特許第6011033号(P6011033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011033
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】信号分離装置及び信号分離方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/00 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   H04L27/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-127172(P2012-127172)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-251856(P2013-251856A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菅井 幸平
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−097103(JP,A)
【文献】 特開2006−005720(JP,A)
【文献】 特開2005−318246(JP,A)
【文献】 特開2004−153466(JP,A)
【文献】 特開平11−088450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L CiNii
27/00−27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一周波数に複数の信号を混在させた混信信号を分離する信号分離装置であって、
前記混信信号に含まれる最も強度の高い第1の信号のシンボルレートを推定する第1のシンボルレート推定手段と、
前記第1の信号のシンボルレートに基づいて、前記第1の信号を復調した復調結果から第1の変調方式を推定する第1の変調方式推定・復調手段と、
前記第1の変調方式によって前記第1の信号を復調し、復調された第1の信号の情報系列を推定する第1の復号手段と、
前記第1の信号の情報系列から第1の信号のレプリカ信号を生成するレプリカ生成手段と、
前記第1の信号のレプリカ信号を前記混信信号から差し引いて第2の信号を出力する適応キャンセラ手段と、
前記第2の信号のシンボルレートを推定する第2のシンボルレート推定手段と、
前記第2の信号のシンボルレートに基づいて、前記第2の信号を復調した復調結果から第2の変調方式を推定する第2の変調方式推定・復調手段と、
前記第2の変調方式によって前記第2信号を復調し、復調された第2の信号の情報系列を推定する第2の復号手段と、
を有する信号分離装置。
【請求項2】
前記第1のシンボルレート推定手段及び前記第2のシンボルレート推定手段とは、
前記混信信号を二乗させる乗算手段と、
前記乗算手段が乗算した結果に対してフーリエ変換を行う高速フーリエ変換手段と、
前記高速フーリエ変換手段がフーリエ変換した結果のピークを検出するピーク検出手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の信号分離装置。
【請求項3】
前記第1のシンボルレート推定手段は、信号レベルとピーク数により前記混信信号の数を抽出することを特徴とする請求項1または2記載の信号分離装置。
【請求項4】
第1の変調方式推定・復調手段は、
設定された複数の変調方式によって前記第1の信号を復調する第1の復調手段と、
前記第1の復調手段によって復調された複数の第1の信号から前記第1の変調方式を推定する第1の変調推定手段と、を有し、
前記第1の復号手段は、前記第1の変調推定手段が推定した前記第1の変調方式を用いて前記第1の信号を復調することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の信号分離装置。
【請求項5】
同一周波数に複数の信号を混在させた混信信号を分離する信号分離装置が実現する信号分離方法であって、
前記混信信号に含まれる最も強度の高い第1の信号のシンボルレートを推定し、
前記第1の信号のシンボルレートに基づいて、前記第1の信号を復調した復調結果から第1の変調方式を推定し、
前記第1の変調方式によって前記第1の信号を復調し、復調された第1の信号の情報系列を推定し、
前記第1の信号の情報系列から第1の信号のレプリカ信号を生成し、
前記第1の信号のレプリカ信号を前記混信信号から差し引いて第2の信号を出力し、
前記第2の信号のシンボルレートを推定し、
前記第2の信号のシンボルレートに基づいて、前記第2の信号を復調した復調結果から第2の変調方式を推定し、
前記第2の変調方式によって前記第2信号を復調し、復調された第2の信号の情報系列を推定する信号分離方法。
【請求項6】
前記混信信号に含まれる最も強度の高い第1の信号のシンボルレートの推定は、
信号レベルとピーク数により前記混信信号の数を抽出し、
抽出した信号レベルの最も高い信号を前記第1の信号として抽出することを特徴とする請求項5記載の信号分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置の受信側に用いられる、混信した通信信号の分離技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信システムにおいては、限られた電波資源の有効活用のため、周波数利用効率の向上が求められている。そのためには、同一周波数に複数の信号を混在させて伝送することが望ましいく、受信機においては混信信号を容易に分離する機能が必要となる。混信した電波がそれぞれ異なる方向から到来している場合、到来方向に基づく混信信号の分離が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1では、独立成分分析により信号分離する手法が示されている。
また、特許文献2では、衛星通信における帯域利用率向上のため、同一周波数で双方向通信する方法が提案されている。この通信方法では、2つの地上局が同一の通信衛星に同帯域の信号を送信し、通信衛星が2つの信号を混信して受信する。通信衛星によって、混信信号は、そのまま周波数変換されて地上局に送信されるので、地上局では到来方向に基づく信号分離は不可能である。そのため、地上局では自局の送信信号を混信信号中の一方の信号のレプリカとし、これを受信信号から差し引くことで他局の信号を分離している。
【0004】
特許文献2に対して、特許文献3では、受信信号のレプリカを生成して混信信号を分離する信号分離装置が開示されている。これは、受信信号に含まれる複数の信号の信号パラメータの違いを利用して、抽出順位に従って、通過帯域可変帯域通過フィルタ及び等化判定手段により受信信号から複数の信号を順番に分離して取り出すことを特徴としている。この手法により、複数の信号パラメータの異なる信号が同一周波数を共有して通信を行う条件において、少ない計算量で信号を分離、抽出することが可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−92363号公報
【特許文献2】米国特許第6859641号明細書
【特許文献3】特開2007−097103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示されている分離手段は、複数の信号パラメータが既知でなくてはならないという課題がある。具体的には、信号パラメータは、一例として共通の無線チャネルを用いて無線制御信号により通信開始に先立って通知することが前提となっている(例えば、特許文献3の明細書段落[0031])。言い換えると、特許文献3の伝送路推定は、通信に先だって既知の情報を通知し、受信側で既知の情報を保持することが必要となる。そのため、受信側で既知の情報を保持しない場合や保持することができない場合には、受信側で混信信号を分離することができない。
そこで、混信信号の分離に必要となる情報を受信側で推定する手段を提供し、信号分離を実現する信号分離装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る信号分離装置の一態様は、同一周波数に複数の信号を混在させた混信信号を分離する信号分離装置であり、第1のシンボルレート推定部、第1の変調方式推定・復調部、第1の復号部、適応キャンセラ部、レプリカ生成部、第2のシンボルレート推定部、第2の変調方式推定・復調部、及び第2の復号部を有する。
第1のシンボルレート推定部は、前記混信信号に含まれる最も強度の高い第1の信号のシンボルレートを推定する。第1の変調方式推定・復調部は、前記第1の信号のシンボルレートに基づいて、前記第1の信号を復調した復調結果から第1の変調方式を推定する。第1の復号部は、前記第1の変調方式によって前記第1の信号を復調し、復調された第1の信号の情報系列を推定する。レプリカ生成部は、前記第1の信号の情報系列から第1の信号のレプリカ信号を生成する。適応キャンセラ部、前記第1の信号のレプリカ信号を前記混信信号から差し引いて第2の信号を出力する。第2のシンボルレート推定部は、前記第2の信号のシンボルレートを推定する。第2の変調方式推定・復調部は、前記第2の信号のシンボルレートに基づいて、前記第2の信号を復調した復調結果から第2の変調方式を推定する。第2の復号部は、前記第2の変調方式によって前記第2信号を復調し、復調された第2の信号の情報系列を推定する。
【0008】
また、本発明に係る信号分離方法の一態様は、同一周波数に複数の信号を混在させた混信信号を分離する信号分離装置が実現する信号分離方法であって、前記混信信号に含まれる最も強度の高い第1の信号のシンボルレートを推定する工程、前記第1の信号のシンボルレートに基づいて、前記第1の信号を復調した復調結果から第1の変調方式を推定する工程、前記第1の変調方式によって前記第1の信号を復調し、復調された第1の信号の情報系列を推定する工程、前記第1の信号の情報系列から第1の信号のレプリカ信号を生成する工程、前記第1の信号のレプリカ信号を前記混信信号から差し引いて第2の信号を出力する工程、前記第2の信号のシンボルレートを推定する工程、前記第2の信号のシンボルレートに基づいて、前記第2の信号を復調した復調結果から第2の変調方式を推定する工程、及び、前記第2の変調方式によって前記第2信号を復調し、復調された第2の信号の情報系列を推定する工程を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態の一態様によれば、混信信号の分離に必要となる情報を受信側で推定する手段を提供し、信号分離を実現する信号分離装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の信号分離装置の動作例を示すフローチャートである。
図3図1に示すシンボルレート推定部(第1のシンボルレート推定部)の構成を示すブロック図である。
図4図1に示す変調方式推定部(第1の変調方式推定部)の説明図である。
図5】第2の実施形態のシンボルレート推定部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態において、信号分離装置は、シンボルレート推定部(第1のシンボルレート推定部)11、復調器(第1の復調器)12、変調方式推定部(第1の変調方式推定部)13、復号器(第1の復号器)14、符号器(第1の符号器)15、変調器(第1の変調器)16、適応キャンセラ17、シンボルレート推定部(第2のシンボルレート推定部)18、復調器(第2の復調器)19、変調方式推定部(第2の変調方式推定部)20、及び復号器(第2の復号器)21から構成される。
【0013】
シンボルレート推定部11は、混信信号を受け、混信信号のシンボルレートを推定する。具体的には、シンボルレート推定部11は、混信信号に含まれる最も強度の高い信号を当該混合信号から抽出し、第1の信号のシンボルレートを推定する。
復調器12は、混信信号に含まれる第1の信号を、設定された変調方式により復調する。設定された変調方式は、任意の、または、変調方式推定部13が推定した変調方式である。具体的には、復調器12は、第1のシンボルレート推定部11によって抽出された第1の信号を受けると、まず始めに任意の変調方式(予め設定された変調方式)を用いて第1の信号を復調し、変調方式推定部13へ出力する。次に、変調方式推定部13が推定する変調方式(第1の変調方式)を用いて第1の信号を復調することを繰り返す。ここで、復調器12が任意の変調方式を予め保持していることを前提とする。あるいは、復調器12が信号分離装置内の記憶領域に保持された任意の変調方式を参照して用いてもよい。
【0014】
変調方式推定部13は、復調器12の出力結果(復調された第1の信号)から最適な変調方式を推定する。そして推定した結果を復調器12へ出力する。
復号器14は、復調器12によって復調された第1の信号を復号して第1の信号の情報系列を推定する。
ここで、復調器12と変調方式推定部13とは第1の変調方式推定・復調部31を構成する。第1の変調方式推定・復調部31は、第1の信号のシンボルレートに基づいて、第1の信号を復調した復調結果から第1の変調方式を推定する機能を実現する。
【0015】
符号器15は、復号器14から第1の信号の情報系列を受け、第1の信号の情報系列を再符号化する。
変調器16は、符号器15が符号化した第1の信号の情報系列を再変調してレプリカ信号(第1の信号のレプリカ信号)を生成する。
ここで、符号器15と変調器16とは、レプリカ生成部32を構成する。レプリカ生成部32は、第1の信号の情報系列から第1の信号のレプリカを生成する機能を実現する。
適応キャンセラ17は、混信信号からレプリカ信号を差し引く。具体的には、適応キャンセラ17は、混信信号と第1の信号のレプリカ信号とを受け、混信信号からレプリカ信号を差し引いて第2の信号として出力する。
【0016】
シンボルレート推定部18は、第2の信号(適応キャンセラ17の出力)のシンボルレートを推定する。
復調器19は、第2の信号を、設定された変調方式により復調する。設定された変調方式は、任意の、または、変調方式推定部20が推定する変調方式である。具体的には、復調器19は、第2のシンボルレート推定部18から第2の信号を受けると、まず始めに任意の変調方式(予め設定された変調方式)を用いて第2の信号を復調し、変調方式推定部20へ出力する。次に、変調方式推定部20が推定する変調方式を用いて第2の信号を復調することを繰り返す。復調器19は、任意の変調方式を予め保持する。あるいは、信号分離装置内の記憶領域に保持された任意の変調方式を参照して用いてもよい。任意の変調方式は、復調器12が用いる任意の変調方式と同じ方式であっても異なる方式であってもよく、信号分離装置に応じて予め設定されていればよい。
【0017】
変調方式推定部20は、復調器19の出力結果(復調された第2の信号)から最適な変調方式を推定する。そして推定した結果を復調器19へ出力する。
復号器21は、復調器19によって復調された第2の信号を復号して第2の信号の情報系列を推定する。
ここで、復調器19と変調方式推定部20とは、第2の変調方式推定・復調部33を構成する。第2の変調方式推定・復調部33は、第2の信号のシンボルレートに基づいて、第2の信号を復調した復調結果から第2の変調方式を推定する機能を実現する。
【0018】
図1に示す構成により、信号分離装置は、混信信号間の強度差のみに基づきレプリカ信号を生成し、これを受信信号から差し引くことによって信号を分離する。これにより、信号分離装置は、各信号成分の到来方向に依存することなく混信信号を分離することができる。言い換えると、信号分離装置は、混信信号の分離に必要となる既知の情報(例えば、特許文献3に記載の信号パラメータ)を保持していなくても混信信号を分離することができる。
【0019】
次に動作を説明する。図2は、第1の実施形態の信号分離装置の動作例を示すフローチャートである。
本実施形態では、混信信号に含まれる信号に十分な強度差があることを前提にしている。まず、シンボルレート推定部11は、最も強度の高い第1の信号のシンボルレートを推定する(S11)。復調器12は、シンボルレート推定部11によって推定されたシンボルレートから、初回は任意の変調方式(予め適当な変調方式を設定する)により第1の信号を復調する(S12)。変調方式推定部13は、復調された受信信号(第1の信号)と、受信機(信号分離装置)で設定しておいた理想的な信号点配置との平均二乗誤差を求める(S13)。復調器12と変調方式推定部13とは、ステップS12とS13との処理を、変調方式を変更させながら繰り返す(S14、NO)。変調方式推定部13は、平均二乗誤差を比較してゆき、最も誤差が小さかった変調方式を正しく変調方式が推定された変調方式として、第1の変調方式として決定する(S14、YES)。復調器12は、適切な第1の変調方式が推定されると、復調した第1の信号を復号器14へ出力する。
【0020】
復号器14は、最終的な変調方式で復調された信号を誤り訂正復号することにより、第1の信号に関する高品質な第1の情報系列(第1の信号の情報系列)を推定する(S15)。符号器15は、推定した第1の情報系列を再符号化し、さらに変調器16は、再符号化した第1の情報系列を再変調することにより、第1の信号のレプリカを生成する(S16)。
適応キャンセラ17は、混信信号中の第1の信号成分とレプリカ信号との振幅及び位相の差異を推定し、これらが最小になるようにレプリカ信号を補正する(S17)。補正後のレプリカ信号を混信信号から差し引くことにより、第2の信号成分が抽出される(S18)。
【0021】
抽出された第2の信号成分を上記シンボルレート推定部11、復調器12、変調方式推定部13と同様な処理をシンボルレート推定部18、復調器19、変調方式推定部20で行うことによりシンボルレートと変調方式を決定する(S19)。さらに復号器21で誤り訂正復号することにより、第2の信号に関する高品質な情報系列(第2の信号の情報系列)を推定する(S20)。
【0022】
次に、図1に示すシンボルレート推定部11における作用について図3を参照して説明する。
図3は、シンボルレート推定部11の構成を示すブロック図である。ここでは、線形変調の場合を例として説明する。図3において、シンボルレート推定部11は、混信信号を二乗させる乗算器22と、乗算した結果に対してフーリエ変換を行うFFT部(高速フーリエ変換部)23と、フーリエ変換した結果のピーク検出を行うピーク検出部24で構成される。
乗算器22は、混信信号を二乗させ、FFT部23は二乗させた混信信号にフーリエ変換を行う。これにより、シンボルレートに相当する周波数のピークが現れる。その後ピーク検出部24は、適切な手法でピーク検出を行うことにより、シンボルレートを検出する。
シンボルレート推定部18も図3と同様の構成により実現することができる。
【0023】
次に、図1に示す変調方式推定部13における作用について図4を参照して説明する。
図4は、変調方式推定部13の変調方式を推定する手段に関して説明した図である。図4は復調器12による復調後の受信信号と、あらかじめ受信機に設定しておいた信号点配置の一つを示したものである。図4では、一例としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)信号の信号点配置を挙げている。変調方式推定部13は、復調された受信信号と理想的な信号点の平均二乗誤差を求め、その値を保存し、変調方式を変更しながら比較していく。図4において、誤差を黒塗りの丸と矢印で示している。誤差が最も小さかったときの変調方式による信号を最終的な信号として決定し、復号器14に入力する。
なお、変調方式推定部20についても、変調方式推定部13と同様である。
【0024】
上述したように、本実施形態の信号分離装置は、受信信号のレプリカを生成して混信信号を分離する信号分離装置であって、混信信号に含まれる最も強度の高い信号のシンボルレート、変調方式、情報系列を推定する手段と、推定した情報系列から第1の信号のレプリカを生成する手段と、第1の信号のレプリカを混信信号から差し引く手段と、混信信号とレプリカ信号との差分から第2の信号のシンボルレート、変調方式、情報系列を推定する手段で構成されることを特徴とする。この構成により、混信信号の信号パラメータ(例えば、シンボルレート、変調方式)が未知の場合において、混信信号に含まれる信号成分のレプリカを持たない受信機に対して、混信信号の各成分の到来方向に依存しない分離手段を提供する。
【0025】
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態を説明する図である。本実施形態では、シンボルレート推定部11、18の機能を説明する。図5は混信信号を二乗し、フーリエ変換をした結果を示したものである。また、横軸を周波数、縦軸を信号レベルとして示している。
PSK(Phase-Shift Keying)のような線形変調の場合、上記のような処理(二乗、フーリエ変換)をされた混信信号は、シンボルレートに相当する周波数のピークが現れる。つまり、2つ以上の信号が混信している場合はそれぞれに対応した複数のピークが現れる。本発明の実施形態ではこのピークの信号レベルとピークの位置を検出することで混信信号数を判定することができる。これにより、複数且つ未知の信号に対しても、混信信号の分離が可能になる。
【0026】
上述したように、本実施形態の信号分離装置は、シンボルレートを推定する際に、混信信号を二乗し、フーリエ変換を行うことにより、シンボルレートに相当する周波数のピークが現れる。そのピーク数とピークのレベルにより、シンボルレートと混信信号数を検出することを特徴とする。
【0027】
以上説明したように、上記各実施形態によれば、混信信号間の強度差のみに基づいて、一つの信号のレプリカを生成し、これを受信信号から差し引くことで信号を分離する手段において、シンボルレートを推定し、変調方式を推定することができるため、シンボルレートや変調方式が未知の混信信号においても、混信信号を分離することが可能となる。
【0028】
例えば、特許文献3の伝送路推定は、通信に先立って既知の信号パラメータを通知し、既知の信号パラメータを用いることにより伝送路推定を行い受信信号のレプリカを生成して混信信号を分離する。言い換えると、受信側は、レプリカ作成のために既知の信号系列を必要とする。これに対して、上記各実施形態では、情報系列の推定のために既知の情報を先立って通知する必要はなく、未知の信号を混信分離することを可能とする。言い換えると、上記各実施形態では、未知の信号を対象としており、受信側で既知の情報を必要せず、信号パラメータ等の情報を先立って送信する必要が無い。そのため、受信側で余分な既知の情報を保持する必要がなくなるという有利な効果を奏する。
【0029】
さらに、特許文献3の技術に、例えば、受信信号に拡散符号を適用することで多重信号成分を検出する技術を組み合わせる場合には、受信側で既知の信号系列と拡散符号が必須になる。詳細には、例えば、対象信号が多重化を前提とした拡散符号を使用する場合には、受信信号に既知の拡散符号を乗算する必要がある。そのため既知情報を受信側で持たない機器では信号分離を実現することができない。これに対して、上記各実施形態では、対象信号が符号拡散された信号である必要はなく、またそのため受信側に既知の拡散符号の情報を必要としない。本特許は受信信号のみを利用して、ピークを検出し、これによって得られた多重化された複数の信号のシンボルレートを用いる。そのため、上記各実施形態では、既知の信号系列や拡散符号を用いずに、信号分離することを可能とするという特有の効果を奏することができる。具体的には、上記各実施形態では、受信信号レベルと受信信号を逓倍した結果から得られるピークを用いることにより、混信信号を検出・分離することを実現する。
以上のように、先行技術では、何かしらの信号パラメータが受信側で必要になるという問題があるが、上記各実施形態では通信分野に限らず、電波監視業務等の信号の持っているパラメータが未知の場合においても適用することができるという有利な効果を生じさせる。
【0030】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
11 シンボルレート推定部(第1のシンボルレート推定部)
12 復調器(第1の復調部)
13 変調方式推定部(第1の変調方式推定部)
14 復号器(第1の復号器)
15 符号器(第1の符号器)
16 変調器(第1の変調器)
17 適応キャンセラ
18 シンボルレート推定部(第2のシンボルレート推定手段)
19 復調器(第2の復調器)
20 変調方式推定部(第2の変調方式推定部)
21 復号器(第2の復号器)
22 乗算器
23 FFT部
24 ピーク検出部
31 第1の変調方式推定・復調部
32 レプリカ生成部
33 第2の変調方式推定・復調部
図1
図2
図3
図4
図5