(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属層を形成する工程は、前記半導体基板が前記収容室と連結して設けられている成膜室へ搬送される工程と、前記成膜室において前記半導体基板上に前記金属層が形成される工程とを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粘着テープに半導体基板を固定して当該半導体基板に電極を形成すると、半導体基板と電極との接触抵抗が大きくなる場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体基板と電極との接触抵抗を低減可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、粘着テープに半導体基板を固定しながら当該半導体基板に電極を形成する場合に、半導体基板と電極との接触抵抗が大きくなる原因について鋭意研究した結果、以下の知見を得るに至った。
【0009】
すなわち、粘着テープに半導体基板を固定しながら、たとえばスパッタリングなどによって半導体基板上に金属膜を形成する場合に、半導体基板を固定している粘着テープの温度が上昇する。粘着テープの温度が上昇すると、粘着テープから不純物ガスが発生し、当該不純物ガスにより半導体基板上に形成された金属膜が酸化する。その後、金属膜をアニールして電極を形成すると、半導体基板と電極との接触抵抗が増大することが判明した。
【0010】
また、当該電極上に保護電極を形成する場合においても、当該不純物ガスにより電極と保護電極との界面が酸化することにより、電極と保護電極との密着性が悪化する場合があることが判明した。当該不純物ガスの成分を分析したところ、不純物ガスの主成分はH
2O(水蒸気)であることが分かった。当該H
2O(水蒸気)が金属膜と反応することにより金属膜が酸化すると考えられる。
【0011】
本発明に係る半導体装置の製造方法は以下の工程を有している。互いに対向する第1の主面および第2の主面を有する半導体基板が準備される。半導体基板が第1の主面において粘着テープに固定される。粘着テープに固定された半導体基板が収容室内に配置される。粘着テープの温度を100℃以上に保持しながら収容室が排気される。収容室を排気する工程の後に半導体基板の温度が低減される。半導体基板の温度を低減する工程の後に半導体基板の第2の主面上に電極が形成される。ここで、半導体基板が第1の主面において粘着テープに固定されるとは、半導体基板が第1の主面と粘着テープとの間に他の層を介して粘着テープに固定される場合も含む。
【0012】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、粘着テープに固定された半導体基板が収容室内に配置され、粘着テープの温度を100℃以上に保持しながら収容室が排気される。これにより、粘着テープに含有または付着している水分が蒸発して水蒸気になり、当該水蒸気が収容室から排気されることにより、半導体基板周辺の水蒸気は除去される。そのため、当該水蒸気により半導体基板上に形成される電極が酸化されることを抑制することができる。結果として、半導体基板と電極との接触抵抗を低減することができる。また、電極と保護電極との密着性を向上させることができる。
【0013】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、収容室を排気する工程において、収容室のH
2O分圧は5×10
-4Pa以下まで低減される。これにより、効率的に収容室内のH
2Oを除去することができる。
【0014】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、収容室を排気する工程において、粘着テープの温度は120℃以上200℃以下に保持される。粘着テープの温度を120℃以上にすることにより効率的に粘着テープに含まれているH
2Oを除去することができる。また、粘着テープを200℃以下にすることにより、粘着テープの変質を防止することができる。
【0015】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、電極を形成する工程において、収容室のH
2O分圧は1×10
-4Pa以下まで低減される。これにより、効率的に収容室内のH
2Oを除去することができる。
【0016】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、半導体装置は炭化珪素半導体装置である。これにより、接触抵抗の小さい炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0017】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、電極を形成する工程は、半導体基板上に金属層を形成する工程と、金属層をアニールする工程とを含む。これにより、金属層が合金化して半導体基板と電極との接触抵抗を低減することができる。
【0018】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、金属層を形成する工程は、スパッタリング法により行われる。これにより、金属層を精度よく作製することができる。
【0019】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、金属層を形成する工程では、半導体基板を冷却しながら金属層が形成される。これにより、半導体基板が固定されている粘着テープが冷却されるために、粘着テープから水蒸気が発生することを抑制することができる。
【0020】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、金属層を形成する工程は、半導体基板が収容室と連結して設けられている成膜室へ搬送される工程と、成膜室において半導体基板上に金属層が形成される工程とを含む。成膜室と収容室とを分離することで、より確実に、粘着テープから発生したH
2Oによって金属層が酸化することを抑制することができる。
【0021】
上記の半導体装置の製造方法において好ましくは、金属層を形成する工程では面内膜厚分布が6%未満である金属層が形成される。これにより、面内膜厚分布の小さい金属層を形成することにより、特性のバラツキを低減しデバイスの歩留まりを向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、半導体基板と電極との接触抵抗を低減可能な半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0025】
まず、本発明の一実施の形態に係る製造方法によって製造される半導体装置の一例について説明する。まず半導体装置としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の構成について説明する。
【0026】
図1を参照して、MOSFET100は基板10と電極部80とを主に有している。基板10は、たとえばベース基板11と、エピタキシャル層20とを有している。エピタキシャル層20は、ドリフト領域21と、ボディ領域22と、ソース領域23と、p+領域24とを有している。
【0027】
ベース基板11は、たとえば炭化珪素(SiC)からなり、導電型がn型の基板である。ベース基板11は、高濃度のn型不純物(導電型がn型である不純物)、たとえばN(窒素)を含んでいる。
【0028】
ボディ領域22はp型の導電型を有する。一対のボディ領域22は、ドリフト領域21において、基板10の主面10Aを含むように互いに分離して形成されている。ボディ領域22に含まれるp型不純物は、たとえばAl(アルミニウム)、B(ホウ素)などであり、ベース基板11に含まれるn型不純物よりも低い濃度、たとえば1×10
17cm
-3の濃度で含まれている。
【0029】
ソース領域23はn型の導電型を有するn型領域である。ソース領域23は、基板10の主面10Aを含み、かつボディ領域22に取り囲まれるように、一対のボディ領域22のそれぞれの内部に形成されている。ソース領域23は、n型不純物、たとえばP(リン)などをドリフト領域21に含まれるn型不純物よりも高い濃度、たとえば1×10
20cm
-3の濃度で含んでいる。
【0030】
p+領域24はp型の導電型を有するp型領域である。p+領域24は、一対のボディ領域22のうち一方のボディ領域22の内部に形成されたソース領域23から見て、他方のボディ領域22の内部に形成されたソース領域23とは反対側に、基板10の主面10Aを含むように形成されている。p+領域24は、p型不純物、たとえばAl、Bなどをボディ領域22に含まれるp型不純物よりも高い濃度、たとえば1×10
20cm
-3の濃度で含んでいる。
【0031】
電極部80は、ゲート絶縁膜としてのゲート酸化膜30(絶縁膜)と、ゲート電極40と、一対のソース電極50(ソースコンタクト電極)と、層間絶縁膜60と、表面保護電極70と、パシベーション膜90とを有している。
【0032】
ゲート酸化膜30は、基板10の主面10Aに接触し、一方のソース領域23の上部表面から他方のソース領域23の上部表面にまで延在するように基板10の主面10A上に形成されている。ゲート酸化膜30は、好ましくは酸化珪素膜および窒化珪素膜の少なくともいずれかを含み、たとえば二酸化珪素(SiO
2)からなっている。
【0033】
ゲート電極40は、一方のソース領域23上から他方のソース領域23上にまで延在するように、ゲート酸化膜30に接触して配置されている。また、ゲート電極40は、ポリシリコン、Alなどの導電体からなっている。
【0034】
ソース電極50は、一対のソース領域23上のそれぞれから、ゲート酸化膜30から離れる向きにp+領域24上にまで延在するとともに、基板10の主面10Aに接触して配置されている。
【0035】
層間絶縁膜60は、ゲート電極40およびゲート酸化膜30と接して設けられている。層間絶縁膜60は、ゲート電極40とソース電極50とを電気的に絶縁している。
【0036】
表面保護電極70は、ソース電極50に接触して形成されており、Alなどの導電体からなっている。そして、表面保護電極70は、ソース電極50を介してソース領域23と電気的に接続されている。
【0037】
パシベーション膜90は、一方の表面保護電極70上からゲート電極40上を通り、他方の表面保護電極70上にまで延在するように形成されている。このパシベーション膜90は、たとえばSiO
2からなっており、表面保護電極70およびゲート電極40を外部と電気的に絶縁するとともに、MOSFET100を保護する機能を有している。
【0038】
また、MOSFET100は、ドレイン電極15と、裏面保護電極17とをさらに有している。
【0039】
ドレイン電極15は、ベース基板11においてドリフト領域21が形成される側の主面である一方の主面とは反対側の主面である他方の主面に接触して形成されている。このドレイン電極15は、NiSi(ニッケルシリコン)など、ベース基板11とオーミックコンタクト可能な他の材料からなっていてもよい。これにより、ドレイン電極15はベース基板11と電気的に接続されている。
【0040】
裏面保護電極17は、ドレイン電極15のベース基板11とは反対側の主面に接して形成されている。裏面保護電極17は、たとえばTi層と、Pt層と、Au層とからなる積層構造を有している。
【0041】
次に、本発明の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法について
図2および
図3を用いて説明する。
【0042】
図4を参照して、まず、工程(S10:
図2)として、基板準備工程が実施される。まず、ベース基板準備工程が実施される。この工程では、たとえば4H−SiCからなるインゴット(図示しない)をスライスすることにより、炭化珪素からなり導電型がn型(第1導電型)のベース基板11が準備される。
【0043】
次に、エピタキシャル層形成工程が実施される。この工程では、ベース基板11の主面11A上に、たとえば炭化珪素からなり導電型がn型のエピタキシャル層20がエピタキシャル成長により形成される。
【0044】
次に、工程(S20:
図2)として、上面素子構造形成工程が実施される。この工程(S20:
図2)では、以下に説明する工程(S21:
図3)から工程(S28:
図3)が実施されることにより、ベース基板11に上面素子構造12が形成された中間半導体基板16(
図10参照)が準備される。
【0045】
まず、工程(S21:
図3)として、イオン注入工程が実施される。この工程(S21:
図3)では、
図5を参照して、まず、たとえばAl(アルミニウム)イオンが、基板10の主面10Aを含む領域に注入されることにより、エピタキシャル層20内に導電型がp型(第2導電型)のボディ領域22が形成される。次に、たとえばP(リン)イオンが、上記Alイオンの注入深さよりも浅い深さでボディ領域22内に注入されることにより、導電型がn型のソース領域23が形成される。そして、たとえばAlイオンが、ボディ領域22内にさらに注入されることにより、ソース領域23と隣接しつつソース領域23と同等の深さを有し、導電型がp型のp+領域24が形成される。また、エピタキシャル層20において、ボディ領域22、ソース領域23およびp+領域24のいずれも形成されない領域は、ドリフト領域21となる。
【0046】
次に、工程(S22:
図3)として、活性化アニール工程が実施される。この工程(S22:
図3)では、基板10を加熱することにより、上記工程(S21:
図3)にて導入された不純物が活性化される。これにより、不純物が導入された領域において所望のキャリアが生成する。
【0047】
次に、工程(S23:
図3)として、ゲート酸化膜形成工程が実施される。この工程(S23:
図3)では、
図6を参照して、たとえば酸素を含む雰囲気中において基板10を加熱することにより、主面10Aを覆うようにSiO
2(二酸化珪素)からなるゲート酸化膜30が形成される。
【0048】
次に、工程(S24:
図3)として、ゲート電極形成工程が実施される。この工程(S24:
図3)では、
図7を参照して、たとえばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート酸化膜30上に接触し、不純物を含むポリシリコンからなるゲート電極40が形成される。
【0049】
次に、工程(S25:
図3)として、層間絶縁膜形成工程が実施される。この工程(S25:
図3)では、
図8を参照して、たとえばP(Plasma)−CVD法により、SiO
2からなる層間絶縁膜60が、ゲート酸化膜30およびゲート電極40を覆うように形成される。
【0050】
次に、工程(S26:
図3)として、ソース電極形成工程が実施される。この工程(S26:
図3)では、
図9を参照して、まず、ソース電極50を形成すべき領域において層間絶縁膜60およびゲート酸化膜30が除去され、ソース領域23およびp+領域24が露出した領域が形成される。次に、たとえばスパッタリングにより、上記領域において、たとえばNi、NiSi、またはTiSiあるいはTiAlSiからなる金属層(図示しない)が形成される。そして、上記金属層が加熱されることにより、上記金属層の少なくとも一部がシリサイド化し、ソース電極50が形成される。
【0051】
次に、工程(S27:
図3)として、表面保護電極形成工程が実施される。この工程(S27:
図3)では、
図10を参照して、ソース電極50上に接触する表面保護電極70が形成される。具体的には、まず、たとえばスパッタリングにより、Ta、TaN、Ti、TiNまたはTiWからなる第1電極層(図示しない)がソース電極50上に接触するように形成される。そして、Al、AlSiまたはAlSiCuからなる第2電極層(図示しない)が第1電極層上に形成される。このようにして、上記電極層が積層された構造を有する表面保護電極70が形成される。また、第1電極層としては、TaおよびTaNからなる電極層が積層された構造を有するものが形成されてもよい。
【0052】
次に、工程(S28:
図3)として、パッシベーション膜形成工程が実施される。この工程(S28:
図3)では、たとえばCVD法により、SiO
2からなるパッシベーション膜90が表面保護電極70を覆うように形成される。
【0053】
以上により、互いに対向する第1の主面16Aおよび第2の主面16Bを有する中間半導体基板16が準備される。
【0054】
次に、工程(S30:
図2)として、フレーム貼付け工程が実施される。この工程(S30:
図2)では、
図11および
図12を参照して、中間半導体基板16の上面素子構造12側の第1の主面16Aが粘着テープ1に貼り付けられることにより、中間半導体基板16が粘着テープ1にて支持される。具体的には、まず、
図12に示すように、環状の金属からなるリングフレーム2が準備される。次に、リングフレーム2を貫通する孔を閉じるように、粘着テープ1がリングフレーム2に取り付けられて保持される。このように粘着テープ1がリングフレーム2に保持されることにより、粘着テープ1の平坦性が確保される。そして、粘着テープ1の粘着面に上面素子構造12側の第1の主面16Aが接触するように中間半導体基板16が粘着テープ1に貼り付けられる。その結果、中間半導体基板16は、粘着テープ1に貼り付けられた状態で、リングフレーム2の内周面に取り囲まれる位置に保持される。以上のようにして、中間半導体基板16が第1の主面16Aにおいて粘着テープ1に固定される。
【0055】
なお、粘着テープ1としては、種々の構成を有するものを採用することができるが、たとえば基材にポリエステル、粘着剤にアクリル粘着剤、セパレータにポリエステルを用いたものを採用することができる。また、粘着テープにはH
2O分子が包含または吸着されていても構わない。好ましくは、粘着テープ1として、紫外線などのエネルギー線を照射することにより粘着力が低下するテープが用いられる。紫外線などのエネルギー線を照射することにより粘着力が低下する材料としては、たとえば紫外線硬化型樹脂が挙げられる。また、粘着テープ1として、加熱されることにより粘着力が低下するテープが用いられても構わない。加熱されることにより粘着力が低下する材料としては、たとえば熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0056】
次に、工程(S40:
図2)として、裏面研削工程が実施される。この工程(S40:
図2)では、中間半導体基板16が粘着テープ1にて支持されつつ、中間半導体基板16のベース基板11側の第2の主面16Bが研削される。具体的には、
図13を参照して、まず、粘着テープ1において中間半導体基板16を保持する側とは反対側の主表面が、押圧部材13によりリングフレーム2の軸方向に押される。これにより、粘着テープ1は弾性変形し、粘着テープ1により保持される中間半導体基板16のうち少なくとも第2の主面16Bがリングフレーム2の内周面に取り囲まれる位置から離脱する。そして、研削盤(図示しない)などの研削装置の研削面に中間半導体基板16の第2の主面16Bが押し付けられることによりベース基板11が研削され、
図14に示すように中間半導体基板16が所望の厚みにまで薄板化される。
【0057】
次に、テープ貼り替え工程が実施されてもよい。この工程は、上記工程(S40)が完了し、押圧部材13による粘着テープ1の押圧を終了させた後、粘着テープ1を貼り替える。上記工程(S40:
図2)において弾性変形するなどして損傷する可能性のある粘着テープ1を交換しておくことにより、粘着テープ1の損傷に起因する不具合を未然に回避することができる。
【0058】
次に、工程(S50:
図2)として半導体基板配置工程が実施される。具体的には、粘着テープ1に固定された中間半導体基板16が収容室31内に配置される。収容室31にはたとえば真空ポンプが接続されており、収容室31内の気体を排気可能に設けられている。
【0059】
次に、工程(S60:
図2)として脱ガス加熱処理工程が実施される。具体的には、粘着テープ1および中間半導体基板16をたとえばヒータによって100℃以上に加熱しながら収容室31を排気することにより、収容室31内に存在する気体が排気される。好ましくは、この工程(S60:
図2)において収容室のH
2O分圧は5×10
-4Pa以下まで低減され、より好ましくは1.5×10
-4Pa以下まで低減される。また好ましくは、この工程(S60:
図2)において粘着テープ1および中間半導体基板16の温度は120℃以上200℃以下に保持される。またこの工程(S60:
図2)において、粘着テープ1および中間半導体基板16の温度は140℃以上180℃以下に保持されることが好ましく、150℃以上170℃以下に保持されることがさらに好ましい。
【0060】
次に、工程(S70:
図2)として半導体基板冷却工程が実施される。具体的には、中間半導体基板16および粘着テープ1を100℃以上に保持しながら収容室31を排気する工程の後に、中間半導体基板16および粘着テープ1の加熱を停止し、中間半導体基板16および粘着テープ1の温度が100℃以上の温度から室温にまで低減される。中間半導体基板16および粘着テープ1は、冷却機構(図示せず)により強制的に冷却されてもよいし、自然冷却によって冷却されてもよい。
【0061】
次に、裏面電極形成工程が実施される。裏面電極形成工程は、中間半導体基板16に金属層14を形成する工程と、金属層14をアニールする工程とを含んでいる。具体的には、まず、工程(S80:
図2)として、金属層形成工程が実施される。この工程(S80:
図2)では、
図18を参照して、上記工程(S70:
図2)において冷却された中間半導体基板16が成膜装置34の収容室31から、収容室31と連結部33により連結して設けられている成膜室32に移動する。なお、収容室31、連結部33および成膜室32が排気された状態で中間半導体基板16が収容室31から連結部33を通って成膜室32へ移動することが好ましい。
図15を参照して、成膜室32において、中間半導体基板16が粘着テープ1にて支持された状態で、中間半導体基板16の第2の主面16B上に、たとえばNiSiからなる金属層14が形成される。なお、金属層14の形成は、中間半導体基板16の温度を低減する工程の後に行われる。
【0062】
当該金属層14は、たとえばTiAlSiなどであっても構わない。金属層14の形成は、好ましくはスパッタリング法により実施される。金属層14の形成は蒸着により実施されても構わない。金属層14の面内膜厚分布は、好ましくは6%未満であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。なお、金属層の面内膜厚分布とは、金属層の最大膜厚と最小膜厚との差を平均膜厚で除して計算した百分率値である。
【0063】
金属層を形成する工程において、好ましくは中間半導体基板16を冷却しながら金属層14が中間半導体基板16上に形成される。中間半導体基板16の冷却は、たとえば中間半導体基板16と接している冷却機構(図示しない)によって実施されてもよい。
【0064】
次に、工程(S90:
図2)として、アニール工程が実施される。上記工程(S80:
図2)にて形成された金属層14を加熱することにより、金属層14が合金化してドレイン電極15となる。具体的には、
図16を参照して、たとえばレーザー照射を用いた上記金属層14の局所的な加熱により、上記金属層14の少なくとも一部がシリサイド化することにより、ドレイン電極15が形成される。ドレイン電極15の面内膜厚分布は、好ましくは6%未満であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。金属層14を加熱する方法としてレーザー照射を用いることにより、上記金属層14に隣接する領域の温度上昇を抑制しつつ、上記金属層14を局所的に加熱することがより容易になる。以上のように、中間半導体基板16の第2の主面16B上にドレイン電極15が形成される。
【0065】
次に、工程(S100:
図2)として、裏面保護電極形成工程が実施される。この工程(S100:
図2)では、
図17を参照して、中間半導体基板16が粘着テープ1にて支持された状態にて、ドレイン電極15上に接触する裏面保護電極17が形成される。裏面保護電極17は、たとえばTi/Pt/Auからなる。具体的には、まず、たとえばスパッタリングにより、Ti、TiN、TiWまたはNiCrからなる第1電極層(図示しない)がドレイン電極15上に接触するように形成される。次に、同様にスパッタリングにより、PtまたはNiからなる第2電極層(図示しない)が第1電極層上に形成される。そして、同様にスパッタリングにより、AuまたはAgからなる第3電極層(図示しない)が第2電極層上に形成される。このようにして、上記電極層の積層構造を有する裏面保護電極17がドレイン電極15上に形成される。
【0066】
次に、ダイシング工程が実施される。この工程では、裏面保護電極17が形成された側の主表面に粘着テープ1が貼り付けられることにより中間半導体基板16が粘着テープ1にて支持された状態で、中間半導体基板16が厚み方向に切断され、複数個のMOSFET100が得られる。この切断は、たとえばレーザーダイシングやスクライブにより実施されてもよい。以上の工程が実施されることにより、MOSFET100が製造され、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法が完了する。
【0067】
なお上記各実施の形態におけるn型とp型とが入れ替えられた構成のMOSFETが用いられてもよい。また上記においては、本発明の半導体装置の一例として、プレーナ型のMOSFETについて説明したがこれに限られない。たとえば、半導体装置は、たとえばトレンチ型のMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポ-ラトランジスタ)などであっても構わない。
【0068】
さらに上記において、基板10を構成する材料として炭化珪素基板を例に挙げて説明したがこれに限られない。基板10を構成する材料は、たとえばSi(シリコン)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaN(窒化ガリウム)などであっても構わない。
【0069】
次に、本実施の形態の製造方法の作用効果について説明する。
本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法において、粘着テープ1に固定された中間半導体基板16が収容室31内に配置され、粘着テープ1の温度を100℃以上に保持しながら収容室31が排気される。言い換えれば、収容室31内の圧力が1気圧よりも小さくなる。これにより、粘着テープ1に含有または付着している水分が蒸発して水蒸気になり、当該水蒸気が収容室31から排気されることにより、中間半導体基板16周辺の水蒸気は除去される。そのため、当該水蒸気により中間半導体基板16上に形成されるドレイン電極15が酸化されることを抑制することができる。結果として、中間半導体基板16とドレイン電極15との接触抵抗を低減することができる。また、ドレイン電極15と裏面保護電極17との密着性を向上させることができる。
【0070】
また本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、収容室31を排気する工程において、収容室31のH
2O分圧は5×10
-4Pa以下まで低減される。これにより、効率的に収容室31内のH
2Oを除去することができる。
【0071】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、収容室31を排気する工程において、粘着テープ1の温度は120℃以上200℃以下に保持される。粘着テープ1の温度を120℃以上にすることにより効率的に粘着テープ1に含まれているH
2Oを除去することができる。また、粘着テープ1を200℃以下にすることにより、粘着テープ1の変質を防止することができる。
【0072】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、ドレイン電極15を形成する工程において、収容室31のH
2O分圧は1×10
-4Pa以下まで低減される。これにより、効率的に収容室31内のH
2Oを除去することができる。
【0073】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、MOSFETは炭化珪素MOSFETである。これにより、接触抵抗の小さい炭化珪素MOSFETを製造することができる。
【0074】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、ドレイン電極15を形成する工程は、中間半導体基板16上に金属層14を形成する工程と、金属層14をアニールする工程とを含む。これにより、金属層14が合金化して中間半導体基板16とドレイン電極15との接触抵抗を低減することができる。
【0075】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、金属層14を形成する工程は、スパッタリング法により行われる。これにより、金属層14を精度よく作製することができる。
【0076】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、金属層14を形成する工程では、中間半導体基板16を冷却しながら金属層14が形成される。これにより、中間半導体基板16が固定されている粘着テープ1が冷却されるために、粘着テープ1から水蒸気が発生することを抑制することができる。
【0077】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、金属層14を形成する工程は、中間半導体基板16が収容室31と連結して設けられている成膜室32へ搬送される工程と、成膜室32において中間半導体基板16上に金属層14が形成される工程とを含む。成膜室32と収容室31とを分離することで、より確実に、粘着テープから発生したH
2Oによって金属層14が酸化することを抑制することができる。
【0078】
さらに本実施の形態に係るMOSFET100の製造方法によれば、金属層14を形成する工程では面内膜厚分布が6%未満である金属層14が形成される。これにより、面内膜厚分布の小さい金属層14を形成することにより、特性のバラツキを低減しデバイスの歩留まりを向上させることが出来る。
【実施例】
【0079】
本実施例では、本発明例および比較例に係る製造方法により製造された半導体装置の金属層14(電極膜)の膜厚分布、裏面電極15(NiSi電極)と炭化珪素基板10との接触抵抗、および裏面電極15と裏面保護電極17とのダイシェア強度について調査した。
【0080】
まず、本発明例および比較例に係るサンプルの製造方法について説明する。最初に、実施の形態で説明したような半導体素子が形成された炭化珪素基板10を準備した。炭化珪素基板10の厚みを400μmとし、直径を4インチとした。炭化珪素基板10の半導体素子が形成された側の表面を粘着テープ1に貼り付けて固定した。炭化珪素基板10の粘着テープ1に貼り付けた側と反対側の表面を研削することにより、炭化珪素基板10の厚みを100μmとした。
【0081】
本発明例に係るサンプルでは、粘着テープ1に固定され
た炭化珪素基板10を加熱室に配置し、H
2O分圧が5×10
-4Paの条件下において炭化珪素基板10を120℃に加熱した。比較例に係るサンプルでは、上記加熱処理を行わなかった。
【0082】
その後、炭化珪素基板10を粘着テープ1に貼り付けたまま、スパッタ設備を用いて金属層14を形成した。その後、炭化珪素基板10を粘着テープ1に貼り付けたまま、レーザーアニールを実施して金属層14を合金化して裏面電極15とした。当該裏面電極15の上に裏面保護電極17を形成した。裏面保護電極17をTi/Pt/Auの3層構造とした。炭化珪素基板10を粘着テープ1に貼り付けたまま、炭化珪素基板10をダイシングしてチップ化した。チップ化したデバイスの裏面電極15および炭化珪素基板10の接触抵抗と、裏面電極15および裏面保護電極17のダイシェア強度を測定した。また、上記金属層14の膜厚分布を測定した。
【0083】
次に、ダイシェア強度の測定方法について説明する。まず、1.5mm×1.5mmにダイシングしたチップを準備する。当該チップの裏面保護電極17側を下側にしてAuSnはんだを用いて基板にダイボンドにより固定される。基板にチップが固定された状態で、基板と水平な方向にシェアツールが裏面保護電極17を押し出す。この押し出す力を測定することにより裏面保護電極17と裏面電極15とのダイシェア強度を測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1を参照して、金属層14(電極膜)の膜厚分布、裏面電極15(NiSi電極)と炭化珪素基板10との接触抵抗、および裏面電極15と裏面保護電極17とのダイシェア強度について説明する。表1に示すように、本発明例に係るサンプルの金属層14の膜厚分布は3.5%であり、比較例に係るサンプルの金属層14の膜厚分布は6%であった。つまり、本発明例に係る金属層の膜厚
分布は6%未満であることが確認された。また、本発明例に係るサンプルの裏面電極15と炭化珪素基板10との接触抵抗は、比較例に係るサンプルの裏面電極15と炭化珪素基板10との接触抵抗よりも小さいことが確認された。さらに、本発明例に係るサンプルの裏面電極15と裏面保護電極17とのダイシェア強度は、比較例に係るサンプルの裏面電極15と裏面保護電極17とのダイシェア強度よりも大きいことが確認された。ダイシェア強度が大きいということは、密着性が良好であることを意味する。つまり、本発明例に係るサンプルの裏面電極15と裏面保護電極17と密着性は、比較例に係るサンプルの裏面電極15と裏面保護電極17と密着性よりも良好であることが確認された。
【0086】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。