(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011070
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】便器用温風装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
E03D9/08 L
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-146250(P2012-146250)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9486(P2014-9486A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】梶野 真一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 ちひろ
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−190866(JP,U)
【文献】
実開平06−035380(JP,U)
【文献】
実開昭62−138784(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に設置される人体局部が洗浄できる洗浄便座装置のハウジング内に取り付けられることで人体局部へ温風を噴出する便器用温風装置であって、
ヒーターと、
前記ヒーターの熱を前記温風として流れるように風を発生するファンと、
前記ヒーター及び前記ファンを覆うダクトと、
を有し、
前記ダクトは、前記ダクトの一部が前記洗浄便座装置のハウジングで構成されるハウジング共用部と、それ以外の非ハウジング共用部と、を有し、
前記非ハウジング共用部に、前記ファン、前記ヒーターが配置され、
前記便器用温風装置が前記洗浄便座装置のハウジング内に取り付けられた状態において前記温風の流れ方向の下流端に位置して前記温風を噴出する前記便器用温風装置の噴出口は、前記洗浄便座装置のハウジングと前記非ハウジング共用部により形成される
ことを特徴とする便器用温風装置。
【請求項2】
前記非ハウジング共用部に温度測定手段が配置される請求項1に記載の便器用温風装置。
【請求項3】
前記ハウジング共用部は、前記洗浄便座装置の下側のハウジングであり、
前記ダクトの前記非ハウジング共用部は、前記ヒーター、前記ファン、及び前記温度測定手段が取り付けられるアッパケースと、前記アッパケースと結合するロワケースと、を有し、
前記ロワケースが前記洗浄便座装置の下側のハウジングに取り付けられる請求項2に記載の便器用温風装置。
【請求項4】
前記温度測定手段は、前記非ハウジング共用部が前記ハウジング内に取り付けられる前に、前記アッパケースによって保持される請求項3に記載の便器用温風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部が洗浄できる洗浄便座装置と共に好適に用いることができる便器用温風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器に取り付ける人体局部を洗浄できる洗浄便座装置には、人体局部に温風を噴出することができるタイプがある。温風は、風を発生させるファンとファンの前後の少なくとも一方に配置されるヒーターとで生成できる。生成された温風は、人体局部に向かって噴出されることで、洗浄した人体局部の乾燥を促したり、人体局部を暖めたりすることに用いられる。そのため、温風は単に噴出されればいいわけではなく所定の場所に噴出されるように方向付けされる。そこで、ファンとヒーターとを覆い、温風が所定の場所に向かって噴出されるようにする構成が特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている温風を噴出する構成(便器用温風装置)は、ファンとヒーターとを覆うケースのうち、下側が便器に設置されるハウジングで構成され、上側がハウジングに取り付けられるケースで構成されている。特許文献2に開示されている便器用温風装置は、ファンとヒーターを覆うケースのうち、下側の一部が便器に設置されるハウジングで構成され、上側がハウジングに取り付けられるケースで構成されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2の便器用温風装置は、何れも下側のケースの全体か一部をハウジングと共用している。これは、便器用温風装置を小型化することで省スペース化や低コストを狙っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−139015号公報
【特許文献2】特開平6−57806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1も特許文献2もケースをハウジングと共用するため、便器用温風装置をハウジングに取り付けた状態でなければ、温風を一定方向に噴出できない。そのため、便器用温風装置の性能保証は、ハウジングに取り付けた状態で行うことになり、便器用温風装置だけでの性能保証ができない。便器用温風装置の性能保証は、温風の温度を測定(検査)することで行われる。ハウジングにはその他に洗浄のための水(温水)を噴出する装置をはじめ、様々の機能の部品や装置が取り付けられるため、便座用温風装置のみについて性能保証できない場合であってもその便座用温風装置が組み込まれた洗浄便座装置全体について不良として扱わざるを得なくなって生産性の大きな妨げになる。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、便器に設置されるハウジングに取り付けられる前の状態で性能保証のための検査ができ且つ省スペース化された便器用温風装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、便器に設置される
人体局部が洗浄できる洗浄便座装置のハウジング内に取り付けられることで人体局部へ温風を噴出する便器用温風装置であって、
ヒーターと、
前記ヒーターの熱を前記温風とし
て流れるように風を発生するファンと、
前記ヒーター及び前記ファンを覆うダクトと、
を有し、
前記ダクトは、前記ダクトの一部が前記
洗浄便座装置のハウジングで構成されるハウジング共用部と、それ以外の非ハウジング共用部と、を有し、
前記非ハウジング共用部に、前記ファン、前記ヒーター
が配置され、
前記便器用温風装置が前記洗浄便座装置のハウジング内に取り付けられた状態において前記温風の流れ方向の下流端に位置して前記温風を噴出する前記便器用温風装置の噴出口は、前記洗浄便座装置のハウジングと前記非ハウジング共用部により形成されることである。
【0009】
なお、「温風の発生源」とは、風及びヒーターのそれぞれが個別に発生する場所を単純に示す概念ではなく、ヒーターの熱がファンで方向付けされて温風となった場所である。また、温風の発生源の「近傍」とはハウジングから外されていても、ハウジングに取り付けられているのと同じ条件で温風が流れる部位である。
【0010】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、
前記非ハウジング共用部に温度測定手段が配置されることである。
【0011】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、
前記ハウジング共用部は、前記洗浄便座装置の下側のハウジングであり、
前記ダクトの前記非ハウジング共用部は、前記ヒーター、前記ファン、及び前記
温度測定手段が取り付けられるアッパケースと、前記アッパケースと結合するロワケースと、を有
し、
前記ロワケースが前記洗浄便座装置の下側のハウジングに取り付けられることである。
【0012】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求
項3において、前記
温度測定手段は、前記非ハウジング共用部が前記ハウジング内に取り付けられる前に、前記アッパケー
スによって保持されることである。
【発明の効果】
【0013】
本願発明は、温風を発生するヒーター及びファンを覆うダクトの一部がハウジングで構成されている。そして、ダクトのうち、ハウジングで構成されていない非ハウジング共用部の温度測定部で温風の温度が測定される。温度測定部は、温風の発生源近傍である。そのため、非ハウジング共用部だけで温風の温度を測定して、性能保証ができる。よって、本願発明によれば、ダクトの一部がハウジングで構成されるハウジング共用部であるため、ハウジングに取り付けられる前の状態の便器用温風装置はコンパクトであり、軽量である。しかも、その状態で温風の性能保証ができる。また、ハウジングに取り付けられた状態でもハウジングとの共用部の大きさ(厚み)だけ温風を吹き出す吹出口(ダクトの開口)の開口面積を大きくすることが可能になり全体として小型化が実現できる。
【0014】
そして、温度測定部に温度を測定できる温度センサ
(温度測定手段)を有する構成では、ハウジングに取り付けられる前後で同じ温度センサを使用でき、ハウジングに取り付けられる前後で同じ温度センサを使わない場合よりも性能保証がより確実である。また、性能保証された位置に温度センサがある状態で、ハウジングに取り付ける(組み付ける)ため、取り付けが簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の便器用温風装置の横断面図である。
【
図3】従来技術の便器用温風装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の代表的な実施形態を
図1及び
図2を参照して説明する。本実施形態に係る便器用温風装置は、便器(図示略)に設置されるハウジング内に取り付けられる。
【0017】
(実施形態)
本実施形態の便器用温風装置は、
図1及び2に示されるように、ハウジング12に取り付けられるダクト3の内部に、ヒーター21とファン22と温度センサ23とが設置されている。ダクト3は、両端部が開口しており、ファン22が駆動することで風が一方向に流れるように通路35を形成する。ヒーター21とファン22とは、互いに隣接しており、ダクト3の両端部よりも中央よりで、風の流れる方向に直列に並んで配置されている。ダクト3は、ダクト3の一部がハウジング12で構成されるハウジング共用部32と、アッパケース4とロアケース5とで構成される非ハウジング共用部と、を有する。ダクト3下流の噴出口33から内部に所定長さの下側部分がハウジング共用部32である。温度センサ23は、ヒーター21及びファン22の下流側の近傍、且つハウジング共用部32の上流すぐの非ハウジング共用部に位置する温度測定部31に設置される。なお、
図1では、温度測定部31の場所を明確にするために網掛けで図示されているが、特定の素材や部品を用いることが必須であることを示すための図示ではない。
【0018】
アッパケース4はダクト3の両側面及び上方を構成する。ヒーター21、ファン22及び温度センサ23は、アッパケース4に取り付けられる。そして、ダクト3の下側の一部を構成するロアケース5がアッパケース4に結合し、非ハウジング共用部になる。非ハウジング共用部は、ダクト3の下流側の下部がない状態である。この下流側の下部を、ハウジング12のハウジング共用部32に合わせて、非ハウジング共用部をハウジング12に固定する。
【0019】
ハウジング共用部32は、非ハウジング共用部のアッパケース4とともに、ダクト3の下流端の噴出口33を形成する。噴出口33には、上部をアッパケース4側に回動可能に軸支され、風の噴出及び停止によって開閉自在な蓋34が取り付けられている。なお、蓋34は通電によっても開閉を行う構成のものを用いることもできる。
【0020】
便器用温風装置とともに洗浄装置他が取り付けられた便座洗浄装置は、工場からの出荷時には、各部品の各種機能が正常に動作するか検査され、性能保証がされている。便器用温風装置は、温風の温度を測定して性能保証する。そこで、本実施形態の便器用温風装置は、ハウジング12のハウジング共用部32に固定される前の非ハウジング共用部の状態で、温風の温度が検査できる。非ハウジング共用部の隣接するヒーター21とファン22の下流側の近傍に温度センサ23が取り付けられている。非ハウジング共用部は、内部に通路35が形成されており、ヒーター21、ファン22、そして温度センサ23とが配置されている。ダクト3は、ロアケース5の位置する下側がハウジング12の一部で構成される。温度センサ23が配置される温度測定部31は、ロアケース5の下流端51よりも上流側で、下流端とヒーター21との間のアッパケース4及びロアケース5で囲まれた空間である。よって、アッパケース4とロアケース5とが結合した非ハウジング共用部の状態で、ヒーター21及びファン22が駆動すると、温風は一定方向に流れることができる。この温風の流れの先、つまり下流側に位置する温度測定部31で温度を測定することができる。
【0021】
本実施形態の便器用温風装置は、ダクト3の一部がハウジング12で構成されるため、取り付ける場所は省スペースでよく、軽量でもある。
図3に示す従来技術は、アッパケース91及びロアケース92でダクト9が構成されており、ハウジング12と共用している部分はない。ダクト9内に、隣接してヒーター92とファン(図示略)が温風の流れる方向に直列に並んで配置されている。ヒーター92及びファンよりも温風の下流側に温度センサ94が配置されている。温度センサ94は、ヒーター92及びファンが駆動して流れる温風の温度を測定する。便器用温風装置は、コンパクト及び軽量であることが望ましいため、温風を通過する通路95を狭くしたり、ダクト9の壁の厚さを薄くしたり、などが考えられる。しかし、充分な温風が噴出できなくなる可能性がある。また、特許文献1及び特許文献2に開示されている便器用温風装置は、省スペース化となっているが、ハウジング12に取り付けられた状態でなければ装置の性能保証のための温度測定ができない。
【0022】
本実施形態の便器用温風装置によれば、便器用温風装置としての性能保証をハウジング12に固定する前にすることができ、且つ、ダクト3の一部(下流側の下側)をハウジング12と共用しているため、コンパクトであり軽量化されている。
【0023】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、温度センサ23は非ハウジング共用部をハウジング12に取り付ける際に取り付ける構成でもよい。ハウジング12に取り付ける前、温度を測定する際に検査のための温度センサを温度測定部に配置し、検査が終了すれば外すことで、性能保証はできる。
【符号の説明】
【0024】
12:ハウジング、
21:ヒーター、22:ファン、23:温度センサ、
3:ダクト、31:温度測定部、32:ハウジング共用部、33:噴出口、34:蓋、
35:通路、
4:アッパケース、
5:ロアケース、51:下流端、
9:ダクト、91:アッパケース、92:ロアケース、93:温度センサ、94通路。