(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0016】
[静電荷像現像用トナー]
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と称する)は、トナー粒子と、酸化ケイ素と含有率が0.001質量%以上10質量%以下のチタンとを含んで構成され、平均粒径が30nm以上500nm以下、粒度分布指標が1.1以上1.5以下、かつ、平均円形度が0.5以上0.85以下であるシリカ複合粒子と、を有するトナーである。
【0017】
本実施形態に係るトナーは、上記構成により、転写効率に優れ、画像の濃度変動及びカブリの発生を抑制する。
この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0018】
上記平均粒径と粒度分布指標と平均円形度とを有するシリカ複合粒子は、適度な大きさで、粒度分布が揃っており、しかも、真球に比べて凹凸の多い異形状のである特性を有する粒子である。
このシリカ複合粒子は、適度な大きさで、粒度分布が揃っていることにより、粒度分布が広い粒子群よりも粒子同士の密着性が少なくなるため、粒子同士の摩擦が生じ難くなると考えられる。その結果、シリカ複合粒子自体の流動性に優れるシリカ複合粒子が、ムラなくトナー粒子に外添されると考えられる。
【0019】
また、シリカ複合粒子は、適度な大きさで異形状であることにより、球状(平均円形度が0.85を超える形状)の場合に比べ、トナー粒子に付着した際、トナー粒子への埋まりこみ、転がりによる偏在、離脱が生じ難くなると共に、機械的付加による破壊が生じ難いと考えられる。
このため、シリカ複合粒子は、トナー粒子に対する分散性及びトナー粒子の流動性維持を改善すると考えられる。つまり、上記平均粒径と粒度分布指標と平均円形度とを有するシリカ複合粒子は、適度な大きさで、真球に比べ凹凸の多い異形状である特性を有する粒子であるため、真球に比べ、トナー粒子との接触面積が大きくなる。このため、シリカ複合粒子の遊離が抑制されると考えられる。
これに加え、シリカ複合粒子は、上記範囲でチタンを含むことから、シリカ複合粒子表面にチタンが露出した部分が存在していると考えられる。このため、シリカ粒子に比べ、シリカ複合粒子は、トナー粒子に対して付着しやすくなり、シリカ複合粒子の遊離が抑制されると考えられる。これは、シリカに比べチタンの方が、トナー粒子の表面に対する親和性が高いと考えられるからである。
このように、シリカ複合粒子の遊離が抑制されると、シリカ複合粒子が単独で静電潜像保持体上に現像され残存することが抑制されるので、静電潜像保持体が目的とする電位を得られ易くなり、その結果、画像の濃度変動を抑制すると考えられる。
【0020】
また、シリカ複合粒子は、チタン粒子を上記含有率で含むことにより、抵抗を下げず帯電が維持され、電荷交換性を向上させるため、その結果、カブリが抑制されると考えられる。
さらに、上述したチタンによるトナーの電荷交換性の向上に加え、シリカ複合粒子が適度な大きさであるため、その結果、転写性も向上すると考えられる。
【0021】
以上から、本実施形態に係るトナーは、転写効率に優れ、画像の濃度及びカブリの発生を抑制すると考えられる。
なお、チタンを混合することにより、シリカ複合粒子の表面の一部にチタンが存在することにより、抵抗を大幅に低下させることもないので、転写抜けもない。シリカ複合粒子が異形状であるため、クリーニング性が高まることも考えられる。
【0022】
以下、トナーの構成について詳細に説明する。
【0023】
トナーは、トナー粒子と、外添剤としてシリカ複合粒子と、を含んで構成される。
【0024】
(トナー粒子)
トナー粒子としては、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加物と、を含んで構成される。
【0025】
結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類などの単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上組み合せて得られる共重合体、さらにはこれらの混合物が挙げられる。また、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合樹脂、又は、これらと前記ビニル樹脂との混合物や、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等が挙げられる。
【0026】
スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂は、例えば、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体を、単独又は2種以上組み合わせて公知の方法により得られる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現である。
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との中から好適なものを選択して組合せ、例えば、エステル交換法又は重縮合法等、従来公知の方法を用いて合成することで得られる。
【0027】
スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びこれらの共重合樹脂を結着樹脂として使用する場合、重量平均分子量Mwが20,000以上100,000以下、数平均分子量Mnが2,000以上30,000以下の範囲のものを使用することが好ましい。他方、ポリエステル樹脂を結着樹脂として使用する場合は、重量平均分子量Mwが5,000以上40,000以下、数平均分子量Mnが2,000以上10,000以下の範囲のものを使用することが好ましい。
【0028】
結着樹脂のガラス転移温度は、40℃以上80℃以下の範囲にあるのが望ましい。ガラス転移温度が上記範囲であることにより、最低定着温度が維持され易くなる。
【0029】
着色剤としては、公知の着色剤であれば特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料が挙げられる。
【0030】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0031】
着色剤の含有量としては、結着樹脂の全質量に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲が望ましい。
【0032】
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成或いは鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
離型剤の溶融温度は、保存性の観点から、50℃以上であることが望ましく、60℃以上であることがより望ましい。また、耐オフセット性の観点から、110℃以下であることが望ましく、100℃以下であることがより望ましい。
【0034】
離型剤の含有量は、結着樹脂の全質量に対して、1質量%以上15質量%以下が望ましく、2質量%以上12質量%以下がより望ましく、3質量%以上10質量%以下がさらにより望ましい。
【0035】
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等が挙げられる。
【0036】
トナー粒子の形状係数SF1が125以上140以下(望ましくは125以上135以下、より望ましくは130以上135以下)であり、形状係数SF2が105以上130以下(望ましくは110以上125以下、より望ましくは115以上120以下)であることがよい。
【0037】
トナー粒子の形状係数SF1は、は、下記式により求められる。
・式:形状係数SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布したトナー粒子の光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個のトナー粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0038】
トナー粒子の形状係数SF2は、次のようにして求める。
走査型電子顕微鏡(例えば日立株式会社製:S−4100など)を用いトナー粒子を観察して画像を撮影し、この画像を画像解析装置(例えばLUZEXIII、ニレコ社製)に取り込み100個の各々のトナー粒子について、次式に基づいてSF2を算出し、その平均値を求めて、形状係数SF2とする。なお、電子顕微鏡は1視野中に外添剤が3個以上20個以下程度写るように倍率を調整し、複数視野の観察を合わせて次式に基づいてSF2を算出した。
・式:形状係数SF2=「PM
2/(4・A・π)」×100
ここで、式中、PMは、トナー粒子の周囲長を示す。Aは、トナー粒子の投影面積を示す。πは、円周率を示す。
【0039】
トナー粒子の体積平均粒径としては、2μm以上10μm以下が望ましく、4μm以上8μm以下がより望ましい。
【0040】
トナー粒子の体積平均粒径の測定は、コールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で測定する。この時、測定は、トナー粒子を電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
測定法としては、分散剤として界面活性剤、望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に、測定試料を0.5乃至50mg加え、これを前記電解液100乃至150ml中に添加する。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で1分間分散処理を行い、粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000である。
測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径を体積平均粒径と定義する。
【0041】
(外添剤)
外添剤として、シリカ複合粒子が適用される。
【0042】
−シリカ複合粒子−
シリカ複合粒子は、酸化ケイ素(二酸化ケイ素:シリカ)と、チタンと、が混合した複合粒子、言い換えれば、酸化ケイ素で構成された粒子中に、チタンが分散して存在する複合粒子である。
そして、シリカ複合粒子全体に対するチタンの含有率は、0.001質量%以上10質量%(望ましくは0.01質量%以上9質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上5質量%以下)である。
【0043】
チタンの含有率が0.001質量%未満では、トナーの電荷交換性が向上し難くなり、転写性の低下及びカブリが発生する。また、シリカ複合粒子はトナー粒子から遊離して、画像の濃度変動が発生する。
一方、チタンの含有率が10質量%を超えると、シリカ複合粒子を作製する際、有機チタン化合物(特にテトラアルコキシチタン)の反応が激しいことに起因して、過大な粗粉の発生や、粒度分布、形状の悪化とつながり、目的とする粒度が得られず、特に、シリカ複合粒子に機械的負荷がかかった場合に欠損しやすく、流動維持性を向上させ難い。また、シリカ複合粒子はトナー粒子から遊離し、画像の濃度変動が発生しやすくなる。
【0044】
なお、チタンの含有率の測定は、次のように行う。まず、トナーからシリカ複合粒子を分離する。そして、分離したシリカ複合粒子について、蛍光X線測定機:XRF1500(島津製作所製)を用いて、粒子中の構成元素のNET強度を求め、本NET強度とチタン0%及び100%のNET強度の検量線とによりチタン含有率を定量して行う。
【0045】
−平均粒径−
シリカ複合粒子は、平均粒径が30nm以上500nm以下(望ましくは60nm以上500nm以下、より望ましくは100nm以上350nm以下、さらに望ましくは100nm以上250nm以下)である。
なお、平均粒径は、シリカ複合粒子の一次粒子の平均粒径である。
【0046】
シリカ複合粒子の平均粒径が30nm未満では、シリカ複合粒子の形状が球状となりやすく、シリカ複合粒子の平均円形度を0.50以上0.85以下とすることが難しく、異形状となっても、トナー粒子に対するシリカ複合粒子の埋没を抑制することが難しく、トナーの流動維持性が実現され難くなる。このため、スペーサーとしての機能が失われ、転写性が低下しやすくなる。
一方、シリカ複合粒子の平均粒径が500nmを超えると、シリカ複合粒子に機械的負荷が加わった場合に欠損しやすく、トナーの流動維持性が実現され難くなる。また、シリカ複合粒子はトナー粒子から遊離し、画像の濃度の変動が発生しやすくなる。
【0047】
シリカ複合粒子の平均粒径は、トナー粒子にシリカ複合粒子を外添させた後の一次粒子100個をSEM(Scanning Electron Microscope)装置により観察し、一次粒子の画像解析によって得られた円相当径の累積頻度における50%径(D50v)を意味する。
【0048】
−粒度分布指標−
シリカ複合粒子は、粒度分布指標が1.1以上1.5以下(望ましくは1.25以上1.40以下)である。
なお、粒度分布指数は、シリカ複合粒子の一次粒子の粒度分布指数である。
【0049】
シリカ複合粒子の粒度分布指標が1.1未満であるシリカ粒子は製造が困難である。
一方、シリカ複合粒子の粒度分布が1.5を超えると、粗大粒子の発生や、粒径のばらつきによりトナー粒子への分散性が悪化し、また、粗大粒子の存在が増えるに伴い、その機械的負荷による欠損粒子が増えるため、トナーの流動維持性が実現され難くなる。シリカ複合粒子はトナー粒子から遊離し、画像の濃度変動が発生しやすくなる。
【0050】
シリカ複合粒子の粒度分布指標とは、トナー粒子にシリカ複合粒子を分散させた後の一次粒子100個をSEM装置により観察し、一次粒子の画像解析によって得られた円相当径の累積頻度において、84%径を16%径で除した値の平方根を意味する。
【0051】
−平均円形度−
シリカ複合粒子は、一次粒子の平均円形度が0.5以上0.85以下(望ましくは0.6以上0.8以下)である。
なお、平均円形度は、シリカ複合粒子の一次粒子の平均円形度である。
【0052】
シリカ複合粒子の平均円形度が0.50未満では、シリカ複合粒子の縦/横比が大きな球状となり、複合シリカ粒子に機械的負荷が加わった場合に応力集中が生じて欠損しやすくなり、トナーの流動維持性が実現され難くなる。
一方、シリカ複合粒子の平均円形度が0.85を超えると、シリカ複合粒子は球状に近づく。そのため、トナー粒子との混合する際の撹拌の機械的負荷などによってシリカ複合粒子が偏って付着したり、経時保存後にシリカ複合粒子が偏って付着したりしてトナー粒子への分散性が悪化し、トナー粒子とシリカ粒子との接触面積の減少により、シリカ複合粒子がトナー粒子からの遊離が生じやすくなるため、画像の濃度変動が発生しやすくなる。
【0053】
なお、シリカ複合粒子の円形度「100/SF2」は、トナー粒子にシリカ複合粒子を外添させた後の一次粒子を、SEM装置により観察し、得られた一次粒子の画像解析から、下記式により算出される。
・式:円形度(100/SF2)=4π×(A/I
2)
〔式中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を示し、Aは一次粒子の投影面積を表す。〕
そして、シリカ複合粒子の平均円形度は、上記画像解析によって得られた一次粒子100個の円相当径の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0054】
−シリカ複合粒子の製造方法−
シリカ複合粒子は、例えば、次の方法(以下、「シリカ複合粒子の製造方法」と称する)により製造する。
【0055】
シリカ複合粒子の製造方法は、アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程と、アルカリ触媒溶液中に、アルコールに対して、0.001mol/(mol・min)以上0.01mol/(mol・min)以下の供給量で、テトラアルコキシシランとチタン原子に酸素を介して有機基が結合している有機チタン化合物との混合液を供給すると共に、テトラアルコキシシラン及び有機チタン化合物の1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して、0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給する工程と、を有するシリカ複合粒子の製造方法である。
なお、以下、「テトラアルコキシシランと有機チタン化合物との混合液」を「有機金属混合液」、「テトラアルコキシシラン及び有機チタン化合物」を「有機金属化合物」と総称して説明する。
【0056】
つまり、シリカ複合粒子の製造方法では、上記濃度のアルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料である有機金属混合液と、別途、触媒であるアルカリ触媒と、をそれぞれ上記関係で供給しつつ、有機金属化合物を各々反応させて、シリカ複合粒子を生成する方法である。
【0057】
シリカ複合粒子の製造方法では、上記手法により、粗大凝集物の発生が少なく、異形状のシリカ複合粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下の理由によるものと考えられる。
【0058】
まず、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、この溶液中に有機金属混合液とアルカリ触媒とをそれぞれ供給すると、アルカリ触媒溶液中に供給された有機金属化合物が各々反応して、核粒子が生成される。このとき、アルカリ触媒溶液中のアルカリ触媒濃度が上記範囲にあると、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異形状の核粒子が生成すると考えられる。これは、アルカリ触媒は、触媒作用の他に、生成される核粒子の表面に配位し、核粒子の形状、分散安定性に寄与するが、その量が上記範囲内であると、アルカリ触媒が核粒子の表面を覆う際にムラが生じるため(つまりアルカリ触媒が核粒子の表面に偏在して付着するため)、核粒子の分散安定性は保持するものの、核粒子の表面張力及び化学的親和性に部分的な偏りが生じ、異形状の核粒子が生成されると考えられるためである。
そして、有機金属混合液とアルカリ触媒との供給をそれぞれ続けていくと、有機金属化合物の各々反応により、生成した核粒子が成長し、シリカ複合粒子が得られる。
この有機金属混合液とアルカリ触媒との供給を、その供給量を上記関係で維持しつつ行うことで、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異形状の核粒子がその異形状を保ったまま粒子成長し、結果、異形状のシリカ複合粒子が生成されると考えられる。これは、この有機金属混合液とアルカリ触媒との供給量を上記関係とすることで、核粒子の分散を保持しつつも、核粒子表面における張力と化学的親和性の部分的な偏りが保持されることから、異形状を保ちながらの核粒子の粒子成長が生じると考えられるためである。
【0059】
ここで、有機金属混合液の供給量は、シリカ複合粒子の粒度分布や円形度に関係すると考えられる。有機金属混合液の供給量を、アルコールに対して0.001mol/(mol・min)以上0.01mol/(mol・min)以下とすることで、滴下されたテトラアルコキシシランと核粒子との接触確率を下げ、有機金属化合物同士の反応が起こる前に、有機金属化合物が核粒子に偏りなく供給されると考えられる。従って、有機金属化合物と核粒子との反応を偏り無く生じさせ得ると考えられる。その結果、粒子成長のバラツキを抑制し、分布幅の狭いシリカ複合粒子を製造し得ると考えられる。
なお、シリカ複合粒子の平均粒径は、有機金属化合物の総供給量に依存すると考えられる。
【0060】
以上から、シリカ複合粒子の製造方法では、上記シリカ複合粒子が得られると考えられる。
【0061】
また、シリカ複合粒子の製造方法では、異形状の核粒子を生成させ、この異形状を保ったまま核粒子を成長させてシリカ複合粒子が生成されると考えられることから、機械的負荷に対する形状安定性が高い異形状のシリカ複合粒子が得られると考えられる。
また、シリカ複合粒子の製造方法では、生成した異形状の核粒子が異形状を保ったまま粒子成長され、シリカ複合粒子が得られると考えられることから、機械的負荷に強く、壊れ難いシリカ複合粒子が得られると考えられる。
また、シリカ複合粒子の製造方法では、アルカリ触媒溶液中に、有機金属混合液とアルカリ触媒とをそれぞれ供給し、有機金属化合物の各々反応を生じさせることで、粒子生成を行っていることから、従来のゾルゲル法により異形状のシリカ複合粒子を製造する場合に比べ、総使用アルカリ触媒量が少なくなり、その結果、アルカリ触媒の除去工程の省略も実現される。これは、特に、高純度が求められる製品にシリカ複合粒子を適用する場合に有利である。
【0062】
まず、アルカリ触媒溶液準備工程について説明する。
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、これにアルカリ触媒を添加して、アルカリ触媒溶液を準備する。
【0063】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、必要に応じて水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(望ましくは90質量%以上)であることがよい。
なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0064】
一方、アルカリ触媒としては、有機金属化合物の各々反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが望ましい。
【0065】
アルカリ触媒の濃度(含有量)は、0.6mol/L以上0.85mol/L以下であり、望ましくは0.63mol/L以上0.78mol/L以下であり、より望ましくは0.66mol/L以上0.75mol/L以下である。
アルカリ触媒の濃度が、0.6mol/Lより低いと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成されたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の濃度が、0.85mol/Lより高いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、真球状の核粒子が生成され、平均円形度が0.85以下の異形状の核粒子が得られず、その結果、異形状のシリカ複合粒子が得られない。
なお、アルカリ触媒の濃度は、アルコール触媒溶液(アルカリ触媒+アルコールを含む溶媒)に対する濃度である。
【0066】
次に、粒子生成工程について説明する。
粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中に、有機金属混合液と、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給し、当該アルカリ触媒溶液中で、有機金属化合物を各々反応(加水分解反応、縮合反応)させて、シリカ複合粒子を生成する工程である。
この粒子生成工程では、有機金属混合液の供給初期に、有機金属化合物の各々反応により、核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ複合粒子が生成する。
【0067】
アルカリ触媒溶液中に供給する有機金属化合物(テトラアルコキシシランと有機チタン化合物との混合液)は、テトラアルコキシシランと有機チタン化合物との比率(有機チタン化合物/テトラアルコキシシラン)が、質量比で9.0以上99999以下がよく、望ましくは10.1以上9999以下、より望ましくは19以上999以下である。
有機金属混合液において、有機チタン化合物が少なすぎると、シリカ複合粒子中のチタンの含有率が少なくなり、有機チタン化合物が多すぎると、シリカ複合粒子中のチタンの含有率が多くなる。
特に、有機チタン化合物が多すぎると、有機チタン化合物の反応が激しいことに起因して、過大な粗粉の発生や、粒度分布、形状の悪化とつながり、目的とする粒度が得られず、特に、得られたシリカ複合粒子に機械的負荷がかかった場合に欠損しやすく、流動維持性を向上させ難くなる。
【0068】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられるが、反応速度の制御性や得られるシリカ複合粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがよい。
【0069】
有機チタン化合物としては、チタン原子が酸素を介して有機基と結合している有機金属化合物であるが、例えば、アルコキシド類(例えばメトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、i−プロポキシド、n−ブトキシド、i−ブトキシド、sec−ブトキシド、tert−ブトキシド等)、キレート類やアシレート類(例えばアセチルアセトナート等のβ−ジケトン類;、エチルアセトアセテート等のβ−ケトエステル類;、トリエタノールアミン等のアミン類;、酢酸、酪酸、乳酸、クエン酸等のカルボン酸類;等)の有機チタン化合物が挙げられる。
但し、有機チタン化合物は、反応速度の制御性や得られるシリカ複合粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、アルコキシ基を1個以上(望ましくは2個以上)有する有機チタン化合物であることがよい。つまり、有機チタン化合物は、アルコキシ基(酸素を介してチタン原子に結合するアルキル基)がチタン原子に1個以上(望ましくは2個以上)結合している有機チタン化合物であることがよい。
なお、アルコキシ基の炭素数は、反応速度の制御性や得られるシリカ複合粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、8以下がよく、望ましくは3以上8以下である。
【0070】
有機チタン化合物として具体的には、例えば、テトラ−i−プロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−t−ブトキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシチタン・ジアセテート、ジ−i−プロポキシチタン・ジプロピオネートが挙げられる。
【0071】
有機金属混合液の供給量は、アルカリ触媒溶液中のアルコールに対して、 0.001mol/(mol・min)以上0.01mol/(mol・min)以下とし、0.002mol/(mol・min)以上0.009mol/(mol・min)以下が望ましく、より望ましくは 0.003mol/(mol・min)以上 0.008mol/(mol・min)以下である。
これは、アルカリ触媒溶液を準備する工程で用いたアルコール1molに対して、1分間当たり0.001mol以上0.01mol以下の供給量で有機金属化合物を供給することを意味する。
なお、シリカ複合粒子の粒径については、有機金属化合物の種類や、反応条件にもよるが、粒子生成の反応に用いる有機金属化合物の総供給量を、例えばシリカ複合粒子分散液1Lに対し1.08mol以上とすることで、粒径が100nm以上の一次粒子が得られ、シリカ複合粒子分散液1Lに対し5.49mol以下とすることで、粒径が500nm以下の一次粒子が得られる。
【0072】
有機金属混合液の供給量が、0.001mol/(mol・min)より少ないと、滴下された有機金属化合物と核粒子との接触確率をより下げることにはなるが、テトラアルコキシシランの総供給量を滴下し終わるまでに長時間を要し、生産効率が悪い。
有機金属混合液の供給量が0.01mol/(mol・min)より多いと、滴下された有機金属化合物と核粒子とが反応する前に、有機金属化合物同士の反応を生じさせることになると考えられる。そのため、核粒子への有機金属化合物供給の偏在化を助長し、核粒子形成のバラツキをもたらすことから、平均粒径、形状分布の分布幅が拡大することとなる。
【0073】
一方、アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒は、上記例示したものが挙げられる。この供給するアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。
【0074】
アルカリ触媒の供給量は、有機金属化合物の1分間当たりに供給される総供給量(テトラアルコシキシラン及び有機チタン化合物の総供給量)の1mol当たりに対して、0.1mol以上0.4mol以下とし、望ましくは0.14mol以上0.35mol以下であり、より望ましくは0.18mol以上0.30mol以上である。
アルカリ触媒の供給量が、0.1molより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成さたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の供給量が、0.4molより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、核粒子生成段階で異形状の核粒子が生成されても、その核粒子成長段階で核粒子が球状に成長し、異形状のシリカ複合粒子が得られない。このため、シリカ複合粒子は、トナー粒子へ付着し難くなる。その結果、画像の濃度変動が発生しやすくなる。
【0075】
ここで、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中に、有機金属混合液と、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給するが、この供給方法は、連続的して供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0076】
また、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中の温度(供給時の温度)は、例えば、5℃以上50℃以下であることがよく、望ましくは15℃以上40℃以下の範囲である。
【0077】
以上の工程を経て、シリカ複合粒子が得られる。この状態で、得られるシリカ複合粒子は、分散液の状態で得られるが、そのままシリカ複合粒子分散液として用いてもよいし、溶媒を除去してシリカ複合粒子の粉体として取り出して用いてもよい。
【0078】
シリカ複合粒子分散液として用いる場合は、必要に応じて水やアルコールで希釈したり濃縮することによりシリカ複合粒子固形分濃度の調整を行ってもよい。また、シリカ複合粒子分散液は、その他のアルコール類、エステル類、ケトン類などの水溶性有機溶媒などに溶媒置換して用いてもよい。
【0079】
一方、シリカ複合粒子の粉体として用いる場合、シリカ複合粒子分散液からの溶媒を除去する必要があるが、この溶媒除去方法としては、1)濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去した後、真空乾燥機、棚段乾燥機などにより乾燥する方法、2)流動層乾燥機、スプレードライヤーなどによりスラリーを直接乾燥する方法など、公知の方法が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、望ましくは200℃以下である。200℃より高いとシリカ複合粒子表面に残存するシラノール基の縮合による一次粒子同士の結合や粗大粒子の発生が起こり易くなる。
乾燥されたシリカ複合粒子は、必要に応じて解砕、篩分により、粗大粒子や凝集物の除去を行うことがよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
【0080】
シリカ複合粒子の製造方法により得られるシリカ複合粒子は、疎水化処理剤によりシリカ複合粒子の表面を疎水化処理して用いていてもよい。
疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
これら疎水化処理剤の中も、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチル基を有する有機珪素化合物が好適である。
【0081】
疎水化処理剤の使用量は、特に限定はされないが、疎水化の効果を得るためには、例えば、シリカ複合粒子に対し、1質量%以上100質量%以下、望ましくは5質量%以上80質量%以下である。
【0082】
疎水化処理剤による疎水化処理が施された疎水性シリカ複合粒子分散液を得る方法としては、例えば、シリカ複合粒子分散液に疎水化処理剤を必要量添加し、攪拌下において30℃以上80℃以下の温度範囲で反応させることで、シリカ複合粒子に疎水化処理を施し、疎水性シリカ複合粒子分散液を得る方法が挙げられる。この反応温度が30℃より低温では疎水化反応が進行し難く、80℃を越えた温度では疎水化処理剤の自己縮合による分散液のゲル化やシリカ複合粒子同士の凝集などが起り易くなることがある。
【0083】
一方、粉体の疎水性シリカ複合粒子を得る方法としては、上記方法で疎水性シリカ複合粒子分散液を得た後、上記方法で乾燥して疎水性シリカ複合粒子の粉体を得る方法、シリカ複合粒子分散液を乾燥して親水性シリカ複合粒子の粉体を得た後、疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ複合粒子の粉体を得る方法、疎水性シリカ複合粒子分散液を得た後、乾燥して疎水性シリカ複合粒子の粉体を得た後、更に疎水化処理剤を添加して疎水化処理を施し、疎水性シリカ複合粒子の粉体を得る方法等が挙げられる。
ここで、粉体のシリカ複合粒子を疎水化処理する方法としては、ヘンシェルミキサーや流動床などの処理槽内で粉体の親水性シリカ複合粒子を攪拌し、そこに疎水化処理剤を加え、処理槽内を加熱することで疎水化処理剤をガス化して粉体のシリカ複合粒子の表面のシラノール基と反応させる方法が挙げられる。処理温度は、特に限定されないが、例えば、80℃以上300℃以下がよく、望ましくは120℃以上200℃以下である。
【0084】
以上説明した、外添剤であるシリカ複合粒子は、トナー粒子100質量部に対して0.5質量部以上5.0質量部以下で添加することが望ましく、より望ましくは0.7質量部以上4.0質量部以下であり、さらに望ましくは0.9質量部以上3.5質量部以下である。
【0085】
−トナーの製造方法−
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤としてのシリカ複合粒子を外添することで得られる。
トナー粒子の製造方法としては、湿式造粒法により行われることが望ましい。湿式造粒法としては、例えば、公知の溶融懸濁法、乳化凝集・合一法、溶解懸濁法等の方法が挙げられる。
得られたトナー粒子にシリカ複合粒子を外添する方法としては、例えば、V型ブレンダーやヘンシェルミキサーやレディゲミキサー等の公知の混合機によって混合する方法が挙げられる。
【0086】
[静電荷像現像剤]
静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0087】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア、樹脂分散型キャリア等が挙げられる。
【0088】
前記二成分現像剤における、本実施形態に係るトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲が望ましく、3:100乃至20:100程度の範囲がより望ましい。
【0089】
[画像形成装置及び画像形成方法]
次に、本実施形態に係るトナーを用いた本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について説明する。
画像形成装置は、静電潜像保持体と、静電潜像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備えて構成される。
【0090】
画像形成装置によれば、静電潜像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体にトナー像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法が実施される。
【0091】
画像形成装置における画像の形成は、静電潜像保持体として電子写真感光体を利用した場合、例えば、以下のように行う。まず、電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により帯電した後、露光し、静電荷像を形成する。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーを付着させ、電子写真感光体上にトナー像を形成する。形成されたトナー像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の記録媒体表面に転写される。さらに、記録媒体表面に転写されたトナー像は、定着装置により定着され、記録媒体に画像が形成される。また、クリーニング手段を備えた場合、トナー像の転写後、静電潜像保持体の表面は、クリーニングブレードによりクリーニングされた後、再び、帯電が行われる。
【0092】
なお、画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ等)であってもよい。
トナーカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に脱着されるトナーカートリッジが好適に用いられる。
プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容すると共に、静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を該静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0093】
以下、画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0094】
図1は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着し得るプロセスカートリッジであってもよい。
【0095】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーを供給し得る。
【0096】
上述した第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0097】
第1のユニット10Yは、静電潜像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置(静電潜像形成手段)3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去するクリーングブレード6Y−1を有する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0098】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0099】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0100】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む本実施形態に係る静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0101】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yのクリーングブレード6Y−1で除去されて回収される。
【0102】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0103】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0104】
この後、記録媒体である記録紙Pは定着装置(ロール状定着手段)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。
【0105】
トナー像を転写する記録媒体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
定着後における画像表面の粗さを抑制させるには、前記記録媒体の表面も極力粗さが抑制されていることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0106】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される装置等、周知の装置であってもよい。
【0107】
[プロセスカートリッジ及びトナーカートリッジ]
図2は、静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例の実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニングブレード113−1を有する感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付け、レール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、
図2において符号300は記録媒体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置に対して着脱自在としたものである。
【0108】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせられる。プロセスカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備える。
【0109】
次に、トナーカートリッジについて説明する。トナーカートリッジは、静電荷像現像用トナーを収容し、画像形成装置に脱着されるトナーカートリッジである。
【0110】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱し得る構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0111】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお以下の説明において、特に断りがない限り、「部」「%」は全て「質量部」「質量%」を意味する。
【0112】
[トナー粒子の作製]
(トナー粒子)
−ポリエステル樹脂粒子分散液の調製−
・エチレングリコール〔和光純薬工業(株)製〕 37部
・ネオペンチルグリコール〔和光純薬工業(株)製〕 65部
・1,9 ノナンジオール〔和光純薬工業(株)製〕 32部
・テレフタル酸〔和光純薬工業(株)製〕 96部
上記モノマーをフラスコに仕込み、1時間をかけて温度200℃まで上げ、反応系内が攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。更に、生成する水を留去しながら同温度から6時間をかけて240℃まで温度を上げ、240℃で更に4時間脱水縮合反応を継続し、酸価が9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃であるポリエステル樹脂Aを得た。
【0113】
次いで、ポリエステル樹脂Aを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に毎分100部の速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で上記ポリエステル樹脂溶融体と共に上記キャビトロンに移送した。回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2の条件でキャビトロンを運転し、
体積平均粒径160nm、固形分30%、ガラス転移温度62℃、重量平均分子量Mwが13,000の樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液を得た。
【0114】
−着色剤粒子分散液の調製−
・シアン顔料〔PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)製〕 10部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製〕 2部
・イオン交換水 80部
上記の成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー〔HJP30006、(株)スギノマシン製〕により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液を得た。
【0115】
−離型剤粒子分散液の調製−
・カルナバワックス〔RC−160、溶融温度84℃、東亜化成(株)製〕 50部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬製〕 2部
・イオン交換水 200部
上記成分を120℃に加熱して、IKA社製、ウルトラタラックスT50で混合・分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が200nm、固形分20%の離型剤粒子分散液を得た。
【0116】
−トナー粒子の作製−
・ポリエステル樹脂粒子分散液 200部
・着色剤粒子分散液 25部
・離型剤粒子分散液: 30部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4部
・イオン交換水 100部
上記の成分をステンレス製フラスコに投入し、IKA社製のウルトラタラックスを用い混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分保持した後、ここに上記と同じポリエステル樹脂粒子分散液を70部追加した。
【0117】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを8.0 に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、降温速度を2℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに30℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5A ろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子を得た。
トナー粒子1の体積平均粒径D50vをコールターカウンターで測定したところ5.8μmであり、SF1は130であった。
【0118】
[外添剤の作製]
〔シリカ複合粒子a1〕
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液の調製〕−
攪拌翼、滴下ノズル、温度計を有した容積2.5Lのガラス製反応容器にメタノール400部、10%アンモニア水(NH
4OH)75部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。このときのアルカリ触媒溶液のアンモニア触媒量:NH
3量(NH
3〔mol〕/(NH
3+メタノール+水)〔L〕)は、0.75mol/Lであった。
【0119】
−粒子生成工程〔シリカ複合粒子懸濁液の調製〕−
まず、テトラメトキシシラン(TMOS)に対してテトラブトキシチタン(TBT:テトラ−t−ブトキシチタニウム)を3.0%添加して有機金属混合液を準備した。
次に、アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液を120rpmで撹拌しながら、有機金属混合液220部と、触媒(NH
3)濃度3.8%アンモニア水(NH
4OH)174部とを、下記供給量で、滴下を開始し、60分かけて滴下を行い、シリカ複合粒子の懸濁液(シリカ複合粒子懸濁液)を得た。
【0120】
但し、有機金属混合液の供給量は、アルカリ触媒溶液中のメタノール総mol数に対して、0.0019mol/(mol・min)となるように調整した。
また、3.8%アンモニア水の供給量は、有機金属化合物(テトラアルコキシシラン及びテトラブトキシチタン)の1分間当たりに供給される総供給量の1molに対して0.27mol/minとなるように調整した。
【0121】
その後、得られたシリカ複合粒子懸濁液の溶媒を加熱蒸留により300部留去し、純水を300部加えた後、凍結乾燥機により乾燥を行い、異形状の親水性シリカ複合粒子を得た。
【0122】
−シリカ複合粒子の疎水化処理−
さらに、親水性シリカ複合粒子35部にヘキサメチルジシラザン7部を添加し、150℃で2時間反応させ、粒子表面が疎水化処理された異形状の疎水性シリカ複合粒子を得た。
【0123】
〔シリカ複合粒子a2〜a17、b1〜b8〕
表1及び表2に従って、アルカリ触媒溶液準備工程、粒子生成工程での各種条件を変更した以外は、シリカ複合粒子a1と同様にして、シリカ複合粒子a2〜a17とb1〜b8とを得た。
但し、有機金属混合液は、表1に記載にされたテトラメトキシシラン(TMOS)の総供給量とテトラブトキシチタン(TBT)の総供給量との比率に従って、テトラメトキシシラン(TMOS)に対してテトラブトキシチタン(TBT)を添加して準備した。
また、シリカ複合粒子a14ではテトラブトキシチタン(TBT)に代えてチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート) (オルガチックスTC−100 マツモトファインケミカル(株)社製)を用いて、疎水性シリカ複合粒子を得た。
シリカ複合粒子a15ではテトラブトキシチタン(TBT)に代えてチタンテトラアセチルアセトネート (オルガチックスTC−401 マツモトファインケミカル(株)社製)を用いて、疎水性シリカ複合粒子を得た。
シリカ複合粒子a16ではテトラブトキシチタン(TBT)に代えて チタニウムジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド) (オルガチックスTC−200マツモトファインケミカル(株)社製)を用いて、疎水性シリカ複合粒子を得た。
シリカ複合粒子a17ではテトラブトキシチタン(TBT)に代えて チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート) (オルガチックスTC−750マツモトファインケミカル(株)社製)を用いて、疎水性シリカ複合粒子を得た。
【0124】
〔チタン粒子c1〕
チタン粒子c1は、上市されている酸化チタン粒子TT0−55(C)(石原産業(株)社製平均粒径=45nm)をそのまま用いた。
【0125】
〔実施例1〜17、比較例1〜9〕
トナー粒子100部に、表3に従ったシリカ複合粒子を2部添加し、ヘンシェルミキサーにて2000rpmで3分間混合し、各トナーを得た。
【0126】
そして、得られた各トナーとキャリアとを、トナー:キャリア=5:95(質量比)の割合でVブレンダーに入れ、20分間撹拌し、各現像剤を得た。
【0127】
なお、キャリアは次のように作製されたものを用いた。
・フェライト粒子(体積平均粒子径:50μm) 100部
・トルエン 14部
・スチレン−メチルメタクリレート共重合体 2部
(成分比:90/10、Mw=80000)
・カーボンブラック(R330:キャボット社製) 0.2部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを得た。
【0128】
[物性]
(シリカ複合粒子の物性)
各例で得られたトナーのシリカ複合粒子について、既述の方法に従って、チタンの含有率、平均粒径、粒度分布、平均円形度について調べた。
なお、得られたシリカ複合粒子a1〜a9とb1〜b9について、蛍光X線測定機:XRF1500(島津製作所製)を用い、粒子中の構成元素のNET強度によりチタン含有率を定量し、SEM−EDX(株式会社日立製作所製、S−3400N)によりマッピング処理を行って調べたところ、チタンがシリカ複合粒子中にムラなく分散されて存在していることが確認された。
【0129】
(実機評価)
各例で得られた静電荷像現像剤を、「Docu Centre Color 400改造機(富士ゼロックス社製)」の現像器に充填し、転写効率、カブリ、及び画像濃度について評価を行った。
【0130】
−転写効率−
転写効率は、次のようにして評価した。テスト手順としては、まず温度10℃/湿度20RH%環境下で、感光体上にトナー乗り量が5g/m2になるように現像電位を調整した。次に、感光体上の現像されたトナーが中間転写体(中間転写ベルト)へ移行した直後に評価機を止める。このことにより感光体上では転写後(クリーニング前)の状態でトナーが残っている。このトナーをメンディングテープで取りその時のトナー重量測定を行う。現像時のトナー乗り量と転写後のトナー乗り量の割合から次式に基づいて転写効率を求めた。転写効率の測定は、画像面積が5%となる画像をA4用紙、50000枚連続で出力した後に行った。また、初期状態として、上記50000枚の連続出力を行う前にも転写効率を測定した。
・式:転写効率=転写後の紙上トナー乗り量/感光体上トナー乗り量×100
転写効率評価基準は以下の通りである。
◎ :転写効率98%以上
○ :転写効率95%以上98%未満
△ :転写効率90%以上95%未満
× :転写効率85%以上90%未満
××:転写効率85%未満。
【0131】
−カブリ−
カブリは、25℃/80%RHの条件で画像濃度20%、4cm×4cm画像をA4紙5万枚出力し、10枚目(表中「初期」と表記)と5万枚目の出力画像について、次のようにして行った。出力画像を目視(ルーペを用いて非画像部のトナー有無を確認)評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
◎:カブリ未発生
○:軽微でかつカブリ発生、但し画質上問題なし
×:カブリが発生
【0132】
−画像の濃度変動−
画像の濃度変動は、25℃/80RHの条件で画像濃度20%で、4cm×4cm画像をA4紙5万枚出力し、10枚目(表中「初期」と表記)と5万枚目の出力画像について、Xrite938(Xrite社製)を使用して測定した。
評価基準は以下の通りである。
◎ :濃度差:0.5以下
○ :濃度差:0.5より大きく1.0以下
△ :濃度差:1.0より大きく1.5以下
× :濃度差:1.5より大きく2.0以下
××:濃度差:2.0より大きい
【0133】
表3に外添剤であるシリカ複合粒子の特性と共に、評価結果を一覧にして示す。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
上記結果から、本実施例は、転写効率、カブリ、及び画像の濃度変動の各評価について共に良好な結果が得られたことが分かる。