する画像欠陥(例えば画像濃度の経時変化等)が抑制された画像が得られる。
【0018】
ここで、本実施形態に係る電子写真感光体において、下引層の重量変化量は0.05質量%以上0.8質量%以下であるが、望ましくは0.1質量%以上0.75質量%以下、より望ましくは0.15質量%以上0.6質量%以下である。
【0019】
下引層の重量変化量は、示差熱/熱重量同時測定(TG/DTA測定)における0℃から230℃までの重量変化量、つまり「230℃での重量/0℃での重量」である。
具体的には、下引層の重量変化量は、示差熱/熱重量同時測定装置を用い、標準試料:アルミナ、昇温条件:10℃/minで測定して、下引層の重量変化量を求める。
【0020】
なお、電子写真感光体から、重量変化量測定用の下引層試料を作製する方法は、以下の通りである。
例えば、電子写真感光体から、カッター等により、目的とする重さの下引層を採取し、これを下引層試料とする。
【0021】
下引層の重量変化量の調整方法としては、下引層を形成する際の加熱乾燥条件を調整する方法が挙げられる。具体的には、加熱乾燥温度、加熱乾燥時間、加熱乾燥湿度等の加熱乾燥条件を調整して、下引層の重量変化量の調整することがよい。
特に、金属酸化物粒子と電子受容性化合物との反応(又は配位)は、空気中の水分に阻害され易いことから、加熱乾燥湿度を低減(例えば湿度50RH%以下)した環境下で、加熱乾燥温度、加熱乾燥時間を調整して、下引層を形成することで、下引層の重量変化量が上記範囲に制御し易く、好適である。
【0022】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について詳細に説明する。
【0023】
図1は本実施形態に係る電子写真感光体の一部の断面を概略的に示している。
図1に示した電子写真感光体1は、例えば、電荷発生層5と電荷輸送層6とが別個に設けられた機能分離型の感光層3を備え、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。
なお、本明細書において、絶縁性とは、体積抵抗率で10
12Ωcm以上の範囲を意味する。一方、導電性とは、体積抵抗率で10
10Ωcm以下の範囲を意味する。
以下、感光体1の各要素について説明する。
【0024】
−導電性支持体−
導電性支持体2としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。
導電性支持体2の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0025】
導電性支持体2として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0026】
−下引層−
下引層4は、少なくとも、結着樹脂、金属酸化物粒子、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物、及びイソシアネート化合物を含む組成物であって、電子受容性化合物が金属酸化物粒子100質量部に対して1質量部以上5質量部以下で含む組成物の硬化膜で構成されている。
つまり、下引層4としては、例えば、結着樹脂及イソシアネート化合物の硬化物(架橋物)中に、金属酸化物粒子と目的とする量の電子受容性化合物とが分散して構成されている。
なお、下引層4は、必要に応じてその他の材料を含んでもよい。
【0027】
(結着樹脂)
下引層4に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの高分子化合物、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが用いられる。
【0028】
結着樹脂の含有量としては、例えば、下引層全体に対し、5質量%以上60質量%以下の範囲が挙げられ、10質量%以上55質量%以下であることが望ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより望ましい。
【0029】
(金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化ジルコニウム等が挙げられ、2種以上混合して用いてもよい。
金属酸化物粒子の体積平均粒径としては、例えば50μm以上200μm以下が挙げられ、60μm以上180μm以下であることが望ましく、70μm以上120μm以下であることが望ましい。
【0030】
なお、上記金属酸化物粒子の体積平均粒径の測定は、例えばレーザ回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定を行う。測定法としては、分散液となっている状態の試料を固形分で2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待ったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とする。
【0031】
下引層4中に含まれる金属酸化物粒子の含有量としては、例えば、下引層全体に対し、2.5質量%以上の範囲が挙げられ、10質量%以上70質量%以下の範囲であることが望ましく、30質量%以上50質量%以下の範囲であることが望ましい。
【0032】
金属酸化物粒子は、表面処理剤により表面処理されていることがよい。この表面処理剤としては、アミノ基を有するカップリング剤が好適に挙げられる。
アミノ基を有するカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤などが挙げられる。特に、抵抗を調整することでカブリが抑制される表面処理剤として、シランカップリング剤(特にアミノ基を有するシランカップリング剤)が挙げられる。
【0033】
シランカップリング剤は、有機シラン化合物(ケイ素原子を含有する有機化合物)であり、具体的には、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0034】
金属酸化物粒子が、カップリング剤によって表面処理されているかの確認は、FT−IR、ラマン分光法、XPSなどによる分子構造解析よって行われる。
【0035】
金属酸化物粒子の表面処理の方法は、特に限定されないが、例えば乾式法又は湿式法が挙げられる。
乾式法にて表面処理を施す場合には、例えば、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接表面処理剤を滴下するか、又は有機溶媒に溶解させた表面処理剤を滴下し、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させる。滴下又は噴霧は、例えば溶剤の沸点以下の温度で行われる。滴下又は噴霧の後、さらに100℃以上に加熱して焼き付けを行ってもよい。
【0036】
湿式法としては、例えば、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌し、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、表面処理剤溶液を添加し攪拌又は分散したのち、溶剤を除去する。溶剤除去方法としては、例えば、ろ過又は蒸留が挙げられる。溶剤除去後には、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。湿式法においては表面処理剤を添加する前に金属酸化物粒子含有水分を除去してもよく、その例としては、例えば、表面処理剤溶液に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、又は溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0037】
金属酸化物粒子100質量部の表面に付着した表面処理剤の量(以下「表面処理量」と称する場合がある)は、例えば0.5質量部以上3質量部以下の量が挙げられ、0.5質量部以上2.0質量部以下であることが望ましく、0.75質量部以上1.30質量部以下であることがより望ましい。
上記表面処理量(すなわち、金属酸化物粒子に付着した表面処理剤の量)を測定する方法としては、例えば、FT−IR、ラマン分光法、XPSなどによる分子構造解析する方法が挙げられる。
【0038】
(電子受容性化合物)
電子受容性化合物は、前記の通り、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物である。ここで、「アントラキノン構造を有する化合物」は、具体的には、アントラキノン及びアントラキノン誘導体から選択される少なくとも1種であり、さらに具体的には、下記一般式(1)で表される化合物であることがよい。
【0040】
一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水酸基、メチル基、メトキシメチル基、フェニル基、アミノ基を表し、m及びnは、それぞれ独立に0以上4以下の整数を表す。
なお、一般式(1)中、m及びnがいずれも0である化合物がアントラキノンであり、一般式(1)中、m及びnの少なくとも一方が1以上4以下の整数である化合物がアントラキノン誘導体である。すなわちアントラキノン誘導体は、アントラキノンが有する水素原子の少なくとも1つが、水酸基、メチル基、メトキシメチル基、フェニル基、アミノ基等の置換基によって置換された化合物を意味する。
【0041】
電子受容性化合物としては、上記の中でも特に、例えば、上記一般式(1)において、m及びnがいずれも0であるアントラキノン、又は、R
1が水酸基であり、mが1以上3以下であり、かつ、nが0であるヒドロキシアントラキノンが好適に挙げられる。
電子受容性化合物の具体例としては、例えば、アントラキノン、プルプリン、アリザリン、エチルアントラキノン、アミノヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
【0042】
下引層4がアントラキノン構造を有する電子受容性化合物を含有していることの確認は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、FT−IR、ラマン分光法、XPSなどの分析方法によって行われる。
【0043】
下引層4中に含まれる電子受容性化合物の含有量としては、下引層4に含まれる金属酸化物粒子100質量部に対し、1質量部以上5質量部以下であり、2質量部以上4質量部以下であることが望ましい。
【0044】
下引層4中に含まれる金属酸化物粒子と電子受容性化合物の含有比率は、NMRスペクトル、XPS、原子吸光分析法、電子線マイクロアナライザなどの分析方法によって確認される。
【0045】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物は、硬化剤(架橋剤)として機能する材料であり、具体的には、イソシアネート化合物としては、特に制限はないが、ブロック化イソシアネート化合物が挙げられる。
ブロック化イソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物にブロック化剤となる活性水素を有する化合物を反応させて得られるイソシアネートが挙げられる。
具体的には、ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4‘ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
一方、ブロック化剤としては、例えば、カプロラクタム等のラクタム類、メチルエチルケトオキシムやアセトオキシム等のオキシム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸ジエチル等のβ-ジケトン類等が挙げられる。
なお、ブロック化イソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック化剤でマスクされているため、塗工液が経時でゲル化し増粘するのが抑えられ、作業性に優れる。
イソシアネート化合物の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であることがよく、0.5質量部以上12質量部以下であることが望ましい。
【0046】
(その他添加物)
下引層4には、表面粗さ調整のために樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。
【0047】
下引層4には、イソシアネート化合物(硬化剤)と共に、硬化触媒を併用してもよい。
硬化触媒としては、一般に用いられている公知の材料が挙げられ、その中でも酸触媒、アミン系触媒、金属化合物系触媒から選択することが望ましい。なお、ブロックイソシアネート化合物を用いた場合にはアミン系触媒又は金属化合物系触媒を用いることが望ましい。金属化合物系触媒としては、例えば、酸化第一錫、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ナフテン酸亜鉛、三塩化アンチモン、カリウムオレート、ナトリウムO−フェニルフェネート、硝酸蒼鉛、塩化第二鉄、テトラ−n−ブチルチン、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、コバルト2−エチルヘキソエート、第二2−エチルヘキソエート鉄等が挙げられる。
硬化触媒の添加量は、イソシアネート化合物(硬化剤)に対して0.0001質量%以上0.1質量%以下が望ましく、0.001質量%以上0.01質量%以下がより望ましい。
【0048】
下引層4は、表面粗さ調整のために表面を研磨されていてもよい。研磨方法としては、例えば、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0049】
(下引層の形成)
下引層4の形成の際には、上記組成物の成分を溶媒に加えた塗布液(下引層形成用の塗布液)が使用される。
溶媒としては、例えば有機溶剤が挙げられ、具体的には、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;等が挙げられる。上記溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよく、特に限定されないが、上記結着樹脂を溶解する溶剤を用いることがよい。
【0050】
下引層形成用の塗布液に用いる溶媒の量は、上記結着樹脂が溶解する量であれば特に限定されないが、例えば、結着樹脂1質量部に対し、0.05質量部以上200質量部以下が挙げられる。
【0051】
下引層形成用の塗布液中に金属酸化物粒子を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機等が挙げられる。また、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などの方法を用いてもよい。
得られる下引層4の体積抵抗率を後述の規定の範囲内とするために、適切な分散方法を選択することが望ましく、具体的には、ガラスビーズを用いたサンドミル、ボールミルなどで分散することが好適である。ガラスビーズの粒径は、用いる金属酸化物粒子や結着樹脂などの成分に応じて調節され、具体的には、0.1mm以上10mm以下の粒径が挙げられる。
【0052】
下引層形成用の塗布液を導電性支持体2上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
そして、下引層形成用の塗布液を導電性支持体2上に塗布した後、加熱乾燥により塗布液中の溶剤を除去すると共に、硬化してした下引層を形成する。
【0053】
(下引層の物性)
下引層4の厚さは、10μm以上が望ましく、12μm以上がより望ましく、18μm以上40μm以下がさらに望ましい。
【0054】
下引層4の体積抵抗率は、残留電位の上昇を抑える観点から、交流インピーダンス法による測定において、1.0×10
8Ωm以上の範囲であることがよく、1.0×10
8Ωm以上1.0×10
11Ωm以下の範囲であることが望ましく、2.0×10
8Ωm以上1.0×10
10Ωm以下の範囲であることがより望ましい。
【0055】
下引層4の体積抵抗率の詳細な測定方法は、以下の通りである。
まず、下引層4のインピーダンスを測定する。インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプ等の導電性支持体を陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定する。この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで下引層4の体積抵抗率を得る。
【0056】
なお、電子写真感光体から、体積抵抗率測定用の下引層試料を作製する方法は、以下の通りである。
例えば、下引層を被覆している電荷発生層、電荷輸送層等の塗膜をアセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等の溶媒を用いて除去し、露出された下引層上に真空蒸着法やスパッタ法等により金電極を装着することで、体積抵抗率測定用の下引層試料とする。
【0057】
下引層4の体積抵抗率を上記範囲内に調整する方法としては、例えば、下引層の重量変化量を上記範囲とする方法が挙げられる。
その他の方法としては、例えば、金属酸化物粒子の添加量や粒径を調整したり、下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の分散方法を変更したりする方法が挙げられる。
金属酸化物粒子の粒径が大きくなるにつれ、下引層4の体積抵抗率は低下する傾向にある。また、金属酸化物粒子の添加量を多くするにつれ、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。
また、下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の分散性を向上させると、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。具体的には、下引層形成用塗布液の分散処理時間を長くするにつれ、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。
【0058】
−中間層−
電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引層4上に必要に応じて中間層(図示せず)をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などがある。
中間層の形成は、例えば上記結着樹脂を溶媒に溶解させた塗布液を用いる。塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の公知の方法が用いられる。
中間層の厚さは例えば0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。
【0059】
−電荷発生層−
電荷発生層5は、例えば、電荷発生材料が結着樹脂中に分散して形成されている。
電荷発生材料としては、例えば、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が使用され、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶等が使用される。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が使用される。これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して使用される。
【0060】
電荷発生層5における結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いられる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、使用する材料にもよるが例えば10:1から1:10の範囲である。
【0061】
電荷発生層5の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた塗布液が使用される。
電荷発生材料を結着樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散手段としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や、液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0062】
このようにして得られる電荷発生層形成用の塗布液を下引層4上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
電荷発生層5の厚さは、望ましくは0.01μm以上5μm以下の範囲に設定される。
【0063】
−電荷輸送層−
電荷輸送層6は、例えば、電荷輸送材料を結着樹脂中に分散して形成される。
かかる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種または2種以上を組み合わせて使用する。
【0064】
電荷輸送層6における結着樹脂としては、例えば、ビフェニル共重合型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールAタイプ又はビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられ、単独又は2種以上混合して用いる。
【0065】
また、電荷輸送層6が電子写真感光体の表面層(感光層の導電性支持体2から最も遠い側に配置される層)である場合、電荷輸送層6に潤滑性粒子(例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子)を含有させてもよい。これらの潤滑性粒子は、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
さらに、電荷輸送層6が電子写真感光体の表面層である場合、電荷輸送層6にフッ素変性シリコーンオイルを添加してもよい。フッ素変性シリコーンオイルとしては、例えばフルオロアルキル基を有する化合物が挙げられる。
【0067】
なお、電荷輸送層6中における電荷輸送材料と結着樹脂との質量比としては、例えば10:1から1:5の範囲が挙げられる。すなわち、電荷輸送層6全体に対する電荷輸送材料の含有量としては、例えば17質量%以上91質量%以下の範囲が挙げられる。
【0068】
電荷輸送層6は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用の塗布液を用いて形成される。
上記溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合して使用される溶剤は、混合溶剤として結着樹脂を溶解するものであれば、いかなるものでもよい。
【0069】
上記電荷輸送層形成用の塗布液中に潤滑性粒子を分散させるための分散方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等のメディアレス分散機を利用する方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0070】
電荷輸送層6の形成方法としては、例えば、下引層4及び電荷発生層5が形成された導電性支持体2の電荷発生層5上に、上記電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、電荷発生層6を形成する方法が挙げられる。
上記電荷輸送層形成用の塗布液を電荷発生層5上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
そして上記塗布液を電荷発生層5上に塗布した後、加熱乾燥工程により塗布液中の溶剤を除去する。電荷輸送層6の膜厚としては、例えば5μm以上50μm以下の範囲が挙げられる。
【0071】
画像形成装置中で発生するオゾンや窒素酸化物、又は光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層3を構成する各層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
【0072】
なお、本実施形態の感光体1は、電荷輸送層6が最表面層であるが、電荷輸送層上にさらに保護層が形成された構成であってもよい。
また、本実施形態の感光体1は、感光層3として機能分離型のものであるが、感光層3が単層型(電荷発生能・電荷輸送能を持つ感光層)である構成であってもよい。
【0073】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置について説明する。
−第1実施形態−
図2は、第1実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。
図2に示す画像形成装置200は、例えば、上記実施形態の電子写真感光体1と、電源209に接続され、電子写真感光体1を帯電させる帯電装置208(帯電手段)と、帯電装置208により帯電された電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成する露光装置210(静電潜像形性手段)と、露光装置210により形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211(現像手段)と、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212(転写手段)と、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213(トナー除去手段)と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215(定着手段)と、を備える。
また、
図3に示す画像形成装置200は、電子写真感光体表面のトナー像が転写された後、電子写真感光体表面に残留した電荷を除去する除電手段を備えない、イレーズレス方式の画像形成装置である。
【0074】
帯電装置208は帯電部材を有しており、例えば、感光体1を帯電させる際には帯電部材に直流電圧が印加される。電圧の範囲としては、直流電圧を印加する場合、感光体帯電電位に応じて正又は負の50V以上2000V以下が望ましく、100V以上1500V以下がより望ましい。
交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400V以上1800V以下、望ましくは800V以上1600V以下、さらに望ましくは1200V以上1600V以下が望ましい。交流電圧の周波数は50Hz以上20000Hz以下、望ましくは100Hz以上5000Hz以下である。
【0075】
帯電部材としては、例えば、ローラ、ブラシ、フィルム等が挙げられる。その中でもローラ状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」と称する場合がある)としては、例えば電気抵抗が10
3Ω以上10
8Ω以下の範囲に調整された材料から構成されるものが挙げられる。また帯電ローラは、単層でもよく、複数の層から構成されていてもよい。
帯電部材として帯電ローラを用いる場合、感光体1に接触する圧力としては、例えば、250mgf以上600mgf以下(2.45mN以上5.88mN以下)の範囲が挙げられる。
【0076】
帯電部材を構成する材質としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等で構成されるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合したもの等が挙げられる。
さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の手法により、積層して用いてもよい。
【0077】
帯電部材として帯電ロールを用いる場合、帯電ロールを感光体1の表面に接触させることにより、帯電手段が駆動手段を有していなくても感光体1に従動して回転するが、帯電ロールに駆動手段を取り付け、感光体1と異なる周速度で回転させてもよい。
なお、帯電部材は、接触帯電方式の帯電部材に限られず、コロトロン、スコロトロン等の非接触帯電方式の帯電部材であってもよい。
【0078】
露光装置210としては、公知の露光手段が用いられる。具体的には、例えば、半導体レーザ、LED(Light Emitting Diode)、液晶シャッター等の光源により露光する光学系装置等が用いられる。書きこみ時の光量としては、例えば、感光体表面上で0.5mJ/m
2以上5.0mJ/m
2の範囲が挙げられる。
【0079】
現像装置211としては、例えば、キャリアとトナーとを含む現像剤が付着した現像ブラシ(現像剤保持体)を静電潜像保持体に接触させて現像させる二成分現像方式の現像手段、導電ゴム弾性体搬送ロール(現像剤保持体)上にトナーを付着させ静電潜像保持体にトナーを現像する接触式一成分現像方式の現像手段等が挙げられる。
トナーとしては、公知のトナーであれば特に限定されない。具体的には、例えば、少なくとも結着樹脂が含まれ、必要に応じて着色剤、離型剤等が含まれたトナーであってもよい。
【0080】
トナーを製造する方法は、特に制約されるものではないが、例えば、通常の粉砕法、分散媒中で作製する湿式溶融球形化法、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法によるトナー製造法等が挙げられる。
【0081】
現像剤がトナーとキャリアとを含む二成分現像剤である場合、キャリアとしては特に制限はなく、例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物などの芯材のみからなるキャリア(ノンコートキャリア)、これら芯材の表面に樹脂層を設けた樹脂コートキャリア等が挙げられる。二成分現像剤では、例えばトナーとキャリアとの混合比(質量比)として、トナー:キャリア=1:100から30:100の範囲が挙げられ、3:100から20:100の範囲であってもよい。
【0082】
転写装置212としては、ローラ状の接触型帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、又はコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
【0083】
トナー除去装置213は、転写工程後の電子写真感光体1の表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体1は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。トナー除去装置213としては、異物除去部材(クリーニングブレード)の他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等が用いられるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが望ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
なお、例えば感光体1の表面にトナーが残留しにくい場合など、残留トナーが問題にならない場合は、トナー除去装置213は設ける必要がない。
【0084】
画像形成装置200の基本的な作像プロセスについて説明する。
まず、帯電装置208が感光体1の表面を、定められた電位に帯電させる。次に、帯電された感光体1の表面を、画像信号に基づいて、露光装置210によって露光して静電潜像を形成する。
【0085】
次に、現像装置211の現像剤保持体上に現像剤が保持され、保持された現像剤が感光体1まで搬送され、現像剤保持体と感光体1とが近接(又は接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像となる。
現像されたトナー像は、転写装置212の位置まで搬送され、転写装置212によって被転写媒体500に直接転写される。
【0086】
次いで、トナー像が転写された被転写媒体500は、定着装置215まで搬送され、定着装置215によってトナー像が被転写媒体500に定着される。定着温度としては、例えば100℃以上180℃以下が挙げられる。
【0087】
一方、トナー像が被転写媒体500に転写された後、転写されずに感光体1に残留したトナー粒子がトナー除去装置213との接触位置まで運ばれ、トナー除去装置213によって回収される。
以上のようにして、画像形成装置200による画像形成が行われる。
【0088】
−第2実施形態−
図3は第2実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。
図3に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体1a,1b,1c,1dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。例えば、感光体1aがイエロー、感光体1bがマゼンタ、感光体1cがシアン、感光体1dがブラックの色の画像をそれぞれ形成する。
また、
図3に示す画像形成装置220は、電子写真感光体表面のトナー像が転写された後、電子写真感光体表面に残留した電荷を除去する除電手段を備えない、イレーズレス方式の画像形成装置である。
【0089】
ここで、画像形成装置220に搭載されている電子写真感光体1a,1b,1c,1dは、それぞれ本実施形態の電子写真感光体である。
電子写真感光体1a,1b,1c,1dはそれぞれ一方向(紙面上は反時計回り)に回転し、その回転方向に沿って帯電ロール402a,402b,402c,402d、現像装置404a,404b,404c,404d、1次転写ロール410a,410b,410c,410d、クリーニングブレード415a,415b,415c,415dが配置されている。現像装置404a,404b,404c,404dはそれぞれトナーカートリッジ405a,405b,405c,405dに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを供給し、また、1次転写ロール410a,410b,410c,410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体1a,1b,1c,1dに接している。
【0090】
さらに、ハウジング400内にはレーザ光源(露光装置)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体1a,1b,1c,1dの表面に照射する。これにより、電子写真感光体1a,1b,1c,1dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニング(トナー等の異物除去)の各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。そして、中間転写ベルト409上にトナー像が転写された後の電子写真感光体1a,1b,1c,1dは、表面の電荷を除去する工程を経ずに次の画像形成プロセスが行われる。
【0091】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、背面ロール408及び支持ロール407によって張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転する。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介して背面ロール408と接するように配置されている。背面ロール408と2次転写ロール413とに挟まれた位置を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406と対向して配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0092】
また、ハウジング400内には被転写媒体を収容する容器411が設けられており、容器411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413とに挟まれた位置、さらには相互に接する2個の定着ロール414に挟まれた位置に順次移送された後、ハウジング400の外部に排出される。
【0093】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよいし、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合、中間転写体の基材を構成する樹脂材料としては、公知の樹脂が用いられる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。さらに、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いてもよい。
【0094】
また、上記実施形態にかかる被転写媒体とは、電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。
また上記実施形態においては、帯電ロール402a,402b,402c,402dは、直流電圧のみを印加する方式が採用される。
【0095】
<プロセスカートリッジ>
図4は、本実施形態の電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジの一例の基本構成を概略的に示している。このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1と共に、電子写真感光体1を帯電させる帯電装置208、露光により電子写真感光体1上に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213、及び露光のための開口部218を、取り付けレール216を用いて組み合わせて一体化したものである。
【0096】
そして、このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成する。
プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1、帯電装置208、現像装置211、トナー除去装置213、及び露光のための開口部218のほかに、電子写真感光体1の表面を露光する露光装置(図示せず)を備えていてもよい。
なお、本実施形態のプロセスカートリッジでは、電子写真感光体1を少なくとも備えていればよい。
【実施例】
【0097】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0098】
[電子写真感光体の作製]
<実施例1>
−下引層の形成−
酸化亜鉛粒子(テイカ社製、体積平均粒径:70nm、比表面積値:15m
2/g)60質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(表面処理剤)として、KBM603(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)を酸化亜鉛粒子100質量部に対し1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧蒸留にて除去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子を得た。
【0099】
シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子100質量部、電子受容性化合物としてアントラキノン1質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)22.5質量部、及びブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)25質量部をメチルエチルケトン142質量部に溶解した溶液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部と、を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.008質量部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)6.5質量部と、を添加し、下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、加熱乾燥温度175℃、加熱乾燥湿度40RH%、加熱乾燥時間20分の条件で加熱乾燥(乾燥硬化)を行い、厚さ15μmの下引層を得た。
【0100】
−電荷発生層の形成−
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用の塗布液を下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0101】
−電荷輸送層の形成−
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)8質量部と、フッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量:30000)0.015質量部と、テトラヒドロフラン4質量部と、トルエン1質量部と、を20℃の液温に保って48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを得た。
【0102】
次に、電荷輸送物質として、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部と、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6質量部と、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.1質量部と、を混合して、テトラヒドロフラン24質量部及びトルエン11質量部を混合溶解して、混合溶解液Bを得た。
【0103】
この混合溶解液Bに4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを加えて攪拌混合した後、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興行株式会社製)を用いて、4900N/cm
2(500kgf/cm
2)まで昇圧しての分散処理を6回繰り返した。ここにフッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL−100 信越化学工業社製)を5ppmとなるように添加し、撹拌して電荷輸送層形成用の塗布液を得た。
【0104】
この塗布液を電荷発生層上に塗布して140℃で25分間乾燥して電荷輸送層を形成し、厚みが32.0μmの電子写真感光体1を得た。
【0105】
<実施例2>
下引層の作製において、電子受容性化合物を5質量部とし、酸化亜鉛微粒子の体積平均粒子径を100nmとした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体2を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥湿度を20RH%に変更した。
【0106】
<実施例3>
下引層の作製において、電子受容性化合物を1質量部とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体3を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥湿度を40RH%、加熱乾燥時間を15分に変更した。
【0107】
<実施例4>
下引層の形成において、電子受容性化合物を5質量部とし、サンドミルによる分散時間を2時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体4を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥温度を185℃、加熱乾燥湿度を40RH%に変更した。
【0108】
<実施例5>
下引層の作製において、電子受容性化合物をプルプリン1質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体5を作製した。
【0109】
<実施例6>
下引層の作製において、電子受容性化合物をプルプリン1質量部とした以外は実施例3と同様の方法で、電子写真感光体6を作製した。
【0110】
<比較例1>
下引層の作製において、電子受容性化合物を2質量部とし、サンドミルによる分散時間を7時間とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体C1を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥温度を165℃に変更した。
【0111】
<比較例2>
下引層の作製において、電子受容性化合物を2質量部とし、サンドミルによる分散時間を3時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体C2を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥温度を195℃、加熱乾燥湿度を10RH%、加熱乾燥時間を40分に変更した。
【0112】
[下引層の重量変化量の測定]
-測定試料の作製-
上記実施例及び比較例の感光体を作製する際に用いた下引層用塗布液をそれぞれアルミプレート上にブレード塗布法により塗布、各例の加熱乾燥条件で加熱乾燥(乾燥硬化)した。この単層膜から約7mgの試料を採取し、これをTG測定用アルミ皿に秤量し、重量減少率測定用とした。
【0113】
-測定方法-
重量変化量の測定にはSIIナノテクノロジー社製「EXSTER TG/DTA 6200」を用いた。
そして、標準物質をアルミナとし、昇温速度10℃/minで30℃から500℃まで測定し、30℃から230℃までの重量変化量(重量減少率)を測定した。実施例および比較例における重量変化量を表1に示す。
【0114】
[下引層の抵抗率の測定]
−測定試料の作製−
上記実施例及び比較例の感光体を作製する際に用いた下引層用塗布液をそれぞれアルミプレート上にブレード塗布法により塗布、各例の加熱乾燥条件で加熱乾燥(乾燥硬化)した。この下引層単層膜について、対向電極として100nmの金電極を真空蒸着法により装着し、抵抗率測定用とした。
【0115】
−測定方法−
インピーダンスの測定には電源としてSI 1287 electrochemical interface(東陽テクニカ製)、電流計としてSI 1260 inpedance/gain phase analyzer(東陽テクニカ製)、電流アンプとして1296 dielectric interface(東陽テクニカ製)を用いた。
インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプを陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定し、この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで体積抵抗率を得た。実施例および比較例における体積抵抗率を表1に示す。
【0116】
[評価]
−残留電位評価−
上記実施例および比較例で得られた感光体の残留電位について、次の測定を行った。
常温常湿下(20℃、40RH%)において、感光体を100rpmで回転させた状態で、スコロトロン帯電器により感光体を−700Vに帯電させ、帯電の1秒後に波長780nmの半導体レーザを用いて10mJ/m
2の光を照射して放電させた。続いて、放電させてから3秒後の感光体に50mJ/m
2の赤色LED光を照射して徐電を行った。そして、徐電から100msec後の感光体の表面の電位Vを測定し、これを残留電位の値とした。
測定後の感光体に露光・帯電・放電・徐電を1000cycle繰り返した後、上記測定を行い、得られた残留電位と初期の残留電位の差を残留電位上昇分とした。
【0117】
−画質評価−
上記実施例および比較例で得られた感光体を、画像形成装置DocuCentre 505aの改造機組み込んだ。そして、本画像形成装置を用いて以下の評価を行った。
高温高湿(28℃、85RH%)及び低温低湿(15℃、10RH%)の環境を10枚の画像形成毎に交互に変更しながら、連続して5万枚の画像形成(A4サイズ)を行った。その後、ゴーストの評価を下記の方法に基づいて行った。
20℃、40%RHの環境下で、ゴースト評価用の画像として15mm角の四角パターンを電子写真感光体の1周分、任意の数だけ印字した後、次のサイクルで全面ハーフトーン画像を印字し、ハーフトーン画像上に浮き出たゴースト画像を以下の基準に基づいて評価した。
評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
◎: 画像内にゴーストが見られない。
○: 画像内にゴーストがわずかに見られる。
△: 画像内にゴーストが見られる。
×: 画像内にひどいゴーストが見られる。
【0118】
【表1】
【0119】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、残留電位の上昇が抑えられていることわかる。
また、本実施例では、比較例に比べ、画質の評価について良好な結果が得られたことがわかる。